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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20230323BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20230323BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230323BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230323BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20230323BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230323BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H02J7/34 J
H02J9/06 120
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J3/46
H02M7/48 N
H02M7/48 R
H01M10/44 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019220126
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021090298
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直久
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-160987(JP,A)
【文献】特開2012-100507(JP,A)
【文献】特開2006-311725(JP,A)
【文献】特開2019-068584(JP,A)
【文献】特開2016-010258(JP,A)
【文献】特開2015-177661(JP,A)
【文献】特開昭61-135095(JP,A)
【文献】特開2006-043764(JP,A)
【文献】特開平10-014229(JP,A)
【文献】特開昭47-114964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/34
H02J 9/06
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 3/46
H02M 7/48
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統入力からの電力を蓄電池に充電するとともに、停電により前記系統入力からの電力供給が停止したとき前記蓄電池からの放電電力を自立出力に供給可能な蓄電システムであって、
スイッチ手段を含むブリッジ回路と、リアクトルおよびコンデンサを含むLCフィルタと、を有しており、前記蓄電池からの直流電力を交流電力に変換し、かつ、前記系統入力からの交流電力を直流電力に変換可能な電力変換装置を備えており、
前記リアクトルに直列に接続された可飽和リアクトルをさらに備えていることを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記電力変換装置は、交流電力を入出力する一対の交流入出力端子をさらに有しており、
前記可飽和リアクトルは、前記一対の交流入出力端子のうちの一方の交流入出力端子と前記リアクトルとの間と、他方の交流入出力端と前記リアクトルとの間とに少なくともそれぞれ1つずつ接続されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記可飽和リアクトルを短絡可能な短絡手段と、
前記短絡手段の動作を制御し、前記可飽和リアクトルを短絡させる短絡状態と、可飽和リアクトルを短絡させない解除状態とを切り換える制御手段と、をさらに備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記制御手段は、停電時に前記蓄電池からの放電電力を前記自立出力に供給する場合に、前記短絡手段を前記解除状態にすることを特徴とする請求項3に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記制御手段は、停電時に前記蓄電池からの放電電力を前記自立出力に供給する場合に、正弦波電圧波形のゼロ電圧を含む近傍領域のみ、前記短絡手段を前記解除状態にすることを特徴とする請求項3または4に記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記制御手段は、停電時に前記蓄電池からの放電電力の前記自立出力への供給を開始する時に、前記短絡手段を前記解除状態にすることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項7】
前記制御手段は、停電時に前記蓄電池からの放電電力を前記自立出力に供給する場合に、前記自立出力で消費している電力が小さい時は、前記短絡手段を前記解除状態に維持することを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項8】
突入電流抑止抵抗をさらに備えており、
前記制御手段は、蓄電システム起動時に、前記短絡手段を前記解除状態にすることを特徴とする請求項3~7のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池からの放電電力を自立出力に供給可能な蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低価格の深夜電力を利用して蓄電池に充電し、その蓄電池の電力を昼間に放電することで、電気料金の低減を図った蓄電システムが普及しつつある。例えば特許文献1には、蓄電制御装置、蓄電池、自立出力などを主に備えており、商用電源である系統入力が接続された蓄電システムが開示されている。蓄電制御装置は、双方向DC/DCコンバータ、コンデンサ、双方向インバータ(電力変換装置)、ノイズフィルターなどで構成されている。双方向インバータは、交流電力を直流電力に変換し、また、直流電力を交流電力に変換する双方向性の回路であり、ブリッジ回路およびLCフィルタで構成される。
【0003】
上述のような蓄電システムでは、系統入力からの交流電力が双方向インバータにより直流電力に変換され、双方向DC/DCコンバータによって直流電圧が降圧されて蓄電池に充電される。また、放電時には、蓄電池に充電された直流電力が、双方向DC/DCコンバータにより昇圧され、双方向インバータにより交流電力に変換されて、系統入力に放電される。さらに、系統に停電が発生した時は、放電時と同様に、蓄電池の電力が昇圧・変換され、自立出力に供給される。
【0004】
また、特許文献2には、上述の蓄電システムと同様に、ブリッジ回路を備えており、直流電力を交流電力に変換可能な電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-160987号公報
【文献】特開2016-10258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の蓄電システムにおいては、蓄電システム内部の理想的な正弦波と比較しながら交流電圧を出力する。しかしながら、蓄電システムからの出力電圧の正弦波には、双方向インバータでDC/AC変換するスイッチング動作によって、LCフィルタで除去できなかった高周波リプル電圧が含まれている。このリプル電圧成分によって、出力電圧の正弦波におけるゼロ電圧近辺では、複数回プラスマイナスに波形が振れ、ゼロ電圧位置が複数回発生する。このため、制御回路が正弦波のゼロ電圧点を正しく認識できず、正弦波のゼロ電圧近辺に歪みが発生する。
【0007】
図4(a)に、24KHzでスイッチングを行った際に蓄電システムから出力される電圧の波形を示す。また、図4(b)に、図4(a)の破線で囲まれた部分を拡大した波形を示す。図4(b)に示す波形が、出力電圧に含まれる高周波リプル電圧である。このような高周波リプル電圧の影響により、図4(a)に示すように、出力電圧の正弦波のゼロ電圧近辺に歪み(一点鎖線で囲まれた部分)が生じている。
【0008】
通常時(通電時)に蓄電池から系統へ放電する時は、蓄電システムからの出力電圧の正弦波に高周波リプル電圧や波形歪が多少発生していても、系統側(電力会社側)の波形によって吸収され、影響は軽微である。しかしながら、停電時に蓄電池から自立出力へ放電する時は、出力電圧の正弦波に生じる高周波リプル電圧や波形歪の影響を無視することはできない。
【0009】
LCフィルタを強化すれば、高周波リプル電圧は低減される。図5(a)に、図4(a)の電圧を出力する蓄電システムに比べてLCフィルタを2倍に強化した蓄電システムにおいて、24KHzでスイッチングを行った際の出力波形を示す。また、図5(b)に、図5(a)の破線で囲まれた部分を拡大した波形を示す。図5(b)に表れている高周波リプル電圧が、図4(b)の高周波リプル電圧に比べて小さくなっていることが分かる。しかしながら、LCフィルタを強化すればLCフィルタが大型化し、サイズアップおよびコストアップにつながる。
【0010】
また、スイッチング周波数を上昇させれば、高周波リプル電圧は低減される。図6(a)に、図4(a)に示す出力波形のスイッチング周波数(24KHz)の5倍の120KHzでスイッチングを行った際の出力波形を示す。また、図6(b)に、図6(a)の破線で囲まれた部分を拡大した波形を示す。図6(b)に表れている高周波リプル電圧が、図4(b)の高周波リプル電圧に比べて小さくなっていることが分かる。しかしながら、スイッチング周波数を上昇させれば、スイッチングロスの増加による効率低下に起因する発熱問題や、スイッチング時に発生するノイズが増大するという問題が生じる。
【0011】
特許文献2に開示されている電力変換装置においては、正弦波におけるゼロ電圧付近のみのスイッチング周波数を増加させる制御を行い、出力の歪みを抑制している。このように、スイッチング周波数を増加させる期間を限定的にすることで、スイッチングロスの低減およびスイッチングノイズの増加抑制をある程度図ることができる。しかしながら、スイッチング周波数を増加させる制御を実施しない場合に比べると、依然としてスイッチングロスおよびスイッチングノイズが増加する問題がある。
【0012】
本発明の目的は、サイズアップを抑制し、かつ、スイッチングロスおよびスイッチングノイズを増加させることなく、交流電圧の波形の歪みを低減することができる蓄電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の蓄電システムは、系統入力からの電力を蓄電池に充電するとともに、停電により前記系統入力からの電力供給が停止したとき前記蓄電池からの放電電力を自立出力に供給可能な蓄電システムであって、スイッチ手段を含むブリッジ回路と、リアクトルおよびコンデンサを含むLCフィルタと、を有しており、前記蓄電池からの直流電力を交流電力に変換し、かつ、前記系統入力からの交流電力を直流電力に変換可能な電力変換装置を備えており、前記リアクトルに直列に接続された可飽和リアクトルをさらに備えている。
【0014】
この構成によると、リアクトルに可飽和リアクトルを直列に接続した場合におけるコイルに流れる電流とインダクタンスとの関係は、可飽和リアクトルの特性とリアクトルの特性とが合成されたものとなる。すなわち、コイルに流れる電流が小さい領域で、インダクタンスが大きく増加する。したがって、当該領域でLCフィルタのリアクトルのインダクタンスが大きく増加するため、高周波リプル電圧が低減する。よって、スイッチングロスおよびスイッチングノイズを増加させることなく、停電時に自立出力に供給する交流電圧の波形の歪みを低減することができる。また、コイルに流れる電流が小さい領域では、可飽和リアクトルの飽和開始電流は小さくても良く、小形の可飽和リアクトルを使用することができる。よって、サイズアップを抑制することができる。
【0015】
また、上述の蓄電システムにおいて前記電力変換装置は、交流電力を入出力する一対の交流入出力端子をさらに有しており、前記可飽和リアクトルは、前記一対の交流入出力端子のうちの一方の交流入出力端子と前記リアクトルとの間と、他方の交流入出力端と前記リアクトルとの間とに少なくともそれぞれ1つずつ接続されている。
【0016】
この構成によると、系統入力側のコモンモードノイズを抑制することができる。
【0017】
さらに、上述の蓄電システムは、前記可飽和リアクトルを短絡可能な短絡手段と、前記短絡手段の動作を制御し、前記可飽和リアクトルを短絡させる短絡状態と、可飽和リアクトルを短絡させない解除状態とを切り換える制御手段と、をさらに備えている。
【0018】
この構成によると、短絡状態の場合には可飽和リアクトルに電流が流れないので、可飽和リアクトルの抵抗成分による損失を抑制することができる。
【0019】
加えて、上述の蓄電システムにおいては、前記制御手段は、停電時に前記蓄電池からの放電電力を前記自立出力に供給する場合に、前記短絡手段を前記解除状態にする。
【0020】
この構成によると、高周波リプル電圧の影響が問題となる蓄電池からの放電電力を自立出力に供給する場合に、短絡手段が解除状態となり可飽和リアクトルに電流が流れる。したがって、可飽和リアクトルの抵抗成分による損失を抑制しつつ、交流電圧の波形の歪みを低減する効果を確実に得ることができる。
【0021】
さらに、上述の蓄電システムにおいては、前記制御手段は、停電時に前記蓄電池からの放電電力を前記自立出力に供給する場合に、正弦波電圧波形のゼロ電圧を含む近傍領域で、前記短絡手段を前記解除状態にする。
【0022】
この構成によると、正弦波電圧波形に歪みが発生するゼロ電圧を含む近傍領域で、短絡手段が解除状態となり可飽和リアクトルに電流が流れる。したがって、可飽和リアクトルの抵抗成分による損失を抑制しつつ、交流電圧の波形の歪みを低減する効果を確実に得ることができる。
【0023】
また、上述の蓄電システムにおいては、前記制御手段は、停電時に前記蓄電池からの放電電力の前記自立出力への供給を開始する時に、前記短絡手段を前記解除状態にする。
【0024】
この構成によると、可飽和リアクトルの抵抗成分を、蓄電池からの放電電力の自立出力への供給開始時における突入電流を防止するための抵抗として機能させることができる。
【0025】
また、上述の蓄電システムにおいては、前記制御手段は、停電時に前記蓄電池からの放電電力を前記自立出力に供給する場合に、前記自立出力で消費している電力が小さい時は、前記短絡手段を前記解除状態に維持する。
【0026】
この構成によると、短絡手段を駆動する電力を削減することができる。
【0027】
加えて、上述の蓄電システムは、突入電流抑止抵抗をさらに備えており、前記制御手段は、蓄電システム起動時に、前記短絡手段を前記解除状態にする。
【0028】
この構成によると、可飽和リアクトルの抵抗成分を、蓄電システム起動時に突入電流を防止するための抵抗の一部として機能させることができる。したがって、突入電流抑止抵抗の抵抗値を低減させ、また突入電流による突入電流抑止抵抗に対する電力負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、サイズアップを抑制し、かつ、スイッチングロスおよびスイッチングノイズを増加させることなく、交流電圧の波形の歪みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態にかかる蓄電システムの回路構成図である。
図2】リアクトルに可飽和リアクトルを直列に接続した場合におけるコイルに流れる電流とインダクタンスとの関係を示すグラフである。
図3図1の制御回路で実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】(a)は従来の蓄電システムにおいて24KHzでスイッチングを行った際の出力電圧の波形であり、(b)は(a)の波形の一部を拡大したものである。
図5】(a)はLCフィルタを強化した従来の蓄電システムにおいて24KHzでスイッチングを行った際の出力電圧の波形であり、(b)は(a)の波形の一部を拡大したものである。
図6】(a)は従来の蓄電システムにおいて120KHzでスイッチングを行った際の出力電圧の波形であり、(b)は(a)の波形の一部を拡大したものである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好適な一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係る蓄電システム1は、蓄電制御装置2、蓄電池3、自立出力4、リレー21~26および制御回路9などを主に備えており、商用交流電源である系統入力30が接続されている。蓄電池3は、例えばリチウムイオン電池であり、直流電源として機能する。自立出力4には、停電時に優先的に使用したい家電製品などの重要負荷が接続されている。
【0033】
蓄電制御装置2は、蓄電池3と系統入力30との間に設けられている。リレー21、22は、蓄電制御装置2と系統入力30とを接続する配線2aに設けられている。リレー23、24は、蓄電制御装置2と系統入力30とを接続する配線2aから分岐し、自立出力4に接続される配線2bに設けられている。配線2aにおけるリレー21、22と系統入力30との間の部分と、配線2bにおけるリレー23、24と自立出力4との間の部分とは、配線2cによって接続されている。リレー25、26は、配線2cに設けられている。
【0034】
蓄電制御装置2は、双方向DC/DCコンバータ5、コンデンサ6、双方向インバータ(本発明の電力変換装置)10、突入電流抑止回路7およびノイズフィルター8で構成される。双方向インバータ10は、直流電力を入出力する直流入出力端子10a、10bと、交流電力を入出力する交流入出力端子10c、10dと、を備えている。双方向インバータ10は、直流入出力端子10a、10bから入力された直流電力を交流電力に変換して、交流入出力端子10c、10dから出力する。また、双方向インバータ10は、交流入出力端子10c、10dから入力された交流電力を直流電力に変換して、直流入出力端子10a、10bから出力する。
【0035】
双方向インバータ10は、IGBTまたはMOSFET等のスイッチング素子とダイオードを組み合わせたブリッジ回路11と、LCフィルタ12とを有している。LCフィルタ12は、コモンモードのリアクトルL1とコンデンサC1とを有している。また、LCフィルタ12は、2つの可飽和リアクトルL2、L3を有している。可飽和リアクトルL2、L3は、いずれもリアクトルL1に直列に接続されており、リアクトルL1とコンデンサC1との間に設けられている。可飽和リアクトルL2は、リアクトルL1と交流入出力端子10cとの間に設けられている。可飽和リアクトルL3は、リアクトルL1と交流入出力端子10dとの間に設けられている。可飽和リアクトルL2、L3は、いずれもノーマルモードである。
【0036】
ここで、リアクトルに可飽和リアクトルを直列に接続した場合におけるコイルに流れる電流とインダクタンスとの関係を図2に示す。図2に示すように、電流とインダクタンスとの関係は、可飽和リアクトルL2、L3の特性とリアクトルL1の特性とが合成されたものとなる。すなわち、コイルに流れる電流が小さい領域で、インダクタンスが大きく増加する。
【0037】
LCフィルタ12は、可飽和リアクトルL2を短絡可能な双方向スイッチ13と、可飽和リアクトルL3を短絡可能な双方向スイッチ14と、を有している。双方向スイッチ13、14は、例えば2個のサイリスタ、IGBTまたはMOSFETを相互に逆並列に接続することで形成される。
【0038】
双方向DC/DCコンバータ5は、一端側が蓄電池3に接続されており、他端側がコンデンサ6を介して双方向インバータ10の直流入出力端子10a、10bに接続されている。コンデンサ6は、平滑用コンデンサである。双方向DC/DCコンバータ5は、蓄電池3から供給された直流電力(放電電力)を昇圧または降圧して双方向インバータ10に供給する。また、双方向DC/DCコンバータ5は、双方向インバータ10から供給された直流電力を昇圧または降圧して蓄電池3に供給する。
【0039】
ノイズフィルター8は、双方向インバータ10のスイッチングノイズを低減するためのものである。ノイズフィルター8は、双方向インバータ10の交流入出力端子10c、10dに接続されている。
【0040】
突入電流抑止回路7は、突入電流を抑止するためのものであり、突入電流抑止抵抗71と、2つのリレー72、73と、を有している。突入電流抑止抵抗71は、双方向インバータ10の交流入出力端子10cとノイズフィルター8との間に設けられている。リレー72は、突入電流抑止抵抗71と直列に接続されている。リレー73は、突入電流抑止抵抗71およびリレー72と並列に接続されている。
【0041】
制御回路9は、例えばマイコンや専用のIC(Integrated Circuit)からなり、蓄電システム1の各種機能を制御する。具体的には、制御回路9は、双方向DC/DCコンバータ5、双方向インバータ10、突入電流抑止回路7およびリレー21~26の動作を制御する。制御回路9は、系統電圧を検出する電圧検出手段(図示せず)からの出力信号に基づいて、停電が生じたか否かを判断する。また、制御回路9は、自立出力4に供給される電流値を検出する電流検出手段(図示せず)からの出力信号に基づいて、自立出力4での消費電力を検出する。
【0042】
ここで、蓄電システム1で蓄電池3への充電を行う際の動作について説明する。充電を行う際には、制御回路9の制御の下、リレー21、22、25、26をON、リレー23、24をOFFとする。そして、系統入力30からの交流電力を双方向インバータ10により直流電力に変換し、双方向DC/DCコンバータ5によって蓄電池3が必要とする直流電圧に降圧し、蓄電池3に充電する。
【0043】
続いて、蓄電システム1で放電する際の動作について説明する。放電する際には、制御回路9の制御の下、リレー21、22、25、26をON、リレー23、24をOFFとする。そして、蓄電池3に充電された直流電力を、双方向DC/DCコンバータ5によって昇圧し、双方向インバータ10により直流電力を交流電力に変換し、系統入力30および自立出力4に放電する。
【0044】
また、停電により系統入力30からの電力供給が停止した際の蓄電システム1の動作について説明する。停電時には、制御回路9の制御の下、リレー21、22、25、26をOFF、リレー23、24をONとする。そして、放電する際と同様に、蓄電池3の直流電力を昇圧した後に交流電力に変換し、自立出力4に供給する。
【0045】
続いて、双方向インバータ10の双方向スイッチ13、14の動作について説明する。双方向スイッチ13は、制御回路9の制御の下、可飽和リアクトルL2を短絡させる短絡状態と、可飽和リアクトルL2を短絡させない解除状態とを取り得る。同様に、双方向スイッチ14は、制御回路9の制御の下、オン状態(可飽和リアクトルL3を短絡させる短絡状態)と、可飽和リアクトルL3を短絡させないオフ状態(解除状態)とを取り得る。
【0046】
制御回路9は、停電時に蓄電池3からの放電電力の自立出力4への供給開始時に、双方向スイッチ13、14をオフ(解除状態)にする。より具体的には、自立出力4への電力供給を開始してから、突入電流が収束するまでの所定期間の間、双方向スイッチ13、14をオフ(解除状態)にする。
【0047】
また、制御回路9は、停電時に蓄電池3からの放電電力を自立出力4に供給する場合に、正弦波電圧のゼロ電圧を含む近傍領域で、双方向スイッチ13、14をオフ(解除状態)にする。例えば、リプル電圧成分によりゼロ電圧位置が複数回発生(リプル電圧波形がゼロ電圧位置と複数回交差)する前に双方向スイッチ13、14をオフ(可飽和リアクトルL2、L3を短絡させない解除状態)にすることが好ましい。
【0048】
さらに、制御回路9は、停電時に蓄電池3からの放電電力を自立出力4に供給する場合に、自立出力4で消費している電力が所定値以下である時は、双方向スイッチ13、14をオフ(解除状態)に維持する。
【0049】
加えて、制御回路9は、システム起動時に、双方向スイッチ13、14をオフ(解除状態)にする。より具体的には、システム起動時に生じる突入電流が収束するまでの所定期間の間、双方向スイッチ13、14をオフ(解除状態)にする。ここで、システム起動時に発生する突入電流は、リレー21、22および突入電流防止回路のリレー72をオンし、ノイズフィルター8、突入電流防止抵抗71、リアクトルL1および可飽和リアクトルL2、L3を通じ、ブリッジ回路11のIGBTに並列接続されているダイオードを通じてコンデンサ6(大容量の電解コンデンサ)を充電するときに発生する電流である。なお、蓄電池3へ充電するときの突入電流は、双方向DC/DCコンバータ5の起動をソフトスタート動作させることで抑制している。
【0050】
次に、図1図3を参照しつつ、制御回路9で実行される処理手順の一例について説明する。図3のフローチャートで示す処理手順は、蓄電システム1の電源が投入された時に開始し、電源が投入されている間は継続して実行されるものである。
【0051】
蓄電システム1を起動させるべく電源が投入されると、まず制御回路9はシステム起動時制御を始動する(ステップS1)。システム起動時制御は、起動時に生じる突入電流が収束するまで所定期間行う。
【0052】
システム起動時制御においては、リレー21、22、25、26をON、リレー23、24をOFFとする。また、双方向インバータ10の双方向スイッチ13、14を、オフ状態(可飽和リアクトルL2、L3を短絡させない解除状態)にする。突入電流抑止回路7のリレー72、73については、突入電流抑止抵抗71と直列に接続されているリレー72をONとして、突入電流抑止抵抗71と並列に接続されているリレー73をOFFとする。
【0053】
続いて、制御回路9は、システム起動時制御を終了するか否かを判断する(ステップS2)。すなわち、システム起動時制御を始動してから所定期間(突入電流が収束する時間を予め実験で測定した結果に基づき設定)が経過したか否かを判断する。S2の判断処理は、システム起動時制御を始動してから所定時間が経過するまで繰り返し行う。
【0054】
また、S2において、システム起動時制御を終了すると判断した場合には(S2:YES)、通常運転制御を始動する(ステップS3)。通常運転制御においては、リレー21、22、25、26をON、リレー23、24をOFFとする。また、双方向インバータ10の双方向スイッチ13、14を、オン状態(可飽和リアクトルL2、L3を短絡させる短絡状態)にする。突入電流抑止回路7のリレー72、73については、突入電流抑止抵抗71と直列に接続されているリレー72をOFFとして、突入電流抑止抵抗71と並列に接続されているリレー73をONとする。
【0055】
その後、制御回路9は、変数N=0とし(ステップS4)、停電が生じたか否かを判断する(ステップS5)。ステップS5において、停電が生じていないと判断した場合には(S5:NO)、上述のステップS3に戻る。一方、ステップS5において、停電が生じたと判断した場合には(S5:YES)、制御回路9は、変数N=0か否かを判断する(ステップS6)。変数N=0でないと判断した場合は(S6:NO)、後述するステップS11に進む。
【0056】
一方、変数N=0であると判断した場合は(S6:YES)、蓄電池3から自立出力4への電力の供給を開始する供給開始制御を始動する(ステップS7)。供給開始制御は、供給開始時に生じる突入電流が収束するまで所定期間行う。供給開始制御においては、リレー21、22、25、26をOFF、リレー23、24をONとする。また、双方向インバータ10の双方向スイッチ13、14を、オフ状態(可飽和リアクトルL2、L3を短絡させない解除状態)にする。
【0057】
続いて、制御回路9は、供給開始制御を終了するか否かを判断する(ステップS8)。すなわち、供給開始制御を始動してから所定期間(突入電流が収束する時間を予め実験で測定した結果に基づき設定)が経過したか否かを判断する。供給開始制御を終了しないと判断した場合には(S8:NO)、制御回路9は、未だ停電しているか否かを判断する(ステップS9)。停電していないと判断した場合には(S9:NO)、ステップS3に戻る。一方、未だ停電していると判断した場合には(S9:YES)、ステップS8に戻り、供給開始制御を終了するか否かを再度判断する。
【0058】
ステップS8において、給開始制御を終了すると判断した場合には(S8:YES)、制御回路9は、変数N=1とする(ステップS10)。さらに、制御回路9は、自立出力4での消費電力が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS11)。自立出力4での消費電力が所定値以下であると判断した場合には(S11:YES)、双方向スイッチ13、14をオフ状態(可飽和リアクトルL2、L3を短絡させない解除状態)する(ステップS12)。その後、上述のステップS5に戻る。
【0059】
一方、自立出力4での消費電力が所定値よりも大きいと判断した場合には(S11:NO)、通常停電制御を始動する(ステップS13)。その後、上述のステップS5に戻る。通常停電制御においては、正弦波電圧のゼロ電圧を含む近傍領域で、双方向スイッチ13、14をオフ状態(可飽和リアクトルL2、L3を短絡させない解除状態)にする。また、上記近傍領域以外では、双方向スイッチ13、14をオン状態(可飽和リアクトルL2、L3を短絡させる短絡状態)にする。
【0060】
以上のように、本実施形態の蓄電システム1は、系統入力30からの電力を蓄電池3に充電するとともに、停電により系統入力30からの電力供給が停止したとき蓄電池3からの放電電力を自立出力4に供給可能である。蓄電システム1は、蓄電池3からの直流電力を交流電力に変換し、かつ、系統入力30からの交流電力を直流電力に変換可能な双方向インバータ10を備えている。双方向インバータ10は、スイッチ手段を含むブリッジ回路11と、リアクトルL1およびコンデンサC1を含むLCフィルタ12と、を有している。リアクトルL1には、可飽和リアクトルL2、L3が直列に接続されている。
【0061】
リアクトルに可飽和リアクトルを直列に接続した場合におけるコイルに流れる電流とインダクタンスとの関係は、可飽和リアクトルL2、L3の特性とリアクトルL1の特性とが合成されたものとなる(図2参照)。すなわち、コイルに流れる電流が小さい領域で、インダクタンスが大きく増加する。したがって、正弦波電圧波形のゼロ電圧を含む近傍領域のみLCフィルタ12のリアクトルのインダクタンスが大きく増加するため、高周波リプル電圧が低減する。よって、スイッチングロスおよびスイッチングノイズを増加させることなく、停電時に自立出力4に供給する交流電圧の波形の歪みを低減することができる。また、正弦波電圧波形のゼロ電圧を含む近傍領域は商用周波数の電流値が小さいので、可飽和リアクトルL2、L3の飽和開始電流は小さくても良く、小形の可飽和リアクトルを使用することができる。よって、サイズアップを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態の蓄電システム1においては、双方向インバータ10は、交流電力を入出力する一対の交流入出力端子10c、10dを有しており、可飽和リアクトルL2、L3は、一対の交流入出力端子10c、10dのうちの一方の交流入出力端子10cとリアクトルL1との間と、他方の交流入出力端子10dとリアクトルL1との間とにそれぞれ1つずつ接続されている。したがって、系統入力側のコモンモードノイズを抑制することができる。
【0063】
さらに、本実施形態の蓄電システム1は、可飽和リアクトルL2、L3を短絡可能な双方向スイッチ13、14を備えており、双方向スイッチ13、14は、制御回路9の制御の下、可飽和リアクトルL2、L3を短絡させる短絡状態と、可飽和リアクトルL2、L3を短絡させない解除状態とを取り得る。したがって、短絡状態の場合には可飽和リアクトルL2、L3に電流が流れないので、可飽和リアクトルL2、L3の抵抗成分による損失を抑制することができる。
【0064】
加えて、本実施形態の蓄電システム1においては、制御回路9は、停電時に蓄電池3からの放電電力を自立出力4に供給する場合に、正弦波電圧波形のゼロ電圧を含む近傍領域で、双方向スイッチ13、14を解除状態にする。正弦波電圧波形に歪みが発生するゼロ電圧近辺で、双方向スイッチ13、14が解除状態となり可飽和リアクトルL2、L3に電流が流れる。したがって、可飽和リアクトルL2、L3の抵抗成分による損失を抑制しつつ、交流電圧の波形の歪みを低減する効果を確実に得ることができる。
【0065】
さらに、本実施形態の蓄電システム1においては、制御回路9は、停電時に蓄電池3からの放電電力の自立出力4への供給を開始する時に、双方向スイッチ13、14を解除状態にする。したがって、可飽和リアクトルL2、L3の抵抗成分を、蓄電池3からの放電電力の自立出力4への供給開始時における突入電流を防止するための抵抗として機能させることができる。
【0066】
また、本実施形態の蓄電システム1においては、制御回路9は、停電時に蓄電池3からの放電電力を自立出力4に供給する場合に、自立出力4で消費している電力が小さい時は、双方向スイッチ13、14を連続して解除状態に維持する。したがって、双方向スイッチ13、14を駆動する電力を削減することができる。
【0067】
また、本実施形態の蓄電システム1は、突入電流抑止抵抗71を備えており、制御回路9は、システム起動時に、双方向スイッチ13、14を解除状態にする。双方向スイッチ13、14を解除状態にすることで、可飽和リアクトルの抵抗成分を、蓄電池3への充電開始時の突入電流を防止するための抵抗の一部として機能させることができる。したがって、突入電流抑止抵抗71の抵抗値を低減させ、また突入電流による突入電流抑止抵抗71に対する電力負担を軽減することができる。
【0068】
さらに、本実施形態の蓄電システム1においては、可飽和リアクトルL2、L3を短絡させる短絡手段として半導体スイッチ13、14を採用している。半導体スイッチ13、14は、機械式のリレーに比べてスイッチング速度が速いので細やかな制御が可能であり、可飽和リアクトルL2、L3の抵抗成分による損失をいっそう確実に抑制することができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0070】
上述の実施形態では、リアクトルL1に、交流入出力端子10cとリアクトルL1との間に設けられた可飽和リアクトルL2と、交流入出力端子10dとリアクトルL1との間に設けられた可飽和リアクトルL3との2つの可飽和リアクトルが接続されている場合について説明したが、これには限定されない。リアクトルL1に接続される可飽和リアクトルは1つであってもよい。リアクトルL1に接続される可飽和リアクトルが1つである場合は、コモンモードノイズを考慮すると、可飽和コアに2本の電線を巻いた可飽和リアクトルを採用することが好ましい。また、可飽和リアクトルを搭載するスペースに制限がある場合などは、小形の可飽和リアクトルを3つ以上接続してもよい。
【0071】
上述の実施形態では、可飽和リアクトルL2、L3を短絡可能な双方向スイッチ13、14を備えている場合について説明したが、これには限定されない。双方向スイッチ13、14に替えて、機械式のリレーを採用してもよい。また、可飽和リアクトルL2、L3を短絡可能な手段を備えていなくてもよい。
【0072】
上述の実施形態では、停電時に蓄電池3からの放電電力を自立出力4に供給する場合の、供給開始時、自立出力4で消費している電力が小さい時および正弦波のゼロ電圧近辺で、双方向スイッチ13、14をオフ(解除状態)とする場合について説明したが、双方向スイッチ13、14の動作制御はこれに限定されるものではない。例えば、可飽和リアクトルL2、L3を短絡可能な手段として機械式のリレーを採用する場合は、停電時に蓄電池3からの放電電力を自立出力4に供給している間は、継続してリレーをオフ(解除状態)とする制御を行うことが好ましい。
【0073】
上述の実施形態では、直流電源である蓄電池3からの直流電力を交流電力に変換し、かつ、商用電源である系統入力30からの交流電力を直流電力に変換可能な電力変換装置である双方向インバータ10について説明したが、これには限定されない。例えば、系統入力30は、商用の電力網に限定されず、事業所内などの限られた範囲内に構築された構内電力網であってもよい。また、本発明は、太陽光電池や燃料電池などの各種の直流電源から出力された直流電圧を交流電圧に変換可能な電力変換装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 蓄電システム
3 蓄電池
9 制御回路(制御手段)
10 双方向インバータ(電力変換装置)
10c、10d 交流入出力端子
11 ブリッジ回路
12 LCフィルタ
13、14 双方向スイッチ(短絡手段)
30 系統入力
71 突入電流抑止抵抗
L1 リアクトル
L2、L3 可飽和リアクトル
C1 コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6