(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】セラミックヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/42 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
H05B3/42
(21)【出願番号】P 2019238946
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東出 侑也
(72)【発明者】
【氏名】牧野 友亮
(72)【発明者】
【氏名】杉山 敦俊
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6174821(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/163558(WO,A1)
【文献】実開平04-115797(JP,U)
【文献】特開平11-074063(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130619(WO,A1)
【文献】米国特許第03116401(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02-3/18、3/40-3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック製の丸棒状または筒状のヒータ本体と、
前記ヒータ本体の軸線の周囲に筒状をなすように設けられ、前記ヒータ本体が挿入されているフランジと、を備えたセラミックヒータであって、
前記フランジは、一側に開口する一側開口部を有する封止材溜り部と、他側に開口する他側開口部を有する接続部と、を備え、
前記ヒータ本体が前記封止材溜り部と前記接続部との内部に配置された状態で、前記封止材溜り部に充填された封止材によって前記フランジと前記ヒータ本体とが接合されており、
前記封止材の前記他側の端部においては、自身の内周面と前記ヒータ本体の外周面との隙間が、前記接続部と前記ヒータ本体の外周面との間の径方向の距離よりも狭い幅狭部が設けられている、セラミックヒータ。
【請求項2】
前記フランジは、前記封止材溜り部を構成する大径部と、前記大径部よりも小径とされ、かつ、前記接続部を構成する小径部と、段差状をなして前記小径部と前記大径部を連結する連結部と、を有する、請求項1に記載のセラミックヒータ。
【請求項3】
前記フランジの内部には、自身の内部に前記ヒータ本体が挿入された状態で前記フランジに支持されるスペーサが配置され、
前記幅狭部は前記スペーサである、請求項1または請求項2に記載のセラミックヒータ。
【請求項4】
前記フランジは金属製である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセラミックヒータ。
【請求項5】
前記封止材溜り部を構成する内壁の厚みは一定である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のセラミックヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、温水洗浄便座、ファンヒータ、電気温水器、24時間風呂、半田ごて、ヘアアイロン、コジェネレーションシステム等に用いられるセラミックヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒータ本体と、ヒータ本体に外嵌されているフランジと、を備えたセラミックヒータとして、例えば、特許第6174821号公報(下記特許文献1)に記載のものが知られている。フランジは、ヒータ本体の軸方向に凹んだ凹状部分を有するカップ形状とされ、凹状部分にはガラスが充填されている。フランジとヒータ本体がガラスによって接合されることでセラミックヒータが全体として一体に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フランジの内径は、溶融したガラスの垂れ防止を考慮して例えばヒータ本体の外径との差が所定寸法以下となるようにすることが好ましい。しかしながら、フランジの内径は、フランジに接続される相手側配管の構成によって決まる場合があり、その場合にはヒータ本体の外径との差が1mmよりも大きくなることがあり得る。ヒータ本体の外径との差が大きくなれば、溶融したガラスの垂れを防止できなくなるおそれがある。すなわち、フランジの内径に寸法上の制約がある場合に、ガラス等の封止材の垂れを抑制した状態で接合を行うことは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のセラミックヒータは、セラミック製の丸棒状または筒状のヒータ本体と、前記ヒータ本体の軸線の周囲に筒状をなすように設けられ、前記ヒータ本体が挿入されているフランジと、を備えたセラミックヒータであって、前記フランジは、一側に開口する一側開口部を有する封止材溜り部と、他側に開口する他側開口部を有する接続部と、を備え、前記ヒータ本体が前記封止材溜り部と前記接続部との内部に配置された状態で、前記封止材溜り部に充填された封止材によって前記フランジと前記ヒータ本体とが接合されており、前記封止材の前記他側の端部には、自身の内周面と前記ヒータ本体の外周面との隙間が、前記接続部と前記ヒータ本体の外周面との間の径方向の距離よりも狭い幅狭部が設けられている、セラミックヒータである。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、フランジの内径に寸法上の制約がある場合に、封止材の垂れを抑制した状態で接合を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は実施形態1のセラミックヒータの正面図である。
【
図2】
図2はセラミックヒータの内部構造を示した断面図である。
【
図3】
図3は
図2の第1フランジの接合部を拡大して示した断面図である。
【
図6】
図6はセラミックシートをセラミック管の外周面に巻き付けて接着する様子を示した斜視図である。
【
図7】
図7は各フランジとヒータ本体とをガラスで接合する様子を示した斜視図である。
【
図8】
図8は実施形態2の第1フランジの接合部を拡大して示した断面図である。
【
図9】
図9は実施形態3の第1フランジの接合部を拡大して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示のセラミックヒータは、セラミック製の丸棒状または筒状のヒータ本体と、前記ヒータ本体の軸線の周囲に筒状をなすように設けられ、前記ヒータ本体が挿入されているフランジと、を備えたセラミックヒータであって、前記フランジは、一側に開口する一側開口部を有する封止材溜り部と、他側に開口する他側開口部を有する接続部と、を備え、前記ヒータ本体が前記封止材溜り部と前記接続部との内部に配置された状態で、前記封止材溜り部に充填された封止材によって前記フランジと前記ヒータ本体とが接合されており、前記封止材の前記他側の端部においては、自身の内周面と前記ヒータ本体の外周面との隙間が、前記接続部と前記ヒータ本体の外周面との間の径方向の距離よりも狭い幅狭部が設けられている、セラミックヒータである。
【0009】
フランジとヒータ本体とを接合する際には、溶融した封止材を一側開口部から封止材溜り部に充填し、封止材が冷え固まることで接合が完了する。充填の際にフランジの内径とヒータ本体の外径との差が大きい場合でも、幅狭部の内周面とヒータ本体の外周面との隙間が、接続部とヒータ本体の外周面との間の径方向の距離よりも狭くなっているため、封止材溜り部に充填された封止材が他側に垂れることを防止できる。
【0010】
(2)前記フランジは、前記封止材溜り部を構成する大径部と、前記大径部よりも小径とされ、かつ、前記接続部を構成する小径部と、段差状をなして前記小径部と前記大径部を連結する連結部と、を有することが好ましい。
封止材の冷却時に封止材の他側を支点として封止材の一側が拡径しようとし、封止材の一側に引っ張り応力が発生することが知られている。上記の構成によると、封止材溜り部が大径部で構成されているから、封止材溜り部が小径部で構成されている場合に比べて、引っ張り応力を広い範囲に分散させることができる。したがって、封止材にクラックが入ることを抑制できる。
【0011】
(3)前記フランジの内部には、自信の内部に前記ヒータ本体が挿入された状態で前記フランジに支持されるスペーサが配置され、前記幅狭部は前記スペーサであることが好ましい。
幅狭部をフランジと一体に構成した場合、フランジが幅狭部の位置で厚く、歪な形状となるため、封止材の冷却時に応力が発生しやすくなる。また、プレス加工によって幅狭部を加工できないため、製造コストの面で不利になる。その点、幅狭部をフランジとは別体で構成したから、フランジが歪な形状となることを回避でき、プレス加工によって幅狭部を製造できる。
【0012】
(4)前記フランジは金属製であることが好ましい。
フランジが金属製である場合、金属平板をプレス加工することによってフランジを形成できるため、フランジの製造コストを低減できる。
【0013】
(5)前記封止材溜り部を構成する内壁の厚みは一定であることが好ましい。
封止材溜り部を構成する内壁の厚みが一定でない、すなわち封止材溜り部の形状が歪である場合、封止材の冷却時に応力が発生しやすくなる。その点、封止材溜り部を構成する内壁の厚みが一定であれば、封止材の冷却時に応力が発生しにくくなり、例えば、封止材が割れることを回避できる。
【0014】
[本開示の実施形態1の詳細]
本開示のセラミックヒータの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
<セラミックヒータの全体構成>
実施形態1のセラミックヒータ11は、温水洗浄便座、24時間風呂、手洗い用、コジェネレーションなどに利用される液体加熱用のヒータである。セラミックヒータ11は、
図1および
図2に示すように、円筒状をなすセラミック製のヒータ本体20と、ヒータ本体20が挿入されている金属製の円環状の第2フランジ30と、第2フランジ30の下方に配された第1フランジ40と、を備えている。
【0016】
<ヒータ本体>
ヒータ本体20は、軸線AXを中心として円筒状をなすように設けられている。ヒータ本体20は、セラミック管21と、そのセラミック管21の外周のほぼ全体を覆うセラミック層22と、を備えている。セラミック層22はセラミック管21の外周を完全には覆っていないため、ヒータ本体20の外周面23には、軸方向(軸線AXが延びる方向と平行な方向)に延びる溝部24が形成されている。
【0017】
ヒータ本体20を構成しているセラミック管21およびセラミック層22は、例えば、アルミナからなる。アルミナの熱膨張係数としては、50×10-7/K~90×10-7/Kの範囲内であり、本実施形態のものでは70×10-7/K(30℃~380℃)となっている。
【0018】
図6に示すように、セラミック層22の内周面(セラミック管21側の面)または内部には、蛇行したパターン形状のヒータパターン層25および一対の内部端子26が形成されている。これらの内部端子26は、図示しないビア導体等を介して、セラミック層22の外周面の端部の外部端子27と電気的に接続されている。
【0019】
<第2フランジ>
第2フランジ30は、例えば、ステンレス等の金属からなる円環状の部材であり、
図2に示すように、軸線AXの周囲に筒状をなすように設けられている。第2フランジ30は、例えば、プレス加工によって金属板材の中央部分が下方に押し出されることで凹状(カップ形状)に形成されたものである。第2フランジ30は、詳細には、上方に開口する大径部31と、大径部31の下方に配されて大径部31よりも小径とされた小径部32と、段差状をなして大径部31と小径部32を連結する連結部33と、を備えて構成されている。小径部32の底面における中央部には穴部34が形成されている。穴部34は、小径部32の底面を上下方向に貫通する形態をなしている。
【0020】
第2フランジ30を形成する金属の熱膨張係数は、100×10-7/K~200×10-7/Kの範囲内の値となる。例えば、第2フランジ30がSUS304(主成分がFe、Ni、Cr)製である場合には、その熱膨張係数は、178×10-7/K(30℃~380℃)であり、SUS430(主成分がFe、Cr)製である場合には、その熱膨張係数は、110×10-7/K(30℃~380℃)である。
【0021】
第2フランジ30の小径部32の内部が、ガラス36が充填されるガラス溜り部37とされている。第2フランジ30とヒータ本体20はガラス36によって一体に接合されている。ガラス36としては、例えば、Na2O・Al2O3・B2O3・SiO2系のガラス、いわゆるAl2O3・B2O3・SiO2系のガラス(ホウケイ酸ガラス)が用いられている。このガラス36の熱膨張係数は、例えば、50×10-7/K~90×10-7/K(30℃~380℃)の範囲内の値となり、本実施形態では62×10-7/K(30℃~380℃)となっている。
【0022】
穴部34の孔縁とヒータ本体20の外周面23との間には、例えば、0.1mm~1.0mm程度の狭小隙間が存在し、本実施形態ではその狭小隙間の寸法が0.3mm~0.5mm程度に設定されている。
【0023】
<第1フランジ>
第1フランジ40は、例えば、ステンレス等の金属からなる円環状の部材であり、
図2に示すように、軸線AXの周囲に筒状をなすように設けられている。第1フランジ40は、例えば、母材となる金属材がプレス加工によって下方に押し出されることで段付きの有底筒状に成形された後、底面が打ち抜かれることで製造される。第1フランジ40は全体として上下方向に貫通する形態をなし、詳細には、上方に開口する大径部41と、大径部41の下方に配されて大径部41よりも小径とされた小径部42と、段差状をなして大径部41と小径部42を連結する連結部43と、を備えて構成されている。
【0024】
大径部41は、上側に開口する上側開口部44を有し、小径部42は、下側に開口する下側開口部45を有している。小径部42は、図示しない相手側配管に接続される接続部49を構成している。相手側配管は水を供給する配管であり、相手側配管から第1フランジ40の下側開口部45を通ってヒータ本体20の内部に進入した水が加熱されるようになっている。
【0025】
第1フランジ40はヒータ本体20の下端部に外嵌されている。ヒータ本体20の下端は第1フランジ40の小径部42の上端部に位置しており、ヒータ本体20が大径部41と連結部43を上下方向に貫通する配置とされている。第1フランジ40の内部に、ガラス46が充填されるガラス溜り部47が設けられている。ガラス溜り部47とは、ガラス46が充填されている空間のことであり、詳細には、ヒータ本体20の外周面と、第1フランジ40の大径部41から連結部43にかけての内周面と、後述するスペーサ50と、によって囲まれた空間のことである。
【0026】
ヒータ本体20がガラス溜り部37と接続部49との内部に配置された状態で、第1フランジ40とヒータ本体20はガラス46によって一体に接合されている。ガラス46としては、例えば、Na2O・Al2O3・B2O3・SiO2系のガラス、いわゆるAl2O3・B2O3・SiO2系のガラス(ホウケイ酸ガラス)が用いられている。このガラス46の熱膨張係数は、例えば、50×10-7/K~90×10-7/K(30℃~380℃)の範囲内の値となり、本実施形態では62×10-7/K(30℃~380℃)となっている。
【0027】
ガラス溜り部47を構成する内壁のうち第1フランジ40によって構成されている内壁の厚みTは一定である。この厚みTは、例えば、0.8±0.1mmとされている。厚みTを一定にすると、ガラス46の冷却時に応力が発生しにくくなり、ガラス46の割れを防止できる。
【0028】
さて、ガラス溜り部47を構成する内壁のうち下側の端部はスペーサ50によって構成されている。スペーサ50は、
図4および
図5に示すように、円筒状をなして上下方向に延びる筒状部51と、筒状部51の上縁から径方向外側に張り出す鍔部52と、を備えて構成されている。筒状部51の内周面は、
図3に示すように、ヒータ本体20の外周面に沿って配されている。
【0029】
ヒータ本体20の外径は、例えば、10.4±0.3mmとされ、第1フランジ40の小径部42の内径は、例えば、13.05±0.05mmとされている。このため、ヒータ本体20の外周面と第1フランジ40の小径部42の内周面との間の径方向の距離Lは、1.15~1.5mm(片側)となる。距離Lが1mmよりも大きいと、ガラス46が第1フランジ40の下側に垂れるおそれがある。そこで、本実施形態では隙間Gにスペーサ50を配置することでガラス46の垂れを抑制するようにしている。
【0030】
スペーサ50は第1フランジ40とは別体で構成され、上側開口部44からガラス溜り部47に挿入され鍔部52が連結部43に引っ掛けられることで第1フランジ40に配置されている。スペーサ50により隙間Gのほとんどは閉じられ、ヒータ本体20の外周面とスペーサ50の筒状部51の内周面との間に狭小隙間S1だけが残された状態となる。この狭小隙間S1の寸法は、例えば、0~0.35mm(片側)である。また、鍔部52は連結部43の上面に接触した状態で配置されているため、鍔部52と連結部43の上面との間にはほぼ隙間がない状態とされる。ガラス46の下側の端部においては、スペーサ50が配置されることにより、狭小隙間S1が径方向の距離L1よりも狭いものとされている。これにより、ガラス溜り部47に充填されたガラス46が第1フランジ40の下側に垂れることを抑制できる。なお、ガラス46の垂れを抑制するには、狭小隙間S1の寸法を0.5mm以下(片側)とすることが好ましい。
【0031】
<セラミックヒータの製造方法>
次に、セラミックヒータ11を製造する方法を
図6および
図7を参照しながら説明する。
まず、
図6に示すように、円筒状をなすアルミナ質のセラミック管21を仮焼成する。これとは別に、アルミナ質のセラミックシート60の表面または積層したシート内部に、タングステン等の高融点金属を印刷する。これにより、後にヒータパターン層25、内部端子26及び外部端子27となるパターン61を形成する。
【0032】
次に、このセラミックシート60の片側面にセラミックペースト(アルミナペースト)を塗布し、
図6の左図に示すように、セラミックシート60をセラミック管21の外周面に巻き付けて接着してから一体焼成する。その後、外部端子27にニッケルめっきを施し、ヒータ本体20とする。これにより、
図6の右図に示すように、外部端子27のみが外部に露出した状態で配される。
【0033】
次に、
図7の左図に示すように、第1フランジ40と第2フランジ30をヒータ本体20の所定の高さ位置に外嵌し、この状態で各フランジ30、40およびヒータ本体20を図示しない治具で支持する。第1フランジ40をヒータ本体20に外嵌する際には、予めスペーサ50の鍔部52を第1フランジ40の連結部43の上面に配置した状態としておき、その状態からスペーサ50の筒状部51をヒータ本体20の下端部に外嵌する。これにより、ヒータ本体20の外周面と第1フランジ40の内周面との間に形成される隙間Gはスペーサ50によってほとんど閉じられた状態となる。
【0034】
次に、ホウケイ酸ガラスからなるガラス材料をリング状にプレス成形し、これを640℃で30分仮焼して、仮焼済みガラス材38、48を予め作製しておき、
図7の中央図に示すように、ヒータ本体20と各フランジ30、40との間のガラス溜り部37、47に、リング状の仮焼済みガラス材38、48を配置する。
【0035】
次に、この状態のものを焼成用の連続炉に投入して、ヒータ本体20と各フランジ30、40とのガラス付けを行う。具体的には、連続炉内を還元雰囲気(例えば、N
2+5%H
2)にして溶着温度(1015℃)で所定時間加熱することで、仮焼済みガラス材38、48を溶融させる。その後、仮焼済みガラス材38、48を常温(例えば25℃)まで冷却して固化させることで、
図7の右図に示すように、ガラス36、46を介してヒータ本体20と各フランジ30、40とを溶着固定し、セラミックヒータ11を完成させる。
【0036】
<実施形態1の効果>
本実施形態のセラミックヒータ11によると、第1フランジ40とヒータ本体20とを接合する際には、溶融したガラス46を上側開口部44からガラス溜り部47に充填し、ガラス46が冷え固まることで接合が完了する。充填の際に第1フランジ40の内径とヒータ本体20の外径との差が大きい場合でも、スペーサ50の内周面とヒータ本体20の外周面との隙間である狭小隙間S1が、接続部49とヒータ本体20の外周面との間の径方向の距離Lよりも狭くなっているため、ガラス溜り部47に充填されたガラス46が下側に垂れることを防止できる。
【0037】
第1フランジ40は、ガラス溜り部47を構成する大径部41と、大径部41よりも小径とされ、かつ、接続部49を構成する小径部42と、段差状をなして小径部42と大径部41を連結する連結部43と、を有することが好ましい。ガラス46の冷却時にガラス46の下側を支点としてガラス46の上側が拡径しようとし、ガラス46の上側に引っ張り応力が発生することが知られている。上記の構成によると、ガラス溜り部47が大径部41で構成されているから、ガラス溜り部47が小径部42で構成されている場合に比べて、引っ張り応力を広い範囲に分散させることができる。したがって、ガラス46にクラックが入ることを抑制できる。
【0038】
第1フランジ40の内部には、自信の内部にヒータ本体20が挿入された状態で第1フランジ40に支持されるスペーサ50が配置されていることが好ましい。スペーサ50の代わりに幅狭部を第1フランジ40と一体に構成した場合、第1フランジ40が幅狭部の位置で厚く、歪な形状となるため、ガラスの冷却時に応力が発生しやすくなる。また、プレス加工によって幅狭部を加工できないため、製造コストの面で不利になる。その点、幅狭部としてのスペーサ50を第1フランジ40とは別体で構成したから、第1フランジ40が歪な形状となることを回避でき、プレス加工によってスペーサ50を製造できる。
【0039】
第1フランジ40は金属製であることが好ましい。第1フランジ40が金属製である場合、金属平板をプレス加工することによって第1フランジ40を形成できるため、第1フランジ40の製造コストを低減できる。
【0040】
ガラス溜り部47を構成する内壁の厚みTは一定であることが好ましい。ガラス溜り部47を構成する内壁の厚みTが一定でない、すなわちガラス溜り部47の形状が歪である場合、ガラス46の冷却時に応力が発生しやすくなる。その点、ガラス溜り部47を構成する内壁の厚みTが一定であれば、ガラス46の冷却時に応力が発生しにくくなり、例えば、ガラス46が割れることを回避できる。
【0041】
[本開示の実施形態2の詳細]
次に、実施形態2について
図8を参照しながら説明する。実施形態2のセラミックヒータ12は、実施形態1のセラミックヒータ11の第1フランジ40の構成を一部変更したものであって、その他の構成については実施形態1と同じであるため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については実施形態1と同一の符号を用いるものとする。
【0042】
本実施形態の第1フランジ70は、上方に開口する大径部71と、大径部71の下方に配されて大径部71よりも小径とされた小径部72と、段差状をなして大径部71と小径部72を連結する連結部73と、を備えて構成されている。大径部71は、上側に開口する上側開口部74を有し、小径部72は、下側に開口する下側開口部75を有している。
【0043】
小径部72は、図示しない相手側配管に接続される接続部79を構成している。相手側配管は水を供給する配管であり、相手側配管から第1フランジ70を通ってヒータ本体20の内部に進入した水が加熱されるようになっている。
【0044】
第1フランジ70の内部に、ガラス76が充填されるガラス溜り部77が設けられている。ガラス溜り部77とは、ガラス76が充填されている空間のことであり、詳細には、ヒータ本体20の外周面と、第1フランジ70の大径部71から連結部73にかけての内周面と、次述する幅狭部78と、によって囲まれた空間のことである。
【0045】
ガラス76の下側の端部には、幅狭部78が設けられている。幅狭部78は、小径部72の上端部の内周側に設けられている。幅狭部78は小径部72と一体に構成され、小径部72の内周面から径方向内側に突出する形態をなし、軸線AXを中心とする円環状に設けられている。幅狭部78の内周面は、ヒータ本体20の外周面に沿って上下方向に延びる形態とされている。
【0046】
ヒータ本体20の外周面と幅狭部78の内周面との間には狭小隙間S2が形成されている。この狭小隙間S2の寸法は、例えば、0~0.35mm(片側)である。これにより、ガラス溜り部77に充填されたガラス76が第1フランジ70の下側に垂れることを抑制できる。
【0047】
[本開示の実施形態3の詳細]
次に、実施形態3について
図9を参照しながら説明する。実施形態3のセラミックヒータ13は、実施形態1のセラミックヒータ11の第1フランジ40の構成を一部変更したものであって、その他の構成については実施形態1と同じであるため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については実施形態1と同一の符号を用いるものとする。
【0048】
本実施形態の第1フランジ80は、実施形態1の第1フランジ40とは異なり、大径部と連結部を備えておらず、小径部82のみによって構成されている。したがって、第1フランジ80は全体として円筒状をなしている。小径部82は、上側に開口する上側開口部84と、下側に開口する下側開口部85と、を有している。
【0049】
小径部82の下端側は、図示しない相手側配管に接続される接続部89を構成している。相手側配管は水を供給する配管であり、相手側配管から下側開口部85を通ってヒータ本体20の内部に進入した水が加熱されるようになっている。
【0050】
小径部82の上端側の内部に、ガラス86が充填されるガラス溜り部87が設けられている。ガラス溜り部87とは、ガラス86が充填されている空間のことであり、ヒータ本体20の外周面と、第1フランジ80の小径部82の内周面と、次述するスペーサ90の上面と、によって囲まれた空間のことである。
【0051】
ヒータ本体20の下端部における外周面と小径部82の内周面との間には、隙間Gが形成されており、この隙間Gにスペーサ90が配されている。本実施形態のスペーサ90は、小径部82とは別体に構成され、ガラス86の下側の端部に配されている。スペーサ90の外径は実施形態1のスペーサ50の外径よりも小さいものの、スペーサ90の内径は実施形態1のスペーサ50の内径と同じである。
【0052】
ヒータ本体20の外周面とスペーサ90の内周面との間には狭小隙間S3が形成されている。この狭小隙間S3の寸法は、例えば、0~0.35mm(片側)である。スペーサ90は、例えば、第1フランジ80に対して圧入によって保持されており、スペーサ90の外周縁部91は小径部82の内周面に全周に亘って接触している。これにより、ガラス溜り部87に充填されたガラス86が第1フランジ90の下側に垂れることを抑制できる。
【0053】
<他の実施形態>
(1)実施形態1から3では、円筒状のヒータ本体20を例示しているものの、角筒状のヒータ本体としてもよいし、丸棒状のヒータ本体としてもよい。
【0054】
(2)実施形態1から3では、封止材としてガラスを使用しているものの、エポキシ系封止材やセラミック系封止材などを使用してもよい。
【0055】
(3)実施形態1ではスペーサ50が連結部43に配置されているものの、実施形態3のスペーサ90を用いて小径部42に保持させるようにしてもよい。
【0056】
(4)実施形態1から3では、第1フランジが金属製とされているものの、セラミック製の第1フランジとしてもよい。
【0057】
(5)実施形態1と3では、平面視で周方向に切れ目なくつながった筒状のスペーサ50、90を用いているものの、平面視でC字状をなして切れ目を有する筒状のスペーサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0058】
11…セラミックヒータ
20…ヒータ本体、21…セラミック管、22…セラミック層、23…外周面、24…溝部、25…ヒータパターン層、26…内部端子、27…外部端子
30…第2フランジ、31…大径部、32…小径部、33…連結部、34…穴部、36…ガラス、37…ガラス溜り部、38…仮焼済みガラス材
40…第1フランジ(フランジ)、41…大径部、42…小径部、43…連結部、44…上側開口部(一側開口部)、45…下側開口部(他側開口部)、46…ガラス(封止材)、47…ガラス溜り部(封止材溜り部)、48…仮焼済みガラス材、49…接続部
50…スペーサ(幅狭部)、51…筒状部、52…鍔部
60…セラミックシート、61…パターン
70…第1フランジ(フランジ)、72…大径部、73…小径部、73…連結部、74…上側開口部(一側開口部)、75…下側開口部(他側開口部)、76…ガラス(封止材)、77…ガラス溜り部、78…幅狭部、79…接続部
80…第1フランジ(フランジ)、82…小径部、84…上側開口部、85…下側開口部、86…ガラス、87…ガラス溜り部、89…接続部
90…スペーサ(幅狭部)、91…外周縁部
AX…軸線 G…隙間、L…距離、S1…狭小隙間、S2…狭小隙間、S3…狭小隙間、T…厚み