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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】パテ充填装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 9/12 20060101AFI20230323BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20230323BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20230323BHJP
   E04F 21/165 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B05C9/12
F16L5/02
H02G3/22
E04F21/165 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019156013
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021030183
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】中村 敦
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-200110(JP,A)
【文献】特開平9-9460(JP,A)
【文献】特開2018-187531(JP,A)
【文献】特開2005-282310(JP,A)
【文献】特開2007-154566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
F16L 5/00-7/02
H02G 3/22-3/40
E04F 21/00-21/32
E03C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パテ充填空間形成部材と、充填パテ均し部材とを備える、パテ充填装置であって、
前記パテ充填空間形成部材は、パテの充填空間を形成する充填空間形成部と、前記充填空間と外部との連通口の縁に沿って設けられた案内部とを備え、
前記充填パテ均し部材は、前記案内部に案内されてスライド移動可能な被案内部と、その被案内部のスライド移動に伴って、前記充填空間に充填されたパテの、前記連通口側へ溢れ出た余剰パテを、削るようにして均す均し部とを備える、パテ充填装置。
【請求項2】
前記連通口は、溝孔状に形成され、
前記案内部は、前記連通口の溝孔状に延びる方向に沿う両縁の少なくとも一方に形成され、
前記被案内部は、前記案内部に案内されて前記連通口の溝孔状に延びる方向にスライド移動可能である、請求項1に記載のパテ充填装置。
【請求項3】
前記案内部は、前記連通口の溝孔状に延びる方向に沿う両縁のいずれにも形成されている、請求項2に記載のパテ充填装置。
【請求項4】
前記案内部は、載置面を有し、
前記被案内部は、前記載置面に載る被載置面を有し、
前記均し部は、その先端が、前記被載置面よりも突出するように形成される、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のパテ充填装置。
【請求項5】
前記連通口を覆う覆い部材を備え、
前記充填パテ均し部材は、充填パテ均し部材取付用ビスにより、前記パテ充填空間形成部材または前記覆い部材に取り付けられており、
前記覆い部材は、前記充填パテ均し部材取付用ビスと同じビスにより、前記パテ充填空間形成部材に固定されて前記連通口を覆う、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のパテ充填装置。
【請求項6】
前記パテ充填空間形成部材は、構造物の貫通孔の一方側の孔周縁と対向して、その孔周縁に固定される固定部と、前記貫通孔の内周面との間に隙間をあけて対向する対向面を外周に有する筒状部とを備え、
前記筒状部には、前記一方側とは反対の他方側の外周部から前記貫通孔の内周面に向けて突出する、環状体が設けられ、
前記筒状部が、前記充填空間形成部となって、前記隙間が、前記充填空間を形成し、
前記固定部と前記筒状部とは繋がって設けられるとともに、それら固定部と筒状部との間に、前記充填空間に前記一方側からパテを充填するための開口部が設けられ、
前記開口部が、前記連通口となって、その開口部は、前記筒状部の外周面に沿って延びる溝孔状に形成されている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のパテ充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パテ充填空間形成部材と、充填空間に充填されたパテを均す充填パテ均し部材とを備える、パテ充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、充填材の充填空間を有して管・ケーブルを保持する、管・ケーブル保持具(例えば、特許文献1参照)があった。図12に示すように、この管・ケーブル保持具33は、中空壁31の壁面31aから離れた位置で、その中空壁31の貫通孔31bに通されるスリーブ32(管・ケーブル)を保持するリング状の保持部34と、壁面31aに当接するともに保持部34の外側に間隔をあけて位置するリング状の周壁部35と、その周壁部35から外方に突出して壁面に固定される固定部36と、保持部34と周壁部35とを周方向の複数箇所で連結する連結リブ37とを備えていた。そこで、周壁部35の内側が、充填空間38となって、保持部34と周壁部35との間の、連結リブ37を除く部分が、充填空間38に充填材40を充填するための充填開口39となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-153075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の管・ケーブル保持具33にあっては、充填開口39から充填空間38に充填材40(パテ)を充填すると、充填開口39部分の充填材の表面が乱れて見栄えが悪かった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、充填したパテの見栄えを良くすることができる、パテ充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るパテ充填装置は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係るパテ充填装置は、パテ充填空間形成部材と、充填パテ均し部材とを備える。前記パテ充填空間形成部材は、パテの充填空間を形成する充填空間形成部と、前記充填空間と外部との連通口の縁に沿って設けられた案内部とを備える。一方、前記充填パテ均し部材は、前記案内部に案内されてスライド移動可能な被案内部と、その被案内部のスライド移動に伴って、前記充填空間に充填されたパテの、前記連通口側へ溢れ出た余剰パテを、削るようにして均す均し部とを備える。
【0007】
このパテ充填装置によると、パテ充填空間形成部材は、充填空間形成部の他に、充填空間と外部との連通口の縁に沿って設けられた案内部を備えている。そして、充填パテ均し部材は、余剰パテを均す均し部の他に、被案内部を備えている。そこで、連通口側へ溢れ出た余剰パテを均すにあたって、被案内部をパテ充填空間形成部材の案内部に当てて、その被案内部、ひいては充填パテ均し部材をスライド移動させる。これにより、均し部は、案内部に沿って移動し、その均し部によって均されるパテの表面もまた、案内部に沿った面となる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係るパテ充填装置は、請求項1に記載のパテ充填装置において、前記連通口は、溝孔状に形成される。そこで、前記案内部は、前記連通口の溝孔状に延びる方向に沿う両縁の少なくとも一方に形成され、前記被案内部は、前記案内部に案内されて前記連通口の溝孔状に延びる方向にスライド移動可能である。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係るパテ充填装置は、請求項2に記載のパテ充填装置において、前記案内部は、前記連通口の溝孔状に延びる方向に沿う両縁のいずれにも形成されている。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係るパテ充填装置は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のパテ充填装置において、前記案内部は、載置面を有し、前記被案内部は、前記載置面に載る被載置面を有する。そこで、前記均し部は、その先端が、前記被載置面よりも突出するように形成される。これにより、充填パテ均し部材の被案内部をパテ充填空間形成部材の案内部に宛がって、被案内部の被載置面を、案内部の載置面に当てると、均し部の先端は、載置面よりも奥方に配され、この充填パテ均し部材によって均されたパテの表面は、載置面よりも奥方に位置することとなる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係るパテ充填装置は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のパテ充填装置において、前記連通口を覆う覆い部材を備える。そして、前記充填パテ均し部材は、充填パテ均し部材取付用ビスにより、前記パテ充填空間形成部材または前記覆い部材に取り付けられている。そこで、前記覆い部材は、前記充填パテ均し部材取付用ビスと同じビスにより、前記パテ充填空間形成部材に固定されて前記連通口を覆う。これにより、充填パテ均し部材を使用するにあたっては、充填パテ均し部材取付用ビスを、パテ充填空間形成部材または覆い部材から外すことで、充填パテ均し部材を、パテ充填空間形成部材または覆い部材から取り外す。そして、充填パテ均し部材で、充填空間に充填されたパテの余剰パテを均した後には、充填パテ均し部材取付用ビスと同じビス、特に外した充填パテ均し部材取付用ビスそのものを用いて、覆い部材をパテ充填空間形成部材に固定することができる。
【0012】
また、請求項6に記載の発明に係るパテ充填装置は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のパテ充填装置において、前記パテ充填空間形成部材は、構造物の貫通孔の一方側の孔周縁と対向して、その孔周縁に固定される固定部と、前記貫通孔の内周面との間に隙間をあけて対向する対向面を外周に有する筒状部とを備える。ここで、前記筒状部には、前記一方側とは反対の他方側の外周部から前記貫通孔の内周面に向けて突出する、環状体が設けられる。そこで、前記筒状部が、前記充填空間形成部となって、前記隙間が、前記充填空間を形成する。また、前記固定部と前記筒状部とは繋がって設けられるとともに、それら固定部と筒状部との間に、前記充填空間に前記一方側からパテを充填するための開口部が設けられる。そこで、前記開口部が、前記連通口となって、その開口部は、前記筒状部の外周面に沿って延びる溝孔状に形成されている。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るパテ充填装置によれば、パテ充填空間形成部材に案内部を設け、充填パテ均し部材に被案内部を設けることで、充填したパテの表面が案内部に沿った面となるため、そのパテの見栄えを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明一実施の形態の、パテ充填空間形成部材の、斜め正面からの斜視図である。
図2】同じく、パテ充填空間形成部材の、斜め背面からの斜視図である。
図3】同じく、パテ充填空間形成部材の正面図である。
図4】同じく、図3におけるA-A線による断面図である。
図5】同じく、充填パテ均し部材の拡大斜視図である。
図6】同じく、充填パテ均し部材の拡大正面図である。
図7】同じく、覆い部材の斜視図である。
図8】同じく、充填パテ均し部材を取り付けた覆い部材の斜視図である。
図9】同じく、パテ充填空間形成部材を壁の貫通孔部分に設置して、充填したパテを充填パテ均し部材で均す過程を示す、図4に相当する断面図である。
図10】同じく、パテ充填空間形成部材に、覆い部材と保持体とを組み付けた、正面図である。
図11】同じく、図10におけるB-B線による断面図である。
図12】従来の管・ケーブル保持具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明に係るパテ充填装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1図11は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、構造物としての建物の壁を示す。1aは、前記壁1を貫通する貫通孔を示す。2は、配線・配管材(配線材または配管材)を示す。3は、前記配線・配管材2を収容して保護する保護管を示す。4は、パテ充填装置を示す。
【0017】
パテ充填装置4は、パテ充填空間形成部材5と、充填パテ均し部材19とを備える。ここで、パテ充填空間形成部材5は、パテ11の充填空間Rを形成する充填空間形成部5aと、充填空間Rと外部との連通口5bの縁に沿って設けられた案内部5cとを備える。一方、充填パテ均し部材19は、前記案内部5cに案内されてスライド移動可能な被案内部19aと、その被案内部19aのスライド移動に伴って、充填空間Rに充填されたパテ11の、連通口5b側へ溢れ出た余剰パテを、削るようにして均す均し部19bとを備える。
【0018】
詳細には、パテ充填空間形成部材5の連通口5bは、溝孔状に形成される。図示実施の形態においては、前記連通口5bは、図3に示すように、後述する複数の渡し部14、14によって、正面視長孔状に複数区画されるようにして、前記充填空間形成部5aの外周面に沿って延びている。そして、案内部5cは、連通口5bの溝孔状に延びる方向に沿う両縁の少なくとも一方に(図示実施の形態においては、両縁のいずれにも)形成される。そこで、充填パテ均し部材19の被案内部19aは、案内部5cに案内されて連通口5bの溝孔状に延びる方向にスライド移動可能となっている。
【0019】
より詳細には、パテ充填空間形成部材5における案内部5cは、載置面5dを有し、充填パテ均し部材19における被案内部19aは、その載置面5dに載る被載置面19cを有する。そして、充填パテ均し部材19における均し部19bは、その先端が、被載置面19cよりも突出するように形成される。
【0020】
また、パテ充填装置4は、前記連通口5bを覆う覆い部材9を備える。そして、充填パテ均し部材19は、充填パテ均し部材取付用ビス22aにより、パテ充填空間形成部材5または覆い部材9(図示実施の形態においては、覆い部材9)に取り付けられている。そこで、覆い部材9は、充填パテ均し部材取付用ビス22aと同じビス22bにより、パテ充填空間形成部材5に固定されて前記連通口5bを覆う。
【0021】
図示実施の形態においては、パテ充填空間形成部材5は、壁1に、その壁1を貫通する貫通孔1aの一方側P1から固定される固定部6と、筒状部7とを備える。詳細には、固定部6は、貫通孔1aの一方側P1の孔周縁と対向して、その孔周縁に固定される。そして、筒状部7は、貫通孔1aの内周面との間に隙間Qをあけて対向する対向面7aを外周に有する。この筒状部7には、前記一方側P1とは反対の他方側P2の外周部から貫通孔1aの内周面に向けて突出する、環状体としての環状のリブ7bが設けられる。そこで、前記筒状部7が、前述の充填空間形成部5aとなって、前記隙間Qが、前述の充填空間Rを形成する。
【0022】
そして、固定部6と筒状部7とは繋がって設けられるとともに、それら固定部6と筒状部7との間に、充填空間Rに前記一方側P1からパテ11を充填するための開口部8が設けられる。そこで、開口部8が、前述の連通口5bとなって、その開口部8は、筒状部7の外周面に沿って延びる溝孔状に形成されている。
【0023】
また、パテ充填空間形成部材5には、パテ11に対して非接着性能を有する接触阻止部材10が設けられる。この接触阻止部材10は、前記隙間Q(充填空間R)に充填されるパテ11と前記リブ7bとの接触を阻止するように、リブ7bの、前記一方側P1の面に配される。
【0024】
具体的には、壁1は、建物の屋外に面する壁(外壁)である。ここで、パテ充填空間形成部材5における固定部6は、貫通孔1aの前記一方側P1の孔周縁(つまり、前記一方側P1の壁面1bであって、詳しくは、壁1の屋外側の壁面)と対向して、その孔周縁に固定される、矩形状の外縁を備えたフランジ部からなる。そして、前記筒状部7の内側には、配線・配管材2が通る通孔12が設けられる。すなわち、このパテ充填空間形成部材5(パテ充填装置4)は、配線・配管材2(図示実施の形態においては、配管材であって、例えば湯水が流れる通水管)を引き出すための引き出しカバーであり、壁1を貫通して配線・配管材2が通される貫通孔1aを、前記一方側P1(図示実施の形態においては、屋外側)において覆うものである。
【0025】
パテ充填空間形成部材5は、例えば合成樹脂製であって、前記固定部6を備える第1分割体501と、前記筒状部7を備える第2分割体502とが、接着とか超音波溶着等により一体化して形成されている。
【0026】
第1分割体501においては、前記固定部6は、内側が開口した方形板状に形成され、この固定部6の四隅に、パテ充填空間形成部材5を壁1に取付固定するための取付孔6aがあけられている。すなわち、この取付孔6aを通って壁1にねじ込まれるビス等の固着具21により、パテ充填空間形成部材5は、壁1に固定される。この第1分割体501は、前記固定部6の他に、その固定部6の内側に間隔を置いて位置する円環状のリング部13と、固定部6とリング部13とを繋ぐ複数の渡し部14、14とを備える。
【0027】
第2分割体502は、筒状部7の他に、筒状部7の内側を前記一方側P1において覆う前面板15と、外筒16と、内側が前記通孔12となる内筒17とを、備えている。外筒16は、斜め上前方を向くように前面板15から突出して形成され、前側は開口するが、後ろ側には、底板16aが設けられている。そして、外筒16には、その先端部外周に鍔16bが設けられ、下部に水抜き孔16cが設けられている。内筒17は、外筒16の底板16aから、斜め上前方に突出して形成され、両端が開口している。図示実施の形態においては、外筒16は、断面横長に形成され、内筒17は、断面円形であって、外筒16内に横に並ぶようにして二つ設けられる。そこで、内筒17には、配線・配管材2が挿入され、外筒16内において内筒17の外周には、保護管3が嵌められる(図11参照)。また、前面板15には、ビス22bがねじ込まれるねじ込み部15aが設けられる。図示実施の形態においては、このねじ込み部15aは、前面板15に突出形成されたU字状の突起部15bの内側からなっている。
【0028】
そこで、第1分割体501と第2分割体502とは、第1分割体501が第2分割体502を取り囲むように位置し、第1分割体501のリング部13と第2分割体502の筒状部7との間で例えば接着される。こうして、第1分割体501と第2分割体502とは一体化され、これにより、リング部13が、筒状部7の一部となって、固定部6と筒状部7とが、渡し部14を介して繋がり、固定部6とリング部13(つまり、筒状部7)との間の、渡し部14を除く部分が、前記開口部8(連通口5b)となる。
【0029】
ここにおいて、前述の案内部5cとしては、固定部6側の第1案内部5eと、筒状部7側の第2案内部5fとが設けられている。そして、前述の載置面5dとしては、固定部6側の第1載置面5g(つまり、第1案内部5eを構成する載置面)と、筒状部7側の第2載置面5h(つまり、第2案内部5fを構成する載置面)とが設けられている。詳細には、固定部6の内側の開口縁は、前記一方側P1が段状に窪んで形成され、その窪んだ面が、前記第1載置面5gとなる。そして、固定部6の内周面が、第1案内部5eを構成する第1案内側面5iとなっている。すなわち、第1案内部5eは、第1載置面5gと第1案内側面5iとを備えてなる。また、第2載置面5hは、筒状部7の、前記一方側P1の端面(図示実施の形態においては、リング部13の、前記一方側P1の端面)からなり、この第2載置面5hは、第1載置面5gよりも、前記一方側P1に飛び出た位置にある。そして、筒状部7の、外周面の前記一方側P1(図示実施の形態においては、リング部13の外周面)が、第2案内部5fを構成する第2案内側面5jとなっている。すなわち、第2案内部5fは、第2載置面5hと第2案内側面5jとを備えてなる。
【0030】
覆い部材9は、例えば合成樹脂製であって、環状に形成されて前記開口部8を覆う覆い部材本体9aと、その覆い部材本体9aの内側の下部部分に、その覆い部材本体9aと一体となって設けられた取付部9bとを備える。ここで、取付部9bには、孔9cがあけられており、その孔9cを通ってパテ充填空間形成部材5(詳しくは、前面板15に設けられたねじ込み部15a)にねじ込まれるビス22bにより、覆い部材9は、パテ充填空間形成部材5に前記一方側P1から固定されて開口部8(連通口5b)を前記一方側P1から覆う。また、この孔9cの内周面には、充填パテ均し部材取付用ビス22a(詳しくは、充填パテ均し部材取付用ビス22aの雄ねじ)が係合する、係合突起9dが突設されている。そこで、充填パテ均し部材19の後述する孔19eを通って覆い部材9の孔9cに挿入された充填パテ均し部材取付用ビス22aが、係合突起9dに係合することで、充填パテ均し部材19は、覆い部材9に取り付けられる。
【0031】
接触阻止部材10は、例えばポリオレフィン系樹脂からなるシートであって、環状に形成されている。この接触阻止部材10は、筒状部7の外周に嵌められ、うら面が、前記リブ7bに当接し、おもて面が、前記隙間Q(充填空間R)の底面を形成する。なお、接触阻止部材10を筒状部7の外周に嵌めるにあたっては、第2分割体502単体の状態で筒状部7の外周に、接触阻止部材10を嵌め、その後に、第2分割体502と第1分割体501とを、例えば接着により一体化する。
【0032】
また、パテ充填空間形成部材5には、内筒17の外周に嵌められた保護管3を保持する保持体18が設けられる。この保持体18は、図10および図11に示すように、外筒16の先端に取り付けられるものであって、横長の環状に形成され、その内周には、外筒16の鍔16bに係合する係合溝18aと、保護管3に係合する係合凸部18bとが設けられている。詳細には、保護管3は、凹凸が長手方向に繰り返される波付管であって、係合凸部18bは、横に並ぶ二つの前記内筒17、17を取り囲むようにして、左右両側に円弧状の先端ラインを形成するように内側方向に突き出て、各保護管3の凹部3aに係合する。また、保持体18は、二つに(詳しくは、上下の二つに)分割された分割体18c、18cからなり、それら分割体18c、18cが、外筒16および保護管3を挟むようにして組み付けられて、両分割体18c、18cがビス等の固着具23により固定される。この際、係合溝18aが、外筒16の鍔16bに係合することで、この保持体18は、外筒16に取り付けられる。そして、係合凸部18bが、保護管3の凹部3aに係合することで、保護管3を抜止め状態に保持する。
【0033】
充填パテ均し部材19は、例えば合成樹脂製であって、前述の被案内部19aおよび均し部19bと、つまみ部19dとを備える。この充填パテ均し部材19の均し部材本体19xは、略平板状に形成されて、一側(図5および図6において、下方寄り側)に、被案内部19aおよび均し部19bが設けられ、他側(図5および図6において、上方寄り側)に、つまみ部19dが設けられる。そこで、つまみ部19dに、充填パテ均し部材取付用ビス22aが通る孔19eがあけられている。そして、被案内部19aおよび均し部19bと、つまみ部19dとの境界部分には、前記均し部材本体19xの両側の板面から突出する突片19y、19yが設けられている。これら突片19y,19yは、被案内部19aおよび均し部19bと、つまみ部19dとの境界部分に沿って略直状に延びて、さらに、前記一側へと略90度に折れ曲がって延びており、その延びた先端の面は、後述する第1被載置面19iの一部を構成する。
【0034】
均し部19bは、前記一側に突出して形成されている。被案内部19aとしては、均し部19bを挟む一方の側の第1被案内部19gと、均し部19bを挟む他方の側の第2被案内部19hとが設けられている。そして、前述の被載置面19cとしては、均し部19bを挟む一方の側の第1被載置面19i(つまり、第1被案内部19gを構成する被載置面であって、第1載置面5gに載る被載置面)と、均し部19bを挟む他方の側の第2被載置面19j(つまり、第2被案内部19hを構成する被載置面であって、第2載置面5hに載る被載置面)とが設けられている。
【0035】
詳細には、第1被載置面19iは、均し部19bを挟む一方の側において、均し部19bの先端よりも窪んで位置し、前記突片19y、19yの先端の面を含めて、T字状に形成されている。そして、均し部19bの、前記一方の側の側面が、第1被案内部19gを構成する第1被案内側面19k(つまり、第1案内側面5iに当接する被案内側面)となっている。すなわち、第1被案内部19gは、第1被載置面19iと第1被案内側面19kとを備えてなる。また、第2被載置面19jは、均し部19bを挟む他方の側において、均し部19bの先端よりも窪んで(詳しくは、第1被載置面19iよりも窪んで)位置する。そして、均し部19bの、前記他方の側の側面が、第2被案内部19hを構成する第2被案内側面19m(つまり、第2案内側面5jに当接する被案内側面)となっている。すなわち、第2被案内部19hは、第2被載置面19jと第2被案内側面19mとを備えてなる。
【0036】
次に、以上の構成からなるパテ充填装置4の作用効果について説明する。このパテ充填装置4によると、筒状部7と繋がって設けられた固定部6が、貫通孔1aの一方側P1から壁1(詳しくは、貫通孔1aの一方側P1の孔周縁)に固定される。筒状部7は、その外周に有する対向面7aが、貫通孔1aの内周面との間に隙間Q(充填空間R)をあけて対向する。そして、固定部6と筒状部7との間に、前記一方側P1から前記隙間Q(充填空間R)にパテ11を充填するための開口部8(連通口5b)が設けられており、パテ11は、前記一方側P1からその開口部8を通って隙間Q(充填空間R)に充填される。こうして、パテ11は、貫通孔1aの一方側P1である、固定部6を固定する側、つまり、このパテ充填空間形成部材5を設置する側と同じ側から充填されることから、その充填作業を容易に行うことができる。
【0037】
また、筒状部7には、他方側P2に環状のリブ7bが設けられており、隙間Q(充填空間R)に充填されたパテ11は、このリブ7bによってそれ以上の進入が阻止される。
【0038】
また、リブ7bの一方の面に配される接触阻止部材10が、パテ11に対して非接着性能を有することから、充填されたパテ11は、貫通孔1aの内周面と筒状部7(充填空間形成部5a)の対向面7aとの二面接着となる。このため、筒状部7に荷重や振動がかかったときに、パテ11は、底面が接着されていないことから、筒状部7にかかる荷重や振動を効果的に吸収し、貫通孔1aの内周面や筒状部7の対向面7aとの接着が剥がれにくくなる。
【0039】
また、パテ充填空間形成部材5は、充填空間形成部5aの他に、充填空間Rと外部との連通口5bの縁に沿って設けられた案内部5cを備えている。そして、充填パテ均し部材19は、余剰パテを均す均し部19bの他に、被案内部19aを備えている。そこで、連通口5b側へ溢れ出た余剰パテを均すにあたって、被案内部19aをパテ充填空間形成部材5の案内部5cに当てて、その被案内部19a、ひいては充填パテ均し部材19をスライド移動させる。これにより、均し部19bは、案内部5cに沿って移動し、その均し部19bによって均されるパテ11の表面もまた、案内部5cに沿った面となる。すなわち、このパテ充填装置4によれば、パテ充填空間形成部材5に案内部5cを設け、充填パテ均し部材19に被案内部19aを設けることで、充填したパテ11の表面が案内部5cに沿った面となり、このため、そのパテ11(詳しくは、パテ11の表面)の見栄えを良くすることができる。
【0040】
また、パテ充填空間形成部材5に設けられた案内部5cは、溝孔状の連通口5bの両縁に形成されており(つまり、第1案内部5eと第2案内部5fが形成されており)、充填パテ均し部材19のスライド移動を安定して行うことができる。さらに、充填パテ均し部材19における、第1被載置面19iが、T字状に形成されることで、充填パテ均し部材19のスライド移動を一層安定して行うことができる。
【0041】
また、均し部19bは、その先端が、被載置面19c(詳しくは、第1被載置面19iおよび第2被載置面19j)よりも突出するように形成される。これにより、充填パテ均し部材19の被案内部19aをパテ充填空間形成部材5の案内部5cに宛がって、被案内部19aの被載置面19cを、案内部5cの載置面5dに当てると、均し部19bの先端は、載置面5d(詳しくは、第1載置面5gおよび第2載置面5h)よりも奥方に配され、この充填パテ均し部材19によって均されたパテ11の表面は、載置面5dよりも奥方に位置することとなる。
【0042】
また、充填パテ均し部材19は、充填パテ均し部材取付用ビス22aにより、覆い部材9に取り付けられている。そして、覆い部材9は、充填パテ均し部材取付用ビス22aと同じビス22bにより、パテ充填空間形成部材5に固定されて連通口5bを覆う。これにより、充填パテ均し部材19を使用するにあたっては、充填パテ均し部材取付用ビス22aを、覆い部材9から外すことで、充填パテ均し部材19を、覆い部材9から取り外す。そして、充填パテ均し部材19で、充填空間Rに充填されたパテ11の余剰パテを均した後には、充填パテ均し部材取付用ビス22aと同じビス22b、特に外した充填パテ均し部材取付用ビス22aそのものを用いて、覆い部材9をパテ充填空間形成部材5に固定することができる。このため、覆い部材9をパテ充填空間形成部材5に固定するためのビスを、別途用意する必要がない。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、建物の壁1は、外壁等の立壁に限らず、底壁とか天壁等であってもよく、また、構造物は、建物の壁1以外に、広く、建造物や設置物等の各構成部であってもよい。
【0044】
また、パテ充填装置4は、覆い部材9を備え、パテ充填空間形成部材5には、接触阻止部材10が設けられるが、これら覆い部材9と接触阻止部材10のいずれか一方、あるいは両方は、無くてもよい。
【0045】
また、環状体は、筒状部7の周方向に連続するように設けられていなくてもよい。すなわち、図示実施例では、環状体としての環状のリブ7bが、筒状部7の周方向に連続している例を示したが、筒状部7の周方向に非連続となって並ぶ複数の小リブによって、環状のリブ7bを形成してもよい。また、このように、環状体を、周方向に非連続に並ぶ複数の小リブによって形成し、かつ、接触阻止部材10を設けない場合には、複数の小リブの間は、選択するパテ11の粘性を考慮して、そのパテ11が他方側P2に漏れ出ない程度に狭くするのが望ましい。また、環状体は、筒状部7と別体に設けてもよく、例えば、接触阻止部材10を設けた場合には、その接触阻止部材10が、環状体を構成しているとも言える。
【0046】
また、固定部6は、フランジ部からなって、貫通孔1aの一方側P1の孔周縁(壁面1b)と対向して、その孔周縁(壁面1b)に固定されるが、このとき、固定部6と孔周縁(壁面1b)との間に、パッキン等が介在してもよい。
【0047】
また、固定部6は、矩形状の外縁を備えたものに限られず、円形その他の形状からなる外縁を備えたフランジ部からなるものであってもよい。
【0048】
また、固定部6は、フランジ部からならなくても、貫通孔1aの内周面に固定されるものであってもよい。
【0049】
また、パテ充填空間形成部材5は、配線・配管材2が通る通孔12が設けられて、配線・配管材2を引き出すための引き出しカバーとなっているが、通孔12が設けられず、単に、貫通孔1a全体を覆うものであってもよい。
【0050】
また、連通口5bは、パテ11の充填空間Rと外部とを連通する連通口であって、必ずしも、充填空間Rにパテ11を充填するための開口部8である必要はない。
【符号の説明】
【0051】
1 壁(構造物)
1a 貫通孔
4 パテ充填装置
5 パテ充填空間形成部材
5a 充填空間形成部
5b 連通口
5c 案内部
5d 載置面
6 固定部
7 筒状部
7a 対向面
7b リブ(環状体)
8 開口部
9 覆い部材
11 パテ
19 充填パテ均し部材
19a 被案内部
19b 均し部
19c 被載置面
22a 充填パテ均し部材取付用ビス
22b ビス
P1 一方側
P2 他方側
Q 隙間
R 充填空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12