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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】シートカバーの取付構造
(51)【国際特許分類】
   B68G 7/052 20060101AFI20230323BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B68G7/052 Z
A47C31/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020002614
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2021108944
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰成
(72)【発明者】
【氏名】野口 和男
(72)【発明者】
【氏名】黒部 亮
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-111081(JP,A)
【文献】特開2015-016537(JP,A)
【文献】特許第2509797(JP,B2)
【文献】特開2018-202672(JP,A)
【文献】特開平11-113690(JP,A)
【文献】特開2009-300087(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107071(WO,A1)
【文献】米国特許第09913551(US,B1)
【文献】特開2005-317125(JP,A)
【文献】特表平09-500999(JP,A)
【文献】特表2002-527026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 7/052
A47C 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体に埋設される本体側部材と、
シートカバーを前記シート本体に取り付けるために前記シートカバーに備えられた接続部材に取り付けられるカバー側部材と、を有し、
前記カバー側部材が、前記接続部材に取り付けられるカバー側第一部材と、このカバー側第一部材に取り付けられて前記本体側部材に接着された金属製のカバー側第二部材と、を有し、
前記本体側部材と前記カバー側部材とが磁力で接着され、当該磁力における正極と負極とが、前記シート本体の幅方向に並べられ
前記カバー側第二部材のうち、前記カバー側第一部材の側面に取り付けられた側板部が、前記正極と前記負極とに跨っており、
前記正極から前記負極に向かう磁力線が前記側板部を磁路とし、磁場が前記側板部内に形成された、
ことを特徴とするシートカバーの取付構造。
【請求項2】
同一形状の磁性体を二つ有し、前記正極を一方の前記磁性体の上面とし、前記負極を他方の前記磁性体の上面として、前記磁性体が並べられた、
ことを特徴とする請求項1に記載されたシートカバーの取付構造。
【請求項3】
前記側板部に形成された孔が、前記カバー側第一部材の係合突部と係合する凸孔と、この凸孔の下方に連なって当該凸孔よりも大きな係合孔部と、から構成された
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたシートカバーの取付構造。
【請求項4】
前記本体側部材が、前記シート本体に接続される接続部を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載されたシートカバーの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等のシートにカバーが取り付けられる際のシートカバーの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のシートにシートカバーが取り付けられる際、下記特許文献1に記載されたシートカバーの取付構造が採られている。このシートカバーの取付構造によれば、永久磁石がシートに埋設され、この永久磁石を介してシートカバーがシート本体に接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-111081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたシートカバーの取付構造では、永久磁石の磁場が、シート本体の表面側に発生した場合に、例えば、搭乗者の有する磁気カードやペースメーカー等の電子機器に影響を及ぼす可能性がある。仮に、シート本体の表面側に磁場が発生しない程度に、磁力を弱くすれば、シートカバーとシート本体との接着の度合いが弱まる。
【0005】
本発明は、この様な実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、磁場がシートの表面側に形成されるのを極力抑えることができるシートカバーの取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るシートカバーの取付構造は、シート本体に埋設される本体側部材と、シートカバーを前記シート本体に取り付けるために前記シートカバーに備えられた接続部材に取り付けられるカバー側部材と、を有し、前記本体側部材と前記カバー側部材とが磁力で接着され、当該磁力における正極と負極とが、前記シート本体の幅方向に並べられた、ことを特徴とする。
【0007】
本発明に係るシートカバーの取付構造は、複数の磁性体を有し、前記シート本体の幅方向に隣接した前記磁性体の磁極が互いに反転する向きで、前記磁性体が並べられた、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るシートカバーの取付構造は、前記カバー側部材が、前記接続部材に取り付けられるカバー側第一部材と、このカバー側第一部材に取り付けられて前記本体側部材に接着された金属製のカバー側第二部材と、を有し、前記カバー側第二部材のうち、前記カバー側第一部材の側面に取り付けられた側板部が、前記正極と前記負極とに跨っている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るシートカバーの取付構造は、前記本体側部材が、前記シート本体に接続される接続部を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るシートカバーの取付構造は、シート本体に埋設される本体側部材と、シートカバーをシート本体に取り付けるためにシートカバーに備えられた接続部材に取り付けられるカバー側部材とを有し、本体側部材とカバー側部材とが磁力で接着され、当該磁力における正極と負極とが、前記シート本体の幅方向に並べられている。すなわち、一般的に、磁力線は正極から負極に向かうため、正極と負極とがシート本体の幅方向に並べられれば、磁力線の向きも、当該幅方向となる。換言すれば、磁場は、本体側部材への埋設部位からシートカバーの表面側に分布するのではなく、埋設部位においてシートカバーの幅方向に分布する。したがって、磁場がシート本体の表面側に形成されるのを極力抑えることができ、また、磁場を、シート本体の表面側に張り出さない範囲で形成することもできる。なお、仮に、正極と負極とがシート本体から深さ方向に揃えられていた場合、正極から生じた磁力線が、シートカバー側に向かうため、磁場は、本体側部材への埋設部位からシートカバーの表面側に分布する可能性がある。
【0011】
本発明に係るシートカバーの取付構造は、複数の磁性体を有し、シート本体の幅方向に隣接した磁性体の磁極が互いに反転する向きで、磁性体が並べられている。すなわち、例えば、一方の磁性体は、正極が上、負極が下に向けられ、他方の磁性体は、負極が上、正極が下に向けられれば、両磁性体は、磁極が反転した状態で隣接することとなる。磁力線は、一方の磁性体の正極から他方の磁性体の負極に向かうため、磁場がシート本体の表面側に形成されるのを極力抑えることができ、また、磁場を、シート本体の表面側に張り出さない範囲で形成することもできる。
【0012】
本発明に係るシートカバーの取付構造は、カバー側部材が、接続部材に取り付けられるカバー側第一部材と、このカバー側第一部材に取り付けられて本体側部材に接着された金属製のカバー側第二部材とを有し、カバー側第二部材のうち、カバー側第一部材の側面に取り付けられた側板部が、正極と前記負極とに跨っている。すなわち、正極から負極に向かう磁力線は、各磁極に跨る金属製の側板部を磁路とするため、原則として、磁場は側板部内に発生する。したがって、磁場を、シート本体の表面側に張り出さない範囲で形成することができる。なお、仮に、側板部が、正極のみ、負極のみに配置されていた場合、磁力線が側板部を介して上端から発散し、磁場が減衰し、また、シートカバーの表面側に磁場が分布する可能性がある。
【0013】
本発明に係るシートカバーの取付構造は、本体側部材が、シート本体に接続される接続部を有している。したがって、例えば、複数の孔や凹凸が形成された本体側部材が、発泡させたポリウレタン原料等に埋設され、ポリウレタン原料が硬化することで、孔や凹凸の周囲に複雑に嵌合させる方法と比較して、本体側部材をシート本体に、簡便に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係るシートカバーの取付構造が備えられたシートの外観斜視図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係るシートカバーの取付構造がシートに備えられた状態の断面であり、図1におけるI-I断面拡大図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態に係るシートカバーの取付構造の外観斜視図である。
図4図4は、本発明の第一実施形態に係るシートカバーの取付構造の外観前面図である。
図5図5は、本発明の第一実施形態に係るシートカバーの取付構造の分解斜視図である。
図6図6は、本発明の第一実施形態に係るシートカバーの取付構造の作用を説明するための説明図である。
図7図7は、本発明の第一実施形態に係るシートカバーの取付構造の動作状態における側面図である。
図8図8は、本発明の第二実施形態に係るシートカバーの取付構造の作用を説明するための説明図である。
図9図9は、本発明の第三実施形態に係るシートカバーの取付構造における本体側部材の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の第一実施形態に係るシートカバーの取付構造(以下、シートカバーの取付構造を「取付構造」と記す。)を図面に基づいて説明する。図1は、取付構造1が備えられたシート2が示され、図2は、取付構造1がシート2に備えられた状態の一部断面が示されている。図3及び4は、取付構造1の全体が示されている。図5は、取付構造1が分解されて示されている。なお、以下の説明では、図1に示されているとおり、シート2の正面を前方(Front)とし、シート2の背面を後方(Back)とし、シート2の側面を側方(Rigth Side,Left Side)とし、シート2の高さ方向を上方(Up)または下方(Down)とする。
【0016】
図1に示されているとおり、シート2は、シート本体3に、皮革などのシートカバー4が被せられたものであり、シートクッション5、シートバック6およびヘッドレスト7等から構成されている。シート本体3は、例えばポリウレタン原料等が発泡して硬化したものであり、金属製の成形型(図示省略。)で成形される。シートカバー4は、例えば、天然皮革、人工皮革、合成皮革などである。図2に示されているとおり、シートカバー4は、接続部材としての吊り綿布9が裏面側に縫合されている。吊り綿布9は、シートカバー4をシート本体3に取り付けるために用いられ、下端に端部材10が取り付けられている。端部材10は、吊り綿布9の下端に挟められ、前後に向けて長手の棒状である(図3参照。)。端部材10の外周面は、ほぼ“U”字状に形成されている。端部材10は樹脂製であり、例えばポリプロピレンなどが押出成形されて製造される。
【0017】
取付構造1は、シートカバー4をシート本体3に取り付ける際、シートクッション5やシートバック6の溝部8に用いられる。詳説すれば、取付構造1は、シート本体3に埋設された本体側部材20と、吊り綿布9及び端部材10を介してシートカバー4に取り付けられたカバー側部材40とから構成されている。本体側部材20は、磁性体としての永久磁石11と、この永久磁石11が係合されたブラケット21とから構成されている。カバー側部材40は、端部材10に取り付けられたカバー側第一部材としての樹脂クリップ41と、この樹脂クリップ41の外側に取り付けられたカバー側第二部材としての金属クリップ50とから構成されている。
【0018】
図3ないし5に示されているとおり、樹脂クリップ41は、前後から視して、ほぼ“U”字状であり、端部材10が密着して収まる大きさに形成されている。詳説すれば、樹脂クリップ41は、下面である下面部42と、この下面部42の両側端から上方に連接されると共に、互いに対面した一対の側面部43とから構成されている。樹脂クリップ41は、例えばポリアセタールなどによって成形されている。
【0019】
側面部43の中央は、一部が切り欠かれ、互いに対面する側である内側に向けたフック状の端部材係止部44が形成されている。端部材係止部44は、側面部43の一部であって、下端である基部45のみが側面部43に連接され、他の周囲が側面部43から切り離されている。端部材係止部44は、基部45を支点として弾性変形する。端部材係止部44の上端は、フック状である。側面部43の縁は、互いに対面する側の反対側である外側に向けて張り出したフランジ部46が形成されている。フランジ部46は、側面部43の上端から前後端に渡って、縁に沿って連接されている。側面部43のうち、外側である外面部は、係合突部47および押圧突部49が形成されている。係合突部47は、端部材係止部44のほぼ中央に形成され、外側に突起傾斜面48が形成されている。係合突部47の上端は、上方に向けて湾曲している。突起傾斜面48は、下方から上方に向かうにしたがって、外側に向けて徐々に隆起して傾斜している。押圧突部49は、係合突部47の前後に間を空けてそれぞれ形成されている。押圧突部49は、上下方向に向けて長手である。
【0020】
金属クリップ50は、薄板状であると共に、前後から視して、ほぼ“U”字状であり、樹脂クリップ41が隙間を空けて収まる大きさに形成されている。詳説すれば、金属クリップ50は、下面である下板部51と、この下板部51の両側端から上方に連接されると共に、互いに対面した一対の側板部52とから構成されている。金属クリップ50は、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどの金属の他、クロム系ステンレスなどの合金によって形成されている。すなわち、金属クリップ50は、永久磁石11と接着する素材で形成され、かつ、板バネとして作用する。
【0021】
側板部52は、側方から視して、ほぼ四角形に形成され、ほぼ中央に、係合孔部53が形成されている。係合孔部53は、ほぼ四角形であり、かつ、上端の一部に、上方に向けて湾曲した凸状の凸孔54が連接されている。側板部52は、樹脂クリップ41の側面部43と対面してフランジ部46の内側に収まる大きさであり、凸孔54は、樹脂クリップ41における係合突部47の上端と係合する大きさである。
【0022】
永久磁石11は、二つ一組で構成され、個々は直方体である。永久磁石11は、隣接した第一永久磁石12及び第二永久磁石13の磁極が互いに反転する向きで並べられている。詳説すれば、第一永久磁石12は、上面側が正極N(N極)であり、下面側が負極S(S極)である。一方で、この第一永久磁石12に隣接した第二永久磁石13は、磁極が第一永久磁石12の磁極と反転する向きで並べられ、すなわち、上面側が負極S(S極)であり、下面側が正極N(N極)である。なお、永久磁石11の形状は任意であるが、磁力による接着の度合いを強くするため、金属クリップ50の下板部51と接触する面積が、可能な限り大きいことが好ましい。
【0023】
ブラケット21は、ほぼ長方形に形成されたベース部22と、このベース部22の上部に形成された磁石取付部23と、ベース部22の下部に形成されたシート本体接続部28とを有している。
【0024】
磁石取付部23は、ベース部22における長辺側の端から上方に向けて立ち上げられて互いに対面した一対の第一係止片24と、この第一係止片24の全長方向の後方端に連接された留片26と、第一係止片24の全長方向の前方端側においてベース部22に形成された第二係止片25とから構成されている。第一係止片24の上端は、互いに対面する側である内側に向けたフック状に形成されている。第二係止片25は、ベース部22の一部が切り欠かれたことで、ベース部22と同一面上においてベース部22の一部に形成され、上方に向けてフック状に形成されている。磁石取付部23は、各片24,25,26で囲まれた被取付空間27を有し、この被取付空間27は、永久磁石11が密着して収まる大きさである。なお、ベース部22の形状は任意であり、例えば、正方形や三角形などの多角形、円形などであってもよい。
【0025】
図5に示されているとおり、シート本体接続部28は、基台部29と、フック状の接続本体部30とを有している。基台部29は、ベース部22の下面から下方に向けて張り出して互いに対面した一対の第一接続片31と、この第一接続片31の下端同士と連接された底部接続片32と、各片31,32で囲まれた内側において各片に連接した平坦なリブ部37とから構成されている。底部接続片32の中央は、上方に向けて隆起した隆起部33を有している。接続本体部30は、底部接続片32の下面から下方に向けて張り出して互いに対面した一対の第二接続片34を有している。第二接続片34の下端は、互いに対面する側である内側に向けたフック状に形成されている。フック状の先端である先端部35は、底部接続片32の隆起部33に向けられ、先端部35と隆起部33との間にワイヤー接続空間36が形成されている。
【0026】
上記した各部は、次のとおり組み立てられる。
【0027】
図5において、金属クリップ50が樹脂クリップ41に取り付けられる際、金属クリップ50と樹脂クリップ41とが上下方向において相対的に近づけられ、金属クリップ50の側板部52が樹脂クリップ41における側面部43の押圧突部49と対面して摺動する。その際、側板部52の上端が係合突部47の突起傾斜面48に沿って移動することで、金属クリップ50と樹脂クリップ41とが上下方向に近づくにしたがって側板部52が弾性変形して徐々に広げられる。側板部52の凸孔54に、側面部43の係合突部47が挿入されると、側板部52が復元力によって元の状態に戻ると共に、樹脂クリップ41が側板部52によって挟まれる。このようにして、金属クリップ50と樹脂クリップ41とが係合する(図3参照。)。
【0028】
この状態で、図3及び4に示されているとおり、樹脂クリップ41と金属クリップ50とは、隙間X~Xを介して係合している。詳説すれば、樹脂クリップ41の係合突部47が金属クリップ50の凸孔54に挿入された状態において、係合突部47と金属クリップ50の係合孔部53との間に隙間Xが空けられている。金属クリップ50の上端と樹脂クリップ41のフランジ部46との間に隙間Xが空けられている。金属クリップ50の下板部51と樹脂クリップ41の下面部42との間に隙間Xが空けられている。
【0029】
端部材10が樹脂クリップ41に取り付けられる際、端部材10と樹脂クリップ41とが上下方向において相対的に近づけられ、樹脂クリップ41の側面部43が端部材10の外周面と対面して摺動する。その際、側面部43の端部材係止部44が端部材10の外周面に沿って移動することで、端部材10と樹脂クリップ41とが上下方向に近づくにしたがって端部材係止部44が弾性変形して徐々に広げられる。端部材10が樹脂クリップ41の下面部42に到達すると、端部材係止部44が復元力によって元の状態に戻ると共に、端部材係止部44によって端部材10が挟まれ、端部材10の上端部に係止する。このようにして、端部材10と樹脂クリップ41とが係合する。
【0030】
なお、樹脂クリップ41、金属クリップ50および端部材10同士が取り付けられる順番は任意である。したがって、上記したとおり、樹脂クリップ41と金属クリップ50とを係合させた後に、端部材10と樹脂クリップ41とを係合させてもよく、また、端部材10と樹脂クリップ41とを係合させた後に、樹脂クリップ41と金属クリップ50とを係合させてもよい。
【0031】
永久磁石11は、ブラケット21の全長方向にスライドして本体側部材20の磁石取付部23に取り付けられる。詳説すれば、永久磁石11は、後方端が留片26に当たるまで磁石取付部23に挿入されると、前方端が第二係止片25に係止される。同時に、永久磁石11が第一係止片24に係止される。
【0032】
この状態で、本体側部材20は、図2に示されているとおり、シート本体3に埋められてシートワイヤーに係止される。シートワイヤーは、シート本体3の成形型に予め設置される。成形型には、例えば、ポリウレタン原料等が流し込まれ、所定の行程を経てポリウレタン原料が発泡して硬化する。本体側部材20の接続本体部30は、硬化したポリウレタン原料に差し込まれ、シートワイヤーが先端部35に係止されてワイヤー接続空間36に配置される。このようにして、シート本体3に本体側部材20が埋め込まれて取り付けられる。
【0033】
上記のとおり構成された取付構造1は、図2に示されているとおり、シートカバー4がシート本体3に取り付けられる際、カバー側部材40が、本体側部材20に、磁力によって接着されて取り付けられる。詳説すれば、カバー側部材40における金属クリップ50の下板部51が、本体側部材20における永久磁石11の上面に接着される。この状態において、各永久磁石12,13は、シート本体3の幅方向に隣接して並べられている。すなわち、シートカバー4が伸びた方向に向けて並べられ、各永久磁石12,13からシートカバー4までの深さは、ほぼ同じである。なお、シート本体3の幅方向とは、シート本体3が伸びた方向をいい、例えば、図1において、シートクッション5では、左右側方向、前後方向等、座面が広がる方向である。また、例えば、シートバック6では、左右側方向、上下方向等、背もたれ面が広がる方向である。
【0034】
次に、取付構造1の効果を、磁場の状態と共に図面に基づいて説明する。図6は、側面から視した取付構造1と磁場の状態が示されている。図7は、側面から視した取付構造1の動作が示されている。
【0035】
図6に示されているとおり、永久磁石11は、上面において、第一永久磁石12の正極Nと第二永久磁石13の負極Sとが側方に向けて並べられ、一方で、下面において、第一永久磁石12の負極Sと第二永久磁石13の正極Nとが側方に向けて並べられている。この構成により、磁力線Mは正極Nから負極Sに向かうため、磁力線Mの向きは、各永久磁石12,13が並ぶ方向であって、シート本体3の幅方向となる。すなわち、磁場は、シート本体3への埋設部位からシートカバー4の上方(図6において縦方向。)に分布するのではなく、埋設部位においてシート本体3が伸びた方向(図6において横方向。)に分布する。したがって、磁場がシートカバー4の表面側に形成されるのを極力抑えることができ、また、磁場を、シートカバー4の上方に張り出さない範囲で形成することもできる。そのため、仮に、搭乗者が、磁気カードやペースメーカー等の電子機器を有していても、磁場がこれらと干渉することを防ぐことができる。
【0036】
また、上面において正極Nと負極Sとが並べられているため、上面における磁束密度が高いことから、金属クリップ50を確実に磁力で接着しつつ、永久磁石11の厚みを薄くすることができる。さらに、永久磁石11が薄ければ、磁場が生じる範囲も、永久磁石11の厚み方向において抑えられるため、磁場を、シートカバー4の上方に張り出さない範囲で形成することができる。
【0037】
図7に示されているとおり、取付構造1によれば、カバー側部材40の樹脂クリップ41は、本体側部材20に対して角度が変化し、または移動する。すなわち、例えば、搭乗者がシート2に着座し、または荷物がシート2に置かれるなど、シート2がシート本体3に向けて押圧された場合、押圧された箇所にシートカバー4が引っ張られると共に吊り綿布9が引っ張られる。そのため、カバー側部材40が、本体側部材20から離れる方向Dに荷重される。ここで、樹脂クリップ41と金属クリップ50とは、係合突部47と係合孔部53との間に隙間Xが空けられ、金属クリップ50の上端と樹脂クリップ41のフランジ部46との間に隙間Xが空けられ、金属クリップ50の下板部51と樹脂クリップ41の下面部42との間に隙間Xが空けられている(図3及び4参照。)。すなわち、樹脂クリップ41と金属クリップ50との間に、X~Xのいわゆる遊びがあるため、荷重された場合であっても、遊びの許容範囲において、樹脂クリップ41が、係合突部47を軸として、金属クリップ50に対して傾く。その際、金属クリップ50は、永久磁石11に接着したままである。したがって、シートカバー4がシート本体3から不本意に外れるのを防ぐことができる。
【0038】
また、図7に示されているとおり、樹脂クリップ41が、金属クリップ50に対して傾くと、樹脂クリップ41のフランジ部46が、金属クリップ50の縁と接触する。すなわち、金属クリップ50に対して傾いた樹脂クリップ41は、フランジ部46が金属クリップ50の縁に当たることで、一定以上の傾斜が規制される。したがって、樹脂クリップ41が金属クリップ50から外れるのを防ぐことができる。
【0039】
また、金属クリップ50の縁が、樹脂クリップ41のフランジ部46で覆われているため、吊り綿布9やシートカバー4が、金属クリップ50に擦れて破損することを防ぐことができる。
【0040】
次に、本発明の第二実施形態に係る取付構造、第三実施形態に係る取付構造を図面に基づいて説明する。図8は、側面から視した第二実施形態に係る取付構造201の磁場の状態が示されている。図9は、第三実施形態に係る取付構造の本体側部材320が示されている。なお、以下では、主に第一実施形態に係る取付構造1と異なる構成のみが説明され、取付構造1と同様の構成は、図示をもって適宜説明が省略されている。
【0041】
図8に示されているとおり、第二実施形態では、取付構造1と比較して、永久磁石11の個数が異なる。単一の永久磁石11は、上面において、正極Nと負極Sとが側方に向けて並べられ、金属クリップ50の側板部52が、正極Nと負極Sとに跨っている。すなわち、側板部52における長さ方向の向き(図8において横方向。)が、永久磁石11の正極Nと負極Sとが並ぶ方向(図8において横方向。)に揃えられている。この構成により、永久磁石11の上面側において、正極Nから負極Sに向かう磁力線Mは、各磁極に跨る側板部52を磁路とし、磁場は側板部52内に発生する。したがって、磁力線Mが上方に発散することを防ぐことができ、磁場を、シートカバー4の上方に張り出さない範囲で形成することができる。
【0042】
図9に示されているとおり、第三実施形態では、取付構造1の本体側部材20と比較して、ブラケット321の形状が異なる。ブラケット321は、ほぼ長方形に形成されたベース部322の四隅に、固定孔部355および固定突部356が形成されている。固定突部356は、ベース部322に対してほぼ直角であり、ベース部322から上方に向けて立ち上がっている。固定孔部355は、固定突部356の内側近傍においてベース部322を上下に貫通している。なお、ベース部322の下部には、シート本体接続部が形成されていない。
【0043】
ブラケット321に永久磁石11が取り付けられ、成形型の被設置部に永久磁石11の上面が接着された状態で、成形型に、ポリウレタン原料等が流し込まれると、ポリウレタン原料は、永久磁石11の上面を除いて本体側部材320の凹凸に満遍なく充填される。ポリウレタン原料は、特に、ブラケット321の固定孔部355に充填されると共に固定突部356に密着する。所定の行程を経てポリウレタン原料が発泡して硬化し、特に、固定孔部355および固定突部356の周囲において、本体側部材320が、硬化したポリウレタン原料に堅固に固着する。このようにして、本体側部材320が埋め込まれた状態のシート本体3が成形される。すなわち、固定孔部355および固定突部356の周囲において、硬化したポリウレタン原料は、本体側部材320と広い接触面積で複雑に嵌合するため、本体側部材320は、硬化したポリウレタン原料に堅固に固着する。したがって、本体側部材320をシート本体3に堅固に固定することができる。特に、シートカバー4が引っ張られると共に本体側部材320が上方に向けて引っ張られた場合に、本体側部材320とシート本体3との接触面に生じる抗力を向上させることができる。
【0044】
なお、第一実施形態でも、第二実施形態と同様に、金属クリップ50の側板部52が、第一永久磁石12の正極Nと第二永久磁石13の負極Sとに跨っている。本発明の他の実施形態では、側板部52が、第一永久磁石12の正極N又は第二永久磁石の13の負極Sにのみ跨っている。また、他の実施形態では、三個以上の磁性体を有している。また、他の実施形態では、カバー側第一部材とカバー側第二部材とが一体の金属製である。また、他の実施形態では、本体側部材と磁性体とが一体である。
【0045】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。本発明は、主に自動車のシートに用いられるが、例えば、鉄道車両、航空機、船舶などの乗り物の他、映画館やイベントホールなどの屋内施設のシートにも用いられる。
【符号の説明】
【0046】
1,201 取付構造(シートカバーの取付構造)
2 シート
3 シート本体
4 シートカバー
5 シートクッション
6 シートバック
7 ヘッドレスト
8 溝部
9 吊り綿布(接続部材)
10 端部材
11 永久磁石(磁性体)
12 第一永久磁石
13 第二永久磁石
20 本体側部材
21,321 ブラケット
22,322 ベース部
23,323 磁石取付部
24,324 第一係止片
25,325 第二係止片
26,326 留片
27,327 被取付空間
28 シート本体接続部(接続部)
29 基台部
30 接続本体部
31 第一接続片
32 底部接続片
33 隆起部
34 第二接続片
35 先端部
36 ワイヤー接続空間
37 リブ部
40 カバー側部材
41 樹脂クリップ(カバー側第一部材)
42 下面部
43 側面部
44 端部材係止部
45 基部
46 フランジ部
47 係合突部
48 突起傾斜面
49 押圧突部
50 金属クリップ(カバー側第二部材)
51 下板部
52 側板部
53 係合孔部
54 凸孔
355 固定孔部
356 固定突部
D 方向
S 負極
M 磁力線
N 正極
~X 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9