(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】無線通信装置、基地局無線装置及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 4/06 20090101AFI20230323BHJP
G08B 27/00 20060101ALI20230323BHJP
H04M 11/04 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H04W4/06 110
G08B27/00 C
H04M11/04
(21)【出願番号】P 2019162683
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和人
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-008591(JP,A)
【文献】特開2009-171382(JP,A)
【文献】国際公開第2010/073403(WO,A1)
【文献】特開2014-082730(JP,A)
【文献】特開2011-166578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0321178(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
H04M 11/00-11/10
G08B 19/00-31/00
H04L 12/28
H04L 12/44-12/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一周波数を用いて下り送信を行う複数の基地局無線装置と、前記複数の基地局無線装置を制御する回線制御装置との間の通信を中継する無線通信装置であって、
前記回線制御装置に有線ネットワークを介して接続され、前記回線制御装置から送信された送信開始電文に付加され、前記複数の基地局無線装置において同時に下り送信を開始するタイミングを示す送信開始フレームの情報を、選択呼出音声の制御情報に格納して、無線送信することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
同一周波数を用いて下り送信を行う複数の基地局無線装置と、前記複数の基地局無線装置を制御する回線制御装置との間の通信を中継する無線通信装置であって、
前記基地局無線装置に有線ネットワークを介して接続され、受信した無線信号に含まれる選択呼出音声の制御情報を前記有線ネットワークのフォーマットでカプセル化した転送電文を生成し、前記転送電文を前記有線ネットワークを介して前記基地局無線装置に送信することを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
同一周波数を用いて下り送信を行う基地局無線装置であって、
有線ネットワークを介して、カプセル化された転送電文を受信すると、前記転送電文から選択呼出音声の制御情報を抽出し、前記制御情報から送信開始フレームの情報を読み出して、前記送信開始フレームにおいて下り送信を開始することを特徴とする基地局無線装置。
【請求項4】
請求項1記載の第1の無線通信装置と、請求項2記載の第2の無線通信装置と、請求項3記載の基地局無線装置を備え、
前記第1の無線通信装置が、前記第2の無線通信装置に選択呼出音声の制御情報を無線送信し、前記第2の無線通信装置が、前記無線信号を受信して転送電文を生成し、前記基地局無線装置に送信することを特徴とする無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基地局無線装置が同一周波数を用いて送信する無線通信システムにおいて、中継局として用いられ、基地局間同期を実現する無線通信装置、基地局無線装置及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来のデジタル無線システムでは、複数の基地局無線装置による同一運用波の同時送信を行う際に、各基地局無線装置は、回線制御装置から、下位の無線端末装置への下り送信開始の指示を受信して、これを契機に各々のタイミングで下り送信を開始しており、非同期送信となっていた。
【0003】
これは、回線制御装置が一斉に送信開始指示を通知しても、回線制御装置と各基地局無線装置との間の伝送時間の違いによって各基地局無線装置が送信開始指示を受信するタイミングが異なるためである。
この場合、近隣の基地局無線装置の影響によって、音声が聞こえない不感地帯が発生する可能性がある。
【0004】
そのため、回線制御装置と基地局無線装置との間の伝送時間に関わらず、複数の基地局無線装置が同じタイミングで下り送信を開始できるようにした無線通信システムが提案されている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1には、回線制御装置が、下り送信の開始指示の送信タイミングに対して、複数の基地局無線装置と回線制御装置との間の伝送時間の最大値分の間隔を置いたフレーム番号を設定し、複数の基地局無線装置が当該フレーム番号において下り送信を行うことが記載されている。
【0006】
[従来の無線通信システム:
図6]
特許文献1の技術を用いた従来の無線通信システムの構成について
図6を用いて説明する。
図6は、従来の無線通信システムの概略構成を示す説明図である。
図6に示すように、従来の無線通信システムは、例えば連絡用無線システムとして用いられ、無線卓#1(10-1),#2(10-2)と、回線制御装置20と、基地局無線装置#1(30-1),#2(30-2)と、移動局無線装置70とを備えている。
【0007】
無線卓#1(10-1),#2(10-2)(以下、無線卓10と記載することもある)は、回線制御装置20にLAN(Local Area Network)等によって接続され、本部等に設置されて、音声の入出力やデータの入出力を行う。
【0008】
回線制御装置20は、回線制御を行い、また、基地局無線装置#1(30-1),#2(30-2)に対する下り送信開始の制御を行う。
基地局無線装置#1(30-1),#2(30-2)は、回線制御装置20にLAN又は光回線で接続され、移動局無線装置70と無線通信を行う。
【0009】
そして、回線制御装置20、基地局無線装置#1(30-1),#2(30-2)は、衛星80からのGPS(Global Positioning System)信号を受信して、GPSの基準時刻情報、基準時刻に同期した1PPS(Pulse Per Second)のタイミング信号を抽出し、例えば10MHzのクロック信号を生成して、同期信号としている。
【0010】
これにより、回線制御装置20、基地局無線装置#1(30-1),#2(30-2)は、10MHzクロックとカウンタを用いて、特定の長さの無線フレームに、基準時刻に同期したフレーム番号を付している。
フレーム番号は、GPSの基準時刻に同期しているため、回線制御装置20、基地局無線装置#1(30-1),#2(30-2)において同じタイミングで同じフレーム番号が付されるものである。
【0011】
[従来の下り送信開始:
図7]
従来の無線通信システムにおける基地局無線装置#1(30-1),#2(30-2)(以下、基地局無線装置30と記載することもある)下り送信開始について
図7を用いて説明する。
図7は、従来の無線通信システムにおける下り送信開始のシーケンスを示すシーケンス図である。
図7に示すように、無線卓10からプレス状態で音声が入力されると(発呼されると)(S30)、回線制御装置20は、無線卓10からの送信を検出し、複数の基地局無線装置30で下り送信を開始する送信フレーム番号を送信開始電文(図では「送信開始」)に付加して(S31)、基地局無線装置30に送信開始電文を送信する(S32)。
【0012】
送信フレーム番号は、回線制御装置20からの伝送時間が異なる複数の基地局無線装置30において、一斉に下り送信が開始されるよう指定されたフレーム番号である。
具体的には、送信フレーム番号は、下り送信の開始指示のフレーム番号に、回線制御装置20から最も遠い基地局無線装置30(
図6の例では基地局無線装置#2(30-2))までの伝送時間及び処理時間に相当するフレーム数以上の値を加算したフレーム番号とする。ここで、加算する値をオフセットと称する。
【0013】
基地局無線装置30では、送信開始電文に付加された送信フレーム番号に基づいて送信データを設定する(S33)。
そして、基地局無線装置30は、カウンタからGPSに基づくフレーム番号を取得し(S34)、GPSに基づくフレーム番号と送信データのフレーム番号(送信フレーム番号)とが一致したかどうかを判断し(S35)、一致しない場合(Noの場合)には処理S35を繰り返す。
【0014】
処理S35で、GPSに基づくフレーム番号と送信フレーム番号とが一致した場合には(Yesの場合)、移動局無線装置70に対して下り送信を開始する(S36)。
これにより、回線制御装置20からの伝送時間が短い基地局無線装置#1(30-1)は送信開始電文を受信してから下り送信開始までの待ち時間が長く、回線制御装置20からの伝送時間が長い基地局無線装置#2(30-2)は待ち時間が短くなり、どちらも同じフレーム番号で一斉に下り送信を行うことになる。
基地局間同期がとれることにより、相互干渉を防ぎ、音声が聞こえない不感地帯を低減させるようにしている。
【0015】
[固定局無線装置による中継]
回線制御装置20に接続された基地局無線装置30が設けられていない地域に対して通信サービスを広げる場合には、回線制御装置20と、当該地域に設けられた基地局無線装置30に、それぞれ固定局無線装置を接続し、当該固定局無線装置間で無線送信を行って、回線制御装置20と基地局無線装置30との間の通信を中継する構成とする。固定局無線装置間の通信には、基地局無線装置30における下り送信とは別の周波数を用いる。
しかし、固定局無線装置には、回線制御装置20のように、送信フレーム番号を付加して送信開始電文を送信するインタフェースがないため、基地局間同期が実現できない。
【0016】
[関連技術]
無線通信システムに関する従来技術としては、特開2015-144408号公報「無線通信システム」(特許文献1)がある。
上述したように、特許文献1には、複数の基地局無線装置における下り送信開始のタイミングを同期させ、不感地帯を低減させる無線通信システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したように、従来の固定局無線装置を設けた無線通信システムでは、基地局間同期を実現できず、干渉が発生して不感地帯が生じてしまうという問題点があった。
【0019】
尚、特許文献1には、回線制御装置からの送信開始電文を中継する際に、回線制御装置からの送信フレーム番号を基地局無線装置に送信して、基地局間同期を実現する固定局無線装置についての記載はない。
【0020】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、回線制御装置と基地局無線装置との間を中継する際に、回線制御装置からの送信フレーム番号を基地局無線装置に送信することができ、基地局間同期を実現することができる無線通信装置、基地局無線装置及び無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、同一周波数を用いて下り送信を行う複数の基地局無線装置と、複数の基地局無線装置を制御する回線制御装置との間の通信を中継する無線通信装置であって、回線制御装置に有線ネットワークを介して接続され、回線制御装置から送信された送信開始電文に付加され、複数の基地局無線装置において同時に下り送信を開始するタイミングを示す送信開始フレームの情報を、選択呼出音声の制御情報に格納して、無線送信することを特徴としている。
【0022】
また、本発明は、同一周波数を用いて下り送信を行う複数の基地局無線装置と、複数の基地局無線装置を制御する回線制御装置との間の通信を中継する無線通信装置であって、基地局無線装置に有線ネットワークを介して接続され、受信した無線信号に含まれる選択呼出音声の制御情報を有線ネットワークのフォーマットでカプセル化した転送電文を生成し、転送電文を有線ネットワークを介して基地局無線装置に送信することを特徴としている。
【0023】
また、本発明は、同一周波数を用いて下り送信を行う基地局無線装置であって、有線ネットワークを介して、カプセル化された転送電文を受信すると、転送電文から選択呼出音声の制御情報を抽出し、制御情報から送信開始フレームの情報を読み出して、送信開始フレームにおいて下り送信を開始することを特徴としている。
【0024】
また、本発明は、無線通信システムであって、請求項1記載の第1の無線通信装置と、請求項2記載の第2の無線通信装置と、請求項3記載の基地局無線装置を備え、第1の無線通信装置が、第2の無線通信装置に選択呼出音声の制御情報を無線送信し、第2の無線通信装置が、無線信号を受信して転送電文を生成し、基地局無線装置に送信することを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、同一周波数を用いて下り送信を行う複数の基地局無線装置と、複数の基地局無線装置を制御する回線制御装置との間の通信を中継する無線通信装置であって、回線制御装置に有線ネットワークを介して接続され、回線制御装置から送信された送信開始電文に付加され、複数の基地局無線装置において同時に下り送信を開始するタイミングを示す送信開始フレームの情報を、選択呼出音声の制御情報に格納して、無線送信する無線通信装置としているので、回線制御装置と基地局無線装置との間を無線を用いて中継する際に、回線制御装置で付加された送信開始フレームの情報を送信することができる効果がある。
【0026】
また、本発明によれば、同一周波数を用いて下り送信を行う複数の基地局無線装置と、複数の基地局無線装置を制御する回線制御装置との間の通信を中継する無線通信装置であって、基地局無線装置に有線ネットワークを介して接続され、受信した無線信号に含まれる選択呼出音声の制御情報を有線ネットワークのフォーマットでカプセル化した転送電文を生成し、転送電文を有線ネットワークを介して基地局無線装置に送信する無線通信装置としているので、無線で受信した送信開始フレームの情報を含む選択呼出音声をカプセル化して有線ネットワークで基地局無線装置に送信でき、回線制御装置と基地局無線装置との間を無線を用いて中継しても、基地局間同期を実現して不感地帯の発生を抑えることができる効果がある。
【0027】
また、本発明によれば、同一周波数を用いて下り送信を行う基地局無線装置であって、有線ネットワークを介して、カプセル化された転送電文を受信すると、転送電文から選択呼出音声の制御情報を抽出し、制御情報から送信開始フレームの情報を読み出して、送信開始フレームにおいて下り送信を開始する基地局無線装置としているので、カプセル化された転送電文から送信開始フレームの情報を読み出し、それに基づいて下り送信を開始でき、回線制御装置と基地局無線装置との間を無線を用いて中継しても、基地局間同期を実現して不感地帯の発生を抑えることができる効果がある。
【0028】
また、本発明によれば、請求項1記載の第1の無線通信装置と、請求項2記載の第2の無線通信装置と、請求項3記載の基地局無線装置を備え、第1の無線通信装置が、第2の無線通信装置に選択呼出音声の制御情報を無線送信し、第2の無線通信装置が、無線信号を受信して転送電文を生成し、基地局無線装置に送信する無線通信システムとしているので、第1の無線装置が、回線制御装置で付加された送信開始フレームの情報を選択呼出音声の制御情報に格納して第2の無線通信装置に無線送信し、第2の無線通信装置が、受信した無線信号に含まれる選択呼出音声の制御情報を有線ネットワークのフォーマットでカプセル化した転送電文を基地局無線装置に送信し、基地局無線装置が、転送電文に含まれる選択呼出音声の制御情報から送信開始フレームの情報を読み取って当該送信開始フレームで下り送信を開始することができ、回線制御装置と基地局無線装置との間を無線を用いて中継しても、基地局間同期を実現して不感地帯の発生を抑えることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本無線通信システムの概略構成を示す説明図である。
【
図2】選択呼出音声の制御情報のフォーマットを示す説明図である。
【
図3】呼制御付加情報のオクテットを示す説明図である。
【
図4】本無線通信システムの動作タイミングの例を示す模式説明図である。
【
図5】本無線通信システムにおける下り送信開始のシーケンスを示すシーケンス図である。
【
図6】従来の無線通信システムの概略構成を示す説明図である。
【
図7】従来の無線通信システムにおける下り送信開始のシーケンスを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信装置(本無線通信装置)は、回線制御装置と基地局無線装置との間を中継する固定局無線装置として用いられるものであって、回線制御装置に接続された第1の無線通信装置が、回線制御装置からの送信フレーム番号を、選択呼出音声の制御情報における呼制御付加情報の予約領域に格納して無線送信し、基地局無線装置に接続された第2の無線通信装置が、受信した選択呼出音声をLAN等のネットワークのフォーマットに組み込んでカプセル化して転送電文を生成し、当該転送電文を基地局無線装置に送信するようにしており、回線制御装置からの送信フレーム番号を基地局無線装置に受信させることができ、固定局無線装置を用いて通信サービス範囲を拡大しても、基地局間同期を実現して、不感地帯の発生を抑えることができるものである。
【0031】
また、本発明の実施の形態に係る基地局無線装置(本基地局無線装置)は、LAN等のネットワークから、カプセル化された転送電文を受信すると、選択呼出音声を抽出して送信フレーム番号を読み出し、当該送信フレーム番号で下り送信を開始するようにしており、固定局無線装置を用いたシステムにおいても基地局間同期を実現して、不感地帯の発生を抑えることができるものである。
【0032】
また、本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本無線通信システム)は、固定局無線装置として本無線通信装置を備え、固定局無線装置に接続する基地局無線装置として本基地局無線装置を備えたものである。
尚、本無線通信システムは、4値FSK(Frequency Shift Keying:周波数偏移変調)の変調方式を用いている。
【0033】
[実施の形態に係る測定装置の構成:
図1]
本無線通信システムの構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本無線通信システムの概略構成を示す説明図である。
図6と同様の構成部分については同一の符号を付している。
図1に示すように、本無線通信システムは、従来と同様の構成部分として、無線卓#1(10-1),#2(10-2)と、回線制御装置20と、基地局無線装置#1(30-1)と、移動局無線装置70とを備えている。従来と同様の構成部分は、動作も従来と同様であるため、説明は省略する。
【0034】
また、本無線通信システムの特徴部分として、第1の固定局無線装置#1-1(41-1)及び#2-1(41-2)(以下、第1の固定局無線装置41と記載することもある)と、第2の固定局無線装置#1-2(42-1)及び#2-2(42-2)(以下、第2の固定局無線装置42と記載することもある)とを備えている。
尚、
図1及び後述する
図4、
図5では、第1の固定局無線装置41、第2の固定局無線装置42について「第1の」「第2の」を省略して記載している。
【0035】
第1の固定局無線装置#1-1(41-1)及び#2-1(41-2)は、回線制御装置20に有線で接続されており、また、第2の固定局無線装置#1-2(42-1)は、基地局無線装置#1-3(43-1)に有線で接続され、第2の固定局無線装置#2-2(42-2)は、有線で基地局無線装置#2-3(43-2)に有線で接続されている。基地局無線装置#1-3(43-1)及び基地局無線装置#2-3(43-2)を基地局無線装置43と記載することもある。
【0036】
そして、第1の固定局無線装置41と第2の固定局無線装置42とは、無線通信を行って、回線制御装置20と基地局無線装置43との間の通信を中継する。
第1の固定局無線装置41と第2の固定局無線装置42との間の通信には、周波数f2が用いられる。周波数f2は、基地局無線装置30又は基地局無線装置43が移動局無線装置70との間の通信で使用する周波数f1とは異なる周波数である。
【0037】
基地局無線装置#1-3(43-1)、及び基地局無線装置#2-3(43-2)は、基地局無線装置#1(30-1)と同様の構成であるが、第2の固定局無線装置42に接続されており、第2の固定局無線装置42から信号を受信する点が異なっている。
また、基地局無線装置43は、特許文献1の基地局無線装置と同様に、回線制御装置20からの送信フレームの情報に基づいて下り送信開始を行うものであるが、後述するように、カプセル化された転送電文から送信フレームの情報を取り出すようになっている。
【0038】
第1の固定局無線装置41、第2の固定局無線装置42を介して基地局無線装置43を設置することにより、回線制御装置20に接続された基地局無線装置#1(30-1)が設けられていない地域にも、通信サービスの範囲を拡大することができるものである。
【0039】
そして、従来と同様に、回線制御装置20、基地局無線装置30、基地局無線装置43は、GPS受信機を備えており、衛星80からのGPS信号を受信して、GPSの基準時刻に同期した1PPS信号及び10MHzのクロック信号を生成する。
また、従来と同様に、第1の固定局無線装置41及び第2の固定局無線装置42は、GPS受信機を備えていない。
【0040】
[第1の固定局無線装置41]
本無線通信システムの特徴部分について説明する。
第1の固定局無線装置41は、回線制御装置20から受信した送信開始電文に含まれる送信フレーム番号の情報を、選択呼出音声の制御情報の中に組み込んで、第2の固定局無線装置42宛てに無線送信するものである。
【0041】
[選択呼出音声の制御情報フォーマット:
図2]
ここで、選択呼出音声の制御情報のフォーマットについて
図2を用いて説明する。
図2は、選択呼出音声の制御情報のフォーマットを示す説明図である。
図2に示すように、選択呼出音声の制御情報は、オクテット1はメッセージ種別、オクテット2は製造者識別、オクテット3は呼制御付加情報、オクテット4は通話携帯と音声通話付加情報、オクテット5,6は発信者番号、オクテット7,8は着信者番号又はグループ番号、オクテット9は暗号化モード、鍵番号が格納されている。
【0042】
そして、本無線通信システムの第1の固定局無線装置41は、回線制御装置20から受信した送信フレーム番号の情報を、オクテット3の呼制御付加情報に格納して、第2の固定局無線装置42に無線送信する。
【0043】
[呼制御付加情報:
図3]
呼制御付加情報について
図3を用いて説明する。
図3は、選択呼出音声の制御情報における呼制御付加情報のオクテットを示す説明図である。
呼制御付加情報が格納されるオクテット3は、第8ビットに緊急を示す情報が格納され、それ以外の第1ビット~第7ビットは予約領域となっている。本無線通信システムの第1の固定局無線装置41では、この予約領域に送信フレーム番号が格納される。
【0044】
つまり、第1の固定局無線装置41は、LAN等のTCP/IPフォーマットで伝送されてくる送信開始電文の中から、所定の位置に格納されている送信フレームの情報を抽出し、選択呼出音声の制御情報における呼制御付加情報に格納して、第2の固定局無線装置42宛てに無線送信するものである。
【0045】
[第2の固定局無線装置42]
第2の固定局無線装置42は、無線信号からLAN等の有線インタフェースへの変換を行うものであり、第1の固定局無線装置41から無線で受信した選択呼出音声を、例えばLANのTCP/IPフォーマットにおける所定の位置に組み込んで転送電文を生成し、基地局無線装置43に送出する。
送信フレーム番号の情報を含む選択呼出音声に、TCP/IPのヘッダを付加して、TCP/IPフォーマットで包むことを「カプセル化する」と称する。
【0046】
[基地局無線装置43]
そして、基地局無線装置43は、LAN等を介して受信したTCP/IPフォーマットの転送電文から、選択呼出音声を取り出し、更にその制御情報における呼制御付加情報から送信フレーム番号の情報を抽出する。
これにより、基地局無線装置43は、回線制御装置20によって指定された送信フレーム番号の情報を取得することができ、複数の基地局無線装置43が同期して、当該送信フレーム番号で下り送信を開始することができるものである。
【0047】
[動作タイミングの例:
図4]
次に、本無線通信システムの動作タイミングの例について
図4を用いて説明する。
図4は、本無線通信システムの動作タイミングの例を示す模式説明図である。
図4の例では、フレーム番号として1~8が付されるものとしている。
図4に示すように、回線制御装置20が、フレーム1で送信開始電文を全ての基地局無線装置30、43及び固定局無線装置41に送信する。
【0048】
基地局無線装置#1(30-1)では、フレーム2で伝送及び処理を行い、フレーム3で当該送信開始電文を受信して復号し、送信フレーム番号が「6」であることを認識する。
つまり、基地局無線装置#1(30-1)は、GPSに基づいてカウントしているフレーム番号が「6」になるのを待って下り送信を行う。
【0049】
また、第1の固定局無線装置#2-1(41-2)は、基地局無線装置#1(30-1)と同様にフレーム3で送信開始電文を受信する。
そして、第1の固定局無線装置#2-1(41-2)は、上述したように、送信開始電文から送信フレーム番号を抽出して、選択呼出音声の制御情報における呼制御付加情報に格納して、フレーム3で第2の固定局無線装置#2-2(42-2)に無線送信する。
【0050】
第2の固定局無線装置#2-2(42-2)は、第2の固定局無線装置#2-1(41-2)から無線送信された選択呼出音声をフレーム4で受信して、カプセル化し、フレーム4でLAN等を介して基地局無線装置#2-3(43-2)に送信する。カプセル化された信号は、LAN等のフォーマットとなる。
【0051】
そして、基地局無線装置#2-3(43-2)は、フレーム5でカプセル化された信号を受信して、選択呼出音声の制御情報を取り出し、そこから送信フレームの情報を抽出する。そして、指定されている送信フレーム番号が「6」であることを認識して、GPSに基づいて内部でカウントしているフレーム番号が「6」になった場合に下り送信を行う。
【0052】
これにより、基地局無線装置#1(30-1)と、基地局無線装置#2-3(43-2)は、どちらもフレーム6において下り送信を行うことになり、基地局間同期が実現するものである。
尚、ここでは基地局無線装置#2-3(43-2)の系について説明したが、基地局無線装置#1-3(43-1)の系でも同様である。
【0053】
[本無線通信システムにおける下り送信開始のシーケンス:
図5]
次に、本無線通信システムにおける下り送信開始のシーケンスについて
図5を用いて説明する。
図5は、本無線通信システムにおける下り送信開始のシーケンスを示すシーケンス図である。
図5に示すように、無線卓10からプレス状態で音声が入力されると(発呼されると)(S10)、回線制御装置20は、無線卓10からの送信(発呼)を検出し、送信開始電文を送信するタイミングのフレーム番号にオフセットを加算して、複数の基地局無線装置30,43で同時に下り送信を開始する送信フレーム番号を求め、当該送信フレーム番号を送信開始電文に付加して(S11)、第1の固定局無線装置41に送信開始電文を送信する(S12)。
尚、回線制御装置20は、処理S12に並行して、基地局無線装置30にも同じ送信開始電文を送信する。
【0054】
第1の固定局 無線装置41は、送信開始電文に付加された送信フレーム番号を抽出し、選択呼出音声(図では呼出選択音声と記載)の制御情報における呼制御付加情報に設定する(S13)。
そして、第1の固定局無線装置41は、第2の固定局無線装置42宛てに、周波数f2で選択呼出音声を無線送信する(S14)。
【0055】
第2の固定局無線装置42は、無線送信された選択呼出音声を受信して、LANのTCP/IPフォーマットに組み込んでカプセル化し(S15)、カプセル化した転送電文を基地局無線装置43に転送する(S16)。
【0056】
基地局無線装置43は、転送電文を受信して、選択呼出音声の制御情報における呼制御付加情報に含まれる送信フレーム番号を取得し、当該送信フレーム番号に送信データを設定する(S17)。
そして、基地局無線装置43は、カウンタからGPSに基づくフレーム番号を取得し(S18)、GPSに基づくフレーム番号と送信データのフレーム番号(送信フレーム番号)とが一致したかどうかを判断し(S19)、一致しない場合(Noの場合)には処理S19を繰り返す。
【0057】
処理S19で、GPSに基づくフレーム番号と送信フレーム番号とが一致した場合には(Yesの場合)、移動局無線装置70に対して下り送信を開始する(S20)。
これにより、複数の基地局無線装置30,43は全て同一の送信フレームで下り送信を開始することができ、基地局間同期を実現して、不感地帯の発生を抑えることができるものである。
【0058】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る無線通信装置によれば、複数の基地局無線装置43が同一周波数を用いて送信する無線通信システムにおいて、回線制御装置20に接続された第1の無線通信装置41が、回線制御装置20から送信開始電文に付加された送信フレーム番号を、選択呼出音声の制御情報における呼制御付加情報の予約領域に格納して無線送信し、基地局無線装置に接続された第2の無線通信装置が、受信した選択呼出音声をLAN等のネットワークのフォーマットに組み込んでカプセル化して転送電文を生成し、当該転送電文を基地局無線装置43に送信するようにしているので、回線制御装置20からの送信フレーム番号を基地局無線装置43に受信させることができ、固定局無線装置を用いて通信サービス範囲を拡大しても、基地局間同期を実現して、不感地帯の発生を抑えることができる効果がある。
【0059】
また、上述した例では、第1の固定局無線装置41と第2の固定局無線装置43とを別々の装置として記載したが、第1の固定局無線装置41の機能と第2の固定局無線装置42の機能とを一体に組み込んで1つの装置(固定局装置)として構成してもよい。
その場合には、回線制御装置20側に設けられた固定局装置は、第1の固定局無線装置41として動作し、基地局無線装置43側に設けられた固定局装置は、第2の固定局無線装置42として動作する。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、複数の基地局無線装置が同一周波数を用いて送信する無線通信システムにおいて、中継局として用いられ、基地局間同期を実現する無線通信装置及び無線通信システムに適している。
【符号の説明】
【0061】
10…無線卓、 20…回線制御装置、 30,43…基地局無線装置、 41…第1の固定局無線装置、 42…第2の固定局無線装置、 70…移動局無線装置、 80…衛星