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特許7249301調整ねじ機構の固定構造及び弁装置並びに冷凍サイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】調整ねじ機構の固定構造及び弁装置並びに冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/02 20060101AFI20230323BHJP
   F25B 41/335 20210101ALI20230323BHJP
   F16B 37/06 20060101ALI20230323BHJP
   F16B 35/04 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
F16B39/02 E
F25B41/335 D
F16B37/06 P
F16B35/04 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020046191
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148151
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐一
(72)【発明者】
【氏名】當山 雄一郎
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-101472(JP,A)
【文献】特開2017-180755(JP,A)
【文献】特開2018-204840(JP,A)
【文献】特開平07-110022(JP,A)
【文献】特開平11-117929(JP,A)
【文献】特開2003-035472(JP,A)
【文献】特開2011-007355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 39/02
F25B 41/335
F16B 37/06
F16B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体の圧縮量を当該弾性体の変形方向に相互に調整可能な雄ねじ部と雌ねじ部とからなるねじ機構により調整する調整ねじ機構の固定構造であって、
前記調整ねじ機構の前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とが樹脂部材で構成され、当該雄ねじ部と雌ねじ部とが、互いに螺合部分の界面において、全周のうちの一部である一箇所のみが溶着により固定され、溶着部に対する周方向の反対側は溶着されておらず、前記雄ねじ部のねじ山の軸方向の前記弾性体側の斜面と、前記雌ねじ部のねじ山の軸方向の前記弾性体と反対側の斜面との間に隙間があることを特徴とする調整ねじ機構の固定構造。
【請求項2】
前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との螺合状態において、雌ねじ谷底の径方向隙間と雄ねじ谷底の径方向隙間の合計が、雌ねじ谷底径と雄ねじ谷底径の差の20%以上であることを特徴とする請求項1に記載の調整ねじ機構の固定構造。
【請求項3】
前記調整ねじ機構は、駆動アクチュエータが発生する荷重方向と対向する方向に荷重を発生させる前記弾性体の圧縮量を調整するよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の調整ねじ機構の固定構造。
【請求項4】
流体が流れる弁ポートの開度を弁体により制御するよう構成されるとともに、請求項の調整ねじ機構の固定構造を備えた弁装置であって、前記駆動アクチュエータの駆動力を前記弁体に伝達するよう構成されたことを特徴とする弁装置。
【請求項5】
前記弁体と前記弁ポートは、流入通路から流入する冷媒を絞って流出通路から該冷媒を膨張させて流出させる膨張弁として構成されたことを特徴とする請求項に記載の弁装置。
【請求項6】
圧縮機と、凝縮器と、蒸発器と、絞り装置とを含む冷凍サイクルシステムであって、請求項に記載の弁装置が、前記絞り装置として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体の圧縮量を、当該弾性体の変形方向に相互に調整可能な雄ねじ部と雌ねじ部とからなるねじ機構により調整する調整ねじ機構の固定構造、及び弁装置並びに冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弁装置において、弁内部に組み込まれた弾性体の圧縮量を調整する調整ねじ機構により、弁体(弁部材)の作動特性を調整する技術が、例えば特開2014-5906号広報(特許文献1)に開示されている。なお、この特許文献1ではコイルばね(圧縮ばね)が弾性体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-5906号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1における調整ねじ機構の固定構造としては、金属同士のかしめによる固定構造や、ねじ部への接着剤の塗布等による固定構造が用いられている。
【0005】
しかし、かしめによる固定構造では、ねじ機構に樹脂部材を用いるのは困難であり、金属部材で構成する必要があり、弁装置の軽量化に制約がある。また、接着剤による固定構造では、接着剤が乾燥するまでに時間がかかり、加工時間が長くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、弾性体の圧縮量を雄ねじ部と雌ねじ部とからなるねじ機構により調整する調整ねじ機構の固定構造を用いた弁装置において、軽量化を図るとともに加工時間を短縮することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の調整ねじ機構の固定構造は、弾性体の圧縮量を当該弾性体の変形方向に相互に調整可能な雄ねじ部と雌ねじ部とからなるねじ機構により調整する調整ねじ機構の固定構造であって、前記調整ねじ機構の前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とが樹脂部材で構成され、当該雄ねじ部と雌ねじ部とが、互いに螺合部分の界面において、全周のうちの一部である一箇所のみが溶着により固定され、溶着部に対する周方向の反対側は溶着されておらず、前記雄ねじ部のねじ山の軸方向の前記弾性体側の斜面と、前記雌ねじ部のねじ山の軸方向の前記弾性体と反対側の斜面との間に隙間があることを特徴とする。
【0008】
この際に、前記雄ねじ部と雌ねじ部とが、互いに螺合部分の界面の一部のみにて溶着により固定されていることを特徴とする調整ねじ機構の固定構造が好ましい。
【0009】
また、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との螺合状態において、雌ねじ谷底の径方向隙間と雄ねじ谷底の径方向隙間の合計が、雌ねじ谷底径と雄ねじ谷底径の差の20%以上であることを特徴とする調整ねじ機構の固定構造が好ましい。
【0010】
また、前記調整ねじ機構は、駆動アクチュエータが発生する荷重方向と対向する方向に荷重を発生させる前記弾性体の圧縮量を調整するよう構成されていることを特徴とする調整ねじ機構の固定構造が好ましい。
【0011】
本発明の弁装置は、流体が流れる弁ポートの開度を弁体により制御するよう構成されるとともに、前記調整ねじ機構の固定構造を備えた弁装置であって、前記駆動アクチュエータの駆動力を前記弁体に伝達するよう構成されたことを特徴とする。
【0012】
この際に、前記弁体と前記弁ポートは、流入通路から流入する冷媒を絞って流出通路から該冷媒を膨張させて流出させる膨張弁として構成されたことを特徴とする弁装置が好ましい。
【0013】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、蒸発器と、絞り装置とを含む冷凍サイクルシステムであって、前記弁装置が、前記絞り装置として用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の調整ねじ機構の固定構造及び弁装置並びに冷凍サイクルシステムによれば、調整ねじ機構の雄ねじ部と雌ねじ部とが樹脂部材で構成されるとともに、この雄ねじ部と雌ねじ部とが超音波溶着により固定されているので、軽量化が図れるとともに加工時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の弁装置としての温度式膨張弁を備えた冷却装置の一部断面図である。
図2】実施形態の温度式膨張弁における調整ねじ機構の要部拡大断面図である。
図3】実施形態における調整ねじの変形例1の要部拡大断面図である。
図4】実施形態における超音波溶着の工程を示す概略図である。
図5】実施形態における調整ねじの変形例2を示す図である。
図6】本発明の実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の調整ねじの固定構造及び弁装置並びに冷凍サイクルシステムの実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図6は実施形態の温度式膨張弁を用いた冷却装置の冷凍サイクルシステムの要部を示す図であり、先ず、実施形態の冷凍サイクルシステムについて説明する。図6において、10は実施形態の温度式膨張弁、100は圧縮機、200は凝縮器、300は蒸発器、400はアキュムレータであり、これらは配管で環状に接続することにより冷凍サイクルシステムを構成している。温度式膨張弁10は、後述のように、ハウジング20内に装着され、ダイヤフラム式の駆動アクチュエータ3と例えば従来の感温筒と同様な感温筒5、及びキャピラリチューブ6を有している。ハウジング20の流入通路20Bは凝縮器200の出口側配管200aに接続され、ハウジング20の流出通路20Cは蒸発器300の入口側配管300aに接続されている。そして、蒸発器300は冷却対象である図示しない発熱体に接触して併設されたり、空調、冷蔵用として冷やす室内雰囲気中等に配置され、この蒸発器300の出口側配管300bに感温筒5が取り付けられている。
【0018】
圧縮機100は冷凍サイクルシステムを流れる冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒は凝縮器200で凝縮液化され、流入通路20Bを通して温度式膨張弁10に流入される。温度式膨張弁10は流入される冷媒を減圧(膨張)して流出通路20Cから蒸発器300に流入させる。蒸発器300は冷媒の一部を蒸発気化し、気液混合状態の冷媒がアキュムレータ400に流入し、このアキュムレータ400から気相冷媒が圧縮機100に循環される。そして、蒸発器300は、冷媒の一部を蒸発気化することで、発熱体や空気等から熱を吸収する。これにより発熱体、または空気等が冷却される。また、感温筒5には、吸着チャージ等によりガスが封入されており、この感温筒5はキャピラリチューブ6により駆動アクチュエータ3に連結されている。
【0019】
図1は実施形態の弁装置としての温度式膨張弁を備えた冷却装置の一部断面図、図2は同温度式膨張弁における調整ねじ機構の要部拡大断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は図1の図面における上下に対応しており、一点鎖線で示す軸線Xは後述の弁ポート33の中心線であるとともに、作動軸38及び弁体4の移動方向に対応している。
【0020】
この実施形態の冷却装置は、ハウジング20に実施形態の温度式膨張弁10を搭載したものである。弁ハウジング20は全体が金属部材によって構成され、このハウジング20には、弁ユニット装着孔20A、流入通路20B及び流出通路20Cが形成されている。弁ユニット装着孔20Aは、軸線X方向下方で軸線Xを中心とする円柱状の小径室20A1と、この小径室20A1の上方で軸線Xを中心とする円柱状の大径室20A2と、大径室20A2の上方で軸線Xを中心とする薄型円柱状の駆動アクチュエータ室20A3とを有している。そして、弁ユニット装着孔20A内に温度式膨張弁10が嵌合されている。
【0021】
温度式膨張弁10は、弁本体2と、駆動アクチュエータ3と、弁体4と、感温筒5(図6参照)と、によって構成される。なお、弁本体2とハウジング20との間には、小径室20A1の大径室20A2側の端部と、大径室20A2の駆動アクチュエータ室20A3側の端部とには、OリングP,Qが設けられており、OリングPにより流入通路20Bと流出通路20Cとの間の気密性が保たれている。また、OリングQにより弁本体2とハウジング20との外部空間に対する気密性が保たれている。
【0022】
弁本体2は、樹脂部材によって構成され、ハウジング20の小径室20A1と大径室20A2とに収容されている。弁本体2のうち小径室20A1に収容される下側部分2Aは、軸線X方向を軸方向とする円筒状に形成され、その側面に側部開口21を有するとともに下端に下端開口22を有している。また、この下側部分2Aの上部内周には弁ガイド孔23が形成され、この弁ガイド孔23内に弁体4が収容されている。そして、この下側部分2Aの下端開口22の軸線X方向内側において、雌ねじ部11が形成されるとともに、その内側に樹脂部材で構成された調整ねじ13が配設されている。調整ねじ13の外周には雄ねじ部12が形成されており、この雄ねじ部12は雌ねじ部11に螺合されるとともに、調整ねじ13と弁体4との間に「弾性体」としての調整ばね14が配設されている。この雌ねじ部11と調整ねじ13及び調整ばね14は調整ねじ機構1を構成している。なお、調整ねじ13の中心には貫通孔13aとレンチ孔13bとが形成されている。
【0023】
また、弁本体2のうち大径室20A2に収容される上側部分2Bは、後述する弁座部32aの上方において軸線X方向に沿って延びる筒状の作動軸ガイド孔24と、作動軸ガイド孔24に直交するように延びる冷媒通過部25と、駆動アクチュエータ室20A3側から作動軸ガイド孔24の回りにリング状の深溝として形成されたばね室26と、ばね室26と冷媒通過部25とを連通する均圧孔27と、を有している。
【0024】
弁本体2の上部に構成された駆動アクチュエータ3は、薄型円盤状の上蓋3Aと下蓋3Bとによりケース体を構成している。下蓋3Bは上蓋3Aと対向するフランジ部31と、このフランジ部31に連結され軸線Xを中心とする有底円筒状の形状となる円筒部32とを有している。また、下蓋3Bは、円筒部32を弁本体2内にして弁本体2をインサート成形することにより弁本体2と一体に構成され、この円筒部32の底部をなす弁座部32aが弁本体2の上側部分2Bの作動軸ガイド孔24の下端側に配置されている。そして、この弁座部32aの中央には軸線Xを中心とする弁ポート33が形成されている。
【0025】
なお、ハウジング20の駆動アクチュエータ室20A3には抜け止め部材3Cが取り付けられており、駆動アクチュエータ3の上蓋3Aの外縁部の上面が抜け止め部材3Cによって係止されることにより、駆動アクチュエータ3および弁本体2が弁ユニット装着孔20Aから脱落しないようになっている。
【0026】
また、上蓋3Aと下蓋3Bの間にはダイヤフラム34を備えており、このダイヤフラム34によってダイヤフラム室35と均圧室36が区画されている。下蓋3B内には当金37が配設されており、この当金37に作動軸38が接続されている。なお、ばね室26内において、ばね室26の底部と当金37との間にはコイルばね39が圧縮した状態で配設されている。これにより、コイルばね39は作動軸38をダイヤフラム34側に付勢している。
【0027】
作動軸38は作動軸ガイド孔24内に摺動可能に挿通されている。また、作動軸38の下端部38aは、弁ポート33を通過可能な外径を有するようにピン状になっており、この作動軸38の下端部38aは弁ポート33を貫通している。そして、この作動軸38の下端部38aはダイヤフラム34の動作を弁体4に伝達する。
【0028】
弁体4は、上面が閉塞されて下面が開口した有底筒状に形成され、その内側に内空間41を有している。また、上面の一部に弁ポート33と内空間41を連通する貫通孔42が形成されるとともに、上面の中央にニードル部43を有している。そして、このニードル部43が弁座部32aに対して接近または離隔することで弁ポート33の開度が制御される。また、このニードル部43の上端には作動軸38の下端部38aが当接されている。
【0029】
以上の構成により、流入通路20Bは凝縮器200から冷媒を受け入れ、この冷媒は、20Aに導入された後、下側部分2Aの側部開口21及び調整ねじ13のレンチ孔13b及び貫通孔13a、弁体4の内空間41及び貫通孔42、弁ポート33および冷媒通過部25をこの順で通過し、流出通路20Cから蒸発器300に送り出される。また、感温筒5の感知温度に応じてダイヤフラム室35の内圧が上昇または低下すると、ダイヤフラム室35が膨張または収縮するようにダイヤフラム34が変形する。そして、このダイヤフラム34の変形に伴い、作動軸38が軸線X方向に移動し、弁ポート33と弁体4のニードル部43との隙間すなわち弁開度が変化する。
【0030】
そして、温度式膨張弁10の調整ねじ機構1において、調整ばね14は、弁体4に対して下方に設けられて上方への付勢力を付与するよう構成されるとともに、雌ねじ部11に対する調整ねじ13のねじ込み量によって、この弁体4に対する付勢力が調整可能となっている。すなわち、調整ねじ13のねじ込み量を調整することで、弁体4が作動軸38を押圧する力を調整することができるので、ダイヤフラム室35の導入圧力に応じて弁ポート33が開き始める圧力、すなわち設定圧力を調整することができる。なお、調整ねじ13のねじ込み(回転)を行うときは、調整ねじ13のレンチ孔13bにレンチ等を嵌合して回転させる。
【0031】
温度式膨張弁10は、上記のように設定圧力を調整したあと、弁本体2の下側部分2Aの雌ねじ部11において、調整ねじ13が固着されている。弁本体2と調整ねじ13とは、それぞれ樹脂部材(樹脂製の部品)であり、図2のようにして超音波溶着されている。なお、超音波溶着とは、超音波振動により雄ねじ部と雌ねじ部との界面が溶融して接着されることである。
【0032】
すなわち、図2において下側部分2Aの雌ねじ部11と調整ねじ13の雄ねじ部12との境界部分に溶融固化層D(楕円の細かいハッチングの部分)が形成されている。図4は超音波溶着の工程を示す概略図であり、ロッド軸40aを設けた固定治具40に対して温度式膨張弁10を装着する。具体的には、ロッド軸40aを調整ねじ13のレンチ孔13bと貫通孔13aに挿通するとともに、駆動アクチュエータ3の上蓋3Aと下蓋3Bの外周縁を固定治具40の水平台40bから浮かせた状態で載置する。そして、弁本体20の下側部分2Aにホーン50を押しつけて、超音波溶着する。
【0033】
弁本体2の下側部分2Aの外周に軸線X(中心軸)と直角方向からホーン50を押し付ける為、下側部分2Aの押し付けられた側は超音波振動により雄ねじ部と雌ねじ部との界面が溶融して接着されるが、ホーン50を押し付けていない反対側は、ねじガタ分、雄ねじ部と雌ねじ部との界面に隙間があり非接触の為、溶着されない部分がある。また、図4の様に水平台40bから浮かせた状態で載置しているので、ホーン50を押し付けられた側は溶融にて、軸線X(中心軸)と直角方向に溶けた分、弁本体2が下に移動するので、ホーン50を押し付けていない反対側はねじ間に隙間が更に開き、溶着されにくい。従って、雄ねじ部と雌ねじ部とが、互いに螺合部分の界面の全周に対して一部のみにて溶着により固定されている。螺合部分の一部が溶融されずに残ることで、溶融時の軸線X方向のズレが抑制される為、前記弾性体の圧縮量を精度よく調整する場合には、好ましい。一部のみにて溶着により固定されているが、一部でも、溶融条件により、固定強度は十分にある。
【0034】
また、この実施形態では、図2に示すように、調整ねじ13の雄ねじ部12の外周部分(螺旋の稜線相当部分)の一部に欠損部分が形成されている。すなわち、雄ねじ部12と雌ねじ部11との一方(雄ねじ部12)のねじ山の高さが他方(雌ねじ部11)のねじ溝の深さより小さくなっている。こにれより、雄ねじ部12の山と雌ねじ部11の谷との間に「溶融溜まり」としての空隙S1が形成されている。これにより、超音波溶着時の溶融樹脂が流路等にはみ出すことがない為、はみ出し部が外れ、冷凍サイクルシステムの流路内に異物として流出し不具合となる事を防止することができる。
【0035】
また、この図2の実施形態では、雄ねじ部12と雌ねじ部11との一方(雄ねじ部12)のねじ山の高さが他方(雌ねじ部11)のねじ溝の深さより小さい例について示したが、小さいものに限定するものではなく同じ寸法の場合も含む図3の変形例1について説明する。図3に示すように、溶融前の状態において、雌ねじの谷の径[D1]と雄ねじの山の頂径(外径)[D2]の差[A](雌ねじ谷底の径方向隙間)と、雌ねじの内径[D3]と雄ねじの谷の径[D4]の差[B](雄ねじ谷底の径方向隙間)の合計(A+B)が、雌ねじの谷の径[D1]と雄ねじの谷の径[D4]の差[C](雄ねじと雌ねじの谷底間径方向長さ)の20%以上、
すなわち、
A=D1-D2
B=D3-D4
C=D1-D4において
(A+B)/C×100≧20
とすることで、「溶融溜まり」としての隙間[A]の空隙S1と隙間[B]の空隙S3が十分形成される。これにより、超音波溶着時の溶融樹脂が流路等にはみ出すことがない為、はみ出し部が外れ、冷凍サイクルシステムの流路内に異物として流出し不具合となる事を防止することができる。
【0036】
また、雌ねじの谷の径[D1]と雄ねじの山の頂径(外径)[D2]の差[A](雌ねじ谷底の径方向隙間)と、雌ねじの内径[D3]と雄ねじの谷の径[D4]の差[B](雄ねじ谷底の径方向隙間)の合計(A+B)が、雌ねじの谷の径[D1]と雄ねじの谷の径[D4]の差[C](雄ねじと雌ねじの谷底間径方向長さ)の30~40%とすることが好ましく、これにより、上記よりも十分に溶融樹脂を逃がせる空隙を確保できる為、より望ましい。また、50%程度とすると、更に望ましい。
【0037】
図5は実施形態における調整ねじの変形例2を示す図であり、この変形例2の調整ねじ13′は、雄ねじ部12′の軸線X方向の両外側端部において、雌ねじ部11と螺合しない欠損部を設け、この欠損部の部分において、雄ねじ部12′の山の欠損部の部分と雌ねじ部11の谷との間に「溶融溜まり」としての空隙S2を設けたものである。これにより、超音波溶着時の溶融樹脂Gが流路等にはみ出すことがない為、はみ出し部が外れ、冷凍サイクルシステムの流路内に異物として流出し不具合となる事を防止することができる。
【0038】
以上、弁装置としての温度式膨張弁について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。前記実施形態では弁装置として温度式膨張弁の例を示したが、雄ねじと雌ねじの螺合による調整ねじ機構を備えた弁装置に適用できる。例えば、特許文献1のように、コイルばねの変形量を調整して設定圧力を調整するような圧力調整弁に適用してもよい。また、温度式膨張弁や、圧力調整弁に限らず、調整ばね等の弾性体の変形量を調整する機構を設けたその他の電磁弁や電動弁等の弁装置に適用してもよい。また、弁装置以外の機器に適用しても良い。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述し、その他の実施形態についても詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 調整ねじ機構
11 雌ねじ部
12 雄ねじ部
13 調整ねじ
14 調整ばね
2 弁本体
2A 下側部分
2B 上側部分
21 側部開口
22 下端開口
23 弁ガイド孔
24 作動軸ガイド孔
25 冷媒通過部
26 ばね室
27 均圧孔
3 駆動アクチュエータ
3A 上蓋
3B 下蓋
3C 抜け止め部材
31 フランジ部
32 円筒部
32a 弁座部
33 弁ポート
34 ダイヤフラム
35 ダイヤフラム室
36 均圧室
37 当金
38 作動軸
38a 下端部
39 コイルばね
4 弁体
41 内空間
42 貫通孔
43 ニードル部
5 感温筒
X 軸線
10 温度式膨張弁
20 ハウジング
20A 弁ユニット装着孔
20B 流入通路
20C 流出通路
100 圧縮機
200 凝縮器
300 蒸発器
400 アキュムレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6