(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジンのターボ冷却ベーン
(51)【国際特許分類】
F02C 7/18 20060101AFI20230323BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20230323BHJP
F01D 25/12 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
F02C7/18 A
F01D9/02 102
F01D25/12 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017151361
(22)【出願日】2017-08-04
【審査請求日】2020-07-29
(32)【優先日】2016-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514193041
【氏名又は名称】パワーフェイズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジェイ.クラフト
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ペッリ
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-047170(JP,A)
【文献】特開2001-349202(JP,A)
【文献】実開昭53-146805(JP,U)
【文献】特表2015-517052(JP,A)
【文献】特開平06-317184(JP,A)
【文献】特開平11-013410(JP,A)
【文献】特開昭61-241405(JP,A)
【文献】特開2010-090818(JP,A)
【文献】米国特許第03663118(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/18
F01D 9/02
F01D 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに流体連結される、コンプレッサ部、コンプレッサ吐出プレナム、燃焼器部、及びタービンセクションを有するガスタービンエンジン内のタービンノズルの冷却方法であって、
前記コンプレッサ吐出プレナム内の空気を超える圧力を有する圧縮空気の供給を形成するために、前記ガスタービンエンジンの前記コンプレッサ部の圧縮プロセスの外部にある個別のプロセスを通して前記タービンノズルのための冷却空気の一部を圧縮することと、
前記圧縮空気の供給を前記タービンノズルの前縁に導くことと、
前記圧縮空気の供給の一部を、前記前縁から前記前縁の後方の前記タービンノズルの一部に導くことと、
を含み、
前記圧縮空気の
供給が所定の制御パラメータに基づいており、該所定の制御パラメータは、空気圧と、流量と、空気圧、温度、及び流量の任意の組み合わせとのうちいずれか1つである、方法。
【請求項2】
前記タービンノズルの前縁を内側で冷却した後に前記タービンノズルの後縁を冷却するために、前記圧縮空気の供給が利用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タービンノズルの前縁の冷却の後に前記タービンノズル中央部を冷却するために、前記圧縮空気の供給が利用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
全てが互いに流体連結される、コンプレッサ部、コンプレッサ吐出プレナム、燃焼器部、及びタービンセクションを有するガスタービンエンジンにおける複数のタービンノズルの冷却方法であって、
前記ガスタービンエンジンのプロセスの外部にある個別のプロセスにおいて前記冷却空気が圧縮される、前記タービンノズルのための圧縮空気を形成するために、冷却空気の一部を圧縮することと、
段内の各タービンノズルに供給される前記圧縮空気を変化させるように、前記タービンノズルの段の周囲への前記圧縮空気の分配を制御することと、
を含む方法であって、
前記圧縮空気の分配が所定の制御パラメータに基づいており、該所定の制御パラメータは、空気圧と、流量と、空気圧、温度、及び流量の任意の組み合わせとのうちいずれか1つである、方法。
【請求項5】
互いに流体連結されるコンプレッサ部、コンプレッサ吐出プレナム、燃焼器部、及びタービンセクションを有するガスタービンエンジン内の静的構成要素の冷却方法であって、
前記ガスタービンエンジンのプロセスの外部にある個別のプロセスにおいて、前記タービンセクションの前記静的構成要素のために冷却空気の一部を圧縮することと、
制御パラメータに基づき、前記静的構成要素の周囲への前記圧縮された冷却空気の分配を制御することと、
を含み、
前記制御パラメータは、空気圧と、流量と、空気圧、温度、及び流量の任意の組み合わせとのうちいずれか1つである、方法。
【請求項6】
互いに流体連結される、コンプレッサ部、コンプレッサ吐出プレナム、燃焼器部、及びタービンセクションを有するガスタービンエンジンの構成要素の冷却方法であって、前記コンプレッサ吐出プレナム内の空気より高い圧力を有する圧縮空気の供給を形成するために、前記ガスタービンエンジンのプロセスの外部にあるプロセスにおける前記構成要素のための冷却空気の少なくとも一部を発生させること、を含み、
前記圧縮空気の
供給が所定の制御パラメータに基づいており、該所定の制御パラメータは、空気圧と、流量と、空気圧、温度、及び流量の任意の組み合わせとのうちいずれか1つである、方法。
【請求項7】
前記構成要素がタービンノズルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ガスタービンエンジンのプロセスの外部にある前記プロセスから供給される前記空気の少なくとも一部が前記タービンノズルの前縁に導かれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガスタービンエンジンのプロセスの外部にある前記プロセスから供給される前記空気の少なくとも一部がまず前記タービンノズルの前縁に導かれ、その後、前記タービンノズルの前記前縁に導かれた前記空気の少なくとも一部がその後、前記タービンノズルの前縁の冷却の後に前記タービンノズルの中央または後縁領域に導かれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記構成要素が、ブレード外側空気シールであり、前記ブレード外側空気シールは、前記ガスタービンエンジンのプロセスの外部にある前記プロセスから供給される前記空気の少なくとも一部がまず、前記ブレード外側空気シールの内側に衝突するよう導かれ、その後、前記ブレード外側空気シールのフィルム冷却のための冷却孔に導かれるような構成を有する、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]
関連出願の相互参照
本出願は、2015年2月5日出願の米国特許仮出願第62/112,263号の優先権を主張する、2015年12月17日出願の米国特許出願第14/972,403号の一部継続出願である。本出願はまた、2015年8月4日提出の米国特許仮出願第62/201,031号の優先権を主張する。これらの出願はそれぞれ、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
[0002]
本発明は一般に、ガスタービンエンジンの発電能力を含む電力システムに関し、より詳細には、ガスタービンエンジンの構成要素のための冷却空気の代替供給源の供給に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]
ガスタービンエンジンは、機械軸動力を電力に変換する発電機に関連して利用されることが広く理解されている。最初に
図1Aを参照すると、電力発生発電プラントにおいて一般的に利用されるシンプルサイクルガスタービンエンジン100の概略図が示される。ガスタービンエンジン100は、軸106によってタービン104に接続されたコンプレッサ102を備える。コンプレッサ102からの空気は、燃料110が空気に添加される1つまたは複数の燃焼器108に向かう。燃料と空気の混合物は点火されて、タービン104を駆動し、次にコンプレッサ102を駆動する高温燃焼ガスを形成する。軸106はまた、電力114を発生させる発電機112に接続される。
図1Bは、様々なガスタービン圧力比及び燃焼温度のシンプルサイクル効率及び電力出力の両方に関する熱効率に対応するガスタービン性能を特定の出力の関数として示す。当業者には理解されるように、ガスタービンエンジンの燃焼温度は、エンジン全体の動作を調整し、かつ制限し、圧力比はガスタービンの効率に正比例する。コンバインドサイクルガスタービンについて、
図2Bに示すように、プラントの効率は燃焼温度に正比例する。すなわち、複合サイクルにおける動作時に質量流量が一定に保たれ、同じガスタービンの効率を向上させることを前提とすると、燃焼温度が上昇するにつれて、シンプルサイクルガスタービンの出力が増大する。
【0004】
[0004]
一般的にガスタービンの相手方ブランド製造業者は、タービン部品の能力を維持しながらより高温のガスがタービンを通過することができるように、タービンセクションの材料及びコーティングの技術を向上させることによって、燃焼温度を上昇させている。
【0005】
[0005]
次に
図2Aを参照すると、コンバインドサイクル発電プラント200の概略図が示され、軸206によってタービン204に接続されたコンプレッサ202を備える。コンプレッサ202からの空気は、1つまたは複数の燃焼器208に向かい、そこで燃料210がコンプレッサ202からの空気に添加される。燃料と空気の混合物は点火され、タービン204に電力を供給し、コンプレッサ202を駆動する高温燃焼ガスを形成する。軸206はまた、電力214を発生させる発電機212に接続される。コンバインドサイクル発電プラント200はまた、タービン204からの高温排気を受け、水源を加熱して蒸気218を発生させる、熱回収蒸気発電機、すなわちHRSG、216を含む。蒸気タービン220はHRSG216からの蒸気によって電力供給され、蒸気タービン220が第2の発電機222を駆動して追加電力224を発生させる。
図2Bは、コンバインドサイクル効率及び電力出力の両方に関する効率に対応するガスタービン性能を燃焼温度の関数として示す。
図1B及び2Bは、GEガスタービン性能特性(GER3567)において開示され、本明細書に参照の目的で含まれるものに類似する。
【0006】
[0006]
当業者には理解されるように、燃焼温度は、第1段タービンノズルの直下流の燃焼ガスの温度として定義される。ガスタービンエンジンの分野で使用される用語が異なるため、第1段タービンノズルはまた、第1段タービンベーンと称されてもよい。
図3を参照すると、ガスタービンエンジンの一部の断面が示され、ガスタービン業界において利用される標準温度パラメータを示す。
図3はまた、上記で参照したGEガスタービン性能特性(GER3567)に開示される図と類似している。
図3に示すように、タービン入口温度(T
A)は、平面A-Aによって示される、第1段タービンノズル300の上流で測定される。エンジン(T
B)の燃焼温度は、平面B-Bによって示される、第1段タービンノズルの直後で測定される。
【0007】
[0007]
上述のように、タービン入口温度及びタービン燃焼温度は、ガスタービンエンジンの動作による重要な対策である。これらの温度の読み取り値は、第1段タービンノズルの上流及び下流のそれぞれで得られる。このように、ガスタービンエンジンの制御はこれらの温度に基づいているため、受容可能な材料動作限界内でタービンノズル金属温度を維持することが重要である。
【0008】
[0008]
タービンノズルの高い動作温度により、金属温度を受容可能なレベルで維持するために、タービンノズルを積極的に冷却する必要がある。圧縮空気等の冷却流体が、タービン冷却・漏洩空気(TCLA)、または燃焼プロセスをバイパスし、冷却のために利用される圧縮空気全体の一環としてタービンノズルに提供される。TCLAは通常、構成要素によって、またエンジンの種類によって異なるタービン構成要素を冷却するために必要な量で、ガスタービンエンジンの吐出プレナムを含む、コンプレッサ内の複数の位置から得られる。しかし、General Electricフレーム7FAエンジンについて、エンジンコンプレッサによって発生する圧縮空気の約20%は、TCLAとして利用される。すなわち、冷却のために圧縮空気の20%を利用することは、この空気が燃焼システムを通過できないか、またはタービンを通って焼成されず、それによってエンジンの損失エネルギーに変換されて、ガスタービンエンジンの熱効率の悪さの一因となることを意味する。例えば上述のガスタービンエンジンは、約37パーセントの熱効率を有する。
【0009】
[0009]
GEガスタービン性能特性(GER3567)において開示されるものと類似する
図4は、第1段タービンノズル400の典型的な冷却方式を示す。このような冷却機構において、圧縮空気はタービンベーンの内部通路に供給され、しばしば、一部が蛇行形状であり得るノズル内の複数の通路に向かう。第1段タービンノズルを冷却するための空気は通常、コンプレッサによって発生し、コンプレッサ吐出プレナムから得られ、そのために、エンジンコンプレッサの出口圧力及び温度である。燃焼器からの最高温度のガスが見られる、この第1段ノズルはまた、コンプレッサ吐出プレナム(CDP)からの最大圧力の冷却空気の供給源によって供給される。すなわち、ガス流路の圧力は、燃焼器のそれより小さい、平方インチ当たり数ポンド(psi)のみである。したがって、当業者には理解できるように、第1段ノズル400の前縁402に供給される冷却空気の圧力は、エアフォイル内の一連の孔から空気を流出させるためにちょうど十分な高さである。冷却孔の間隔及び配向は変化し得るが、このような共通する形式の1つには、ノズル400の前縁402に、シャワーヘッドパターンとも称される孔がある。さらに、エンジンコンプレッサから空気を得てタービン構成要素を冷却することで、エンジンからの電力出力を低減し、これによってタービンが発生させることができる機械作業の量が低減する。
【0010】
[0010]
次に
図5を参照すると、従来技術の冷却方式によるガスタービンエンジンの一部の断面図が示される。ガスタービンエンジン500は、吐出プレナム504へと圧縮空気を流れさせるコンプレッサ502を備える。コンプレッサ502からの空気のほとんどは、燃焼器ケース508、エンドキャップ510、燃焼ライナ512、スワラアセンブリ514、トランジションピース516、及び、トランジションピース516をタービンフレームの一部、ここでは第1段ベーン外輪520に保持するブラケット518を有する1つまたは複数の燃焼器506を通過する。空気は燃焼器506内で受容され、1つまたは複数の燃料ノズル522からの燃料と混合されて、トランジションピース516を通過してタービンに至る高温燃焼ガスを発生させる。本実施形態において、第1段ベーン外輪520はコンプレッサ吐出プレナム(CDP)ケース524に固定される。
【0011】
[0011]
空気のほとんどが燃焼器506に至るか、またはTCLAに向かうように、空気はロータ528と内部ケーシング530との間のシール526によってコンプレッサ吐出プレナム内に維持される。内部ケーシング530は、必要な構造的軸及びねじり支持をもたらす第1段タービンノズル531を有する機械的インターフェース532を有する。内部ケーシング530は、隣接する燃焼器506間に位置するID支柱534によってコンプレッサ吐出プレナムケース524内に概ね支持されている。ロータ528は、支柱534を通じてロータ528をケーシングにつなぐベアリング536を有する。
【0012】
[0012]
第1のベーン外輪がベーン531にコンプレッサ吐出プレナム504からの圧縮空気を供給する際に、冷却空気541は第1のタービンノズル531の外径に供給され、第1の外側ベーンリング520とコンプレッサ吐出プレナムケース524との間を通過し、第1のベーン外輪543上の孔に流入する。本発明の本実施形態において、コンプレッサ吐出プレナム504からの圧縮空気は、ISO条件及びベース負荷において約750°F(約399°C)である。同様に、第1段ノズル542の内径には、コンプレッサ吐出プレナム504からのタービン冷却・漏洩空気(TCLA)552が供給される。第1段ノズルの冷却空気541及び552の両方が、
図4に開示されるように、ベーンの内部通路531を流れ、第1段ノズル542に必要な冷却をもたらす。このTCLAは最終的に、第1段ノズル542間を通過している高温燃焼ガスと合流し、第1段ブレード511が露出するまで高温ガスの温度を低減するための冷媒として作用する。後続のノズル及びロータ段において、第2段ノズルは第2段内部支持リング554によって、同様に第3段では第3段内部支持リング553によって、ロータに封止される。
【0013】
[0013]
以下の説明は、ISO条件及びベース負荷におけるGeneral Electricフレーム7FAガスタービンエンジンに関し、本発明を利用することができる許容可能なエンジンとして単に説明の目的のために提示され、以下に記す本発明の範囲を制限することを意図しない。コンプレッサからの圧縮空気の大部分(約80%)が燃焼システムを通過し、そこで燃料が添加されて混合物が点火され、高温燃焼ガスの温度が約2700°F(約1482°C)に上昇する。圧縮空気が燃焼器を通過する際に、通常は平方インチ当たり2から3ポンド(907gから1361g)(psi)の圧力下降が発生する。したがって、この機構のために、ノズル、特にその前縁を冷却するための圧力限界がごくわずかしか存在しない。F級ガスタービンエンジンに関しては通常、冷却空気の約10%が燃焼プロセスから分岐し、ベーンを冷却するために利用される。例えば7FAエンジンについては、約750°F(約399°C)及び220psiのコンプレッサ吐出空気が、第1段ノズルを冷却するために利用される。冷却プロセスの間、この空気は約250°F(約121°C)まで温度を上昇させ、その後、ガス流路に排出されて、それによって燃焼プロセスから来るより高温(~2700°F(1482°C))のガスを希釈して、燃焼温度を発生させる。7FAエンジンのための典型的な燃焼温度は(
図3の平面B-Bで得られるように)約2450°F(約1343°C)であり、燃焼プロセスからの約2700°F(約1482°C)の温度で900lb/secの高温燃焼ガス、及び、ノズルのための冷却空気からの約1000°F(約538°C)で100lb/secの空気を含む。したがって、これにより、平面B-Bにおいて2540°F(1393°C)の燃焼温度が発生する[(2700*900+100*1000)/1000=2540°F(1393°C)]。計算(2540°F(1393°C)>2450°F(1343°C))におけるより高い温度の根拠は、同様に、燃焼希釈物及び、燃焼器から流入する実際の温度を混合して低減させ、それによって温度を低減する平面B-Bの冷却空気が存在することである。コンプレッサ出口温度(約750°F(約399°C))である有効な燃焼希釈物及び漏洩空気を推定するには、(2700*900+100*1000+Flow*750)/(1000+Flow)=2450となり、流量に関して解くと、Flow=5となる。したがって、コンプレッサ入口流量が約1005lb/secである場合、900lb/secが燃焼プロセスに至り、約5lb/secが漏洩して燃焼プロセスを希釈し、100lb/secが第1段ノズルに至って冷却する。これらの数字は、ガスタービンのコンプレッサにおいて、タービン入口に向かっている1005lb/secの約10%が、タービンの回転部を、またその後静止部を冷却するために燃焼器から流出する前に除去されるという事実を反映しない。したがって、上述の実施例に関しては、流量の数字がすべて、10%低減されるか、または燃焼器の流量は約810lb/sec、第1段ノズルの流量は約90lb/secであり、燃焼器の希釈及び漏洩量は4.3lb/secである。当業者には理解できるように、これらの数字は概算であるが、平面B-Bにおいて漏洩及び冷却空気が混合される場合、2450°F(1343°C)の混合温度(焼成温度)になる。
【0014】
[0014]
冷却空気を通じて達成される冷却利点を判定するための業界基準は、その冷却効果である。冷却効果は、タービンノズルの高温燃焼ガス温度と平均金属温度との間の差異を、高温燃焼ガスと冷却空気の温度との間の差異で割った比であると理解される。例として、上述の7FAエンジンの第1段タービンベーンの冷却効果は、約0.59(高温燃焼ガス(~2700(1482°C))と平均金属温度(~1550(843°C))との間の温度差を高温燃焼ガスと冷却空気温度(~750°F(399°C))との間の差異で割った比)である。
【0015】
[0015]
最高温度の構成要素、通常は第1段ノズル及び第1段ブレードの冷却は、ガスタービンエンジンのすべての相手方ブランド製造業者(OEM)が多くの費用を費やす技術である。例えば、過去2年間で、ラージフレームのガスタービンエンジンが改良されているが、熱効率の改善は、約33%から37%までしか上昇していない。
【0016】
[0016]
発明の概要
本発明は、第1段タービンノズルを含むガスタービン構成要素の冷却効率を向上させるためのいくつかの実施形態を提示する。
【0017】
[0017]
本発明の実施形態において、加熱されたエンジンを有する圧縮空気の補助供給源、補助コンプレッサ、及び、加熱された補助圧縮空気を供給するためのレキュペレータを備える、タービンベーンに冷却空気を導くためのシステム及び方法が提示される。圧縮空気の補助供給源がタービンベーンの冷却のために冷却空気の専用供給源を提供するように、加熱された補助圧縮空気が導管を通じて複数のタービンベーンに供給される。
【0018】
[0018]
本発明の代替的な実施形態において、冷却空気をタービンベーンに選択的に供給するためのシステム及び方法が提示される。複数の空冷タービンベーン、加熱されたエンジンを有する圧縮空気の補助供給源、補助コンプレッサ、及びレキュペレータが設けられる。補助圧縮空気は、タービンベーンを冷却するために空気が選択的に導かれる導管を通じて、複数のタービンベーンに供給される。圧縮空気の補助供給源が利用されない場合、タービンベーンのための冷却空気がガスタービンエンジンコンプレッサから供給される。
【0019】
[0019]
本発明の一実施形態において、必要なタービン冷却・漏洩空気(TCLA)の少なくとも一部が従来技術の冷却設計よりも低い温度を有する圧縮空気の補助供給源によって供給され、それによって必要なTCLAの量を低減させ、全体の効率を向上させる。
【0020】
[0020]
本発明のさらに別の実施形態において、冷却空気を供給して、タービンベーンの通路を選択するためのシステム及び方法が開示される。補助コンプレッサによって冷却空気が発生し、タービンベーンの前縁領域を通過して、空気の一部が前縁に供給され、その後、タービンノズルの別の部分を冷却するために導かれる。
【0021】
[0021]
本発明の別の実施形態において、冷却空気を供給して、タービンベーンの通路を選択するためのシステム及び方法が開示される。補助コンプレッサによって冷却空気が発生し、冷却空気の分配は、所定の制御パラメータにより、タービンノズルに変化する。
【0022】
[0022]
本発明のさらなる利点及び特徴について、以下の説明において部分的に記載し、以下を考察することによって当業者には部分的に明らかになるか、または、本発明の実施から学習することができる。本発明について次に、特に添付の図面を参照しながら説明する。本実施形態の例として第1段ノズルが利用されるが、本発明に概要を記した本手法をタービンセクション内の他の構成要素に応用できることが意図される。
【0023】
[0023]
本発明について、添付の図面を参照して、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
[0024]
【
図1A】シンプルサイクルガスタービンエンジンの概略図を示す。
【
図1B】
図1Aのエンジンの燃焼温度の熱効率及び出力との関係を示す。
【
図2A】コンバインドサイクルガスタービンエンジンの概略図を示す。
【
図2B】
図2Aのエンジンの燃焼温度の熱効率及び出力との関係を示す。
【
図3】標準温度が測定される軸方向位置を示すガスタービンエンジンの部分断面図を示す。
【
図4】その冷却パターンを示す典型的なガスタービンノズルの斜視図である。
【
図5】従来技術による、冷却空気を第1段タービンベーンに導く方法を提供するガスタービンエンジンの部分断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態による、冷却空気を第1段タービンベーンに導く方法を提供するガスタービンエンジンの部分断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態による、圧縮空気補助供給源の概略図である。
【
図8】本発明の代替的な実施形態による、冷却空気を第1段タービンベーンに選択的に導く方法を提供するガスタービンエンジンの部分断面図である。
【
図9】本発明の代替的な実施形態による、第1段タービンベーンを冷却するための専用の冷却空気を導く代替的な方法を提供するガスタービンエンジンの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[0025]
本発明はタービンベーン等の複数のガスタービンエンジン構成要素に冷却空気を供給するための方法及びシステムに関し、より詳細には、ガスタービンエンジン全体の効率を向上させるための第1段タービンベーンに関する。本発明の出願人であるPowerPHASE,LLCは、Turbophase(登録商標)として知られる、ガスタービンエンジンへの注入に先立って圧縮された空気を加熱するためにエンジンからの廃熱が利用される、別途燃料供給されるエンジンによって駆動される圧縮及び加熱プロセスを通じてコンプレッサ吐出領域へと空気を送出する特許出願中の補足圧縮システムを有する。従来技術の空気圧縮及び供給装置は、十分な冷却を行い、ガスタービンエンジンの熱効率を向上させるために必要な温度及び圧力で圧縮空気を供給することができない。
【0026】
[0026]
次に
図6を参照すると、第1段タービンベーン631に代替的な冷却源を供給するシステム600が示される。システム600は、圧縮空気を吐出プレナム604に流入させるコンプレッサ602を備える。コンプレッサ602からの空気のほとんどは、燃焼器ケース608、エンドキャップ610、燃焼ライナ612、スワラアセンブリ614、トランジションピース616、及び、トランジションピース616をタービンフレームの一部、ここでは第1段ベーン外輪620に保持するブラケット618を有する1つまたは複数の燃焼器606を通過する。空気は燃焼器606は燃焼器606内で受容され、1つまたは複数の燃料ノズル622からの燃料と混合される。本実施形態において、第1段ベーン外輪620はコンプレッサ吐出プレナム(CDP)ケース624に固定される。
【0027】
[0027]
コンプレッサ吐出プレナム内の空気は、空気のほとんどが燃焼器606に至るか、またはTCLA(タービン冷却・漏洩空気)に向かうように、シール626によってロータ628と内部ケーシング630との間で封止される。内部ケーシング630は、必要な構造的軸及びねじり支持をもたらす第1段ノズル631を有する機械的インターフェース632を有する。内部ケーシング630は、隣接する燃焼器606間に位置するID支柱634によって、コンプレッサ吐出プレナムケース624内で概ね支持されている。ロータ628は、支柱634によってロータ628をケーシングにつなぐベアリング636を有する。
【0028】
[0028]
図6をさらに参照すると、システム600はまた、TCLAの代替供給源をガスタービンエンジンの第1段ノズル631に提供する。空気供給源がケース624のために、Aにおいてフランジ650に設けられる。この空気供給源Aは
図7に示すように、補助供給源から発生する。より詳細には、
図7を参照すると、圧縮空気の補助供給源700は、空気704及びエンジン燃料706を受容し、機械軸動力708及び高温排気710を発生させる燃料エンジン702を備える。エンジン燃料706は、天然ガスまたは液体燃料とすることができる。コンプレッサ712の各段において周囲空気714が取り込まれ、圧縮されて冷却される多段中間冷却コンプレッサ712を駆動するために、機械軸動力708が利用される。コンプレッサ712は、レキュペレータ718に導かれる暖かい圧縮空気716を供給し、さらに圧縮空気716を燃料エンジン702からの高温排気710によって加熱し、それによって、加熱された圧縮空気720及び暖かい排気722を発生させる。この加熱された圧縮空気は、華氏約400度の温度及び暖かい排気722を有する。圧縮空気700の補助供給源はまた、加熱された圧縮空気720の流量を調整するための弁724を含むことができる。
【0029】
[0029]
図7を表し、本発明に利用することが可能な圧縮空気のこのような1つの補助供給源は、フロリダ州ジュピターのPowerPHASE LLCが製造する、特許出願中のTurbophase(登録商標)システムである。このシステムでは、空気が圧縮され、約400Fの中間温度に加熱されて、コンプレッサ602のコンプレッサ吐出圧力よりもかすかに高い圧力で供給される。加熱された圧縮空気720は、システムの特許出願中の発生プロセスにより、コンプレッサ602からの圧縮空気よりもさらに約25%効率的に発生する。
【0030】
[0030]
図6を再度参照すると、
図6においてAと示される圧縮空気の補助供給源700は、シール654によってコンプレッサ吐出プレナム624と第1段タービンベーン支持リング620との間に形成される外径プレナム652に注入される。シール654はさらに、TCLA空気を供給するための空気供給孔656を備える。このプレナム652はまた、複数の機能を提供するように設計されるスワラ658を備える。すなわち、加熱された圧縮空気がAにおいて送出されている際に、空気の接線方向の渦が、第1段ノズル631に流入し得る空気の実際の流量を低減し、コンプレッサ602からの空気の一部が供給孔656を通って流出することを空気力学的に阻む。加熱された圧縮空気がAにおいて供給されていない際に、供給孔656は冷却空気の必要なレベルタービンノズル631を供給するために十分な大きさである。空気はその後、入口643を通じてベーン631に供給される。Aにおける圧縮空気の供給は最も確実である場合、供給孔656は除去することができる。
【0031】
[0031]
冷却のための圧縮空気はまた、第1段ノズル631の内径領域に供給することができる。より詳細には、
図6を参照すると、圧縮空気はプレナム652から取り入れられ、複数のパイプ660を通って内径プレナム662に導かれて、第1段ノズル631の内径領域に至る。また、第1段ノズル内径プラットフォームと内側ケース641との間に配置されるシール664は、内径プレナム662に位置する。このシール664の中には、TCLA供給孔666が配置される。このプレナム662はまた、2つの機能を提供するよう設計されるスワラ668を含む。まず、圧縮空気の補助供給源700からの圧縮空気がAにおいて送出されている際に、接線方向の渦が付与され、第1段ノズル631に提供することができる空気の実際の流量が低減され、コンプレッサ吐出空気の一部がTCLA供給孔666を通って流出することを空気力学的に阻む。圧縮空気の補助供給源700が空気を送出していない際に、TCLA供給孔666は、第1段ノズル631に現在のレベルのTCLAを供給するために十分な大きさである。Turbophase(登録商標)TCLAが最も確実である場合、TCLA供給孔666は除去することができる。
【0032】
[0032]
次に
図8を参照すると、本発明の代替的な実施形態が示される。本発明の本実施形態において、Aとして示される圧縮空気の補助供給源からの圧縮空気が、入口フランジ802内に供給される。制御弁804は入口フランジ802に隣接して位置する。制御弁804が閉じている場合、空気を第1段ノズル631に供給するためのパイプ660により、空気の全てが強制的に第1段ノズル外径領域652及び第1段ノズル内径領域662に流入する。
【0033】
[0033]
当業者には理解できるように、弁804は制御弁または逆止弁とすることができる。圧縮空気の補助供給源が動作しておらず空気を供給している場合に、その後制御弁804が開き、空気はガスタービンコンプレッサ吐出プレナム604からコンプレッサ吐出フランジ806を通って外径プレナム652及び内径プレナム662へとパイプ660を介して流入し、空気を第1段ノズル631に供給することができる。弁804が開いており、Aにおいて供給されている空気が存在する場合、添加される空気の圧力及び流量によって、ガスタービンのコンプレッサ吐出ケースからの空気は、フランジ806へと流入するか、またはそこから流出してもよい。流れがフランジ806から流出する場合、その後、補助コンプレッサ供給源Aからのガスタービンコンプレッサ吐出ケースからの空気と空気との混合物である混合空気流の結果として生じる温度は、混合温度となる。ガスタービンコンプレッサ出口温度は通常、750°F(399°C)であるため、補助コンプレッサから供給されている空気は750°F(399°C)より低く、混合温度はコンプレッサ吐出温度より低くなる。補助コンプレッサ供給源Aから空気が供給されない場合、その後、コンプレッサ吐出空気はフランジ806から流出し、ノズルに冷却空気を供給する。
【0034】
[0034]
Aにおいて外部コンプレッサからの利用可能な高圧な空気を有することで、他の機能を実現することができる。ガスタービンにおいては通常、リムキャビティとしても知られる回転ブレードの内径プラットフォームと、隣接する上流及び下流のノズルとの間の間隙は、非常に繊細であり、冷却し続けるのが困難な領域である場合がある。TCLAが流路内の加圧ガスよりも高い圧力を有するリムキャビティにTCLAを供給することによって、流路内の加圧ガスがリムキャビティに流入しないようにする。現在のいくつかのガスタービンは、リムキャビティ内に極めて低い圧力限界を有し、その結果、それらの動作が制限されるか、または強制的にTCLAが大幅に増大して、適切なリムキャビティ温度を維持する。圧縮空気の補助供給源によって、エンジンコンプレッサ602よりも高圧、またはTCLA圧力で空気を供給することができるため、現在のTCLAの利用を低減することができ、結果的にエンジン効率が向上する。
【0035】
[0035]
典型的なガスタービンエンジンの特性は、冷媒温度が低減するにつれて、タービン内で冷却された構成要素の最低金属温度を維持するための同じレベルの冷却の実行に必要な空気が少なくなることである。これにより、効率が向上し得る。例えば、Siemens Westinghouse及び三菱重工を含む代替相手方ブランド製造業者は、タービンの一部でも利用されるTCLAの冷却システムを利用する。このシステムはロータ式空気冷却器(RAC)システムと称され、ガスタービンエンジンの外側のTCLAの一部を、空気温度が約750°F(約399°C)から約450°F(約232°C)に低減する冷却器に導く。この温度低下は必要な冷却空気の量を低減するためには十分であるが、依然として、冷却された空気を受容する部品への熱衝撃の危険性を排除するには十分高温である。RAC空気は上述の圧力感度により、冷却器の後にパイプを通じてガスタービンエンジンの回転部に戻される。
【0036】
[0036]
これらの性能向上は、同じ第1段ノズル温度を適切に維持するようにガスタービンの制御システムを調節することができるように圧縮空気の補助供給源からの空気が第1段タービンノズルの冷却システムの入口に導かれる受動冷却システムを用いて実現することができる。この受動システムを利用すると、圧縮空気の補助供給源が動作していない際に、燃焼温度は影響を受けないが、より低温の冷却空気流が第1段タービンノズルに導かれるにつれて、その後、ガスタービンシステムの電力及び効率を向上させるために燃焼器への燃料流を比例して増大させることができる。
【0037】
[0037]
第1段ノズルに供給される冷却空気の全てが圧縮空気の補助供給源から来ており、その結果として、実行しなければならない、最も確実なシステムとなる、非受動的、または専用システムも利用することができる。この構成により、より高圧の異なる冷却方式を利用して、第1段ノズルの冷却効果を向上させることができる。例えば、0.59から0.65の冷却効果を約10%向上させることが可能であった場合、冷却空気の量を約10lb/sec低減することができ、それによって、170MWのガスタービンに約4MWの追加電力が加えられるか、または、電力及び効率が約2.4%向上するこの漸増電力及び効率はより低温の冷却空気及び上述の一定の冷却効果に相加的である。
【0038】
[0038]
次に
図9を参照すると、専用冷却システム900の代替的な実施形態は、空気がコンプレッサ吐出プレナム902から抽出され、冷却器904によって冷却され、その後、コンプレッサ906によって圧力が増大する閉ループシステムを含む。加圧空気908はその後、パイプによって入口910を通って、第1段ノズル931を冷却するための専用冷却システムに至る。従来は空気冷却ノズルにおいて行われていたように、冷却空気を高温ガス流路に排出する代わりに、冷却空気の一部または全部が燃焼プロセスを通過するコンプレッサ吐出プレナム902に戻され、冷却空気を効率的に循環させる。このプロセスの1つの大きな利点は、新しい空気がガスタービンサイクルに添加されず、したがってガスタービン排気の質量流量が比較的変化しないことで、通過がはるかに容易になるためガスタービンの排気の質量流量を比較的一定に保つことができることである。例えば、現在のコンバインドサイクル発電プラントは、漸増する電力のために、ガスタービン自体よりもはるかに多く排出を行うダクトバーナーを利用してもよい。圧縮空気の補助供給源はガスタービン上で作用し、ガスタービンの排出特性を有するため、漸増するメガワットの発生電力に対して、漸増する排出量ははるかに低い。
【0039】
[0039]
図9の閉ループ冷却第1のベーンによって実現される他の利点は、タービンを通過する質量流量が一定である場合、ガスタービンコンプレッサへの背圧が影響を受けず、全てのガスタービン負荷条件においてシステムを利用することができることである。現在、圧縮空気の補助供給源は主に電力増強システムであり、負荷に関する利点を、一部提供することができるが、ガスタービンコンプレッササージの制限により、極めて低い負荷に多少制限される。
図9に示す閉ループ冷却システムは、空気に応用される冷却をコンプレッサ吐出プレナムから離脱する際に増大させるかまたは低下させることによって、冷却された第1のベーン931から戻されている空気の温度上昇を効果的に制御することができ、それによってガスタービンが動作制限をより一層低くすることが可能になる。
【0040】
[0040]
しかし、ノズルを冷却するためにより低温の空気(約400°F(約204°C))を利用することで、ノズルを流出する空気がはるかに低温になり(1000°F(538°C)ではなく約700°F(約371°C))、したがって、より低温のノズル冷却空気が高温ガス流路のガスと混合されることにより、燃焼温度が効果的に低減する。同じ冷却効果を維持し、冷媒温度を低減させることで、燃焼温度を効果的に上昇させることができる。例えば本発明の一実施形態に関して、冷却効果は約0.59[(2700-1550)/(2700-750)=0.59]である。これをより高い燃焼器温度及びより低い冷媒温度で保つことにより、燃焼温度が以下のように上昇する。0.59=(2700+x-1550)/(2700+x-400)、x=504F。したがって、第1段ノズルを冷却するための空気がより低温である場合、ノズルの金属温度及び寿命を維持し、ガスタービンシステムの電力及び効率を向上させながら、効果的な燃焼温度を約500°F(約260°C)上昇させることができる。
【0041】
[0041]
従来技術のガスタービンにおいて、(タービンベーンとの称される)第1段ノズル等の静的構成要素は、ノズルの空気圧の差異を通じて空気冷却される。ノズルはコンプレッサ吐出空気によって冷却され、ノズル外部の同様の圧力により、ノズルの前縁には圧力限界がほぼ存在しない。例えば、燃焼器の圧力下降が2.5%である場合、コンプレッサ吐出圧力は220psigであり、その後、ノズルの前縁に見られる圧力は約214.5psiとなり、約5.5psiのみの圧力によって空気に強制的にベーンの冷却システムを通過させ、その前縁を通って排出する。このため、ベーン前縁への空気供給は通常、可能な限り圧力下降がないように行われる。例えば空気は、コンプレッサディフューザから来る流速に関連する全圧力の一部を得ようと試みるために、トランジションピースの内径領域から得ることができる。同様にノズル内で、大量の冷却空気を通常消費する前縁は、ノズルを低温に保つために利用される熱移動の大部分が空気が一連の前縁のシャワーヘッド孔を通過する際に空気を冷却するための熱の伝導の組み合わせである、蒸散及びフィルム冷却式である。高度のガスタービンは通常、この機能を提供するためのノズルの前縁に密集した数百の冷却孔を有する。空気はノズル前縁のこれらの孔を通過した後、ノズルに直接当たる高温ガスを希釈するためにフィルム冷却層としてノズルエアフォイルの表面に広がるように導かれる。
【0042】
[0042]
本発明は、コンプレッサ吐出圧力を上回るように調節することができる圧力で冷却空気を供給し、異なる、より効率的な冷却方式をノズルの前縁に提供する。電動の、または補助エンジンによって給電された、別途駆動されるコンプレッサの利用により、配管及び多岐管ネットワークを通じてこの空気をノズルに導き、空気をノズルに専用供給する手段を備える圧縮空気の供給源が提供される。従来技術の伝導及びフィルム冷却方式を利用する代わりに、まず前縁上で直接内側衝突し、熱移動を向上させることによって、ノズル前縁を冷却するために必要な伝導及びフィルムの量を削減するために、大幅な圧力下降を利用することができる。粗悪な燃料が引き起こす異物損傷(FOD)等の予期せぬ出来事によってノズル前縁に焼けた孔が空く場合に、エアフォイルの完全な溶け落ち等の惨事がノズルに発生することを防ぐために十分な冷却をもたらすために、前縁に衝撃を与える圧力をリアルタイムで設計または調節することができるように、インピンジメント孔への空気の供給を設計することが可能な、他のいくつかの独特の特徴を追加することもできる。
【0043】
[0043]
加えて、当業者には理解できるように、タービンノズルは通常、複数の冷却回路を含む。このような1つの回路は、ノズルに関連して圧力下降が発生した後に、ノズルの出口平面においてその冷却空気を排出しているため、冷却流を駆動するために必要な圧力がはるかに小さい後縁回路である。その結果、ノズル前縁のインピンジメント冷却のために利用される空気の一部は内部からノズルに導かれ、その通路に沿ってノズルの後縁領域の冷却を行うことができ、そこでノズルの後縁を冷却するためにその空気を利用することができる。これは、ノズルの前縁を冷却するために利用される空気が前縁領域専用である従来技術のノズルとは異なる。ここで、圧力がコンプレッサ吐出圧力を超えて増大する際に、ノズルの前縁及び中間部ならびに/またはノズルの後縁を冷却するために空気を利用することができる。この冷却空気の多目的な利用により、ノズルを冷却するために必要な冷却空気が大幅に低減することになり、それによって、ガスタービンシステムの効率が向上する。
【0044】
[0044]
加えて、当業者には理解できるように、ノズル冷却システムは、通常は検査の間が24,000時間である検査間隔に合うように設計される。設計点は最も温度が高い状態、通常はベース負荷動作であり、燃焼温度が低下する部分負荷では、ノズルの金属温度もまた、設計条件未満に低下する。別途冷却されるノズルシステムの場合、圧力、温度及び/または流量は変化して、部分負荷条件において金属温度を上昇させ、それによりさらにノズルへの冷却空気を低減させて、部分負荷効率を向上させることができる。
【0045】
[0045]
同様にノズル内には通常、ホットスポット、すなわち、より高い金属温度で動作するノズルの領域が存在する。これらの領域は場合によっては、トランジションピースに対するノズル接線方向の位置に関連する。例えば、Siemens Westinghouse501Fガスタービン等のあるエンジンには、16個のトランジションピース及び32個の第1段ノズルが存在する。ノズルの16個はトランジションピースの側壁に位置し、残りの16個のノズルはトランジションピースの吐出フレームの中央に位置する。その結果、トランジションピースの側壁に位置するノズルは、トランジションピースの側壁の冷却及び漏洩流により、高温ガス流路温度が低くなる。このように、これらのノズルは通常、ノズルよりもはるかに低い温度で走行し、トランジションピースから流出する高温燃焼ガスに直接さらされる。本明細書に開示するように、専用ノズル冷却システムを用いると、冷却空気の供給は2つの領域に分岐し、ノズルの金属温度、及びそれによって寿命がトランジションピースの側壁付近に位置するノズルとトランジションピース吐出通路内のノズルに関して同じになるように、別途制御され得る。
【0046】
[0046]
当業者には理解されるように、様々な手段で冷却空気の流量の調整を行うことができる。例えば、ノズルへの冷却空気の流量を調整するための例示的な手段は、様々なエンジン制御アルゴリズムならびに、流量制御弁及び調量プレートを含むがそれに限定されない機械的手段を含むことができる。
【0047】
[0047]
この独特の冷却構成及びプロセスはまた、タービンノズルのセクタに応用することができる。多くの場合、燃焼器からの高温ガス温度はガスタービンノズル入口領域周囲で変化する。セクタに分割される専用ノズル冷却システムでは、ガス温度が変化しても一定の冷却温度及び寿命をもたらすよう各セクタを調節することができる。この機構を用いると、FOD等の予期せぬ出来事により、構成要素の早期損傷が発生する場合、効率的な方法で構成要素の寿命を延長するように補償するよう冷却空気温度、流量、及び/または圧力を調節することができる。当業者には理解できるように、所望の冷却効果を実現するために、同様の結果を実現するように、冷却空気の圧力、温度及び流量の複数の組み合わせを個別に調節することができる。その結果特に、場合によっては、ノズル構成要素を冷却するために圧力が上昇しない場合があることも想定される。本明細書では第1段タービンノズルが利用されたが、本発明の第1段ノズルへの応用は、本発明の潜在的な利用の一表現に過ぎない。本発明はまた、他のタービンノズル及びシュラウドブロックを含む他の静的構成要素に応用可能である。
【0048】
[0048]
当業者には理解できるように、第1のタービンベーンへの冷却空気の低減のために説明される原理は、効率の向上に直接つながり、また他のタービン構成要素にも応用することができる。例えば、第1段ブレード外側空気シールは、第1段タービンブレードの半径方向外側に位置するシールである。これはまた、作動圧力及び温度により、冷却が困難な部品である。したがって、ガスタービン内で利用可能な圧力より高く空気圧を制御することができる冷却空気の個別の供給源を用いる場合、冷却空気がまずいくつかのインピンジメント機構を用いて内側を冷却すると、その後フィルムとして広がる代替的な冷却技術を利用することが可能になる。
【0049】
[0049]
上述のように本発明は、
図7に示すように圧縮空気の補助供給源700を通じる等して、ガスタービンエンジン外部の個別のプロセスを通じて冷却空気が供給されるタービンノズルの冷却方法を提供する。このように圧縮された冷却空気は、コンプレッサ吐出プレナム内の空気を超える圧力を有し、タービンノズルの前縁に導かれる。本発明の一実施形態において、前縁からの空気の一部はその後、タービンノズルの後縁または中央部等の前縁の後方でタービンノズルの一部を冷却するよう導かれる。冷却空気のこの循環または再利用は、圧縮空気の補助供給源によって発生する、空気のより低い温度及びより高い圧力によって可能である。
【0050】
[0050]
本発明の一実施形態において、所定の制御パラメータによってタービンノズルへの流量を変化させるように、圧縮空気の補助供給源からの圧縮空気の分配が制御される。空気圧、温度、空気の流量、またはこれらの制御パラメータの組み合わせを含む様々な制御パラメータを利用することができる。すなわち、個別の外部プロセスによって発生しているタービンノズルに供給される冷却流の量が、それぞれの空気圧、温度、または冷却空気の空気流量によって調整される。このプロセスは、圧縮空気の補助供給源によって発生する空気の制御パラメータ、ならびに温度及び圧力を、タービンノズルにおいて測定し、結果的にタービンノズルへの冷却空気の流量を調節するシステムによって調整される。
【0051】
[0051]
本発明は現在好ましい実施形態として知られるものにおいて説明されているが、本発明は開示される実施形態を制限するものではなく、反対に、以下の特許請求の範囲内の様々な修正及び同等の機構を包含するよう意図されていることを理解すべきである。本発明は、あらゆる点で制限的ではなく例示的であることが意図される特定の実施形態に関連して説明されている。具体的には、本出願における例として第1段ノズルが利用される。しかし原理は、高温ガス流路構成要素と通常称される他の回転及び静止タービン構成要素に応用される。
【0052】
[0052]
以上の説明から、本発明は、先に明記した全ての目的を、本システム及び方法にとって自明であり固有である他の利点と共に、達成するのに非常に適していることが分かるであろう。ある種の特徴及びサブコンビネーションは有益であり、他の特徴及びサブコンビネーションを参照しなくても採用できることが理解される。これは、請求項の範囲によって想定されていることであり、その範囲に含まれる。