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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】インフレーション成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20230323BHJP
   B29C 48/10 20190101ALI20230323BHJP
   B29C 55/28 20060101ALI20230323BHJP
   B29C 48/32 20190101ALI20230323BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20230323BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/10
B29C55/28
B29C48/32
B29L23:00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019067406
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020163748
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】八若 佐知
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-177348(JP,A)
【文献】国際公開第2005/097469(WO,A1)
【文献】特開平11-320660(JP,A)
【文献】特開平01-314135(JP,A)
【文献】特開2016-036918(JP,A)
【文献】特開2001-030339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00 - 48/96
B29C 55/00 - 55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状のフィルムを成形し、それを折りたたんで扁平フィルムとし、扁平フィルムを巻き取ってロール体を形成するインフレーション成形装置であって、
チューブ状のフィルムの厚みを調節するための調節要素の調節量を、扁平フィルムの厚みに関する情報に基づいて決定する制御装置を備え
前記制御装置は、前記情報が示す扁平フィルムの幅方向の或る位置の厚みと、扁平フィルムの基準厚みとが異なる場合、チューブ状のフィルムの対応する2つの部分について、チューブ状のフィルムの基準厚みとの差を互いに比較し、差が大きい方の調節量が差が小さい方の調節量よりも大きくなるように、調節要素を調節することを特徴とするインフレーション成形装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記情報が示す厚みと、扁平フィルムの基準厚みとの比較結果に基づいて、前記調節要素の調節量を決定することを特徴とする請求項1に記載のインフレーション成形装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記情報が示す扁平フィルムの幅方向の或る位置の厚みと、扁平フィルムの基準厚みとが等しい場合、チューブ状のフィルムの対応する2つの部分について、調節要素を調節しないことを特徴とする請求項1または2に記載のインフレーション成形装置。
【請求項4】
前記情報が示す厚みは、チューブ状のフィルムの対応する2つの部分の厚みの計測値であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のインフレーション成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフレーション成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶かした樹脂をダイからチューブ状に押し出し、その内側に空気を吹き込んで膨らませ、薄いフィルムを成形するインフレーション成形が知られている。従来では、調節要素としてのリップ幅を調節することにより、フィルムの厚みを目標範囲内に収める技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/090694号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インフレーション成形では、調節要素の調節量をできるだけ少なくしたいという要望がある。特許文献1によれば、フィルムの厚みを周方向に比較的均一にできるため、こぶや凹みの少ないあるいは小さいフィルムロール体を形成できるが、上述の要望については考慮できていない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、調節要素の調節量を比較的少なくしつつも、こぶや凹みが比較的少ないあるいは小さいフィルムロール体を形成できるインフレーション成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のインフレーション成形装置は、チューブ状のフィルムを成形し、それを折りたたんで扁平フィルムとし、扁平フィルムを巻き取ってロール体を形成するインフレーション成形装置であって、チューブ状のフィルムの厚みを調節するための調節要素の調節量を、扁平フィルムの厚みに関する情報に基づいて決定する制御装置を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、調節要素の調節量を比較的少なくしつつも、こぶや凹みが比較的少ないあるいは小さいフィルムロール体を形成できるインフレーシン成形装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態に係るインフレーション成形装置の概略構成を示す図である。
図2図2(a)、(b)は、フィルムの断面形状を示す図である。
図3図1の制御装置の機能および構成を模式的に示すブロック図である。
図4】第2の実施の形態の変形例に係るインフレーション成形装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
図1は、第1の実施の形態に係るインフレーション成形装置1の概略構成を示す。インフレーション成形装置1は、ダイ2と、冷却装置3と、一対の安定板4と、引取機5と、厚み計測部6と、制御装置7と、を備える。
【0012】
押出機(不図示)から供給される溶融した樹脂が、ダイ2に形成されたリング状の吐出口2aから押し出される。その際、ダイ2の中心部に形成されたエア噴出口2bから、押し出された樹脂の内側にエアが噴出され、チューブ状に膨らんだフィルム(以下、「バブル」とも呼ぶ)が成形される。
【0013】
ダイ2は、不図示の調節要素により、周方向の各位置の吐出口18aの幅(以下、リップ幅という)を調節可能に構成されている。リップ幅を調節することで、対応する位置のフィルムの厚みを調節できる。
【0014】
冷却装置3は、ダイ2の上方に配置される。冷却装置3は、バブルに冷却風を吹き付けて冷却する。
【0015】
一対の安定板4は、冷却装置3の上方に配置され、バブルを引取機5に案内する。引取機5は、安定板4の上方に配置される。引取機5は、一対のピンチロール38を含む。一対のピンチロール38は、不図示のモータに駆動されて回転し、案内されたバブルを引っ張り上げながら扁平に折りたたむ。以下、扁平に折りたたまれたフィルムを「扁平フィルム」とも呼ぶ。巻取機20は、扁平フィルムを巻き取り、フィルムロール体11を形成する。
【0016】
厚み計測部6は、冷却装置3と安定板4との間に配置される。厚み計測部6は、バブルの周りを回りながら、バブルの周方向の各位置の厚みを計測する。厚み計測部6により計測された厚みデータは制御装置7に送信される。
【0017】
制御装置7は、インフレーション成形装置1を統合的に制御する装置である。
【0018】
図2(a)、(b)は、フィルムの断面形状を示す図である。図2(a)は、バブルの横断面図であり、図2(b)は、扁平フィルムの横断面図である。バブルは、図2(a)に示すように略円形状の横断面を有する。扁平フィルムは、図2(b)に示すように、バブルが周方向位置0°と180°で折りたたまれた2枚重ねのフィルムである。つまり、扁平フィルムは、バブルの周方向位置0°~180°の部分と、周方向位置360°~180°の部分とが重なり合った2枚重ねのフィルム、より具体的には周方向位置θの各部分と、周方向位置(360°-θ)の各部分とが重なり合った2枚重ねのフィルムである。
【0019】
図3は、制御装置7の機能および構成を模式的に示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0020】
制御装置7は、種々の通信プロトコルにしたがって厚み計測部6との通信処理を実行する通信部40と、ユーザによる操作入力を受け付け、また各種画面を表示部に表示させるU/I部42と、通信部40およびU/I部42から取得されたデータをもとにして各種のデータ処理を実行するデータ処理部46と、データ処理部46により参照、更新されるデータを記憶する記憶部48と、を含む。
【0021】
記憶部48は、厚み記憶部64を含む。厚み記憶部64は、厚み計測部6から送信された厚みデータを記憶する。
【0022】
データ処理部46は、受信部50と、決定部52と、動作制御部54と、を含む。
【0023】
受信部50は、厚み計測部6から厚みデータを受信する。受信部50は、受信した厚みデータを厚み記憶部64に記憶させる。
【0024】
決定部52は、厚み記憶部64に記憶された、バブルの周方向の各位置での厚みの計測値に基づいて、周方向の各位置のリップ幅の調節量を決定する。決定部52は特に、バブルの周方向の各位置の厚みが許容範囲に収まり、かつ、フィルムロール体11の外周に大きなこぶや凹みができないように、周方向の各位置のリップ幅の調節量を決定する。
【0025】
ここで、バブルの厚みが周方向で均一であれば、外周に大きなこぶや凹みのないフィルムロール体11を形成できるが、バブルの厚みが周方向で均一でなくても、それを折りたたんだ扁平フィルムの厚みT(図2(b)参照)が幅方向で均一であれば、外周に大きなこぶや凹みのないフィルムロール体11を形成できる。これを考慮して、本実施の形態では、調節量を少なくするべく、以下のように周方向の各位置のリップ幅の調節量を決定する。
【0026】
(1)バブルを折りたたんだときに重なり合う2つの部分の厚み、すなわち周方向位置(θ)でのバブルの厚みの計測値tθ図2(a)参照)と、周方向位置(360°-θ)でのバブルの厚みの計測値t360°-θ図2(a)参照)がいずれもバブルの基準厚み(目標の厚みまたは周方向の平均の厚み)と等しい場合
【0027】
この場合、重なり合う2つの部分の厚みを足し合わせた厚み、すなわち当該2つの部分に対応する扁平フィルムの厚みは、扁平フィルムの基準厚み(バブルの基準厚みの2倍の厚み)と等しくなる。この場合、決定部52は、重なり合う2つの部分に対応するリップ幅の調節量をゼロ(リップ幅を調節しない)と決定する。
【0028】
(2)バブルを折りたたんだときに重なり合う2つの部分の厚みがいずれもバブルの基準厚みよりも厚い場合
【0029】
この場合、重なり合う2つの部分の厚みを足し合わせた厚み、すなわち当該2つの部分に対応する扁平フィルムの厚みは、扁平フィルムの基準厚みよりも厚くなる。この場合、決定部52は、当該2つの部分のうちの一方に対応するリップ幅のみを調節して、足し合わせた厚みを扁平フィルムの基準厚みに等しくさせる。
【0030】
好ましくは、決定部52は、当該2つの部分のバブル基準厚みとの差を互いに比較した上で、バブルの基準厚みとの差が大きい方に対応するリップ幅のみを調節して、足し合わせた厚みを扁平フィルムの基準厚みに等しくさせる。例えば、決定部52は、一方の厚みがバブルの基準厚み+0.2mmであり、他方の厚みがバブルの基準厚み+0.3mmであれば、基準厚みとの差が大きい他方の厚みが基準厚み-0.2mmとなるように、対応するリップ幅の調節量を決定する。
【0031】
なお、決定部52は、バブルの基準厚みとの差が小さい方に対応するリップ幅のみを調節してもよく、例えば一方の厚みがバブルの基準厚み+0.2mmであり、他方の厚みがバブルの基準厚み+0.3mmであれば、基準厚みとの差が小さい一方の厚みが基準厚み-0.3となるように、対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。
【0032】
(3)バブルを折りたたんだときに重なり合う2つの部分の厚みがいずれもバブルの基準厚みよりも薄い場合
【0033】
この場合、重なり合う2つの部分の厚みを足し合わせた厚み、すなわち当該2つの部分に対応する扁平フィルムの厚みは、扁平フィルムの基準厚みよりも薄くなる。この場合、決定部52は、当該2つの部分のうちの一方に対応するリップ幅のみを調節して、足し合わせた厚みを扁平フィルムの基準厚みに等しくさせる。
【0034】
好ましくは、決定部52は、当該2つの部分のうち、バブルの基準厚みとの差が大きい方に対応するリップ幅のみを調節して、足し合わせた厚みを扁平フィルムの基準厚みに等しくさせる。例えば、決定部52は、一方の厚みが基準厚み-0.2mmであり、他方の厚みが基準厚み-0.3mmであれば、基準厚みとの差が大きい他方の厚みが基準厚み+0.2mmとなるように、対応するリップ幅の調節量を決定する。
【0035】
なお、決定部52は、バブルの基準厚みとの差が小さい方に対応するリップ幅のみを調節してもよく、例えば一方の厚みが基準厚み-0.2mmであり、他方の厚みが基準厚み-0.3mmであれば、基準厚みとの差が小さい一方の厚みが基準厚み+0.3mmとなるように、対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。
【0036】
(4)バブルを折りたたんだときに重なり合う2つの部分のうちの一方の厚みがバブルの基準厚みよりも厚く、他方の厚みがバブルの基準厚みよりも薄い場合
【0037】
この場合、決定部52は、まず、重なり合う2つの部分の厚みを足し合わせた厚み、すなわち当該2つの部分に対応する扁平フィルムの厚みと、扁平フィルムの基準厚みとを比較する。
【0038】
両者が等しければ、決定部52は、当該2つの部分に対応するリップ幅の調節量をゼロと決定する。両者が等しくなければ、決定部52は、重なり合う2つの部分のうち、バブルの基準厚みとの絶対差が大きい方に対応するリップ幅のみを調節して、足し合わせた厚みを扁平フィルムの基準厚みと等しくさせる。例えば、決定部52は、バルブの基準厚みとの絶対差が小さい方に対応するリップ幅の調節量をゼロと決定する。また、決定部52は、バブルの基準厚みとの絶対差が大きい方については、例えば絶対差が小さい方の厚みがバブルの基準厚み+0.2mmであり、絶対差が大きい方の厚みがバブルの基準厚み-0.3mmであれば、絶対差が大きい方の厚みがバブルの基準厚み-0.2mmとなるように、対応するリップ幅の調節量を決定する。
【0039】
なお、決定部52は、当該2つの部分のバブル基準厚みとの絶対差を互いに比較した上で、バブルの基準厚みとの絶対差が小さい方に対応するリップ幅のみを調節して、足し合わせた厚みを扁平フィルムの基準厚みと等しくさせてもよい。この場合、決定部52は、バルブの基準厚みとの絶対差が大きい方に対応するリップ幅の調節量をゼロと決定する。また、決定部52は、バブルの基準厚みとの絶対差が小さい方については、例えば絶対差が小さい方の厚みがバブルの基準厚み+0.2mmであり、絶対差が大きい方の厚みがバブルの基準厚み-0.3mmであれば、絶対差が小さい方の厚みがバブルの基準厚み+0.3mmとなるように、対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。
【0040】
動作制御部60は、インフレーション成形装置1の動作を制御する。動作制御部60は特に、決定部52が決定した調節量にしたがって、リップ幅を制御する。
【0041】
以上が、インフレーション成形装置1の構成である。続いてその動作について説明する。この処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0042】
厚み計測部6は、成形中に、バブルの周方向の各位置の厚みを計測し、計測した厚みを制御装置7に送信する。
【0043】
制御装置7は、バブルの周方向の各位置の厚みに基づいて、扁平フィルムの厚みが幅方向で均一になるように周方向の各位置のリップ幅の調節量を決定する。そして制御装置7は、決定にしたがって周方向の各位置のリップ幅を調節する。
【0044】
続いて、本実施の形態が奏する効果について述べる。本実施の形態によれば、折りたたんだときに重なり合う2つの部分がいずれもバブルの基準厚みよりも厚い場合、または、いずれも基準厚みよりも薄い場合、当該2つの部分のうちの一方に対応するリップ幅のみが調整され、他方に対応するリップ幅は調節されない。これにより、調節量(調節箇所)を比較的少なくできる。また、好ましくは、当該2つの部分のうち、バブルの基準厚みとの差が大きい方に対応するリップ幅のみが調節される。この場合、そうではない場合と比べ、当該2つの部分の厚みをバブルの基準厚みに近づけることができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、折りたたんだときに重なり合う2つの部分の一方の厚みがバブルの基準厚みよりも厚く、他方の厚みがバブルの基準厚みよりも薄い場合、当該2つの部分の厚みを足し合わせた厚みが扁平フィルムの基準厚みと等しければ、当該2つの部分に対応するリップ幅は調節されない。これにより、調節量(調節箇所)を比較的少なくできる。
【0046】
当該2つの部分の厚みを足し合わせた厚みが扁平フィルムの基準厚みと等しくなければ、当該2つの部分のうちの一方に対応するリップ幅のみが調節され、他方に対応するリップ幅は調節されない。これにより、調節量(調節箇所)を比較的少なくできる。また、好ましくは、当該2つの部分のうち、バブルの基準厚みとの絶対差が大きい方に対応するリップ幅のみが調節される。この場合、そうではない場合と比べ、当該2つの部分の厚みをバブルの基準厚みに近づけることができる。
【0047】
以上、本発明の一側面について、第1の実施の形態をもとに説明した。続いて第1の実施の形態に関連する変形例を説明する。
【0048】
第1の実施の形態についての、第1の変形例を説明する。
実施の形態および上述の変形例では、バブルの厚みが基準厚みよりも厚い場合も基準厚みよりも薄い場合も、対応するリップ幅を調節する場合について説明したが、基準厚みよりも薄い場合にだけリップ幅を調節してもよいし、基準フィルム厚よりも厚い場合にだけリップ幅を調節してもよい。本変形例によれば、調節量(調節箇所)を少なくできる。
【0049】
第1の実施の形態についての、第2の変形例を説明する。
実施の形態および上述の変形例では、扁平フィルムの厚みを基準厚みに近づけるようリップ幅を制御する場合について説明したが、所定の周期で、扁平フィルムの厚みを、基準厚みに対して現在の厚みを反転させた厚みにするよう制御してもよい。
【0050】
(1)バブルを折りたたんだときに重なり合う2つの部分の厚みがいずれもバブルの基準厚みと等しい場合
この場合、決定部52は、実施の形態と同様に、重なり合う2つの部分に対応するリップ幅の調節量をゼロと決定する。
【0051】
(2)バブルを折りたたんだときに重なり合う2つの部分の厚みがいずれもバブルの基準厚みよりも厚い場合、または、いずれもバブルの基準厚みよりも薄い場合
この場合、決定部52は、重なり合う2つの部分の両方に対応するリップ幅を調節して、当該2つの部分の厚みを足し合わせた厚みを、扁平フィルムの基準厚みに対して現在の扁平フィルムの厚みを反転させた厚みにするよう決定する。例えば、決定部52は、当該2つの部分のうちの一方の厚みがバブルの基準厚み+0.2mmであり、他方の厚みがバブルの基準厚み+0.3mmであれば、すなわち足し合わせた厚みが(2×基準厚み+0.5mm)であれば、足し合わせた厚みが(2×基準厚み-0.5mm)となるように、つまり反転後の扁平フィルムの厚みが現在の扁平フィルムの厚み-1.0mmとなるように、重なり合う2つの部分に対応するリップ幅の調節量を決定する。
【0052】
この場合、決定部52は例えば、当該2つの部分の厚みの変化量が等しくなるように、当該2つの部分に対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。具体的には決定部52は、当該2つの部分の厚み変化量がいずれも0.5mmになるように、すなわち当該一方の厚みがバブルの基準厚み-0.3mm、当該他方の厚みがバブルの基準厚み-0.2mmになるように、対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。
【0053】
また例えば、決定部52は、当該2つの部分のバブル基準厚みとの差を互いに比較した上で、バブルの基準厚みとの差が小さい方に対応するリップ幅の調節量が小さく(言い換えると厚みの変化量が小さく)、バブルの基準厚みとの差が大きい方に対応するリップ幅の調節量が大きく(言い換えると厚みの変化量が大きく)なるように各調節量を決定してもよい。具体的には例えば、決定部52は、バブルの基準厚みとの差が小さい当該一方の厚みがバブルの基準厚み-0.1mm(厚みの変化量は0.3mm)、バブルの基準厚みとの差が大きい当該他方の厚みがバブルの基準厚み-0.4mm(厚みの変化量は0.7mm)になるように、対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。また例えば、決定部52は、当該一方の厚みがバブルの基準厚み-0.25mm(厚みの変化量は0.45mm)、当該他方の厚みもバブルの基準厚み-0.25mm(厚みの変化量は0.55mm)になるように、すなわち基準厚みとの差が当該2つの部分で等しくなるように、対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。また例えば、決定部52は、当該一方の厚みをバブルの基準厚み+0.2mmのままとし(厚みの変化量は0mm)、当該他方の厚みがバブルの基準厚み-0.7mm(厚みの変化量は1.0mm)になるように、対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。つまり、バブルの基準厚みとの差が大きい方に対応するリップ幅のみを調節してもよい。
【0054】
また例えば、決定部52は、当該2つの部分のバブル基準厚みとの差を互いに比較した上で、バブルの基準厚みとの差が小さい方に対応するリップ幅の調節量が大きく(言い換えると厚みの変化量が大きく)、バブルの基準厚みとの差が大きい方に対応するリップ幅の調節量が小さく(言い換えると厚みの変化量が小さく)なるように各調節量を決定してもよい。具体的には例えば、決定部52は、バブルの基準厚みとの差が小さい当該一方の厚みがバブルの基準厚み-0.4mm(厚みの変化量は0.6mm)、バブルの基準厚みとの差が大きい当該他方の厚みがバブルの基準厚み-0.1mm(厚みの変化量は0.4mm)になるように、対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。また例えば、決定部52は、当該一方の厚みがバブルの基準厚み-0.8mm(厚みの変化量は1.0mm)、当該他方の厚みがバブルの基準厚み+0.3mmのまま(厚みの変化量は0mm)となるように、対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。つまり、バブルの基準厚みとの差が小さい方に対応するリップ幅のみを調節してもよい。
【0055】
(3)バブルを折りたたんだときに重なり合う2つの部分のうちの一方の厚みがバブルの基準厚みよりも厚く、他方の厚みがバブルの基準厚みよりも薄い場合
【0056】
この場合、決定部52は、まず、重なり合う2つの部分の厚みを足し合わせた厚み、すなわち当該2つの部分に対応する扁平フィルムの厚みと、扁平フィルムの基準厚みとを比較する。
【0057】
両者が等しければ、決定部52は、当該2つの部分に対応するリップ幅の調節量をゼロと決定する。両者が等しくなければ、決定部52は、重なり合う2つの部分のうちの少なくとも一方に対応するリップ幅を調節して、当該2つの部分の厚みを足し合わせた厚みを、扁平フィルムの基準厚みに対して現在の扁平フィルムの厚みを反転させた厚みにするよう決定する。例えば、決定部52は、当該2つの部分のうちの一方の厚みがバブルの基準厚み+0.2mmであり、他方の厚みがバブルの基準厚み-0.3mmであれば、すなわち足し合わせた厚みが(2×基準厚み-0.1mm)であれば、足し合わせた厚みが(2×基準厚み+0.1mm)となるように、つまり反転後の扁平フィルムの厚みが現在の扁平フィルムの厚み+0.2mmとなるように、重なり合う2つの部分に対応するリップ幅の調節量を決定する。
【0058】
この場合、決定部52は例えば、当該2つの部分の厚みの変化量が等しくなるように、当該2つの部分に対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。具体的には決定部52は、当該2つの部分の厚み変化量がいずれも0.1mmになるように、すなわち当該一方の厚みがバブルの基準厚み+0.3mm、当該他方の厚みがバブルの基準厚み-0.2mmになるように、対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。
【0059】
また例えば、決定部52は、当該2つの部分のバブル基準厚みとの差を互いに比較した上で、バブルの基準厚みとの差が小さい方に対応するリップ幅の調節量が小さく(言い換えると厚みの変化量が小さく)、バブルの基準厚みとの差が大きい方に対応するリップ幅の調節量が大きく(言い換えると厚みの変化量が大きく)なるように各調節量を決定してもよい。具体的には例えば、決定部52は、バブルの基準厚みとの差が小さい当該一方の厚みがバブルの基準厚み+0.25mm(厚みの変化量は0.05mm)、バブルの基準厚みとの差が大きい当該他方の厚みがバブルの基準厚み-0.15mm(厚みの変化量は0.15mm)になるように、対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。また例えば、決定部52は、当該一方の厚みがバブルの基準厚み+0.05mm(厚みの変化量は0.15mm)、当該他方の厚みもバブルの基準厚み+0.05mm(厚みの変化量は0.35mm)になるように、すなわち基準厚みとの差が当該2つの部分で等しくなるように、対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。
【0060】
また例えば、決定部52は、当該2つの部分のバブル基準厚みとの差を互いに比較した上で、バブルの基準厚みとの差が小さい方に対応するリップ幅の調節量が大きく(言い換えると厚みの変化量が大きく)、バブルの基準厚みとの差が大きい方に対応するリップ幅の調節量が小さく(言い換えると厚みの変化量が小さく)なるように各調節量を決定してもよい。具体的には例えば、決定部52は、バブルの基準厚みとの差が小さい当該一方の厚みがバブルの基準厚み+0.35mm(厚みの変化量は0.15mm)、バブルの基準厚みとの差が大きい当該他方の厚みがバブルの基準厚み-0.25mm(厚みの変化量は0.05mm)になるように、対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。また例えば、決定部52は、当該一方の厚みがバブルの基準厚み+0.4mm(厚みの変化量は0.2mm)、当該他方の厚みがバブルの基準厚み-0.3mmのまま(厚みの変化量は0mm)となるように、対応するリップ幅の調節量を決定してもよい。つまり、バブルの基準厚みとの差が小さい方に対応するリップ幅のみを調節してもよい。
【0061】
本変形例によれば、扁平フィルムの幅方向の或る位置について、基準厚みよりも厚い扁平フィルムと基準厚みよりも薄い扁平フィルムとが交互に巻かれて平均化されるため、フィルムロール体11の厚みは幅方向で均一になる。つまり、フィルムロール体11のこぶや凹みが少なくあるいは小さくできる。
【0062】
第1の実施の形態についての、第3の変形例を説明する。
実施の形態および上述の変形例では、厚み計測部6により計測したバブルの周方向の各位置の厚みに基づいて、扁平フィルムの幅方向の各位置の厚みを推測し、推測した扁平フィルの厚みが基準厚みである位置については、対応するリップ幅を調節しない場合について説明したが、これには限定されない。図4は、変形例に係るインフレーション成形装置1の概略構成を示す図である。本変形例では、インフレーション成形装置1は、引取機5と巻取機20の間に、扁平フィルムの幅方向の各位置の厚みを計測する別の厚み計測部22をさらに備える。厚み計測部22は、計測した厚みデータを制御装置7に送信する。決定部52は、厚み計測部22により計測された、扁平フィルムの幅方向の各位置の厚みと、扁平フィルムの基準厚み(バブルの基準厚みの2倍)とを比較する。決定部52は、扁平フィルムの幅方向の各位置について、扁平フィルムの基準厚みと厚みが等しい位置については、対応する2つのリップ幅の調節量をゼロと決定し、そうでない位置については、特に限定はしないが、例えば、対応する2つのリップ幅のうちの一方のリップ幅のみを調節するよう決定してもよいし、厚みの変化量が等しくなるように両方のリップ幅を調節するよう決定してもよいし、バブルの基準厚みとの絶対差が等しくなるように両方のリップ幅を調節するよう決定してもよい。本変形例によれば、実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0063】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0064】
本実施の形態では、決定部52は、バブルの周方向の各位置の厚みに基づいて各位置のリップ幅の調節量を決定する、すなわち折りたたまれたときに重なり合う部分の厚みによらずに各位置のリップ幅の調節量を決定する。
【0065】
具体的には決定部52は、バブルの基準厚みよりも厚い部分を基準厚みにするよう対応するリップ幅の調節量を決定し、バブルの基準厚みと同じかそれよりも薄い部分に対応するリップ幅の調節量をゼロと決定する。
【0066】
なお変形例として、決定部52は、反対に、バブルの基準厚みよりも薄い部分を基準厚みにするよう対応するリップ幅の調節量を決定し、バブルの基準厚みと同じかそれよりも厚い部分に対応するリップ幅の調節量をゼロと決定してもよい。
【0067】
本実施の形態によれば、調節量(調節箇所)を少なくできる。
【0068】
以上、本発明の一側面について、第2の実施の形態をもとに説明した。
【0069】
続いて、第1、第2の実施の形態の共通の変形例について説明する。
【0070】
第1、第2の実施の形態では、リップ幅を調節することにより、バブルの周方向の各位置の厚み、ひいては扁平フィルムの幅方向の各位置の厚みを調節する場合について説明したが、これには限定されず、リップ幅に代えて、またはリップ幅に加えて、少なくとも1つの他の調節要素を調節することによりこれを実現してもよい。この場合、決定部52が、他の調節要素の調節量も決定する。なお、他の調節要素としては、例えば冷却風の風量、風温が挙げられる。
【0071】
また、第1、第2の実施の形態では、リップ幅を調節しているうちに、リップ幅の調節代を使い切ってしまう事態が生じうる。特に、第1の実施の形態の第1の変形例や第2の実施の形態のように、バブルの基準厚みよりも厚い場合にだけ、あるいは基準厚みよりも薄い場合にだけリップ幅を調節すると、そのような事態が生じやすい。調節代を使い切ってしまうと、それ以上の調節ができなくなる。
【0072】
そこで制御装置7は、調節代を使い切った場合、あるいは周方向のいずれかの位置の調節代の残りが所定値以下になった場合、例えば周方向のすべての位置の調節代を、また例えば調節代を使い切ったもしくは調節代の残りが所定値になった調節代を、例えば成形開始時の状態に戻すなどして確保してもよいし、所定量だけ確保するようにしてもよい。この場合、調節代を確保したことによる影響を、他の調節要素、例えば冷却風の風量、風温またはそれらの両方を調節することによって吸収し、バブルの厚みが許容範囲から外れないようにしてもよい。なお、調節代を確保したことによる影響を吸収するための他の調節要素の調節量は、実験等に基づいて予め決定しておけばよい。
【0073】
制御装置7は、調節代を確保した周方向の位置および確保した量を記憶してもよい。また、制御装置7は、調節代を確保するために調節した対応する他の調節要素の周方向の位置および調節量を記憶してもよい。制御装置7は、記憶した周方向の各位置の調節代の確保量や、調節代を確保するために調節した他の調節要素の周方向の位置および調節量を、設定条件が表示される画面に表示してもよい。
【0074】
また、制御装置7は、リップ幅の調節代を使い切った場合、それ以降は、フィルムの厚みを調節するための調節要素をリップ幅から他の調節要素に変更してもよい。例えば、制御装置7は、リップ幅の調節代を使い切った場合、それ以降は冷却風の風量、風温またはそれらの両方を調節することによってフィルムの厚みを調節してもよい。そして制御装置7は、周方向の各位置が、現在どの調節要素で調節されているかを画面上に表示させてもよい。具体的には例えば、制御装置7は、周方向の各位置について、或る位置はリップ幅で調節され、別の位置は冷却風で調節され、さらに別の位置はリップ幅と冷却風の両方で調節されている、といった情報を画面上に表示させてもよい。
【0075】
以上、実施の形態に係るインフレーション成形装置の構成と動作について説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0076】
1 インフレーション成形装置、 2 ダイ、 6 厚み計測部、 7 制御装置、 52 決定部。
図1
図2
図3
図4