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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】ウニの飼育または養殖方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/30 20170101AFI20230323BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20230323BHJP
   A23K 50/80 20160101ALI20230323BHJP
【FI】
A01K61/30
A23K10/30
A23K50/80
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019060811
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020156418
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】509298012
【氏名又は名称】公立大学法人宮城大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】西川 正純
(72)【発明者】
【氏名】片山 亜優
(72)【発明者】
【氏名】栗田 喜久
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-206851(JP,A)
【文献】特開2007-236230(JP,A)
【文献】特開2016-187337(JP,A)
【文献】特開平06-098691(JP,A)
【文献】特開昭54-004766(JP,A)
【文献】国際公開第2012/038892(WO,A1)
【文献】Ermelinda Prato 他,Effect of formulated diets on the proximate composition and fatty acid profiles of sea urchin Paracentrotus lividus gonad,Aquaculture International,2017年10月15日,No.26,185-202頁
【文献】Stefano Carboni 他,Fatty acid profiles during gametogenesis in sea urchin (Paracentrotus lividus): Effects of dietary inputs on gonad egg and embryo profiles,Comparative Biochemistry and Physiology, Part A,2013年02月,Vol.164, No.2,376-382頁
【文献】Salvatrice Vizzini 他,A new sustainable formulated feed based on discards from food industries for rearing the sea urchin Paracentrotus lividus (Lmk),Aquaculture Nutrition,2019年02月22日,Vol.25, No.3,691-701頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/30
A23K 10/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウニにマメ科の植物を給餌して飼育するウニの飼育または養殖方法であって、
前記マメ科の植物の給餌は、
前記ウニの可食部に含まれる全脂肪酸のうちのα-リノレン酸の含有率が2%以上、または同全脂肪酸のうちで最大の含有率になるまで行なわれることを特徴とするウニの飼育または養殖方法。
【請求項2】
ウニにマメ科の植物を給餌して飼育するウニの飼育または養殖方法であって、
前記マメ科の植物の給餌は、
前記ウニの可食部に含まれる全脂肪酸におけるエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の各含有率が前記全脂肪酸におけるそれぞれ4%以上になるまで行なわれることを特徴とするウニの飼育または養殖方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したウニの飼育または養殖方法において、
前記マメ科の植物の給餌は、
前記ウニの可食部に含まれる全脂肪酸におけるα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の各含有率の合計値が前記全脂肪酸のうちの20%以上になるまで行なわれることを特徴とするウニの飼育または養殖方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したウニの飼育または養殖方法において、
前記マメ科の植物の給餌は、
前記マメ科の植物における葉、茎および莢のうちの少なくとも一つからなり種子を含まない非種子部を給餌することを特徴とするウニの飼育または養殖方法。
【請求項5】
請求項4に記載したウニの飼育または養殖方法において、
前記非種子部は、
前記葉に前記茎が繋がった状態で構成されていることを特徴とするウニの飼育または養殖方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載したウニの飼育または養殖方法において、
前記非種子部は、
複数の前記茎を含んでいるとともに、これらの各茎が束ねられた状態で前記ウニに給餌されることを特徴とするウニの飼育または養殖方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載したウニの飼育または養殖方法において、
前記マメ科の植物は、
シャジクソウ属の植物であることを特徴とするウニの飼育または養殖方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載したウニの飼育または養殖方法において、
前記マメ科の植物は、
クズ属の植物であることを特徴とするウニの飼育または養殖方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウニの飼育または養殖方法、ウニ用飼料および飼育または養殖されたウニに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人工孵化させたウニまたは天然海域から漁獲したウニを飼育または養殖することが行なわれている。例えば、下記特許文献1には、ウニに野菜を給餌することによってビタミン類およびミネラル類を含有する肉質のウニを早期に育成させる養殖方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-236230号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたウニの養殖方法においては、具体的に、どのような種類の野菜をどのように給餌すればどのような肉質のウニがどれくらいの時間で育成されるかが全く不明である。ここで、本発明者らの飼育実験によれば、ウニは雑食性であってもそもそも摂食しない植物があるとともに、摂食する植物であってもその給餌方法によって摂食の有無または摂食量が異なることが判明している。すなわち、上記特許文献1に記載されたウニの養殖方法は、少なくともウニに与える飼料について真偽が定かでなく、実際にビタミン類およびミネラル類を含有する肉質のウニを早期に育成させることができるか否かも不明であるという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、ウニの可食部に含まれる栄養素のうちの脂肪酸の含有量を調整することができるウニの飼育または養殖方法、ウニ用飼料および飼育または養殖されたウニを提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、ウニにマメ科の植物を給餌して飼育するウニの飼育または養殖方法であって、マメ科の植物の給餌は、ウニの可食部に含まれる全脂肪酸のうちのα-リノレン酸の含有率が2%以上、または同全脂肪酸のうちで最大の含有率になるまで行なわれることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、ウニの飼育または養殖方法は、ウニにマメ科の植物を給餌することでウニの可食部に含まれる全脂肪酸のうちのα-リノレン酸の含有率が2%以上、または同全脂肪酸のうちで最大の含有率に調整することができる。すなわち、本発明によれば、天然のウニまたは従来のコンブを主食とするウニに対してα-リノレン酸を高含有するウニを飼育または養殖することができる。また、ウニの餌となるマメ科の植物は、入手が容易で経済的負担も少なくて済むものであり、ウニを効率的に飼育または養殖することができる。
【0008】
ここで、本明細書において、ウニには、ムラサキウニ、キタムラサキウニ、バフンウニ、エゾバフンウニ、アカウニを含むものである、また、ウニの可食部とは、卵巣または精巣からなる生殖腺である。また、天然のウニとは、天然海域で漁獲した成体のウニである。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、ウニにマメ科の植物を給餌して飼育するウニの飼育または養殖方法であって、マメ科の植物の給餌は、ウニの可食部に含まれる全脂肪酸におけるエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の各含有率が前記全脂肪酸におけるそれぞれ4%以上になるまで行なわれることにある。
【0010】
このように構成した本発明の特徴によれば、ウニの飼育または養殖方法は、ウニの飼育または養殖方法は、ウニにマメ科の植物を給餌することでウニの可食部に含まれる全脂肪酸におけるエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の各含有率が前記全脂肪酸におけるそれぞれ4%以上に調整することができる。すなわち、本発明によれば、天然のウニまたは従来のコンブを主食とするウニに対してエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)が同時に高含有となるウニを飼育または養殖することができる。また、ウニの餌となるマメ科の植物は、入手が容易で経済的負担も少なくて済むものであり、ウニを効率的に飼育または養殖することができる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記ウニの飼育または養殖方法において、マメ科の植物の給餌は、ウニの可食部に含まれる全脂肪酸におけるα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の各含有率の合計値が前記全脂肪酸のうちの20%以上になるまで行なわれることにある。
【0012】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ウニの飼育または養殖方法は、ウニの可食部に含まれる全脂肪酸におけるα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の各含有率の合計値が前記全脂肪酸のうちの20%以上に調整することができる。すなわち、本発明によれば、天然のウニまたは従来のコンブを主食とするウニに対してα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の総量を高含有するウニを飼育または養殖することができる。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、前記ウニの飼育または養殖方法において、マメ科の植物の給餌は、マメ科の植物における葉、茎および莢のうちの少なくとも一つからなり種子を含まない非種子部を給餌することにある。
【0014】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ウニの飼育または養殖方法は、マメ科の植物の給餌がマメ科の植物における葉、茎および莢のうちの少なくとも一つからなり種子を含まない非種子部を給餌することで行われるため、入手が容易で経済的負担も少なくて済むものであり、ウニを効率的に飼育または養殖することができる。また、このウニの飼育または養殖方法によれば、ダイズの莢など人が食さない残渣を飼料として活用することができる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、前記ウニの飼育または養殖方法において、非種子部は、葉に茎が繋がった状態で構成されていることにある。
【0016】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ウニの飼育または養殖方法は、非種子部が葉に茎が繋がった状態で構成されているため、給餌した際に非種子部の沈降を早めることができるとともに、非種子部が水面上または沈降した際に浮遊して濾過装置に詰まることを抑制できる。また、本発明者らの実験によれば、ウニは沈降した非種子部の茎部分に載って非種子部を押えて葉を摂食する傾向が確認され、ウニにとって浮遊し易い葉に茎が繋がっていることは食べ易い形態であると思われる。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、ウニの飼育または養殖方法において、非種子部は、複数の茎を含んでいるとともに、これらの各茎が束ねられた状態でウニに給餌されることにある。
【0018】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ウニの飼育または養殖方法は、非種子部が複数の茎が束ねられて構成されてウニに給餌されるため、非種子部の沈降を早めることができるとともに非種子部の水中での移動および葉および茎が水中に分散することを防止することができる。また、本発明によれば、葉および茎を単体で分散して給餌する場合に比べてウニの摂食量を一見して容易に把握することができる。
【0019】
また、本発明の他の特徴は、前記ウニの飼育または養殖方法において、マメ科の植物は、シャジクソウ属の植物であることにある。
【0020】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ウニの飼育または養殖方法は、非種子部がシャジクソウ属の植物で構成されているため入手が容易であり、ウニを安定的かつ経済的に飼育または養殖することができる。なお、シャジクソウ属としては、クローバ(シロツメクサ、アカツメクサ)、コメツブツメクサ、ベニバナツメクサおよびアルファルファを用いることができる。
【0021】
また、本発明の他の特徴は、前記ウニの飼育または養殖方法において、非種子部は、クズ属の植物であることにある。
【0022】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ウニの飼育または養殖方法は、非種子部がクズ属の植物で構成されているため入手が容易であり、ウニを安定的かつ経済的に飼育または養殖することができる。なお、クズ属としては、クズおよびタイワンクズを用いることができる。
【0023】
また、上記目的を達成するため、ウニにマメ科の植物を給餌して飼育するウニの飼育または養殖方法であって、マメ科の植物の給餌は、ウニの可食部に含まれるオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸(DHA)のうちの少なくとも一つの含有量が天然のウニの可食部に含まれるそれぞれに対応するオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量を超えるまで行うことができる。
【0024】
これによれば、ウニの飼育または養殖方法は、ウニにマメ科の植物を給餌することでウニの可食部に含まれるオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸(DHA)のうちの少なくとも一つを天然のウニの可食部におけるオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量を超える含有量に調整することができる。すなわち、本発明によれば、天然のウニに対してオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸(DHA)のうちの少なくとも一つが豊富に含まれたウニを飼育または養殖することができる。また、ウニの餌となるマメ科の植物は、入手が容易で経済的負担も少なくて済むものであり、ウニを効率的に飼育または養殖することができる。
【0025】
また、上記目的を達成するため、ウニにマメ科の植物を給餌して飼育するウニの飼育または養殖方法であって、マメ科の植物の給餌は、ウニの可食部に含まれるオレイン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)のうちの少なくとも一つの含有量がコンブを主食として育成したウニの可食部に含まれるそれぞれに対応するオレイン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量を超えるまで行うことができる
【0026】
これによれば、ウニの飼育または養殖方法は、ウニにマメ科の植物を給餌することでウニの可食部に含まれるオレイン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)のうちの少なくとも一つをコンブを主食として育成したウニの可食部におけるオレイン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量を超える含有量に調整することができる。すなわち、本発明によれば、従来のコンブを主食とするウニに対してオレイン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)のうちの少なくとも一つが豊富に含まれたウニを飼育または養殖することができる。また、ウニの餌となるマメ科の植物は、入手が容易で経済的負担も少なくて済むものであり、ウニを効率的に飼育または養殖することができる。
【0027】
なお、ここで、コンブを主食するウニとは、稚ウニまたは天然海域で漁獲した成体のウニに対して餌としてコンブのみ、または給餌した餌の総量中(重量%)でコンブが80%以上で6ヶ月以上飼育したウニである。
【0028】
また、上記目的を達成するため、ウニにマメ科の植物を給餌して飼育するウニの飼育または養殖方法であって、マメ科の植物の給餌は、ウニの可食部に含まれるミスチリン酸の含有量が天然のウニの可食部に含まれるミスチリン酸の含有量の半分を超えない範囲で行なうことができる。
【0029】
これによれば、ウニの飼育または養殖方法は、ウニにマメ科の植物を給餌することでウニの可食部に含まれるミスチリン酸の含有量が天然のウニの可食部に含まれるミスチリン酸の含有量の半分を超えない範囲に調整することができる。すなわち、本発明によれば、天然のウニまたは従来のコンブを主食とするウニに対してミスチリン酸の含有量を抑えたウニを飼育または養殖することができる。また、ウニの餌となるマメ科の植物は、入手が容易で経済的負担も少なくて済むものであり、ウニを効率的に飼育または養殖することができる。
【0030】
また、この場合、前記ウニの飼育または養殖方法において、マメ科の植物の給餌は、ウニの可食部に含まれるオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸(DHA)のうちの少なくとも一つの含有量が天然のウニの可食部に含まれるそれぞれに対応するオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量を超えるまで行なうことができる。
【0031】
これによれば、ウニの飼育または養殖方法は、ウニにマメ科の植物を給餌することでウニの可食部に含まれるオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸(DHA)のうちの少なくとも一つを天然のウニの可食部におけるオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量を超える含有量に調整することができる。すなわち、本発明によれば、天然のウニに対してオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸(DHA)のうちの少なくとも一つが豊富に含まれたウニを飼育または養殖することができる。
【0032】
また、本発明は、ウニの飼育または養殖方法の発明として実施できるばかりでなく、ウニ用飼料またはウニの発明としてもそれぞれ実施できるものである。
【0033】
具体的には、ウニ用飼料は、ウニを飼育または養殖するためのウニ用飼料であって、マメ科の植物における葉に茎が繋がった種子を有さない非種子部で構成されているとよい。
【0034】
また、この場合、ウニ用飼料において、非種子部は、複数の茎を含んでいるとともに、これらの各茎が束ねられているとよい。
【0035】
また、ウニは、飼育または養殖されたウニであって、ウニの可食部に含まれるオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸(DHA)のうちの少なくとも一つの含有量が天然ウニの可食部に含まれるそれぞれに対応するオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量を超えるようにするとよい。
【0036】
また、ウニは、飼育または養殖されたウニであって、ウニの可食部に含まれるオレイン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)のうちの少なくとも一つの含有量がコンブを主食として育成したウニの可食部に含まれるそれぞれに対応するオレイン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量を超えるようにするとよい。
【0037】
また、ウニは、飼育または養殖されたウニであって、ウニの可食部に含まれる全脂肪酸のうちのα-リノレン酸の含有率が2%以上、または同全脂肪酸のうちで最大の含有率となるようにするとよい。
【0038】
また、ウニは、飼育または養殖されたウニであって、ウニの可食部におけるミスチリン酸の含有量が天然のウニの可食部におけるミスチリン酸の含有量の半分を超えていないようにするとよい。
【0039】
また、ウニは、飼育または養殖されたウニであって、ウニの可食部に含まれる全脂肪酸におけるエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の各含有率が前記全脂肪酸におけるそれぞれ4%以上になるようにするとよい。
【0040】
これらのウニ用飼料またはウニの発明の場合においても、ウニの飼育または養殖方法の発明と同様の作用効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明に係るウニの飼育または養殖方法に用いられるウニ飼育システムの構成の概略を模式的に示した断面図である。
図2】ウニに給餌するクローバの外観構成の概略を示す斜視図である。
図3図2に示すクローバを複数集めて茎を束ねた状態の外観構成の概略を示す斜視図である。
図4】天然のウニ、コンブを給餌したウニ、クズを給餌したウニおよびクローバを給餌したウニの各生殖腺のLab色空間におけるa(赤色)による色調分析の結果を示しており、縦軸はa(赤色)の範囲を示しており、横軸は天然のウニ、コンブを給餌したウニ、クズを給餌したウニおよびクローバを給餌したウニをそれぞれ示している。
図5】天然のウニ、コンブを給餌したウニ、クズを給餌したウニおよびクローバを給餌したウニの各生殖腺のLab色空間におけるb(黄色)による色調分析の結果を示しており、縦軸はb(黄色)の範囲を示しており、横軸は天然のウニ、コンブを給餌したウニ、クズを給餌したウニおよびクローバを給餌したウニをそれぞれ示している。
図6】天然のウニ、コンブを給餌したウニ、クズを給餌したウニおよびクローバを給餌したウニの各可食部(生殖腺)における主な脂肪酸成分を分析した結果を示しており、縦軸は全脂肪酸成分のうちの含有量(%)を示しており、横軸は全脂肪酸成分の一部(10個)の脂肪酸成分を示している。
図7図1に示すクローバ上にウニが載って接触する様子を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明に係るウニの飼育または養殖方法、ウニ用飼料および飼育または養殖されたウニの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るウニの飼育または養殖方法に用いられるウニ飼育システム100の構成の概略を模式的に示した断面図である。このウニ飼育システム100は、ウニU(例えば、ムラサキウニ、キタムラサキウニ、バフンウニ、エゾバフンウニ、アカウニを)を飼育するための設備である。
【0043】
(ウニ飼育システム100の構成)
ウニ飼育システム100は、飼育槽101を備えている。飼育槽101は、着底生活に移行した複数のウニUを飼育するための水槽であり、FRP(繊維強化樹脂)材を上方が開口するとともに所定の深さを有した平面視で長方形状の箱状に形成されている。この飼育槽101の平面的な大きさや深さは特に限定されないが、本実施形態においては、縦が2m、横が3m、高さが1.5mに形成されており、飼育槽101内に約1mの深さで飼育水Wが満たされている。また、飼育槽101は、本実施形態においては、陸上の建屋の中に設置されている。
【0044】
この飼育槽101の内壁面は、飼育槽101内のウニUを視認し易くするために白色に着色されている。また、飼育槽101には、長手方向の一方(図示右側)の端部側には、取水管102が設けられているとともに、他方(図示左側)の端部には給水管105がそれぞれ設けられている。
【0045】
取水管102は、飼育槽101内の飼育水Wの一部を吸引して浄化槽103に導くための配管であり、飼育槽101の底部付近に設けられている。浄化槽103は、取水管102によって取り込まれた飼育水Wをろ過および殺菌して浄化する機械装置である。この浄化槽103によって浄化された飼育水Wは、送水ポンプ104によって給水管105を介して飼育槽101に戻される。
【0046】
また、このウニ飼育システム100には、飼育槽101内の飼育水Wの水位を一定に保つ排水管、飼育槽101および浄化槽103にそれぞれ酸素を供給するエアレーション設備、飼育水Wの温度を一定に保つ加温冷却装置、飼育水Wの塩分、pH(ペーハ)、温度およびアンモニア濃度を検出する機器などウニUを飼育するために一般的に必要な他の設備を備えている(図示せず)。しかし、これらの各設備については、本発明に直接関わらないため、その説明は省略する。
【0047】
(ウニUの飼育または養殖)
次に、このように構成されたウニ飼育システム100を用いたウニUの飼育または養殖方法について説明する。まず、ウニUを飼育する飼育者は、飼育槽101内を飼育水Wで満たして浄化槽103および送水ポンプ104をそれぞれ作動させて飼育槽101内における飼育環境(水質、水温および塩分など)をウニUを飼育可能な環境に整える。このウニUの飼育環境は、ウニUを飼育するための一般的な公知の飼育環境でよい。
【0048】
次に、飼育者は、飼育槽101内にウニUを入れる。この場合、飼育者は、人工孵化させた稚ウニおよび/または天然海域で漁獲したウニUを単数匹または複数匹飼育槽101内に入れることができる。また、飼育者は、同種のみならず種類の異なるウニUを飼育槽101内に入れることもできる。
【0049】
次に、飼育者は、飼育槽101内のウニUに給餌する。具体的には、飼育者は、シロツメクサまたはアカツメクサからなるクローバCの葉および茎をそれぞれ摘んでくる。この場合、飼育者は、クローバCを花または種子も含めて摘んできてもよいが、花および種子は飼育槽101内で沈降し難いため、葉および/または茎を摘んでくるとよい。また、この場合、飼育者は、クローバCの葉と茎とをそれぞれ単体で摘んできてもよいが、図2に示すように、茎に葉が繋がった状態でクローバCを摘んでくるとよい。
【0050】
次いで、飼育者は、茎に葉のみが繋がった花を有さない状態のクローバCを飼育槽101内に投入する。この場合、飼育者は、図3に示すように、複数のクローバCを束ねた状態で飼育槽101内に投入して給餌するとよい。この場合、飼育者は、複数のクローバCを樹脂製のバンドで縛ってもよいが、クローバCの茎または他の植物の茎または蔓など自然素材を利用して複数のクローバCを縛るとよい。なお、クローバCは、摘んで間もない新鮮なものがよいが緑色を保っていれば萎れていても乾燥していてもよい。また、クローバCは、飼育者自身が摘んできてもよいが、他者から購入してきてもよいことは当然である。
【0051】
飼育槽101内に投入されたクローバCは、当初は水面付近に浮いているが時間の経過とともに水分を含んで沈降する(図1参照)。この場合、クローバCは、複数のクローバCが束ねられているため葉および茎を単体で給餌した場合に比べて飼育槽101内に散らばることなく速やかに沈降する。これにより、飼育槽101内のウニUは、飼育槽101の底部に沈降したクローバCを摂食する。飼育者は、ウニUの摂食量を見ながら給餌したクローバCが食べ尽くされる前後に新たなクローバCを給餌する。
【0052】
ここで、本発明者らによる飼育実験の結果について説明する。本発明者らは、1つの飼育槽101内に3つの籠(図示せず)を浸漬して、1つ目の籠にエゾバフンウニの成体からなるウニUY1を25匹入れてコンブ(乾燥コンブを水戻ししたもの)のみを給餌して飼育し、2つ目の籠にエゾバフンウニの成体からなるウニUY2を入れてクローバC(シロツメクサ)のみを給餌して飼育し、3つの籠にキタムラサキウニの成体からなるウニUY3を25匹入れてクズ(生葉)のみを給餌して飼育した。この場合、クズの葉は、茎(蔓)を有さない葉単体で給餌した。本発明者らは、各ウニUを同時期の7か月間飼育した後、各ウニUの可食部となる生殖腺の色調分析および脂肪酸の成分分析を行った。
【0053】
図4および図5は、天然のウニU、ウニUY1、ウニUY2およびウニUY3の各生殖腺のLab色空間による各色調分析の結果を示している。図4および図5から明らかなように、ウニUY2およびウニUY3は、ウニの可食部の色として重要であるa(赤色方向)およびb(黄色方向)の両方でコンブを給餌して飼育したウニUY1に対して天然ウニUの色調に近い色調を得ることができる。特に、クローバC(シロツメクサ)のみを給餌して飼育したウニUY2は、天然ウニUの色調と略同等の色調を得ることができる。
【0054】
図6は、天然のウニU、ウニUY1、ウニUY2およびウニUY3の各生殖腺の主な脂肪酸の成分分析結果を示している。ここで、主な脂肪酸とは、(14:0)ミスチリン酸、(16:0)パルミチン酸、(16:1)パルミトレイン酸、(18:0)ステアリン酸、(18:1ω9)オレイン酸、(18:1ω7)パクセン酸、(18:2ω6)リノール酸、(18:3ω3)α-リノレン酸、(20:5)エイコサペンタエン酸(EPA)および(22:6ω3)ドコサヘキサエン酸(DHA)である。なお、天然ウニUにおける各脂肪酸は、文部科学省が公表している日本食品標準成分表2015年版(七訂)の記載から引用している。
【0055】
図6から明らかなように、ウニUY2およびウニUY3は、天然ウニUに対してオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびDHAが高い割合でそれぞれ含有されている。この場合、ウニUY2およびウニUY3は、天然ウニUには含まれていないオレイン酸を含有することができる。また、ウニUY2およびウニUY3は、α-リノレン酸およびDHAについても2%を超える含有率となっているとともに、α-リノレン酸については脂肪酸の構成成分の中で最大の含有率となっている。すなわち、ウニUY2およびウニUY3は、天然ウニUに対して人体に対して有益とされている不飽和脂肪酸を高含有率で含んでいる。
【0056】
また、ウニUY2およびウニUY3は、コンブを給餌して飼育した従来の養殖手法によるウニUY1に対してオレイン酸、α-リノレン酸、EPAおよびDHAがそれぞれ高い割合で含有されている。この場合、ウニUY2およびウニUY3は、EPAおよびDHAの各含有率が全脂肪酸におけるそれぞれ4%以上で含有している。すなわち、ウニUY2およびウニUY3は、従来の養殖手法によるウニUY1に対して人体に対して有益とされている不飽和脂肪酸を高含有率で含んでいる。
【0057】
また、ウニUY2およびウニUY3は、天然ウニUに対してミスチリン酸の含有量が半分未満で含有されている。すなわち、ウニUY2およびウニUY3は、天然ウニUに対して過剰摂取によって生活習慣病を促進させるとされるミスチリン酸を半分未満の含有率に抑えることができる。
【0058】
なお、ウニUY2およびウニUY3の飼育期間に対するウニUの成長率および歩留まりは、コンブを給餌した従来の養殖手法によるウニUY1に対して略同じでウニUの成長率および歩留まりに関する優位性は確認できなかった。
【0059】
以上の実施結果から、以下示す種々の給餌期間がある。すなわち、飼育者は、飼育槽101内のウニUに対して可食部に含まれるオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸(DHA)のうちの少なくとも一つの含有量が天然ウニUの可食部に含まれるそれぞれに対応するオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびDHAの含有量を超えるまでクローバCの給餌を行なうことができる。
【0060】
また、飼育者は、飼育槽101内のウニUに対して可食部に含まれるオレイン酸、α-リノレン酸、EPAおよびDHAのうちの少なくとも一つの含有量がコンブを給餌されて育成されたウニUY1の可食部に含まれるそれぞれに対応するオレイン酸、α-リノレン酸、EPAおよびDHAの含有量を超えるまでクローバCの給餌を行なうこともできる。
【0061】
また、飼育者は、飼育槽101内のウニUに対して可食部に含まれる全脂肪酸のうちのα-リノレン酸の含有率が2%以上、または同全脂肪酸のうちで最大の含有率になるまでクローバCの給餌を行なうこともできる。
【0062】
また、飼育者は、飼育槽101内のウニUに対して可食部に含まれるEPAおよびDHAの各含有率が全脂肪酸におけるそれぞれ4%以上になるまでクローバCの給餌を行なうこともできる。
【0063】
また、飼育者は、飼育槽101内のウニUに対して可食部に含まれるミスチリン酸の含有量が天然ウニUの可食部に含まれるミスチリン酸の含有量の半分を超えない範囲でクローバCの給餌を行なうこともできる。
【0064】
このミスチリン酸の含有量の半分を超えない範囲でクローバCの給餌を行なう場合、飼育者は、飼育槽101内のウニUに対して可食部に含まれるオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸(DHA)のうちの少なくとも一つの含有量が天然ウニUの可食部に含まれるそれぞれに対応するオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびDHAの含有量を超えるまでクローバCの給餌を行なうこともできる。
【0065】
これらの場合、飼育者は、適当な期間ごとにウニUの可食部における脂肪酸の組成成分を分析することで必要な種類の脂肪酸が所定の量に達した否かを確認して飼育槽101からウニUを水揚げ(収穫)することができる。また、飼育者は、各給餌方法における必要な飼育期間および/または必要な給餌量を予め実験を行って把握しておくことで所定期間の経過および/または所定量の給餌を行うことで飼育槽101からウニUを水揚げするタイミングを特定することができる。
【0066】
なお、本実施形態においては、飼育者は、飼育槽101内のウニUに対して可食部に含まれるオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびDHAの全ての各含有量が天然ウニUの可食部に含まれるそれぞれに対応するオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびDHAの含有量を超えるまでクローバCの給餌を行なう。
【0067】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ウニの飼育または養殖方法によれば、人体に対して有益な機能性に富むウニUを飼育または養殖することができる。また、上記実施形態によれば、身近に自生するクローバCを餌としているため、入手が容易で経済的負担も少なくて済むものであり、ウニUを効率的に飼育または養殖することができる。
【0068】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態においては、飼育者は、飼育槽101内のウニUに対してクローバCを給餌した。しかし、飼育者は、飼育槽101内のウニUに対してマメ科の植物を広く給餌することができる。例えば、飼育者は、ソラマメ属(クサフジ、ナヨクサフジ、ソラマメ、スズメノエンドウ)、ササゲ属(ササゲ、アズキ、ヤブヅルアズキ)、ヌスビトハギ属(アレチヌスビトハギ、ヌスビトハギ)、シャジクソウ属(シャジクソウ、シロクローバ-(シロツメクサ)、アカクローバー(アカツメクサ)、コメツブツメクサ、ベニバナツメクサ、アルファルファ)、ウマゴヤシ属(コメツブウマゴヤシ、ムラサキウマゴヤシ)、クズ属(クズ、タイワンクズ)Pisum属(エンドウ)、レンリンソウ属(イタチササゲ)、その他の属(ホドマメ、レンゲ、ノササゲ、カワラケツメイ、クサネム、ツルマメ、ダイズ、エコハギ、ルビナス、クロタラリア)を給餌することができる。
【0070】
この場合、飼育者は、ダイズおよびエンドウなどの豆、すなわち種子をウニUに給餌してもよいが、マメ科の植物における葉、茎および莢のうちの少なくとも一つからなり種子を含まない非種子部を給餌することで入手が容易で経済的負担も少なくて済むものであり、ウニを効率的に飼育または養殖することができる。
【0071】
また、飼育者は、ウニUに非種子部を給餌する場合、葉、茎および莢を単体で給餌してもよいが、茎に葉が繋がった状態で給餌するとよい。本発明者らの飼育実験によれば、茎に葉が繋がった状態で給餌することで、非種子部の沈降を早めることができるとともに、非種子部が水面上または沈降した際に浮遊して濾過装置に詰まることを抑制できる。また、本発明者らの飼育実験によれば、図7に示すように、ウニUは沈降した非種子部の茎部分に載って非種子部を押えて葉を摂食する傾向が確認され、ウニUにとって浮遊し易い葉に茎が繋がっていることは食べ易い形態であると思われる。
【0072】
また、この場合、飼育者は、茎に葉が繋がった非種子部を1本ずつ単体で給餌してもよいが、複数の茎を束ねた状態で給餌することで、非種子部の沈降を早めることができるとともに非種子部の水中での移動および葉および茎が水中に分散することを防止することができる。また、飼育者は、非種子部を束ねて給餌することで葉および茎を単体で分散して給餌する場合に比べてウニUの摂食量を一見して容易に把握することができる。また、飼育者は、マメ科の植物の葉、茎、種子および莢のうちの少なくとも一つを複数集めて圧縮してブロック状に形成して給餌するようにしてもよい。
【0073】
また、上記実施形態においては、飼育者は、ウニUに対してクローバCのみを給餌して飼育した。しかし、飼育者は、ウニUに対してクローバCに加えて他のマメ科の植物、例えば、アルファルファ、ダイズ、エンドウまたはクズなどを給餌してもよい。また、飼育者は、ウニUに対してクローバCに加えてマメ科の植物以外の餌、例えば、マメ科の植物以外の野菜または陸上植物、コンブ、アカモクまたはアマモなどの海藻または海草を給餌してもよい。この場合、飼育者は、ウニUに対してマメ科の植物を主食としてマメ科以外の植物を給餌する。ここで、主食とは、ウニUに給餌した餌の総量中(重量%)でマメ科の植物が80%以上を占めることをいう。
【0074】
また、上記実施形態においては、飼育者は、エゾバフンウニにマメ科の植物を給餌して飼育した。しかし、飼育者は、エゾバフンウニ以外のウニ、例えば、ムラサキウニ、キタムラサキウニ、バフンウニまたはアカウニに植物を給餌して飼育してもよい。この場合、飼育者は、人工孵化させたウニU(着底生活に移行した稚ウニを含む)に給餌してもよいし、天然海域から漁獲したウニUに給餌してもよい。特に、磯焼けした海域で漁獲したウニは可食部が少なく身入りが悪いため、本発明による手法で飼育することで可食部を肥大化させて身入りをよくすることができる。
【0075】
また、上記実施形態においては、ウニ飼育システム100は、飼育槽101を水槽で構成した。しかし、飼育槽101は、海上に設置した生簀で構成することもできる。例えば、ウニ飼育システムは、ウニUを収容する籠(図示せず)を海中に設置して構成することができる。この場合、飼育者は、ウニUを収容する籠内に定期的にクローバなどのマメ科の植物を給餌する。
【0076】
また、上記実施形態においては、ウニ飼育システム100を用いたウニUの育成は、ウニUを最終的に食料として消費しない飼育を行った。しかし、ウニの育成は、ウニUを最終的に食料または食材として消費する養殖として行うこともできる。また、ウニの育成は、飼育または養殖のための運搬時にも適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
U…ウニ、
100…ウニ飼育システム、101…飼育槽、102…取水管、103…浄化槽、104…送水ポンプ、105…給水管。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7