(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】接続金具、及びその接続金具を用いた防護柵
(51)【国際特許分類】
E01F 15/04 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
E01F15/04 B
(21)【出願番号】P 2019131141
(22)【出願日】2019-07-16
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 仁
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218849(JP,A)
【文献】特開2011-196142(JP,A)
【文献】特開2008-031824(JP,A)
【文献】特開2011-208350(JP,A)
【文献】特開2000-248523(JP,A)
【文献】特開平09-111728(JP,A)
【文献】実開昭51-117329(JP,U)
【文献】特開2017-082460(JP,A)
【文献】特開2002-069953(JP,A)
【文献】特開平11-152718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を空けて立設された支柱間にビーム材を差し渡してなる防護柵において支柱にビーム材を接続するための接続金具であって、支柱に取り付けられるベース部と、ビーム材の端部に取り付けられる略円筒形状のビーム材保持部とからなり、
前記ビーム材保持部は、ビーム材の端部を下方から支持して保持するビーム材受け部と、前記ビーム材端部及びビーム材受け部の上方から被せるカバー部とを備え、
前記ビーム材受け部とカバー部とは、半割り状の一対の部材により略円筒形状をなし、
前記ビーム材受け部の防護柵正面側又は背面側のいずれか一方の側壁は、ビーム材保持部の高さ中央位置を越えて高く形成されて第一側壁部が形成され、他方の側壁はビーム材保持部の高さ中央位置よりも低く形成されており、
前記カバー部は、前記ビーム材受け部の側壁が低く形成された側において、その側壁がビーム材保持部の高さ中央位置を越えて下方に長く形成されて第二側壁部が形成されると共に、前記ビーム材受け部の側壁が高く形成された側において、その側壁がビーム材保持部の高さ中央位置に達しない程度に短く形成され、
かつ、前記第一側壁部及び第二側壁部は、いずれもその内周面が略垂直の面状に形成され
ており、
第一側壁部及び第二側壁部にはそれぞれ貫通孔が形成されており、該貫通孔にボルトを挿通させて、ボルト及びナットによりビーム材受け部とカバー部とを締結するようにしており、
前記ボルト及びナットによりビーム材受け部とカバー部とを締結した状態において、
ビーム材受け部の前記第一側壁部の最上端が該第一側壁部側のカバー部の側壁の最下端よりも上方且つビーム材保持部の外側方向に配置されると共に、
カバー部の前記第二側壁部の最下端が該第二側壁部側のビーム材受け部の側壁の最上端よりも下方且つビーム材保持部の外側方向に配置されることを特徴とする接続金具。
【請求項2】
第一側壁部又は第二側壁部のいずれかにおいて、貫通孔に代えて内側にネジ溝が形成されたボルト穴が形成されたことを特徴とする請求項
1に記載の接続金具。
【請求項3】
前記ベース部とビーム材受け部は、一体的に形成されていることを特徴とする請求項
1又は2に記載の接続金具。
【請求項4】
所定の間隔を空けて立設された複数の支柱と、前記支柱間に差し渡されるビーム材と、前記支柱と前記ビーム材の端部とを接続する請求項
1乃至3のいずれかに記載の接続金具とを備えた防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路等に設置されるパネル柵やビーム柵、メッシュフェンス柵等の防護柵において、支柱とビーム材とを接続するための接続金具、及び当該接続金具を用いた防護柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路等に設置される防護柵のビーム材取付金具及び取付構造としては、例えば、前後方向に二分割された一対の金具(挟持片)によりビーム材を前後から挟み込むようにして、前後方向からボルトとナットとで締結して支柱に固定する方法がとられてきた(特許文献1)。
【0003】
このような従来の取付金具によれば、ボルトとネットとで金具とビーム材とを締結するまでの間、ビーム材を手で支えて中空に保持しなければならず、作業者は重労働を強いられていた。
【0004】
これに対しては、前後方向に替えて上下方向に二分割された一対の金具によりビーム材を上下から挟み込むようにして、下方からボルトで上下の金具を固着させるようにしたものがある(特許文献2)。この従来の取付金具によれば、下側の金具(ビーム部材固定部)の上にビーム材を載せて仮置きし、しかる後に上側の金具(カバー部)を被せてボルトで固着させればよい。従って、上述した特許文献1に記載の取付金具と比べ、作業者の負担が大きく減じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平02-101816号公報
【文献】特開2012-052359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来の取付金具によれば、確かにビーム材を仮置きすることはできるが、ボルトを金具の下方から上向きに挿入して固定するため、ボルトを挿入する孔を目視しようとすると作業者は下から覗き込むようにして作業をしなければならない。目視せず手探りで作業することも考えられるが、その場合、下側からボルトを上向きに挿入して上側の金具に設けられたネジ勘合部に螺入させなければならず、確実性が下がり施工性が悪くなるという課題があった。
【0007】
本発明は上述の課題を克服するためのものであり、ビーム材を仮置きでき、かつ作業者が下から覗き込むなど無理な態勢で作用する必要もなく、支柱にビーム材を取り付けるための施工作業を容易にした防護柵の取付金具、及び当該接続金具を用いた防護柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。すなわち、本発明に係る接続金具は、所定の間隔を空けて立設された支柱間にビーム材を差し渡してなる防護柵において支柱にビーム材を接続するための接続金具であって、支柱に取り付けられるベース部と、ビーム材の端部に取り付けられる略円筒形状のビーム材保持部とからなり、前記ビーム材保持部は、ビーム材の端部を下方から支持して保持するビーム材受け部と、前記ビーム材端部及びビーム材受け部の上方から被せるカバー部とを備え、前記ビーム材受け部とカバー部とは、半割り状の一対の部材により略円筒形状をなし、前記ビーム材受け部の防護柵正面側又は背面側のいずれか一方の側壁は、ビーム材保持部の高さ中央位置を越えて高く形成されて第一側壁部が形成され、他方の側壁はビーム材保持部の高さ中央位置よりも低く形成されており、前記カバー部は、前記ビーム材受け部の側壁が低く形成された側において、その側壁がビーム材保持部の高さ中央位置を越えて下方に長く形成されて第二側壁部が形成されると共に、前記ビーム材受け部の側壁が高く形成された側において、その側壁がビーム材保持部の高さ中央位置に達しない程度に短く形成され、
かつ、前記第一側壁部及び第二側壁部は、いずれもその内周面が略垂直の面状に形成されており、第一側壁部及び第二側壁部にはそれぞれ貫通孔が形成されており、該貫通孔にボルトを挿通させて、ボルト及びナットによりビーム材受け部とカバー部とを締結するようにしており、前記ボルト及びナットによりビーム材受け部とカバー部とを締結した状態において、ビーム材受け部の前記第一側壁部の最上端が該第一側壁部側のカバー部の側壁の最下端よりも上方且つビーム材保持部の外側方向に配置されると共に、カバー部の前記第二側壁部の最下端が該第二側壁部側のビーム材受け部の側壁の最上端よりも下方且つビーム材保持部の外側方向に配置されることを特徴とする。
【0010】
更に、第一側壁部又は第二側壁部のいずれかにおいて、貫通孔に代えて内側にネジ溝が形成されたボルト穴が形成されるようにしてもよい。また、前記ベース部とビーム材受け部は、一体的に形成されるようにしてもよい。
【0011】
更に、本発明に係る防護柵は、所定の間隔を空けて立設された複数の支柱と、前記支柱間に差し渡されるビーム材と、前記支柱と前記ビーム材の端部とを接続する上述の接続金具とを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る接続金具によれば、支柱に取り付けられるベース部と、ビーム材の端部に取り付けられる略円筒形状のビーム材保持部とからなり、前記ビーム材保持部は、ビーム材の端部を下方から支持して保持するビーム材受け部と、前記ビーム材端部及びビーム材受け部の上方から被せるカバー部とを備え、前記ビーム材受け部とカバー部とは、半割り状の一対の部材により略円筒形状をなし、前記ビーム材受け部の防護柵正面側又は背面側のいずれか一方の側壁は、ビーム材保持部の高さ中央位置を越えて高く形成されて第一側壁部が形成され、他方の側壁はビーム材保持部の高さ中央位置よりも低く形成されており、前記カバー部は、前記ビーム材受け部の側壁が低く形成された側において、その側壁がビーム材保持部の高さ中央位置を越えて下方に長く形成されて第二側壁部が形成されると共に、前記ビーム材受け部の側壁が高く形成された側において、その側壁がビーム材保持部の高さ中央位置に達しない程度に短く形成され、かつ、前記第一側壁部及び第二側壁部は、いずれもその内周面が略垂直の面状に形成されているので、ビーム材を仮置きでき、かつ作業者が下から覗き込むなど無理な態勢で作業する必要もなく、支柱にビーム材を取り付けるための施工作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る接続金具を用いた防護柵の一実施形態を示す正面図である。
【
図2】本発明に係る接続金具を用いて支柱とビーム材とを接続する施工手順を示す説明図であり、接続前の状態を示す分解斜視図である。
【
図3】本発明に係る接続金具を用いて支柱とビーム材とを接続する施工手順を示す説明図であり、ベース部が支柱に取り付けられた状態を示す分解斜視図である。
【
図4】本発明に係る接続金具を用いて支柱とビーム材とを接続する施工手順を示す説明図であり、柵パネル(ビーム材)をビーム材受け部に載置し、カバー部を取り付ける様子を示す分解斜視図である。
【
図5】本発明に係る接続金具を用いて支柱とビーム材とを接続する施工手順を示す説明図であり、接続を完了した状態を示す分解斜視図である。
【
図8】
図1に示した接続金具におけるベース金具(ベース部及びビーム材受け部)の六面図である。
【
図9】
図1に示した接続金具におけるカバー部の六面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0015】
図1から
図9は、本発明に係る接続金具、及び当該接続金具を用いた防護柵の一実施形態を示すものであり、
図1及は接続金具を用いた防護柵を、
図2~
図5は、接続金具を用いて支柱とビーム材を接続する様子を、
図6は
図1におけるA-A線断面図を、そして
図7~
図9は、接続金具およびその構成部材を示す図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る接続金具2を用いた防護柵1は、間隔をおいて地面に複数立設された支柱3間に柵パネル4が差し渡されてなるものである。柵パネル4は、上下2本のビーム材41と、当該2本のビーム材41間に上下方向に差し渡されて固定される複数の縦桟42とを備えてなり、ビーム材41の両端部が接続金具2を介して両側の支柱3に接続される。
【0017】
接続金具2は、ベース金具25とカバー金具(カバー部)23とからなる。ベース金具25は、
図2及び
図3に示すように、支柱3に当接され取り付けられるベース部21と、ベース部21から水平方向に突設され、側面視略半円弧形状を備えたビーム材受け部22とが一体的に形成されたものである。また、カバー金具23は、ビーム材受け部22に被せられビーム材41の端部を上方から覆うものである。これにより、
図2~
図3に示されるように、ビーム材受け部22とカバー部23は、半割り状の一対の部材として形成され略円筒形状をなし、当該円筒形状部の開口内にビーム材41の端部が挿入され、固定される。
【0018】
図2~
図5は、本実施形態において接続金具2を用いて支柱3とビーム材41とを接続する様子を示した図である。
図2に示すように、ベース金具25のベース部21には挿通孔211が形成されており、支柱本体31の側面に形成されたボルト孔311及び左右のベース部21、21の挿通孔211、211にボルトB1を挿通させナットN1を締結して、ベース金具25が支柱31に固定される(
図3)。尚、その際、支柱3のキャップ部32の嵌入部322が支柱本体31内に上方から挿入され、嵌入部322に形成された挿通孔323にボルトB1が挿通されることにより、キャップ部32も固定される。また、ベース部21の挿通孔211は、水平方向に長い長孔となされている。これによって、道路が左右に曲がっている場合でも、当該道路に沿うようにベース金具25の取り付け角度を水平方向に調整することができ、これにより道路の曲がり具合に合わせて防護柵1を設置することが可能となる。
【0019】
この状態(
図3に示した状態)において、ビーム材41をビーム材受け部22の半円筒状の凹部に載置するのであるが、このビーム材受け部22の(防護柵1の)前面側又は背面側のいずれか一方側の側壁はビーム材保持部26の高さ中央位置を超えて高く形成され、他方側の側壁は、ビーム材保持部26の高さ中央位置よりも低く形成されている。また、当該高く形成された側壁の内周面221は略垂直面状として形成され、かつその側壁の略中央部にボルト孔222が形成されている。
【0020】
このようなベース金具25を隣接する2本の支柱3の対向する面にそれぞれ取り付けるのであるが(25a、25b)、この2つのベース金具25(25a、25b)は全く同一の部材であり、左右対称(一対)とはなっていない。すなわち、本実施形態においては、ベース金具25aは防護柵1に向かって背面側の側壁が高く形成され、ベース金具25bは防護柵1に向かって正面側の側壁が高く形成されている。このようにすることで、同一の部材を作製すればよく、左右で異なる(左右一対となる)部材を作製しなくて済む。
【0021】
しかも、ビーム材受け部22の側壁の内周面221は略垂直面状とされているため、柵パネル4(ビーム材41)をビーム材受け部22に仮置きする際、上述の通り左右に同一の部材を用いたとしても、柵パネル4(ビーム材41)を上方から垂直に降ろしてビーム材受け部22に載置することができる。
【0022】
柵パネル4(ビーム材41)をビーム材受け部22に載置して仮置きしたのち、
図4に示すように、カバー金具(カバー部)23をビーム材受け部23の上から被せる。これによりビーム材41の端部が、カバー部23により覆われる。その上で、ボルトB2をビーム材受け部22の側壁部221に形成されたボルト孔222、ビーム材41の端部近傍の両側部に形成されたボルト孔411、及びカバー部23の側壁部231に形成されたボルト孔232にボルトB2を挿通させナットN2を締結する。これによって、
図5及び
図6に示すように、ビーム材41は、その端部が接続金具2のビーム材保持部26の開口部内に保持され、接続される。
【0023】
尚、ビーム材41に形成されたボルト孔411は、ビーム材41の長手方向に長い長孔として形成されている。これにより、支柱3間の多少の距離の違いがあっても、ビーム材41を公好適に取り付けることが可能である。
【0024】
以上、本発明に係る接続金具及び当該接続金具を用いた防護柵について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。例えば、上述した実施形態においては、ベース部とビーム材受け部は一体として形成されているが、これらが別体として形成されてもよい。また、上述した実施形態においては、ビーム材受け部の側壁部及びカバー部の側壁部のそれぞれの内周面は略垂直の平坦面としているが、この平坦面状にリブを形成するなどして、より確実にビーム材を把持できるようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、防護柵を設置する作業者がビーム材をビーム材保持部に載置する際、ビーム材を容易に仮置きでき、かつ作業者が下から覗き込むなど無理な態勢で作業する必要もなく、支柱にビーム材を取り付けるための施工作業が容易となる。
【符号の説明】
【0026】
1 防護柵
2 接続金具
21 ベース部
22 ビーム材受け部
23 カバー部
25 ベース金具
26 ビーム材保持部
3 支柱
31 支柱本体
4 柵パネル
41 ビーム材
B1、B2 ボルト
N1、N2 ナット