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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20230323BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230323BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20230323BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20230323BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 652D
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 658G
H01L29/78 658F
H01L29/58 G
H01L29/44 Y
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019238876
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021108322
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】岸本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩朗
(72)【発明者】
【氏名】西口 俊史
(72)【発明者】
【氏名】下村 紗矢
(72)【発明者】
【氏名】冨田 幸太
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-251397(JP,A)
【文献】特開2009-026931(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0156844(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体部と、
前記半導体部の裏面上に設けられた第1電極と、
前記半導体部の表面上に設けられた第2電極と、
前記半導体部と前記第2電極との間において、前記半導体部に設けられたトレンチの内部に配置される導電性シリコンの制御電極であって、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第2電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁され、その内部に第3絶縁膜を含む、制御電極と、
前記トレンチの内部において、前記制御電極から前記第1電極までの距離よりも前記第1電極に近い位置に設けられ、前記半導体部から第4絶縁膜により電気的に絶縁され、前記制御電極から第5絶縁膜により電気的に絶縁されたフィールドプレート電極と
を備え、
前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、を含み、
前記制御電極は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に位置し、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられ、前記第1絶縁膜を介して前記制御電極に向き合い、
前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第1絶縁膜に接する位置に配置され、前記第2電極に電気的に接続され、
前記第3絶縁膜は、前記制御電極中の前記第1絶縁膜、前記第2絶縁膜、前記第4絶縁膜および前記第5絶縁膜から離れた位置に設けられる、半導体装置。
【請求項2】
前記制御電極は、前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜から離れた位置に空隙を含み、
前記第3絶縁膜は、前記空隙の内面を覆う請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体部と、
前記半導体部の裏面上に設けられた第1電極と、
前記半導体部の表面上に設けられた第2電極と、
前記半導体部と前記第2電極との間において、前記半導体部に設けられたトレンチの内部に配置される導電性シリコンの制御電極と、
前記制御電極を前記半導体部から電気的に絶縁した第1絶縁膜と、
前記制御電極を前記第2電極から電気的に絶縁し、前記制御電極中に延伸する突起部を含む第2絶縁膜と、
を備え、
前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、を含み、
前記制御電極は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に位置し、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられ、前記第1絶縁膜を介して前記制御電極に向き合い、
前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第1絶縁膜に接する位置に配置され、前記第2電極に電気的に接続された半導体装置。
【請求項4】
前記突起部の延伸方向に沿った長さは、前記突起部の先端から前記制御電極の下端までの距離よりも短い請求項記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体ウェーハにトレンチを形成する工程と、
前記トレンチの内部にスペースを残して、前記トレンチの内面を覆う第1絶縁膜を形成する工程と、
前記トレンチの前記スペースを埋め込んだ導電性シリコンを形成する工程と、
前記導電性シリコンを熱酸化することにより、前記導電性シリコンの表面に第2絶縁膜を形成すると共に、前記導電性シリコンの内部に第3絶縁膜を形成する工程と、
を備えた半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第3絶縁膜は、前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜から離れた位置に形成される請求項記載の製造方法。
【請求項7】
前記第3絶縁膜は、前記第2絶縁膜から前記導電性シリコン中に延伸するように形成される請求項記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トレンチゲート型MOSトランジスタでは、ゲートトレンチ内に設けられたゲート電極がボイドを含み、トランジスタ特性を劣化させる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-243932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、ゲート電極中のボイドによるトランジスタ特性の劣化を抑制できる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、半導体部と、前記半導体部の裏面上に設けられた第1電極と、前記半導体部の表面上に設けられた第2電極と、前記半導体部と前記第2電極との間において、前記半導体部に設けられたトレンチの内部に配置される導電性シリコンの制御電極と、前記トレンチの内部において、前記制御電極から前記第1電極までの距離よりも前記第1電極に近い位置に設けられるフィールドプレート電極と、を備える。前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、を含む。前記制御電極は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に位置する。前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられ、前記第1絶縁膜を介して前記制御電極に向き合う。前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第1絶縁膜に接する位置に配置され、前記第2電極に電気的に接続される。前記制御電極は、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第2電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁され、その内部に第3絶縁膜を含む。前記フィールドプレート電極は、前記半導体部から第4絶縁膜により電気的に絶縁され、前記制御電極から第5絶縁膜により電気的に絶縁される。前記第3絶縁膜は、前記制御電極中の前記第1絶縁膜、前記第2絶縁膜、前記第4絶縁膜および前記第5絶縁膜から離れた位置に設けられる
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図2】第1実施形態に係る半導体装置の製造過程を示す模式断面図である。
図3図2に続く製造過程を示す模式断面図である。
図4図3に続く製造過程を示す模式断面図である。
図5図4に続く製造過程を示す模式断面図である。
図6図5に続く製造過程を示す模式断面図である。
図7図6に続く製造過程を示す模式断面図である。
図8】第1実施形態の変形例に係る製造過程を示す模式断面図である。
図9】第1実施形態の変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図10】第2実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図11】第2実施形態に係る製造過程を示す模式断面図である。
図12図11に続く製造過程を示す模式断面図である。
図13】第2実施形態の変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置1を示す模式断面図である。半導体装置1は、例えば、トレンチゲート型MOSトランジスタである。
【0010】
図1に示すように、半導体装置1は、半導体部10と、第1電極(以下、ドレイン電極20)と、第2電極(以下、ソース電極30)と、ゲート電極40と、フィールドプレート電極(以下、FP電極50)と、を備える。
【0011】
半導体部10は、例えば、シリコンである。ドレイン電極20は、半導体部10の裏面上に設けられる。ソース電極30は、半導体部10の表面側に設けられる。ゲート電極40およびFP電極50は、半導体部10とソース電極30との間に位置し、半導体部10に設けられたゲートトレンチGTの内部に配置される。
【0012】
FP電極50は、ゲート電極40よりもドレイン電極20に近い位置に配置される。すなわち、FP電極50は、ドレイン電極20とゲート電極40との間の距離よりもドレイン電極20に近い位置に設けられる。
【0013】
この例では、FP電極50は、ドレイン電極20とゲート電極40との間に位置する。FP電極50は、例えば、図示しない部分において、ソース電極30に電気的に接続される。
【0014】
ゲート電極40は、ゲート絶縁膜43により半導体部10から電気的に絶縁される。また、ゲート電極40は、層間絶縁膜45によりソース電極30から電気的に絶縁される。
【0015】
FP電極50は、絶縁膜53により半導体部10から電気的に絶縁される。また、FP電極50は、絶縁膜55および絶縁膜57によりゲート電極40から電気的に絶縁される。
【0016】
半導体部10は、第1半導体層(以下、n形ドリフト層11)と、第2半導体層(以下、p形拡散層13)、第3半導体層(以下、n形ソース層15)と、p形コンタクト層17と、n形ドレイン層19と、を含む。
【0017】
ゲート電極40は、n形ドリフト層11とソース電極30との間に位置する。また、FP電極50は、n形ドリフト層11の内部に位置する。
【0018】
p形拡散層13は、n形ドリフト層11とソース電極30との間に設けられる。p形拡散層13は、ゲート絶縁膜43を介してゲート電極40に向き合うように配置される。
【0019】
n形ソース層15は、p形拡散層13とソース電極30との間に選択的に設けられる。n形ソース層15は、ゲート絶縁膜43に接する位置に配置される。n形ソース層15は、n形ドリフト層11のn形不純物の濃度よりも高濃度のn形不純物を含む。n形ソース層15は、ソース電極30に電気的に接続される。
【0020】
p形コンタクト層17は、p形拡散層13とソース電極30との間に選択的に設けられる。p形コンタクト層17は、p形拡散層13のp形不純物の濃度よりも高濃度のp形不純物を含む。p形コンタクト層17は、ソース電極30に電気的に接続される。
【0021】
この例では、ソース電極30は、p形コンタクト層17に達する延在部30cを有する。延在部30cは、n形ソース層15およびp形コンタクト層17に接し、且つ、電気的に接続される。ソース電極30は、p形コンタクト層17を介して、p形拡散層13に電気的に接続される。
【0022】
n形ドレイン層19は、n形ドリフト層11とドレイン電極20との間に設けられる。ドレイン電極20は、例えば、n形ドリフト層11に接し、且つ、電気的に接続される。n形ドレイン層19は、n形ドリフト層11のn形不純物の濃度よりも高濃度のn形不純物を含む。
【0023】
図1に示すように、ゲート電極40は、例えば、空隙、所謂ボイドVを含む。ボイドVの内面は、絶縁膜47により覆われている。また、絶縁膜47は、ボイドVの内部の空間を充填するように設けられても良い。絶縁膜47は、ゲート絶縁膜43、層間絶縁膜45、絶縁膜53および絶縁膜55から離れた位置に設けられる。
【0024】
次に、図2(a)~図7(b)を参照して、半導体装置1の製造方法を説明する。図2(a)~図7(b)は、半導体装置1の製造過程を順に示す模式断面図である。
【0025】
図2(a)に示すように、半導体ウェーハ100の表面側にゲートトレンチGTを形成する。ゲートトレンチGTは、例えば、異方性RIE(Reactive Ion Etching)を用いて形成される。半導体ウェーハ100は、例えば、n形シリコンウェーハである。半導体ウェーハ100は、n形ドリフト層11のn形不純物と同じ濃度のn形不純物を含む。
【0026】
図2(b)に示すように、ゲートトレンチGTの内部を覆うように、絶縁膜53を形成する。絶縁膜53は、ゲートトレンチGTの内部にスペースSP1を残すように形成される。絶縁膜53は、例えば、半導体ウェーハ100を熱酸化したシリコン酸化膜である。
【0027】
図2(c)に示すように、半導体ウェーハ100の表面側に導電膜103を形成する。導電膜103は、ゲートトレンチGT内のスペースSP1を埋め込むように形成される。導電膜103は、例えば、導電性を有するポリシリコン膜であり、CVD(Chemical Vapor Deposition)を用いて形成される。導電膜103は、例えば、n形不純物であるリン(P)を含む。
【0028】
図3(a)に示すように、ゲートトレンチGTの底部に埋め込まれた部分を残して、導電膜103を選択的に除去する。これにより、ゲートトレンチGTの底部にFP電極50が形成される。ゲートトレンチGTの内部には、スペースSP2が形成される。
【0029】
図3(b)に示すように、FP電極50の上端に絶縁膜57を形成する。絶縁膜57は、例えば、シリコン酸化膜であり、スペースSP2を介してFP電極50を熱酸化することにより形成される。
【0030】
図3(c)に示すように、半導体ウェーハ100の表面側に、絶縁膜55を形成する。絶縁膜55は、ゲートトレンチGT内のスペースSP2を埋め込むように形成される。絶縁膜55は、例えば、ボロン(B)およびリン(P)を含むシリケートガラス膜、所謂BPSG膜であり、CVDを用いて形成される。
【0031】
図4(a)に示すように、ゲートトレンチGTの内部を埋め込んだ部分を残して、絶縁膜55および絶縁膜53を選択的に除去する。絶縁膜53は、Z方向において、FP電極50の上端よりも高い位置にその上端を有するように除去される。絶縁膜55の一部は、FP電極50の上方において、絶縁膜57の上に残る。絶縁膜53および絶縁膜55は、例えば、ウェットエッチングを用いて除去される。ゲートトレンチGTの上部には、スペースSP3が形成される。
【0032】
図4(b)に示すように、半導体ウェーハ100の露出部を覆うように、ゲート絶縁膜43を形成する。ゲート絶縁膜43は、例えば、シリコン酸化膜であり、半導体ウェーハ100を熱酸化することにより形成される。ゲート絶縁膜43は、ゲートトレンチGTの上部にスペースSP3を残すように形成される。
【0033】
図4(c)に示すように、半導体ウェーハ100の表面側に、導電膜105を形成する。導電膜105は、ゲートトレンチGT内のスペースSP3を埋め込むように形成される。導電膜105は、例えば、n形不純物であるリン(P)を含むポリシリコン膜であり、CVDを用いて形成される。ゲート絶縁膜43は、半導体ウェーハ100と導電膜105との間に位置する。
【0034】
導電膜105は、その内部にボイドVを含むように形成される。導電膜105は、例えば、スペースSP3の開口における堆積速度がスペースSP3の底部における堆積速度よりも速くなる条件下で形成される。ボイドVは、ゲート絶縁膜43、絶縁膜53および絶縁膜55から離れた位置、例えば、スペースSP3の中央に形成される。
【0035】
図5(a)に示すように、導電膜105を熱酸化することにより、絶縁膜107を形成する。絶縁膜107は、例えば、シリコン酸化膜である。絶縁膜107は、導電膜105の露出面を覆うように形成される。この過程において、ボイドVの内面も酸化され、絶縁膜47が形成される。絶縁膜47は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0036】
例えば、酸化剤である酸素は、ポリシリコン膜の粒界に沿って内部に浸透する。酸素がボイドVに達すると、その内面に露出されたシリコン原子を酸化し、絶縁膜47を形成する。
【0037】
図5(b)に示すように、絶縁膜107を除去し、導電膜105の表面を露出させる。絶縁膜107は、例えば、ウェットエッチングにより除去される。
【0038】
図5(c)に示すように、スペースSP3(図4(b)参照)を埋め込んだ部分を残して、導電膜105を選択的に除去する。導電膜105は、例えば、ドライエッチングもしくはウェットエッチングを用いて除去される。これにより、ゲートトレンチGTの内部に、ゲート電極40が形成される。
【0039】
図6(a)に示すように、半導体ウェーハ100の表面側に、p形拡散層13およびn形ソース層15を形成する。
【0040】
p形拡散層13は、半導体ウェーハ100の表面側に、例えば、p形不純物であるボロン(B)をイオン注入した後、熱処理により活性化および拡散させることにより形成される。この際、n形ドリフト層11とp形拡散層13との界面が、Z方向において、ゲート電極40の下面と同じレベル、もしくは、ゲート電極40の下面よりも上のレベルに位置するように、熱処理時間を制御する。
【0041】
n形ソース層15は、例えば、半導体ウェーハ100の表面側に、n形不純物であるリン(P)をイオン注入した後、熱処理により活性化させることにより形成される。
【0042】
図6(b)に示すように、半導体ウェーハ100の表面側に、層間絶縁膜45を形成する。層間絶縁膜45は、ゲート電極40およびゲート絶縁膜43を覆うように形成される。層間絶縁膜45は、例えば、シリコン酸化膜であり、CVDを用いて形成される。
【0043】
さらに、ゲート絶縁膜43および層間絶縁膜45を選択的に除去することにより、コンタクト溝45cを形成する。コンタクト溝45cは、n形ソース層15に連通し、ゲート電極40に沿って、例えば、Y方向に延在する。
【0044】
図6(c)に示すように、コンタクト溝45cを介して、n形ソース層15を選択的に除去し、コンタクト溝45cの底面にp形拡散層13を露出させる。その後、コンタクト溝45cを介してp形不純物であるボロンをイオン注入し、熱処理を施すことにより、p形コンタクト層17を形成する。
【0045】
図7(a)に示すように、半導体ウェーハ100の表面側にソース電極30を形成する。ソース電極30は、層間絶縁膜45を覆い、コンタクト溝45cの内部に延伸する延在部30cを有するように形成される。ソース電極30は、例えば、スパッタ法を用いて形成される金属層であり、アルミニウム(Al)を含む。
【0046】
図7(b)に示すように、半導体ウェーハ100の裏面側に、n形ドレイン層19およびドレイン電極20を形成し、半導体装置1を完成させる。
【0047】
n形ドレイン層19は、半導体ウェーハ100の裏面側を研削もしくはエッチングすることにより、半導体ウェーハ100を所定の厚さに薄層化した後、n形不純物であるリン(P)を裏面側にイオン注入し、熱処理することにより形成される。半導体ウェーハ100のp形拡散層13とn形ドレイン層19との間に位置する部分は、n形ドリフト層11となる。
【0048】
ドレイン電極20は、例えば、チタニウム(Ti)を含む金属層であり、スパッタ法を用いて、n形ドレイン層19の裏面上に形成される。
【0049】
実施形態に係る製造方法では、導電膜105を熱酸化することにより、ボイドVの内面を覆う絶縁膜47を形成する(図5(a)参照)。これにより、図5(a)に示す工程以降の製造過程における熱処理に対して、ボイドVを安定化することができる。また、絶縁膜47は、ボイドVを閉塞させるように形成されても良い。すなわち、絶縁膜47を形成した後、ボイドVの内部にスペースが残らない場合もある。
【0050】
例えば、絶縁膜47を形成しない場合、ボイドVの内面に露出されたシリコン原子が熱処理により離脱し、ボイドVの内部に再付着する。これが繰り返されることにより、ゲート電極40の内部でボイドVが移動し、例えば、ゲート絶縁膜43の近傍に位置する場合がある。その結果、ボイドVは、ゲート閾値電圧やチャネル抵抗などを変化させ、トランジスタ特性を劣化させる。
【0051】
これに対し、半導体装置1では、絶縁膜47を形成することにより、ボイドVの内面におけるシリコン原子の離脱を抑制する。これにより、ボイドVの移動を防ぐことができる。すなわち、半導体装置1では、ボイドVは、ゲート絶縁膜43から離れた位置に保持され、トランジスタ特性に影響を与えない。
【0052】
次に、図8(a)~(c)を参照して、第1実施形態の変形例に係る半導体装置1の製造方法を説明する。図8(a)~(c)は、図4(b)に続く製造過程を示す模式断面図である。
【0053】
図8(a)に示すように、半導体ウェーハ100の表面側に、不純物をドープしないポリシリコン層115を形成する。ポリシリコン層115は、ゲートトレンチGTの上部のスペースSP3を埋め込むように形成される。ポリシリコン層115は、スペースSP3を埋め込んだ部分にボイドVを含む。
【0054】
図8(b)に示すように、ポリシリコン層115を熱酸化することにより、絶縁膜107を形成し、ポリシリコン層115の表面を覆う。この過程において、ボイドVの内面を覆うように、絶縁膜47が形成される。
【0055】
図8(c)に示すように、絶縁膜107を除去した後、ポリシリコン層115にn形不純物であるリン(P)を拡散する。例えば、ホスフィン(PH)を含むNなどの不活性ガスの雰囲気中で、熱処理を行うことにより、ポリシリコン中にリン(P)を拡散させる。また、ポリシリコン中にリン(P)をイオン注入し、熱処理により拡散させても良い。もしくは、リン(P)を含むポリシリコン層をノンドープポリシリコン上に形成し、熱処理によりノンドープポリシリコン中にリン(P)を拡散させることもできる。これにより、ポリシリコン層115は、導電性を有する。
【0056】
続いて、スペースSP3を埋め込んだ部分を残して、ポリシリコン層115を除去する(図5(c)参照)。その後、図6(a)~図7(b)に示す製造過程を通して、半導体装置1を完成させる。
【0057】
この例では、ボイドVの内面を絶縁膜47で覆うことにより、熱処理に対する耐性を向上させる。例えば、ポリシリコン層115にn形不純物を拡散させる過程において、ボイドVの移動を抑制することができる。
【0058】
図9(a)および(b)は、第1実施形態の変形例に係る半導体装置2および3を示す模式断面図である。
【0059】
図9(a)に示す半導体装置2は、ゲート電極40aおよび40bを備える。ゲート電極40aおよび40bは、FP電極50と共に、ゲートトレンチGTの内部に配置される。
【0060】
ゲート電極40aおよび40bは、それぞれ、ゲート絶縁膜43を介して、p形拡散層13に向き合うように配置される。FP電極50は、ゲート電極40aとゲート電極40bとの間に延伸した延在部50exを含む。延在部50exは、絶縁膜59により、ゲート電極40aおよび40bから電気的に絶縁される。
【0061】
ゲート電極40aおよび40bは、層間絶縁膜45によりソース電極30から電気的に絶縁される。ソース電極30は、ボンディング層33と、コンタクト層35と、を含む積層構造を有する。ボンディング層33は、例えば、アルミニウム(Al)を含む金属層である。コンタクト層35は、ボンディング層33と層間絶縁膜45との間に位置する。コンタクト層35は、例えば、チタニウム(Ti)を含む金属層である。
【0062】
コンタクト層35は、p形コンタクト層17に至る延在部35cを有する。ソース電極30は、延在部35cを介して、n形ソース層15およびp形コンタクト層17に電気的に接続される。
【0063】
この例でも、ゲート電極40aおよび40bは、それぞれ、ボイドVを有し、ボイドVの内面は、絶縁膜47により覆われている。ゲート電極40aおよび40bのそれぞれにおいて、ボイドVは、ゲート絶縁膜43、層間絶縁膜45、絶縁膜53および絶縁膜59から離れた位置に設けられる。絶縁膜47は、熱処理によるボイドVの移動を抑制し、トランジスタ特性の劣化を防ぐ。
【0064】
図9(b)に示す半導体装置3は、ゲートトレンチGTおよびフィールドトレンチFTを有する。ゲート電極40は、ゲートトレンチGTの内部に配置される。ゲート電極40は、ゲート絶縁膜43により、半導体部10から電気的に絶縁される。また、ゲート電極40は、層間絶縁膜45によりソース電極30から電気的に絶縁される。
【0065】
FP電極50は、フィールドトレンチFTの内部に配置され、絶縁膜53により半導体部10から電気的に絶縁される。ゲート電極40は、例えば、半導体部10の表面に沿った方向において隣り合うFP電極50の間に設けられる。FP電極50は、例えば、図示しない部分において、ソース電極30に電気的に接続される。
【0066】
この例でも、ゲート電極40は、ボイドVを含む。ボイドVの内面は、絶縁膜47に覆われる。ボイドVは、ゲート絶縁膜43および層間絶縁膜45から離れた位置に設けられる。ボイドVは、絶縁膜47により、熱処理に対して安定化され、トランジスタ特性に影響を与えない位置に保持される。
【0067】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係る半導体装置4を示す模式断面図である。半導体装置4は、ゲートトレンチGTの内部に設けられたFP電極50およびゲート電極60を備える。FP電極50は、ドレイン電極20とゲート電極60との間の距離よりもドレイン電極20に近い位置に設けられる。
【0068】
この例では、FP電極50は、ドレイン電極20とゲート電極60との間に配置される。FP電極50は、絶縁膜53により半導体部10から電気的に絶縁される。FP電極50は、絶縁膜55および57によりゲート電極60から電気的に絶縁される。
【0069】
ゲート電極60は、ソース電極30とFP電極50との間に位置し、層間絶縁膜45によりソース電極30から電気的に絶縁される。また、ゲート電極60は、ゲート絶縁膜63により半導体部10から電気的に絶縁される。
【0070】
図10に示すように、半導体装置4は、層間絶縁膜45とゲート電極60との間に位置する絶縁膜65をさらに備える。絶縁膜65は、ゲート電極60の内部に突出する突起部67を含む。突起部67のZ方向の長さは、例えば、突起部67の先端からゲート電極60の下端までの距離よりも短い。絶縁膜65は、例えば、層間絶縁膜45と同じ材料を含み、層間絶縁膜45と一体に設けられても良い。
【0071】
次に、図11(a)~図12(c)を参照して、半導体装置4の製造方法を説明する。図11(a)~図12(c)は、図4(b)に続く製造過程を示す模式断面図である。
【0072】
図11(a)に示すように、半導体ウェーハ100の表面側に導電膜123を形成する。導電膜123は、ゲートトレンチGTの上部のスペースSP1の内面を覆う。導電膜123は、例えば、n形不純物であるリン(P)を含むポリシリコン膜である。導電膜123は、例えば、CVDを用いて形成される。
【0073】
図11(b)に示すように、導電膜123を厚く形成するにつれて、スペースSP3が狭くなる。
【0074】
図11(c)に示すように、導電膜123は、スペースSP3が閉塞されるように、厚く形成される。結果として、導電膜123は、その内部にシームSMを有するように形成される。シームSMは、例えば、スペースSP3の両側の内壁上に堆積された導電膜123の一部が相互に接することにより形成される。
【0075】
この例では、導電膜123は、図4(c)に示すボイドVを含まず、シームSMを有する。このような違いは、例えば、スペースSP3の形状もしくはサイズに依存する。例えば、スペースSP3の開口幅WGTが、底部の幅WBTよりも広い場合、ボイドVが形成されず、導電膜123はシームSMを含む。
【0076】
図12(a)に示すように、スペースSP3を埋め込んだ部分を残して、導電膜123を除去する。導電膜123のスペースSP3を埋め込んだ部分は、ゲート電極60となる。
【0077】
図12(b)に示すように、ゲート電極60を熱酸化することにより、絶縁膜65を形成する。絶縁膜65は、例えば、シリコン酸化膜であり、ゲート電極60の上面を覆うように形成される。絶縁膜65は、ゲート電極60中に伸びる突起部67を有する。
【0078】
絶縁膜65の突起部67は、シームSMに沿って形成される。突起部67は、例えば、酸化剤である酸素がシームSMに位置するシリコン原子を酸化することにより形成される。
【0079】
図12(c)に示すように、半導体ウェーハ100の表面側にp形不純物およびn形不純物をイオン注入して熱処理することにより、p形拡散層13およびn形ソース層15を形成する。続いて、図6(a)~図7(b)に示す製造過程を通して、半導体装置4を完成させる。
【0080】
この例では、ゲート電極60の内部に形成された絶縁膜65の突起部67により、ゲート電極60のX方向の幅が広がる。このため、X方向において隣り合うゲート電極60の間に位置するp形拡散層13およびn形ソース層15に応力が加わり、p形拡散層13およびn形ソース層15を構成する半導体結晶に歪が生じる。この結果、例えば、p形拡散層13における電子の移動度が大きくなる。これにより、p形拡散層13とゲート絶縁膜63との界面に誘起される反転チャネルを介して流れるオン電流に対する電気抵抗を低減することができる。
【0081】
図13(a)および(b)は、第2実施形態の変形例に係る半導体装置5および6を示す模式断面図である。
【0082】
図13(a)に示す半導体装置5は、ゲート電極60aおよび60bを備える。ゲート電極60aおよび60bは、FP電極50と共に、ゲートトレンチGTの内部に配置される。
【0083】
ゲート電極60aおよび60bは、それぞれ、ゲート絶縁膜63を介して、p形拡散層13に向き合うように配置される。FP電極50は、ゲート電極60aとゲート電極60bとの間に延伸する延在部50exを含む。延在部50exは、絶縁膜59により、ゲート電極60aおよび60bから電気的に絶縁される。
【0084】
ゲート電極60aおよび60bは、層間絶縁膜45によりソース電極30から電気的に絶縁される。ソース電極30は、ボンディング層33と、コンタクト層35と、を含む積層構造を有する。コンタクト層35は、p形コンタクト層17に至る延在部35cを有する。ソース電極30は、延在部35cを介して、n形ソース層15およびp形コンタクト層17に電気的に接続される。
【0085】
この例でも、層間絶縁膜45と、ゲート電極60aおよび60bと、の間に、それぞれ、絶縁膜65が設けられる。絶縁膜65は、ゲート電極60aおよび60bのそれぞれの中に延伸した突起部67を含む。突起部67の延伸方向に沿った長さは、例えば、突起部67の先端からゲート電極60aおよび60bのそれぞれの下端までの距離よりも短い。突起部67により、p形拡散層13およびn形ソース層15に応力が加わり、p形拡散層13とゲート絶縁膜63の界面に誘起される反転チャネルにおける電気抵抗を低減することができる。
【0086】
図13(b)に示す半導体装置6は、ゲートトレンチGTおよびフィールドトレンチFTを有する。ゲート電極60は、ゲートトレンチGTの内部に配置され、ゲート絶縁膜63により、半導体部10から電気的に絶縁される。また、ゲート電極60は、半導体部10とソース電極30との間に配置され、層間絶縁膜45によりソース電極30から電気的に絶縁されている。
【0087】
FP電極50は、フィールドトレンチFTの内部に配置され、絶縁膜53により半導体部10から電気的に絶縁される。FP電極50は、例えば、図示しない部分において、ソース電極30に電気的に接続される。
【0088】
この例でも、層間絶縁膜45とゲート電極60との間に、絶縁膜65が設けられる。絶縁膜65は、ゲート電極60の中に延伸した突起部67を含む。突起部67のZ方向の長さは、例えば、突起部67の先端からゲート電極60の下端までの距離よりも短い。これにより、p形拡散層13およびn形ソース層15に応力が加わり、p形拡散層13とゲート絶縁膜63の界面に誘起される反転チャネルにおける電気抵抗を低減することができる。
【0089】
なお、上記の実施形態は、FP電極50を設けない構造に対しても有効である。例えば、半導体装置3および6において、フィールドトレンチFTが設けられず、FP電極50が配置されない構造であっても良い。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1、2、3、4、5、6…半導体装置、 10…半導体部、 11…n形ドリフト層、 13…p形拡散層、 15…n形ソース層、 17…p形コンタクト層、 19…n形ドレイン層、 20…ドレイン電極、 30…ソース電極、 30c、35c、50ex…延在部、 33…ボンディング層、 35…コンタクト層、 40、40a、40b、60、60a、60b…ゲート電極、 43、63…ゲート絶縁膜、 45…層間絶縁膜、 45c…コンタクト溝、 47、53、55、57、59、65…絶縁膜、 50…フィールドプレート(FP)電極、 67…突起部、 100…半導体ウェーハ、 100F…表面、 103、105、123…導電膜、 107…絶縁膜、 115…ポリシリコン層、 FT…フィールドトレンチ、 GT…ゲートトレンチ、 SM…シーム、 SP1、SP2、SP3…スペース、 V…ボイド
図1
図2
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図4
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図8
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図10
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