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特許7249337ワイヤレス信号の統計パラメータのグルーピングに基づく動き検出
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】ワイヤレス信号の統計パラメータのグルーピングに基づく動き検出
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/87 20060101AFI20230323BHJP
   G01S 13/56 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
G01S13/87
G01S13/56
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020518647
(86)(22)【出願日】2018-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 CA2018050078
(87)【国際公開番号】W WO2019084667
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】15/799,768
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】318010214
【氏名又は名称】コグニティヴ システムズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ピャオ ユンフェン
(72)【発明者】
【氏名】オレカス クリストファー ヴィータウタス
(72)【発明者】
【氏名】オマー モハンマド
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/103394(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/137285(WO,A1)
【文献】特開2006-194716(JP,A)
【文献】特開2008-039616(JP,A)
【文献】特開2007-071631(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0377704(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0073346(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動き検出方法であって、
空間を通って送信されてワイヤレス通信デバイスにて受信された複数のワイヤレス信号に基づいて複数の信号を取得するステップと、
前記複数の信号の各々に対して統計パラメータのセットの個々の値を計算するステップと、
前記値のグルーピングを識別するステップと、
1又は2以上のプロセッサの動作によって、前記識別されたグルーピングを使用する動き検出プロセスを実行して、前記空間内で物体が移動したかどうかを判定するステップと、
を含み、
前記統計パラメータのセットは、第1の統計パラメータと第2の統計パラメータとを含み、
前記第1の統計パラメータは平均値であり、前記第2の統計パラメータは標準偏差であり、
前記グルーピングを識別するステップは、ビンのセットと前記各ビンに関する量とを含むヒストグラムデータを生成するステップを含み、前記各ビンは、前記統計パラメータの各々に関するそれぞれの範囲に対応する、方法。
【請求項2】
前記ヒストグラムデータを生成するステップは、前記第1及び第2の統計パラメータの値に基づいて前記各ビンに関する量を計算するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の統計パラメータのための前記値を初期行列に投入するステップと、
前記初期行列をフィルタリングして、フィルタリングされた行列を得るステップと、
前記フィルタリングされた行列から前記ヒストグラムデータを生成するステップと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記初期行列内の前記第1及び第2の統計パラメータのための値は、複素値であり、各複素値は、前記複数の信号のうちの1つに対応しており、前記第1の統計パラメータの値を表す実数成分と、前記第2の統計パラメータの値を表す虚数成分とを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記初期行列をフィルタリングするステップは、
特異値分解を実行することによって前記初期行列から回転行列、反射行列、及び特異値の初期セットを計算するステップと、
前記初期セット内の前記特異値のサブセットをゼロにすることによって、フィルタリングされた特異値セットを形成するステップと、
前記フィルタリングされた特異値セット、前記回転行列、及び前記反射行列から、前記フィルタリングされた行列を構築するステップと、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記初期行列をフィルタリングするステップは、前記初期行列をスケーリングするステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒストグラムデータは、多次元ヒストグラムに対応し、前記動き検出プロセスを実行するステップは、前記多次元ヒストグラムの各次元に沿った前記量の合計を求めるステップと、前記合計に基づいてチェック値を計算するステップと、前記チェック値をそれぞれの閾値と比較するステップとを含む、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記動き検出プロセスを実行するステップは、前記チェック値のセットに基づいて動きシグネチャ値を計算するステップと、それぞれの期間にわたって前記動きシグネチャ値を比較するステップとを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒストグラムデータ及び範囲スケーリング値に基づいて範囲推定値を計算するステップと、前記範囲推定値に基づいて前記動き検出プロセスによって検出された動きの相対的位置を決定するステップと、を含む、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒストグラムデータ及び前記範囲スケーリング値に基づいて前記範囲推定値を計算するステップは、前記ヒストグラムデータを表す行列と、要素が前記範囲スケーリング値を含む範囲スケーリング行列との行列内積を計算するステップとを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ワイヤレス通信デバイスにて受信した前記複数のワイヤレス信号の周波数領域表現を得るステップであって、前記周波数領域表現は周波数成分を含む、ステップと、
前記周波数領域表現における前記周波数成分のサブセットに基づいて前記値を生成するステップと、
を含む、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
動き検出システムであって、
データ処理装置と、
前記データ処理装置によって実行されたときに、動作を実行するように動作可能な命令を格納するメモリと、
を備え、前記動作は、
空間を通って送信されてワイヤレス通信デバイスにて受信された複数のワイヤレス信号に基づいて複数の信号を取得するステップと、
前記複数の信号の各々に対して統計パラメータのセットの個々の値を計算するステップと、
前記値のグルーピングを識別するステップと、
前記識別されたグルーピングを使用する動き検出プロセスを実行して、前記空間内で物体が移動したかどうかを判定するステップと、
を含み、
前記統計パラメータのセットは、第1の統計パラメータと第2の統計パラメータとを含み、
前記第1の統計パラメータは平均値であり、前記第2の統計パラメータは標準偏差であり、
前記グルーピングを識別するステップは、ビンのセットと前記各ビンに関する量とを含むヒストグラムデータを生成するステップを含み、前記各ビンは、前記統計パラメータの各々に関するそれぞれの範囲に対応する、動き検出システム。
【請求項13】
前記ヒストグラムデータを生成するステップは、前記第1及び第2の統計パラメータの値に基づいて各ビンに関する前記量を計算するステップを含む、請求項12に記載の動き検出システム。
【請求項14】
前記第1及び第2の統計パラメータのための値を初期行列に投入するステップと、
前記初期行列をフィルタリングして、フィルタリングされた行列を得るステップと、
前記フィルタリングされた行列から前記ヒストグラムデータを生成するステップと、
を含む、請求項13に記載の動き検出システム。
【請求項15】
前記初期行列内のエントリは、複素値であり、各複素値は、前記複数の信号のうちの1つに対応しており、前記第1の統計パラメータの値を表す実数成分と、前記第2の統計パラメータの値を表す虚数成分とを含む、請求項14に記載の動き検出システム。
【請求項16】
前記初期行列をフィルタリングするステップは、
特異値分解を実行することによって前記初期行列から回転行列、反射行列、及び特異値の初期セットを計算するステップと、
前記初期セット内の前記特異値のサブセットをゼロにすることによって、フィルタリングされた特異値セットを形成するステップと、
前記フィルタリングされた特異値セット、前記回転行列、及び前記反射行列から、前記フィルタリングされた行列を構築するステップと、
を含む、請求項15に記載の動き検出システム。
【請求項17】
前記初期行列をフィルタリングするステップは、前記初期行列をスケーリングするステップを含む、請求項14に記載の動き検出システム。
【請求項18】
前記ヒストグラムデータは、多次元ヒストグラムに対応し、前記動き検出プロセスを実行するステップは、前記多次元ヒストグラムの各次元に沿った前記量の合計を求めるステップと、前記合計に基づいてチェック値を計算するステップと、前記チェック値をそれぞれの閾値と比較するステップとを含む、請求項12から17の何れか一項に記載の動き検出システム。
【請求項19】
前記動き検出プロセスを実行するステップは、前記チェック値のセットに基づいて動きシグネチャ値を計算するステップと、それぞれの期間にわたって前記動きシグネチャ値を比較するステップとを含む、請求項18に記載の動き検出システム。
【請求項20】
前記ヒストグラムデータ及び範囲スケーリング値に基づいて範囲推定値を計算するステップと、前記範囲推定値に基づいて前記動き検出プロセスによって検出された動きの相対的位置を決定するステップと、を含む、請求項12から17の何れか一項に記載の動き検出システム。
【請求項21】
前記ヒストグラムデータ及び前記範囲スケーリング値に基づいて前記範囲推定値を計算するステップは、前記ヒストグラムデータを表す行列と、要素が前記範囲スケーリング値を含む範囲スケーリング行列との行列内積を計算するステップとを含む、請求項20に記載の動き検出システム。
【請求項22】
前記ワイヤレス通信デバイスにて受信した前記複数のワイヤレス信号の周波数領域表現を得るステップであって、前記周波数領域表現は周波数成分を含む、ステップと、
前記周波数領域表現における前記周波数成分のサブセットに基づいて前記値を生成するステップと、
を含む、請求項12から17の何れか一項に記載の動き検出システム。
【請求項23】
データ処理装置によって実行されたときに、動作を実行するように動作可能な命令を格納するコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記動作は、
空間を通って送信されてワイヤレス通信デバイスにて受信された複数のワイヤレス信号に基づいて複数の信号を取得するステップと、
前記複数の信号の各々に対して統計パラメータのセットの個々の値を計算するステップと、
前記値のグルーピングを識別するステップと、
前記識別されたグルーピングを使用する動き検出プロセスを実行して、前記空間内で物体が移動したかどうかを判定するステップと、
を含み、
前記統計パラメータのセットは、第1の統計パラメータと第2の統計パラメータとを含み、
前記第1の統計パラメータは平均値であり、前記第2の統計パラメータは標準偏差であり、
前記グルーピングを識別するステップは、ビンのセットと前記各ビンに関する量とを含むヒストグラムデータを生成するステップを含み、前記各ビンは、前記統計パラメータの各々に関するそれぞれの範囲に対応する、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項24】
前記ヒストグラムデータは、多次元ヒストグラムに対応し、前記動き検出プロセスを実行するステップは、前記多次元ヒストグラムの各次元に沿った前記量の合計を求めるステップと、前記合計に基づいてチェック値を計算するステップと、前記チェック値をそれぞれの閾値と比較するステップとを含む、請求項23に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項25】
前記動き検出プロセスを実行するステップは、前記チェック値のセットに基づいて動きシグネチャ値を計算するステップと、それぞれの期間にわたって前記動きシグネチャ値を比較するステップとを含む、請求項24に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、「Motion Detection Based on Groupings of Statistical Parameters of Wireless Signals(ワイヤレス信号の統計パラメータのグルーピングに基づく動き検出)」と題する2017年10月31日出願の米国特許出願第15/799,768号に対する優先権を主張するものであり、その開示内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
以下の説明は、動き検出に関する。
【背景技術】
【0003】
動き検出システムは、例えば、部屋又は屋外エリア内の物体の移動を検出するのに使用されている。幾つかの動き検出システムの実施例において、赤外線センサ又は光学センサが、これらのセンサの視野内の物体の移動を検出するのに使用される。動き検出システムは、セキュリティシステム、自動制御システム、及びその他のタイプのシステムで使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】例示的なワイヤレス通信システムを示す図である。
図2A】ワイヤレス通信デバイス間で通信される例示的なワイヤレス信号を示す図である。
図2B】ワイヤレス通信デバイス間で通信される例示的なワイヤレス信号を示す図である。
図3】ワイヤレス通信デバイスにて受信されたワイヤレス信号に基づいて統計パラメータの行列を生成する例示的な処理を示す図である。
図4図3において生成された行列に基づく例示的なプロット及び例示的なヒストグラムデータを示す図である。
図5A図4のヒストグラムデータに基づいて空間内のチャネル摂動を検出して分類する例示的な処理を示す図である。
図5B図4のヒストグラムデータに基づいて空間内のチャネル摂動を検出して分類する例示的な処理を示す図である。
図5C図4のヒストグラムデータに基づいて空間内のチャネル摂動を検出して分類する例示的な処理を示す図である。
図6図4のヒストグラムデータに基づいて範囲推定値を計算する例示的な処理を示す図である。
図7図3において生成された行列のフィルタリングされていない値及びフィルタリングされた値に基づく例示的なプロットを示す図である。
図8A】統計パラメータをスケーリングして再正規化する例示的な処理を示す図である。
図8B】統計パラメータをスケーリングして再正規化する例示的な処理を示す図である。
図9A】受信したワイヤレス信号の統計パラメータ値をスケーリングするための例示的な信号品質メトリック値、時間メトリック値、及びスケーリング係数値のプロットを示す図である。
図9B】受信したワイヤレス信号の統計パラメータ値をスケーリングするための例示的な信号品質メトリック値、時間メトリック値、及びスケーリング係数値のプロットを示す図である。
図10】受信したワイヤレス信号の統計パラメータに基づいて動きを検出する例示的な処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書で説明する内容の幾つかの態様では、物体の動きが、ワイヤレス信号の統計パラメータに基づいて検出される。ワイヤレス信号は、第1のワイヤレス通信デバイスで受信することができ、ワイヤレス通信デバイス間の空間を通って送信される動きプローブ信号に基づくことができる。各受信ワイヤレス信号に関する統計パラメータは、この受信ワイヤレス信号(又はそのサブセット)の周波数成分に基づいて計算することができる。例えば、統計パラメータは、場合によっては、受信したワイヤレス信号の周波数領域表現の周波数成分の平均値及び標準偏差を含むことができる。
【0006】
統計パラメータ値のグルーピングが識別され、動き検出プロセスは、この識別された統計パラメータ値のグルーピングを使用して、物体の動きが生じたか否かを検出することができる。例えば、統計パラメータ値の分布を表すヒストグラムデータが生成され解析されて、空間内のチャネル摂動が、物体の動きに起因するか又は干渉に起因するかが判定できる。場合によっては、ヒストグラムデータは、行列形式であり得る。一部の実施構成において、動き検出プロセスは、ヒストグラムデータ行列に対して1又は2以上の演算を実行してチェック値を計算し、このチェック値が、それぞれの閾値と比較されて、チャネル摂動が生じたか否かが判定される。動きシグネチャ値は、計算されたチェック値に基づいて決定され、動きシグネチャ値が、解析されて(例えば、値のパターンが識別されて)、チャネル摂動が、物体の動きに起因するか又は干渉信号に起因するかが判定できる。一部の実施構成において、統計パラメータの値は、動き検出プロセスで使用される前にフィルタリングすることができる。フィルタリング処理は、統計パラメータ値の初期行列に対して実行される特異値分解と、信号品質メトリック値、時間係数値又はこれらの組み合わせに基づくスケーリングとを含むことができる。
【0007】
本明細書で説明するシステム及び技法は、場合によっては、1又は2以上の利点を提供することができる。例えば、動きは、デバイス間の明確な見通し線を必要とせずに、ワイヤレス通信デバイス間で空間を通って送信されたワイヤレス信号を使用して検出することができる。動き及び動きの様々なカテゴリは、ワイヤレス信号の統計パラメータを解析することによってより効率的に検出することができる。例えば、生物(例えば、人物又は動物)の動きに起因するチャネル摂動は、干渉信号、又は無生物(例えば、扇風機)による動きと区別することができる。
【0008】
図1は、例示的なワイヤレス通信システム100を示している。例示的なワイヤレス通信システム100は、3つのワイヤレス通信デバイス、すなわち、第1のワイヤレス通信デバイス102A、第2のワイヤレス通信デバイス102B、及び第3のワイヤレス通信デバイス102Cを含む。例示的なワイヤレス通信システム100は、追加のワイヤレス通信デバイス及び他のコンポーネント(例えば、追加のワイヤレス通信デバイス、1又は2以上のネットワークサーバ、ネットワークルータ、ネットワークスイッチ、ケーブル、又は他の通信リンクなど)を含むことができる。
【0009】
例示的なワイヤレス通信デバイス102A、102B、及び102Cは、例えば、ワイヤレスネットワーク規格又は別のタイプのワイヤレス通信プロトコルに従って、ワイヤレスネットワーク内で動作することができる。例えば、ワイヤレスネットワークは、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、又は別のタイプのワイヤレスネットワークとして動作するように構成することができる。WLANの例は、IEEEによって開発された規格の802.11ファミリのうちの1又は2以上に従って動作するように構成されたネットワーク(例えば、Wi-Fiネットワーク)などを含む。PANの例は、近距離通信規格(例えば、BLUETOOTH(登録商標)、近距離無線通信(NFC)、ZigBee(登録商標))、ミリ波通信などに従って動作するネットワークを含む。
【0010】
一部の実施構成において、ワイヤレス通信デバイス102A、102B、及び102Cは、例えば、セルラネットワーク規格に従ってセルラネットワーク内で通信するように構成することができる。セルラネットワークの例は、グローバル移動通信システム(GSM)及びGSM進化型高速データレート(EDGE)又はEGPRSなどの2G規格、符号分割多元接続(CDMA)、広帯域符号分割多元接続(WCDMA)、ユニバーサル移動通信システム(UMTS)、及び時分割同期符号分割多元接続(TD-SCDMA)などの3G規格、ロングタームエボリューション(LTE)及びLTEアドバンスト(LTE-A)などの4G規格などに従って構成されたネットワークを含む。
【0011】
図1に示されている実施例では、ワイヤレス通信デバイス102A、102B、及び102Cは、標準のワイヤレスネットワークコンポーネントとすること又はそれを含むことができる。例えば、ワイヤレス通信デバイス102A、102B、及び102Cは、市販のWi-Fiアクセスポイント、又はWAPのモデム上の命令(例えば、ソフトウェア又はファームウェア)として組み込まれた本明細書に記載の1又は2以上の動作を実行する別のタイプのワイヤレスアクセスポイント(WAP)とすることができる。一部の事例では、ワイヤレス通信デバイス102A、102B、及び102Cは、例えば、市販のメッシュネットワークシステム(例えば、GOOGLE WIFI)などのワイヤレスメッシュネットワークのノードとすることができる。一部の事例では、別のタイプの標準又は従来型Wi-Fi送信器デバイスが使用できる。ワイヤレス通信デバイス102A、102B、及び102Cは、Wi-Fiコンポーネントを伴わずに実装でき、例えば、他のタイプの標準又は非標準ワイヤレス通信が、動き検出に使用することができる。一部の事例では、ワイヤレス通信デバイス102A、102B、及び102Cは、専用動き検出システムとすること、又はその一部分とすることができる。例えば、専用動き検出システムは、ハブデバイス及び1又は2以上のビーコンデバイス(リモートセンサデバイスとして)を含むことができ、ワイヤレス通信デバイス102A、102B、及び102Cは、動き検出システム内のハブデバイス又はビーコンデバイスの何れかとすることができる。
【0012】
図1に示されているように、例示的なワイヤレス通信デバイス102Cは、モデム112、プロセッサ114、メモリ116、及び電源ユニット118を含み、ワイヤレス通信システム100内のワイヤレス通信デバイス102A、102B、及び102Cは、何れも、同じ、追加の、又は異なるコンポーネントを含むことができ、これらのコンポーネントは、図1に示されているように又は別の方法で動作するように構成することができる。一部の実施構成において、ワイヤレス通信デバイスのモデム112、プロセッサ114、メモリ116、及び電源ユニット118は、共通のハウジング又は他の組立体に一緒に収容される。一部の実施構成において、ワイヤレス通信デバイスのコンポーネントのうちの1又は2以上は、例えば別個のハウジング又は他の組立体に別々に収容することができる。
【0013】
例示的なモデム112は、ワイヤレス信号を通信する(受信する、送信する、又はそれら両方を行う)ことができる。例えば、モデム112は、ワイヤレス通信規格(例えば、Wi-Fi又はBluetooth)に従って書式設定された無線周波数(RF)信号を通信するように構成することができる。モデム112は、図1に示されている例示的なワイヤレスネットワークモデム112として実装すること、又は例えば他のタイプのコンポーネントもしくはサブシステムを用いて別の方法で実装することができる。一部の実施構成において、例示的なモデム112は、無線サブシステム及びベースバンドサブシステムを含む。一部の事例では、ベースバンドサブシステム及び無線サブシステムは、共通のチップ又はチップセット上に実装することができ、或いはカード又は別のタイプの組み立てられたデバイスに実装することができる。ベースバンドサブシステムは、例えば、リード線、ピン、ワイヤ、又は他のタイプの接続によって無線サブシステムに結合することができる。
【0014】
一部の事例では、モデム112内の無線サブシステムは、1又は2以上のアンテナ及び無線周波数回路を含むことができる。無線周波数回路は、例えば、アナログ信号をフィルタリング、増幅、又はそれ以外の方法で調整する回路、ベースバンド信号をRF信号にアップコンバートする回路、RF信号をベースバンド信号にダウンコンバートする回路などを含むことができる。このような回路は、例えば、フィルタ、増幅器、ミキサ、局部発振器などを含むことができる。無線サブシステムは、ワイヤレス通信チャネル上で無線周波数ワイヤレス信号を通信するように構成することができる。一例として、無線サブシステムは、無線チップ、RFフロントエンド、及び1又は2以上のアンテナを含むことができる。無線サブシステムは、追加の又は異なるコンポーネントを含むことができる。一部の実施構成において、無線サブシステムは、例えばWi-Fiモデム、ピコ基地局モデムなどの従来型モデムからの無線電子機器(例えば、RFフロントエンド、無線チップ、又は類似のコンポーネント)とすること、又はそれらを含むことができる。一部の実施構成において、アンテナは、複数のアンテナを含む。
【0015】
一部の事例では、モデム112内のベースバンドサブシステムは、例えば、デジタルベースバンドデータを処理するように構成されたデジタル電子機器を含むことができる。一例として、ベースバンドサブシステムは、ベースバンドチップを含むことができる。ベースバンドサブシステムは、追加の又は異なるコンポーネントを含むことができる。一部の事例では、ベースバンドサブシステムは、デジタル信号プロセッサ(DSP)デバイス又は別のタイプのプロセッサデバイスを含むことができる。一部の事例では、ベースバンドシステムは、デジタル処理論理回路を含んで、無線サブシステムを動作させること、無線サブシステムを介してワイヤレスネットワークトラフィックを伝達すること、無線サブシステムを介して受信した動き検出信号に基づいて動きを検出すること、又は他のタイプの処理を実行することができる。例えば、ベースバンドサブシステムは、信号を符号化して、符号化された信号を、送信のために無線サブシステムに配信するように、又は無線サブシステムからの信号に符号化されたデータを識別してそれを解析する(例えば、ワイヤレス通信規格に従って信号を復号することにより、動き検出プロセスに従って信号を処理することにより、又はそれ以外の方法で)ように構成された1又は2以上のチップ、チップセット、又は他のタイプのデバイスを含むことができる。
【0016】
一部の事例において、例示的なモデム112内の無線サブシステムは、ベースバンドサブシステムからベースバンド信号を受信し、このベースバンド信号を無線周波数(RF)信号にアップコンバートし、この無線周波数信号をワイヤレスで送信する(例えば、アンテナを介して)。場合によっては、例示的なモデム112内の無線サブシステムは、無線周波数信号をワイヤレスで受信し(例えば、アンテナを介して)、この無線周波数信号をベースバンド信号にダウンコンバートし、このベースバンド信号をベースバンドサブシステムに送る。無線サブシステムとベースバンドサブシステムとの間で交換される信号は、デジタル信号又はアナログ信号とすることができる。幾つかの実施例において、ベースバンドサブシステムは、変換回路(例えば、デジタルアナログ変換器、アナログデジタル変換器)を含み、アナログ信号を無線サブシステムと交換する。幾つかの実施例において、無線サブシステムは、変換回路(例えば、デジタルアナログ変換器、アナログデジタル変換器)を含み、デジタル信号をベースバンドサブシステムと交換する。
【0017】
一部の事例では、例示的なモデム112のベースバンドサブシステムは、無線サブシステムを介して1又は2以上のネットワークトラフィックチャネル上でワイヤレス通信ネットワーク内のワイヤレスネットワークトラフィック(例えば、データパケット)を伝達することができる。また、モデム112のベースバンドサブシステムは、無線サブシステムを介して専用ワイヤレス通信チャネル上で信号(例えば、動きプローブ信号又は動き検出信号)を送信又は受信する(又はそれら両方を行う)こともできる。場合によっては、ベースバンドサブシステムは、例えば動きに関して空間を探索するための動きプローブ信号を生成して送信する。場合によっては、ベースバンドサブシステムは、例えば空間内の物体の動きを検出するように、受信動き検出信号(空間を通って送信された動きプローブ信号に基づく信号)を処理する。
【0018】
例示的なプロセッサ114は、例えば、データ入力に基づいて出力データを生成するための命令を実行することができる。この命令は、プログラム、コード、スクリプト、又はメモリに格納された他のタイプのデータを含むことができる。追加的に又は代替的に、命令は、事前にプログラムされた又は再プログラム可能な論理回路、論理ゲート、又は他のタイプのハードウェアもしくはファームウェアコンポーネントとして符号化することができる。プロセッサ114は、特殊化したコプロセッサ又は別のタイプのデータ処理装置としての汎用マイクロプロセッサとすること、又はそれを含むことができる。一部の事例では、プロセッサ114は、ワイヤレス通信デバイス102Cの高水準動作を実行する。例えば、プロセッサ114は、メモリ116に格納されたソフトウェア、スクリプト、プログラム、関数、実行ファイル、又は他の命令を実行又は解釈するように構成することができる。一部の実施構成において、プロセッサ114は、モデム112に含めることができる。
【0019】
例示的なメモリ116は、例えば、揮発性メモリデバイス、不揮発性メモリデバイス、又はそれら両方などのコンピュータ可読媒体を含むことができる。メモリ116は、1又は2以上の読み出し専用メモリデバイス、ランダムアクセスメモリデバイス、バッファメモリデバイス、又はこれら及び他のタイプのメモリデバイスの組み合わせを含むことができる。場合によっては、メモリの1又は2以上のコンポーネントは、ワイヤレス通信デバイス102Cの別のコンポーネントと一体化すること、又はそれ以外の場合には、それらに関連することができる。メモリ116は、プロセッサ114によって実行可能な命令を格納することができる。例えば、命令は、例えば、図6の例示的な処理600の動作のうちの1又は2以上によって、検出された動きの位置を決定するための命令を含むことができる。
【0020】
例示的な電源ユニット118は、ワイヤレス通信デバイス102Cの他のコンポーネントに電力を供給する。例えば、他のコンポーネントは、電圧バス又は他の接続を介して電源ユニット118によって供給される電力に基づいて動作することができる。一部の実施構成において、電源ユニット118は、例えば充電式バッテリなどのバッテリ又はバッテリシステムを含む。一部の実施構成において、電源ユニット118は、アダプタ(例えば、ACアダプタ)を含み、このアダプタは、外部電力信号を受信し(外部信号源から)、この外部電力信号を、ワイヤレス通信デバイス102Cのコンポーネント用に調整された内部電力信号に変換する。電源ユニット118は、他のコンポーネントを含むこと又は別の方法で動作することができる。
【0021】
図1に示されている実施例では、ワイヤレス通信デバイス102A及び102Bは、ワイヤレス信号を送信する(例えば、ワイヤレスネットワーク規格、動き検出プロトコル、又はそれ以外の方法に従って)。例えば、ワイヤレス通信デバイス102A及び102Bは、ワイヤレス動きプローブ信号(例えば、基準信号、ビーコン信号、状態信号など)をブロードキャストすること、又は他のデバイス(例えば、ユーザ機器、クライアントデバイス、サーバなど)にアドレス指定されたワイヤレス信号を送ることができ、他のデバイス(図示せず)並びにワイヤレス通信デバイス102Cは、ワイヤレス通信デバイス102A及び102Bによって送信されたワイヤレス信号を受信することができる。一部の事例では、ワイヤレス通信デバイス102A及び102Bによって送信されるワイヤレス信号は、例えばワイヤレス通信規格に従って又はそれ以外の方法で周期的に繰り返される。
【0022】
図示の実施例では、ワイヤレス通信デバイス102Cは、ワイヤレス通信デバイス102A及び102Bからのワイヤレス信号を処理して、このワイヤレス信号によってアクセスされる空間内の物体の動きを検出し、検出された動きの位置を決定するか、又はその両方を行う。例えば、ワイヤレス通信デバイス102Cは、図3から9に関して後述する例示的な処理の1又は2以上の動作、或いは動きを検出するため又は検出された動きの位置を決定するための別のタイプの処理を実行することができる。ワイヤレス信号によってアクセスされる空間は、例えば、1又は2以上の完全に又は部分的に取り囲まれたエリア、取り囲まれていない開放エリアなどを含み得る屋内又は屋外空間とすることができる。この空間は、部屋、複数の部屋、建物、又は同様のものの内部とすることができ、或いはそれらを含むことができる。一部の事例では、ワイヤレス通信システム100は、例えば、ワイヤレス通信デバイス102Cがワイヤレス信号を送信し、ワイヤレス通信デバイス102A及び102Bがワイヤレス通信デバイス102Cからのワイヤレス信号を処理して動きを検出すること又は検出された動きの位置を決定することができるように、変更することができる。
【0023】
動き検出に使用されるワイヤレス信号は、例えば、ビーコン信号(例えば、Bluetoothビーコン、Wi-Fiビーコン、その他のワイヤレスビーコン信号)、ワイヤレスネットワーク規格に従って他の目的で生成される別の規格の信号、又は動き検出のためにもしくは他の目的で生成される非標準信号(例えば、ランダム信号、基準信号など)を含むことができる。幾つかの実施例において、ワイヤレス信号は、移動物体との相互作用の前又はその後、物体(例えば、壁)を通って伝播し、それによって、移動物体の移動が、この移動物体と送信又は受信ハードウェアとの間の光学見通し線を伴わずに検出されることが可能になることができる。受信信号に基づいて、第3のワイヤレス通信デバイス102Cは、動き検出データを生成することができる。場合によっては、第3のワイヤレス通信デバイス102Cは、動き検出データをセキュリティシステムなどの別のデバイス又はシステムに伝達することができ、これらのデバイス又はシステムは、部屋、建物、屋外エリアなどの空間内部の移動を監視するための制御センタを含むことができる。
【0024】
一部の実施構成において、ワイヤレス通信デバイス102A及び102Bは、動きプローブ信号(例えば、基準信号、ビーコン信号、又は動きに関して空間を探索するのに使用される別の信号を含むことができる)を、ワイヤレスネットワークトラフィック信号から切り離されたワイヤレス通信チャネル(例えば、周波数チャネル又は符号化されたチャネル)上で送信するように、変更することができる。例えば、第3のワイヤレス通信デバイス102Cは、動きプローブ信号のペイロードに適用される変調、及びこのペイロード内のデータ又はデータ構造のタイプを認識することができ、それによって、第3のワイヤレス通信デバイス102Cが動き検知を行う処理量が低減できる。ヘッダは、例えば、通信システム100内の別のデバイスが動きを検出したか否かを示すもの、変調タイプを示すもの、信号を送信するデバイスの識別情報などの追加情報を含むことができる。
【0025】
図1に示されている実施例では、ワイヤレス通信システム100は、それぞれのワイヤレス通信デバイス102の各々の間にワイヤレス通信リンクを有するワイヤレスメッシュネットワークである。図示の実施例では、第3のワイヤレス通信デバイス102Cと第1のワイヤレス通信デバイス102Aとの間のワイヤレス通信リンクは、第1の動き検出フィールド110Aを探索するのに使用でき、第3のワイヤレス通信デバイス102Cと第2のワイヤレス通信デバイス102Bとの間のワイヤレス通信リンクは、第2の動き検出フィールド110Bを探索するのに使用でき、第1のワイヤレス通信デバイス102Aと第2のワイヤレス通信デバイス102Bとの間のワイヤレス通信リンクは、第3の動き検出フィールド110Cを探索するのに使用することができる。場合によっては、各ワイヤレス通信デバイス102Cは、ワイヤレス通信デバイス102によって動き検出フィールド110を通って送信されたワイヤレス信号に基づく受信信号を処理することによって、このデバイスがアクセスする動き検出フィールド110内の動きを検出する。例えば、図1に示されている人物106が、第1の動き検出フィールド110A及び第3の動き検出フィールド110C内で移動する場合に、ワイヤレス通信デバイス102は、それぞれの動き検出フィールド110を通って送信されたワイヤレス信号に基づきこれらのデバイスが受信した信号に基づいて、動きを検出することができる。例えば、第1のワイヤレス通信デバイス102Aは、動き検出フィールド110A及び110Cの両方内の人物の動きを検出し、第2のワイヤレス通信デバイス102Bは、動き検出フィールド110C内の人物106の動きを検出し、第3のワイヤレス通信デバイス102Cは、動き検出フィールド110A内の人物106の動きを検出することができる。
【0026】
一部の事例において、動き検出フィールド110は、例えば、空気、固体材料、液体、又はワイヤレス電磁信号が伝播できる別の媒体を含むことができる。図1に示されている実施例では、第1の動き検出フィールド110Aは、第1のワイヤレス通信デバイス102Aと第3のワイヤレス通信デバイス102Cとの間のワイヤレス通信チャネルを提供し、第2の動き検出フィールド110Bは、第2のワイヤレス通信デバイス102Bと第3のワイヤレス通信デバイス102Cとの間のワイヤレス通信チャネルを提供し、第3の動き検出フィールド110Cは、第1のワイヤレス通信デバイス102Aと第2のワイヤレス通信デバイス102Bとの間のワイヤレス通信チャネルを提供する。動作の幾つかの態様では、ワイヤレス通信チャネル(ネットワークトラフィック用のワイヤレス通信チャネルから切り離された又はそれと共有した)上で送信されるワイヤレス信号は、空間内の物体の移動を検出するのに使用される。物体は、任意のタイプの静止物体又は移動可能物体とすることができ、生物又は無生物とすることができる。例えば、物体は、人間(例えば、図1に示されている人物106)、動物、無生物の物体、又は別のデバイス、装置もしくは組立体、空間の境界の全部もしくは一部分を定める物体(例えば、壁、ドア、窓など)、又は別のタイプの物体とすることができる。一部の実施構成において、ワイヤレス通信デバイスからの動き情報が解析されて、検出された動きの位置が決定できる。例えば、以下で更に説明するように、ワイヤレス通信デバイス102のうちの1つ(又はデバイス102に通信可能に結合された別のデバイス)は、検出された動きが特定のワイヤレス通信デバイスの近くにあると判定することができる。
【0027】
図2A及び図2Bは、ワイヤレス通信デバイス204A、204B、及び204C間で伝達される例示的なワイヤレス信号を示す図である。ワイヤレス通信デバイス204A、204B、及び204Cは、例えば、図1に示されているワイヤレス通信デバイス102A、102B、及び102C、又は他のタイプのワイヤレス通信デバイスとすることができる。例示的なワイヤレス通信デバイス204A、204B、及び204Cは、空間200を通るワイヤレス信号を送信する。例示的な空間200は、完全に又は部分的に取り囲むこと、又は空間200の1又は2以上の境界において開放することができる。空間200は、部屋の内部、複数の部屋、建物、屋内エリア、屋外エリア、又は同様のものとすることができ、或いはそれらを含むことができる。図示の実施例では、第1の壁202A、第2の壁202B、及び第3の壁202Cは、少なくとも部分的に空間200を取り囲むことができる。
【0028】
図2A及び図2Bに示されている実施例では、第1のワイヤレス通信デバイス204Aは、ワイヤレス動きプローブ信号を繰り返し(例えば、周期的に、断続的に、スケジューリングされた間隔、スケジューリングされていない間隔、又はランダムな間隔などで)送信するように動作することができる。第2のワイヤレス通信デバイス204B及び第3のワイヤレス通信デバイス204Cは、ワイヤレス通信デバイス204Aによって送信された動きプローブ信号に基づく信号を受信するように動作することができる。ワイヤレス通信デバイス204B及び204Cは、各々、モデム、プロセッサ、又は受信動き検出信号を処理して空間200内の物体の動きを検出するように構成された他のコンポーネントを有する。
【0029】
図示のように、物体は、図2Aにおいて第1の位置214Aに存在し、この物体は、図2Bにおける第2の位置214Bに移動している。図2A及び図2Bでは、空間200内の移動物体は、人間として表されているが、移動物体は、別のタイプの物体とすることができる。例えば、移動物体は、動物、無生物の物体(例えば、システム、デバイス、装置、又は組立体)、空間200の境界の全部もしくは一部分を定める物体(例えば、壁、ドア、窓など)、又は別のタイプの物体とすることができる。
【0030】
図2A及び図2Bに示されているように、第1のワイヤレス通信デバイス204Aから送信されたワイヤレス信号の複数の例示的な経路が、破線で示されている。ワイヤレス信号は、第1の信号経路216に沿って、第1のワイヤレス通信デバイス204Aから送信されて、第1の壁202Aから第2のワイヤレス通信デバイス204Bに向かって反射する。ワイヤレス信号は、第2の信号経路218に沿って、第1のワイヤレス通信デバイス204Aから送信されて、第2の壁202B及び第1の壁202Aから第3のワイヤレス通信デバイス204Cに向かって反射する。ワイヤレス信号は、第3の信号経路220に沿って、第1のワイヤレス通信デバイス204Aから送信されて、第2の壁202Bから第3のワイヤレス通信デバイス204Cに向かって反射する。ワイヤレス信号は、第4の信号経路222に沿って、第1のワイヤレス通信デバイス204Aから送信されて、第3の壁202Cから第2のワイヤレス通信デバイス204Bに向かって反射する。
【0031】
図2Aでは、ワイヤレス信号は、第5の信号経路224Aに沿って、第1のワイヤレス通信デバイス204Aから送信されて、第1の位置214Aにある物体から第3のワイヤレス通信デバイス204Cに向かって反射する。図2A図2Bとの間で、物体の表面は、空間200内で第1の位置214Aから第2の位置214B(例えば、第1の位置214Aからある距離離れた)に移動する。図2Bでは、ワイヤレス信号は、第6の信号経路224Bに沿って、第1のワイヤレス通信デバイス204Aから送信されて、第2の位置214Bにある物体から第3のワイヤレス通信デバイス204Cに向かって反射する。図2Bに示されている第6の信号経路224Bは、第1の位置214Aから第2の位置214Bへの物体の移動に起因して、図2Aに示されている第5の信号経路224Aより長い。幾つかの実施例において、信号経路は、空間内の物体の移動に起因して追加、削除、又はそれ以外の場合には、変更することができる。
【0032】
図2A及び図2Bに示されている例示的なワイヤレス信号は、これらの信号のそれぞれの経路を通じて減衰、周波数シフト、位相シフト、又は他の影響を体験することができ、例えば壁202A、202B及び202Cを介して別の方向に伝播する部分を有することができる。幾つかの実施例において、ワイヤレス信号は、無線周波数(RF)信号である。ワイヤレス信号は、他のタイプの信号を含むことができる。
【0033】
図2A及び図2Bに示されている実施例では、第1のワイヤレス通信デバイス204Aは、ワイヤレス信号を繰り返し送信することができる。具体的には、図2Aは、最初の時間に第1のワイヤレス通信デバイス204Aから送信されたワイヤレス信号を示しており、図2Bは、2回目の後の時間に第1のワイヤレス通信デバイス204Aから送信された同じワイヤレス信号を示している。送信信号は、連続的、周期的、ランダム又は断続的な時間など、或いはこれらの組み合わせで送信することができる。送信信号は、周波数帯域幅内に幾つかの周波数成分を有することができる。送信信号は、第1のワイヤレス通信デバイス204Aから全方向に、一方向に、又は別様に送信することができる。図示の実施例では、ワイヤレス信号は、空間200内の複数のそれぞれの経路を通過し、各経路に沿った信号は、経路損失、散乱、反射などに起因して減衰して、位相オフセット又は周波数オフセットを有することができる。
【0034】
図2A及び図2Bに示されているように、様々な経路216、218、220、222、224A、及び224Bからの信号は、第3のワイヤレス通信デバイス204C及び第2のワイヤレス通信デバイス204Bにおいて組み合わされて受信信号を形成する。空間200内の複数の経路の送信信号への影響により、空間200は、送信信号が入力され、受信信号が出力される伝達関数(例えば、フィルタ)として表すことができる。或る物体が空間200内で移動するときに、信号経路において信号に影響を与えていた減衰又は位相オフセットは変化することができ、従って、空間200の伝達関数は変化することができる。第1のワイヤレス通信デバイス204Aから同じワイヤレス信号が送信されると仮定すると、空間200の伝達関数が変化した場合に、この伝達関数の出力、すなわち受信信号は、同様に変化することになる。この受信信号の変化は、物体の動きを検出するのに使用することができる。
【0035】
数学的に言えば、第1のワイヤレス通信デバイス204Aから送信される送信信号f(t)は、以下の式(1)に従って表すことができ、
【数1】
ここで、ωnは、送信信号のn番目の周波数成分の周波数を表し、cnは、n番目の周波数成分の複素係数を表し、tは時間を表す。送信信号f(t)が第1のワイヤレス通信デバイス204Aから送信されている場合、経路kからの出力信号rk(t)は、以下の式(2)に従って表すことができ、
【数2】
ここで、αn,kは、経路kに沿ったn番目の周波数成分に関する減衰係数(又はチャネル応答、例えば、散乱、反射及び経路損失に起因)を表し、φn,kは、経路kに沿ったn番目の周波数成分に関する信号の位相を表す。このとき、ワイヤレス通信デバイスにおける受信信号Rは、以下の式(3)で示される、全ての経路からワイヤレス通信デバイスへの全ての出力信号rk(t)の総和として表すことができる。
【数3】
式(2)を式(3)に代入すると、以下の式(4)が得られる。
【数4】
【0036】
次に、ワイヤレス通信デバイスにおける受信信号Rを解析することができる。ワイヤレス通信デバイスにおける受信信号Rは、例えば高速フーリエ変換(FFT)又は別のタイプのアルゴリズムを使用して周波数領域に変換することができる。変換された信号は、受信信号Rを、1つの値がそれぞれの周波数成分(n個の周波数ωnにおける)の各々に対応する一連のn個の複素値として表すことができる。周波数ωnにおける周波数成分に関して、複素値Hnは、以下の式(5)のように表すことができる。
【数5】
【0037】
所与の周波数成分ωnに対する複素値Hnは、その周波数成分ωnにおける受信信号の相対的な大きさ及び位相オフセットを示す。一部の実施構成において、複素値Hnは、受信信号Rに基づく周波数応答信号Hの周波数成分を表す。物体が空間内を移動するときに、複素値Hnは、空間変化のチャネル応答αn,kに起因して変化する。従って、チャネル応答で検出された変化(及び、ひいては周波数応答信号H)は、通信チャネル内の物体の移動を示すことができる。場合によっては、ノイズ、干渉、又はその他の現象が、受信器によって検出されるチャネル応答に影響を与える場合があり、動き検出システムは、このような影響を低減又は分離して、動き検出能力の精度及び品質を高めることができる。一部の実施構成において、全体的チャネル応答は、以下のように表すことができる。
【数6】
【0038】
一部の事例において、空間に対するチャネル応答hchは、例えば、推定の数学理論に基づいて決定することができる。例えば、基準信号Refは、候補チャネル応答(hch)を用いて変更され、次に、最尤法が、受信信号(Rcvd)に最適にマッチした候補チャネルを選択するのに使用できる。場合によっては、推定受信信号(
)は、基準信号(Ref)と候補チャネル応答(hch)との畳み込みから得られ、次に、チャネル応答(hch)のチャネル係数が、推定受信信号(
)の平方誤差を最小にするように変更される。これは、数学的に、以下のように示すことができ、
【数7】
以下の最適基準が用いられる。
【数8】
最小化又は最適化プロセスは、例えば、最小二乗平均(LMS)、再帰的最小二乗法(RLS)、バッチ最小二乗法(BLS)などの適応フィルタリング技法を利用することができる。チャネル応答は、有限インパルス応答(FIR)フィルタ、無限インパルス応答(IIR)フィルタなどとすることができる。
【0039】
上記の式に示されているように、受信信号は、基準信号とチャネル応答との畳み込みとみなすことができる。畳み込み演算は、チャネル係数が、基準信号の遅延レプリカの各々とある程度の相関を有することを意味する。従って、上記の式に示されている畳み込み演算は、受信信号が異なる遅延ポイントに現れ、各遅延レプリカがチャネル係数によって重み付けされることを示す。
【0040】
幾つかの態様では、受信信号に関する信号品質メトリックは、チャネル応答に基づいて決定することができる。例えば、空間に関して決定されたチャネル応答(hch)は、基準信号(Ref)に適用されて、推定受信信号(
)が得られ、この推定受信信号は、チャネル応答に基づいて(例えば、上述した基準信号(Ref)とチャネル応答(hch)との畳み込みに基づいて)、受信信号がどのようなものであるはずであるかについての推定値とすることができる。推定受信信号(
)及び実際の受信信号(Rcvd)は、信号品質メトリックを計算するのに使用することができる。幾つかの実施例において、例えば、信号品質メトリックは、実際の受信信号(Rcvd)と、推定受信信号(
)と実際の受信信号(Rcvd)との間の差分とのドット積、例えば、
【数9】
を計算することによって求められる値Qに基づく(例えば、それに等しく設定されるか、それから計算されるか、又はそれを表すなど)。
【0041】
信号品質メトリックは、他の計算を使用して決定することができる。一部の事例では、ドット積又は別の計算された値の絶対値又は大きさが、受信信号に関する信号品質メトリックとして使用される。一部の事例では、信号品質メトリックは、相関指標又は別のタイプの信号品質メトリックである。一部の事例では、信号品質メトリックは、受信信号の信号対雑音比(SNR)に基づいて決定される。
【0042】
一部の事例において、ワイヤレス通信デバイスは、受信信号を「拒否」することができる。例えば、一部の実施構成において、動き検出プロセスは、動き検出プロセスで使用される信号に関する品質基準を含むことができる。品質基準を満たさない受信信号は、拒否され(例えば、破棄又は無視され)、空間300内で動きが生じたか否かを判定することにおいて考慮されないものとすることができる。信号は、信号品質メトリック(例えば、式(9)で記述される値)に基づいて、動き検出プロセスへの入力として受け入れること又は拒否することができる。例えば、一部の事例では、動き検出プロセスは、特定の閾値を上回る値Qを有する受信信号のサブセットのみを使用する。
【0043】
幾つかの実施例において、送信信号及び受信信号は、RFスペクトルにあり、信号は、ベースバンド帯域幅で解析される。例えば、送信信号は、アップコンバートされて送信RF信号を定めるベースバンド信号を含むことができ、受信信号は、ベースバンド信号にダウンコンバートされた受信RF信号を含むことができる。受信ベースバンド信号は、受信RF信号に組み込まれているため、空間内の移動の影響(例えば、伝達関数の変化)は、この受信ベースバンド信号上に生じることができ、ベースバンド信号は、動きを検出するように処理(例えば、フーリエ解析又は別のタイプの解析を使用して)される信号とすることができる。他の実施例において、処理される信号は、RF信号又は別の信号とすることができる。
【0044】
一部の実施構成において、受信ワイヤレス信号に関する統計パラメータが決定できる。統計パラメータは、信号の特性を表すことができ、受信ワイヤレス信号の周波数領域表現の周波数成分に適用される関数に基づくことができる。場合によっては、統計パラメータは、受信信号の1又は2以上の周波数成分の最大値、最小値、平均値、又は標準偏差のうちの少なくとも1つのうちの1又は2以上を含む。例えば、一部の実施構成において、ワイヤレス通信デバイスでの受信信号Rに基づく周波数応答信号Hは、以下のベクトルで表される。
【数10】
ベクトル
の要素は、時点jにおけるそれぞれの周波数値ω1、ω2、ω3、...ωnの周波数成分である。周波数成分hi,jは、一部の事例では、複素値とすることができる。周波数応答信号の特性を記述する統計パラメータを得るための関数が、定められて、周波数応答信号Hに、又は周波数応答信号の特定の周波数成分hi,jに適用することができる。統計パラメータは、例えば、周波数応答信号の特性を示す統計関数又は他のタイプの数学関数に基づいて計算することができる。次に、それぞれの時間セグメントに関する1又は2以上の統計パラメータの値を得るための関数が、ベクトル
(又はその要素)に適用することができる。例えば、統計パラメータは、例えば、平均値関数などに従って、平均値を求める関数、すなわち、
【数11】
に基づくことができ、ここで、Nは、
の周波数成分又は要素の数である。例えば、
別の例として、統計パラメータは、例えば、標準偏差関数などに従って、標準偏差を求める関数、すなわち、
【数12】
に基づくことができ、ここで、Nは、
の周波数成分又は要素の数である。
【0045】
一部の事例では、動き、区別できる動きカテゴリ、又は検出された動きの位置は、統計パラメータ値に基づいて検出することができる。例えば、統計パラメータ値のグルーピングが、後述のように識別され解析されて、空間内でチャネル摂動が生じたか否か、どのタイプのチャネル摂動が生じたか(例えば、干渉対物体の動き)、及び空間内のチャネル摂動の位置(例えば、ワイヤレス通信デバイス間に対する)が検出できる。場合によっては、機械学習が、統計パラメータ値のパターン又はグルーピングを識別するのに使用できる。例えば、統計パラメータ値は、ニューラルネットワーク(例えば、GOOGLE CLOUD ML プラットフォーム)に渡されて、統計パラメータ値又は統計パラメータ値に基づく他の値(例えば、以下で更に説明するチェック値又は動きシグネチャ(signature)値)における区別できるパターンが学習できる。
【0046】
図3は、ワイヤレス通信デバイスにて受信されたワイヤレス信号302に基づいて統計パラメータの行列312を生成する例示的な処理300を示す図である。図示の実施例では、信号302は、ワイヤレス通信システム内のワイヤレス通信デバイス(例えば、図1のワイヤレス通信デバイス102C又は図2のワイヤレス通信デバイス204B、204C)によって、期間t={0,31}にわたって受信される。信号302は、ワイヤレス通信デバイスにて受信されたワイヤレス信号のアナログ表現とすることができる。例えば、信号302は、ワイヤレス通信デバイスの無線サブシステムの出力を含むことができる。一部の実施構成において、処理300において解析された信号302は、この処理への入力として受け入れられたこれらの信号のみを含むことができる。例えば、信号302は、1又は2以上の品質基準(例えば、信号品質メトリック閾値)と比較されて、信号302を更に処理するか否かが判定できる。
【0047】
図示の実施例では、信号302は、高速フーリエ変換(FFT)演算304の演算によって周波数領域表現に変換され、この演算は、信号302の周波数成分を含む出力を生成する。例えば、一部の事例では、信号302は、約22MHzの帯域幅を有することができ、FFT演算は、88MHzの帯域幅(4のオーバーサンプリングレートに基づく)を使用して、信号302の64個の周波数成分を生成することができる。FFT演算304の出力は、次に、サンプリング演算306によってサンプリングされる。一部の実施構成において、サンプリング演算は、FFT演算304によって出力された周波数成分のサブセットを選択する。例えば、FFT演算304が64個の周波数成分を出力する上記の例を使用すると、サンプリング演算306は、ω=0を中心とする8つの周波数成分(ω<0である4つの周波数成分、及びω>0である4つの周波数成分)を選択することができる。
【0048】
次に、統計パラメータ値が、信号302の周波数成分に基づいて決定される。例えば、図示の実施例では、時間tにおける信号302のサンプリングされた周波数成分の平均値及び標準偏差値が計算され、複素値308(k)は、この平均値及び標準偏差に基づいて生成される。平均値及び標準偏差は、それぞれのサンプリングされた周波数成分の大きさに基づいて計算することができる。例えば、上記の例を参照すると、平均値は、時間tにおけるサンプリングされた周波数成分の大きさの平均値を求めることによって計算でき、標準偏差は、時間tにおける平均値の周りのサンプリングされた周波数成分の大きさの分散を求めることによって計算できる。図3に示されている実施例などの一部の事例では、複素値308の実数成分は、計算された平均値を含み、複素値308の虚数成分は、計算された標準偏差値を含む。
【0049】
配列は、連続的に処理される信号に対して求められた複素値に基づいて生成される。例えば、図示の実施例では、配列310は、時間t={0,31}に対して求められた32個の複素値308を含む。他の配列は、同様に、複素値の最新のセットに基づいて生成され、これらの複素値は、先入先出方式で処理される。例えば、第2の配列は、時間t={1,32}に対して求められた32個の複素値を含み、第3の配列は、時間t={2,33}に対して求められた32個の複素値を含み、更に、時間t={31,63}に対して求められた32個の複素値308に関する配列が求められるまで、同様である。次に、行列312が、配列310に基づいて生成される。例えば、図示の実施例では、行列312は、時間t={0,31}に関する第1の配列を最も右の列にし、時間t={1,32}に関する第2の配列を右から2番目の列にし、更に、最も左の列が、図3に示されている時間t={31,63}に関する配列となるまで、同様に続く。行列312は、場合によっては、自己相関行列又はテプリッツ行列であるとみなすことができる。行列312は、別の方法で配列することができる。
【0050】
図4は、図3において生成された行列312に基づく例示的なプロット402及び例示的なヒストグラムデータ404を示す図である。例示的なプロット402の各データ点は、行列312における要素を表す。具体的には、例示的なプロット402の各データ点は、横軸上の式(12)による標準偏差値と縦軸上の式(11)による平均値とを表す。従って、横軸は、行列312における複素値kの虚数部分を表し、縦軸は、行列312における複素値kの実数部分を表す。例示的なプロット402では、各データ点の値は、以下の式に基づいてゼロ(0)と1との間の値に正規化され、
【数13】
は、ここで、xiは、i=1からnにわたる値のセットX=(x1、x2、x3、...xn)における特定の値を表す。
【0051】
ヒストグラムデータ404は、行列312における統計パラメータ値のビン(値域)分に基づいて生成することができる。例えば、ヒストグラムデータ404は、統計パラメータ値の範囲に基づくビンのセット(例えば、範囲0から0.1の第1のビン、範囲0.1から0.2の第2のビンなど)と、各ビンのそれぞれの範囲内に含まれるデータ点の量とを含むことができる。図4に示されている実施例などの幾つかの実施例において、ヒストグラムデータ404は、行列形式で表すことができる。例えば、例示的なヒストグラムデータ404は、10×10行列であり、その要素は、統計パラメータ値の0.1増分で定められるそれぞれのビン内に含まれるデータ点の量を表す。一例として、ヒストグラムデータ404の左下の要素は、平均値及び標準偏差値が0から0.1の間にある446個のデータ点が存在することを示す。ヒストグラムデータ404は、別の方法で生成することができる。一部の実施構成において、ヒストグラムデータ404は、例えば、以下で更に説明するように、空間内のチャネル摂動を検出するのに使用される。
【0052】
図5Aから図5Cは、図4のヒストグラムデータ404に基づいて空間内のチャネル摂動を検出して分類する例示的な処理500を示す図である。図示の実施例では、行合計演算子及び列合計演算子が、ヒストグラムデータ404に適用されて、それぞれ、配列502及び504が生成される。行合計演算子は、ヒストグラムデータ行列のそれぞれ個別の行内の要素の合計を決定し、列合計演算子は、ヒストグラムデータ行列のそれぞれ個別の列内の要素の合計を決定する。行合計演算子は、このヒストグラムデータ行列に、要素が全て1に等しい縦配列を乗算することによって適用することができる。この縦配列は、ヒストグラムデータ行列が次元N×Nを有する場合に、長さN(例えば、次元N×1の行列)を有することができる。列合計演算子は、ヒストグラムデータ行列に、要素が全て1に等しい横配列を乗算することによって適用することができる。この横配列は、ヒストグラムデータ行列が次元N×Nを有する場合に、長さN(例えば、次元1×Nの行列)を有することができる。
【0053】
次に、配列502及び504は、動きが生じたか否かを検出するための1又は2以上のチェック値506を決定するのに使用することができる。図示の実施例では、チェック値は、平衡値、対称値、最大次元値、次元値、及び等高線値を含む。図示の実施例では、平衡値は、次式
【数14】
によって求められ、ここで、COは、列演算子によって出力される配列を表し、ROは、行演算子によって出力される配列を表す。図示の実施例では、対称値は、列演算子によって出力された配列内の非ゼロ要素の数から、行演算子によって出力された配列内の非ゼロ要素の数を減算することによって求められ、次式で表すことができる。
symmetry=(#non-zero(CO))-(#non-zero(RO)) (15)
図示の実施例では、最大次元値は、行演算子によって出力された配列内の非ゼロ要素の数と、列演算子によって出力された配列内の非ゼロ要素の数との間の最大値であり、次式で表すことができる。
Max Dimension=max[(#non-zero(CO)),(#non-zero(RO))] (16)
図示の実施例では、次元値は、対称値を最大次元値で除算した結果であり、次式で表すことができる。
【数15】
図示の実施例では、等高線値は、行演算子及び列演算子によって出力された配列に適用される導関数演算子に基づいて求められる。この導関数演算子は、次式で表すことができ、
Derivative(n)=X(n+1)-X(n) (18)
ここで、Xは、行演算子又は列演算子の何れかによって出力された配列を表す。従って、導関数演算子は、行演算子及び列演算子の出力配列がNの長さを有する場合に、長さ(N-1)を有する出力配列を提供することができる。図示の実施例では、行演算子によって出力された配列に適用される導関数演算子の結果は、
[-426,-207,-46,12,-2,-14,0,0,0]
であり、列演算子によって出力された配列に適用された導関数演算子の結果は、
[-304,-198,-59,-9,-12,21,-23,-2,0]
である。次に、等高線値は、等高線閾値を超過する要素の数として求められる。
図示の実施例では、等高線閾値は22であり、その結果、上記の配列内の要素が何れも22より大きくないため、ゼロ(0)の等高線が得られる。チェック値は、上記と別の方法で求めることができる。例えば、追加の又はより少ないチェック値を求めることができ、又は上述のチェック値は、異なる演算又は数式を使用して求めることができる。
【0054】
次に、チェック値506が解析されて、チャネル内の摂動が生じたか否かが判定できる。例えば、図示の実施例では、次元値は、60%の閾値と比較され、平衡値は、60%の閾値と比較され、更に、等高線がチェックされて、等高線がゼロ(0)に等しいことが保証される。図示の実施例における次元値は、60%の閾値より小さく、平衡値は、60%の閾値より小さく、等高線は、ゼロに等しいため、チャネル内の摂動が生じたことが判定される(これは、ワイヤレス信号によってアクセスされる空間内の動き、又は干渉を示すことができる)。一部の実施構成において、チェック値506は、経時的に解析されて、パターンが識別され、チャネル摂動のタイプが分類できる。例えば、以下で説明するように、幾つかのチェック値が、動きシグネチャ値を決定するのに使用され、この動きシグネチャ値が、経時的に解析されて、チャネル摂動が空間内の干渉に対する物体の動きであるか否かが検出できる。
【0055】
図5Bは、図5Aのチェック値506のうちの幾つかに基づく例示的な動きシグネチャ値算出例510及び512を示している。図示の実施例では、2つの異なる時間での対称値及び最大次元チェック値が示されており、動き特徴と呼ばれる。動きシグネチャ値は、異なる時間でのそれぞれのチェック値の間の差分に基づいて求められ、ピークシグネチャ値は、2つの動きシグネチャ値の最大値として求められる。算出例510では、チェック値は、2つの異なる時間の間で変化せず、従って、ゼロ(0)の動きシグネチャ値及びゼロ(0)のピークシグネチャ値を有する。算出例510に関連する摂動は、ピークシグネチャ値がゼロ(0)であるということから、シグネチャを有しないと述べることができる。その一方、算出例512では、チェック値は、2つの異なる時間の間で変化し、図示のように1及び5の動きシグネチャ値と5のピークシグネチャ値とを生成する。算出例512に関連する摂動は、ピークシグネチャ値がゼロでないということから、シグネチャを有すると述べることができる。動きシグネチャ値及びピークシグネチャ値は、別の方法で求めることができる。例えば、動きシグネチャ値は、追加の又はより少ないチェック値に基づくことができる。
【0056】
図5Cは、異なるチャネル摂動シナリオ514、516、及び518に関する例示的なピークシグネチャ値を示している。図示のピークシグネチャ値は、異なる時点で求められた一連のピークシグネチャ値である。一連のピークシグネチャ値を解析することによって、チャネルの摂動が干渉に起因するか又は物体の動きに起因するかを判定することができる。例えば、シナリオ例514では、ピークシグネチャ値は、ゼロの繰り返しからなり、それによって、ワイヤレス信号によってアクセスされる空間内で動き又は他のチャネル摂動が生じていない「静止状態」が示される。シナリオ例516では、ピークシグネチャ値は、2と3とを交互に繰り返し、それによって、ワイヤレス信号によってアクセスされる空間内の干渉信号が示される。シナリオ例518では、ピークシグネチャ値は、時間とともにランダムに変化し、それによって、ワイヤレス信号によってアクセスされる空間内の物体による動きが示される。一部の事例では、動きの様々なカテゴリの動きシグネチャパターンは、動きシグネチャ値の標準偏差に基づくことができる。例えば、動きシグネチャ値のセットに関する値の標準偏差が求められ、この標準偏差値が、閾値と比較されて、動きシグネチャ値が多種多様なパターン(動きを示すことができる)を有するか又は皆無かそれに近い変動(干渉又は動きなしを示すことができる)を有するかが判定できる。場合によっては、チャネル摂動の様々なカテゴリの動きシグネチャ値パターンは、機械学習によって学習することができる。例えば、ニューラルネットワークは、干渉、動き、又はその他のタイプのチャネル摂動に関連する既知のパターンを学習し、次に、ニューラルネットワークは、将来のパターンを解析し、チャネル摂動のタイプを識別するのに使用することができる。
【0057】
図6は、図4のヒストグラムデータ404に基づいて範囲推定値604を計算する例示的な処理600を示す図である。場合によっては、ヒストグラムデータ404は、次元N×Nの行列(正方行列)で表される。例えば、図示の実施例では、ヒストグラムデータ行列404は、10×10の次元を有する。一部の実施構成において、範囲推定値604は、ヒストグラムデータ行列404と範囲スケーリング行列602との行列内積に基づくことができる。範囲スケーリング行列602の要素は、範囲推定値の計算においてヒストグラムデータ行列のそれぞれの要素を重み付けする範囲スケーリング値を含むことができる。一部の実施構成において、範囲スケーリング行列のそれぞれの範囲スケーリング値は、範囲スケーリング値の初期セットを生成し、ロジスティック回帰を使用して最終範囲スケーリング値(範囲決定をより正確に表す)に到達することによって決定される。
【0058】
一部の事例において、原点及び軸から更に離れたビン内のヒストグラムデータは、強いチャネル摂動を示し、従って、受信デバイスのすぐ近くの動きを示すことができる。従って、一部の実施構成において、範囲スケーリング行列602の範囲スケーリング値は、原点(行列602の左下)又は軸の近くのヒストグラムデータの場合、比較的小さく、原点及び軸から離れたヒストグラムデータの場合、比較的大きいとすることができる。例えば、図示の実施例では、原点に最も近いビンの範囲スケーリング値(行列602の最も左下の要素)はゼロ(0)であり、その一方、原点から最も離れたビンの範囲スケーリング値(行列602の右上の要素)は、14.400である。
【0059】
一部の実施構成において、範囲推定値604は、1又は2以上の閾値と比較されて、動き検出の基となった信号を受信するデバイスに対する空間内の検出された動きの位置が決定できる。例えば、図示の実施例では、ヒストグラムデータ404と範囲スケーリング行列602との行列内積は、4.578の範囲推定値604を生成する。この実施例において、範囲推定値604が、閾値606と比較されて、検出された動き(又はチャネル摂動)が受信デバイスからの「中間」範囲にあると判定される。
【0060】
一部の実施構成において、統計パラメータ値は、上述のように解析される前にフィルタリングすることができる。図7は、図3において生成された行列312のフィルタリングされていない値及びフィルタリングされた値に基づく例示的なプロット700を示す図である。例示的なプロット700のデータ点は、各々、行列312の要素を表し、各データ点は、横軸上の式(12)による標準偏差値及び縦軸上の式(11)による平均値を表す。例示的なプロット700では、データ点702(菱形でマーク付け)は、フィルタリングが適用されていない行列312の統計パラメータを表し、その一方、データ点704(x形状でマーク付け)は、フィルタリングが適用された後の行列312の統計パラメータを表す。
【0061】
図7に示されている実施例では、例えば、データ点704は、図3に関して上述したように生成された行列312に特異値分解(SVD)演算が適用された後の行列312のフィルタリングされた値を表す。SVD演算は、次式に従って行列312を別個の行列成分に分解するのに使用することができ、
【数16】
ここで、Kは行列312を表し、Uは回転行列を表し、Σは特異値行列(例えば、実数値を有する対角行列)を表し、Vは反射行列を表す。場合によっては、SVD演算は、行列Σにおける最初の3つの特異値をゼロにして行列Σ*を生成し、行列Kを再構築して、次式に従ってフィルタリングされた行列K*を形成することを含む。
【数17】
SVD演算は、左及び右の行列(それぞれU及びV)の最初の3つの値をゼロにする作用を有することができ、それによって、異常値又は他の望ましくないデータは、行列312から除去できる。
【0062】
図8A及び図8Bは、統計パラメータをスケーリングして再正規化する例示的な処理800を示す図である。例示的なプロット802のデータ点は、各々、図3の行列312における値を表し、横軸上の式(12)による標準偏差値及び縦軸上の式(11)による平均値を表す。例示的なプロット802では、各データ点の値は、次式に基づいてゼロ(0)と1との間の値に正規化され、
【数18】
ここで、xiは、i=1からnにわたる値のセットX=(x1、x2、x3、...xn)における特定の値を表す。
【0063】
一部の実施構成において、スケーリング係数が、正規化された統計パラメータ値に適用できる。次に、スケーリングされた統計パラメータ値は、動き検出プロセスで使用されるヒストグラムデータを生成するのに使用することができる。スケーリング係数は、統計パラメータの基となる信号に関する信号品質メトリックに基づくことができる。例えば、スケーリング係数は、図9A及び図9Bに関して後述するように計算することができる。スケーリングされた統計パラメータ値は、図8Aの例示的なプロット804に示されている。スケーリング後、統計パラメータ値は、次に、全ての統計パラメータ値がゼロ(0)と1との間にあるように、再正規化される。次に、再正規化された値は、動き検出プロセスで使用されるヒストグラムデータを生成するのに使用される。再正規化された統計パラメータ値は、図8の例示的なプロット806に示されている。
【0064】
例示的なプロット804に示されているように、多くの統計パラメータ値は、スケーリング後も依然としてゼロ(0)から1の範囲内に含まれるが、一部のデータ点は、スケーリング後、その範囲外になる場合がある。例えば、図示の実施例では、データ点806に関する標準偏差値は、スケーリング係数が適用された後、1よりも大きい。再正規化処理は、ヒストグラムデータの生成においてデータ点806を無視することができ、又は別の方法でデータ点806を考慮することができる。例えば、図8Bは、例示的なプロット802、808(図8Aにおけるプロット802、808と同じ)における値に基づいて生成された例示的なヒストグラムデータ810、812を示している。例示的なヒストグラムデータ810及び812は、図4のヒストグラムデータ404に関して上述したように生成される。しかしながら、図示の実施例では、ヒストグラムデータ812のビン814に関する量は、スケーリング後、ゼロ(0)から1の範囲外にある図8Aのデータ点806を説明する追加のカウントを含む。データ点806は、これらのスケーリングされた統計パラメータ値に最も近いヒストグラムデータのビンにおいて説明することができる。例えば、図示の実施例では、スケーリングされた標準偏差値が1より大きく、スケーリングされた平均値が0.1より小さいデータ点は、ヒストグラムデータ812の右下隅にあるビンで説明され(その量が図8Bにおける27であるビン814)、その一方、スケーリングされた標準偏差値が1より大きく、スケーリングされた平均値が0.1から0.2の間にあるデータ点は、ヒストグラムデータ812の右下隅の真上にあるビン(その量が図8Bにおける4であるビン814)で説明される。
【0065】
図9A及び図9Bは、受信したワイヤレス信号の統計パラメータ値をスケーリングするための例示的な信号品質メトリック値902、時間メトリック値904、及びスケーリング係数値906のプロット900を示す図である。図示の実施例では、信号品質メトリック値902及び時間メトリック値904は、左縦軸スケール(すなわち、0から25)に従って解釈され、スケーリング係数値902は、右縦軸スケール(すなわち、1から6)に従って解釈される。場合によっては、スケーリング係数値906は、図8A及び図8Bに関して上述したように、統計パラメータ値をスケーリングして再正規化するのに使用することができる。
【0066】
信号品質メトリック値902は、上記の式(9)で説明された値Q、信号対雑音比(SNR)、別の値、又はこれらの組み合わせに基づいて計算することができる(例えば、それらに等しいとすることができる)。図示の実施例では、信号品質メトリック値902は、信号/通信チャネル品質が高まるにつれて、大きくなる。時間係数値904は、動き検出プロセスに入力される十分な数のワイヤレス信号を取得するのに必要な時間に基づいて計算することができる。例えば、信号は、これらの信号品質メトリック値に基づいて受け入れること又は拒否することができ、従って、動き検出プロセスのために受け入れられる信号を収集するのに必要な時間は変化する場合がある。図示の実施例では、十分な数の入力を得るのに必要な時間が増加するにつれて、時間係数値904が増加する。信号品質メトリック値902及び時間係数値904は、別の方法で計算することができる。
【0067】
例示的なプロット900は、それぞれの値902、904、906の間の例示的な関係を示しており、このプロットにおいて、スケーリング係数値906は、信号品質メトリック値902及び時間メトリック値904に基づいている。例えば、幾つかの実施例において、スケーリング係数値906は、信号品質メトリック値902及び時間メトリック値904の関数として計算される。図示の実施例では、スケーリング係数値906は、信号品質メトリック値902が増加するにつれて増加し、スケーリング係数値906は、時間係数値904が増加するにつれて減少する。具体的には、図示の実施例では、スケーリング係数値906は、次式に従って計算され、
【数19】
ここで、
【数20】
であり、
【数21】
であり、Qt及びTtは、それぞれ時間tにおける信号品質メトリック値及び時間係数値を指し、Qtarget及びTtargetは、それぞれ、ターゲット信号品質メトリック値及びターゲット時間係数値を指す。
【0068】
図示の実施例では、信号品質メトリック値902Aは、21のターゲットを有し、時間係数値904Aは、ゼロ(0)のターゲット値(例えば、遅延なし、拒否された信号なし)を有する。図9Aに示されている実施例では、信号品質メトリック値902Aが21を下回る場合に、スケーリング係数値906Aが低減される。時間係数値がゼロ(0)を上回る場合に、スケーリング係数値906Aが低減される。公称スケーリング係数値は、約600個の信号が受信された後に到達し、信号品質メトリック値902A及び時間係数値904Aにおけるわずかな変動は、スケーリング係数値906Aにほんのわずかの影響を与える。その一方、図9Bに示されている実施例では、信号品質メトリック値902Bは、ターゲット値21に近いので、時間係数値904Bは、スケーリング係数値906Bの変化により支配的な影響を与える。
【0069】
図10は、受信したワイヤレス信号の統計パラメータに基づいて動きを検出する例示的な処理1000を示すフローチャートである。場合によっては、処理1000は、選択されたワイヤレス通信チャネル上で送信された信号に基づいて空間内の物体の動きを検出するように実装することができる。データ処理装置(例えば、図1における例示的なワイヤレス通信デバイス102Cのプロセッサ114)が、例示的な処理1000における動作を実行して、ワイヤレス通信デバイス(例えば、図1のワイヤレス通信デバイス102C又は図2A及び図2Bのワイヤレス通信デバイス204B及び204C)で受信した信号に基づいて動きを検出することができる。別のタイプのデバイスが、例示的な処理1000を実行することもできる。例えば、処理1000の動作は、信号を受信するワイヤレス通信デバイス以外のシステム(例えば、図1のワイヤレス通信システム100に接続されており、ワイヤレス通信デバイス102で受信した信号を集約して解析するコンピュータシステム)によって実行することができる。例示的な処理1000は、追加の又は異なる動作を含むことができ、動作は、図示の順序又は別の順序で実行することができる。一部の事例では、図20に示されている動作のうちの1又は2以上は、複数の動作、サブプロセス又は他のタイプのルーチンを含む処理として実装される。一部の事例では、動作は、組み合わせること、別の順序で実行すること、並行して実行すること、反復すること、或いはそれ以外の場合には、繰り返すこと又は別の方法で実行することができる。
【0070】
1002において、信号が取得される。信号は、ワイヤレス通信デバイス間で空間を通って送信されるワイヤレス信号に基づくことができる。例えば、図2A及び図2Bに示されている実施例を参照すると、得られる信号は、ワイヤレス通信デバイス204B及び204Cで受信したワイヤレス信号から決定された周波数応答情報又はチャネル応答情報とすることができ、これらのデバイス204B及び204Cで受信したワイヤレス信号は、ワイヤレス通信デバイス204Aによって空間200を通って送信された動きプローブ信号(例えば、基準信号又はビーコン信号)に基づく。場合によっては、動きプローブ信号は、繰り返し又は周期的に空間を通って送信することができる。例えば、再度図2A及び2Bに示されている実施例を参照すると、ワイヤレス通信デバイス204Aは、動きプローブ信号に基づくワイヤレス信号が、ワイヤレス通信デバイス204A及び204Bによって様々な時間に受信されるように、空間200を通って複数の動きプローブ信号を送信することができる。
【0071】
一部の事例において、ワイヤレス通信デバイスにて受信されたワイヤレス信号、又は受信したワイヤレス信号から得られる信号は、動き検出プロセスに関する品質基準と比較される。信号は、例えば、信号品質メトリック(例えば、式(9)で説明した値Q)などの1又は2以上の因子に基づいて、動き検出プロセスへの入力として受け入れること又は拒否することができる。例えば、信号品質メトリック値は、1002で得られた信号の各々に関して決定することができ、信号品質メトリック値は、閾値と比較されて、その信号が動き検出プロセスへの入力として受け入れられるか否かが判定できる。信号が、この比較に基づいて拒否された場合には、その信号は無視され、更に処理されないものとすることができる(例えば、後述する動作によって)。その一方、信号が、比較に基づいて受け入れられる場合には、その信号は、後述するように更に処理することができる。
【0072】
1004において、1002で得られた信号に関する1又は2以上の統計パラメータの値が計算される。統計パラメータは、得られた信号の平均値、標準偏差、又は別のタイプの統計パラメータを含むことができる。統計パラメータ値は、1002で得られた信号ごとに計算することができる。例えば、図3に示されている実施例を参照すると、1002で得られた各信号は、周波数領域表現に変換され、この周波数領域表現の周波数成分は、サンプリングすることができる。平均値及び標準偏差(又は他の統計パラメータ)は、サンプリングされた周波数成分から計算することができる。場合によっては、上述のように、統計パラメータ値は、品質基準に基づいて動き検出プロセスへの入力として受け入れられるものなど、1002で得られた信号のサブセットに対して計算することができる。
【0073】
1006において、統計パラメータ値がフィルタリングされる。例えば、一部の事例では、統計パラメータ値を含む初期行列が生成できる。初期行列は、自己相関行列、テプリッツ行、又は別のタイプの行列とすることができる。一部の事例では、初期行列は、図3の行列312と同様に配列される(例えば、初期行列のエントリは、その実数成分及び虚数成分がそれぞれ第1及び第2の統計パラメータを表す複素値を含むことができる)。一部の実施構成において、統計パラメータ値をフィルタリングするステップは、初期行列に対して特異値分解を実行するステップを含むことができる。例えば、回転行列、反射行列、及び初期特異値セットは、図7に関して上述したように初期行列から計算することができる。フィルタリングされた特異値セットは、初期セットにおける特異値のサブセットをゼロにすることによって形成でき、フィルタリングされた行列は、フィルタリングされた特異値セット、回転行列、及び反射行列から構築することができる。一部の実施構成において、統計パラメータ値のフィルタリングは、初期行列のスケーリングを含む。フィルタリングはまた、統計パラメータ値の再正規化を含むこともできる。例えば、フィルタリング処理は、図8A及び図8Bに関して上述した演算と同様のスケーリング及び再正規化を含むことができる。一部の実施構成において、スケーリングは、信号品質メトリック値、時間係数値、又は1002で得られた信号に関連する別のメトリックに基づいて決定されるスケーリング係数値に基づく。例えば、場合によっては、スケーリング係数値は、図9A及び図9B2に関して上述したように決定することができる。
【0074】
1008において、1004で計算され1006でフィルタリングされた統計パラメータ値のグルーピングが識別される。一部の実施構成において、グルーピングは、フィルタリングされた統計パラメータ値に関するヒストグラムデータを使用して識別することができる。ヒストグラムデータは、ビンのセットと各ビンに関する量とを含むことができ、各ビンは、フィルタリングされた統計パラメータ値のそれぞれの範囲に対応する。一部の事例では、ヒストグラムデータは行列形式であり得る。例えば、ヒストグラムデータは、図4の例示的なヒストグラムデータ行列404と同様であり得る。
【0075】
1010において、1008で識別されたグルーピングが、動き検出プロセスで使用される。動き検出プロセスは、1008で識別された統計パラメータ値のグルーピングに基づいてチャネル摂動が生じたか否かを検出して、このチャネル摂動が、空間内の物体の移動であるか又は干渉であるかを判定することができる。一部の事例では、動き検出プロセスは、図5A及び図5Cに関して上述した動作のうちの1又は2以上を含む。例えば、一部の実施構成において、動き検出プロセスは、ヒストグラムデータ(例えば、図4の行列404と同様の行列)に基づいて計算される1又は2以上のチェック値を伴う。一例として、ヒストグラムデータが、多次元ヒストグラムに対応する場合に、動き検出プロセスは、ヒストグラムの各次元に沿った量の合計を求めるステップと、この合計に基づいてチェック値を計算するステップと、このチェック値をそれぞれの閾値と比較するステップとを含むことができる。場合によっては、動きシグネチャ値は、チェック値のセットに基づいて計算され、動きシグネチャ値は、それぞれの期間にわたって比較されて、パターンが識別できる。動きシグネチャ値パターンは、空間内で生じたチャネル摂動のタイプを識別する(例えば、物体の動きに対する干渉を識別する)ことができる。
【0076】
一部の実施構成において、動き検出プロセスは、範囲推定値の計算を含む。範囲推定値は、検出された動きの相対的位置を決定するのに使用することができる。一部の事例では、範囲推定値は、図6に関して上述した演算のうちの1又は2以上により計算される。例えば、範囲推定値は、ヒストグラムデータを表す行列(例えば、図6における行列404)と、要素が範囲スケーリング値を含む範囲スケーリング行列(例えば、図6における行列602)との行列内積に基づくことができる。
【0077】
本明細書で説明する主題及び動作の一部は、デジタル電子回路、又は本明細書で開示される構造及びこれらの構造上の均等物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、又はハードウェア、或いはこれらの1又は2以上の組み合わせで実装することができる。本明細書で説明する主題の一部は、1又は2以上のコンピュータプログラムとして、すなわち、コンピュータ可読記憶媒体上に符号化されて、データ処理装置によって、又はその動作を制御するように、実行されるコンピュータプログラム命令の1又は2以上のモジュールとして実装することができる。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読記憶装置、コンピュータ可読記憶基板、ランダムもしくはシリアルアクセスメモリアレイもしくはデバイス、又はこれらの1又は2以上の組み合わせとすること、或いはそれらに含めることができる。更に、コンピュータ可読記憶媒体は、伝播信号ではないが、コンピュータ記憶媒体は、人工的に生成された伝播信号に符号化されたコンピュータプログラム命令の情報源又は保存先とすることができる。コンピュータ記憶媒体はまた、1又は2以上の別個の物理的コンポーネント又は媒体(例えば、複数のCD、ディスク、又は他の記憶装置)とすること、又はそれらに含めることができる。コンピュータ可読記憶媒体は、複数のコンピュータ可読記憶装置を含むことができる。コンピュータ可読記憶装置は、同一場所に配置すること(単一の記憶装置に格納された命令)、又は異なる場所に配置することができる(例えば、分散した場所に格納された命令)。
【0078】
本明細書で説明した動作の一部は、メモリ(例えば、1又は2以上のコンピュータ可読記憶装置)に格納された又は他の情報源から受け取られたデータに対してデータ処理装置によって実行される動作として実装することができる。「データ処理装置」という用語は、データを処理する全ての種類の装置、デバイス及び機械を包含し、一例として、前述の、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、システムオンチップもしくは複数のシステムオンチップ、又は前述のものの組み合わせを包含する。装置は、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)などの専用論理回路を含むことができる。装置は更に、ハードウェアに加えて、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォームランタイム環境、仮想マシン、又はこれらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを構成するコードなどの、対象とするコンピュータプログラムの実行環境を形成するコードを含むことができる。場合によっては、データ処理装置は、プロセッサのセットを含む。プロセッサのセットは、同一場所に配置すること(例えば、同じコンピューティングデバイス内の複数のプロセッサ)、又は互いに異なる場所に配置することができる(例えば、分散コンピューティングデバイスにおける複数のプロセッサ)。データ処理装置によって実行されるデータを格納するメモリは、データ処理装置と同じ場所に配置すること(例えば、同じコンピューティングデバイスのメモリに格納された命令を実行するコンピューティングデバイス)、又はデータ処理装置と異なる場所に配置することができる(例えば、サーバデバイス上に格納された命令を実行するクライアントデバイス)。
【0079】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、又はコードとしても知られている)は、コンパイラ型言語又はインタープリタ型言語、宣言型言語又は手続き型言語を含む任意の形式のプログラミング言語で記述することができ、コンピュータプログラムは、スタンドアロンプログラムとして、或いはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、オブジェクト、又はコンピューティング環境で使用するのに適した他のユニットとしての形式を含む任意の形式で展開することができる。コンピュータプログラムは、必須ではないが、ファイルシステム内のファイルに対応することができる。プログラムは、プログラム専用の単一のファイル内の、又は複数の連係ファイル(例えば、1又は2以上のモジュール、サブプログラム、又はコードの一部分を格納するファイル)内の、他のプログラム又はデータ(例えば、マークアップ言語文書に格納された1又は2以上のスクリプト)を保持するファイルの一部分に格納することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で実行されるように、或いは1つのサイトに位置するか又は複数のサイトに分散して通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0080】
本明細書で説明した処理及び論理フローの一部は、1又は2以上のコンピュータプログラムを実行する1又は2以上のプログラマブルプロセッサによって、入力データに作用して出力を生成することによって動作を行うように実行することができる。また、処理及び論理フローは、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)などの専用論理回路によって実行することもでき、また、装置は、これらの専用論理回路として実装することもできる。
【0081】
コンピュータプログラムを実行するのに適したプロセッサは、一例として、汎用マイクロプロセッサ及び専用マイクロプロセッサの両方、並びに任意の種類のデジタルコンピュータのプロセッサを含む。一般に、プロセッサは、リードオンリメモリ又はランダムアクセスメモリ、或いはこれらの両方から命令及びデータを受け取る。コンピュータの要素は、命令に従って動作を実行するプロセッサと、命令及びデータを格納する1又は2以上のメモリデバイスとを含むことができる。また、コンピュータは、例えば、非磁性ドライブ(例えば、ソリッドステートドライブ)、磁気ディスク、光磁気ディスク、又は光ディスクなどの、データを格納する1又は2以上の大容量記憶装置を含むことができ、或いはこれらの間でデータの受け取り又はデータの転送、或いはこれら両方を行うように動作可能に結合することもできる。しかしながら、コンピュータは、このようなデバイスを有する必要がない。更に、コンピュータは、例えば電話機、タブレットコンピュータ、電子装置、携帯型オーディオもしくはビデオプレーヤ、ゲーム機、全地球測位システム(GPS)受信器、又はモノのインターネット(IoT)デバイス、マシンツーマシン(M2M)センサもしくはアクチュエータ、或いはポータブルストレージデバイス(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ)などの別のデバイスに組み込むことができる。コンピュータプログラム命令及びデータを格納するのに適したデバイスは、一例として、半導体メモリデバイス(例えば、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリデバイスなど)、磁気ディスク(例えば、内部ハードディスク、リムーバブルディスクなど)、光磁気ディスク、並びにCD ROM及びDVD ROMディスクを含む全ての形態の不揮発性メモリ、媒体及びメモリデバイスを含む。一部の事例では、プロセッサ及びメモリは、専用論理回路によって補完すること又は専用論理回路に組み込むことができる。
【0082】
ユーザとの対話をもたらすために、動作は、ユーザへの情報を表示する表示デバイス(例えば、モニタ、又は別のタイプの表示デバイス)と、ユーザがコンピュータに入力を提供できるようにするキーボード及びポインティングデバイス(例えば、マウス、トラックボール、スタイラスペン、タッチセンサ式スクリーン、又は別のタイプのポインティングデバイス)とを有するコンピュータ上に実装することができる。ユーザとの対話をもたらすために他の種類のデバイスを使用することもでき、例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、又は触覚フィードバックなどの任意の形態の感覚フィードバックとすることができ、ユーザからの入力は、音響入力、音声入力、又は触覚入力を含む任意の形態で受け取ることができる。加えて、コンピュータは、ユーザが使用するデバイスとの間で文書を送受信することによって、例えば、ウェブブラウザから受け取った要求に応答してユーザのクライアントデバイス上のウェブブラウザにウェブページを送ることによって、ユーザと対話することができる。
【0083】
コンピュータシステムは、単一のコンピューティングデバイス、或いは近接して又は一般に互いに離れて動作して、通常、通信ネットワークを介して相互作用する複数のコンピュータを含むことができる。通信ネットワークは、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)及びワイドエリアネットワーク(「WAN」)、インターネットワーク(例えば、インターネット)、衛星リンクを含むネットワーク、並びにピアツーピアネットワーク(例えば、アドホックピアツーピアネットワーク)のうちの1又は2以上を含むことができる。クライアントとサーバとの関係は、それぞれのコンピュータ上で動作し互いにクライアントサーバ関係を有するコンピュータプログラムにより生じることがある。
【0084】
本明細書で説明する実施例の幾つかの一般的な態様では、受信したワイヤレス信号の統計パラメータに基づいて、動きを検出する。
【0085】
第1の実施例において、信号が取得される。この信号は、空間を通って送信されてワイヤレス通信デバイスにて受信されたワイヤレス信号に基づく。統計パラメータのセットの値が、各信号に対して計算され、統計パラメータ値のグルーピングが識別される。動き検出プロセスは、1又は2以上のプロセッサの動作によって実行される。動き検出プロセスは、識別されたグルーピングを使用して、空間内で物体が移動したかどうかを判定する。
【0086】
第1の実施例の実施構成は、一部の事例では、以下の機能のうちの1又は2以上を含むことができる。ワイヤレス通信デバイスにて受信されたワイヤレス信号の周波数領域表現が得られ、この信号は、周波数領域表現における周波数成分のサブセットに基づいて生成することができる。統計パラメータのセットは、第1の統計パラメータ及び第2の統計パラメータを含むことができ、グルーピングを識別するステップは、ビンのセットと各ビンに関する量とを含むヒストグラムデータを生成するステップを含むことができ、各ビンは、統計パラメータの各々に関するそれぞれの範囲に対応する。第1の統計パラメータは、平均値とすることができ、第2の統計パラメータは、標準偏差とすることができる。ヒストグラムデータを生成するステップは、第1及び第2の統計パラメータの値に基づいて各ビンに関する量を計算するステップを含むことができる。これらの値は、初期行列に投入され、この初期行列がフィルタリングされて、フィルタリングされた行列が得られ、ヒストグラムデータは、このフィルタリングされた行列から生成することができる。初期行列内のエントリは、複素値とすることができ、各複素値は、信号のうちの1つに対応しており、第1の統計パラメータの値を表す実数成分と、第2の統計パラメータの値を表す虚数成分とを含む。初期行列をフィルタリングするステップは、特異値分解を実行することによって初期行列から回転行列、反射行列、及び特異値の初期セットを計算するステップと、この初期セット内の特異値のサブセットをゼロにすることによって、フィルタリングされた特異値セットを形成するステップと、フィルタリングされた特異値セット、回転行列、及び反射行列から、フィルタリングされた行列を構築するステップと、を含むことができる。初期行列をフィルタリングするステップは、初期行列をスケーリングするステップを含む。
【0087】
第1の実施例の実施構成は、一部の事例では、以下の機能のうちの1又は2以上を含むことができる。ヒストグラムデータは、多次元ヒストグラムに対応することができ、動き検出プロセスを実行するステップは、ヒストグラムの各次元に沿った量の合計を求めるステップと、この合計に基づいてチェック値を計算するステップと、このチェック値をそれぞれの閾値と比較するステップとを含むことができる。動き検出プロセスを実行するステップは、チェック値のセットに基づいて動きシグネチャ値を計算するステップと、それぞれの期間にわたって動きシグネチャ値を比較するステップとを含むことができる。範囲推定値は、ヒストグラムデータ及び範囲スケーリング値に基づいて計算することができ、検出された動きの相対的位置は、この範囲推定値に基づいて決定することができる。ヒストグラムデータ及び範囲スケーリング値に基づいて範囲推定値を計算するステップは、ヒストグラムデータを表す行列と、要素が範囲スケーリング値を含む範囲スケーリング行列との行列内積を計算するステップとを含むことができる。
【0088】
第2の実施例において、信号が取得される。この信号は、空間を通って送信されてワイヤレス通信デバイスにて受信されたワイヤレス信号に基づく。統計パラメータのセットの値が、各信号に対して計算され、フィルタリングされた値が、統計パラメータの値にフィルタを適用することによって得られる。フィルタは、ワイヤレス信号の信号品質解析に基づくパラメータを含む。動き検出プロセスは、1又は2以上のプロセッサの動作によって実行されて、フィルタリングされた値に基づいて、空間内で物体が移動したかどうかを判定する。
【0089】
第2の実施例の実施構成は、一部の事例では、以下の機能のうちの1又は2以上を含むことができる。フィルタを適用するステップは、信号品質解析に基づいてスケーリング係数を計算するステップと、このスケーリング係数を統計パラメータの値に適用することによってフィルタリングされた値を生成するステップとを含むことができる。信号品質メトリックの値は、それぞれのワイヤレス信号に対して計算することができ、各スケーリング係数を計算するステップは、信号品質メトリックの値に基づくことができる。各スケーリング係数は、信号品質メトリックの値とターゲット信号品質メトリック値との比率に基づくことができる。各スケーリング係数は更に、信号品質メトリックの値に基づいて動き検出プロセスに入力される十分な数のワイヤレス信号を取得するのに必要な時間に基づいて計算することができる。各スケーリング係数は、動き検出プロセスに入力される十分な数のワイヤレス信号を取得するのに必要な時間に対するターゲット時間の比率に基づくことができる。
【0090】
第2の実施例の実施構成は、一部の事例では、以下の機能のうちの1又は2以上を含むことができる。統計パラメータのセットは、信号の周波数成分に適用される第1の関数に基づく第1の統計パラメータと、信号の周波数成分に適用される第2の関数に基づく第2の統計パラメータとを含むことができる。第1の統計パラメータは、平均値とすることができ、第2の統計パラメータは、標準偏差とすることができる。ワイヤレス通信デバイスにて受信されたワイヤレス信号の周波数領域表現が得られ、この信号は、周波数領域表現における周波数成分のサブセットに基づいて生成することができる。ヒストグラムデータは、フィルタリングされた値から生成することができる。ヒストグラムデータは、ビンのセットと各ビンに関する量とを含み、各ビンは、統計パラメータの各々に関するそれぞれの範囲に対応する。動き検出プロセスは、ヒストグラムデータを使用して、物体が移動したかどうかを判定することができる。ヒストグラムデータは、多次元ヒストグラムに対応することができ、動き検出プロセスを実行するステップは、ヒストグラムの各次元に沿った量の合計を求めるステップと、この合計に基づいてチェック値を計算するステップと、このチェック値をそれぞれの閾値と比較するステップとを含むことができる。動き検出プロセスを実行するステップは、チェック値のセットに基づいて動きシグネチャ値を計算するステップと、それぞれの期間にわたって動きシグネチャ値を比較するステップとを含むことができる。フィルタリングされた値からヒストグラムデータを生成するステップは、フィルタリングされた値を再正規化するステップを含むことができる。
【0091】
一部の実施構成において、本システム(例えば、ワイヤレス通信デバイス、コンピュータシステム、又はワイヤレス通信デバイスに通信可能に結合された他のタイプのシステム)は、データ処理装置と、このデータ処理装置によって実行されたときに、第1又は第2の実施例の1又は2以上の動作を実行するように動作可能な命令を格納するメモリとを含む。一部の実施構成において、コンピュータ可読媒体は、データ処理装置によって実行されたときに、第1又は第2の実施例の1又は2以上の動作を実行するように動作可能な命令を格納する。
【0092】
本明細書は、多くの詳細を含むが、これらの詳細は、特許請求できるものの範囲を限定するものとして解釈すべきでなく、むしろ特定の例に特有の特徴の説明として解釈されたい。また、本明細書において別個の実施構成との関連で説明した幾つかの特徴は、組み合わせることもできる。これとは逆に、単一の実施構成との関連で説明した様々な特徴は、複数の実施形態において別個に、又は何れかの好適な部分的組み合わせの形で実装することもできる。
【0093】
幾つかの実施形態について説明した。それでもなお、様々な修正を行うことができることが理解されるであろう。従って、他の実施形態が、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
402 プロット
404 ヒストグラムデータ
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10