(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/08 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
H01T13/08
(21)【出願番号】P 2020075225
(22)【出願日】2020-04-21
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東松 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】井澤 宏昭
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-39893(JP,U)
【文献】特開2004-183838(JP,A)
【文献】特開2013-16296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線の方向に延びる中心電極と、
前記中心電極を絶縁保持するとともに、外周面にねじ山を有する雄ねじ部を備える主体金具と、
前記雄ねじ部の基端位置に配置された円環状のガスケットと、を備えるスパークプラグであって、
前記ガスケットが、自身の内周縁において他の部分よりも内側に張り出す少なくとも3つの爪部を備えており、
前記少なくとも3つの爪部は、前記ガスケットの内側に向けて凸となるように金属板を湾曲させた形状を有し、
前記少なくとも3つの爪部の張り出し端に内接する仮想の内接円の直径をA(mm)、前記雄ねじ部のねじ谷径をB(mm)としたときに、
0.69≦(A-B)/2≦0.72
を満たす、スパークプラグ。
【請求項2】
前記爪部において、前記軸線に沿う方向の最大寸法をX(mm)とし、前記雄ねじ部のねじピッチをY(mm)としたときに、
X<Y
を満たす、請求項1に記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、スパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に対するスパークプラグの取り付けは、ねじ孔を有するシリンダヘッドに、スパークプラグに備えられる主体金具のねじ部をねじ込むことにより行なわれる。スパークプラグとシリンダヘッドとの間のシール性は、スパークプラグが備える円環状のガスケットによって確保される。
【0003】
内燃機関に対するスパークプラグの取り付けの際には、一般に、ガスケットがスパークプラグに予め取り付けられ、その後に、スパークプラグがシリンダヘッドに取り付けられる。このとき、ガスケットがスパークプラグから脱落すると、円滑なねじ付け作業が妨げられるおそれがある。そこで、ガスケットの脱落を抑制するために、ガスケットをスパークプラグに取り付けた後に、ガスケットの内周縁に近い部分に部分的にパンチングを施すことで、中心方向に突出する爪を形成している。爪の先端は、主体金具のねじ首に軽く当接するか極めて狭い隙間を残して近接するように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構成のスパークプラグでは、ガスケットの取り付けが完了した後には、ガスケットをねじ部から抜き取ることができないようになっている。このため、スパークプラグのメンテナンスの際には、スパークプラグをシリンダヘッドから取り外した後、ガスケットを切断してねじ部から取り外す必要がある。また、メンテナンスの終了後には、新品のガスケットをねじ部に取り付け、爪をパンチングによって形成する必要がある。このため、ガスケットの脱着に非常に手間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示されるスパークプラグは、軸線の方向に延びる中心電極と、前記中心電極を絶縁保持するとともに、外周面にねじ山を有する雄ねじ部を備える主体金具と、前記雄ねじ部の基端位置に配置された円環状のガスケットと、を備えるスパークプラグであって、前記ガスケットが、自身の内周縁において他の部分よりも内側に張り出す少なくとも3つの爪部を備えており、前記少なくとも3つの爪部は、前記ガスケットの内側に向けて凸となるように金属板を湾曲させた形状を有し、前記少なくとも3つの爪部の張り出し端に内接する仮想の内接円の直径をA(mm)、前記雄ねじ部のねじ谷径をB(mm)としたときに、
0.69≦(A-B)/2≦0.72
を満たす。
【発明の効果】
【0007】
本明細書によって開示されるスパークプラグによれば、ガスケットの脱落防止と脱着の容易性とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態のスパークプラグの断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態のガスケットの底面図である。
【
図4】
図4は、実施形態のガスケットの部分拡大断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態のガスケットが主体金具に取り付けられる途中の状態を示す部分拡大側面図である。
【
図6】
図6は、実施形態のガスケットが主体金具に取り付けられた状態を示す部分拡大側面図である。
【
図7】
図7は、実施形態のスパークプラグがシリンダヘッドに取り付けられた様子を示す部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
(1)本明細書によって開示されるスパークプラグは、軸線の方向に延びる中心電極と、前記中心電極を絶縁保持するとともに、外周面にねじ山を有する雄ねじ部を備える主体金具と、前記雄ねじ部の基端位置に配置された円環状のガスケットと、を備えるスパークプラグであって、前記ガスケットが、自身の内周縁において他の部分よりも内側に張り出す少なくとも3つの爪部を備えており、前記少なくとも3つの爪部は、前記ガスケットの内側に向けて凸となるように金属板を湾曲させた形状を有し、前記少なくとも3つの爪部の張り出し端に内接する仮想の内接円の直径をA(mm)、前記雄ねじ部のねじ谷径をB(mm)としたときに、
0.69≦(A-B)/2≦0.72
を満たす。
【0010】
上記の構成によれば、ガスケットと主体金具の雄ねじ部との間に、適度な隙間が設定される。これにより、予め爪部が形成されたガスケットの、主体金具に対する脱着を、ガスケットを雄ねじ部の周りに回転させることで行うことができる。このため、ガスケットの脱着の手間が軽減される。例えばガスケットが破損したときに、容易にガスケットを交換できる。また、ガスケットが主体金具に取り付けられた後に、スパークプラグに振動が加えられたとしても、ガスケットが雄ねじ部から脱落することを回避できる。このように、上記のスパークプラグによれば、ガスケットの脱落防止と脱着の容易性とを両立できる。
【0011】
(2)上記のスパークプラグが、前記爪部において、前記軸線に沿う方向の最大寸法をX(mm)とし、前記雄ねじ部のねじピッチをY(mm)としたときに、
X<Y
を満たしていても構わない。
【0012】
このような構成によれば、主体金具に対してガスケットを脱着する際に、ガスケットがねじ山にいっそう引っ掛かりにくいため、作業性がより良好となる。
【0013】
[実施形態の詳細]
本明細書によって開示される技術の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
<スパークプラグ1の全体構成>
スパークプラグ1は内燃機関のシリンダヘッド140に取り付けられ、内燃機関の燃焼室内の混合気に着火するために用いられる。スパークプラグ1は、
図1に示すように、絶縁体10と、主体金具20と、中心電極30と、端子金具40と、抵抗体50と、シール部材60、70と、接地電極80と、ガスケット100とを備える。
図1の一点破線は、スパークプラグ1の軸線AXを示している。以下の説明では、軸線AXと平行な方向(
図1の上下方向)を「軸線AXの方向」という。また、
図1における下側をスパークプラグ1の先端側といい、
図1における上側をスパークプラグ1の後端側という。
【0015】
絶縁体10は、
図1に示すように、軸線AXに沿って延び、内部に軸線AXの方向に貫通する軸孔11を有する略円筒状の部材である。絶縁体10は、例えば、アルミナ等のセラミックスを用いて形成されている。
【0016】
主体金具20は、スパークプラグ1をシリンダヘッド140に取り付ける際に利用される部材である。この主体金具20は、
図1に示すように、全体として軸線AXの方向に延びた円筒形状をなし、導電性の金属材料(例えば、低炭素鋼材)によって構成される。
図1および
図5に示すように、主体金具20の先端側の外表面には、外周面にねじ山21Aとねじ谷21Bとを有する雄ねじ部21が形成されている。また、雄ねじ部21の後端側には、外側に向けて環状に張り出した座部23が形成されている。雄ねじ部21の基端位置、すなわち座部23に隣接する位置には、
図5および
図6に示すように、ねじ山21Aおよびねじ谷21Bが形成されておらず、この部分は、ガスケット100が配置されるねじ首22となっている。
【0017】
主体金具20は、
図1に示すように、内部に軸線AXの方向に貫通する通し孔24を備えており、その通し孔24に挿通される形で、絶縁体10が主体金具20の内部で保持される。絶縁体10の後端は、主体金具20の後端から外側(
図1の上側)へ突出している。絶縁体10の先端部は、主体金具20の先端から外側(
図1の下側)へ突出している。
【0018】
中心電極30は、
図1に示すように、軸線AXの方向に沿って延びる棒状の中心電極本体31と、その中心電極本体31の先端に取り付けられる円柱状のチップ32とを備えている。中心電極本体31は、その先端部が絶縁体10の外部に露出するように、絶縁体10の軸孔11の先端側に保持されている。中心電極本体31は、ニッケル(Ni)又はニッケルを最も多く含むニッケル基合金(例えば、NCF600、NCF601等)によって構成される。なお、中心電極本体31は、ニッケル又はニッケル基合金製からなる外層部(母材)と、その外層部に埋設された芯部とを含む2層構造であってもよい。その場合、芯部は、外層部よりも熱伝導性に優れる銅(Cu)又は銅を最も多く含む銅基合金から形成されることが好ましい。
【0019】
端子金具40は、
図1に示すように、軸線AXの方向に延びる棒状の部材であり、その後端部が絶縁体10の外部に露出するように、絶縁体10の軸孔11の後端側に保持されている。端子金具40は、軸孔11内において、中心電極30よりも後端側に配置されている。端子金具40は、導電性の金属材料(例えば、低炭素鋼)で構成される。端子金具40の表面には、防食等の目的でニッケル等のメッキが施されてもよい。端子金具40は、軸線AXの方向の所定位置に形成された鍔部41と、鍔部41よりも後端側に位置する端子接続部42と、鍔部41よりも先端側の脚部43と、を備えている。脚部43は、絶縁体10の軸孔11に挿入されている。端子接続部42は、絶縁体10よりも後端側に露出している。端子接続部42には、図示しない高圧ケーブルが接続されたプラグキャップが装着され、放電を発生するための高電圧が印加される。
【0020】
抵抗体50は、
図1に示すように、絶縁体10の軸孔11内において、端子金具40の先端と中心電極30の後端との間に配置される。抵抗体50は、例えば、1kΩ以上の抵抗値(例えば、5kΩ)を有し、火花発生時の電波ノイズを低減する機能等を備えている。抵抗体50は、例えば、主成分であるガラス粒子と、ガラス以外のセラミック粒子と、導電性材料とを含む組成物によって構成される。
【0021】
軸孔11における抵抗体50の先端と中心電極30の後端との間には、導電性のシール部材60が配置されている。また、軸孔11における抵抗体50の後端と端子金具40の先端との間には、導電性のシール部材70が配置されている。シール部材60、70は、導電性を有する材料、例えば、B2O3-SiO2系等のガラス粒子と金属粒子(Cu、Feなど)とを含む組成物で形成されている。
【0022】
接地電極80は、全体的には途中で略L字状に折れ曲がった形状を有し、その後端が主体金具20の先端に接合される。そして、その先端部が中心電極30の先端にあるチップ32と間隔を保ちつつ対向するように配される。接地電極80と主体金具20とは、例えば、互いに抵抗溶接、レーザ溶接等によって接合される。これにより、接地電極80と主体金具20とは、互いに電気的に接続される。接地電極80は、例えば、ニッケル又はニッケル基合金からなる。
【0023】
中心電極30の先端にあるチップ32と、接地電極80の先端部との間には、隙間があり、中心電極30と接地電極80との間に高電圧が印加されると、その隙間において、概ね軸線AXに沿った形で、火花放電が発生する。
【0024】
<ガスケット100>
ガスケット100は、
図1および
図6に示すように、主体金具20のねじ首22の周りに配されている。このガスケット100は、
図2および
図3に示すように、炭素鋼等からなる金属板素材を曲げ加工したリング状の部品であって、
図7に示すように、スパークプラグ1をシリンダヘッド140に取り付ける際に、主体金具20とシリンダヘッド140との隙間をシールする。ガスケット100は、鉄や銅から形成されてもよい。
【0025】
ガスケット100は、
図3および
図4に示すように、第1シール部110および第2シール部120と、これら2つのシール部110、120を繋ぐ連結湾曲部130とを備えている。
【0026】
第1シール部110は、
図4に示すように、全体として、ガスケット100の内側に向けて凸となるように金属板が湾曲された形状を有しており、第1板部111および第2板部112と、第1板部111と第2板部112とを繋ぐ第1湾曲部113とを備えている。第1板部111は、環状の板部であり、座部23とのシール面を形成する平坦な外面を有している。第2板部112は、環状の板部であり、第1湾曲部113に近づくほど第1板部111から離れるように傾いている。第1湾曲部113は、第1板部111の内縁と第2板部112の内縁とを繋ぐ部分である。
【0027】
第2シール部120は、
図4に示すように、全体として、ガスケット100の内側に向けて凸となるように金属板が湾曲された形状を有しており、第3板部121および第4板部122と、第3板部121と第4板部122とを繋ぐ第2湾曲部123とを備えている。第3板部121と第4板部122とは、それぞれ環状の板部であって、第1シール部110側からこの順に配されており、第2湾曲部123に近づくほど第1板部111から離れるように傾いている。第4板部122は、シリンダヘッド140とのシール面を形成する平坦な外面を有している。第2湾曲部123は、第3板部121の内縁と第4板部122の内縁とを繋いでいる。
【0028】
連結湾曲部130は、ガスケット100の外周側に凸となるように湾曲された形状を有しており、第1板部111の外縁と第3板部121の外縁とを繋いでいる。
【0029】
図2および
図3に示すように、第1シール部110と第2シール部120とは、同心円状に配置されている。第2シール部120は、第1シール部110よりも大きな内径を有しており、第2湾曲部123が第1板部111の外縁部の近傍に配置されている。
【0030】
このようなガスケット100は、環状の金属板に対し、その径方向について異なる位置に複数個所設定された曲げ位置において、それぞれ周方向に延びる湾曲部113、123、130を形成することにより得ることができる。
【0031】
第1シール部110は、
図2に示すように、自身の内周縁において他の部分よりも内側に張り出す4つの爪部114を備えている。4つの爪部114は、等間隔に配置されている。各爪部114は、第1シール部110の一部が潰れるように変形されることによって、当該部分の内縁が他の部分よりも内側に張り出すようにされた部分である。
【0032】
ガスケット100は、
図2および
図5に示すように、4つの爪部114の張り出し端114Aに内接する仮想の内接円Rの直径A(mm)がねじ山径C(mm)よりも小さく、ねじ谷径B(mm)よりも大きくなっている。内接円Rの直径Aとねじ谷径Bとの関係は、下記式(1)を満たしている。
【0033】
0.69≦(A-B)/2≦0.72 …(1)
【0034】
ここで、(A-B)/2の値は、ガスケット100と雄ねじ部21とを同軸に配置した場合の、雄ねじ部21のねじ谷21Bと爪部114の張り出し端114Aとのクリアランスの寸法を表している。
【0035】
また、
図5に示すように、爪部114において、軸線AXに沿う方向の最大寸法をX(mm)、雄ねじ部21のねじピッチをY(mm)としたときに、最大寸法XとねじピッチYとの関係は、下記式(2)を満たしている。
【0036】
X<Y …(2)
【0037】
ここで、爪部114において、軸線AXに沿う方向の最大寸法Xは、第1板部111と第2板部112とが、軸線AXに沿う方向において最も離れている部位における、第1板部111の外面と第2板部112の外面との距離で表される。本実施形態では、最大寸法Xは、第1板部111の外面と、第2板部112における内縁(第1湾曲部113との接続端)の外面との距離である。
【0038】
<ガスケット100の主体金具20への取り付けおよび取り外し>
ガスケット100を主体金具20に取り付ける際には、雄ねじ部21の先端をガスケット100の内側に進入させる。そして、ガスケット100を雄ねじ部21の周りに回転させながら、ねじ首22に向かって移動させる。つまり、ガスケット100と主体金具とを螺合させる。ガスケット100の主体金具20への取り付けが完了した状態では、
図6に示すように、ガスケット100は、ねじ首22の周りに配置されており、第1板部111の外面が座部23に隣接している。
【0039】
また、ガスケット100を主体金具20から取り外す際には、ガスケット100を雄ねじ部21の周りに回転させながら、雄ねじ部21の先端へ向かって移動させ、ガスケット100から雄ねじ部21を抜き取る。
【0040】
ここで、上記したように、4つの爪部114の張り出し端114Aに内接する仮想の内接円Rの直径Aと、雄ねじ部21のねじ谷径Bとの関係は、下記式(1)を満たしている。
【0041】
0.69≦(A-B)/2≦0.72 …(1)
【0042】
このように、ガスケット100の爪部114と雄ねじ部21との間に、適度な隙間が設定されている。より具体的には、ガスケット100を、爪部114が雄ねじ部21に引っ掛かることなく、雄ねじ部21の周りにスムーズに回転させることができるが、ガスケット100が雄ねじ部21から脱落しない程度の隙間が設定されている。これにより、ガスケット100に予め爪部114を形成させておき、その後に、主体金具20に対する取り付けを、ガスケット100を雄ねじ部21の周りに回転させることで容易に行うことができる。また、主体金具20からのガスケット100の取り外しも、ガスケット100を雄ねじ部21の周りに回転させることで容易に行うことができる。このように、ガスケット100の脱着の手間が軽減される。例えばガスケット100が破損したときに、容易にガスケット100を交換できる。さらに、ガスケット100が主体金具20に取り付けられた後に、スパークプラグ1に振動が加えられたとしても、ガスケット100が雄ねじ部21から脱落することを回避できる。
【0043】
また、爪部114において、軸線AXに沿う方向の最大寸法Xと、雄ねじ部21のねじピッチYとの関係は、下記式(2)を満たしている。
【0044】
X<Y …(2)
【0045】
このような構成によれば、主体金具20に対してガスケット100を脱着する際に、ガスケット100がねじ山21Aにいっそう引っ掛かりにくいため、作業性がより良好となる。
【0046】
<スパークプラグ1のシリンダヘッド140への取り付け>
スパークプラグ1は、
図7に示すように、図示しないねじ孔を備えるシリンダヘッド140に雄ねじ部21がねじ付けられることで、シリンダヘッド140に固定される。シリンダヘッド140の外壁面において、ねじ孔の開口部の周辺部分は、ガスケット100を受けるシール面141となっている。スパークプラグ1のシリンダヘッド140に固定された状態では、ガスケット100が座部23とシリンダヘッド140とで挟まれ、ガスケット100に対して軸線AXの方向(
図7の上下方向)に圧縮力が加わる。すると、第2シール部120が第1シール部110に近づくように連結湾曲部130が変形され、連結湾曲部130の復元力により、第1板部111が座部23に密着し、第4板部122がシリンダヘッド140のシール面141に密着する。これにより、ガスケット100が主体金具20とシリンダヘッド140との隙間をシールする。このように、ガスケット100は、座部23とシリンダヘッド140とで挟まれても、第2シール部120が変形するだけであって、第1シール部110は実質的に変形しない。そのため、スパークプラグ1がシリンダヘッド140に取り付けられた状態でも、上記式(1)、(2)で表される条件は満たされる。
【0047】
<作用効果>
以上のように本実施形態によれば、スパークプラグ1は、軸線AXの方向に延びる中心電極30と、中心電極30を絶縁保持するとともに、外周面にねじ山21Aを有する雄ねじ部21を備える主体金具20と、一端が主体金具20に接続され、他端が中心電極30と対向する接地電極80と、雄ねじ部21の基端位置に配置された円環状のガスケット100と、を備える。ガスケット100が、自身の内周縁において他の部分よりも内側に張り出す4つの爪部114を備えており、爪部114は、ガスケット100の内側に向けて凸となるように金属板を湾曲させた形状を有し、爪部114の張り出し端114Aに内接する仮想の内接円Rの直径をA(mm)、雄ねじ部21のねじ谷径をB(mm)としたときに、下記式(1)を満たす。
【0048】
0.69≦(A-B)/2≦0.72 …(1)
【0049】
上記の構成によれば、ガスケット100と主体金具20の雄ねじ部21との間に、適度な隙間が設定される。これにより、予め爪部114が形成されたガスケット100の、主体金具20に対する脱着を、ガスケット100を雄ねじ部21の周りに回転させることで行うことができる。このため、ガスケット100の脱着の手間が軽減される。例えばガスケット100が破損したときに、容易にガスケット100を交換できる。また、ガスケット100が主体金具20に取り付けられた後に、スパークプラグ1に振動が加えられたとしても、ガスケット100が雄ねじ部21から脱落することを回避できる。このように、上記のスパークプラグ1によれば、ガスケット100の脱落防止と脱着の容易性とを両立できる。
【0050】
また、スパークプラグ1は、爪部114において、軸線AXに沿う方向の最大寸法をX(mm)とし、雄ねじ部21のねじピッチをY(mm)としたときに、下記式(2)を満たす。
【0051】
X<Y …(2)
【0052】
このような構成によれば、主体金具20に対してガスケット100を脱着する際に、ガスケット100がねじ山21Aにいっそう引っ掛かりにくいため、作業性がより良好となる。
【0053】
<試験例>
上記の形状を有し、4つの爪部の張り出し端に内接する仮想の内接円Rの直径Aを異ならせた複数のガスケットと1つの主体金具とを準備し、主体金具に備えられる雄ねじ部への脱着の可否、および雄ねじ部からの脱落の有無を調べた。
【0054】
各試験例において、内接円Rの直径A、雄ねじ部のねじ谷径B、(A-B)/2の値、および、脱落の有無、脱着の可否を調べた結果を、表1に示した。なお、ねじ谷径Bは、試験に用いた主体金具の雄ねじ部を、投影機を用いてスクリーン等に投影し、投影された主体金具の影から求めた。脱落の有無については、ガスケットが取り付けられたスパークプラグを作業者が振った際に、ガスケットが主体金具から脱落した場合は「有」、脱落しなかった場合は「無」とした。脱着の可否については、作業者が手の力によってガスケットを主体金具に取り付け、取り外しできた場合を「可」とし、できなかった場合を「否」とした。
【0055】
【0056】
(A-B)/2の値が0.65の試験番号1では、雄ねじ部と爪部とのクリアランスが小さすぎ、雄ねじ部からガスケットを作業者の手の力で取り外すことができなかった。(A-B)/2の値が0.75以上の試験番号6、7、8では、ガスケットが取り付けられたスパークプラグを作業者が振った際に、ガスケットが脱落した。(A-B)/2の値が0.69以上0.72以下の試験番号2、3、4、5では、作業者が手の力によってガスケットを主体金具に取り付け、取り外しすることができた。また、ガスケットが取り付けられたスパークプラグを作業者が振っても、ガスケットが脱落しなかった。
【0057】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、ガスケットが4つの爪部が備えていたが、ガスケットに備えられる爪部の数は、3つであってもよく、5つ以上であっても構わない。
(2)上記実施形態では、第2シール部120がガスケット100の内側に向けて凸となるように金属板が湾曲された形状を有していたが、第2シール部の形状は上記実施形態の限りではなく、シリンダヘッド140のシール面141に密着する構成を有していれば任意である。
(3)上記実施形態では、スパークプラグ1は略L字状の接地電極80を備えていたが、接地電極の形状はこの限りでなく、一部が主体金具に電気的に接続されるとともに中心電極30と対向して、中心電極30との間に火花放電を発生させる構成を有していれば任意である。また、接地電極を省略することも可能である。例えば、中心電極80の先端が絶縁体に内包されたバリア放電式のスパークプラグや、中心電極の先端でコロナ放電させるスパークプラグでは接地電極は省略できる。
【符号の説明】
【0058】
1:スパークプラグ
10:絶縁体
11:軸孔
20:主体金具
21:雄ねじ部
21A:ねじ山
21B:ねじ谷
22:ねじ首
23:座部
24:通し孔
30:中心電極
31:中心電極本体
32:チップ
40:端子金具
41:鍔部
42:端子接続部
43:脚部
50:抵抗体
60、70:シール部材
80:接地電極
100:ガスケット
110:第1シール部
111:第1板部
112:第2板部
113:第1湾曲部
114:爪部
114A:張り出し端
120:第2シール部
121:第3板部
122:第4板部
123:第2湾曲部
130:連結湾曲部
140:シリンダヘッド
141:シール面
A:内接円Rの直径
AX:軸線
B:ねじ谷径
C:ねじ山径
R:内接円
X:最大寸法
Y:ねじピッチ