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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】廃棄物処分場の安定化方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 1/00 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
B09B1/00 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019155406
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021030178
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕一
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-203140(JP,A)
【文献】特開2000-237735(JP,A)
【文献】特開2017-029902(JP,A)
【文献】特開2004-249167(JP,A)
【文献】特開2004-321926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00 - B09C 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物が堆積した廃棄物堆積層を有する廃棄物処分場の安定化方法において、
前記廃棄物堆積層内の保有水水位下限の近傍に排気口が位置するように給気管を埋設し、該給気管から前記廃棄物堆積層に二酸化炭素を含む中和用ガスと、酸素を含む好気分解促進ガスとを供給することを特徴とする廃棄物処分場の安定化方法。
【請求項2】
前記中和用ガスと前記好気分解促進ガスとを混合して前記給気管より供給する請求項1に記載の廃棄物処分場の安定化方法。
【請求項3】
前記中和用ガスを前記給気管より供給して前記廃棄物堆積層のpHを低下させた後、前記好気分解促進ガスを前記給気管より供給して前記廃棄物堆積層中の有機物を好気的に分解する請求項1に記載の廃棄物処分場の安定化方法。
【請求項4】
前記廃棄物堆積層に前記給気管から前記中和用ガス及び前記好気分解促進ガスを供給するとともに前記廃棄物堆積層のpH、化学的酸素要求量、生物化学的酸素要求量、重金属濃度、全有機体炭素についてモニタリングを行い、該モニタリングに基づき前記給気管の稼働範囲、前記中和用ガス及び前記好気分解促進ガスの供給量、供給時間を見直す請求項1~3の何れか一に記載の廃棄物処分場の安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海面廃棄物処分場等の管理型廃棄物処分場の安定化を促進し、廃止を促進する廃棄物処分場の安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
埋立て終了後の廃棄物処分場跡地は、排水基準等を満たすことによって、土地資源として有効に活用することができるようになるが、埋立て終了後も長期間pHや化学的酸素要求量(以下、CODという)及び生物化学的酸素要求量(以下、BODという)等の基準を満たすことができず、廃棄物処分場を廃止できない場合がある。
【0003】
既存の海面廃棄物処分場においては、その保有水が中性付近からpH13以上まで幅広い値を示し、4割程度の廃棄物処分場が基準のpH9.0を超えており、CODについても同様に、4割程度の廃棄物処分場で基準の90mg/Lを超えているという調査報告もされている。
【0004】
特に、焼却灰やフライアッシュ等には、多くのカルシウムが含有されており、この種の廃棄物が投入された廃棄物処分場の保有水は、高アルカリとなることが多く、雨水の浸透に伴って高アルカリの浸出水が発生する。
【0005】
そこで、従来では、早期の安定化を目的とし、廃棄物層に集排水管を埋設し、その集排水管を通して内水ポンドに排水し、その排水を処理設備によって中和した後に放流することによって、廃棄物層中の保有水等の排出を促進することで、集水した保有水等の水質を早期に廃止基準に適合させるという方法も行われている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0006】
また、予め廃棄物処分場の建設時に吐出管を埋め立て材の貯留空間底面に敷設しておき、その吐出管より二酸化炭素等の中和ガスを供給し、埋立て地盤を中和する方法も提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-237735号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】海面最終廃棄物処分場閉鎖・廃止適用マニュアル(案)検討調査委託業務報告書/一般財団法人 日本環境衛生センター/平成26年12月/2-8~2-9頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、焼却灰等の廃棄物が投入された廃棄物処分場の保有水が高アルカリであるため、廃棄物堆積層において活動できる微生物が好アルカリ細菌等に限定されるため、一般的な細菌の増殖が困難となり、有機物の分解促進が進みにくいためBODやCODが高いという問題があった。
【0010】
また、二酸化炭素等の中和ガスを供給し、埋立て地盤を中和する方法は、処分場における高pH対策としては有効であるが、微生物による有機物の分解促進やCOD、BODの低下を促進するものでは無かった。
【0011】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、海面廃棄物処分場等の廃棄物処分場の早期安定化を促進することができる廃棄物処分場の安定化方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、廃棄物が堆積した廃棄物堆積層を有する廃棄物処分場の安定化方法において、前記廃棄物堆積層内の保有水水位下限の近傍に排気口が位置するように給気管を埋設し、該給気管から前記廃棄物堆積層に二酸化炭素を含む中和用ガスと、酸素を含む好気分解促進ガスとを供給することことにある。
【0013】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記中和用ガスと好気分解促進ガスとを混合して前記給気管より供給することにある。
【0014】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記中和用ガスを前記給気管より供給して前記廃棄物堆積層のpHを低下させた後、前記好気分解促進ガスを前記給気管より供給して前記廃棄物堆積層中の有機物を好気的に分解することにある。
【0015】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1~3の何れか一の構成に加え、前記廃棄物堆積層に前記給気管から前記中和用ガス及び前記好気分解促進ガスを供給するとともに前記廃棄物堆積層のpH、化学的酸素要求量、生物化学的酸素要求量、重金属濃度、全有機体炭素についてモニタリングを行い、該モニタリングに基づき前記給気管の稼働範囲、前記中和用ガス及び前記好気分解促進ガスの供給量、供給時間を見直すことにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る廃棄物処分場の安定化方法は、請求項1に記載の構成を具備することによって、廃棄物処分場の廃棄物層に二酸化炭素を含む中和用ガスを供給することによってpH及びBOD、CODを低下させるとともに、pHの低下した廃棄物堆積層において好気分解促進ガスを供給することによって微生物数が大きく増加し、有機物の分解が促進され、BOD、CODを低減することができ、短期間で安定化を図ることができる。
【0017】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、効率的に中和用ガス及び好気分解促進ガスを供給することができ、廃棄物堆積層に含まれる保有水の中和と有機物の分解を同時に促進することができる。
【0018】
また、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、先に効率的に保有水の中和を促進し、廃棄物堆積層のpHを低下させたことによって、好アルカリ細菌等以外の微生物が生息可能な状態が形成され、ここに酸素を含む好気分解促進ガスを供給することによって好適に好アルカリ細菌以外の多くの細菌等の微生物の増殖が促され、有機物の分解促進を進めることができる。
【0019】
さらに、本発明において、請求項4に記載の構成を具備することによって、pH、BOD、CODの高い範囲の安定化促進を重点的に行え、処分場の安定化を安価かつ効率的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る廃棄物処分場の安定化方法の実施態様の一例を示す断面図である。
図2】同上の給気管の配置の概略を示す平面図である。
図3】同上の保有水水位の測定結果の一例を示すグラフである。
図4】本発明に係る廃棄物処分場の安定化方法におけるガス供給の手順を示すフローチャートである。
図5】本発明に係る廃棄物処分場の安定化方法におけるガス供給の他の手順を示すフローチャートである。
図6】中和用ガス及び好気分解促進ガスによる効果を確認する実験の結果を示すグラフである。
図7】本発明に係る廃棄物処分場の安定化方法の実施態様の一例を示す断面図である。
図8】同上の給気管の配置の概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る廃棄物処分場の安定化方法の実施態様を図1図6に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は、海面廃棄物処分場である。
【0022】
この海面廃棄物処分場1は、遮水護岸によって区画された貯留空間が形成され、図1に示すように、貯留空間内の底面遮水層2上に廃棄物が投入されて廃棄物堆積層3が形成され、その上面が覆土4されている。
【0023】
また、この既設管理型海面廃棄物処分場1では、図1図2に示すように、廃棄物堆積層3の保有水水位6の下限位置の近傍、例えば、保有水水位6の下限位置より下に排気口7が位置するように所定の間隔d(1~10m)をおいて給気管8を埋設し、給気管8から二酸化炭素を含む中和用ガス及び酸素を含む好気分解促進ガスを供給することにより安定化が図られている。符号10は、給気管8にガスを供給するためのコンプレッサーである。
【0024】
給気管8は、例えば、塩化ビニール製のパイプによって構成され、覆土4表面より廃棄物堆積層3の所定の深さ、即ち、排気口7が廃棄物堆積層3の保有水水位6の下限より下の位置まで上下に向けて埋設されるようになっている。
【0025】
このパイプには、下端部に多数の透水孔7a,7a…からなる排気口7が形成されており、排気口7を通して中和用ガス及び好気分解促進ガスが廃棄物堆積層3に向けて供給されるようになっている。
【0026】
尚、複数の給気管8のうちの一部は、排気口7が廃棄物堆積層3の保有水水位6の近傍であって、その下限より上側に位置していてもよい。
【0027】
以下に、具体的な廃棄物処分場1の安定化方法について図に基づいて説明する。
【0028】
(調査)
先ず、事前に対象となる既設管理型廃棄物処分場1のpH、化学的酸素要求量(以下、CODという)、保有水水位6、透水係数、重金属濃度等を測定し、状況を調査する。尚、陸上の管理型処分場においてはCODに替えて生物化学的酸素要求量(以下、BODという)を測定する。
【0029】
調査方法は、処分場の全域に亘って複数の観測孔を設け、自記式水位計によって一定期間連続して測定を行う。図3は、計測結果の一例であり、各計測位置における保有水水位6と、内水ポンド水位の変化が時系列に従って記載されている。保有水水位6は、各観測孔によって異なり、降水量や天候等の条件によって変動する。
【0030】
また、内水ポンド及び観測孔より定期的に保有水を採取し、pH、COD又はBOD及び重金属濃度等を測定する。尚、定期的な管理の際には、BODやCODの代替指標として全有機体炭素(TOC)を用いて水質傾向を確認してもよい。
【0031】
(対象範囲・条件設定)
次に、保有水水位6の測定結果に基づいて、測定期間内における最低水位を保有水水位6の下限と定め、給気管8の設置深度を決定する。尚、排気口7の位置は、廃棄物堆積層3の保有水水位6下限位置より下であって、その管理水位及び内水ポンドの水位までの位置とする。
【0032】
例えば、図3に示す例では、各サンプル位置によって保有水水位6の下限が異なるので、地点1では符号6aに示す線が下限、地点2では符号6bで示す線が下限となるので、それぞれ結果に基づいて設置深度を決定する。
【0033】
また、各観測孔の測定結果に基づいて給気管8の設置間隔dを決定するとともに、運転条件(中和用ガスの二酸化炭素濃度、好気分解促進ガスの酸素濃度、供給量、供給時間等)を決定する。
【0034】
運転条件については、例えば、pH、COD又はBODの測定値が高い位置には、給気管8の設置間隔を密に配置し、pH、COD、BODの測定値が低い位置では、給気管8の設置間隔を広くとるようにする方法、pH、COD又はBODの測定値が高い位置には、中和用ガス及び好気分解促進ガスの供給量を多くなるようにし、pH、CODの測定値が低い位置には、中和用ガス及び好気分解促進ガスの供給量を少なくなるようにする方法、pHの測定値が高い位置には、中和用ガスの濃度が高くなるようにし、BOD又はCODの測定値が高い位置には、好気分解促進ガスの濃度が高くなるようにする方法、或いは、pH、COD又はBODの測定値が高い位置には、中和用ガス及び好気分解促進ガスの供給時間を長くし、pH、COD又はBODの測定値が低い位置では、中和用ガス及び好気分解促進ガスの供給時間を短くする方法等を採ることができる。また、各方法、即ち、給気管8の間隔、供給量、供給時間の組み合わせによって最適な条件となるようにしてもよい。
【0035】
(ガス供給)
そして、決定された設置位置及び深度に基づいて給気管8を埋設し、設定された運転条件に基づいて給気管8を通して二酸化炭素を含む中和用ガス及び酸素を含む好気分解促進ガスの供給を開始する。尚、その際の余剰ガスは、大気中に放出する。
【0036】
中和用ガスには、酸素濃度を問わず、大気(CO濃度400ppm程度)よりも二酸化炭素を高濃度に含むものを使用し、主に発電所や焼却施設の排気ガス(CO濃度:数~十数%のCOガス)等を使用する。
【0037】
好気分解促進ガスには、O2濃度200000ppm程度のものを使用し、主に大気(O2濃度200000ppm程度)を使用する。
【0038】
尚、中和用ガス及び好気分解促進ガスの余剰ガスは、もともと大気或いは大気に放出されるものであり、余剰ガスを回収せずとも周辺環境に大きな影響を及ぼすことはないが、中和用ガス及び好気分解促進ガスの反応で消費される量を確認し、余剰ガスを放出しないように必要量を供給するようにしてもよい。
【0039】
この中和用ガス及び好気分解促進ガスの供給の供給は、図4に示すように、好気分解促進ガスである大気(O濃度200000ppm程度、CO濃度400ppm程度)に大気よりも二酸化炭素を高濃度(5%程度)に含む中和用ガスを供給・混合して混合ガス9を生成し、この混合ガス9をコンプレッサー10によって給気管8に送り込む。尚、好気分解促進ガスと中和用ガスとの混合比率は、上記調査の過程における計測結果に基づいて変更してもよい。
【0040】
また、図5に示すように、pH値が所定の数値に低下するまでコンプレッサー10によって中和用ガスを給気管8に供給し、しかる後、ガスの供給を好気分解促進ガスに切り替え、COD(陸上の管理型処分場においてはCODに替えてBOD)が所定の数値に低下するまでコンプレッサー10によって好気分解促進ガスを給気管8に供給するようにしてもよい。
【0041】
廃棄物堆積層3では、二酸化炭素を含む中和用ガスの供給によって、以下のような中和する反応が発生する。
CO+HO→HCO
Ca(OH)+HO→CaCO+2H
【0042】
その際、炭酸カルシウムCaCOの水への溶解度は小さく(0.00015mol/L(25℃)、pHが酸性に大きく傾く等の環境の変化がなければ、再溶解し二酸化炭素が放出されるおそれは少ない。
【0043】
また、二酸化炭素によって生じる炭酸は、弱酸であり、供給量が過剰であった場合であっても廃棄物のpHが大きく酸性に傾くことは無い。
【0044】
一方、この廃棄物堆積層3内では、中和用ガスの供給によりpHが低下したことによって、好アルカリ菌だけでなくその他の多くの細菌が生息し易い状態となるので、ここに酸素を含む好気分解促進ガスが供給されることによって、多くの細菌等の微生物が増殖する。
【0045】
その際、微生物数は、108~9個/g程度まで増加する。尚、土壌中の一般的な細菌数は、10個/g程度、中~下流の河川水中の一般的な細菌数10個/ml、河川上流の水源近くにおける細菌は103~4個/mlである。
【0046】
そして、細菌の増殖によって有機物が好気的に分解され、BOD又はCODが効率よく低減される。
【0047】
以下に、中和用ガス及び好気分解促進ガスを供給した場合のpH、従属栄養細菌数、CODについて検討した実験結果を示す。
【0048】
実験は、焼却灰を円筒形のカラム(直径50mm×高さ200mm)に充填し、カラム下方から所定の好気分解促進ガス(大気、酸素濃度200000ppm程度、CO2濃度:400ppm程度)に中和用ガスを混合し、CO2濃度が5%程度に調整した混合ガスを一定の供給量(1000ml/min)で供給し、1カ月経過後に混合ガスの供給を停止し、カラム上部から散水してカラム下部から浸出水を採取する作業を5か月間繰り返し、その際のpH、従属栄養細菌数及びCODを測定した。また、5か月後に焼却灰を採取して従属栄養細菌数を測定した。
【0049】
その結果、pHについては、図6(a)に示すように、混合ガスを供給したケースでは、1カ月後にpHが基準値以下に低下したのに対し、空気のみの場合にはpHが略低下しなかった。
【0050】
また、浸出水中の従属栄養細菌数については、図6(b)に示すように、中和用ガスと好気分解促進ガスとの混合ガスを供給したケースでは、1か月後から2か月後にかけて大きく増大し、10個/mlまで到達したのに対し、空気のみ供給した場合には、pHが高いままのため、5か月後でも103~4個/ml程度(ガス供給前の水準)であった。尚、5カ月後に採取した焼却灰中の従属栄養細菌数についても以下の表1に示すように、混合ガスを通気したケースでは、従属栄養細菌数が大きく増大した。
【表1】
【0051】
さらに、CODについては、図6(c)に示すように、混合ガスを供給したケースでは、浸出水のCODが低下して基準の90mg/L以下となったのに対し、空気のみ供給した場合は、散水によるCODの洗い出しによりCODは低下するものの、それ以上の顕著な分解は認められなかった
【0052】
(設定見直し)
一方、給気管8からの中和用ガス及び好気分解促進ガスの供給とともに、観測孔及び内水ポンドにおける保有水のpH、化学的酸素要求量(COD)、生物化学的酸素要求量(BOD)、重金属濃度等を定期的にモニタリングし、モニタリングに基づき給気管8の稼働範囲及び運転条件を見直す。尚、陸上の管理型処分場においてはCODに替えてBODをモニタリングする。
【0053】
即ち、モニタリングの結果、海面処分場の廃止基準(pH:5.0~9.0、COD:90mg/L以下)を満たしている観測孔の範囲では、中和用ガス及び好気分解促進ガスの供給を停止又は低下させ、依然高い値を示す観測孔の範囲では、中和用ガス及び好気分解促進ガスの供給量を増加又は必要に応じて給気管8を増設する。
【0054】
そして、各測定位置における保有水が廃止基準(pH:5.0~9.0、COD:90mg/L以下)に到達するまで上記の設定見直しを繰り返しながら中和用ガス及び好気分解促進ガスの供給を行う。
【0055】
尚、埋立て中の廃棄物処分場1において多層に廃棄物堆積層の埋め立て及び覆土を行う場合には、各層毎に上述の工程を繰り返し行う。
【0056】
このように構成された廃棄物処分場1の安定化方法は、廃棄物処分場1の廃棄物堆積層3に二酸化炭素を含む中和用ガスと酸素を含む好気分解促進ガスとを供給することによって、中和ガスによってpHが低下するとともに、pHの低下に伴い高アルカリ細菌以外の細菌でも生息可能な状態とすることができ、そこに好気分解促進ガスが供給されることによって好アルカリ性微生物以外の細菌等の微生物が増殖し、有機物の分解が促進され、COD及びBODの低減を促進し、短期間で安定化を図ることができる。
【0057】
また、上述したように、各測定位置における保有水が廃止基準(pH:5.0~9.0、COD:90mg/L以下)に到達するまで上記の設定見直しを繰り返しながら中和用ガス及び好気分解促進ガスの供給を行うので、pHの高い範囲やCOD、BODの高い範囲の安定化促進を重点的に行うことができる。
【0058】
さらに、劇物である塩酸や硫酸等を使用しないので、取り扱いや管理を容易に行え、周辺環境への悪影響を抑えることができる。
【0059】
尚、上述の実施例では、給気管8を上下に向けて埋設した例について説明したが、図7図8に示すように、給気管20を水平に向けて埋設してもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
この給気管20は、全体に排気孔(排気口)を有し、この排気孔を通して中和用ガス及び好気分解促進ガスを廃棄物堆積層3に向けて排出できるようになっている。
【0061】
この給気管20の埋設深さ及び間隔dは、上述の実施例と同様に、事前の調査に基づいて決定し、保有水水位6の下限の近傍、例えば、保有水水位6の下限より下になるように設置する。尚、図中符号21,22は観測用井戸、符号23は内水ポンドである。
【0062】
尚、水平に向けた給気管20の配管は、上述の図7に示す実施例に限定されず、例えば、保有水水位6の下限を挟んで上下に複数段配置してもよい。
【0063】
尚、上述の実施例では、海面処分場を例に説明したが、本発明方法は、陸上の管理型廃棄物処分場にも適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 既設管理型海面廃棄物処分場
2 底面遮水層
3 廃棄物堆積層
4 覆土
6 保有水水位
7 排気口
8 給気管
9 混合ガス
10 コンプレッサー
20 給気管
21 観測用井戸
22 観測用井戸
23 内水ポンド
24 開閉バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8