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7249036ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物を含有する抗アレルギー剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物を含有する抗アレルギー剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/258 20060101AFI20230323BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230323BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230323BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230323BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20230323BHJP
   A23K 20/28 20160101ALI20230323BHJP
   A23K 20/22 20160101ALI20230323BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230323BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20230323BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
A61K36/258
A61K47/02
A61K31/704
A61P37/08
A61P17/00
A23L33/105
A23K10/30
A23K20/28
A23K20/22
A61K8/9789
A61K8/25
A61Q19/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019547555
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2018038382
(87)【国際公開番号】W WO2019074131
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2017199974
(32)【優先日】2017-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516325626
【氏名又は名称】株式会社パークフォレスト
(74)【代理人】
【識別番号】100183461
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】パク チョンホ
(72)【発明者】
【氏名】堤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】堤 保夫
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105168285(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0130230(US,A1)
【文献】特開2017-029046(JP,A)
【文献】特開2014-015462(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105997842(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0017318(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第101984783(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102701880(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105943566(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0243155(US,A1)
【文献】特開2013-241405(JP,A)
【文献】myfirstblog's diary,2015年,pp.1-9,インターネッ ト:<URL: http://myfirstblog.hateblo.jp>
【文献】わかさ,2013年,pp.130-139,インターネット:<URL: http://www.apa-corp.jp/pdf/WAKASA201311.pdf>
【文献】Journal of Ginseng Research,2016年02月19日,Vol.41,No.2,pp.134-143
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-31/80
A61P 17/00
A61P 37/08
A23L 33/105
A23K 10/30
A23K 20/28
A23K 20/22
A61K 8/00-8/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物を含有する抗アレルギー剤であって、前記高麗人蔘抽出物が、ケイ酸塩肥料を用いて水耕栽培された高麗人蔘の抽出物である、抗アレルギー剤
【請求項2】
前記ケイ酸塩が、ケイ酸アルカリ金属塩又はその水和物である、請求項1に記載の抗アレルギー剤。
【請求項3】
前記ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム10水和物である、請求項1又は2に記載の抗アレルギー剤。
【請求項4】
アトピー性皮膚炎の症状の予防、抑制、軽減及び/又は治療を目的とする、請求項1~の何れか一項に記載の抗アレルギー剤。
【請求項5】
経口的に投与されることを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の抗アレルギー剤。
【請求項6】
経皮的に投与されることを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の抗アレルギー剤。
【請求項7】
前記高麗人蔘抽出物が、ジンセノサイドF1、ジンセノサイドF2、ジンセノサイドF5、ジンセノサイドRb1、ジンセノサイドRb2、ジンセノサイドRc、ジンセノサイドRd、ジンセノサイドRe、ジンセノサイドRf、ジンセノサイドRg1、ジンセノサイドRg2(S)、ジンセノサイドRh1(S)、及びジンセノサイドRh1(R)からなる群より選ばれる少なくとも1種のジンセノサイドを含有する、請求項1~の何れか一項に記載の抗アレルギー剤。
【請求項8】
前記請求項1~の何れか一項に記載の抗アレルギー剤を含有する飲食品組成物。
【請求項9】
前記請求項1~の何れか一項に記載の抗アレルギー剤を含有する飼料組成物。
【請求項10】
前記請求項1~の何れか一項に記載の抗アレルギー剤を含有する化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物を含有する抗アレルギー剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患は、近年、乳幼児だけでなく、大人にも増加しており、深刻な社会問題となってきている。アトピー性皮膚炎になる原因は、様々で、遺伝による要因だけでなく、食生活の欧米化、生活環境の変化、住宅構造の密閉化、ストレスの増大等により体質そのものが変化していることによるとも言われている。
【0003】
そこで、これまでにも、多くの抗アレルギー剤が開発されてきているが、特に、副作用が少ないことから天然物由来の物質からの探索が試みられており、中でも高麗人蔘がアトピー性皮膚炎に効果があるとの報告がある(特許文献1)。
【0004】
高麗人蔘には、ジンセノサイド(Ginsenoside)と呼ばれる人蔘サポニン群が含まれており、抗酸化作用、血圧促進作用、抗炎症作用等の様々な働きがあることが知られている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、アレルギー症状の予防又は治療に対しては、その効果は十分でなく、アレルギー症状をさらに抑制できる薬剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2010-528109号公報
【文献】特開2014-015462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、副作用が小さく、かつ、アレルギー症状の抑制効果が高い高麗人蔘抽出物を含有する抗アレルギー剤の提供を課題としている。
また、本発明は、副作用が少なく、かつ、安全性が高い抗アレルギー性の飲食品組成物、飼料組成物、及び化粧料組成物の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、高麗人参にケイ酸塩を加えること、特にケイ酸塩水溶液で抽出された高麗人蔘抽出物を用いることによって、アレルギー症状を緩和できることを見出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記に示す抗アレルギー剤、医薬品組成物、飲食品組成物、飼料組成物、化粧料組成物等に関する。
項1.
高麗人蔘及びケイ酸塩を含有する抗アレルギー剤。
項2.
ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物を含有する抗アレルギー剤。
項3.
前記ケイ酸塩が、ケイ酸アルカリ金属塩又はその水和物である、項1又は2に記載の抗アレルギー剤。
項4.
前記ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム10水和物である、項1~3の何れか一項に記載の抗アレルギー剤。
項5.
アトピー性皮膚炎の症状の予防、抑制、軽減及び/又は治療を目的とする、項1~4の何れか一項に記載の抗アレルギー剤。
項6.
経口的に投与されることを特徴とする、項1~5の何れか一項に記載の抗アレルギー剤。項7.
経皮的に投与されることを特徴とする、項1~5の何れか一項に記載の抗アレルギー剤。項8.
前記高麗人蔘抽出物が、ジンセノサイドF1、ジンセノサイドF2、ジンセノサイドF5、ジンセノサイドRb1、ジンセノサイドRb2、ジンセノサイドRc、ジンセノサイドRd、ジンセノサイドRe、ジンセノサイドRf、ジンセノサイドRg1、ジンセノサイドRg2(S)、ジンセノサイドRh1(S)、及びジンセノサイドRh1(R)からなる群より選ばれる少なくとも1種のジンセノサイドを含有する、項1~6の何れか一項に記載の抗アレルギー剤。
項9.
前記高麗人蔘抽出物が、ケイ酸塩肥料を用いて栽培された高麗人蔘の抽出物である、項1~8の何れか一項に記載の抗アレルギー剤。
項10.
前項の何れか一項に記載の抗アレルギー剤を含有する医薬品組成物。
項11.
前項の何れか一項に記載の抗アレルギー剤を含有する抗アレルギー性医薬品組成物。
項12.
前項の何れか一項に記載の抗アレルギー剤を含有する飲食品組成物。
項13.
前項の何れか一項に記載の抗アレルギー剤を含有する抗アレルギー性飲食品組成物。
項14.
前項の何れか一項に記載の抗アレルギー剤を含有する飼料組成物。
項15.
前項の何れか一項に記載の抗アレルギー剤を含有する抗アレルギー性飼料組成物。
項16.
前項の何れか一項に記載の抗アレルギー剤を含有する化粧料組成物。
項17.
前項の何れか一項に記載の抗アレルギー剤を含有する抗アレルギー性化粧料組成物。
項18.
ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物を含有するIL-4産生抑制剤。
項19.
ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物を含有するIL-6産生抑制剤。
項20.
ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物を含有するTNFα産生抑制剤。
項21.
ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物を含有するINFγ産生抑制剤。
項22.
ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物を含有するIgE産生抑制剤。
項23.
ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物を含有するサイトカイン産生抑制剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アレルギー症状の抑制に優れた効果を発揮できる抗アレルギー剤を提供することができる。
また、本発明によれば、副作用が少なく、かつ、安全性が高い抗アレルギー性の食品組成物、飼料組成物、及び化粧料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、高麗人蔘用肥料(参考例1及び2)で栽培された実施例1の高麗人蔘(25日目)、及び従来の栽培方法によって得られた比較例1の高麗人蔘の比較写真である。実施例1の高麗人参の茎Aは、比較例1の高麗人参の茎Bに比べて、太くて、短いことが特徴である。
図2図2は、比較例1の肥料で各栽培期間(50日後、70日後、90日後、及び115日後)で栽培された後の高麗人蔘の写真である。
図3図3は、実施例1で記載した高麗人参を栽培するための高麗人蔘用肥料(参考例1)で25日間栽培された後の高麗人蔘の写真である。
図4図4は、実施例1で記載した高麗人参を栽培するための栽培システム(隔離ベッド土耕栽培)の模式図である。
図5図5は、実施例1で記載した高麗人参を栽培するための栽培システム(超音波噴霧手段を採用した栽培)の模式図である。
図6図6は、実施例1で記載した高麗人参を栽培するための栽培システム(LED光照射手段及び超音波噴霧手段を採用した栽培)の模式図である。
図7図7は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1)と比較例1のケイ素水について、皮膚症状の重症度をそれぞれ示したグラフである。
図8図8は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1)、比較例1のケイ素水及び生理食塩水(コントロール)について、血清IgE濃度をそれぞれ示したグラフである。
図9図9は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1)、比較例1のケイ素水及び生理食塩水(コントロール)を用いて試験した結果について、炎症性サイトカインINFγの濃度をそれぞれ示したグラフである。
図10図10は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1)、比較例1のケイ素水及び生理食塩水(コントロール)を用いて試験した結果について、炎症性サイトカインIL-4の濃度をそれぞれ示したグラフである。
図11図11は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1)、比較例2のジンセノサイドF2及び生理食塩水(コントロール)を用いて試験した結果について、マウスの耳の細胞組織をそれぞれ染色した写真である。
図12図12は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1)、比較例2のジンセノサイドF2及び生理食塩水(コントロール)を用いて試験した結果について、血清IgE濃度を示したグラフである。
図13図13は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1)、及び比較抽出物A~C(実施例3~5)について、臨床スコアを示したグラフである。
図14図14は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1)、及び比較抽出物A~C(実施例3~5)を用いて試験した結果について、血清IgE濃度を示したグラフである。
図15図15は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1)、及び比較抽出物A~C(実施例3~5)を用いて試験した結果について、血清INFγ濃度を示したグラフである。
図16図16は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1)を成人女性に使用する前と後の腕及び手の写真(図16a~16f)である。
図17図17は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1)を成人男性に使用する前と後の手の写真(図17a及び17b)である。
図18図18は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1)を成人男性に使用する前と後の顔の写真(図18a~18e)である。
図19図19は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1、6及び7)及び比較例3の供試液のTNFα刺激の有無による、細胞培養液中のサイトカインIL-6濃度をELISAにて測定した結果である。
図20図20は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1、6及び7)及び比較例3の供試液のTNFα刺激の有無による、IL-6遺伝子発現量、リアルタイムPCRにて測定した結果である。
図21図21は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1、6及び7)及び比較例3の供試液のTNFα刺激の有無による、TNFα遺伝子発現量、リアルタイムPCRにて測定した結果である。
図22図22は、本発明の抗アレルギー剤(実施例1、6及び7)及び比較例4の供試液のマウス対するアトピー性皮膚炎の残存率の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の抗アレルギー剤、医薬組成物、飲食品組成物、飼料組成物、化粧料組成物等について詳細に説明する。
【0013】
<抗アレルギー剤>
本発明の抗アレルギー剤は、高麗人蔘及びケイ酸塩を含有する。また、本発明の抗アレルギー剤は、ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物を有効成分として含有する。ここで、「ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物」とは、高麗人参を、ケイ酸塩を含む溶液又はケイ酸塩のみで抽出して得られた抽出液(又は抽出物)を意味する。当該ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物は、ケイ素水抽出による高麗人蔘エキス(以下、「高麗人参エキス」ということもある)、ケイ酸塩で抽出された高麗人蔘抽出物、高麗人蔘のケイ酸塩抽出物、高麗人参ケイ素抽出物、又は本発明の高麗人蔘抽出物と言い換えることができる。
【0014】
また、上記高麗人蔘及びケイ酸塩を含有する抗アレルギー剤には、ケイ酸塩で抽出する前の高麗人参(例えば、高麗人参の粉末)とケイ酸とを含有する組成物だけでなく、高麗人参抽出物(例えば、高麗人参を水で抽出した抽出物)とケイ素とを含有する組成物も包含される。なお、本発明の抗アレルギー剤は、抗アレルギー性組成物、抗アレルギー性医薬品、又は抗アレルギー性医薬組成物と言い換えることができる。
【0015】
ケイ酸塩
ケイ酸塩としては、特に限定はなく、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩又はその水和物;ケイ酸アルカリ土類金属塩又はその水和物等が挙げられる。中でも、ケイ酸塩としては、水溶性のケイ酸塩(水溶性ケイ素という場合もある。)が好ましく、ケイ酸アルカリ金属塩又はその水和物がより好ましく、ケイ酸アルカリ金属塩の水和物がさらに好ましい。
【0016】
ケイ酸アルカリ金属塩としては、無水物であれば特に限定はなく、例えば、Na2SiO3、Na4SiO4、Na2Si2O5、Na2Si4O9等のケイ酸ナトリウム;K2SiO3、K4SiO4、K2Si2O5, K2Si4O9等のケイ酸カリウム等の式:m(M2O)・n(SiO2)(式中のm、nは正の整数を表し、Mはアルカリ金属原子を示す。)が挙げられる。
【0017】
ケイ酸アルカリ金属塩の水和物としては、その水和物の数に限定はなく、上記ケイ酸アルカリ金属塩の1水和物、2水和物、3水和物、4水和物、5水和物、6水和物、7水和物、8水和物、9水和物、10水和物、11水和物等が挙げられる。中でも、ケイ酸ナトリウム10水和物(Na2SiO3・10H2O)が好ましい。
【0018】
Na2SiO3・10H2Oは、市販品を、又は例えば、水晶(石英)を高温(約1,650℃以上)で8時間以上かけて燃焼溶解させ、不要な成分を分解処理した結晶(KR10-0361045又はKR10-415594に記載の方法で得られた結晶)を用いることができる。
【0019】
ケイ酸アルカリ土類金属塩としては、無水物であれば特に限定はなく、例えば、式:2CaO・xSiO2(式中、1<x<2である。)等のケイ酸カルシウムなどが挙げられる。
【0020】
ケイ酸アルカリ土類金属塩の水和物としては、その水和物の数に限定はなく、上記ケイ酸アルカリ金属塩の1水和物、2水和物、3水和物、4水和物、5水和物、6水和物、7水和物、8水和物、9水和物、10水和物、11水和物等が挙げられる。
【0021】
ケイ酸塩は、一種単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
【0022】
ケイ酸塩は、固体(結晶、顆粒、粉末等)の形態で用いることができ、又は、該固体を、例えば、水、エタノール等の溶媒で溶解した溶液(又は水溶液)を用いることができる。
【0023】
該溶液の濃度としては、特に限定はなく、例えば、0.001~20000ppmの範囲が挙げられる。具体的には、固体のケイ酸塩を水で溶解し、濃縮溶液タイプ(例えば、5000ppm~20000ppm)を製造し、該濃縮溶液を水等で適宜希釈して用いることができる。
【0024】
高麗人蔘
高麗人蔘は、ウコギ科トチバニンジン属の多年草植物であり、薬用又は食用に用いられ、チョウセンニンジン(朝鮮人蔘)、コウライニンジン(高麗人蔘)とも呼ばれる。高麗人蔘の種類としては、特に限定はなく、例えば、花旗参(米国参)、田七参(中国参)、竹節人蔘(日本参)等が挙げられる。また、これら高麗人蔘は、通常の乾燥工程により、白参、紅参、黒参等の加工物を製造することができる。
【0025】
高麗人蔘は、そのまま、又は高麗人蔘の処理物を用いることができる。処理としては、破砕処理、粉砕処理、加熱処理、乾燥処理、抽出処理、圧力処理、酵素処理、分解処理(例えば、加水分解処理)、それらの組み合わせ等が挙げられる。
【0026】
抽出方法
本発明の抗アレルギー剤は、高麗人蔘を、ケイ酸塩を用いて抽出された抽出物を有効成分として用いる。ケイ酸塩を用いて抽出を行うと、簡便に本発明の効果を高めることができる。このように本発明の抗アレルギー剤は、簡便に調製することができるうえ、効果が高いため、経済的にも優れている。
【0027】
本発明に用いられる高麗人蔘のケイ酸塩抽出物の製造方法について詳細に説明する。抽出に用いられる高麗人蔘の部位としては、特に限定はなく、例えば、葉、茎、根等を用いることができる。本発明の高麗人蔘のケイ酸塩抽出物は、高麗人蔘の上記部位の全て(葉、茎、及び根)又は一部を用いて抽出することができる。中でも、製造が簡便である点、又は多くの種類の有効成分を含む点で、高麗人蔘の上記部位全体をまるごと抽出することが好ましい。また、抗アレルギー剤としての有効成分を多く含んでいる点で、高麗人蔘の部位のうち葉のみを抽出することもできる。
【0028】
抽出方法としては、特に限定はなく、例えば、高麗人蔘又はその各部位をそのまま、あるいは切断又は粉砕したもの、乾燥したもの、乾燥後粉砕したもの、圧搾抽出した搾汁等を、ケイ酸塩を溶解した溶媒中に浸漬、攪拌、加熱等を組み合わせた抽出方法;超臨界流体抽出法等が挙げられる。
【0029】
ケイ酸塩を溶解する溶媒としては、一般に抽出物を得る際に用いる溶媒であれば特に限定はなく、例えば、水;エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール等の低級アルコール系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル等のエステル系溶媒等の有機溶媒が挙げられる。溶媒は、これらを単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。組み合わせる場合、複数の溶媒の混合物を用いて抽出操作を行う、又は、異なる溶媒で順番に多段階で抽出操作を行うことができる。上記有機溶媒を用いる場合は、必要に応じて、抽出後の抽出液(抽出物)を蒸留、エバポレーター等で有機溶媒を取り除いて濃縮(又は凝縮)することで、固体化又は液体濃縮化することができる。当該固定化又は濃縮化した後に、上記水、エタノール等で溶液化又は希釈化することができる。抽出物を製造するための溶媒としては、中でも、操作性、安全性及び環境性の点から、水、エタノールを用いるのが好ましく、水が特に好ましい。本発明においては、ケイ酸塩水溶液を用いることで、高麗人蔘の抽出物の量を増加させ、抽出速度を大幅に向上させることができる。
【0030】
抽出する際の溶媒の量としては、特に限定はなく、例えば、高麗人蔘100質量部に対して、1~10000質量部であり、好ましくは、5~1000質量部であり、より好ましくは10~500質量部である。
【0031】
ケイ酸塩の水溶液を用いる場合、ケイ酸塩の濃度としては、特に限定はなく、例えば、0.1ppm~200000ppmであり、好ましくは1ppm~100000ppmであり、より好ましくは10~50000ppmである。
【0032】
ケイ酸塩の量としては、特に限定はなく、例えば、高麗人蔘100質量部に対して、1~10000質量部であり、好ましくは、50~1000質量部であり、より好ましくは100~500質量部である。
【0033】
抽出する際に、加熱、又は加圧・加熱して抽出することができる。加圧する場合、その圧力としては、特に限定はなく、例えば、通常1.01~5MPaの範囲で選ばれる。加熱する場合、その温度としては、室温以上であればよく、60℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。
【0034】
抽出時間としては、特に限定はなく、例えば、通常1~24時間、好ましくは2~18時間、より好ましくは3~12時間の範囲である。
【0035】
次いで、抽出物及び残渣を含む混合物を、必要に応じて濾過又は遠心分離等に供し、残渣である固形成分を除去して抽出物を得る。なお、除去した固形成分を再度、抽出操作に供することもでき、さらにこの操作を何回か繰り返すことができる。本発明において、上記抽出工程は、1回で行うこともできるが、2回以上に分けて抽出することもできる。2回以上の抽出を行う場合は、それぞれ異なる抽出条件を用いることもできる。
【0036】
このようにして得られた抽出物(又は抽出液)をそのまま用いてもよく、さらに必要に応じて、濃縮、凍結乾燥、スプレードライ等の方法により乾燥し、粉末化したものとして使用してもよい。
【0037】
本発明の抗アレルギー剤は、経口的摂取又は投与による使用形態でも、又は経皮適用による使用形態でも、アトピー性皮膚炎に対する予防又は治療効果を奏することができるので、例えば、飲料、食品、飼料、化粧品、医薬品等の分野で幅広く使用することができる。
【0038】
アレルギー
本発明において、アレルギー(アレルギー性疾患)としては、特に限定はなく、例えば、I型アレルギー性疾患、II型アレルギー性疾患、III型アレルギー性疾患、IV型アレルギー性疾患、V型アレルギー性疾患等が挙げられ、好ましくは、I型アレルギー性疾患及びIV型アレルギー性疾患である。前記I型アレルギー性疾患としては、特に限定はなく、例えば、具体的には、蕁麻疹、花粉症、喘息、PIE症候群、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、薬物アレルギー、アナフィラキシー等が挙げられる。IV型アレルギーとしては、アトピー性皮膚炎の他、接触性皮膚炎、甲状腺炎、アレルギー性脳炎等の炎症が挙げられる。本発明の抗アレルギー剤は、これら疾患又は症状の予防、抑制、軽減及び/又は治療に用いることができる。本発明で用いられるケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物は、抗アレルギー剤としてだけでなく、皮膚炎症抑制作用を有していることから、皮膚炎症抑制剤、又は皮膚炎症抑制組成物とすることができる。
【0039】
本発明の抗アレルギー剤は、ヒト、ヒト以外の動物、鳥類、魚類等に適用することが有用である。
【0040】
本発明の抗アレルギー剤の有効な適用量は、該剤の形態、対象者の年齢、その性別、期待される効果、使用する有効成分の種類等に応じて適宜設定される。本発明の抗アレルギー剤の有効量(乾燥重量換算)は、例えば、通常、成人(60kg)1日当たりの該剤の有効量(乾燥重量換算)として、ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物の合計量が0.001mg~100g、好ましくは0.01mg~10g、より好ましくは0.1mg~5gに相当する量が挙げられる。
【0041】
また、例えば、本発明のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤を経皮(外用)適用する場合であれば、通常、成人の適用患部1cmに対する1日当たりの該剤の有効量として、乾燥重量換算で、上記ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物の合計量が0.001mg~100g、好ましくは0.01mg~10g、より好ましくは0.1mg~5gに相当する量が挙げられる。
【0042】
1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよく、又は数回に分けて摂取してもよい。
【0043】
また、本発明の抗アレルギー剤は、医薬品又は医薬組成物、飲食品(機能性食品、特定保健用途食品、健康補助食品、栄養補助食品、病人食等が含まれる)又は飲食品組成物、飼料又は飼料組成物、化粧料又は化粧料組成物等に用いることができる。
【0044】
本発明の抗アレルギー剤を医薬組成物とする場合の剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤等の経口剤、吸入剤、坐剤等の経腸製剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等の皮膚外用剤、点滴剤、注射剤等が挙げられる。中でも、経口剤が好ましい。
【0045】
このような剤型は、有効成分である高麗人蔘の処理物に対して、一般に慣用される添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料等を剤型に応じて配合し、常法に従って製造することができる。なお、液剤、懸濁剤等の液体製剤は、服用直前に水又は他の適当な媒体に溶解若しくは懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングしてもよい。
【0046】
医薬組成物における高麗人蔘の処理物の含有量は、その剤型により異なるが、乾燥質量を基準として、通常は、0.001~99質量%、好ましくは0.01~80質量%の範囲であり、例えば、上述した成人1日当たりの摂取量を摂取できるよう、1日当たりの投与量が管理できる形にすることが望ましい。
【0047】
<飲食品組成物又は飼料組成物>
本発明の飲食品組成物又は飼料組成物において、有効成分としてのケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物の含有割合は、特に限定はされず、各種飲食品組成物又は飼料組成物の種類に応じて、適宜設定することができる。
【0048】
本発明の抗アレルギー剤を飲食品組成物又は飼料組成物に添加する場合、その形態は特に限定されず、健康食品、機能性食品、特定保健用食品等の他、本発明の抗アレルギー剤を配合できる全ての飲食品組成物、又は飼料組成物が含まれる。なお、飲食品組成物は、飲食品、飲料、飲料組成物、食品、食品組成物等と言い換えることができる。また、飼料組成物は、飼料と言い換えることができる。
【0049】
具体的には、錠剤、チュアブル錠、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤、経管経腸栄養剤等の流動食等の各種製剤形態とすることができる。製剤形態の飲食品組成物は、医薬組成物と同様に製造することができる。さらに飲食品組成物は、緑茶、ウーロン茶、紅茶等の茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、精製水等の飲料(ジュース)、バター、ジャム、ふりかけ、マーガリン等のスプレッド類、マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、牛乳、ヨーグルト、スープ又はソース類、菓子(例えば、ビスケット、クッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)等として調製してもよい。
【0050】
本発明に係る飲食品組成物としては、家畜、競走馬、鑑賞動物、鳥、養殖魚等の飼料、ペットフード等も包含する。飼料は飲食品組成物とほぼ同様の組成・形態で利用できることから、本明細書における飲食品組成物に関する記載は、飼料組成物についても同様に当てはめることができる。
【0051】
飲食品組成物には、さらに、飲料、食品又は飼料の製造に用いられる他の食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸、各種油脂、種々の添加剤(例えば呈味成分、甘味料、有機酸等の酸味料、界面活性剤、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、色素、フレーバー)等を配合して、常法に従って製造することができる。また、通常食されている飲食品に本発明の抗アレルギー剤を配合することにより、本発明に係る飲食品組成物を製造することもできる。
【0052】
本発明に係る飲食品組成物又は飼料組成物において、高麗人蔘の抽出物の処理物の含有量は、飲食品組成物又は飼料組成物の形態により異なるが、乾燥質量を基準として、通常は、0.001~50質量%、好ましくは0.05~20質量%、より好ましくは0.1~5質量%の範囲である。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。上述した、成人1日当たりの摂取量が飲食できるよう、1日当たりの摂取量が管理できる形にするのが好ましい。
【0053】
本発明の抗アレルギー剤、飲食品組成物又は飼料組成物には、公知の抗ヒスタミン物質、抗アレルギー物質、免疫調節物質を組み合わせることができる。抗ヒスタミン物質としては、茶、シソ、フキ、ポリフェノール類、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェニルピラリン、テオクル酸ジフェニルピラリン、フマル酸クレマスチン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸トリプロリジン、塩酸シプロヘプタジン、塩酸プロメタジン、酒石酸アリメマジン、ジメンヒドナート等が挙げられる。抗アレルギー物質としては、茶、甜茶、シソ、オリゴ糖、乳酸菌、アンレキサノクス、イブジラスト、クロモグリク酸ナトリウム、タザノラスト、トラニラスト、ペミロラストカリウム、レピリナスト、エバスチン、塩酸アゼラスチン、塩酸エピナスチン、塩酸オロパタジン、塩酸セチリジン、塩酸フェキソフェナジン、塩酸レボカバスチン、オキサトミド、フマル酸ケトチフェン、フマル酸エメダスチン、ペシル酸ベポタスチン、メキタジン、ロラタジン、塩酸オザグレル、セラトロダスト、ラマトロバン、ザフィルルカスト、プランルカスト水和物、モンテルカストナトリウム、トシル酸スプラタスト等が挙げられる。免疫調節物質としては、アラビノキシラン、乳酸菌、β-グルカン、ショウガ、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-21、TGF-β、GM-CSF、M-CSF、G-CSF、TNF-α、TNF-β、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、INF-α、INF-β、INF-γ等が挙げられる。
【0054】
さらに、本発明の抗アレルギー剤、飲食品組成物又は飼料組成物には、上記以外に、例えば、共役リノール酸、タウリン、グルタチオン、カルニチン、クレアチン、コエンザイムQ、グルクロン酸、グルクロノラクトン、トウガラシエキス、ショウガエキス、カカオエキス、ガラナエキス、ガルシニアエキス、テアニン、γ-アミノ酪酸、カプサイシン、カプシエイト、各種有機酸、フラボノイド類、ポリフェノール類、カテキン類、キサンチン誘導体、フラクトオリゴ糖等の難消化性オリゴ糖、ポリビニルピロリドン等を配合してもよい。
【0055】
<化粧料組成物>
本発明の化粧料組成物は、ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物を含有する。ここで、化粧料組成物は、化粧料、化粧品、化粧品組成物等と言い換えることができる。本発明において化粧品とは、薬事法の化粧品に加え、医薬部外品も包含される。本発明の化粧料組成物は、ヒトを対象としたものであってもよいし、又はヒト以外の動物、特に哺乳類を対象としたものであってもよい。
【0056】
本発明の化粧料組成物において、ケイ酸塩を用いて抽出された高麗人蔘抽出物の含有割合は、特に限定はなく、各種化粧料組成物の種類に応じて、適宜設定することができる。
【0057】
また、本発明の化粧料組成物を得る方法も、特に限定はされず、各種化粧料組成物の種類に応じた公知の製造方法において、任意の手法及びタイミングで上記有効成分を含有させるようにすればよい。
【0058】
本発明の化粧料組成物とは、特に限定はなく、例えば、化粧水、ローション、エッセンス、美容液、乳液、洗顔クリーム、クリーム化粧用、ファンデーション、口紅、ジェル、パック剤、歯磨き、整髪料、石鹸、洗剤、シャンプー、リンス等の公知の化粧品が挙げられる。
【0059】
本発明の化粧料組成物により、消費者はアレルギー反応による各種症状の恐れを気にすることなく、あるいはその恐れを軽減又は抑制して、使用することができる。
【0060】
<ケイ酸塩肥料を用いて栽培された高麗人蔘>
本発明の抗アレルギー剤、飲食品組成物、飼料組成物又は化粧料組成物には、ケイ酸塩肥料を用いて栽培された高麗人蔘を用いることができる。
【0061】
高麗人蔘は、特にジンセノサイドを含有している。ジンセノサイドとしては、ジンセノサイドF1、ジンセノサイドF2、ジンセノサイドF5、ジンセノサイドRb1、ジンセノサイドRb2、ジンセノサイドRc、ジンセノサイドRd、ジンセノサイドRe、ジンセノサイドRf、ジンセノサイドRg1、ジンセノサイドRg2(S)、ジンセノサイドRh1(S)、及びジンセノサイドRh1(R)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有している。
【0062】
ケイ酸塩肥料を用いて栽培された高麗人蔘は、少なくとも下記A)~C)
A)収穫物中に含まれるジンセノサイドF2含有量が0.1mg以上/生体重1g、
B)収穫物中に含まれるジンセノサイドRg2(S)含有量が0.05mg以上/生体重1g、C)収穫物中に含まれるジンセノサイドRf含有量が0.05mg以上/生体重1gを含有している。
【0063】
当該ケイ酸塩肥料を用いた栽培システム又は栽培方法によって、高麗人蔘中のジンセノサイドの含有量を増大させることができる。
【0064】
ジンセノサイドとは、例えば、高麗人蔘に含まれる特有のサポニン群であり、その種類は、20種類以上存在しており、抗酸化作用、血行促進作用等の各種生理活性を有することが知られている。
【0065】
ジンセノサイドとしては、例えば、プロトパナキサジオール型ジンセノサイド[例えば、Rb1、Rb2、Rc、Rd、(20R)Rg3、(20S)Rg3、Rh2]、プロトパナキサトリオール型ジンセノサイド[例えば、Re、Rf、Rg1、Rg2、Rh1]、及びオレアノール酸型ジンセノサイド[例えば、RO]に分類できる。中でも、上記の肥料、栽培システム及び栽培方法では、高麗人蔘中のジンセノサイドF1、ジンセノサイドF2、ジンセノサイドF5、ジンセノサイドRb1、ジンセノサイドRb2、ジンセノサイドRc、ジンセノサイドRd、ジンセノサイドRe、ジンセノサイドRf、ジンセノサイドRg1、ジンセノサイドRg2(S)、ジンセノサイドRh1(S)、及びジンセノサイドRh1(R)からなる群より選ばれる少なくとも1種のジンセノサイドの含有量を増大することができる。ケイ酸塩を含む肥料を添加して栽培した新芽(若芽)人蔘には、ケイ酸塩を添加しないで栽培した新芽には含まれない栄養成分(ジンセノサイドRf、Rg2s、F2等)が含まれる。例えば、ジンセノサイドF2は、アトピー性皮膚炎を予防又は治療できる効果等の生理活性が近年注目されている成分である(特許文献2)。
【0066】
ケイ酸塩を含む肥料により、高麗人蔘の茎の長さを抑制すること、又は高麗人蔘の茎の太さを増大することができる。高麗人蔘には、根等の地下部、葉、茎、花等の地上部があるが、ケイ酸塩を含む肥料を用いる栽培方法によれば、通常の栽培方法と比べて、高麗人蔘の茎が太く、かつ、短いまま栽培することができる。このような特徴により、上記ジンセノサイドの含有量が増大していることと推察される。
【0067】
ケイ酸塩を含む肥料は、一種単独で又は二種以上の上記ケイ酸塩(又はその水和物)を混合して使用することができる。ケイ酸塩を含む肥料は、上記ケイ酸塩(又はその水和物)のみからなるものでもよいが、上記ケイ酸塩以外の公知の肥料を含有することができる。
【0068】
公知の肥料としては、上記ケイ酸塩以外の肥料成分であれば特に限定はなく、無機肥料(化学肥料)、有機肥料等の肥料が挙げられる。
【0069】
無機肥料としては、例えば、窒素質肥料(石灰窒素;尿素;硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機酸アンモニウム塩;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩);リン酸質肥料(過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、焼成リン肥等のリン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩);カリ質肥料(炭酸カリ、塩化カリ、硫酸カリ、ケイ酸カリウム等);複合リン酸カリ肥料(例えば、リン酸一カリウム、リン酸ニカリウム等);珪酸質肥料(例えば、珪酸カルシウム等);マグネシウム質肥料(例えば、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等);亜鉛質肥料(例えば、硫酸亜鉛、亜鉛等);カルシウム質肥料(例えば、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム等);マンガン質肥料(例えば、硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン等);ホウ素質肥料(例えば、ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等);含鉄肥料(例えば、キレート鉄(エチレンジアミン四酢酸鉄錯体:EDTA-Fe)、鉄鋼スラグ等);銅肥料(例えば、硫酸銅等);モリブデン肥料(例えば、モリブデン酸ナトリウム等)などの肥料取締法に定められる普通肥料(複合肥料を含む)が挙げられる。
【0070】
有機肥料としては、例えば、タンパク質又はその分解物、アミノ酸、アンモニア等の有機態窒素を含むものであればよい。該有機肥料の具体例としては、堆肥、緑肥、ぼかし肥、落葉等の有機質肥料;魚粉、油粕、オカラ、生ゴミ、米糠等の食品残渣又はこれらから得られる抽出物若しくは濃縮物;家畜糞尿、イナワラ等の有機性廃棄物、並びにこれら有機物を含む廃水などが挙げられる。公知の肥料は、一種単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
【0071】
ケイ酸塩を含む肥料中に公知の肥料を添加する場合、その添加量としては、特に限定はなく、例えば、ケイ酸塩100質量部に対して、通常0.001~10000質量部、好ましくは0.01~1000質量部、より好ましくは0.1~500質量部程度である。
【0072】
また、ケイ酸塩を含む肥料には、本発明の効果を損なわない程度に、さらに、生理活性物質(例えば、生育促進剤、生育抑制剤等の生育調整剤等)、微生物資材抽出液、農薬(例えば、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、殺ダニ剤、殺線虫剤等)、界面活性剤(例えば、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、カルボン酸系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、両性界面活性剤等)、ビタミン類(例えば、ビタミンB1、ビタミンB6、ニコチン酸アミド、コリン塩類等)、腐敗防止剤(例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、プロピオン酸等)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸又はその塩;クエン酸又はその塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等))、pH調整剤、沈殿防止剤、展着剤、着色剤等のその他の成分を加えることができる。
【0073】
その他の成分を使用する場合、その使用量は、ケイ酸塩100質量部に対して、通常0.001~10000質量部、好ましくは0.01~1000質量部、より好ましくは0.1~500質量部程度である。
【0074】
その他の成分は、一種単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
【0075】
ケイ酸塩を含む肥料における珪酸イオンの含有量としては、特に限定はなく、例えば、SiO換算で20質量%以下であり、好ましくは10質量%であり、より好ましくは5質量%である。また、上記珪酸イオンの含有量の下限としては、0.001質量%が好ましく、0.01質量%がより好ましく、0.1質量%がさらに好ましい。
【0076】
栽培システム
高麗人蔘は、上記ケイ酸塩を含有する高麗人蔘用肥料を用いる手段を備えているほか、さらに、超音波噴霧手段及び/又は光照射手段を備えることができる。そのほか、上記栽培システムには、植物工場で用いられる公知の栽培手段を採用することもできる。
【0077】
超音波噴霧手段
超音波噴霧手段としては、特に限定はなく、公知の又は市販の超音波噴霧装置を用いることができる。液体肥料の噴霧時間当たりの噴霧量、噴霧時間、噴霧間隔等の条件としては、特に限定はない。
【0078】
光照射手段
光照射手段としては、特に限定はなく、例えば、(1)紫色照明光を当てる手段、及び/又は(2)赤色照射光を当てる手段が挙げられる。
【0079】
中でも、(1)紫色光を照射する手段、及び(2)赤色光を照射する手段を備え、並びに該(2)赤色光の強度が、(1)紫色光の強度1に対して、3~30の範囲であることが好ましい。
【0080】
紫色照明光のピーク波長は、実質的に380~450nmであり、好ましくは400~445nmであり、より好ましくは420~440nmである。
【0081】
赤色照射光のピーク波長は、実質的に620~750nmであり、好ましくは700~740nmであり、より好ましくは710~730nmである。
【0082】
光照射手段は、紫色照明光及び赤色照射光は、同時に照射する手段が好ましい。紫色光及び赤色光の波長は上記波長域の範囲内で変化させることができる。
【0083】
光量(強度)
紫色光照明光及び赤色光照明光の光量(強度)は、特に限定はなく、例えば、光合成光量子束密度(Photosynthetic Photon Flux Density:PPFD)でそれぞれ1~1000μmol/ms、好ましくは10~500μmol/ms、特に好ましくは20~250μmol/ms程度である。なお、該PPFDとしては、光源から約30cmの距離の光量を、一般的な光量子計を用いて測定することができる。
【0084】
また、上記紫色光照明光及び赤色光照明光の光量(強度)比は、例えば「紫色:赤色」で1:3~30であり、好ましくは1:3.2~10、より好ましくは1:3.5~8、特に好ましくは3.8~4.2の範囲である。紫色光照明光及び赤色光照明光の光量は上記範囲内で変化させることができる。
【0085】
照射時間
LED光照射の時間は、最長で栽培全期間である。また、最短の時間は、本発明の効果が奏される限りにおいて任意に設定できる。
【0086】
光照射部には、紫色光又は赤色光を放射する光源が含まれる。紫色光及び赤色光の光源には、従来公知の光源を単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0087】
光源には、波長選択が容易で、有効波長域の光エネルギーの占める割合が大きい光を放射する発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)等の光半導体素子を用いることが好ましい。また光源として、エレクトロルミネッセンス(EL)を用いる場合、ELは有機であっても無機であってもよい。
光半導体素子は、小型で寿命が長く、材料によって特定の波長で発光して不要な熱放射がないためエネルギー効率が良く、植物に近接照射しても葉焼け等の障害が起こらない。このため、光半導体素子を光源に用いることで、他の光源に比べて、より低電力コストで、より省スペースで栽培を行うことが可能となる。
【0088】
栽培方法
ケイ酸塩を含む肥料は、高麗人蔘を栽培する方法(以下、「栽培方法」ということもある。)に用いることができる。さらに、上記栽培方法は、超音波噴霧工程、及び/又は光照射工程を備えることができる。工程は、ステップと言い換えることができる。
【0089】
ケイ酸塩を含む肥料の形態(形状)としては、特に限定はなく、例えば、粉末状、粒状、糊状、スラリー状、懸濁状、溶液状等の一般に知られている肥料のいかなる形態が使用可能である。中でも、肥料は、農業上許容可能な溶媒又は担体で所望の濃度に希釈して、液体肥料とすることが好ましい。
【0090】
農業上許容可能な溶媒とは、水(滅菌水、脱イオン水、超純水を含む)、又はそれ以外の農業上許容し得る水溶液が挙げられる。該水溶液としては、例えば、リン酸塩緩衝液等の緩衝剤、液体培地が挙げられる。
【0091】
農業上許容可能な担体とは、上記その他の成分等が挙げられる。ケイ酸塩を含む肥料が水溶液である場合、その水溶液中におけるケイ酸塩の濃度としては、特に限定はなく、通常、0.001~200000ppmであり、好ましくは0.01~150000ppmであり、より好ましくは0.1~100000ppmである。
【0092】
ケイ酸塩を含む肥料の施用方法としては、特に限定はなく、一般的な肥料の施用方法と同様の方法を用いることができる。例えば、肥料が、液体肥料である場合、該液体肥料を土壌に散布又は潅注する方法;該液体肥料を作物の葉面等に散布する方法;液体肥料を点滴灌水する方法;該液体肥料を水耕栽培する方法;該液体肥料を噴霧耕栽培する方法等が挙げられる。
【0093】
本発明で用いられる栽培システム又は栽培方法によれば、高麗人蔘の栽培における栽培コストを抑えることができる。特に、水耕栽培のような人工培地栽培法又は噴霧耕栽培法において、電力コスト及び肥料コストを抑えることで、安価な栽培植物を提供することができる。
【0094】
栽培方法は、上記ケイ酸塩を含む肥料を、高麗人蔘に施用する工程を備えている。施用方法については、土、高麗人蔘の種類等によって適宜選択することができる。例えば、肥料を、栽培土壌、好ましくは対象作物の主な根群域の相当する部分に混和、散布、潅注等により施用できる。栽培方法としては、特に限定はなく、例えば、上記肥料を、隔離ベッド土耕栽培、水耕栽培、露地栽培等に適用できる。
【0095】
本明細書において「隔離ベッド土耕栽培」とは、隔離された栽培容器(ベッド)に培養土(床土、まさ土、バーク、ココナッツ培養土、ピートモス、パーライト等)を加え、養液を点滴又は潅水し、作物を栽培する方法である。
【0096】
本明細書において「水耕栽培」とは、栽培植物の根の全部又は一部が水耕液に浸漬した状態で行う栽培方法であり、例えば、底面潅水方式、バブリング方式、噴霧(ミスト)方式等が挙げられる。底面潅水方式は、再培養器の底面に水又は養液を満たすことにより、植物へ水又は養液を供給して栽培する方法である。バブリング方式は、植物の地下部へ空気バブル含有の水又は養液を供給して栽培する方法である。噴霧方式は、植物の地下部へ水又は養液を噴霧して栽培する方法である。
【0097】
本明細書において「噴霧耕栽培」とは、例えば、ミスト状にして噴霧する方法が挙げられる。かかる噴霧方式としては、高圧気体を使用した霧吹きタイプ、超音波噴霧(超音波ミスト)等が挙げられる。該超音波噴霧としては、植物栽培において行われている公知の超音波噴霧であれば特に限定はない。
【0098】
噴霧耕栽培としては、高麗人蔘中の特定の成分を増大される点又は高麗人蔘の成長を促進させる点で、超音波噴霧方式が好ましい。
【0099】
当該栽培方法としては、さらに、LED光照射工程を有することができる。栽培方法は、植物工場、特に完全制御型の植物工場に適用できる。ここで「完全制御型の植物工場」とは、ビル屋内のような閉鎖空間内において、光、湿度、温度等の気象条件、培地の供給又は交換等が完全にシステム化され、また、コンピューター制御された人工環境下で植物の栽培を行う工場を意味している。植物工場では、一般に、管理面、衛生面、労力面等の観点から、水耕栽培形態が採用されている。
【0100】
通常の水耕栽培では、水耕液のみで栽培されるが、本明細書における水耕栽培では、水耕液に植物の足場としての支持体を充填することができる。支持体には、例えば、ウレタン、ロックウール、砂、礫、バーミキュライト、パーライト等の無機材;おが屑、籾殻、やし殻、バークチップ、床土、まさ土、バーク、ココナッツ培養土、ピートモス、寒天等の天然有機材;又はそれらの組み合わせを使用することもできる。
【0101】
植物工場における明暗時間(光照射時間及び暗黒時間)、気温、湿度等を含む気象条件、及び生育期間等の栽培条件は、栽培植物に関して当該分野で公知の条件を適用することができる。中でも、栽培方法は、上記超音波噴霧工程、及びLED光照射工程を有することが好ましい。
【実施例
【0102】
以下、実施例、比較例、参考例及び試験例を掲げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0103】
光照射手段の光源
本試験例の光環境のための光源には、下記のLEDを用いた。
・紫色LED(中心波長:430nm):赤色LED(中心波長:720nm)
・上記赤色光の強度は、紫色光の強度1に対して、約4となる光源を用いた。
・PPFD:220μmol/m2 sec(光源からの距離30cm)
・使用電圧:24V/28.8W
・600mA定電流方式/30W級高出力LED
【0104】
参考比較例1で使用する光源として、下記のLEDを用いた。
・LED(中心波長:450nm):LED(中心波長:660nm)
・上記赤色光の強度は、紫色光の強度1に対して、約2となる光源を用いた。
・PPFD:200μmol/m2 sec(光源からの距離30cm)
・使用電圧:24V/28.8W
・600mA定電流方式/30W級高出力LED。
【0105】
栽培システム:隔離ベッド土耕栽培方式
隔離ベッド土耕栽培システムは、図4に示すように、1.パイプ(FRP又は鉄製)、2.支柱パイプ、3.不織布、4.ポリエチレン(PE)フィルムトンネル、5.栽培ベッド、6.点滴ホース、7.苗、8.黒PEフィルム、9.ストローフォームベッド、10.園芸用床土、11.籾殻、12.黒PEフィルム、13.排水溝、及び14.コースターパイプを有している。
【0106】
栽培システム:噴霧耕栽培方式
噴霧耕栽培においては、根圏酸素が不足するため、それを解決する手段として超音波噴霧耕栽培が有用である。
【0107】
該超音波噴霧耕栽培システムは、図5に示すように、15.パイプ(FRP又は鉄製)、16.不織布、17.ビニールトンネル、18.鉄材支柱、19.栽培ベッド、20.苗、21.固定用スポンジ、22.ベッド天板、23.供給管、24.排水溝、25.噴射ノズル((株) エムテックウィン社製、製品名:MH-106A (6区)、加湿方式超音波式、消費電力: 240W、最大噴霧量: 2,800 ± 200 (約 3000cc)/hr、水方法: 自動給水方式、使用水圧: 0.2~6.8 bar、使用面積約30坪、外形寸法: 516 (横) × 270 (縦) × 284 (高さ))、及び26、27.不織布を有している。
【0108】
なお、図6に示すように、LEDを用いた光照射手段、及び超音波噴霧手段を用いた栽培システムは、27.LED、28.霧噴射ノズル、29.ビニールカバー、30.高麗人蔘、31.栽培ベッド天板、32.栽培ベッド、及び33.超音波スプレーポンプを有している。
【0109】
HPLC分析の条件
超高速液体クロマトグラフィー装置:LaChromUltra L-2000 Uシリーズ(日立ハイテクノロジーズ製)
【0110】
該装置は、溶離液のリザーバ、HPLCポンプ(L-2160U)、自動注入システム(L-2200U)及び紫外線検出器(L-2400U)を備えている。
【0111】
カラム: LaChromUltra C18 short-length column(2mm i.d., 50mm L、2μm;日立ハイテクノロジーズ製)、LaChromUltra C18 middle-length column(2mm i.d., 100mm L、2μm;日立ハイテクノロジーズ製)
溶離液A:20%アセトニトリル水溶液、溶離液B:80%アセトニトリル水溶液
カラム温度:30℃
検出: Varian 380-LC
注入量: 5.0μL
グラジェント:A/B=100/0→0/100(10min);流量:0.2mL/min。
【0112】
<参考例1>
ケイ素水
ケイ酸塩 (Na2SiO3-10H2O)の結晶500g(KOSIBIO Co., Ltd製)を水50リットルで溶解して、ケイ酸塩の水溶液1(10,000ppm)(以下、「ケイ素水」ということもある。)を調製した。
【0113】
<参考例2>
液体肥料A
下記1~4を含む液体肥料1 (500ml、DAEYU Co., Ltd)。
1.硝酸カルシウム 20g
2.硝石 30g
3.キレート鉄 2.5g
4.水 約470cc
【0114】
液体肥料B
下記1~8を含む液体肥料2(100ml、DAEYU Co., Ltd)。
1.第1リン酸マグネシウム 4.5g
2.硫酸マグネシウム 12.5g
3.ホウ素、又はホウ酸150mg
4.マンガン 100mg
5.亜鉛 10mg
6.銅 5mg
7.モリブデン酸ナトリウム 1mg
8.水 約93cc
【0115】
液体肥料C
上記液体肥料A(500g)と液体肥料B(100g)と水(50L)とを一緒に混ぜて、よく撹拌し、下記1~10の成分を含む液状肥料C(50600g)を準備した。
1.硝酸カルシウム(Ca(NO32・4H2O) 4g、
2.硝酸カリウム(KNO3) 6g、
3.キレート鉄(エチレンジアミン四酢酸鉄錯体:EDTA-Fe) 0.5g、
4.第1リン酸アンモニウム(NH4・H2PO4) 0.9g、
5.硫酸マグネシウム(MgSO4・4H2O) 2.5g、
6.ホウ素(B)又はホウ酸(H3BO3) 0.03g、
7.マンガン(MnSO4・4H2O) 0.02g、
8.亜鉛(ZnSO4・4H2O) 0.005g、
9.銅(CuSO4・5H2O) 0.002g、
10.モリブデン酸ナトリウム(NaMoO4・2H2O) 0.001g。
【0116】
ケイ素水混合液体肥料
ケイ酸ナトリウム10水和物の水溶液(50g)と上記液体肥料C(50600g)一緒に混ぜて、肥料2(50650g)を調製した。
【0117】
<参考比較例1>
比較肥料1
上記液体肥料Cを比較肥料1として用いた。
【0118】
[試験例1(水耕栽培;噴霧耕栽培方式)]
栽培天板ベッドに、上記高麗人蔘の1年苗を、等間隔(約4cm)に配置し、地下部に上記超音波噴霧スプレー及び地上部にLEDランプを配置した(図6)。上記ケイ素水混合液体肥料及び参考比較肥料1を用いて、上記各LED光照射下で、高麗人蔘の超音波噴霧耕方式の栽培を行った。
【0119】
試験例1で栽培した高麗人蔘の成分を分析し、中でも、ジンセノサイドの各成分量の結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
<栽培結果>
比較肥料1は、高麗人蔘の着床から採取まで、通常60~90日程度の栽培期間を要するが、これに対して、ケイ素水混合液体肥料は、25日という栽培期間で早く育成することができ、生産効率が飛躍的に向上した。
【0122】
また、表1の結果から明らかなように、ケイ酸を含む肥料を用いて栽培した高麗人蔘は、従来の比較肥料1を用いて栽培した高麗人蔘と比べて、ジンセノサイドの含有量がそれぞれ大幅に増大した。図1に示すように、ケイ酸を含む肥料を用いた栽培して高麗人蔘の茎Aは、従来の比較肥料1を用いて栽培した高麗人蔘の茎Bと比べて、茎が短くかつ太いことから、ケイ酸を含む肥料によって、品質が高いとされる高麗人蔘が収穫できた。
【0123】
[試験例2(土耕栽培;隔離ベッド栽培方式)]
上記高麗人蔘の1年苗を、隔離ベッド(図4)の培土に等間隔(約4cm)に植えた。上記ケイ素水及び比較肥料1を用いて、上記各LED光照射下で、高麗人蔘の土耕栽培方式の栽培を行った。
【0124】
試験例2で栽培した高麗人蔘の成分を分析し、中でも、ジンセノサイドの各成分量の結果を表2に示す
【0125】
【表2】
【0126】
<栽培結果>
比較例の肥料は、高麗人蔘の着床から採取まで、通常60~90日程度の栽培期間を要するが、これに対して、ケイ素水のみの肥料でも、25日という栽培期間で早く育成することができ、生産効率が飛躍的に向上した。
【0127】
また、表2の結果から明らかなように、ケイ酸を含む肥料を用いて栽培した高麗人蔘は、従来の比較肥料1を用いて栽培した高麗人蔘と比べて、ジンセノサイドの含有量がそれぞれ大幅に増大した。図1に示すように、ケイ酸を含む肥料を用いた栽培して高麗人蔘の茎Aは、従来の比較肥料1を用いて栽培した高麗人蔘の茎Bと比べて、茎が短くかつ太いことから、品質が高いとされる高麗人蔘が収穫できた。
【0128】
実施例1(高麗人蔘ケイ素水抽出物1の製造方法)
上記試験例1の栽培システム又は栽培方法によって得られた高麗人蔘を90℃で10時間乾燥し、その乾燥物(水分量12~14%)60g、ケイ酸ナトリウム10水和物の結晶100g、及び水3Lを圧力鍋に入れ、85℃~125℃で約6時間加熱し、焦げ茶色の高麗人蔘ケイ素水抽出物(2970g、高麗人蔘濃度2%)を得た。なお、該高麗人蔘ケイ素水抽出物には、約100~120gの固形成分が沈殿している。水で抽出する場合に比べて、ケイ酸ナトリウム10水和物水溶液を用いる場合、その抽出スピードが早くなることがわかった。なお、ケイ酸ナトリウム10水和物の結晶100gを加えない以外は、上記実施例1と同様の方法で、上記試験例1の栽培システム又は栽培方法によって得られた高麗人蔘を水3Lのみで抽出を行ったが、抽出はうまく行かなかった。したがって、ケイ素水を用いることが重要であることが分かった。
【0129】
実施例2(高麗人蔘ケイ素水抽出物2の製造方法)
上記試験例1の栽培システム又は栽培方法によって得られた高麗人蔘の乾燥物60gを圧力鍋に入れ、さらに上記参考例1で得られたケイ酸ナトリウム10水和物水溶液(10000ppm)3Lを加え、85℃~125℃で約6時間加熱し、焦げ茶色の高麗人蔘ケイ素水抽出物2を得た(2970g、高麗人蔘濃度2%)。水で抽出する場合に比べて、ケイ酸ナトリウム10水和物水溶液を用いる場合、その抽出スピードが早くなることがわかった。
【0130】
比較例1(ケイ素水)
ケイ酸塩 (Na2SiO3-10H2O)の結晶500g(KOSIBIO Co., Ltd製)を水50リットルで溶解して、ケイ素水(10,000ppm)を調製した。
【0131】
比較例2(F2)
ジンセノサイドF2はAbcam社より購入した。
【0132】
[試験例3. NC/Ng マウスにおける皮膚炎症状緩和効果についての検討]
(目的)
実施例1で得られた高麗人蔘ケイ素水抽出物1(被検物1)の皮膚炎症に対する効果を検討する。
【0133】
(方法)
動物及び投与サンプル
NC/Ngaマウスは、5週齢の雄マウスを日本エスエルシー株式会社から20匹購入した。当該マウスは、購入後、徳島大学動物実験資源部門5階 SPF(specific pathogen free)環境下にて飼育した。次いで、マウスには6週齢時より対照群に比較例1のケイ素水を、又は介入群に実施例1のケイ素水抽出による高麗人蔘エキス(高麗人蔘濃度10%)を200μl、1日1回経口ゾンデ投与で行なった。
【0134】
(皮膚炎の誘導及び皮膚炎の臨床評価)
6週齢のNC/Ngaマウスの胸部及び腹部に、皮膚炎を誘導させる5%ピクリルクロライドを塗布した。その後、1週間毎に1%ピクリルクロライドをマウスの耳部に塗布した。耳部における皮膚炎は、0(無症状)、1(軽度)、2(中等度)、及び3(重度)の4段階の重症度スコアに分類し、両耳のスコアの平均値を臨床症状として数値化した。
【0135】
(血清IgE濃度)
マウスは10週間の1%ピクリルクロライド塗布の後、16週齢時に心採血し、血清を得た。これを用いて、Mouse IgE quantitation kit (Bethyl Laboratories Inc.)によりプロトコールに従いIgEを測定した。
【0136】
(サイトカイン濃度)
マウス血清中のサイトカイン濃度について、Mouse INFγ ELISA Kit (R&D systems Inc)及びMouse IL-4 ELISA Kit(R&D systems Inc)を用いて、付属のプロトコールに従い測定した。
【0137】
(統計解析)
2群間の比較としてGraphPad Prism5を用いて対応のないT-testにより解析、p<0.05 で有意差ありとした。
【0138】
[結果]
NC/Ngaマウス6週齢時より10週間、週に1度1%ピクリルクロライドを耳部に塗布することでアレルギー誘導を行った。この間、体重及び摂餌量を週に一度測定したが、比較例1のケイ素水投与群及び実施例1の高麗人蔘ケイ素水抽出物投与群(介入群)の両群間において、体重及び摂餌量の差は認められなかった。
【0139】
皮膚症状の重症度の比較
マウスの皮膚症状(重症度スコア)について両耳で評価した。その結果を表3及び図7に示す。
【表3】
【0140】
[結果]
表3及び図7(平均スコア)に示すように、比較例1のケイ素水投与群では皮膚のアレルギー症状が明らかであったのに対して、実施例1の高麗人蔘ケイ素水抽出物投与群(介入群)では症状の軽減が認められた。平均スコアを示す。対照群で平均2.3のスコアを示したのに対し、介入群では平均値が0.5と有意に低値であった(p<0.05)。
【0141】
血清IgE濃度の比較
アレルギー反応を比較するため血清IgE濃度を測定した。その結果を表4及び図8に示す。
【表4】
[結果]
表4及び図8に示すように、実施例1の高麗人蔘ケイ素水抽出物投与群(介入群)では、生理食塩水群(コントロール)及び比較例1のケイ素水投与群に比べて、有意にIgEが低値であった(p<0.05)。
【0142】
サイトカイン濃度の比較
炎症性サイトカインINFγ及びIL-4について測定を行なった。その結果を表5、表6、図9及び図10に示す。
【表5】

【表6】
[結果]
表5、表6、図9及び図10に示すように、生理食塩水群(コントロール)及び比較例1のケイ素水投与群では皮膚炎の誘導によりサイトカイン産生が認められるが、実施例1の高麗人蔘ケイ素水抽出物投与群(介入群)では有意に抑制されていることが示唆された(p<0.05)。
【0143】
[試験例4.TNP-IgE マウスにおける免疫応答における効果についての検討]
(目的)
実施例1で得られた高麗人蔘ケイ素水抽出物(被検物1)のTNP-IgEマウスにおける免疫応答における効果を検討する。本発明で用いた高麗人蔘のうち、上記試験例1に記載の特定の栽培方法又は栽培システムを用いて得られた高麗人蔘は、他の高麗人蔘と比較してジンセノサイドF2の量が多いことがわかった(表1及び表2)。また、ジンセノサイドF2には免疫能を向上させる効果が知られていることから、前述の試験例3で示された効果もF2によるものではないかと考え、ジンセノサイドF2のみを投与し、当該高麗人蔘ケイ素水抽出物の効果と比較した。
【0144】
(方法)
マウスは6週齢TNP-IgEマウスを日本クレア株式会社より購入し、徳島大学動物実験施設にて飼育した。1週間の慣らし飼育の後、7週齢より高麗人蔘群(実施例1)には200μlの抽出エキス投与を1日1回、F2群(比較例2)には、2.5mg/kgBWを1日1回、対照群(コントロール)には生理食塩水200μlを投与することとし、7日間継続し、その後TNP投与によりアレルギー炎症を誘導した。投与後4日後に剖検を行い、耳の細胞組織を観察し、血液サンプルを解析した。Mouse IgE quantitation kit (Bethyl Laboratories Inc.)によりプロトコールに従い血清IgEを測定した。ジンセノサイドF2単独投与においては、文献相当量投与した。
【0145】
[結果]
マウスの耳の細胞組織を染色した結果を図11に示した。数値化は困難であるが、対照群(コントロール)よりもF2群(比較例2)で、F2群(比較例2)よりも高麗人蔘群(実施例1)で耳の腫脹が改善されていることが示唆された。
【0146】
さらに、血清のIgE濃度を測定した結果を表7及び図12に示す。
【表7】
【0147】
[結果]
その結果、IgE濃度は、対照群(コントロール)と比較して、F2群(比較例2)、高麗人蔘ケイ素水抽出物群(実施例1)で低下していた。また、高麗人蔘群(実施例1)のIgEは、F2群(比較例2)と比較して低い値であった。
【0148】
すなわち、ジンセノサイドF2単独投与は、生理食塩水群(コントロール)よりは免疫反応に対する改善作用を認めたが、当該実施例1で得られた高麗人蔘ケイ素水抽出物の方がさらに効果的であった。すなわち、当該免疫応答における効果は、ケイ酸ナトリウム10水和物以外の成分の関与も考えられ、また、高麗人蔘ケイ素水抽出物中に含まれる成分とケイ酸塩との相乗効果によるものとも考えられる。
【0149】
以上のとおり、実施例1で得られた高麗人蔘ケイ素水抽出物(被検物1)は、F2群(比較例2)及び対照群(コントロール)に比べて、アトピー性皮膚炎を抑制できていることが明らかであった。
【0150】
[試験例5.他社高麗人蔘との比較検討]
(目的)
本発明の抗アレルギー剤(高麗人蔘エキス)は、本試験で用いた高麗人蔘そのものが重要であるのか、高麗人蔘とケイ素水を用いた抽出方法の両方が重要であるのかを確認した。
【0151】
実施例3~5
(方法)
下記の高麗人参A、B、及びCを用意した。
・高麗人蔘A:(ヘウンインサン加工社製、6年根、露地栽培)
・高麗人蔘B: 高麗人蔘(ヘウンインサン加工社製、4年根、露地栽培)
・高麗人蔘C: 高麗人蔘(ハッピーアンドジョイ社製、1年根、水耕栽培(50日栽培))
上記実施例1で用いた高麗人参に代えて、上記高麗人参A~Cを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較の抽出物A(実施例3)、比較の抽出物B(実施例4)、及び比較の抽出物C(実施例5)を得た。
【0152】
マウスは、TNP-IgEマウスを使用した。詳細な試験方法は、試験例4と同様であり、実施例1で得られた高麗人蔘ケイ素水抽出物、及び上記実施例3~5で得られた比較の抽出物A~Cをマウスに供試して、前肢、後肢、及び耳の炎症の臨床スコアを6点までで評価した。その結果を表8及び図13に示す。
【表8】
【0153】
[結果]
その結果、表8及び図13に示すように、実施例1で得られた高麗人蔘ケイ素水抽出物が、最も低いスコアの経緯を示した。また、発症誘導後1週間(7日まで)の間、実施例1の抽出物、実施例3~5の比較抽出物A、B及びCは何れも、ケイ酸酸塩を含むことで抗アレルギー効果を示した。特に、実施例1で得られた高麗人蔘ケイ素水抽出物が高い抗アレルギー効果を示した。
【0154】
炎症性サイトカインIgE及びINFγについて測定を行なった。その結果を表9、表10、図14及び図15に示す。
【表9】
【表10】
[結果]
表9、表10、図14及び15に示すように、血清IgE及び血清INFγについても、実施例1で得られた高麗人蔘ケイ素水抽出物が、最も低い値を示した。また、発症誘導後1週間(7日まで)の間、実施例1の抽出物、実施例3~5の比較抽出物A、B及びCは何れも、ケイ酸酸塩を含むことで抗アレルギー効果を示した。特に、実施例1で得られた高麗人蔘ケイ素水抽出物が高い抗アレルギー効果を示した。
【0155】
[試験例6.ヒト(女性)に対しての試験]
ケイ素水抽出による高麗人蔘エキス(高麗人蔘濃度2%)を、成人女性(約50kg)の腕に対して、数滴(2mg)を1日3回1週間にわたって塗布した。また、ケイ素水抽出による高麗人蔘エキス(高麗人蔘濃度2%)を、女性(約50kg)の手に対して、数滴(2mg)を1日3回2ヶ月間にわたって塗布した。上記高麗人蔘エキスを使用後、腕及び手の皮膚の状態を目視において観察した。
【0156】
[結果]
その結果、高麗人蔘エキスを使用した後の手及び腕(図16b、図16d、及び図16f)のアトピー性皮膚炎の症状は、その使用前(図16a、図16c及び図16e)に比べて、明らかに改善した。また、被験者の痒みの症状も著しく改善した。
【0157】
[試験例7.ヒト(男性)に対しての試験]
実施例1で用いたケイ素水抽出による高麗人蔘エキス(高麗人蔘濃度2%)を100倍に薄め、成人男性(約65kg)に対して、1日4回500mg経口投与した。また、ケイ素水抽出による高麗人蔘エキス(高麗人蔘濃度2%)を顔又手に対して、数滴(2mg)を1日3回にわたって塗布した。上記高麗人蔘エキスを使用後、手及びの皮膚の状態を下記判断に基づき、目視において観察した。その結果を表11に示す。
【0158】
(判断)
3:アレルギー性皮膚炎の症状が著しく改善した。
2:アレルギー性皮膚炎の症状が改善した。
1:アレルギー性皮膚炎の症状がひどかった。
【表11】
【0159】
[結果]
経口投与を3ヶ月続けた結果、高麗人蔘エキスを使用した後(使用後1)の手及び顔(図17b、図18c及び図18d)のアトピー性皮膚炎の症状は、その使用前(図17a、図18a及び図18b)に比べて、皮膚の状態が綺麗になり、明らかに改善した。さらに、経口投与を6ヶ月続けた(合計9ヶ月後)結果、実施例1の高麗人蔘エキスを使用した後(使用後2)の顔(図18e)のアトピー性皮膚炎の症状は、上記投与後3ヶ月(図18c及び図18d)に比べて、皮膚の状態が綺麗になり、アトピー(アレルギー)症状を著しく抑制することができた。また、被験者の痒みの症状も著しく改善した。
【0160】
[試験例8.ヒト皮膚繊維芽細胞の培養及び刺激実験]
ヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF:Normal Human Dermal Fibroblasts)は、セルリサーチ(Cell research)社のものを入手した。
NHDFを、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地、Dulbecco's Modified Eagle Medium)/10%FBS(fetal bovine serum)で培養し、6wellプレートに継代した。
その後、80%コンフルエント時(非常に接近し、密集した状態)に、2ml DMEMに対して、実施例1(原液)、実施例6(原液を水で1/10に希釈した濃度)、実施例7(原液を水で1/100に希釈した濃度)及び比較例3(無処理区;水)の供試液20μlをそれぞれ添加した。
添加後、8時間後にTNFαにて刺激を行い、16時間後に培地(Medium)からTRIzol(登録商標)試薬にて細胞を回収し、RNA抽出を行った。
【0161】
<TNFα刺激の有無によるIL-6濃度>
TNFα刺激の有無による、細胞培養液中のサイトカインIL-6濃度(pg/ml)をELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)にて測定した。その結果を表12及び図19に示した。
【表12】
【0162】
[結果]
表12の結果、本発明の実施例1、6及び7の供試液をTNFαで刺激させた後に細胞に処理することで、比較例3の無処理区(水)に比べて、IL-6濃度が明らかに低下した。
【0163】
<TNFα刺激の有無によるIL-6及びTNFα遺伝子発現量>
細胞画分より抽出したRNAをcDNAに変換し、Step OneTM real-time PCR System(Applied Biosystems社)を用いてリアルタイムPCRを行った。Fast SYBR(登録商標) Green master Mix(Applied Biosystems社) 10μl、cDNA 2μl、Primer(最終濃度0.4 μM)をプレート内で撹拌し、(95℃×20秒、95℃×3秒、60℃×30秒を40サイクル、95℃×15秒、60℃×1分、95℃×15秒)の設定で行った。IL-6及びTNFαの定量解析を行なった。プライマーは報告されているcDNA配列をもとにPrimer3Plusを用いて作成した。各遺伝子発現は、内部コントロールとしてGADPHにて補正後、コントロール群を基準とした相対値で示した。その結果を表13、表14、図20及び図21に示した。
【表13】
【0164】
[結果]
表13の結果、本発明の実施例1、6及び7の供試液を、TNFαを刺激させた後、細胞に対して処理することで、比較例3の無処理区(水)に比べて、IL-6濃度が明らかに低下した。
【表14】
【0165】
[結果]
表14の結果、本発明の実施例1、6及び7の供試液を、TNFαを刺激させた後、細胞に対して処理することで、比較例3の無処理区に比べて、TNFα濃度が明らかに低下した。
【0166】
[試験例9.マウスアトピー性皮膚炎に対する実験]
NC/Ngaマウスの背部に4%SDS(Sodium Dodecyl Sulfate)を100mg/匹、週に2回の割合で塗布した。3~4回の塗布で皮膚炎の発症が認められはじめ、6~8回目の塗布で80%まで発症が確認できた。8回塗布終了後の皮膚炎面積を測定し、100%とした。その後、実施例1の試料(原液)1匹当たり200μl、実施例6の試料(原液の1/10の濃度)を1匹当たり200μl、実施例7の試料(原液の1/100の濃度)を1匹当たり200μl、比較例4(水)を1匹当たり200μl、それぞれ14日間毎日塗布した。2週間後の背部の皮膚炎の面積が100%に対して何パーセントになったかを表15及び図22に示した。
【表15】
【0167】
[結果]
表15の結果、本発明の実施例1、6及び7の供試液は、比較例4の水のみに比べて、マウスのアトピー性皮膚炎残存率が明らかに低下した。
【0168】
本発明の抗アレルギー剤(医薬組成物)の製造方法の一例を以下記載する。
処方例1 錠剤
常法に従って下記組成の錠剤を製造した。
【0169】
1錠当たりの配合量(mg)
実施例1で製造した高麗人蔘ケイ素水抽出物 73.1
テアニン 16.0
セラミド糖脂質含有米胚芽油 1.6
(セラミド糖脂質を37.5重量%含有)
粉末還元麦芽糖 100.0
デンプン 0.28
炭酸カルシウム 2.1
デキストリン 56.5
結晶セルロース 34.42
ショ糖脂肪酸エステル 15.0
1錠当たりの合計量(mg) 300.0
【0170】
処方例2 軟膏剤
常法に従って下記組成の軟膏剤を製造した。
【0171】
配合割合(重量%)
実施例1で製造した高麗人蔘ケイ素水抽出物 3
白色ワセリン 25
ステアリルアルコール 22
プロピレングリコール 12
ラウリル硫酸ナトリウム 15
パラオキシ安息香酸メチル 0.02
パラオキシ安息香酸プロピル 0.015
精製水 適量
合計 100重量%
【0172】
本発明の食品組成物の製造方法の一例を以下記載する。
常法に従って下記組成の飴を製造した。
処方例3(飴)
(重量%)
実施例1で製造した高麗人蔘ケイ素水抽出物 0.5
砂糖 47.5
水飴 49.0
香料 1.0
水 2.0
【0173】
処方例4(清涼飲料)
(重量%)
実施例1で製造した高麗人蔘ケイ素水抽出物 0.5
果糖ブドウ糖液 20
液状ヨーグルト 30
乳化剤 0.5
ヒアルロン酸ナトリウム(分子量5万~15万) 0.5
ロツゲニン酸 0.001
香料 適量
精製水 全量で100にする
【0174】
(処方例5)タブレット型健康食品
(重量%)
実施例1で製造した高麗人蔘ケイ素水抽出物 3
コンドロイチン硫酸 2
ヒアルロン酸 0.5
N-アセチルグルコサミン 40
コラーゲンエキスパウダー 7.5
ロツゲニン酸 0.001
結晶セルロース 9
ショ糖脂肪酸エステル 3
微粒酸化ケイ素 2
マルチトール 全量で100にする
【0175】
本発明の抗アレルギー剤(化粧料組成物)の製造方法を以下記載する。
処方例6(化粧水)
(重量%)
実施例1で製造した高麗人蔘ケイ素水抽出物 2.0
ニコチン酸アミド 2.0
1,3-ブチレングリコール 3.0
濃グリセリン 2.0
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.3
エタノール 7.0
防腐剤 適量
着香剤 適量
pH調製剤 適量
精製水 残余
合計 100重量%
【0176】
処方例7(美容液)
(重量%)
実施例1で製造した高麗人蔘ケイ素水抽出物 3.0
ジプロピレングリコール 5.0
濃グリセリン 3.0
ヒアルロン酸ナトリウム 0.2
キサンタンガム 0.2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.3
エタノール 5.0
防腐剤 適量
着香剤 適量
pH調製剤 適量
精製水 残余
合計 100重量%
【符号の説明】
【0177】
1.パイプ(FRP又は鉄製)、2.支柱パイプ、3.不織布、4.PEフィルムトンネル、5.栽培ベッド、6.点滴ホース、7.苗、8.黒PEフィルム、9.ストローフォームベッド、10.園芸用床土、11.籾殻、12.黒PEフィルム、13.排水溝、14.コースターパイプ、15.パイプ(FRP又は鉄製)、16.不織布、17.ビニールトンネル、18.鉄材支柱、19.栽培ベッド、20.苗、21.固定用スポンジ、22.ベッド天板、23.供給管、24.排水溝、25.噴射ノズル、26.不織布、27.LED、28.霧噴射ノズル、29.ビニールカバー、30.高麗人蔘、31.栽培ベッド天板、32.栽培ベッド、33.超音波スプレーポンプ

図1
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