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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】内装体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/54 20060101AFI20230323BHJP
   B22D 41/56 20060101ALI20230323BHJP
   C04B 37/02 20060101ALI20230323BHJP
   F27D 3/16 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B22D41/54
B22D41/56
C04B37/02 A
F27D3/16 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018060583
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019171401
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大内 龍哉
(72)【発明者】
【氏名】立川 孝一
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】鈴木 貴雄
【審判官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-276997(JP,A)
【文献】特開平9-239502(JP,A)
【文献】特開平8-133853(JP,A)
【文献】特開昭64-29465(JP,A)
【文献】特開2000-282121(JP,A)
【文献】特開平5-345679(JP,A)
【文献】特開平10-338578(JP,A)
【文献】特開平8-59337(JP,A)
【文献】特開平6-142859(JP,A)
【文献】特開平9-278556(JP,A)
【文献】特表平1-501165(JP,A)
【文献】特開平3-275573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/10 - 11/119
B22D 33/00 - 47/02
F27D 3/00 - 5/00
C04B 37/00 - 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属容器の羽口に嵌合して取り付けられる内装体であって,当該内装体の最外周面の,少なくとも前記羽口の内孔面に目地材を介して接する領域に,前記羽口に取り付けられて使用されることよる受熱後に,前記目地材と接着する機能を有する層(以下「接着層」という。)を備えており,前記接着層は,水ガラス由来の珪酸塩を含有する,内装体。
【請求項2】
前記接着層は,耐火原料粒子として,粒度が0.5mm以下のアルミナ系,アルミナ-シリカ系,ジルコン系,スピネル系若しくは珪酸系の少なくとも1種以上の耐火原料粒子又は金属粒子を合計で10質量%以下含有する,請求項に記載の内装体。
【請求項3】
前記金属粒子は鉄又は鉄系合金粒子である,請求項に記載の内装体。
【請求項4】
前記接着層の最大厚みが0.5mm以上2mm以下である,請求項1から請求項のいずれかに記載の内装体。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれかに記載の内装体の製造方法であって,当該内装体の最外周面に,水ガラス由来の珪酸塩を含む材料にて接着層を形成し,前記接着層の形成後に100℃以上で熱処理する工程を含む,内装体の製造方法。
【請求項6】
前記水ガラスは,SiO/RO(R:アルカリ金属)のモル比が2.35以上3.35以下である,請求項に記載の内装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は取鍋やタンディシュ等の溶融金属容器に設置した羽口に嵌合して取り付けられるガス吹き用プラグや上ノズル等の内装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス吹き用プラグは溶融金属中へガスを吹き込むため,上ノズルは溶融金属を排出するために溶融金属容器の底部に設置される。これらは溶融金属容器の底部に設置した羽口に嵌合して取り付けられる。本明細書では,このような羽口に嵌合して設置される物を「内装体」という。
【0003】
一般的に羽口はその内装体よりも長寿命である。すなわちガス吹き用プラグや上ノズルなどの内装体は,同一羽口に対し複数回交換される。このとき内装体は,羽口との間から溶融金属が漏れることを防ぐために,目地材を介して羽口の内孔面に密着される。そして内装体の交換時には,羽口の内孔面は内装体の外形に合致する,若しくは相似する形状,又は,内装体が目地を介して密着するように,表面の凹凸が目地の厚さ以下である平滑度を維持する必要がある。
【0004】
しかし,内装体の取り外しの際に目地材の少なくとも一部や,それに溶融金属又はスラグ等の介在物が羽口の内孔面に残留して,羽口の内孔面に必要な平滑度を確保できないことがある。
【0005】
残留した目地材は,例えば特許文献1に開示されている装置や清掃方法,その他さまざまな装置や方法により機械的に破壊して除去されることが一般的である。しかし,このような一定でない残留物の除去作業には不測の時間と労力を要して,溶融金属容器の使用サイクルを乱すことがある。さらにはこのような機械的な破壊ないし除去の際に羽口自体を損傷することが多い。羽口が損傷すると,羽口及び周辺の耐火物層の寿命低下を招来し,又は羽口自体及び羽口周辺からの溶融金属の漏れを招来する危険性が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-256440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は,羽口に内装体を嵌合して取り付ける際に使用する目地材が羽口の内孔面に残存することを防止し,又は残存程度を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
羽口の内孔面と目地材を介して接する内装体の最外周面は,大別して(a)金属板(金属ケースの外面)の形態と,(b)耐火物の形態とがある。
【0009】
本発明は,内装体を羽口から取り外す時点において,これら内装体の最外周面の金属板又は耐火物と,目地材との接着性を高めることを基本とする。
【0010】
接着層は,接着層と内装体の耐火物若しくは金属板及び目地材とを焼結又は反応,機械的絡み合い等によって接着し,又は接着層の低融化ないしは目地材及び内装体外周耐火物組織内への浸潤及びその後の固化により接着する。
【0011】
すなわち本発明は,次の1からの内装体及びからの内装体の製造方法である。
1.
溶融金属容器の羽口に嵌合して取り付けられる内装体であって,当該内装体の最外周面の,少なくとも前記羽口の内孔面に目地材を介して接する領域に,前記羽口に取り付けられて使用されることよる受熱後に,前記目地材と接着する機能を有する層(以下「接着層」という。)を備えており,前記接着層は,水ガラス由来の珪酸塩を含有する,内装体。
2.
前記接着層は,耐火原料粒子として,粒度が0.5mm以下のアルミナ系,アルミナ-シリカ系,ジルコン系,スピネル系若しくは珪酸系の少なくとも1種以上の耐火原料粒子又は金属粒子を合計で10質量%以下含有する,前記に記載の内装体。
3.
前記金属粒子は鉄又は鉄系合金粒子である,前記に記載の内装体。
4.
前記接着層の最大厚みが0.5mm以上2mm以下である,前記1から前記のいずれかに記載の内装体。
5.
前記1から前記6のいずれかに記載の内装体の製造方法であって,当該内装体の最外周面に,水ガラス由来の珪酸塩を含む材料にて接着層を形成し,前記接着層の形成後に100℃以上で熱処理する工程を含む,内装体の製造方法。
6.
前記水ガラスは,SiO/RO(R:アルカリ金属)のモル比が2.35以上3.35以下である,前記に記載の内装体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により,接着層が目地材と内装体の最外周面の金属板若しくは耐火物とを焼結又は反応,機械的絡み合い等によって接着し,又は接着層の低融化ないしは目地材及び内装体外周耐火物組織内への浸潤及びその後の固化により,目地材と内装体の最外周面とを接着することができる。
その結果,内装体を溶融金属容器から取り外す際に,目地材は内装体と共に取り外され,羽口の内孔面に残存することを防止することができ,又は残存する目地材を少なくすることができる。
これにより,従来残存した目地材を除去するために必要であった,羽口の内孔面に機械的衝撃を加える等の作業及び工程の必要がなくなり,又は軽減することができ,目地材除去にかかる時間や労力を削減することができる。また羽口の損傷を防止又は軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の内装体の実施形態を示す断面イメージ図で,(a)はガス吹き用プラグであって,その最外周面が金属板(金属ケース)の形態,(b)はガス吹き用プラグであって,その最外周面が緻密質耐火物の形態,(c)は上ノズルであって,耐火物のみで構成されている形態である。
図2図1(b)のガス吹き用プラグ(内装体)を羽口から引き抜くときの状態を説明する断面イメージ図である。
図3】接着層を備えていないガス吹き用プラグ(比較例)を羽口から引き抜くときの状態を説明する断面イメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に,本発明の内装体の実施形態を示している。
図1(a)に示す内装体1はガス吹き用プラグであって,その最外周面が金属板(金属ケース)2であり,この最外周面である金属板(金属ケース)2の外周側に接着層3を備えている。金属板(金属ケース)2の内周側には,緻密質耐火物層4が配置され,この緻密質耐火物層4の内周側にはシール材5を介して通気性耐火物層6が配置されている。そして通気性耐火物層6にはガス導入管7が接続されており,この通気性耐火物層6の上端面からガスが吐出するようになっている。
【0015】
図1(b)に示す内装体1はガス吹き用プラグであって,その最外周面が緻密質耐火物層4であり,この最外周面である緻密質耐火物層4の外周側に接着層3を備えている。緻密質耐火物層4の内周側には金属板(金属ケース)2が配置されており,金属板(金属ケース)2の内周側に通気性耐火物層6が配置されている。
【0016】
図1(c)に示す内装体1は上ノズルであって耐火物のみで構成されている。そして,この耐火物からなる上ノズルの外周側(最外周面)に接着層3を備えている。
【0017】
これら内装体1は,例えば図1(b)の内装体1にて図2に示しているように,溶融金属容器の羽口8に目地材9を介して嵌合して取り付けられる。そして,内装体1の最外周面に設けられている接着層3は,目地材9と接着する機能を有する層であるから,図2に示しているように,内装体1を羽口8から引き抜く際に,目地材9が羽口8に残存することなく,この目地材9をその内側の内装体1と一緒に引き抜くことができる。
【0018】
この接着層の具体的な作用は,主として次のとおりである。
1.接着層が使用時の受熱によって軟化状態になって,内装体最外周面の金属板又は耐火物,及び目地材それぞれの全体に密着する,
2.同様に,それらの凹凸部に食い込むことで接触面積が増加し,
3.機械的な絡み合い又は摩擦抵抗が増大する,
4.内装体及び接着層が受熱して,接着層と,内装体最外周面の金属板又は耐火物,及び目地材それぞれとの間で焼結,反応(第3物質の生成)等を生じ,相互の結合状態を形成又は増加する。
【0019】
内装体最外周面が耐火物の場合は,その耐火物の化学組成と接着層の化学組成,接着層の化学組成と目地材の化学組成等につき,それらを混合物とした際の受熱時の変化を状態図等から推測して,低融化又は鉱物を生成するように調整すればよい。
内装体を取り外す時点ではこれらの温度はこれら低融物が固体化又は鉱物が安定化した状態になるので,相互に接着力が生じ又は接着力が増加する。
例えば,内装体最外周面が耐火物,目地材がアルミナ質,アルミナ-シリカ質,スピネル質,又はジルコン質等一般的な耐火物組成の場合は,珪酸塩やアルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物等を含有する接着層とすればよい。
【0020】
内装体最外周面が金属板の場合はさらに,接着層内に,金属の粒界又は表面を酸化若しくは腐食させる,又は高温下において融着させる金属等,金属板の金属組織又は表面に変化を生じさせる成分を含ませることで,接着層との接着力を強化することもできる。これらの成分としては,リン,硫黄等,鉄,鉄系合金等が挙げられる。
この場合も内装体を取り外す時点ではこれらの温度はこれらが固体化又は安定化した状態になるので,相互に接着力が生じ又は接着力が増加する。
【0021】
以下に接着層として水ガラス由来の珪酸塩を含有するものを用い,内装体最外周面として金属板,及びアルミナ-シリカ質のキャスタブル耐火物を用いる場合を例に挙げて,本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
水ガラスは,耐火物はもちろん,耐火物よりは塗付し難い金属板に対しても,濡れ性,展延性,及び塗布等の設置作業時に保形(いわゆる「流れ落ちない性質」)可能な程度の粘性等を有する。
【0023】
水ガラスは,一般分子式としてRO・nSiO・mHOによって表わされ,RはNa,K,Li等のアルカリ金属を表わし,係数nはSiOのモル数を表わす。工業的にはnが0.5~4.2の範囲のものが生産されており,一般的にはnが2~4程度のものが多く使用されている。mはHOのモル数を表わし,約2.0~3.5の範囲のものが市販されている。
【0024】
この水ガラスは,SiO/RO(R:アルカリ金属)のモル比が2.35以上3.35以下である2号水ガラス(粘性約200mPa・s)や3号水ガラス(粘性約80mPa・s)を使用することが最も好ましい。
なお,この水ガラス2号のJIS R 2212-1~5に準拠した1050℃の熱処理後の化学成分は,SiOが51質量%以上61質量%以下,アルカリ金属酸化物が17質量%以上25質量%以下である。
【0025】
内装体最外周面への塗布作業時には,内装体は概ね截頭円錐状であることから,その置いた方向に拘わらず,いずれかの面が下方向すなわち重力により下がる方向になる。そのため,水ガラスには塗布作業時に流れ落ちない程度の保形性が必要である。
また,塗付等により水ガラスを内装体最外周面全体に薄く設置するためには,その展延性も必要であることから,粘性は低すぎず,高過ぎないことが好ましい。
主としてこれらの理由から,水ガラスとしては2号又は3号が好ましい。
【0026】
次に,内装体の製造方法について説明すると,例えば,2号水ガラス(粘性約200mPa・s)を截頭円錐形状の内装体の最外周面全体に刷毛,吹き付け,浸漬等の方法により,0.5~2mmの厚みで塗布する。
【0027】
接着層の厚さは,目地材に接着し,また目地材及び内装体最外周面(特に耐火物の場合)との間で反応等を生じて一体化若しくはその気孔内に吸収される等による変化を考慮すると,約0.5mm以上約2mm以下程度が好ましい。
この変化の程度は,接着層自体の化学組成及び目地材及び内装体最外周面の化学組成,粒子構成,又は気孔率等の物性等々によっても異なるので,これら組み合わせにおける変化に応じて接着層の厚さを適宜最適化すればよい。
【0028】
なお,珪酸塩含有の接着層の基本部分となる材料としては,2号水ガラス以外にも,SiO/RO比の異なる水ガラス(1号,3号,4号)や,RがNaの他,K,Liのものも使用することができる。また,水ガラスの他に粉末状珪酸アルカリを水で溶解させることもできる。
これら接着層の材料には,粘性,保形性等を高める機能を高めるため,デキストリン,セルロース類等の各種有機物や,各種粘土又は無機質若しくは有機質の繊維等を加えることができる。
【0029】
接着層設置後,約一日間養生ないし自然乾燥後,100℃以上の温度,好ましくはドライヤーにて300℃以上の温度にて熱処理を行う。この熱処理にて前記の水ガラス層(接着層)が強固になる。
【0030】
接着層には,この層の強度向上のために,一般的に使用される珪酸アルカリの硬化剤,例えばMg,Ca等の成分を含有する酸化物,水酸化物等を添加することができる。
さらにこの接着層には,この層の設置作業時の保形性や展延性改善,強度向上,耐火性や耐食性等を向上させるため,設定する接着層の厚さ以下の大きさ以下,好ましくは0.5mm以下の大きさ(粒度)の耐火原料粒子を含有させることができる。また展延性等を維持又は確保するためには,耐火原料粒子の大きさ(粒度)は約0.2mm以下であることがより好ましい。又は目地材との接触面を強化するためには,表面に多少の凹凸を形成するように,粗めの構成としてもよい。
【0031】
この耐火原料粒子は,粒子相互,接着層内の主な構成物質(珪酸塩),内装体の耐火物若しくは目地材又は金属板等との間でも焼結や反応等に寄与して接着層及び金属板等との接着性を確保し又は高めるためには,酸化物,金属の粒子等であることが好ましい。
【0032】
この耐火原料粒子の含有割合が高くなると,展延性や均一性が低下することもあり,接着層に不連続な部位が発生して亀裂が発生することもあるので,展延性を重視する観点からは接着層中に合計で約10質量%以下であることが好ましい。
【0033】
これら耐火原料粒子は,焼結,電融等の人工又は天然にかかわらず,複数種を一又は複数含有させることができる。これら原料の具体例としては,コランダムを主とするアルミナ系,ムライト,シリマナイト族,カオリナイトその他の粘土・シャモット,ロー石,陶石等のアルミナ-シリカ系,ジルコン系,スピネル系,石英,クリストバライト,トリジマイト,ガラス等の珪酸系等,金属の場合は鉄又は鉄系金属の粒子等を使用することができる。
さらに接着層の補強のために無機質又は金属の繊維を含有させてもよい。
【0034】
内装体の耐火物層,目地材の種類・組成等は特に限定する理由はなく,それぞれの用途に応じて設定されたものに応じて,接着層の組成等を選定すればよい。
【0035】
<実施例>
以下,具体的な実施例によって本発明の実施形態の例を説明する。
【0036】
本実施例では,内装体の最外周面となる金属板又は耐火物のうち,相対的に接着層との接着性が低い金属板を基材とし,その金属板表面に接着層を設置し,さらにその接着層の表面に目地材に相当する耐火物層を設置して,熱処理後の試料について剪断強度を測定した。この耐火物層は粒度構成を除き内装体を羽口に装着する際に目地材として用いるモルタルとほぼ同じ構成とした。したがって,この耐火物層を使用した試料による試験結果は,実際のモルタルを使用した場合と同様であると推測することができる。
【0037】
具体的には試料は次の方法により作製した。
120×70×1.2mmの平板状の金属板を金枠底部に置き,その金属板表面に水ガラスに耐火原料粒子を含んだ液を刷毛により塗布し,その上にキャスタブル耐火物を30mmの高さまで加振しながら鋳込んだ。その状態で一日養生(硬化及び自然乾燥)した後,電気炉にて1200℃×1時間にて熱処理した。
【0038】
キャスタブル耐火物は,最大粒子の大きさが5mm,粒度5~1mmの粒子の割合が約50質量%,Al含有量が約90質量%,CaO含有量が約2質量%,1000℃熱処理後の見掛け気孔率が約16%,1000℃熱処理後の曲げ強度が約4MPaのアルミナ-マグネシア系のものを使用した。
【0039】
水ガラスを塗布する際の作業性(金属板への塗布作業性)は,展延性の良い場合を○,やや難がある場合を△として評価した。この「やや難がある」場合は,塗布作業自体に力を要する等の塗り難さに加え,少ない作業での均一性を確保し難い場合,すなわちいわゆる塗りムラが生じ易い場合を含む。
【0040】
接着層と内装体最外周耐火物層を模したキャスタブル耐火物との接着の強弱の指標として,前述のとおり120×70×1.2mmの金属板に水ガラス塗布層を介して鋳込んだキャスタブル耐火物の1200℃熱処理後試料について,アムスラー試験機にて縦軸方向に荷重をかけ両者が剥離するまでの剪断強度を測定し,この測定値を「接合強度」として評価した。
【0041】
表1に各例の構成及び評価結果を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例1~8は2号水ガラスを基本とする例である。
実施例1は2号水ガラス単体での塗布であり,塗布作業性は良好で塗膜の均一性もあり塗膜厚みも約1~2mmを確保することができた。接合強度は2.1MPaを得,接着層を有しない従来技術である比較例1の<0.1に比較して大幅に向上した。
【0044】
実施例2~8は水ガラス2号に酸化物耐火原料粒子を含有させた例である。酸化物耐火原料粒子はいずれも目開き0.212mmの篩いを通過する大きさのものを使用した。
酸化物耐火原料粒子の含有量が10質量%以下の実施例2~6ではいずれも,酸化物耐火原料粒子を含有しない場合(実施例1)よりも接合強度が高くなったが,酸化物耐火原料粒子の含有量が10質量%を超えると(実施例7,8),金属板への塗布作業性(展延性等)に劣り始め,塗布面にムラが発生し,このため接合強度が低下傾向となった。このため実施例7,8については実機での確認(引き抜き試験)は実施しなかった。
【0045】
実施例9~14は3号水ガラスを基本とする例である。2号水ガラスを基本とする前述の実施例1~8と同様の傾向であった。
【0046】
実機においては,目地材として前記の耐火物層を用いて羽口に装着したガス吹き用プラグを用い,その使用後のガス吹き用プラグを引き抜く際にこの耐火物層が羽口側に残存せずに金属板と共に取り外せたか否かを確認した。
接着層を有しない従来技術である比較例1がガス吹き用プラグと一緒に耐火物層を引き抜くことができなかったのに対し(概念的には図3参照),実機での確認に供しなかった実施例7,8,13,14を除き,いずれの実施例も,ガス吹き用プラグと一緒に耐火物層を引き抜くことができた(概念的には図2参照)。
【符号の説明】
【0047】
1 内装体
2 金属板(金属ケース)
3 接着層
4 緻密質耐火物層
5 シール材
6 通気性耐火物層
7 ガス導入管
8 羽口
9 目地材
図1
図2
図3