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特許7249288特に口腔用である活性物質積層体の製造方法、および、特に口腔用活性物質積層体である活性物質積層体
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  • 特許-特に口腔用である活性物質積層体の製造方法、および、特に口腔用活性物質積層体である活性物質積層体 図1
  • 特許-特に口腔用である活性物質積層体の製造方法、および、特に口腔用活性物質積層体である活性物質積層体 図2
  • 特許-特に口腔用である活性物質積層体の製造方法、および、特に口腔用活性物質積層体である活性物質積層体 図3
  • 特許-特に口腔用である活性物質積層体の製造方法、および、特に口腔用活性物質積層体である活性物質積層体 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】特に口腔用である活性物質積層体の製造方法、および、特に口腔用活性物質積層体である活性物質積層体
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/24 20060101AFI20230323BHJP
   A61K 31/4468 20060101ALI20230323BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20230323BHJP
   B32B 37/24 20060101ALI20230323BHJP
   F26B 13/24 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
A61K9/24
A61K31/4468
A61K31/485
B32B37/24
F26B13/24
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019554567
(86)(22)【出願日】2018-04-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2018058761
(87)【国際公開番号】W WO2018185238
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2020-07-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】102017107468.6
(32)【優先日】2017-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】エルヴィーラ・キルストゲン
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ-インゴ・シュタイン
(72)【発明者】
【氏名】ザンドラ・ヴィーダースベルク
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・シュテュンパー
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】井上 哲男
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-342154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体(20)上に配置された、一定の面密度を有する少なくとも1つの活性物質含有層(31)を有する口腔での使用用の活性物質積層体を製造する方法、ここで該活性物質は医薬活性物質である、であって:
a)上面(21)と下面(22)とを有する基体(20)を提供する工程と;
b)第1の回転ローラ(26)と第2の回転ローラ(27)によって形成された間隙(25)内に溶媒を含む活性物質含有塊(24)を適用し、第2の回転ローラ(27)の表面に該活性物質含有塊(24)を一定の厚さで適用する工程と;
c)基体(20)を第3の回転ローラ(28)、ここで該第3の回転ローラは第2の回転ローラの上方に配置されている、によって第2の回転ローラ(27)へと輸送し、該基体(20)の上面(21)上に活性物質含有塊(24)を押し付けて一定の厚さの活性物質含有層(31)を形成する、工程と;
d)基体(20)および活性物質含有層(31)によって形成された中間積層体(30)を乾燥装置(40)へと輸送する工程と;
e)中間積層体(30)を乾燥させる工程、ここで該溶媒は除去される、
を含み、ここで、第1の回転ローラ(26)の回転速度は0.1m/分~0.3m/分であり、第2の回転ローラ(27)の回転速度は1.0m/分~1.5m/分、第3の回転ローラ(28)の回転速度は0.7m/分~1.0m/分であり、各回転速度は、本方法の間一定のままである、前記方法。
【請求項2】
基体(20)は、下面(22)でキャリアフィルム(50)に連結される
ことを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基体(20)は、少なくとも2つの活性物質を含まない層(61、62)によって形成される
ことを特徴とする、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の回転ローラ(26)、第2の回転ローラ(27)および第3の回転ローラ(28)は、同じ回転方向(R1;R2;R3)に回転する
ことを特徴とする、
請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第1の回転ローラ(26)と第2の回転ローラ(27)との間の間隙(25)の幅は、0.2mm~0.9mmである
ことを特徴とする、
請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
中間積層体(30)は、乾燥装置(40)内で、30℃~120℃の温度の作用を受ける
ことを特徴とする、
請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
f)乾燥済み中間積層体(32)を積層用回転ローラ(45、45’)に案内し、活性物質積層体(33)を形成する
ことを特徴とする、
請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該方法は、さらに、
g)活性物質積層体(33)を巻き上げる工程
含むことを特徴とする、
請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該方法は、さらに、
h)活性物質積層体(34)を巻き出す工程と;
i)場合により、キャリアフィルム(50)を除去する工程と;
j)活性物質積層体を多数の活性物質積層体部分に分割する工程と
含むことを特徴とする、
請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1による、基体上に配置された少なくとも1つの活性物質含有層を有する、特に口腔用である活性物質積層体の製造方法に関する。さらに、本発明は、請求項13による、基体上に配置された少なくとも1つの活性物質含有層を有する、特に本発明による方法によって製造された特に口腔用活性物質積層体である活性物質積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔用活性物質積層体または口腔用活性物質フィルム(口腔用薄フィルム)は、薄い活性物質含有フィルムであり、口内に直接置かれる、または口腔粘膜に接するように置かれ、そこで短期間で溶解する。溶解時間は、たとえば、1分間から30分間である。経粘膜フィルムの場合、活性物質は、口腔粘膜を介して血流中に入り込み、胃腸管を通る必要がない。
【0003】
口腔用の活性物質積層体または活性物質フィルムは、薄い可撓性の医薬賦形剤である。これらは、たとえば、舌の上または下に置かれ、そこで溶ける。さらに、口腔用薄フィルムを口腔粘膜、特に口腔内面に粘着させることもできる。口腔粘膜は血流が非常に良好なことから、血流中への活性物質の直接の移動が確実になる。
【0004】
また、口腔用活性物質積層体の形態の、歯科用の予防治療製品および/または口内清涼製品の提供が知られている。
【0005】
図1は、この種の予防積層体の一例を示している。この場合、製品10は、約70μmの厚さがあり、メントールがマトリックス12内に油滴15の形態で組み込まれている。製品10の表面13は、図面でよく見えるように、凹凸が激しい。これは、口腔用活性物質積層体の以前から知られる製造方法による結果である。一方、下面14は、非常に滑らかまたは平坦であり、この下面14の滑らかさまたは平坦なデザインは、使用のキャリアフィルム11によるものである。単位面積当たりに含まれる活性物質の量は同じであるが、マトリックス12の断面は比較的不均一である。図面では、小滴15がキャリアフィルム11の方向により多く形成されていることが分かり、これらの小滴は、表面13の領域内で形成される小滴15よりも直径が小さい。
【0006】
口腔用フィルムの製造に使用される2つの最も重要な技法は、溶媒流延および溶融押出である。
【0007】
さらに、口腔用活性物質積層体の従来の製造方法では、特に多層システム(multi-layer systems)において活性物質含有層の面密度が十分に一定にならないという問題が生じる。例示的な既知の方法は、標準的なロールコーティングである。活性物質含有層の面密度は、一般的に、別に決定することができないが、活性物質非含有層に関連してのみ決定、すなわち合算することができる。口腔用活性物質積層体の合計面密度は、活性物質含有層および活性物質非含有層の両方の面密度の変動を含む。
【0008】
標準的なロールコーティングによって活性物質含有層を適用する場合、塗布する活性物質含有塊は、活性物質非含有層、またはさらに活性物質含有層である層、というより活性物質非含有基体または活性物質含有基体に適用される。基体の厚さに関連する変動、または、基体もしくは活性物質非含有層もしくは活性物質含有層の面密度に関連する変動は、こうして、口腔用活性物質積層体全体の変動に直接影響を与えることになり得る。
【0009】
特許文献1には、「リキッド-オン-リキッド(liquid-on-liquid)」コーティングとして既知のものが記載されている。この場合、多層積層体は、非常に経済的な閉シーケンスの製造方法で作成される。まず、処理条件下で流動性の第1の塊が第1の層として適用され、次いで、処理条件下で流動性のさらなる塊がさらなる層として適用される。
【0010】
図2は、例示的な標準のコーティング方法を示している。巻き上げられた基体材料20’は、場合によりゴム引きされた、輸送ローラ28’によって巻き出され、第1のローラ26’と第2のローラ27’との間に形成された間隙25’内へと案内される。間隙25’の領域内で、基体20’の上面21’に活性物質含有塊24’が適用される。活性物質含有塊24’は、上面21’に直接適用される。したがって、活性物質24’は、第2のローラ27’の表面には接触しない。第2のローラ27’によって、コーティングされた基体20’は、適用された活性物質含有塊24’とともに、中間積層体30’として、たとえばさらなる輸送ローラ29’へと案内される。こうして、基体20’の面密度に関する変動は、中間積層体30’または口腔用活性物質積層体全体の変動の形に直接影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】EP1087759B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、活性物質含有層が基体の面密度、基体の層の厚さ、または層の厚さの変動に関係なく製造または適用される、特に口腔用である、活性物質積層体の製造方法を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、上述の目的は、請求項1の主題による、特に口腔用である活性物質積層体の製造方法、および、請求項13の主題による、特に口腔用活性物質積層体である活性物質積層体について達成される。
【0014】
本発明は、基体上に配置された少なくとも1つの活性物質含有層を有する、特に口腔用である活性物質積層体を製造する方法を示す概念に基づいている。本発明による方法は:
a)上面と下面とを有する基体を提供する工程と;
b)第1の回転ローラと第2の回転ローラによって形成された間隙内に活性物質含有塊を適用する工程と;
c)基体を、基体の上面に第2のローラによって活性物質含有塊が活性物質含有層の形態で適用されるように、第3の回転ローラによって第2のローラへと輸送する工程と;
d)基体および活性物質含有層によって形成された中間積層体を乾燥装置へと輸送する工程と;
e)中間積層体、特に活性物質含有層を乾燥させる工程と
を含む。
【0015】
本発明による活性物質含有塊は、活性物質含有層を形成するように、基体とは無関係に、第2のローラによって一定の厚さまたは一定の面密度で基体の上面に適用される。
【0016】
第1および第2のローラは、2つのローラ同士の間に垂直方向に間隙が形成されその間隙に活性物質含有塊が適用されるように、互いに隣り合って配置されることが好ましい。換言すると、活性物質含有塊は、たとえばそれが充填された容器から始まって、間隙内へと充填される。活性物質含有塊は、第2のローラに沿って垂直方向に下方に輸送される。このような輸送を確実にするために、たとえば、活性物質含有塊が第2のローラに沿って下方だけに輸送されるように第1のローラ上にスクレーパまたはドクターブレードをもたらすことができる。
【0017】
第3のローラは、第2のローラの上方または下方に配置される。基体は、前記第3の回転ローラによって第2のローラへと輸送される。基体は、ウェブの形態とすることができる。さらに、基体は、巻き上げられた状態におかれ、巻き出されて、第3の回転ローラによって第2のローラの方へと輸送されることが考えられる。第3の回転ローラは第2の回転ローラの上方または下方に配置されているので、活性物質または活性物質含有塊は、第2のローラによって基体の上面に適用される。活性物質または活性物質含有塊は、まず、一定の厚さで、第2の回転ローラの表面に適用され、ローラ表面によって輸送される。したがって、活性物質または活性物質含有塊は、容器から基体に直接的には適用されないが、ローラ表面上にある活性物質を基体の上面上に押し付けることによって間接的に適用される。
【0018】
活性物質は、活性物質含有塊中に溶解した形態で存在することが好ましい。活性物質含有塊は、エマルジョン形態で存在することができる。活性物質は、活性物質含有塊中に分散した形態で存在することもできる。
【0019】
活性物質含有塊は、溶媒を含むことが好ましい。溶媒は、活性物質含有塊の流動性を確実にする。溶媒は、工程e)、特に乾燥工程で除去されることが好ましい。換言すると、中間積層体、特に活性物質含有層は、溶媒の除去によって乾燥される。水以外に、他の溶媒、たとえばメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール、またはたとえば水-アルコール混合物である溶媒混合物も使用することができる。
【0020】
基体は、本発明による方法によって十分な医薬活性物質でコーティングされる基体を意味するものと理解されよう。基体がある割合の任意の種類の活性物質を含んでもよいことを除外すべきではない。基体は、活性物質を含まなくても、活性物質を含んでもよい。最も単純な場合、基体は、活性物質を含まないセルロースからなってよい。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態では、基体は、表1に示される組成を有する。表中の含量は、製造予定の液体質量150gの基体の製造に基づくものである。
【0022】
【表1】
【0023】
基体は、適用された活性物質、すなわち形成された活性物質含有層とともに中間積層体を形成する。
【0024】
基体は、その下面でキャリアフィルムに、特に解放可能に連結される。キャリアフィルムは、たとえば、プロセスフィルム(process film)として使用され、それによって本発明による方法は簡素化されたやり方で実施することが可能になる。特に、コーティングされた基体または中間積層体の輸送がキャリアフィルムによって容易になる。
【0025】
活性物質非含有基体は、2つの、活性物質非含有層および/または活性物質含有層によって形成される。この場合、たとえば、第1の活性物質非含有層は、基体の上面を形成し、第2の層は、基体の下面を形成する。少なくとも1つのさらなる活性物質非含有層または活性物質含有層を第1の層と第2の層との間に形成することも可能である。
【0026】
たとえば、活性物質含有層の活性物質は、ナロキソンおよび/またはフェンタニルであってよい。
【0027】
活性物質含有層は、粘膜粘着層とすることができる。本発明の好ましい一実施形態では、活性物質含有層または粘膜粘着層は、表2に示される組成を有する。表中の含量は、製造予定の液体質量65kgの活性物質含有層または粘膜粘着層の製造に基づくものである。
【0028】
【表2】
【0029】
記載のマトリックス材料は、水と接触したときに膨張する水溶性ポリマーまたはポリマー、たとえばセルロースおよび/またはその誘導体とすることができる。
【0030】
第1のローラ、第2のローラおよび第3のローラは、同じ回転方向に回転する。換言すると、第1、第2および第3のローラは、同時に時計回り方向に、または同時に反時計回り方向に回転する。
【0031】
第1の回転ローラの回転速度は、0.0m/分~0.5m/分、特に0.1m/分~0.3m/分とすることができる。第1の回転ローラの回転速度は、記載の値範囲内の値を有し、本発明による方法の間、一定のままにあることが好ましい。第2の回転ローラの回転速度は、0.8m/分~2.3m/分、特に1.0m/分~1.5m/分とすることができる。第2の回転ローラの回転速度は、記載の値範囲内の値を有し、本発明による方法の間、一定のままにあることが好ましい。第3の回転ローラの回転速度は、0.5m/分~1.5m/分、特に0.7m/分~1.0m/分とすることができる。第3の回転ローラの回転速度は、記載の値範囲内の値を有し、本発明による方法の間、一定のままにあることが好ましい。
【0032】
上記の回転速度で、活性物質含有層に関して特に一様な面密度が、基体、特に第1の活性物質非含有層に適用されることが分かった。
【0033】
第1の回転ローラと第2の回転ローラとの間の間隙の幅は、0.2mm~0.9mm、特に0.6mmとすることができる。間隙の幅は、本発明による方法の間、一定であり、記載の値範囲内の値を有することが好ましい。
【0034】
このような間隙サイズを用いれば、活性物質含有層での基体の特に一様なコーティングが可能になることが分かった。
【0035】
中間積層体は、乾燥装置へと輸送され、その乾燥装置内で、30℃~120℃、特に60℃~90℃、特に75℃の温度の作用を受ける。
【0036】
中間積層体は、「ウェブ速度」として知られる速度、0.7m/分~0.9m/分、特に0.8m/分で輸送されることが好ましい。ウェブ速度は、プロセス速度である。ウェブ速度は、製造される活性物質積層体の輸送速度と呼ぶこともできる。この速度は、方法全体の間中、同じであり、記載の値範囲内の値を有する。
【0037】
中間積層体がこのような温度の作用を受けると、活性物質含有層上に形成される表面に関して特に平坦または滑らかな結果をもたらす中間積層体が製造される。
【0038】
乾燥装置は、たとえば、乾燥チャネルとすることができる。乾燥チャネルは、複数のゾーン、特に複数の温度ゾーンを有することができる。乾燥チャネルは、少なくとも2つの、特に少なくとも3つ、特に少なくとも4つ、特に少なくとも5つ、特に少なくとも10個、特に少なくとも13個の乾燥ゾーンを有することが好ましい。乾燥ゾーンの数を多くするほど、中間積層体をより速く乾燥させることができるようになる。したがって、乾燥ゾーンの数を多くするほど、方法をより速く実行することができるようになる。
【0039】
乾燥装置は、中間積層体が、加熱空気によって30℃~120℃、特に60℃~90℃、特に75℃の温度の作用を受けるように、少なくとも1つの空気ジェットを有することができる。
【0040】
乾燥装置が複数の乾燥ゾーンのある乾燥チャネルである場合、乾燥装置は、複数の空気ジェットを有することができ、その場合、空気ジェットの加熱空気が異なる温度を生成する。中間積層体は、はじめに乾燥チャネルの低い温度の乾燥ゾーン内で乾燥され、乾燥チャネルを通してより高い温度の乾燥ゾーン内へとさらに進められることが好ましいこともある。
【0041】
本発明による方法のさらなる好ましい一実施形態では、中間積層体は、活性物質含有層が少なくとも1つの空気ジェットの方向に向くようにして乾燥チャネル内へと導入される。
【0042】
たとえば、少なくとも1つの空気ジェットは、活性物質含有層の上方に配置される。したがって、活性物質含有層は、上から温風の作用を受ける。したがって、活性物質含有層は、直接、基体の下面よりも高い温度の作用を受ける。
【0043】
一代替実施形態では、乾燥装置、特に空気ジェットを、基体の下方に配置することも可能である。
【0044】
本発明のさらなる一実施形態では、方法は、さらに、
f)乾燥済み中間積層体を積層ローラ(laminating roller)に案内し、活性物質積層体を形成する工程
を特徴とする。
【0045】
2本の積層ローラは、反対方向または2つの異なる回転方向に回転することが好ましい。その結果、中間積層体は強化される。2本の積層ローラを加熱してもよい。
【0046】
さらなる工程は、
g)乾燥済み中間積層体を巻き上げる、すなわち活性物質積層体を巻き上げる
工程に関する。
【0047】
巻き上げられた形態で、活性物質積層体は、さらなる装置へと輸送される。さらに、巻き上げられた乾燥済みの活性物質積層体は、別の運転施設で使用することも可能である。
【0048】
本発明の一実施形態では、さらなる方法工程、特に、
h)活性物質積層体を巻き出す工程と;
i)場合により、キャリアフィルムを除去する工程と;
j)活性物質積層体を多数の活性物質積層体部分に分割する工程と
が実行される。
【0049】
あるいは、キャリアフィルムは、工程g)の前、すなわち活性物質積層体を巻き上げる前にすでに活性物質積層体から除去しておくことも可能である。活性物質積層体は、たとえば切断および/またはパンチングおよび/または穿孔、およびその後の引き裂きによって、多数の活性物質積層体部分に分割することができる。個々の活性物質積層体部分は、包装することができる即時利用可能な口腔用活性物質積層体または口腔用活性物質フィルムを形成する。
【0050】
口腔用活性物質積層体における一定かつ正確な活性物質の含有量は、本発明による方法を用いてもたらされる。特に、活性物質含有層を、一定かつ正確な厚さまたは一定かつ正確な面密度で、活性物質非含有基体または活性物質含有基体に適用することが可能である。
【0051】
原理上は、活性物質含有層をキャリアに直接コーティングし、次いで、その活性物質含有層上に活性物質非含有層をコーティングすることが可能であるはずである。しかし、コーティングの順序を変更すると、活性物質含有層が、乾燥チャネル内に何度も案内されなければならないことになる。状況によっては、活性物質は、高温に耐えられないこともあり、したがって、上述した方法工程の順序は最適であると考えられる。
【0052】
本発明の第2の態様は、特に説明の本発明による方法を用いて製造された、基体上に配置された少なくとも1つの活性物質含有層を有する活性物質積層体、特に口腔用活性物質積層体に関する。
【0053】
本発明の特に好ましい実施形態では、活性物質積層体は、口腔用活性物質積層体である。
【0054】
口腔用活性物質積層体を表す類語またはさらなる用語は、たとえば、薄フィルム、口腔用フィルム、ウエハ、口腔用ストリップ、口腔内分散性フィルム、口腔用薄フィルム、口腔用可溶性フィルム、溶解性フィルム(dissofilms)、頬側可溶性フィルム、粘膜粘着フィルム、頬側フィルムおよび経粘膜フィルムである。本発明による口腔用活性物質積層体は、記載のフィルム/積層体のうちの1つとして形成される。
【0055】
活性物質含有層は、口腔用活性物質積層体の2つの外面のうちの少なくとも一方を形成する。基体は、活性物質を含まない、または活性物質を含んでもよい。
【0056】
活性物質非含有基体は、単に本発明による方法によって十分な医薬活性物質でコーティングされる基体を意味すると理解されよう。基体がある割合の任意の種類の活性物質を含んでもよいことを除外すべきではない。
【0057】
本発明によれば、活性物質含有層は、基体の厚さおよび/または面密度に関係なく、一定の面密度を有する。
【0058】
活性物質は、医薬活性物質、特に鎮痛剤、特にフェンタニルおよび/もしくはブプレノルフィン、ならびに/またはオピオイド拮抗薬とすることができる。オピオイド拮抗薬は、好ましくは、ナロキソンとすることができる。ブプレノルフィンは、塩または塩基の形態で存在することが好ましい。
【0059】
活性物質含有層の面密度は、40g/m~100g/m、特に50g/m~70g/m、特に55g/m~65g/m、特に60g/mとすることができる。
【0060】
基体は、たとえば1つの層から形成される。基体は、好ましくは、少なくとも2つの層から形成される。この少なくとも2つの層は、活性物質非含有層および/または活性物質含有層とすることができる。
【0061】
基体、および/または基体の特に活性物質を含まない少なくとも1つの層は、水および/または水溶性材料と接触したときに膨張するポリマーおよび/または材料からなってよい。基体の好ましい組成に関しては表1を参照されよう。
【0062】
特に活性物質を含まない基体の面密度は、100g/m~300g/m、特に240g/m~280g/m、特に250g/m~270g/m、特に262g/mとすることができる。
【0063】
特に活性物質を含まない、各層の面密度は、80g/m~180g/m、特に100g/m~160g/m、特に120g/m~140g/m、特に131g/mとすることができる。
【0064】
キャリアフィルムは、特に活性物質を含まない、基体の、活性物質含有層の反対の面上に形成される。
【0065】
使用のとき、活性物質積層体または形成済み口腔用薄フィルムの活性物質含有層を、使用者の口腔粘膜に粘着させる。換言すると、口腔用薄フィルムを、口腔粘着に基づいて粘着させる。活性物質含有層の活性物質は、口腔粘膜を介して使用者に吸収される。活性物質含有層または粘膜粘着層の好ましい組成に関しては、表2を参照されよう。
【0066】
活性物質含有塊の粘度は、30dPas~60dPas、特に40dPas~50dPas、特に45dPasとすることができる。
【0067】
活性物質非含有塊の粘度は、150dPas~250dPas、特に180dPas~230dPas、特に200dPasとすることができる。活性物質非含有塊は、基体の活性物質非含有層を製造するのに使用することができる。
【0068】
本明細書の以下において、添付の概略図を参照して、本発明を例示的な実施形態に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】従来技術による口腔用薄フィルムの断面図である。
図2】従来技術から既知のコーティング方法についての概略図である。
図3】本発明による方法についての概略図である。
図4】本発明による口腔用活性物質積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下の説明では、同様および均等の部材に対して同様の参照符号を使用している。
【0071】
図3は、本発明による、口腔用活性物質積層体の製造方法のプロセスを概略的に示している。特に、図面には、本発明による方法の個々のステーション(stations)が示されている。
【0072】
上面21および下面22を含む、特に活性物質を含まない、基体20は、巻き上げられた形態で提供される。さらに、図面では、活性物質含有塊24が入った容器23を見ることができる。活性物質含有塊24は、間隙25へと輸送される。間隙25は、第1の回転ローラ26と第2の回転ローラ27によって形成される。第1の回転ローラ26と第2の回転ローラ27との間の間隙25の幅は、たとえば、0.6mmである。
【0073】
第1の回転ローラ26および第2の回転ローラ27は、互いにほぼ隣り合って特に平行に水平方向に配置され、したがって実質的に垂直方向に延びる間隙25が形成される。第3の回転ローラ28は、第2の回転ローラ27の垂直方向の上方に配置される。方法の一代替実施形態では、第3の回転ローラ28は、第2の回転ローラ27の下方に位置することもできる。
【0074】
活性物質含有塊24が第2のローラ27に沿って第3のローラ28の方向に輸送されることを確実にするために、第1の回転ローラ26上にはドクターブレードまたはスクレーパ(図示せず)が形成される。基体20は、活性物質が第2のローラ27の表面から基体20の上面21に適用されるように、第3の回転ローラ28によって第2の回転ローラ27へと輸送される。
【0075】
第1のローラ26の回転方向R、第2のローラ27の回転方向Rおよび第3のローラ28の回転方向Rは、一致する。したがって、回転方向R、RおよびRは同じである。記載例における回転速度は、第1のローラ(26)が0.0m/分~0.5m/分、第2のローラ(27)が0.8m/分~2.3m/分、第3のローラ(28)が0.5m/分~1.5m/分である。第1のローラ26、第2のローラ27および第3のローラ28の回転速度は、記載の値範囲内の値を有し、本発明による方法の実施の間、すべての回転速度は一定である。
【0076】
基体20および活性物質含有層31によって形成される中間積層体30は、輸送ローラ29によって乾燥装置40へと輸送される。乾燥装置40は、たとえば、5つの乾燥ゾーン41がある乾燥チャネルである。各乾燥ゾーンは、空気ジェット42を有する。空気ジェット42によって、5つの乾燥ゾーン41で異なる温度が利用可能となり、したがって、中間積層体30は、異なる乾燥ゾーン41内で30℃~120℃の範囲内にある異なる温度の作用を受ける。
【0077】
中間積層体30は、活性物質含有層31が空気ジェット42の方に向くようにして、乾燥装置40内で輸送される。基体20は、空気ジェット42から離れた方に向くように配置される。
【0078】
乾燥装置40を通過後、乾燥済み中間積層体32がもたらされる。この乾燥済み中間積層体32は、輸送ローラ29によって、積層ローラ45、45’へと輸送される。積層ローラ45は、回転方向Rを有し、ここでは時計回り方向に回転する。積層ローラ45’は、図示の例では反時計回りである回転方向Rを有する。したがって、RおよびRの回転方向は同じではない。
【0079】
積層ローラ45、45’を通過後、乾燥され強化された中間積層体、すなわち活性物質積層体33がこうしてもたらされる。この乾燥済み活性物質積層体33は、巻き上げられ、したがって、巻き上げられた活性物質積層体34が提供される。
【0080】
図4には、本発明による口腔用活性物質積層体100の断面が示されている。
【0081】
図面にはキャリアフィルム50が見えるが、これは、単に本発明による方法の中間工程での口腔用活性物質積層体100の一部にすぎない。最終製品は、キャリアフィルム50を有さない。
【0082】
基体20は、特に第1の活性物質非含有層61および第2の活性物質非含有層62である、2つの活性物質非含有層によって形成される。第1の活性物質非含有層61の下面は、基体20の下面22を形成する。第2の活性物質非含有層62の上面は、基体20の上面21を形成する。あるいは、基体20は、活性物質含有層によって形成してもよい。さらに、基体20は、少なくとも1つの活性物質含有層および少なくとも1つの活性物質非含有層によって形成してもよい。
【0083】
活性物質含有層31は、基体20の上面21に適用される。
【0084】
活性物質含有層31の活性物質は、鎮痛剤、特にフェンタニルおよび/もしくは特に塩基もしくは塩として存在するブプレノルフィン、ならびに/または、オピオイド拮抗薬、特にナロキソンとすることができる。一方、活性物質非含有層61、62は、水および/または水溶性材料と接触したときに膨張するポリマーおよび/または材料から形成される。
【0085】
活性物質含有層31の面密度は、たとえば60g/mである。一方、各活性物質非含有基体層61、62の面密度は、120g/m~140g/mである。
【符号の説明】
【0086】
10 製品
11 キャリアフィルム
12 マトリックス
13 表面
14 下面
15 小滴
20、20’ 基体
21、21’ 上面
22、22’ 下面
23、23’ 容器
24、24’ 活性物質含有塊
25、25’ 間隙
26、26’ 第1の回転ローラ
27、27’ 第2の回転ローラ
28 第3の回転ローラ
28’ 輸送ローラ
29、29’ 輸送ローラ
30、30’ 中間積層体
31 活性物質含有層
32 乾燥済み中間積層体
33 活性物質積層体
34 巻き出される活性物質積層体
40 乾燥装置
41 乾燥ゾーン
42 空気ジェット
45、45’ 積層ローラ
50 キャリアフィルム
61 基体の第1の層
62 基体の第2の層
100 口腔用活性物質積層体
第1のローラの回転方向
第2のローラの回転方向
第3のローラの回転方向
積層ローラ45の回転方向
積層ローラ45’の回転方向
図1
図2
図3
図4