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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20230323BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
A61M1/36 123
A61M1/16 110
A61M1/36 127
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018246866
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020103709
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】甲 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晋也
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-034782(JP,A)
【文献】特開2017-217161(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0006296(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14-1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液を浄化するための血液浄化器が介装された状態で、血液を体外循環させる血液回路と、
前記血液回路に配設されて血液を送液する血液ポンプと、
前記血液浄化器に透析液を導入する透析液導入ラインと、
前記血液浄化器から透析液を排出する透析液排出ラインと、
前記透析液導入ラインの透析液を前記血液浄化器に送液するとともに、前記血液浄化器の透析液を前記透析液排出ラインに送液する送液部と、
前記透析液導入ライン又は透析液排出ラインに外部の空気を導入する空気導入部と、
前記透析液導入ライン又は前記透析液排出ラインにおける前記送液部を迂回する迂回ラインと、
装置に対する電力供給が停止したとき、少なくとも前記血液ポンプに電力供給する予備電源と、
装置に対する電力供給が停止したとき、前記予備電源からの電力供給により前記血液ポンプを駆動させるとともに、前記空気導入部から空気を導入しつつ前記迂回ラインの透析液を含む前記透析液導入ライン又は透析液排出ラインの透析液を前記血液回路に導入し、当該血液回路内の血液を患者に戻す停電時の返血工程を実行する制御部と、
を具備し、前記空気導入部は、前記血液回路と接続されて当該血液回路内の液体を前記透析液排出ラインに排出する排出ポートである血液浄化装置。
【請求項2】
前記透析液排出ラインには、透析液中に含まれる空気を捕捉し得るチャンバから成り、内部の液面を検知する検知部を有する脱ガスチャンバが接続されるとともに、前記制御部は、停電時の返血工程において、前記脱ガスチャンバにて空気が検出されると、透析液の流路を切り替える、請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項3】
患者の血液を浄化するための血液浄化器が介装された状態で、血液を体外循環させる血液回路と、
前記血液回路に配設されて血液を送液する血液ポンプと、
前記血液浄化器に透析液を導入する透析液導入ラインと、
前記血液浄化器から透析液を排出する透析液排出ラインと、
前記透析液導入ラインの透析液を前記血液浄化器に送液するとともに、前記血液浄化器の透析液を前記透析液排出ラインに送液する送液部と、
前記透析液導入ライン又は透析液排出ラインに外部の空気を導入する空気導入部と、
前記透析液導入ライン又は前記透析液排出ラインにおける前記送液部を迂回する迂回ラインと、
装置に対する電力供給が停止したとき、少なくとも前記血液ポンプに電力供給する予備電源と、
装置に対する電力供給が停止したとき、前記予備電源からの電力供給により前記血液ポンプを駆動させるとともに、前記空気導入部から空気を導入しつつ前記迂回ラインの透析液を含む前記透析液導入ライン又は透析液排出ラインの透析液を前記血液回路に導入し、当該血液回路内の血液を患者に戻す停電時の返血工程を実行する制御部と、
を具備し、前記空気導入部は、透析液を収容しつつ前記透析液導入ラインと連通した透析液供給源のタンクである血液浄化装置。
【請求項4】
前記迂回ラインは複数形成されるとともに、前記制御部は、当該複数の迂回ラインの透析液を含む前記透析液導入ライン又は透析液排出ラインの透析液を前記血液回路に導入させる請求項1~3の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記透析液導入ラインに形成されて当該透析液導入ラインを流れる透析液を濾過して浄化する濾過フィルタを具備し、前記停電時の返血工程において、前記濾過フィルタを通過した透析液を前記血液回路に導入する請求項1~3の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記透析液導入ラインと前記血液回路とを連通して当該透析液導入ラインの透析液を前記血液回路に供給する供給流路を有するとともに、前記停電時の返血工程において、当該供給流路を介して透析液が前記血液回路に導入される請求項1~5の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記供給流路に形成されて前記透析液導入ラインの透析液を前記血液回路に送液する供給ポンプを具備し、前記停電時の返血工程において、前記予備電源からの電力供給により前記血液ポンプ及び供給ポンプを駆動させる請求項6記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液回路にて体外循環する血液を血液浄化器で浄化するための血液浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、透析治療に使用される血液浄化装置としての透析装置は、血液回路に接続されたダイアライザ(血液浄化器)に透析液を供給するとともに、透析により老廃物を含んだ透析液をダイアライザから排出すべく透析液導入ライン及び透析液排出ラインが延設されている。これら透析液導入ライン及び透析液排出ラインは、その先端がダイアライザの透析液導入口及び透析液導出口にそれぞれ接続されるとともに、透析液導入ラインの基端が透析液供給装置に接続されてダイアライザに対する透析液の供給が行われている。
【0003】
ところで、近時において、透析治療時にダイアライザへ供給するための透析液を血液回路側へも導き、その透析液にて血液回路等のプライミング、透析治療中の補液或いは透析治療後の返血を行わせる技術が提案されるに至っている。しかし、このような血液浄化装置においては、生理食塩液を血液回路に供給するための生食ラインを不要とすることができるものの、停電などによって、透析装置における各種アクチュエータや該透析装置に透析液を供給する透析液供給装置が停止してしまった場合、血液回路内の血液を患者に戻す返血を行うことができない。
【0004】
かかる不具合を解消すべく、従来、透析液を貯留する貯留容器を具備するとともに、停電などにより電力供給が停止した場合、補助電源からの電力供給によって、補液ポンプ、血液ポンプ、密閉された透析液回路を外部に開放する開放手段、制御手段等を作動させ、貯留容器の透析液を血液回路に送液して返血するものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5519427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の血液浄化装置においては、貯留容器が専ら停電時のみ必要なものであるため、その容量をあまり大きくすることができず、返血のための十分な透析液を確保するのが難しいという問題がある。また、通常の血液浄化治療時に必要な装置構成とは別個の貯留容器が必要とされるため、装置構成が複雑化してしまうという問題もある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、停電時の返血工程において必要とされる十分な透析液を確保することができるとともに、血液浄化治療時に必要な装置構成を流用して停電時の返血工程を実行させることができる血液浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、患者の血液を浄化するための血液浄化器が介装された状態で、血液を体外循環させる血液回路と、前記血液回路に配設されて血液を送液する血液ポンプと、前記血液浄化器に透析液を導入する透析液導入ラインと、前記血液浄化器から透析液を排出する透析液排出ラインと、前記透析液導入ラインの透析液を前記血液浄化器に送液するとともに、前記血液浄化器の透析液を前記透析液排出ラインに送液する送液部と、前記透析液導入ライン又は透析液排出ラインに外部の空気を導入する空気導入部と、前記透析液導入ライン又は前記透析液排出ラインにおける前記送液部を迂回する迂回ラインと、装置に対する電力供給が停止したとき、少なくとも前記血液ポンプに電力供給する予備電源と、装置に対する電力供給が停止したとき、前記予備電源からの電力供給により前記血液ポンプを駆動させるとともに、前記空気導入部から空気を導入しつつ前記迂回ラインの透析液を含む前記透析液導入ライン又は透析液排出ラインの透析液を前記血液回路に導入し、当該血液回路内の血液を患者に戻す停電時の返血工程を実行する制御部とを具備し、前記空気導入部は、前記血液回路と接続されて当該血液回路内の液体を前記透析液排出ラインに排出する排出ポートである
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記透析液排出ラインには、透析液中に含まれる空気を捕捉し得るチャンバから成り、内部の液面を検知する検知部を有する脱ガスチャンバが接続されるとともに、前記制御部は、停電時の返血工程において、前記脱ガスチャンバにて空気が検出されると、透析液の流路を切り替える
【0010】
請求項3記載の発明は、患者の血液を浄化するための血液浄化器が介装された状態で、血液を体外循環させる血液回路と、前記血液回路に配設されて血液を送液する血液ポンプと、前記血液浄化器に透析液を導入する透析液導入ラインと、前記血液浄化器から透析液を排出する透析液排出ラインと、前記透析液導入ラインの透析液を前記血液浄化器に送液するとともに、前記血液浄化器の透析液を前記透析液排出ラインに送液する送液部と、前記透析液導入ライン又は透析液排出ラインに外部の空気を導入する空気導入部と、前記透析液導入ライン又は前記透析液排出ラインにおける前記送液部を迂回する迂回ラインと、装置に対する電力供給が停止したとき、少なくとも前記血液ポンプに電力供給する予備電源と、装置に対する電力供給が停止したとき、前記予備電源からの電力供給により前記血液ポンプを駆動させるとともに、前記空気導入部から空気を導入しつつ前記迂回ラインの透析液を含む前記透析液導入ライン又は透析液排出ラインの透析液を前記血液回路に導入し、当該血液回路内の血液を患者に戻す停電時の返血工程を実行する制御部とを具備し、前記空気導入部は、透析液を収容しつつ前記透析液導入ラインと連通した透析液供給源のタンクである
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1~3の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記迂回ラインは複数形成されるとともに、前記制御部は、当該複数の迂回ラインの透析液を含む前記透析液導入ライン又は透析液排出ラインの透析液を前記血液回路に導入させる。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1~3の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記透析液導入ラインに形成されて当該透析液導入ラインを流れる透析液を濾過して浄化する濾過フィルタを具備し、前記停電時の返血工程において、前記濾過フィルタを通過した透析液を前記血液回路に導入する。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1~5の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記透析液導入ラインと前記血液回路とを連通して当該透析液導入ラインの透析液を前記血液回路に供給する供給流路を有するとともに、前記停電時の返血工程において、当該供給流路を介して透析液が前記血液回路に導入される。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の血液浄化装置において、前記供給流路に形成されて前記透析液導入ラインの透析液を前記血液回路に送液する供給ポンプを具備し、前記停電時の返血工程において、前記予備電源からの電力供給により前記血液ポンプ及び供給ポンプを駆動させる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、装置に対する電力供給が停止したとき、予備電源からの電力供給により血液ポンプを駆動させるとともに、空気導入部から空気を導入しつつ迂回ラインの透析液を含む透析液導入ライン又は透析液排出ラインの透析液を血液回路に導入し、当該血液回路内の血液を患者に戻す停電時の返血工程を実行するので、停電時の返血工程において必要とされる十分な透析液を確保することができるとともに、血液浄化治療時に必要な装置構成を流用して停電時の返血工程を実行させることができる。
さらに、空気導入部は、血液回路と接続されて当該血液回路内の液体を透析液排出ラインに排出する排出ポートであるので、排出ポートが血液回路内の液体を排出させる機能と、停電時の返血工程時の空気の導入口としての機能とを兼ね備えることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、脱ガスチャンバにて空気が検出されると、透析液の流路を切り替えることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、迂回ラインは複数形成されるとともに、制御部は、当該複数の迂回ラインの透析液を含む透析液導入ライン又は透析液排出ラインの透析液を血液回路に導入させるので、停電時の返血工程において、複数の迂回ラインの透析液を使用することができ、より一層十分な量の透析液を確保することができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、透析液導入ラインに形成されて当該透析液導入ラインを流れる透析液を濾過して浄化する濾過フィルタを具備し、停電時の返血工程において、濾過フィルタを通過した透析液を血液回路に導入するので、停電時に清浄な透析液にて返血工程を行わせることができる。
【0020】
請求項6の発明によれば、透析液導入ラインと血液回路とを連通して当該透析液導入ラインの透析液を血液回路に供給する供給流路を有するとともに、停電時の返血工程において、当該供給流路を介して透析液が血液回路に導入されるので、停電時の返血工程を円滑に行わせることができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、供給流路に形成されて透析液導入ラインの透析液を血液回路に送液する供給ポンプを具備し、停電時の返血工程において、予備電源からの電力供給により血液ポンプ及び供給ポンプを駆動させるので、停電時の返血工程を短時間で行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係る血液透析装置を示す模式図
図2】同血液透析装置による停電時の返血工程(第1返血工程)時の状態を示す模式図
図3】同血液浄化装置による停電時の返血工程(第2返血工程)時の状態を示す模式図
図4】本発明の第2の実施形態に係る血液透析装置による停電時の返血工程時の状態を示す模式図
図5】本発明の第3の実施形態に係る血液透析装置による停電時の返血工程時の状態を示す模式図
図6】本発明の第4の実施形態に係る血液透析装置による停電時の返血工程時の状態を示す模式図
図7】本発明の第5の実施形態に係る血液透析装置による停電時の返血工程時の状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る血液浄化装置は、血液透析装置に適用されたもので、図1に示すように、動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bから成る血液回路1と、血液ポンプ2と、血液浄化器としてのダイアライザ4と、送液部としての複式ポンプ5と、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2と、濾過フィルタ7a、7bと、制御部11と、予備電源Bとを有して構成されている。
【0024】
血液回路1は、患者の血液を体外循環させるための可撓性チューブから成り、動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bを有して構成されている。動脈側血液回路1aの先端には、動脈側穿刺針aを取り付けるためのコネクタが形成されるとともに、静脈側血液回路1bの先端には、静脈側穿刺針bを取り付けるためのコネクタが形成されており、これら動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺して血液ポンプ2を駆動させることにより、患者の血液を血液回路1にて体外循環可能とされている。なお、動脈側血液ポンプ1aの先端部には、血液の流路を閉止可能なクランプ部Vaを有するとともに、静脈側血液ポンプ1bの先端部には、血液の流路をクランプして閉止可能なクランプ部Vbを有している。
【0025】
血液ポンプ2は、血液回路1(動脈側血液回路1a)に配設されて血液を送液するもので、動脈側血液回路1aに接続された軟質及び太径のポンプチューブをしごくことにより送液可能なしごき型ポンプにて構成されている。そして、血液ポンプ2を駆動(正回転駆動)させると、ポンプチューブをしごいて患者の血液を動脈側穿刺針a側からダイアライザ4の血液導入口4aの方向に流動させ得るようになっている。
【0026】
ダイアライザ4は、体外循環する患者の血液を浄化するためのもので、不図示の血液浄化膜(本実施形態においては中空糸膜であるが半透膜及び濾過膜を含む)を内在している。また、ダイアライザ4は、血液を導入する血液導入口4a及び導入した血液を導出する血液導出口4bが形成されるとともに、透析液導入ラインL1の先端が接続されて透析液を導入する透析液導入口4c、及び透析液排出ラインL2の先端が接続されて導入した透析液を排出する透析液排出口4dが形成されている。
【0027】
しかして、血液回路1にて体外循環する血液は、血液導入口4aから導入された後、中空糸膜を介して透析液と接触されて血液浄化作用が施されるようになっている。なお、体外循環の過程において、ダイアライザ4にて浄化された血液は、静脈側血液回路1bに接続されたエアトラップチャンバ3にて除泡が施された後、静脈側穿刺針bを介して患者の体内に戻されることとなる。
【0028】
一方、透析装置本体には、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2が配設されており、透析液導入ラインL1は、ダイアライザ4に透析液を導入する配管から成るとともに、透析液排出ラインL2は、ダイアイライザ4から透析液を排出する配管から成る。具体的には、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2の基端側には、それぞれ透析液供給装置(透析液供給源)及び透析液排出手段(何れも不図示)が接続されるとともに、これら透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2に跨って複式ポンプ5(或いはこれに代えてチャンバ等であってもよい)が配設されている。
【0029】
複式ポンプ5は、透析液導入ラインL1の透析液をダイアライザ4に送液するとともに、ダイアライザ4の透析液(排液)を透析液排出ラインL2に送液するもので、装置に対する電力供給にて駆動し得るようになっている。そして、複式ポンプ5を駆動させることにより、透析液導入ラインL1を介して透析液供給装置からダイアライザ4に対して調製された透析液を供給するとともに、透析液排出ラインL2を介してダイアライザ4から排出された透析液が透析液排出手段に至るよう構成されている。
【0030】
また、透析液導入ラインL1には、電磁弁V1、電磁弁V3及び電磁弁V11が配設されるとともに、濾過フィルタ(7a、7b)と、熱交換器8と、加温器9と、供給ポートP1とが接続されている。濾過フィルタ(7a、7b)は、透析液導入ラインL1を流れる透析液を濾過して浄化するためのもので、濾過膜を介して被濾過透析液(濾過されるべき透析液)が流動する1次室と濾過透析液(濾過された後の透析液)が流動する2次室とをそれぞれ具備して構成されている。なお、濾過フィルタ(7a、7b)の濾過膜は、透析液は通過させつつ空気は通過させず遮蔽する性質を有する。
【0031】
熱交換器8は、透析液排出ラインL2を流れる透析液(排液)が導入され、その透析液(排液)の熱を透析液導入ラインL1にて流れる透析液に伝達させるもので、透析液導入ラインL1における電磁弁V11と加温器9との間に配設されている。加温器9は、ダイアライザ4に導入する透析液を加温するためのもので、熱交換器8と複式ポンプ5の給液側との間に配設されている。供給ポートP1は、プライミングラインとしての供給流路L3の基端を接続可能な接続部から成り、透析液導入ラインL1における電磁弁V1と濾過フィルタ7bとの間に接続されている。
【0032】
供給流路L3は、透析液導入ラインL1と血液回路1(本実施形態においては動脈側血液回路1a)とを連通して当該透析液導入ラインL1の透析液を血液回路1に供給するための可撓性チューブから成る。かかる供給流路L3には、透析液の流路をクランプして閉止可能なクランプ部Vcを有しており、プライミング工程、補液工程又は返血工程において、任意タイミングで血液回路1に透析液導入ラインL1の透析液を供給し得るようになっている。
【0033】
さらに、透析液排出ラインL2には、電磁弁V2及び電磁弁V12が配設されるとともに、脱ガスチャンバ10が接続されている。脱ガスチャンバ10は、透析液(排液)中に含まれる空気(気泡)を捕捉し得るチャンバから成り、透析液排出ラインL2における電磁弁V2と複式ポンプ5の排液側との間に配設されている。かかる脱ガスチャンバ10は、内部の液面を検知するフロート等の検知部を有するとともに、上部から迂回ラインL9が延設されている。
【0034】
また、本実施形態においては、透析液導入ラインL1と透析液排出ラインL2をバイパスするバイパスラインL4、L5及びL6が接続されており、これらバイパスラインL4、L5及びL6には、電磁弁V4、V5及びV6がそれぞれ配設されている。なお、バイパスラインL5及びL6は、透析液導入ラインL1の濾過フィルタ7a、7bとそれぞれ接続されている。
【0035】
またさらに、本実施形態に係る透析液排出ラインL2には、複式ポンプ5(送液部)の排液側を迂回する迂回ライン(L7、L8、L9)が接続されている。このうち迂回ラインL7には、除水ポンプ6が接続されており、血液回路1にて患者の血液を体外循環させる過程で除水ポンプ6を駆動させることにより、ダイアライザ4を流れる血液から水分を取り除いて除水し得るようになっている。
【0036】
迂回ラインL8は、一端が複式ポンプ5の排液側より上流側に接続され、他端が複式ポンプ5の排液側より下流側に接続されるとともに、電磁弁V10が配設されている。そして、電磁弁V10を開状態とすることにより、透析液排出ラインL2を流れる透析液(排液)が複式ポンプ5の排液側を迂回して流れるようになっている。
【0037】
迂回ラインL9は、一端が脱ガスチャンバ10の上部から延設されるとともに、他端側が第1迂回ラインL9aと第2迂回ラインL9bとに分岐している。第2迂回ラインL9bは、電磁弁V9が配設され、先端が透析液排出ラインL2における熱交換器8の下流側に接続されている。第1迂回ラインL9aは、電磁弁V7及び電磁弁V8が配設され、これら電磁弁V7及び電磁弁V8の間に空気導入部としての排出ポートP2が接続されるとともに、先端がバイパスラインL4に接続されている。
【0038】
排出ポートP2は、透析液排出ラインL2の複式ポンプ5(送液部)より下流側に形成された接続ポートから成り、返血終了後の血液回路1(例えば、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bが取り外されたコネクタ等)と接続されて当該血液回路1内の液体(例えば、返血が終了した後の置換液)を透析液排出ラインL2に排出し得るとともに、停電時の返血工程においては、外部から空気を導入し得る開口を有している。
【0039】
予備電源Bは、医療設備や治療室の停電等によって装置に対する電力供給が停止したとき、少なくとも血液ポンプ2に電力供給するバックアップ用バッテリから成るものである。すなわち、通常時においては、装置に供給される電力にて専ら蓄電され、停電等によって装置に対する電力供給が停止した場合、血液ポンプ2に電力供給して返血工程を行わせ得るよう構成されている。
【0040】
制御部11は、マイコン等から成り、装置に対する電力供給が停止したとき、予備電源Bからの電力供給により血液ポンプ2を駆動させるとともに、排出ポートP2(空気導入部)から空気を導入しつつ迂回ライン(L8、L9)の透析液を含む透析液導入ラインL1又は透析液排出ラインL2の透析液を血液回路1に導入し、当該血液回路1内の血液を患者に戻す停電時の返血工程を実行するものである。
【0041】
より具体的に説明すると、制御部11は、装置に対する電力供給が停止すると、図2に示すように、予備電源Bによる電力供給にて、電磁弁(V1、V2、V4、V6、V7、V11、V12)を閉状態としつつ電磁弁(V3、V5、V8、V9)を開状態とする。このとき、複式ポンプ5は停止状態とされるとともに、クランプ部Vaは閉状態、クランプ部Vb、Vcは開状態とされている。
【0042】
そして、予備電源Bによる電力供給にて血液ポンプ2を駆動させると、排出ポートP2を介して外部から空気が導入され、迂回ラインL9(第1迂回ラインL9aの一部及び第2迂回ラインL9bを含む)の透析液を含む透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2の透析液(図2中太線で示す部位の透析液)が供給ポートP1を介して供給流路L3に至り、血液回路1に導入される。
【0043】
その後、脱ガスチャンバ10にて空気が検出されると、制御部11は、図3に示すように、予備電源Bによる電力供給にて、電磁弁(V1、V2、V4、V6、V7、V9、V11、V12)を閉状態としつつ電磁弁(V3、V5、V8、V10)を開状態として透析液の流路を切り替える。なお、クランプ部Vaの閉状態、クランプ部Vb、Vcの開状態は維持されている。
【0044】
そして、予備電源Bによる電力供給にて血液ポンプ2を駆動させると、排出ポートP2を介して外部から空気が導入され、迂回ラインL8(第1迂回ラインL9aの一部を含む)の透析液を含む透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2の透析液(図2中太線で示す部位の透析液)が供給ポートP1を介して供給流路L3に至り、血液回路1に導入される。
【0045】
このように、血液回路1に透析液が導入されることにより、血液回路1内の血液を透析液に置換することができるので、血液回路1内の血液を患者に戻して停電時の返血工程を実行することができる。また、電力消費量が比較的大きい複式ポンプ5を駆動させず電力消費量が比較的小さい血液ポンプ2を駆動させることによって、停電時の返血工程を実行することができ、より確実に返血させることができる。
【0046】
次に、本発明の第2の実施形態に係る血液浄化装置について説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、血液透析装置に適用されたもので、図4に示すように、第1の実施形態と同様の装置構成とされている。すなわち、本実施形態に係る血液浄化装置は、血液回路1と、血液ポンプ2と、血液浄化器としてのダイアライザ4と、送液部としての複式ポンプ5と、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2と、濾過フィルタ7a、7bと、制御部11と、予備電源Bとを有して構成されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0047】
ここで、本実施形態に係る空気導入部は、透析液排出ラインL2の基端(図4中右端)から成り、大気開放されつつダイアライザ4から排出された透析液(排液)を透析液排出手段(不図示)に流出させ得る部位から成る。かかる空気導入部(透析液排出ラインL2の基端)は、透析液排出ラインL2の複式ポンプ5(送液部)より下流側に形成された大気開放部から成る。
【0048】
これにより、本実施形態に係る制御部11は、装置に対する電力供給が停止したとき、予備電源Bからの電力供給により血液ポンプ2を駆動させるとともに、透析液排出ラインL2の先端の大気開放部から空気を導入しつつ迂回ラインL8の透析液を含む透析液導入ラインL1又は透析液排出ラインL2の透析液を血液回路1に導入し、当該血液回路1内の血液を患者に戻す停電時の返血工程を実行するよう構成されている。
【0049】
より具体的に説明すると、制御部11は、装置に対する電力供給が停止すると、図4に示すように、予備電源Bによる電力供給にて、電磁弁(V1、V2、V4、V6、V7、V8、V9、V11)を閉状態としつつ電磁弁(V3、V5、V10、V12)を開状態とする。このとき、複式ポンプ5は停止状態とされるとともに、クランプ部Vaは閉状態、クランプ部Vb、Vcは開状態とされている。
【0050】
そして、予備電源Bによる電力供給にて血液ポンプ2を駆動させると、透析液排出ラインL2の先端の大気開放部を介して外部から空気が導入され、迂回ラインL8の透析液を含む透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2の透析液(図4中太線で示す部位の透析液)が供給ポートP1を介して供給流路L3に至り、血液回路1に導入される。このように、血液回路1に透析液が導入されることにより、血液回路1内の血液を透析液に置換することができるので、血液回路1内の血液を患者に戻して停電時の返血工程を実行することができる。
【0051】
次に、本発明の第3の実施形態に係る血液浄化装置について説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、血液透析装置に適用されたもので、図5に示すように、第1の実施形態の構成に加え、迂回ラインL10と、空気導入部としての接続ラインL11とを有して構成されている。すなわち、本実施形態に係る血液浄化装置は、血液回路1と、血液ポンプ2と、血液浄化器としてのダイアライザ4と、送液部としての複式ポンプ5と、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2と、濾過フィルタ7a、7bと、制御部11と、予備電源Bと、迂回ラインL10と、接続ラインL11とを有して構成されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0052】
ここで、本実施形態に係る迂回ラインL10は、透析液導入ラインL1における複式ポンプ5の給液側(送液部)を迂回するための流路から成り、電磁弁V13が配設されている。また、空気導入部としての接続ラインL11は、先端が透析液導入ラインL1における電磁弁V11と熱交換器8との間に接続され、基端が大気開放とされるとともに、電磁弁V14が配設されている。かかる空気導入部(接続ラインL11)は、透析液導入ラインL1の複式ポンプ5(送液部)より上流側に形成された流路から成る。
【0053】
これにより、本実施形態に係る制御部11は、装置に対する電力供給が停止したとき、予備電源Bからの電力供給により血液ポンプ2を駆動させるとともに、接続ラインL11の先端の大気開放部から空気を導入しつつ迂回ラインL10の透析液を含む透析液導入ラインL1の透析液を血液回路1に導入し、当該血液回路1内の血液を患者に戻す停電時の返血工程を実行するよう構成されている。
【0054】
より具体的に説明すると、制御部11は、装置に対する電力供給が停止すると、図5に示すように、予備電源Bによる電力供給にて、電磁弁(V1、V2、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12)を閉状態としつつ電磁弁(V3、V13、V14)を開状態とする。このとき、複式ポンプ5は停止状態とされるとともに、クランプ部Vaは閉状態、クランプ部Vb、Vcは開状態とされている。
【0055】
そして、予備電源Bによる電力供給にて血液ポンプ2を駆動させると、接続ラインL11の先端の大気開放部を介して外部から空気が導入され、迂回ラインL10の透析液を含む透析液導入ラインL1の透析液(図5中太線で示す部位の透析液)が供給ポートP1を介して供給流路L3に至り、血液回路1に導入される。このように、血液回路1に透析液が導入されることにより、血液回路1内の血液を透析液に置換することができるので、血液回路1内の血液を患者に戻して停電時の返血工程を実行することができる。
【0056】
次に、本発明の第4の実施形態に係る血液浄化装置について説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、血液透析装置に適用されたもので、図6に示すように、第1の実施形態の構成に加え、迂回ラインL10と、空気導入部としての透析液供給装置(透析液供給源)のタンクTとを有して構成されている。すなわち、本実施形態に係る血液浄化装置は、血液回路1と、血液ポンプ2と、血液浄化器としてのダイアライザ4と、送液部としての複式ポンプ5と、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2と、濾過フィルタ7a、7bと、制御部11と、予備電源Bと、迂回ラインL10と、タンクTとを有して構成されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0057】
ここで、本実施形態に係る迂回ラインL10は、第3の実施形態と同様、透析液導入ラインL1における複式ポンプ5の給液側(送液部)を迂回するための流路から成り、電磁弁V13が配設されている。また、空気導入部としての透析液供給装置(透析液供給源)のタンクTは、透析液を収容しつつ透析液導入ラインL1と連通した収容部から成り、その収容部の上部に外部の空気が導入可能とされている。かかる空気導入部(タンクT)は、透析液導入ラインL1の複式ポンプ5(送液部)より上流側に形成された部位から成る。
【0058】
これにより、本実施形態に係る制御部11は、装置に対する電力供給が停止したとき、予備電源Bからの電力供給により血液ポンプ2を駆動させるとともに、タンクTの上部から空気を導入しつつ迂回ラインL10の透析液を含む透析液導入ラインL1の透析液を血液回路1に導入し、当該血液回路1内の血液を患者に戻す停電時の返血工程を実行するよう構成されている。
【0059】
より具体的に説明すると、制御部11は、装置に対する電力供給が停止すると、図6に示すように、予備電源Bによる電力供給にて、電磁弁(V1、V2、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V12)を閉状態としつつ電磁弁(V3、V11、V13)を開状態とする。このとき、複式ポンプ5は停止状態とされるとともに、クランプ部Vaは閉状態、クランプ部Vb、Vcは開状態とされている。
【0060】
そして、予備電源Bによる電力供給にて血液ポンプ2を駆動させると、タンクTの上部の空気層を介して外部から空気が導入され、迂回ラインL10の透析液を含む透析液導入ラインL1(透析液導入ラインL1とタンクTとを接続する流路を含む)の透析液(図6中太線で示す部位の透析液)が供給ポートP1を介して供給流路L3に至り、血液回路1に導入される。このように、血液回路1に透析液が導入されることにより、血液回路1内の血液を透析液に置換することができるので、血液回路1内の血液を患者に戻して停電時の返血工程を実行することができる。
【0061】
次に、本発明の第5の実施形態に係る血液浄化装置について説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、血液透析装置に適用されたもので、図7に示すように、第1の実施形態の構成における供給流路L3の先端が静脈側血液回路1bに接続されるとともに、当該供給流路L3にしごきポンプから成る供給ポンプMが配設されている。すなわち、本実施形態に係る血液浄化装置は、血液回路1と、血液ポンプ2と、血液浄化器としてのダイアライザ4と、送液部としての複式ポンプ5と、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2と、濾過フィルタ7a、7bと、制御部11と、予備電源Bと、供給ポンプMが配設された供給流路L3とを有して構成されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0062】
供給ポンプMは、供給流路L3に形成されて透析液導入ラインL1の透析液を血液回路1(静脈側血液回路1b)に送液するもので、停電時の返血工程において、予備電源Bからの電力供給により血液ポンプ2及び供給ポンプMを駆動させるよう構成されている。ここで、空気導入部は、第1の実施形態と同様、排出ポートP2から成るとともに、迂回ラインL8及び迂回ラインL9(第1迂回ラインL9a及び第2迂回ラインL9bを含む)の透析液を含む透析液導入ラインL1又は透析液排出ラインL2の透析液を血液回路1に供給可能とされている。
【0063】
これにより、本実施形態に係る制御部11は、装置に対する電力供給が停止したとき、予備電源Bからの電力供給により血液ポンプ2を駆動させるとともに、排出ポートP2(空気導入部)から空気を導入しつつ迂回ライン(L8、L9)の透析液を含む透析液導入ラインL1又は透析液排出ラインL2の透析液を血液回路1に導入し、当該血液回路1内の血液を患者に戻す停電時の返血工程を実行するよう構成されている(第1の実施形態における停電時の返血工程参照)。
【0064】
ここで、本実施形態においては、停電時の返血工程において、予備電源Bからの電力供給により血液ポンプ2及び供給ポンプMを駆動させるよう構成されている。例えば、停電時の返血工程において、図7に示すように、供給ポンプMを駆動させて透析液導入ラインL1の透析液を血液回路1に導入するとともに、血液ポンプ2を逆回転駆動させるよう制御すれば、動脈側血液回路1aの血液と静脈側血液回路1bの血液の両方を同時に返血することができる。
【0065】
上記第1~5の実施形態によれば、停電等によって装置に対する電力供給が停止したとき、予備電源Bからの電力供給により血液ポンプ2を駆動させるとともに、空気導入部から空気を導入しつつ迂回ラインの透析液を含む透析液導入ラインL1又は透析液排出ラインL2の透析液を血液回路1に導入し、当該血液回路1内の血液を患者に戻す停電時の返血工程を実行するので、停電時の返血工程において必要とされる十分な透析液を確保することができるとともに、血液浄化治療時に必要な装置構成を流用して停電時の返血工程を実行させることができる。
【0066】
また、透析液導入ラインL1又は透析液排出ラインL2に外部の空気を導入する空気導入部は、透析液導入ラインL1の複式ポンプ5(送液部)より上流側又は透析液排出ラインL2の複式ポンプ5(送液部)より下流側に形成されるので、停電時の返血工程において、より十分な量の透析液を確保することができる。
【0067】
さらに、第1の実施形態及び第5の実施形態によれば、透析液導入ラインL1又は透析液排出ラインL2に外部の空気を導入する空気導入部は、血液回路1と接続されて当該血液回路1内の液体を透析液排出ラインL2に排出する排出ポートP2であるので、排出ポートP2が血液回路1内の液体を排出させる機能と、停電時の返血工程時の空気の導入口としての機能とを兼ね備えることができる。
【0068】
またさらに、第1の実施形態及び第5の実施形態によれば、迂回ライン(L8、L9)は複数形成されるとともに、制御部11は、当該複数の迂回ライン(L8、L9)の透析液を含む透析液導入ラインL1又は透析液排出ラインL2の透析液を血液回路1に導入させるので、停電時の返血工程において、複数の迂回ライン(L8、L9)の透析液を使用することができ、より一層十分な量の透析液を確保することができる。なお、迂回ラインは、本実施形態において2つとされているが、3つ以上であってもよい。
【0069】
また、第1~5の実施形態によれば、透析液導入ラインL1に形成されて当該透析液導入ラインL1を流れる透析液を濾過して浄化する濾過フィルタ(7a、7b)を具備し、停電時の返血工程において、濾過フィルタ(7a、7b)を通過した透析液を血液回路1に導入するので、停電時に清浄な透析液にて返血工程を行わせることができる。なお、本実施形態においては、2つの濾過フィルタ(7a、7b)を通過させているが、何れか一方のみを通過させるようにしてもよい。
【0070】
さらに、第1~5の実施形態によれば、透析液導入ラインL1と血液回路1とを連通して当該透析液導入ラインL1の透析液を血液回路1に供給する供給流路L3を有するとともに、停電時の返血工程において、当該供給流路L3を介して透析液が血液回路1に導入されるので、停電時の返血工程を円滑に行わせることができる。なお、ダイアライザ4における透析液流路(中空糸膜内)内の圧力を血液流路内の圧力より大きくして逆濾過することにより、透析液導入ラインL1の透析液を血液回路1に導入することにより、停電時の返血工程を行わせるようにしてもよい。
【0071】
またさらに、第5の実施形態によれば、供給流路L3に形成されて透析液導入ラインL1の透析液を血液回路1に送液する供給ポンプMを具備し、停電時の返血工程において、予備電源Bからの電力供給により血液ポンプ2及び供給ポンプMを駆動させるので、停電時の返血工程を短時間で行わせることができる。なお、第5の実施形態によれば、停電時の返血工程において、血液ポンプ2と供給ポンプMとを同時に駆動させているが、交互に駆動させるようにしてもよい。
【0072】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されず、迂回ラインの透析液を含む透析液導入ラインL1又は透析液排出ラインL2の透析液を血液回路1に導入し、当該血液回路1内の血液を患者に戻す停電時の返血工程を実行するものであれば、外部の空気を導入する空気導入部は何れの部位であってもよい。また、本実施形態においては、何れも濾過フィルタ(7a、7b)を通過させた透析液を血液回路1に導入して停電時の返血工程を実行しているが、濾過フィルタを通過させない透析液を血液回路1に導入して停電時の返血工程を実行するようにしてもよい。
【0073】
なお、本実施形態においては何れも血液透析装置に適用されているが、体外循環する患者の血液を浄化するための他の血液浄化装置に適用することができる。また、本実施形態においては何れも透析用監視装置(透析液の作製機能がないもの)に適用されているが、個人用透析装置(透析液の作製機能があるもの)にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
装置に対する電力供給が停止したとき、予備電源からの電力供給により血液ポンプを駆動させるとともに、空気導入部から空気を導入しつつ迂回ラインの透析液を含む透析液導入ライン又は透析液排出ラインの透析液を血液回路に導入し、当該血液回路内の血液を患者に戻す停電時の返血工程を実行する血液浄化装置であれば、他の機能が付与されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 血液回路
1a 動脈側血液回路
1b 静脈側血液回路
2 血液ポンプ
3 エアトラップチャンバ
4 ダイアライザ(血液浄化器)
5 複式ポンプ(送液部)
6 除水ポンプ
7a、7b 濾過フィルタ
8 熱交換器
9 加温器
10 脱ガスチャンバ
11 制御部
L1 透析液導入ライン
L2 透析液排出ライン
L3 供給流路
L4~L6 バイパスライン
L7~L10 迂回ライン
L9a 第1迂回ライン
L9b 第2迂回ライン
V1~V14 電磁弁
P1 供給ポート
P2 排出ポート(空気導入部)
B 予備電源
M 供給ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7