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  • 特許-直定規 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】直定規
(51)【国際特許分類】
   B43L 7/00 20060101AFI20230323BHJP
   G01B 3/04 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B43L7/00 B
G01B3/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018215344
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020082384
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】591046179
【氏名又は名称】株式会社デザインフィル
(74)【代理人】
【識別番号】100162961
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100146927
【弁理士】
【氏名又は名称】船越 巧子
(74)【代理人】
【識別番号】100188640
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 圭次
(72)【発明者】
【氏名】中村 真介
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-147393(JP,A)
【文献】実開昭48-020538(JP,U)
【文献】特開平05-139089(JP,A)
【文献】実開昭55-160887(JP,U)
【文献】実開昭58-072601(JP,U)
【文献】特開2015-020401(JP,A)
【文献】実開平02-058995(JP,U)
【文献】実開昭60-072290(JP,U)
【文献】特開平11-348489(JP,A)
【文献】実開昭59-043196(JP,U)
【文献】実開昭54-136040(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 7/00
G01B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に表傾斜部および表平坦部を有し、裏面側に裏浮上り部、裏平坦部および裏勾配部を有し、当該裏浮上り部の緩勾配面が先端面を経て当該表傾斜部に連なり、当該裏勾配部が後端面を経て当該表平坦部 へ連なる直定規において、当該裏平坦部はマグネットの固体が一部に内蔵された柔軟性素材であり、紙面の基準面から当該先端面までの高さは紙面の基準面から当該後端面の高さより低く、かつ、当該裏浮上り部は、当該裏平坦部の表面から0.1mm~1.0mmの段差を有することを特徴とする直定規。
【請求項2】
前記先端面までの高さは前記後端面の高さの半分未満であることを特徴とする請求項1に記載の直定規。
【請求項3】
前記段差が0.2mm~0.8mmであることを特徴とする請求項1に記載の直定規。
【請求項4】
前記裏平坦部の表面と前記裏勾配部の後端面が同一の高さであることを特徴とする請求項1に記載の直定規。
【請求項5】
前記裏平坦部以外の部分が非磁性の金属であることを特徴とする請求項1に記載の直定規。
【請求項6】
前記表平坦部に長手方向に平行な複数の凹溝を設けたことを特徴とする請求項1に記載の直定規。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やホワイトボード等に直線を引く直定規、特に目盛付き定規に関する。
【背景技術】
【0002】
筆記具を用いて直線を引く直定規は物差しとして昔から使用されている。そして、このような直定規は滑りやすいことから、裏面にさまざまな工夫がなされてきた。
【0003】
例えば、実全平02-058995号公報(後述する特許文献1)の特許請求の範囲(3)には「長定規の裏面部を表面部と平行でかつ所定の幅員を有し裏面部中央に位置する水平状底部と、該底部の左右両端部より長手方向の左右両側壁面部へ夫々延設してなる左右対称の左右両傾斜部とを有する裏面部とし、左右両傾斜部及び水平状底部のいずれか一方を摩擦面に形成したことを特徴とするノンスリップルーラー」が開示されている。同公報の明細書には「そして摩擦面は、摩擦材を塗布・吹き付けするか、表面を凹凸にカットすることにより全部または一部分に形成する。」(明細書第6頁8行目)ことが記載され、図面の第4図にはその側面図が示されている。
【0004】
また、実登3172967号公報(後述する特許文献2)の請求項1には、「片側目盛りの直線定規(1)において、目盛りの無い反対面(6)の裏面(5)にL字形カット部A’(3)が設けられた事を特徴とする直線定規(1)」が開示されている。同公報の0025段落には「図6は、机(9)に置かれた本考案の直接定規(1)のL字形カット部A(2)を中指(11)で押さえて動かなくしておき、親指(10)でL字形カット部A’(3)の角を引っかけて容易につまみ上げる様子を示している。」と記載されている。
【0005】
しかしながら、机やホワイトボードやロッカー等の家具は表面が平滑なものが多い。そのため紙を載せて上述した定規で直線を引こうとすると、定規と紙間では滑らないものの紙と机等の間で滑ってしまう。近年では冷蔵庫や洗濯機等の家電製品、弁当箱等の日用品など磁石の磁力によってくっつく製品は身の回りにあふれている。
【0006】
他方、磁石を用いた直定規も昔から様々なものが工夫されている。
例えば、実全昭48-020538号公報(後述する特許文献3)には「定規本体1の一側面3の全体もしくは一部に強磁性材料を混入したるゴムは合成樹脂性シート4を貼着してなることを特徴とする定規」が開示されている。同公報の明細書および第4図には、アクリル樹脂製透明定規本体1の裏面側の中央部分のみに溝2aを穿設しフェライト混入ゴムシート4bを嵌着した実施例が記載されている。
【0007】
しかしながら、直定規に用いられる磁石は永久磁石であり、電磁石のように磁力に強弱をつけることができない。すなわち、磁力が強力な磁石を用いると、いったん固定した直定規の位置をずらすのが困難になる。逆に、磁力を弱くすると、固定位置をずらすことはできるものの直線を引く際に直定規が滑ってしまう。たまたま最適な磁力に調節した永久磁石付き直定規が製作できたとしても、磁力の経年変化によってやがて磁力が弱くなり、直定規が鉄製品等に吸着しなくなるという現象が生じる。このような磁力が弱くなった直定規は、鉄製机面やホワイトボード上の紙製品に直線を引こうとすると、紙製品と机面等との間で滑りやすくなってしまう。
【0008】
このような事情から、永久磁石を用いた直定規は、試作品は市販されるものの、実用品として耐えることができるものがなかった。すなわち、これまでの永久磁石を用いた直定規は、片手で強く押さえておかなければ、直定規の先端面に沿って直線が引けないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実全平02-058995号公報
【文献】実用新案登録第3172967号公報
【文献】実全昭48-020538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、強力な磁力のマグネットを用いることによって机等面と紙面との間の滑りを防ぎ、このマグネットと柔軟性素材とによって紙面と直定規との間の滑りを防ぐことを目的とする。特に、本発明は、大幅な移動・回転と小幅な移動・回転の両方が可能な直定規を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1の直定規は、表面側に表傾斜部および表平坦部を有し、裏面側に裏平坦部を有する直定規において、当該裏平坦部に裏浮上り部および裏勾配部を備え、当該裏勾配部の後端面は表平坦部に連なり、当該裏平坦部はマグネットの固体が一部に内蔵された柔軟性素材であり、かつ、当該裏浮上り部は、当該裏平坦部の表面から0.1mm~1.0mmの段差を有することを特徴とする直定規。
【0012】
請求項2の発明は、前記段差が0.2mm~0.8mmであることを特徴とする。請求項3の発明は、前記裏平坦部の表面と前記裏勾配部の後端面が同一の高さであることを特徴とする。請求項4の発明は、前記裏浮上り部が緩勾配を有することを特徴とする。請求項5の発明は、前記裏平坦部以外の部分が非磁性の金属、特にアルミニウムであることを特徴とする。請求項6の発明は、前記表平坦部に長手方向に平行な複数の凹溝を設けたことを特徴とする。
【0013】
強力なマグネットが全面または一部に内蔵された柔軟性素材を裏平坦部に用いると、マグネットの磁力によって直定規は机やホワイトボード等にしっかり固着する。ところが、表平坦部の後端面側を指で押さえると、既知のてこの原理により簡単に机等からマグネットを離すことができ、裏勾配部が机等と接触する。そうすると、マグネットの磁力が弱まり、直定規は簡単に机等からはがすことができる。すなわち、これまでの直定規ように、本発明の直定規も大幅な移動・回転を行うことができる。
【0014】
他方、本発明の直定規において、裏面側に段差を設けることによって小幅な移動・回転の両方が可能になる。すなわち、表傾斜部の先端面側を指で押さえると、裏浮上り部と裏平坦部との段差によって裏平坦部がわずかに持ち上がる。このためマグネットの磁力がわずかに弱くなり、直定規の小幅な移動・回転を行うことができる。
【0015】
段差の距離を0.1mm~1.0mmとしたのは、磁力の引力が直定規と机等との距離に依存するからである。すなわち、下限値の0.1mm未満では強力なマグネットの吸引力が強くなりすぎて小幅な移動・回転を行うことができない。上限値の1.0mmを超える場合は、強力なマグネットの吸引力が弱くなって大幅な移動・回転を行うことができるだけになってしまう。
【0016】
段差の距離を0.2mm~0.8mmが好ましいとしたのは、指で直定規を抑えつけたときに柔軟性素材が微変形できるからである。すなわち、直定規の形状はほぼ定着しており、その長さは一般的に150mm~2000mmもしくは、120mm~600mmである。また、その厚さも一般的に0.5mm~2.0mmもしくは、1.0mm~5.0mmである。そうすると、段差の距離も必然的に限定された範囲となる。よって、段差の距離を0.2mm~0.8mmが好ましいとした。
【0017】
ここで、段差とは、表平坦部の表面から裏浮上り部の始端面までの深さと表平坦部の表面から裏平坦部の表面までの深さの差をいう。裏平坦部以外の部分が非磁性の金属である場合は、金属プレス加工によってアルミニウムやチタンや黄銅、真ちゅう等の金属または合金テープで3方向から柔軟性素材をくるむことができる。あるいは、柔軟性素材を延伸して嵌め込むことができる。裏平坦部以外の部分が非磁性の金属である場合は、便宜的に表平坦部の表面から裏浮上り部の始端面までの深さと表平坦部の表面から裏勾配部の終端面までの深さの差で代用することができる。
【0018】
てこの支点となる柔軟性素材は、ゴム、エラストマーまたは合成樹脂などから構成することができる。小幅な移動・回転を行っても、柔軟性素材がホワイトボードに書かれたものを汚したり消したりすることはない。また、マグネットは、フェライト磁石が一般的であるが、希土類磁石などを用いることもできる。これらの磁石を紛状体にして柔軟性素材に混練したり、線条体やテープ状体にして柔軟性素材の間へ筋状に配列したり、片や円盤にしてスポット的に柔軟性素材へ内蔵したりすることができる。
【0019】
裏浮上り部の平坦部を裏平坦部に対して緩やかな勾配、すなわち緩勾配を設けておくと、表傾斜部の先端面を指で押さえたときに押圧力の水平成分が柔軟性素材へ伝達される。また、マグネットが机等から離れる距離が緩勾配の深さの分だけわずかに大きくなる。
【0020】
また、柔軟性素材からなる段差は表傾斜部の押圧力によって変化するので、表傾斜部の中央部分を指で強く押さえると、段差の距離が短くなり、マグネットの磁力が強くなる。この場合は、直定規が長い場合でも片手の複数の指で押さえながら、直定規でホワイトボードや紙上に直線を引くことができる。表傾斜部の先端面側を半円形断面にしておけば、万年筆やボールペンで書いたときでも、余分のインク等が毛細管現象によって紙やホワイトボード等ににじむことはない。また、経年劣化によりマグネットの磁石が弱くなっても、裏平坦部の柔軟性素材が紙やホワイトボード等に対して滑りにくいので、これまでの直定規と同様に使用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の直定規によれば、直定規の大幅な移動・回転を行うことができるだけでなく、磁力が強力なマグネットを用いても表傾斜部を押さえつける指の位置および押圧力によって小幅な移動・回転を行うことができる効果がある。また、本発明の直線定規は、マグネットの磁力により位置が固定されているので、万年筆やボールペン等で紙面に線引きする場合には裏浮上り部を浮かせた状態でインクをにじませずに直線を引くことができ、鉛筆やシャープペン等で紙面に線引きする場合には表傾斜部を押さえることにより先端面を基準にして直線を引くことができる。
【0022】
また、本発明の直定規の裏浮上り部に緩勾配を有していれば、緩勾配の深さ分だけ段差の距離を増やすことができるので、マグネットの強力な磁力を微調整することができる。逆に、マグネットの磁力が経年劣化しても、押さえつける指の位置および押圧力によって直定規の小幅な移動・回転を行うことができる効果がある。また、表平坦部に長手方向に平行な複数の凹溝を設けておけば、押さえたときに指先が滑ることが無い。また、前記裏平坦部以外の部分が非磁性の金属にすれば、直定規のプレス成形加工が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例を示す直定規の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明における好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例1を図面を参照して説明する。直定規1の外形は、長さ150mm、幅30mmおよび厚さ4mmである。直定規1の表面側に表傾斜部2および表平坦部3とを備え、裏面側に裏浮上り部4、裏平坦部5および裏勾配部6を備える。表傾斜部2には1cm単位に目盛りがふられ、1mm単位の副目盛が刻まれている。表平坦部3には長手方向に16本の筋溝が形成されている。
【0026】
裏浮上り部4は始端面7から緩勾配面8が形成され、断面が半円形の先端面9を経て表傾斜部2へ連なっている。他方、裏勾配部6は終端面10と後端面11を備え、後端面11が表平坦部3に連なっている。
【0027】
裏平坦部5はエラストマーゴム材からなり、直径8mmのマグネット12を、直定規1の長手方向の両端と中央付近に3個内蔵している。裏平坦部5は、アルミニウム製の金属で囲われ、3方向が閉じられた構造になっている。
【0028】
段差13は、表平坦部3の表面から裏浮上り部4の始端面7までの深さと表平坦部3の表面から裏平坦部5の表面までの深さの差をいう。裏平坦部5のエラストマーゴム材は弾力性があるので、便宜的に裏平坦部5の表面を裏勾配部6の終端面10とすると、段差13は0.3mmである。緩勾配面8の始端面7から先端面9に至るまでの緩勾配面8の深さは0.1mmである。他方、裏勾配部6の後端面11から終端面10までの深さは0.8mmである。紙面等の基準面から表傾斜部2の先端面までの高さは、弱い磁力を保つため紙面等の基準面から裏勾配部6の後端面11までの高さの半分未満である。
【0029】
表平坦部3の終端面側を中指で押さえると、てこの原理により簡単に裏勾配部6が事務机の平面に接触するので、親指を使って直定規1を机から離すことができる。
【0030】
表傾斜部2の先端面側を中指で押さえると、てこの原理により簡単に緩勾配面8が事務机の平面に接触する。ところが、段差13の0.3mmと緩勾配面8の深さ0.1mmを合わせても、直定規1は0.4mmしか事務机から離れていない。このため片手で事務机上を平行移動するときは人差し指と中指の2本が必要になる。また、直定規1を回転するときは、表傾斜部2を片手で押さえ、他方の指で後端面11を押す必要がある。
【0031】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、先端面は直線形状でもよい。表傾斜部を指で押さえると、段差等によって先端面が内方に傾斜し、筆記具があたる箇所にスペースが生まれる分インクにじみを防ぐことができるからである。また、柔軟性素材は、実施例とは逆に、滑りの良い合成樹脂であってもよい。現場でフィールドノートとしてメモ用紙等をはさむことができる。
【符号の説明】
【0032】
1 直定規
2 表傾斜部
3 表平坦部
4 裏浮上り部
5 裏平坦部
6 裏勾配部
7 始端面
8 緩勾配面
9 先端面
10 終端面
11 後端面
12 マグネット
13 段差
図1