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特許7249327ブロー成形・充填・密封する方法、及びこの方法によって製造される容器製品、特にアンプル製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】ブロー成形・充填・密封する方法、及びこの方法によって製造される容器製品、特にアンプル製品
(51)【国際特許分類】
   B65B 3/02 20060101AFI20230323BHJP
   B29C 49/00 20060101ALI20230323BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20230323BHJP
   B65D 1/09 20060101ALI20230323BHJP
   A61J 1/06 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B65B3/02
B29C49/00
B65D1/00 110
B65D1/09
A61J1/06 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020506318
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018071140
(87)【国際公開番号】W WO2019030142
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-08-02
(31)【優先権主張番号】102017007443.7
(32)【優先日】2017-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514056207
【氏名又は名称】コッヒャー-プラスティック マシーネンバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュパレク
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ゲサー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン グロー
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-135621(JP,A)
【文献】特開2005-350663(JP,A)
【文献】国際公開第2016/124403(WO,A1)
【文献】特開平06-218025(JP,A)
【文献】国際公開第2009/131192(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0045667(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 3/02
B29C 49/00
B65D 1/00
B65D 1/09
A61J 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填及び密封された保存可能な容器製品を、特にアンプル製品の形で製造するためのブロー成形・充填・密封する方法であって、
前記容器製品はプラスチック材料から形成されて単層の容器壁又はアンプル壁を有し、使用時に少なくとも1つの取出し口が開放されて、特に製品内容物の経口使用のための取出しを可能に
特に液体の形で収容されて貯蔵される充填材料の収容容積が50ml未満である、方法において、
該方法に適したプラスチック材料が選択され、該プラスチック材料は使用前及び使用時に容器内容物と相互作用して無味及び/又は無臭であり、或いは味及び/又は臭いが実質的に中性的であり、この中性が長い保存期間でも維持され
製造される製品のプラスチック材料として芳香族ポリエステルポリマー及び/又はポリエステルコポリマー及び/又はこれらの材料のブレンドが使用され、
それぞれの芳香族ポリエステルポリマーとして少なくとも部分的に、ポリエチレンフラノエート(PEF)又はポリエチレンテレフタレート(PET)、並びに、それぞれそれらのコポリマー及び/又はブレンドが使用される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
芳香族ポリエステルポリマーの加工温度として250°C~280°Cの範囲の温度が選択され、及びそれらの加工過程における固有粘度0.6dl/g~1.7dl/gが選択されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
具体的に選択された芳香族ポリエステルポリマー及び/又はコポリマーに対して、プラスチック顆粒の含水量が、製造プロセスの一部である押出しの直前に50ppm未満、好ましくは30ppm未満で選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
使用される芳香族ポリエステルポリマーが10%~80%、好ましくは30%~60%の再生剤と混合されることを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
それぞれの芳香族ポリエステルポリマーとして少なくとも部分的に、
ポリエチレンナフタレート(PEN)、
レフタル酸から作られたポリエステル及び/又はコポリエステル、
特に
ポリブテンテレフタレート(PBT)、
好ましくは、しかしながら、
リコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、
並びに、それぞれそれらのコポリマー及び/又はブレンド、
が使用されることを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~の何れか一項に記載のブロー成形・充填・密封する方法に従って製造された容器、特にアンプル製品であって、
製品材料が少なくとも1種類の芳香族ポリエステルポリマー及び/又はポリエステルコポリマー及び/又はポリエステルコポリマー及び/又はこれらの材料を少なくとも部分的に含むブレンドからなることを特徴とする製品。
【請求項7】
頭部(12)がそれ以外の製品本体(10)から切り離されたときに開放されるそれぞれの取出し口(16)の開口断面積が、25mm2未満、好ましくは10mm2未満であることを特徴とする、請求項に記載の製品。
【請求項8】
取出し口(16)の形状が円形から逸脱しており、好ましくは楕円形又は多角形の形状を有することを特徴とする、請求項に記載の製品。
【請求項9】
製品本体(10)が円形断面ではなく、好ましくは楕円形又は多角形、特に好ましくは六角形の断面を有することを特徴とする、請求項7又は8に記載の製品。
【請求項10】
前記取出し口(16)が、充填材料の取出し中に圧力補償を可能にする少なくとも1つのダクトを有することを特徴とする、請求項7~の何れか一項に記載の製品。
【請求項11】
前記取出し口(16)が、金型分割面上にある少なくとも1つのダクト(40)を備えることを特徴とする、請求項10に記載の製品。
【請求項12】
前記取出し口(16)が、好ましくは丸みを付けた三角形にほぼ対応する断面を有する少なくとも1つのダクト(40)を備えることを特徴とする、請求項10又は11に記載の製品。
【請求項13】
それぞれの充填材料を収容するための製品本体(10)の領域における平均壁厚が0.2mm~0.9mm、好ましくは0.3mm~0.7mmであり、分離部又は目標破断部(20)の領域及び近傍の平均壁厚は0.5mm未満、好ましくは0.3mm未満であることを特徴とする、請求項7~12の何れか一項に記載の製品。
【請求項14】
製品壁が製品内容物の視覚的評価を可能にする高い透明度を有することを特徴とする、請求項6~13の何れか一項に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填及び密封された保存可能な容器製品を、特にアンプル製品の形で製造するためのブロー成形・充填・密封(閉鎖)する方法であって、容器製品はプラスチック材料から形成されて単層の容器壁又はアンプル壁を有し、使用前には一体型であり、使用時には少なくとも1つの取出し口が開放されて、特に製品内容物の経口摂取のための取出しを可能にする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、世界中で導入され、当業界では「bottel pack321タイプ」という登録商標でよく知られている、いわゆるブロー・フィル・シール法(成形同時充填法、BFS法)が提示されている。このような方法は、特に医療目的の充填容器の製造に適しており、これには充填量が例えば0.1ml~10mlの点眼薬用容器としてのアンプルも、通常0.5ml~50mlの容量範囲の経皮又は経口投与液用のアンプルも含まれる。このように充填及び密封されたBFS製品の製造のサイクル時間は約15秒以下の範囲にある。
【0003】
プラスチック材料として低密度ポリエチレンからBFS法により製造された飲用アンプルは、例えば特許文献2から知られている。この公知のプラスチックアンプルは、本体部と、本体部の上部を形成する口部と、切り離し可能な部分を介して口部と連続して形成された頭部とを有する。この口部の上部は、肩部を形成するために口部の直径よりもさらに小さくされた直径を有し、この肩部の上端は切り離し可能な部分を介して頭部の下端まで延びている。
【0004】
プラスチック材料として、専門用語で低密度ポリエチレンを表すLDPEとも表記される低密度のポリエチレンと並んでBFS法に適した他のプラスチック材料は、ポリオレフィンと、専門用語で高密度ポリエチレンを表すHDPEと略称される高密度のポリエチレンプラスチック材料と、さらにポリプロピレンと、並びにそれぞれそれらのブレンド及びコポリマーが使用可能である。これらすべての製造されたプラスチック容器又はアンプル製品において、充填内容物はポリマー材料とのみ接触する。
【0005】
しかしながら、BFS製造プロセスの過程で上記の公知のプラスチック材料を使用する場合、特に水のように敏感な充填材料を充填する際に、感覚刺激障害、即ち内容物の味及び/又は臭いの障害が発生する可能性があり、これらは一般にプラスチック味とも呼ばれる。その理由として、特にアンプルの場合ボトル製品と比べて内側プラスチック表面に対する充填量の比が非常に不利である(即ち小さい)ことに加えて、BFS製造プロセスでは押し出されたまだ熱いポリマーパリソンが充填直前にホットカッターによって切断され、その直後に数秒以内に充填物がこのときまだ熱いポリマー製品内に充填されるため、充填物の感覚刺激性変化が容易に起こり得ることが挙げられる。このことはまた、その都度使用される通常のプラスチックの押出し温度が上昇するに連れて、感覚刺激障害が一般に増加する理由の説明にもなろう。前述の特許文献1及びまた特許文献3にも記載されているように、BFS製造プロセスでは充填物を収容する前に望ましくない味の移行を防ぐために、十分長く洗浄又は換気できるような完成した空容器は原理的に提供されない。これは、例えば市販のプラスチック飲料ボトルの製造に使用される他の充填法でブロー成形法に分類できるプロセス、例えば延伸ブロー成形又は射出ブロー成形では可能である。
【0006】
まさに通常50ml未満の充填量の容器であるBFSアンプル製品を製造する場合に、BFS法で製造されたボトル製品との違いは一層深刻である。なぜならアンプルはBFS製造プロセスでは通常真空が形成されて本来の意味で吹き込まれないからである。
【0007】
充填された容器内での及び/又は容器からの物質の望ましくない浸透に対処するために、特許文献4には既に液状薬剤用のプラスチックアンプルを製造するための方法が示されており、これは以下のステップを含む。共押出しされたチューブ状のパリソンを下側の分割された金型半部の間に保持し、パリソン内に中空部を形成することによって容器本体を成形する。この場合、パリソンは少なくとも2つの層を含まなければならず、そのうち少なくとも1つの機能層は少なくとも1つの技術的特性を備えている。これには、例えばガス透過を防ぐ能力、蒸気透過を防ぐ能力、薬剤投下を防ぐ能力、及び薬剤吸収/吸着を防ぐ能力が含まれる。しかしこのように多層に構成されたBFSアンプルは感覚刺激中立性を改善しない。なぜならこの方法ではBFSポリオレフィンも使用され、感覚刺激的に懸念のある物質が気相で、例えば容器を充填する前に容器の開口部を通って導入される可能性があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102008006073(A1)号明細書
【文献】欧州特許第2269558(B1)号明細書
【文献】米国特許第5897008号明細書
【文献】欧州特許第1616549(B1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、この先行技術から出発して、特にブロー成形・充填・密封する方法で製造される容器製品、特にアンプル製品の製品内容物の、特に感覚刺激障害の形での障害を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、請求項1の特徴をその全体において有する方法、並びにこの方法で製造された請求項8の特徴による容器製品によって解決される。本発明による解決の別の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0011】
請求項1の特徴部により、BFS法に適したプラスチック材料が選択され、このプラスチック材料は使用前及び使用時に容器内容物と相互作用して感覚刺激的に中性又は実質的に中性であり、この中性は長い保存期間でも維持されることによって、製品内容物又は充填物は製造プロセスで使用されるプラスチック材料によって感覚刺激的に不利に影響されないことが達成される。特に、水性充填物の場合でも少なくとも味の障害が最小化され、その結果として訓練された味覚試験者でさえも、いわゆるプラスチック味を有意味な程度に確認できない。ここでは「プラスチック味」という表現はプラスチック臭の官能検査も包含しており、これも訓練された味覚試験者によって確認されなかったか、わずかな程度しか確認されなかった。
【0012】
この場合、単層の充填及び密封された、少なくとも使用前は一体型のアンプル製品のBFS製造のために、プラスチック材料として選択された芳香族ポリエステルポリマーを使用することが特に有利であることが分かった。充填及び密封された容器製品及びアンプル製品を長期間保存した場合でも、味の中立性は実質的に維持される。BFS技術分野の平均的な専門家にとって驚くべきことに、選択された芳香族ポリエステルポリマーを使用することにより、プラスチック材料から貯蔵された充填材料への材料移動が起きて感覚刺激障害を招くことはない。しかもBFS法では、延伸ブロー成形法など公知の製造法とは異なり、製造プロセスで透過を低減する配向、即ちポリマー鎖の延伸が起こることはない。
【0013】
本発明により使用される芳香族ポリエステルポリマーの融解温度及び押出し温度は250°C~280°Cで、一般的に使用されるBFSポリオレフィンの通常160°C~210°Cの範囲にある加工温度を明らかに上回るが、感覚刺激障害は減少する。これには本発明による芳香族ポリエステルの比較的高い固有材料粘度(ASTMD4603に基づいて測定して0.6dl/g~1.7dl/g)も寄与している。
【0014】
さらに、BFS製造プロセスの過程で使用されるプラスチック顆粒の押出し直前の含水量は、具体的に選択された芳香族ポリエステルポリマーに対して50ppm未満、好ましくは30ppm未満の値を選択すると非常に好都合であることが分かった。それによって特に充填及び密封された容器の保存期間中に感覚刺激性変化は最小限に抑えられる。
【0015】
本発明によるBFS法の別の利点は、その環境適合性であり、使用される芳香族ポリエステルポリマーに、10%~80%、好ましくは30%~60%の再生を添加することができる。
【0016】
本発明によれば、以下の特定の芳香族ポリエステルポリマーがBFS法に使用される。
ポリエチレンナフタレート(PEN)、
ポリブテンテレフタレート(PBT)、好ましくは、しかしながら、
ポリエチレンテレフタレート(PET)又はそのコポリエステル及びブレンド、及び、
グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、及び
ポリエチレンフラノエート(PEF)、
テレフタル酸で製造されたコポリエステル、
並びに、
それぞれそれらのコポリマー及び/又はブレンド
【0017】
さらに、頭部がそれ以外の製品本体から切り離されるとそれぞれの取出し口が開かれて露出する開口部断面が25mm2未満、好ましくは10mm2未満であると有利である。この点でこの断面積の減少は、感覚刺激的に懸念のある物質が存在するとしても充填材料又はアンプルのガス空間内にごくわずかしか到達できないことに寄与すると推定される。
【0018】
さらに、特に取り扱いを容易にするために、それぞれの充填材料を収容することを目的とする製品本体の領域における平均壁厚が0.2mm~0.9mm、好ましくは0.4mm~0.6mmになるように、及びそれぞれの開口断面を形成する分離部又は目標破断部の領域及び近傍の平均壁厚は0.5mm未満、好ましくは0.3mm未満であるようにアンプルを設計することが有利である。
【0019】
採用された芳香族ポリエステルポリマーを使用することにより、さらに有利には製品内容物の視覚的評価を可能にする透明度の高い製品壁を得ることができ、しかも既に説明したようにBFS法ではポリマー鎖を延伸することによる物理的変化が起こらない。
【0020】
本発明によって製造されたアンプル製品は高い透明度を有することにより、それらの内容物は、例えば濁り又は不純物の形の変化について容易に検査することができる。これはポリプロピレンなどの古典的なBFSポリオレフィンの場合には、透明度を高める添加剤をプラスチック材料及び他の材料に使用することによってのみ、部分的に達成できるにすぎない。しかし専門用語で「清澄剤」と呼ばれるこのような添加剤は、医療用途には不利である。なぜならそれらの成分は容器の内容物に容易に移行できるが、このことはほとんどの場合に感覚刺激及び/又は医療上の要件に適合しないからである。
【0021】
以下に本発明による方法は、図面に示した様々なアンプル製品に基づいて詳細に説明する。図面は原理図であり、縮尺通りに表現されていない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】アンプル製品を横から見た正面図である。
図2図1のアンプル製品を縦軸又は垂直軸を中心に90度回転した側面図である。
図3a】2つの放出口を備えたアンプル製品の別の実施形態を示す正面図である。
図3b】2つの放出口を備えたアンプル製品の別の実施形態を示す側面図である。
図4】アンプル製品の別の実施形態を上から見た斜視図である。
図5】ルアーテーパーシリンジがアンプル頸部に導入されている、アンプルの別の実施形態を拡大して不完全に示した縦断面図である。
図6図5の線VI-VIで切断して相応に拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1及び図2に示すアンプル製品は、bottel pack(登録商標)法によって製造されており、アンプル製品はワークステーションで真空成形されて、充填及び密封される。原則として、このようなアンプル製品は、複数の容器が互いに連なって接続された、いわゆるアンプルブロックの一部として製造される。
【0024】
図示されたアンプルは、アンプル本体又は製品本体10を有し、その中にアンプルの放出媒体が貯蔵されている。この場合、味の潜在的な変化をできるだけ簡単に検出できるようにするため、放出媒体は塩分が少ない無炭酸ミネラルウォーターである。製品本体10内の放出媒体の充填量は約10mlである。この10mlアンプルを製造するために、ロメラグ社の周知のBFS機、bottel pack321型が使用された。
【0025】
さらに、アンプルは頭部12を有しており、これは使用者がトグルピース14を用いてアンプル本体10からねじ切ることができ、その際にアンプル本体10の上側では取出し口16が開放されて、アンプル内容物を取り出すことができるように開口断面が形成される。さらに図が示すように、全体が円筒形に形成されているアンプル本体10は、頸部18の方向で先細になっており、頸部18はアンプルが開かれていない状態でアンプル本体10とトグルピース14を備えた頭部12との間の接続を形成する。トグルピース14によって頭部12を簡単に切り離すことできるように、上記の接続頸部18と頭部12との間でアンプルに分離部又は目標破断部20が設けられている。頸部18を補強するために、bottel pack製造プロセスの一環として一部として添設された補強ウェブ22を用いることができる。アンプルのこのような構造は十分知られているため、この箇所ではこれ以上詳しく述べない。
【0026】
図1及び図2によるアンプル製品を製造するためのプラスチック材料として、以下の芳香族ポリエステルを使用した。製造業者及び/又は商品名の詳細は括弧内に記載されている。
ポリエチレンテレフタレート(Traytuf9506、M&G Gruppo
Mossi & Ghisolfi)、
ポリエチレンテレフタレートコポリエステル(Polyclear(登録商標)EBM PET5505、インビスタ)、
ポリエチレンナフタレートポリエチレンテレフタレートのブレンド(Hipertuf85032、シェルケミカルズ)、
ポリエチレンフラノエート(PEF、アバンティウム)、
テレフタル酸で製造されたコポリエステル(Tritan Copolyester MX810、イーストマン)、
ポリブテンテレフタレート(Pocan 1501、ランクセス社)、
ポリエチレンテレフタレートグリコール(Eastman MB002及びSKケミカルズS2008)
【0027】
上記の芳香族ポリエステル材料を使用して、ガラス状の透明度と表面光沢を備えたアンプルが得られたが、これらは自動検査システムによっても人間の目によっても、公知の材料ポリプロピレン又は低密度ポリエチレン(LDPE)から作られた、同じ形状と壁厚のアンプルよりもはるかに良好に検査できる。自動検査システムは、例えば本特許所有者の独国特許出願公開第102014006835(A1)号明細書に記載されている。
【0028】
図1及び図2に示されているアンプルは、点眼薬、注射液又は吸入液、懸濁液及び同種のものの非経口、経腸又は経鼻で投与される充填物の容器としても適しており、これらの場合は通常充填及び密封された容器の検査が重要であり、一部規則に定められている。
【0029】
本発明によるBFSポリエステルは典型的に80MPaを超える高い引張強度と2000MPaを超える高い引張弾性率を有し、その機械的特性(ISO527-1-2)はそれ自体標準BFSポリオレフィン(LDPE、HDPE、PP)に「優っている」にもかかわらず、本発明によるアンプルはかなり簡単に開けることができる。その開放トルクは、Mecmeshi社のトルク測定装置Vortex-iで測定して回転速度20/分で平均40Ncm~55Ncmである。このようなトルクは青年や成人が容易に加えることができるので、本発明によるアンプルは特に経口、経腸、舌下に、又は口腔内など局所的に適用される製剤、例えば医薬品、医療製品、栄養補給剤、強壮剤、ビタミン、ホメオパシーなどの単回用量に適している。
【0030】
追加の開口部を通して容器内の圧力補償が可能であれば、例えば舌に溶液又は乳液を塗布するために内容物を絞り出すことによって迅速な取出しが著しく簡単になる。このことは本発明によれば、アンプルを開くときに少なくとも2つの開口部が開放されることにより達成することができる。図3a及び図3bは、そのような2つの取出し口16、17を備えたアンプルの実施形態を示しており、例えば大きい方の取出し口16の直径は2mmであるのに対し、小さい方の開口部17の直径は約1mmである。頭部12が公知のようにトグルピース14によって頸部18から、それぞれ設定可能な分離部又は破断部を介してそれ以外のアンプル又は製品本体10から切り離されていると、2つの取出し口16、17は同時に開放される。このアンプル解決策も、やはり1対の補強ウェブ22を装備されてよい。図3a及び図3bによる容器は、上記の両取出し口16、17を除いて、図1及び図2による解決策とほとんど同じである。共通の目標破断部20として設計することもできる、それぞれの目標破断部を介して、アンプル本体10を同時に開くことにより、両取出し口16、17が開放されて、その結果として改善された換気によりアンプル製品のより迅速な排出が行われる。
【0031】
アンプル本体10が実質的に円形断面ではなく、好ましくは楕円形、菱形又は六角形の断面を有すると、充填材料の計量された取出し、例えば個々の液滴の絞り出しはかなり容易になる。図4によるアンプル本体10は、そのような六角形断面10を示している。このアンプルの変化例でも、頭部12は、ここでは2つのハンドル24、26の形をしたトグルピース14によって、分離部又は目標破断部20に沿ってアンプル本体10の頸部18から取り外すことができる。アンプル本体10には、それ自体公知の方法で注射針(図示せず)を挿入して固定することができ、この注射針の端部は頭部12を取り外した後で適用作業のために露出される。
【0032】
取出し中に容器内の圧力補償が可能であれば、取出し口16から導入された飲用ストローを用いた吸引など充填材料の取出しが著しく容易になる。このことは本発明によれば、開口断面が円形ではなく、例えば楕円形になり、そのため飲用ストローの外面に対してシールできないように取出し口16が形成されていることによって達成できる。
【0033】
例えば、口腔用途(非6%ルアーコネクター、オーラルチップ、EN/ISO80369-3:2016)又は歯科用(EN1707:1996及びEN20594-1:1993に準拠した6%ルアーテーパー)のために、注射器のテーパー接続を用いて内容物をほぼ完全に取り出すことは、取出し口16が取り外し中の容器内の圧力補償を可能にする場合も同様に簡単になる。このことは本発明によれば、取出し口16の形状が、それぞれ使用されるテーパー接続の形状とわずかに異なるだけで達成できる。これは例えば少なくとも1つの換気用の長手方向ダクトによって実現できるが、このダクトは頭上取出しの際に液体が漏れ出ることがないように小さく浅い。好ましくは少なくとも1つの換気ダクトが容器の金型分割面内にあり、丸みを帯びた三角形の断面に対応する好適なダクト断面を有する。
【0034】
そのような換気室の解決策が図5及び図6に示されている。アンプル本体10の底部とは反対側の端部には、頸部18の第1の部分28が続いており、その直径はアンプル本体10の上側で円錐状に細くなっているため、アンプル本体10そのものの好ましくは円筒形の直径よりも小さい。この部分28に直径がより小さい円筒部30が続き、その内径は当該注射器34のルアーテーパー32の最大直径よりも幾分小さいが、その最小直径よりも幾分大きく選択されている。そうすることによって導入されたルアーテーパー32と、部分30の領域における頸部18の内壁との間に完結した線状当接が達成され、しかも図6に例示されているように、セクション30の領域で、液体の通過は妨げるが空気の通過を許す断面平面に沿って達成される。このアンプル本体10の本実施形態では、頸部18の部分30に、張り出した環状隆起部36が隣接し、その軸方向長さは、注射器34の注射器本体のルアーテーパー32を支持する端面が頸部18の自由端面38が当接したときに、ルアーテーパー32が液体の通過を妨げるのに必要な所要の、しかし比較的わずかな押圧力で頸部18の円筒部30の内壁に当接するように選択されている。アンプル本体10に連結された注射器34は、注射器端部として9%ルアーテーパー32を有することが好ましい。特に図1及び図2並びに図3a及び図3bによるアンプル製品10は、適当なルアーテーパー注射器34を介して製品内容物を取り出すために比較可能に使用することができる。
【0035】
別の部分30の領域でルアーテーパー32と頸部18との間の空気の通過を改善するために、この部分30はアンプル製品10の長手方向溝線に対して直径上で正対する位置に配置された2箇所で換気ダクト40が、内側に向かって開いた長手方向溝の形で装備されており、その断面は好ましくは丸みを帯びた三角形(図6参照)の形状で、流入する空気が液体の漏出を防ぐように選択されている。所望の換気を達成するには、単一の換気ダクト40のみあれば足りる。この場合は、必要に応じてダクト40の断面を相応に大きくする。単一の換気ダクト40の場合、ルアーテーパー32の外周は頸部18の部分30の他の壁部分に偏心的に当接する。さらに製造技術上の理由から、アンプルの長手方向溝線に対して平行に延びるそれぞれの通気ダクト40は金型半部の平面に位置し、この平面で一緒にされてアンプルの成形を可能にすることが有利である。
【0036】
所定の流体を収容するための容器部分を備えたプラスチック製のアンプルの図示されていない別の実施形態において、この容器部分は頭部によって閉じることができる頸部を装備され、この頸部は空気が容器部分の内部へ入るためのダクト状進入部を備えており、効果的な換気のために、上記の空気進入部は頸部の外周及び/又は内周に少なくとも部分的に配置された少なくとも1つの環状ダクトからなる。これは注射器本体又はカニューレ本体によって容器内容物をより迅速に取り出すことを可能にする。
【0037】
アンプルを再び密封可能にすることが所望される場合、これはアンプルを密封する前に相応の追加コンポーネントを導入することによって可能である。このことは独国特許出願DE102007007474B3号(ハンゼン)に2部分からなるスポイトインサートの例で詳細に記されている。使用される芳香族ポリエステルポリマーの固有粘度は、ASTMD4603に準拠して測定して、好ましくは0.6dl/g~1.7dl/g、特に好ましくは0.8dl/g~1.5dl/gの範囲にある。
【0038】
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、並びに付属のブレンドとコポリマーの場合は、0.8dl/gを超える固有粘度が選好される。
【0039】
さらに、特にポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンフラノエートを使用する場合、顆粒の含水量は押出しの直前に50ppmを超えないように選択すること、好ましくは含水量を30ppm未満とすることが好都合であることが分かった。
【0040】
分離部又は目標破断部20の領域におけるアンプル本体10の平均壁厚は、0.45mm未満、好ましくは0.3mm未満であるべきである。アンプル本体10の領域におけるアンプルの平均壁厚は0.2mm~0.9mm、好ましくは0.3mm~0.7mmであるべきである。アンプルは、25mm2未満、好ましくは10mm2未満の小さい開口断面を有する。
【0041】
上記の本発明による基準を順守すると、水性充填物の場合に感覚刺激障害を最小限に抑えることができるが、これは驚くべきことである。なぜなら本発明で使用される芳香族ポリエステルポリマーの溶融温度及び押出し温度は250°C~280°Cの範囲にあり、通常BFS製造プロセスの過程で使用されるポリオレフィンの典型的な加工温度160℃~210℃の範囲をはるかに上回るからである。
【0042】
本発明によるアンプルの別の利点は、リサイクルされたプラスチック材料を使用できる可能性である。そのため製造の過程で元の芳香族ポリエステルポリマーに、10~80%、好ましくは30~60%の再生物を添加できる。
【0043】
感覚刺激特性を検査するために、規格DIN10955:2004-06に基づく官能検査を実施した。この検査の目的は、提示されたBFS製造プロセスの過程で使用されるBFSポリマーが、低塩分の無炭酸ミネラルウォーターの形で検査物質の臭い又は味の変化を招くかどうかを確認することである。この検査は、定義された条件下で被験材料から空間(臭い検査)に移行するか、又は検査物質(味覚検査)に移行する官能的作用物質を検出する。使用されたBFS法の範囲内で芳香族ポリエステル材料を使用すると、訓練された味覚試験者によって被験水の味のわずかな変化しか検出できず、芳香族ポリエステルポリマーから製造されたアンプルは、公知のBFSポリオレフィンから製造されたアンプルより明らかに優れていた。
【0044】
ポリエチレンフラノエート含有ポリマーの使用は、公知のポリエチレンベースのプラスチックの使用に比べて明らかに有利である。例えばそれは微生物学的な観点から選好される高温充填、又は結晶化する傾向のある高濃度溶液を安定化するための密閉された容器の熱処理を可能にする。
【0045】
以下に実施例を示す。ドイツのヴァイブリンゲンに所在するロメラグ社のBFS機械、bottel pack321型を使用した。それにより図1図3及び図4に示すような容器容量約10mlのアンプルを製造し、これらのアンプルにミネラルと味の少ない無炭酸水5~10mlを充填した。ポリマー材料としてM&Gケミカルズ(Gruppo Mossi & Ghisolfi)のPET、タイプ名称Traytuf9506を使用した(実験番号1参照)。ディジカラー社のモレキュラーシーブ乾燥剤を用いて、顆粒を120°C及び空気露点マイナス30°C以下で10時間放置して含水量36ppm(3サンプルの平均値)に乾燥させ、水分から保護してBFSシステムの押出し機に供給した。乾燥したポリマーの固有粘度は、ASTMD4603に基づいて測定して0.94dl/gであった。アンプル製造時の押出し温度は252°C、質量圧力は26.2(MPa)であった。
【0046】
同様の方法で、異なる形状と充填量の別のポリマーアンプルが種々のBFSシステムで製造された(実験番号2以下参照)。先行技術への参照として、ポリスチレン(PS)、及び両BFSポリオレフィンポリプロピレンの例としてポリプロピレン(ライオンデル・バセル社のPureilRP270G)と、低密度ポリエチレンLDPE(ライオンデル・バセル社のPureil3020D)を使用した(実験番号Refa-c参照)。
【0047】
すべての実験の詳細を次の表にまとめる。
【0048】
【表1】
【0049】
規格DIN510955:2004-06に基づく官能検査を実施した。この検査の目的は、使用されたBFSポリマー/BFS法が、検査物質(低塩分無炭酸水)の臭い又は味の変化を来たすかどうかを確認することであった。この検査は定義された条件下で被験材料から空間(臭い検査)に移行するか、又は空間を介して又は直接接触して検査物質(味覚検査)に移行する官能的作用物質を検出する。結果、即ち最初の水と比較した感覚刺激性変化は、上記の表に含まれている。
【0050】
驚くべきことに、芳香族ポリエステル材料では訓練された味覚試験者によって被験水のわずかな味の変化しか検出できず、PEF、PET材料、並びにそれらのコポリエステルから製造されたアンプルは、参照材料(PS、PP、及びLDPE)から製造されたアンプルより明らかに優れていた。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6