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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】ブレーキ液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/34 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
B60T8/34
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020504474
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 IB2019051522
(87)【国際公開番号】W WO2019171206
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2018038195
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】三村 剛
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-177560(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0274883(US,A1)
【文献】特表2010-540332(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016214329(DE,A1)
【文献】特開2012-001163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ液圧回路の液圧を制御する四輪車用のブレーキ液圧制御装置(10)であって、
ハウジング(110)と、
前記ハウジング(110)の第1の面(110a)に装着されたモータ(96)と、
前記ハウジング(110)の第1の面(110a)に対向する第2の面(110b)に装着された複数の電磁制御弁(34a,34b,36a,36b,54aa,54ba,54ab,54bb,58aa,58ba,58ab,58bb)と、を備え、
前記複数の電磁制御弁(34a,34b,36a,36b,54aa,54ba,54ab,54bb,58aa,58ba,58ab,58bb)は、
マスタシリンダに接続される配管が接続される配管ポート(121a,121b)と前記モータ(96)により駆動されるポンプ(44a,44b)の吐出側とを結ぶ流路(33a,33b)に配置される2つの回路制御弁(36a,36b)と、前記回路制御弁(36a,36b)とホイールシリンダに接続される配管が接続される配管ポート(123a,123b,123c,123d)とを結ぶ流路(51aa,51ba,51ab,51bb)に配置される4つの増圧弁(58aa,58ba,58ab,58bb)と、を含み、
前記複数の電磁制御弁(34a,34b,36a,36b,54aa,54ba,54ab,54bb,58aa,58ba,58ab,58bb)は、前記第1の面(110a)及び前記第2の面(110b)からともに垂直に連続し、前記マスタシリンダに接続される配管が接続される配管ポート(121a,121b)及びホイールシリンダに接続される配管が接続される配管ポート(123a,123b,123c,123d)が形成された第3の面(110c)に近い側から遠い側へと、それぞれ前記第3の面(110c)に平行な列をなすように複数列(L1,L2,L3)に配置され、
前記2つの回路制御弁(36a,36b)と前記4つの増圧弁(58aa,58ba,58ab,58bb)とが同列に配置され
前記複数の電磁制御弁(34a,34b,36a,36b,54aa,54ba,54ab,54bb,58aa,58ba,58ab,58bb)が配置される前記複数列(L1,L2,L3)に沿った方向の長さよりも、前記複数列(L1,L2,L3)に沿った方向に垂直な方向の長さが短い、ブレーキ液圧制御装置(10)。
【請求項2】
前記2つの回路制御弁(36a,36b)のうちの一方の回路制御弁(36a)は、前記4つの増圧弁(58aa,58ba,58ab,58bb)のうちの2つの増圧弁(58aa,58ba)の間に配置され、他方の回路制御弁(36b)は、他の2つの増圧弁(58ab,58bb)の間に配置されている、請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置(10)。
【請求項3】
前記複数の電磁制御弁(34a,34b,36a,36b,54aa,54ba,54ab,54bb,58aa,58ba,58ab,58bb)は、
前記2つの回路制御弁(36a,36b)と、
前記4つの増圧弁(58aa,58ba,58ab,58bb)と、
前記配管ポート(121a,121b)と前記ポンプ(44a,44b)の吸入側とを結ぶ流路(31a,31b)に配置される2つの吸入制御弁(34a,34b)と、
前記ポンプ(44a,44b)の吸入側と前記配管ポート(123a,123b,123c,123d)とを結ぶ流路(53aa,53ba,53ab,53bb)に配置される4つの減圧弁(54aa,54ba,54ab,54bb)と、を含み、
前記第2の面(110b)における前記第3の面(110c)に近い側から遠い側へと3列に配置され、
前記2つの回路制御弁(36a,36b)及び前記4つの増圧弁(58aa,58ba,58ab,58bb)は、前記第2の面(110b)における前記第3の面(110c)に近い側の第1列(L1)に配置され、
前記4つの減圧弁(54aa,54ba,54ab,54bb)は、前記第2の面(110b)における前記第3の面(110c)から遠い側の第3列(L3)に配置され、
前記2つの吸入制御弁(34a,34b)は、前記第1列(L1)と前記第3列(L3)との間の第2列(L2)に配置されている、請求項1又は2に記載のブレーキ液圧制御装置(10)。
【請求項4】
前記ブレーキ液圧制御装置(10)は、前記第2の面(110b)に装着された少なくとも1つの圧力センサ(24,26a,26b)を備え、
前記圧力センサ(24,26a,26b)は、前記2つの回路制御弁(36a,36b)及び前記4つの増圧弁(58aa,58ba,58ab,58bb)が配置された前記第1列(L1)とは異なる前記第2列(L2)又は前記第3列(L3)に配置されている、請求項3に記載のブレーキ液圧制御装置(10)。
【請求項5】
前記圧力センサ(24,26a,26b)は、前記マスタシリンダの内圧を検出する1つの第1の圧力センサ(24)と、前記ホイールシリンダの内圧を検出する2つの第2の圧力センサ(26a,26b)と、を含み、
前記第1の圧力センサ(24)は、前記4つの減圧弁(54aa,54ba,54ab,54bb)とともに第3列(L3)に配置され、
前記2つの第2の圧力センサ(26a,26b)は、前記2つの吸入制御弁(34a,34b)とともに第2列(L2)に配置されている、請求項4に記載のブレーキ液圧制御装置(10)。
【請求項6】
前記第3の面(110c)に、前記マスタシリンダに接続される配管が接続される配管ポート(121a,121b)及び前記ホイールシリンダに接続される配管が接続される配管ポート(123a,123b,123c,123d)のうちの少なくとも一部が形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のブレーキ液圧制御装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制動部へ供給されるブレーキ液の液圧を液圧回路で制御してブレーキ制御を行うブレーキ液圧制御装置が知られている。ブレーキ液圧制御装置は、液圧ユニット及び電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)を備えている。
【0003】
液圧ユニットは、複数の電磁制御弁、ポンプ及びポンプを駆動するモータ等を備えている。これらの複数の電磁制御弁及びモータはECUにより制御されて動作し、ブレーキ液圧回路内の液圧を増減させることで車輪に発生する制動力が制御される(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
複数の電磁制御弁は、ハウジングにおけるモータが装着された面に対向する面に装着されている。また、ハウジングにおけるモータの装着面及び複数の電磁制御弁の装着面からともに垂直に連続する面に、配管が接続される配管ポートの少なくとも一部が形成されている。複数の電磁制御弁は、配管ポートが形成された面に近い側から遠い側へと複数列に分けて配置されている。
【0005】
四輪車に搭載されるブレーキ液圧制御装置は、通常12個の電磁制御弁を備えている。一般的に、複数の電磁制御弁は、1列に最大4つの電磁制御弁が配置されるようにしてハウジングの1つの面に装着されている(例えば、特許文献2を参照)。この複数の電磁制御弁の配置に応じて、複数の電磁制御弁が装着されたハウジングの1つの面の二方向の長さが設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-203880号公報
【文献】特開2005-145239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ブレーキ液圧制御装置を車両に搭載する際には、通常、モータの装着面及び複数の電磁制御弁の装着面が側方を向き、少なくとも一部の配管ポートが形成された面が上方を向くようにしてブレーキ液圧制御装置が設置される。従来のブレーキ液圧制御装置のように1列に配置する電磁制御弁の数を最大4つとする場合、配管ポートが形成された面を上面としたときのハウジングの高さ方向のサイズを小さくすることが困難である。このため、ブレーキ液圧制御装置の重心位置が高くなり、車載時のバランスが悪くなりやすい。その結果、ブレーキ液圧制御装置が振動しやすくなって、音振性が低下するおそれがある。また、ブレーキ液圧制御装置のECUにヨーレートセンサや加速度センサが搭載される場合があるが、ブレーキ液圧制御装置が振動しやすい場合にはこれらのセンサ類のセンシング特性が低下するおそれがある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、車載時の重心位置を低くして、ブレーキ液圧制御装置の振動を抑制可能なブレーキ液圧制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある観点によれば、ブレーキ液圧回路の液圧を制御する四輪車用のブレーキ液圧制御装置であって、ハウジングと、ハウジングの第1の面に装着されたモータと、ハウジングの第1の面に対向する第2の面に装着された複数の電磁制御弁と、を備え、複数の電磁制御弁は、マスタシリンダに接続される配管が接続される配管ポートとモータにより駆動されるポンプの吐出側とを結ぶ流路に配置される2つの回路制御弁と、回路制御弁とホイールシリンダに接続される配管が接続される配管ポートとを結ぶ流路に配置される4つの増圧弁と、を含み、複数の電磁制御弁は、第1の面及び第2の面からともに垂直に連続し、マスタシリンダに接続される配管が接続される配管ポート及びホイールシリンダに接続される配管が接続される配管ポートが形成された第3の面に近い側から遠い側へと、それぞれ第3の面に平行な列をなすように複数列に配置され、2つの回路制御弁と4つの増圧弁とが同列に配置され、複数の電磁制御弁が配置される複数列に沿った方向の長さよりも、複数列に沿った方向に垂直な方向の長さが短い、ブレーキ液圧制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、車載時の重心位置を低くして、ブレーキ液圧制御装置の振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置10を適用可能なブレーキ用油圧回路1の構成例を示す回路図である。
図2】同実施形態に係るブレーキ液圧制御装置をモータの取付面側から見た斜視図である。
図3】同実施形態に係るブレーキ液圧制御装置をECUの取付面側から見た斜視図である。
図4】同実施形態に係るハウジングの内部構成を実線で示した斜視図である。
図5】同実施形態に係るハウジングの正面図である。
図6】同実施形態に係るブレーキ液圧制御装置における複数の電磁制御弁の配置を示す説明図である。
図7】参考例に係るブレーキ液圧制御装置を示す説明図である。
図8】同実施形態に係るブレーキ液圧制御装置に用い得るモータの大きさを示す説明図である。
図9】参考例に係るブレーキ液圧制御装置に用い得るモータの大きさを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<1.ブレーキ用油圧回路>
図1を参照して、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置10を適用可能なブレーキ用油圧回路1について簡単に説明する。
【0014】
図1に示したブレーキ用油圧回路1は、四輪車用のブレーキシステムの液圧回路である。かかるブレーキ用油圧回路1は、倍力装置を用いずに運転者によるブレーキペダルの踏力を増幅してホイールシリンダに伝達するブレーキシステムに適用されている。ただし、ブレーキシステムは、倍力装置を用いる例であってもよい。
【0015】
ブレーキ用油圧回路1は、同一の構成を有する第1の液圧回路28及び第2の液圧回路30を含む。第1の液圧回路28及び第2の液圧回路30には、マスタシリンダ14からブレーキ液が供給される。
【0016】
ブレーキ用油圧回路1は、第1の液圧回路28及び第2の液圧回路30によりそれぞれ車両の対角の位置にある一つの前輪及び一つの後輪を組として油圧を制御する、いわゆるX型配管方式に構成されている。なお、ブレーキシステムはX型配管方式に限られない。
【0017】
第2の液圧回路30は、第1の液圧回路28と同様の構成を有している。以下、第1の液圧回路28について簡単に説明し、第2の液圧回路30の説明を省略する。
【0018】
第1の液圧回路28は、モータ96により駆動されるポンプ44aを備えている。また、第1の液圧回路28は、アキュムレータ71a及びダンパ73aを備えている。
【0019】
ポンプ44aは、モータ96により駆動されてブレーキ液を吐出する。モータ96の駆動は、電子制御ユニット(ECU)90により制御される。なお、第1の液圧回路28に設けられるポンプ44aの数は一つに限られない。
【0020】
マスタシリンダ14に連通する管路には、第1の圧力センサ24が設けられている。第1の圧力センサ24は、マスタシリンダ14の内圧を検出する。
【0021】
右前輪の液圧ブレーキ22aのホイールシリンダ38aに連通する管路には、第2の圧力センサ26aが設けられている。第2の圧力センサ26aは、ホイールシリンダ38aの内圧を検出する。
【0022】
なお、第2の圧力センサ26aは、左後輪の液圧ブレーキ22bのホイールシリンダ38bに連通する管路に設けられ、ホイールシリンダ38bの内圧を検出してもよい。
【0023】
第1の液圧回路28は、複数の電磁制御弁を備えている。複数の電磁制御弁は、常閉型でリニア制御可能な回路制御弁36aと、常閉型でオンオフ制御される吸入制御弁34aと、常開型でリニア制御可能な増圧弁58aa,58baと、常閉型でオンオフ制御される減圧弁54aa,54baを含む。
【0024】
回路制御弁36aは、マスタシリンダ14とポンプ44aの吐出側とを結ぶ流路33aに配置されている。回路制御弁36aは、リニア制御可能になっており、マスタシリンダ14と増圧弁58aa,58baとの間の流路面積を連続的に調整する。
【0025】
吸入制御弁34aは、マスタシリンダ14とポンプ44aの吸入側とを結ぶ流路31aに配置されている。吸入制御弁34aは、マスタシリンダ14とポンプ44aの吸入側との間を連通又は遮断する。
【0026】
増圧弁58aa,58baは、回路制御弁36aとホイールシリンダ38a,38bとを結ぶ流路51aa,51baに配置されている。増圧弁58aa,58baは、リニア制御可能になっており、マスタシリンダ14及び回路制御弁36a側から右前輪の液圧ブレーキ22aのホイールシリンダ38a側及び左後輪の液圧ブレーキ22bのホイールシリンダ38bへの作動油の流量を連続的に調整する。
【0027】
減圧弁54aa,54baは、ポンプ44aの吸入側とホイールシリンダ38a,38bとを結ぶ流路53aa,53baに配置されている。減圧弁54aa,54baは、ポンプ44aの吸入側とホイールシリンダ38a,38bとの間を連通又は遮断する。減圧弁54aa,54baは、開弁状態で右前輪の液圧ブレーキ22aのホイールシリンダ38aに供給された作動油をアキュムレータ71aに供給することにより減圧する。減圧弁54aa,54baの開閉を断続的に繰り返すことにより、ホイールシリンダ38a,38bからアキュムレータ71aに流れる作動油の流量を調節することができる。
【0028】
これらの電磁制御弁の駆動は、ECU90により制御される。なお、それぞれの電磁制御弁は、常閉型又は常開型のいずれであってもよい。
【0029】
第2の液圧回路30は、左前輪の液圧ブレーキ22c及び右後輪の液圧ブレーキ22dを制御する。第2の液圧回路30は、第1の液圧回路28の説明における右前輪の液圧ブレーキ22aのホイールシリンダ38aを左前輪の液圧ブレーキ22cのホイールシリンダ38cに置き換え、左後輪の液圧ブレーキ22bのホイールシリンダ38bを右後輪の液圧ブレーキ22dのホイールシリンダ38dに置き換える以外、第1の液圧回路28と同様に構成される。
【0030】
<2.ブレーキ液圧制御装置>
(2-1.全体構成)
図2及び図3を参照して、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置10の全体構成を説明する。
【0031】
図2は、ブレーキ液圧制御装置10をモータ96の取付面側から見た斜視図である。図3は、ブレーキ液圧制御装置10をECU90の取付面側から見た斜視図である。図3において、ECU90の図示は省略されている。
【0032】
図示したブレーキ液圧制御装置10は、四輪車の各車輪のブレーキ力を制御するための装置である。ブレーキ液圧制御装置10は、液圧ユニット20及びECU90を備えている。液圧ユニット20には図1に示したブレーキ用油圧回路1が形成されている。
【0033】
液圧ユニット20は、ハウジング110を備えている。ハウジング110の第1の面110aには、ポンプ44a,44bを駆動するためのモータ96が装着されている。モータ96は、図示しないモータ軸がハウジング110の内部に向かうように装着されている。
【0034】
ハウジング110の第1の面110aに対向する第2の面110bには、ECU90が取り付けられている。この第2の面110bには、12個の電磁制御弁と3つの圧力センサが装着されている。ECU90はこれらの電磁制御弁及び圧力センサを覆うようにして第2の面110bに取り付けられている。12個の電磁制御弁及び3つの圧力センサは、ECU90に対して電気的に接続されている。
【0035】
12個の電磁制御弁は、2つの回路制御弁36a,36bと、2つの吸入制御弁34a,34bと、4つの増圧弁58aa,58ba,58ab,58bbと、4つの減圧弁54aa,54ba,54ab,54bbを含む。3つの圧力センサは、1つの第1の圧力センサ24と、2つの第2の圧力センサ26a,26bを含む。
【0036】
第1の面110a及び第2の面110bからともに垂直に連続する4つの面110c,110d,110e,110fのうちの第3の面110cには、配管が接続される6つの配管ポートが形成されている。6つの配管ポートは、マスタシリンダに接続される配管が接続される2つの配管ポート121a,121bと、ホイールシリンダに接続される配管が接続される4つの配管ポート123a,123b,123c,123dとを含む。
【0037】
第1の面110a、第2の面110b及び第3の面110cからそれぞれ垂直に連続する第4の面110d及び第5の面110eには、それぞれポンプ44a,44bを含むポンプエレメント40a,40bが装着されている。ポンプ44a,44bは、モータ96のモータ軸の回転に伴って往復動するピストンを有し、ブレーキ液を吸入及び吐出する。
【0038】
第1の面110a及び第2の面110bからともに垂直に連続し、第3の面110cに対向する第6の面110fには、図示しないアキュムレータが設けられている。
【0039】
また、第1の面110a及び第5の面110eには、ダンパ機能を有する支持部材88a,88b,88cが固定されている。支持部材88a,88b,88cには、ブレーキ液圧制御装置10を車体に取り付けるための図示しないブラケットが取り付けられ、当該ブラケットを介してブレーキ液圧制御装置10が車体に搭載される。
【0040】
なお、支持部材88a,88b,88cが固定される位置は、図示した位置に限定されるものではない。
【0041】
(2-2.ハウジングの構成)
図4及び図5は、液圧ユニット20のハウジング110の構成例を示す説明図である。図4は、ハウジング110の内部構成を実線で示した斜視図であり、図5は、図4のハウジング110の正面図である。
【0042】
ハウジング110は、例えばアルミニウム等の軽金属又は金属からなる。ハウジング110には、ブレーキ液の流路である内部流路が形成されている。また、ハウジング110は、モータ、2つのポンプエレメント、複数の電磁制御弁、アキュムレータ及び圧力センサ等が配置される複数の取付部を有している。それぞれの取付部は、例えば穿孔加工によってハウジング110に形成された円柱形状の凹部である。
【0043】
図5に示したハウジング110において、左半分に第1の液圧回路28を形成する内部流路あるいは取付部が設けられ、右半分に第2の液圧回路30を形成する内部流路あるいは取付部が設けられている。
【0044】
ハウジング110は、第3の面110cに、取付部として複数の配管ポート121a,121b,123a,123b,123c,123dを有する。配管ポート121aには、マスタシリンダと第1の液圧回路28とを接続する配管が接続される。配管ポート121bには、マスタシリンダと第2の液圧回路30とを接続する配管が接続される。
【0045】
配管ポート123aには、右前輪の液圧ブレーキのホイールシリンダに接続される配管が接続される。配管ポート123bには、左後輪の液圧ブレーキのホイールシリンダに接続される配管が接続される。配管ポート123cには、左前輪の液圧ブレーキのホイールシリンダに接続される配管が接続される。配管ポート123dには、右後輪の液圧ブレーキのホイールシリンダに接続される配管が接続される。
【0046】
ハウジング110は、第4の面110d及び第5の面110eに、取付部としてポンプ装着部143a,143bを有する。第4の面110dのポンプ装着部143aには、ポンプエレメント40aが装着される。第5の面110eのポンプ装着部143bには、ポンプエレメント40bが装着される。
【0047】
ハウジング110は、第6の面110fに、取付部としてアキュムレータボア139a,139bを有する。アキュムレータボア139a,139bには、それぞれアキュムレータ71a,71bが組み付けられる。
【0048】
ハウジング110は、第1の面110aに、取付部としてモータ装着部147を有している。モータ装着部147には、モータ96が装着される。また、ハウジング110は、第1の面110a側から第2の面110b側へと貫通する貫通孔145を有している。貫通孔145には、モータ96とECU90とを接続する電気配線等が配設される。
【0049】
ハウジング110は、第2の面110bに、取付部として複数の電磁制御弁が装着される弁装着部131a~131d,133a~133b,135a~135b,137a~137dを有している。
【0050】
弁装着部131aには、右前輪の液圧ブレーキのホイールシリンダにブレーキ液を供給する増圧弁58aaが装着される。弁装着部131bには、左後輪の液圧ブレーキのホイールシリンダにブレーキ液を供給する増圧弁58baが装着される。弁装着部131cには、左前輪の液圧ブレーキのホイールシリンダにブレーキ液を供給する増圧弁58abが装着される。弁装着部131dには、右後輪の液圧ブレーキのホイールシリンダにブレーキ液を供給する増圧弁58bbが装着される。
【0051】
弁装着部133aには、第1の液圧回路28の回路制御弁36aが装着される。弁装着部133bには、第2の液圧回路30の回路制御弁36bが装着される。弁装着部135aには、第1の液圧回路28の吸入制御弁34aが装着される。弁装着部135bには、第2の液圧回路30の吸入制御弁34bが装着される。
【0052】
弁装着部137aには、右前輪の液圧ブレーキのホイールシリンダからブレーキ液を排出する減圧弁54aaが装着される。弁装着部137bには、左後輪の液圧ブレーキのホイールシリンダからブレーキ液を排出する減圧弁54baが装着される。弁装着部137cには、左前輪の液圧ブレーキのホイールシリンダからブレーキ液を排出する減圧弁54abが装着される。弁装着部137dには、右後輪の液圧ブレーキのホイールシリンダからブレーキ液を排出する減圧弁54bbが装着される。
【0053】
また、ハウジング110は、第2の面110bに、取付部として複数の圧力センサが装着されるセンサ装着部141a~141cを有している。
【0054】
センサ装着部141aには、右前輪の液圧ブレーキのホイールシリンダの内圧を検出する第2の圧力センサ26aが装着される。センサ装着部141bには、左前輪の液圧ブレーキのホイールシリンダの内圧を検出する第2の圧力センサ26bが装着される。センサ装着部141cには、マスタシリンダの内圧を検出する第1の圧力センサ24が装着される。
【0055】
(2-3.電磁制御弁の配置)
図6は、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置10における複数の電磁制御弁の配置を示す説明図である。
【0056】
複数の電磁制御弁は、第2の面110bにおける第3の面110cに近い側から遠い側へと第1列L1~第3列L3に分けて配置されている。第1列L1には、4つの増圧弁58aa,58ba,58ab,58bb及び2つの回路制御弁36a,36bの計6つの電磁制御弁が配置されている。
【0057】
第2列L2には、2つの吸入制御弁34a,34bと併せて2つの第2の圧力センサ26a,26bが配置されている。第3列には4つの減圧弁54aa,54ba,54ab,54bbと併せて1つの第1の圧力センサ24が配置されている。
【0058】
本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置10では、第1列L1に6つの電磁制御弁が配置されることにより、計12個の電磁制御弁及び3つの圧力センサの配置が3列に収められている。このため、第3の面110cと第6の面110fとの距離Hが、第4の面110dと第5の面110eとの距離Wに比べて短くなっている。通常、ブレーキ液圧制御装置10は、配管ポートが形成された第3の面110cが上方に位置するように車両に搭載されるため、ブレーキ液圧制御装置10の幅(W)よりも高さ(H)が短くなる。
【0059】
図7は、1列に最大4つの電磁制御弁を配置したブレーキ液圧制御装置の参考例を示している。参考例では、第1列L1に2つの吸入制御弁が配置され、第2列に4つの増圧弁が配置されている。また、第3列L3に2つの回路制御弁と1つの圧力センサが配置され、第4列L4に4つの減圧弁が配置されている。
【0060】
参考例に係るブレーキ液圧制御装置では、1列に配置される電磁制御弁が最大4つであるために、計12個の電磁制御弁及び圧力センサが4列に分けて配置されている。このため、ブレーキ液圧制御装置10の幅(W)が短くなる一方で高さ(H)が高くなっている。したがって、ブレーキ液圧制御装置の重心C2の位置が比較的高くなっている。
【0061】
これに対して、図6に示したように、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置10では、モータ96やECU90、ポンプエレメント40a,40b等が組み付けられたブレーキ液圧制御装置10の重心C1の位置が比較的低くなっている。このため、支持部材88a~88cを介してブラケットに固定されるブレーキ液圧制御装置10を安定的に支持させることができる。その結果、ブレーキ液圧制御装置10の振動が抑制され、音振性の向上が図られる。
【0062】
また、ブレーキ液圧制御装置10のECU90には、ESP(Electronic Stability Program)等のブレーキ制御に用いられるヨーレートセンサ又は加速度センサが備えられる場合がある。本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置10では、振動が抑制されることから、これらのヨーレートセンサ又は加速度センサのセンシング特性の向上が図られる。
【0063】
また、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置10では、幅(W)方向の長さが拡大されているため、使用するモータ96の径を大きくすることができる。図8及び図9は、それぞれ本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置10及び参考例に係るブレーキ液圧制御装置に用い得るモータの大きさを示す説明図である。
【0064】
上述のとおり、ハウジング110には、内部流路、配管ポート及び種々の取付部が形成されている。ハウジング110の重量の増加を抑制するために、ハウジング110はできるだけ小さくすることが求められる。このため、モータを固定するためのネジ等の位置も制約を受ける場合が多い。
【0065】
図9に示した参考例に係るブレーキ液圧制御装置の場合、モータ220の配置に対してハウジング210の縦(高さ)方向にはスペースがあるものの、横(幅)方向にはスペースがない。これに対して、図8に示した本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置10の場合、ハウジング110の横(幅)方向のスペースを有効に使用できるため、装着するモータ96の直径R1を参考例の場合のモータ220の直径R2よりも大きくすることができる。
【0066】
参考例に係るブレーキ液圧制御装置においても、ハウジング210の横幅を拡大させることで使用するモータ220の直径を拡大することができるものの、当該拡大分はデッドスペースとなってハウジング210の質量が増大することとなるため好ましくない。
【0067】
このように、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置10では、搭載可能なモータ96の直径を大きくすることができる。したがって、モータ96の出力を同一にする場合、モータ96の軸方向長さを短くすることができる。これにより、ブレーキ液圧制御装置10の重心の位置が、よりブラケットに対する固定位置の中心に近付けられて、ブレーキ液圧制御装置10を安定的に支持させることができる。
【0068】
また、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置10では、ブレーキ液圧回路のうちの第1の液圧回路28において、第1列L1に配置される回路制御弁36aは、2つの増圧弁58aa,58baの間に配置されている。同様に、第2の液圧回路30において、第1列L1に配置される回路制御弁36bは、2つの増圧弁58ab,58bbの間に配置されている。
【0069】
回路制御弁36a,36bがそれぞれ2つの増圧弁58aa,58ba/58ab,58bbの間に位置することにより、ハウジング110の内部に形成される液圧回路の複雑化が軽減されている。これにより、ハウジング110が過度に大きくなることが抑制されている。
【0070】
また、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置10では、ハウジング110の横幅が拡大され、当該横方向に位置する第4の面110d及び第5の面110eにポンプエレメント40a,40bが装着されている(図5を参照)。このため、ポンプエレメント40a,40bの軸方向の長さを長くすることができ、ポンプエレメント40a,40b内に比較的大きいダンパスペースを形成することができる。したがって、別途設けられるダンパ(73a,73b)を省略して、ポンプ44a,44bの駆動によるブレーキ液の圧力脈動の低減効果を向上させることができる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
例えば、上記の実施形態で説明したブレーキ用液圧回路1は、第1の液圧回路28及び第2の液圧回路30にそれぞれダンパ73a,73bを備えていたが、これらのダンパ73a,73bは省略されていてもよい。
【0073】
また、上記の実施形態で説明したブレーキ液圧制御装置10は、ホイールシリンダの内圧を検出するための第2の圧力センサ26a,26bを備えていたが、これらの第2の圧力センサ26a,26bは省略されていてもよい。
【0074】
また、上記の実施形態で説明したブレーキ液圧制御装置10では、マスタシリンダに接続される配管が接続される配管ポート121a,121b及びホイールシリンダに接続される配管が接続される配管ポート123a~123dがすべて第3の面110cに形成されていたが、本発明はかかる例に限定されない。一部の配管ポートが他の面に形成されていてもよい。例えば、マスタシリンダに接続される配管が接続される配管ポート121a,121bが、モータ96が装着された第1の面110aに備えられていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10・・・ブレーキ液圧制御装置、20・・・液圧ユニット、24・・・第1の圧力センサ、26a,26b・・・第2の圧力センサ、34a,34b・・・吸入制御弁、36a,36b・・・回路制御弁、51aa,51ba,51ab,51bb・・・流路、54aa,54ba,54ab,54bb・・・減圧弁、58aa,58ba,58ab,58bb・・・増圧弁、44a,44b・・・ポンプ、96・・・モータ、110・・・ハウジング、110a・・・第1の面、110b・・・第2の面、110c・・・第3の面、121a,121b・・・配管ポート、123a,123b,123c,123d・・・配管ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9