(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】チーグラー・ナッタ触媒及びその調製
(51)【国際特許分類】
C08F 4/655 20060101AFI20230323BHJP
C08F 4/654 20060101ALI20230323BHJP
C08F 10/02 20060101ALI20230323BHJP
C08F 210/16 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
C08F4/655
C08F4/654
C08F10/02
C08F210/16
(21)【出願番号】P 2020536019
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2018086893
(87)【国際公開番号】W WO2019129797
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-21
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】スメリン,ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】キピアニ,ゲオルギー
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0021295(US,A1)
【文献】国際公開第2007/096255(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第02167763(GB,A)
【文献】特開2012-092335(JP,A)
【文献】特表2017-538026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/655
C08F 4/654
C08F 10/02
C08F 210/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体のMgCl
2担持触媒コンポーネントを製造する方法であって、
a)MgCl
2
*mROHアダクトの固体担体粒子を用意すること、
b)第13族金属の化合物を用いて、工程a)の固体担体粒子を前処理すること、
c)第4~第6族の遷移金属化合物を用いて、工程b)の前処理された固体担持粒子を処理すること、
d)固体の触媒コンポーネントを回収すること
の工程を含み、
工程c)において上記固体担体粒子を処理する前に、上記固体担体粒子が下記の式(I)
式(I)において、R
1は、直鎖状又は分岐状のC
2~C
6-アルキル基
である、
の内部有機化合物又はその混合物と接触させられ、
アダクトMgCl
2
*mROHにおけるRが、1~12個のC原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、且つmが0~6である、
上記方法。
【請求項2】
該内部有機化合物の式(I)において、R
1が、直鎖状又は分岐状のC
2~C
4-アルキル基である、請求項1
に記載の方法。
【請求項3】
R
1
が、エチル基である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該固体担体粒子が、上記前処理工程b)の前に、式(I)の内部有機化合物又はその混合物と接触される、請求項1
~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該固体担体粒子が、上記前処理工程b)と同時に、及び/又は上記前処理工程b)の後であるが上記処理工程c)の前に、式(I)の内部有機化合物又はその混合物と接触される
、請求項1
~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該内部有機化合物が、エチルテトラヒドロフルフリルエーテル、n-プロピルテトラヒドロフルフリルエーテル、イソプロピ
ルテトラヒドロフルフリルエーテル、n-ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、sec-ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、tert-ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、又はそれらの混合物から選択される内部電子供与体で
ある、請求項1
に記載の方法。
【請求項7】
MgCl
2
*mROHアダクトにおけるRは、1~8個の炭素原子
を有する直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、且つm
は1~4
である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
MgCl
2
*
mROHアダクトにおけるRは、1~4個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、且つmは1~4である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
mが2.7~3.3である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記第13族金属の化合物が、式 Al(アルキル)
xX
3~x(II)のアルミニウム化合物であり、式中、各アルキルは独立して、1~12個の炭素原子
の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基であり、Xは、ハロゲン
であり、且つ1<x≦3である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第13族金属の化合物が、塩化ジアルキルアルミニウム及びトリアルキルアルミニウム化合物を含む群か
ら選択され
る、請求項1~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
触媒の調製において、MgCl
2
*mROHアダクト以外に、Mg化合物が用いられない、請求項1~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
該内部有機化合物が、エチルテトラヒドロフルフリルエーテルである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第13族金属の化合物が、トリアルキルアルミニウム化合物である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか1項に記載の方法によって調製された、固体のMgCl
2担持触媒コンポーネント。
【請求項16】
上記固体の触媒コンポーネントが、1~10
のMg/Tiモル/モル比、10モル/モル以上
のMg/Al比、及び、4~40
のCl/Tiモル/モル比を有する、請求項
15に記載の、固体のMgCl
2担持触媒コンポーネント。
【請求項17】
Ti、Mg、Al、及びClと、下記の式(I)
式(I)において、R
1は、直鎖状又は分岐状のC
2~C
6-アルキル基
である、
の内部電子供与体とを含む、固体のMgCl
2担持触媒コンポーネントであって、
1~10
のMg/Tiモル/モル比、10モル/モル以上
のMg/Al比、及び、4~40
のCl/Tiモル/モル比を有する、上記固体のMgCl
2担持触媒コンポーネント。
【請求項18】
請求項
15、16又は17に記載の、固体のMgCl
2担持触媒コンポーネント、第13族金属の化合物の助触媒、及び任意的に、外部添加剤を含む触媒。
【請求項19】
請求項
15、16又は17に記載の、固体のMgCl
2担持触媒コンポーネント又は請求項
18に記載の触媒を、重合プロセスにおいて、エチレンを、任意的にコモノマーと共に、重合する際に使用する方法。
【請求項20】
重合プロセスにおいてエチレンコポリマーを製造する方法であって、溶液、スラリー若しくは気相反応器又はそれらの組み合わせ中で行われる少なくとも1つの重合段階における重合条件下、請求項
18に記載
の触媒の存在下で、エチレンを、C
3~C
20-α-オレフィン
から選択されるコモノマーと、重合することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン(コ)ポリマーを製造する為の、固体のチーグラー・ナッタ触媒コンポーネント、及び上記触媒コンポーネントの調製に関する。更に、本発明は、上記固体の触媒コンポーネント、助触媒としての第13族金属化合物、及び任意的に、外部電子供与体を含むチーグラー・ナッタ触媒に関する。本発明は更に、オレフィン(コ)ポリマー、特に所望の特性を有するエチレン(コ)ポリマーを製造する際に、上記触媒コンポーネントを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チーグラー・ナッタ(ZN:Ziegler-Natta)タイプのポリオレフィン触媒は、エチレン(コ)ポリマーなどのオレフィンポリマーの製造分野において周知である。一般的に、該触媒は、周期表(IUPAC、無機化学の命名法、1989年)第4~第6族の遷移金属の化合物、第1~代3族の金属の化合物、任意的に第13族の金属の化合物、及び任意的に、内部電子供与体のような内部有機化合物から形成された触媒コンポーネントを少なくとも含む。ZN触媒はまた、1以上の更なる触媒コンポーネント、例えば助触媒、及び任意的に、外部添加剤、例えば外部電子供与体、を含みうる。
【0003】
反応特性において且つ所望の物理的及び機械的性能のポリ(α-オレフィン)樹脂の製造において、種々の要求を満たす為に、極めて多種多様なチーグラー・ナッタ触媒が開発されている。典型的なチーグラー・ナッタ触媒は、粒子状支持体上に担持されたマグネシウム化合物、チタン化合物、及び任意的に、アルミニウム化合物を含有する。一般的に使用される粒子状支持体は、無機酸化物タイプの支持体、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、シリカ-アルミナ、及びシリカ-チタニア、であり、典型的にはシリカである。
【0004】
該触媒は、例えば欧州特許第688794号明細書及び国際公開第99/51646号パンフレットに記載されている通り、担体を上記の化合物と逐次に接触させることによって調製されることができる。代替的には、国際公開第01/55230号パンフレットに記載されている通り、触媒コンポーネントは、最初にコンポーネントから溶液を調製し、そして次に、該溶液を担体と接触させることによって調製されうる。
【0005】
典型的なチーグラー・ナッタ触媒の別の群は、チタン化合物、及び任意的に、第13族化合物、例えばアルミニウム化合物、を含有するマグネシウムジハライド、典型的にはMgCl2ベース触媒、である。そのような触媒は、例えば欧州特許第376936号明細書、国際公開第2005/118655号パンフレット、及び欧州特許第810235号明細書に開示されている。上記ZN触媒は、オレフィン重合において、例えばエチレン(コ)ポリマーを製造する為に、有用であることを開示した。
【0006】
しかしながら、先行技術の多くの触媒が、多くの用途について満足のいく特性を示すにもかかわらず、所望のポリマー特性を達成し、且つ所望の重合プロセスにおいて所望の性能を有する触媒を得る為に、触媒の特性及び性能を改変且つ改善する必要性が存在していた。
【0007】
水素応答及びコモノマー応答、従って、分子量(Mw)、ポリマー分子量分布(MWD)、及びコモノマー含有量を制御する可能性に関する触媒の柔軟性は、触媒性能の一般的指標である。従って、これらの特性に関する問題は、触媒の性能特性を示す。更に、高分子量ポリマーが望まれ、且つ水素量を減らすことがそれ以上できない場合には、次に外部添加剤が重合において使用されることができることは知られている。しかしながら、その場合、ポリマーはしばしば、触媒生産性を犠牲にして製造される。該触媒を改変することによって解決策を見出す幾つかの試みがなされてきた。触媒を改変する一つのやり方は、内部有機化合物を使用することである。しかしながら、例えばポリマーの分子量が改善されるとしても、しばしば、それは幾つかの他の特性、通常は触媒生産性及びコモノマー応答、を犠牲にして生じる(Alt et al. "Bimodal polyethylene-Interplay of catalyst and process" in Macromol.Symp. 2001年, 163 による、第135-143頁)。内部有機化合物は、触媒の性能に影響を及ぼす内部電子供与体又は他の化合物であることができ、且つ、外部添加剤は、例えば外部電子供与体及び/又はハロゲン化アルキルを含む。
【0008】
米国特許第5,055,535号明細書は、モノエーテル(例えば、テトラヒドロフラン)から選択される電子供与体を含むZN触媒を使用して、ポリエチレンホモポリマー及びコポリマーの分子量分布(MWD:molecular weight distribution)を制御する為の方法を開示する。該モノエーテルは、助触媒の存在下で触媒コンポーネントに添加される、且ついかなる状況下においても、該助触媒が媒体中に存在することなしに、モノエーテルが触媒コンポーネントと接触させるべきではないという点で更に特徴付けられる。
【0009】
国際公開第2007/051607号パンフレットは、ZN触媒コンポーネントを改変して、より高分子量(HMW:higher molecular weight)のコンポーネントの分子量分布(MWD)に影響を及ぼす為に、アルキルエーテルタイプの内部電子供与体、好ましくはテトラヒドロフラン、を使用することによって、多峰性エチレンポリマーの特性を調整する可能性を示唆する。
【0010】
国際公開第2007/096255号パンフレットは、内部供与体として、式RaCR1(OR4)-CR2R3(OR5)の1,2-ジエーテル(式中、Raはメチル基若しくは水素であり、又はR4と縮合して環を形成し、R1、R2、及びR3は、独立して水素若しくはおそらくはヘテロ原子を有するC1~C20炭化水素基であり、R4及びR5は、C1~C20アルキル基、若しくはROがC1~C20アルキル基であるROCO-基である)を有するZN触媒について記載し、又は、R4及びR5はR及びR3とそれぞれ連結して環を形成することができ、ただし、Raが水素である場合、R4及びR5が同時にメチルでなく、且つ、Ra及びR4が環を形成する場合に、R5はC1~C20アルキル基である。
【0011】
国際公開第2004/055065号パンフレットは、α-オレフィンを有するエチレンのコポリマーであって、上記α-オレフィンがポリマー鎖に沿って均一に分布されているところのコポリマーを調製する為の、特定のモル比でTi、Mg、ハロゲン、及び電子供与体を含む、固体の触媒コンポーネントを開示する。電子供与体(ED:electron donor)は好ましくは、エーテル、例えばテトラヒドロフラン、である。上記触媒コンポーネントは、アルキルアルミニウム化合物、及び任意的に、外部電子供与体と共に、重合する際に使用される。任意的な外部電子供与体は、該触媒コンポーネントで使用されるEDと同じであるか又は異なるといわれている。
【0012】
欧州特許第0376936号明細書は、スプレードライされたMgCl2/アルコール担体材料が、第IA~IIIA族(周期表の第1、第2、及び第13族(IUPAC、無機化学の命名法、1989年))の化合物で処理され、次に任意的に内部電子供与体の存在下で、チタン化合物を用いてチタン化される、MgCl2に担持されたZN触媒を開示する。該任意的な内部供与体化合物が、TiCl4と共に又はTiCl4添加後に添加される。該任意的な内部供与体化合物が、実施例で使用される場合、THF又はジイソブチルフタレートであった。
【0013】
しかしながら、欧州特許第0376936号明細書の供与体改変触媒の活性は、供与体を含まない元の触媒よりもかなり低かった。その上、供与体処理工程中に、トリエチルアルミニウムの10重量%溶液及び多数の炭化水素洗浄液が使用され、それは、多量の有機溶媒の廃棄物を結果として生じた。
【0014】
国際公開第2014/004396号パンフレットは、二複素環式化合物が内部又は外部の供与体として使用される触媒コンポーネントを開示する。該触媒はプロピレン重合の為に使用される。
【0015】
欧州特許第2746306号明細書は、二環式エーテルから選択される内部電子供与体を含む、担持されたチーグラー・ナッタ触媒コンポーネントを開示する。欧州特許第2746306号明細書の該触媒は、第1~第3族金属の可溶性アルコキシ化合物、第13族金属の化合物、内部電子供与体、及び粒子状支持体上の第4~第6族の遷移金属化合物を積層することによって、代替的には、可溶性マグネシウムアルコキシド化合物、電子供与体溶液、及び塩化アルキルアルミニウム化合物の溶液と接触させて析出支持体材料を形成することによって調製される。析出及び好適な洗浄工程の後に、得られた、固体の支持体材料は、触媒コンポーネントを得る為に、チタン化合物で処理された。この場合、該ポリマーの分子量は、触媒生産性を犠牲にして改善される。その上、触媒性能及び析出されたMgCl2ベース触媒の形態は典型的には、調製条件における、特に大規模製造における、わずかな変動に対して敏感である。
【0016】
国際公開第2016/097193号パンフレットは、内部電子供与体として二環式エーテルが使用される、MgCl2担持触媒コンポーネントの調製を開示する。利点として、活性を良好なレベルに維持しながら、該ポリマーの分子量分布(MWD)が狭められることができることが開示されている。
【0017】
チーグラー・ナッタ触媒の調製においてかなり多くの開発研究がなされてきているけれども、なおも若干の改善の余地がある。上記されている通り、幾つかの方法は特に、調製条件に対して敏感であり、及び/又は大量の廃棄物が形成され、それは大スケールで触媒を調製する際の欠点である。触媒合成手順の改変は、後続する触媒の生産性に悪影響を及ぼし得、市販スケールの製造にとって満足でない。更に、触媒の形態は、特に大規模製造において制御することが困難である可能性がある。触媒特性及び性能の必要性に加えて、市販スケールでの触媒調製は、できる限り単純且つロバストであるべきである。更に、調製して使用される化学物質は、健康、安全、及び環境上の見地から、安全であるとみなされるべきである。
【0018】
所望の課題の多くは、国際公開第2016/097193号パンフレットに記載されている通り、触媒を使用することによって達成可能である。
【0019】
しかしながら、上記のような所望の課題に加えて、分子量分布を狭く、且つコモノマー分布を均一に保ちながら、触媒の活性と水素応答との間のバランスを改善する為のなおも若干の余地がある。
【0020】
従って、メルトフローレート(MFR:melt flow rate)及び密度ウィンドウがより広いコポリマーを製造することができ、従って、溶融温度(均一なコモノマー分布)が低いこと、及びMWD(molecular weight distribution:分子量分布)が狭く、且つコモノマー含有量が高い高分子量コポリマーを製造することが可能となる触媒を提供することが望ましい。そして最終的に、該触媒は、広範囲にわたる分子量のポリマーを生成し、一方、市販重合プロセスにおいて有用となるレベルで生産性を有するべきである。
【0021】
更に、大スケールで触媒の製造を可能にするロバストな方法を用いて触媒コンポーネントを調製する方法を見出すことが望ましく、その方法は、触媒調製中に、条件及び化学物質が変化するにつれて形態が変化することに対する感受性がより低い。更に、合成中の大量の廃棄物が回避されることができることが望ましい。
【0022】
更に、本発明の触媒は、良好なコモノマー応答及び所望の狭いMWDのポリマーを提供するはずである。
【0023】
先行技術の教示に基づいて、供与体の改変は、幾つかの特性の改善を結果として生じるように思われる。しかしながら、非常に多くの場合、これらの改善は、触媒生産性及びコモノマー応答を犠牲にしてなされる。加えて、析出法によって調製されるMgCl2ベース触媒は典型的に、調製条件の変化に対して敏感である。
【発明の概要】
【0024】
特定の内部電子供与体を用いて改変され、且つ以下に記載されている通りの定義された方法によって調製された、固体のMgCl2ベース触媒コンポーネントがオレフィン重合で使用される場合に、先行技術の問題が解決出来ることが、驚くべきことに今見出された。
【0025】
従って、本発明の目的は、固体のMgCl2ベース触媒コンポーネントを調製する為の方法を提供することである。本発明はまた、固体のMgCl2ベース触媒コンポーネント及び本発明の方法によって調製された、固体のMgCl2ベース触媒コンポーネントに関する。更に、本発明は、上記の固体のMgCl2ベース触媒コンポーネント、助触媒、及び任意的に、外部添加剤、特に外部電子供与体、を含む触媒に関する。本発明の更なる目的は、本発明の、固体のMgCl2ベース触媒コンポーネント、及び/又はオレフィン重合プロセスにおいて本発明の方法によって調製される、固体のMgCl2ベース触媒コンポーネントの使用である。
【0026】
本開示において語「内部有機化合物」は、内部電子供与体をカバーするがそれに限定されず、該句は特許文献において幅広く使用されている。上記内部有機化合物は、固体の触媒コンポーネントの一部である、すなわち、固体の触媒コンポーネントの合成中に添加される化合物を表わす。外部添加剤は、外部電子供与体をカバーするがそれに限定されない任意の添加剤をカバーし、且つ固体の触媒コンポーネントの一部ではないが、別個のコンポーネントとして重合プロセスに供給されるコンポーネントを意味する。
【0027】
句「担体(carrier)」及び「支持体(support)」は、本開示において同一の意味を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】比較例1(CE1)及び実施例1(IE1)の分子量分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
従って、本発明は、固体のMgCl2担持触媒コンポーネントを製造する方法であって、
a)MgCl2
*mROHアダクト(adduct)の固体担体粒子を用意すること、
b)第13族金属の化合物を用いて、工程a)の固体担体粒子を前処理すること、
c)第4~第6族の遷移金属化合物を用いて、工程b)の前処理された固体担持粒子を処理すること、
d)固体の触媒コンポーネントを回収すること
の工程を含み、
工程c)において上記固体担体粒子を処理する前に、上記固体担体粒子が下記の式(I)
【0030】
【化1】
式(I)において、R
1は、直鎖状又は分岐状のC
2~C
6-アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐状のC
2~C
4-アルキル基、最も好ましくはエチル基、である、
の内部有機化合物又はその混合物と接触させられ、
アダクトMgCl
2
*mROHにおけるRが、1~12個のC原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、且つmが0~6である、
上記方法に関する。
【0031】
従って、上記内部有機化合物、典型的には式(I)の内部電子供与体、は、固体担体粒子を第4~第6族の遷移金属化合物で処理する前に、固体担体粒子と接触される。従って、該内部有機化合物は、工程b)の前、すなわち固体担体粒子を第13族金属化合物で前処理する前、又は上記前処理工程と同時、又は工程b)の後であるが固体担体粒子を第4~第6族の遷移金属化合物で処理する前に、固体担体粒子と接触させることができる。
【0032】
本発明はまた、上記の方法によって調製された、固体の触媒コンポーネントに関する。更に、本発明は、上記で定義された通りに調製された、固体の触媒コンポーネント、助触媒、及び任意的に、外部電子供与体を含むチーグラー・ナッタ触媒を提供する。
【0033】
更に、本発明の1つの目的は、本発明に従う触媒を、エチレンポリマーを生成する為の方法において使用することである。本発明の触媒又は本発明の方法によって製造された触媒は、多段階プロセスにおいてエチレンコポリマーを生成する為に特に好適である。
【0034】
本発明は、特定の好ましい実施態様を参照して、以下により詳細に記載される。好ましい実施態様は、従属請求項において並びに下記の説明において記載されている。
【0035】
本明細書で使用する場合、語「チーグラー・ナッタ(ZN:Ziegler-Natta)触媒コンポーネント」は、周期表(IUPAC、無機化学の命名法、1989年)の第4~第6族の遷移金属化合物、第13族の金属の化合物、及びMgCl2ベース担体上に担持された内部有機化合物を含む触媒コンポーネントをカバーするように意図されている。
【0036】
マグネシウムジハライドは、担体を生成する為の出発物質として使用される。本発明において使用される固体担体は、アルコールがMgジハライド、好ましくはMgCl2、に配位されている担体である。Mgジハライド、好ましくはMgCl2、はアルコール(ROH)又はアルコールの混合物と混合され、そして固体担体MgCl2
*mROHが周知の方法に従って形成される。例として、スプレードライ又はスプレー結晶化法が、担体を調製する為に使用されることができる。球状及び粒状のMgCl2
*mROH担体材料が、本発明において使用される為に好適である。MgCl2
*mROH担体材料の生成におけるアルコールは、アルコールROH(式中、Rは、1~12個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子、例えば1~4個の炭素原子、を含む、直鎖状又は分岐状のアルキル基である)、又はその混合物である。エタノールが典型的には使用される。MgCl2
*mROHにおいて、mは0~6、より好ましくは1~4、特に2.7~3.3、である。
【0037】
MgCl2
*mROHは商業的供給元から入手可能である、又は先行技術に記載されている方法によって調製されることができる。MgCl2
*mROH担体の調製方法は、幾つかの特許、例えば欧州特許出願公開第0376936号明細書、欧州特許出願公開第0424049号明細書、欧州特許出願公開第655073号明細書、米国特許第4,071,674号明細書、及び欧州特許出願公開第0614467号明細書に記載されており、それらは参照により本明細書に組み込まれる。本発明の固体担体粒子はMgCl2
*mROHから構成され得、それはMgCl2
*mROHアダクトとも呼ばれる。
【0038】
工程b)で使用される第13族金属化合物は、好ましくはアルミニウム化合物、である。特に好ましくは、アルミニウム化合物は、式 Al(アルキル)xX3~x(II)のアルミニウム化合物である(式中、各アルキルは独立して、1~12個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子、のアルキル基であり、Xは、ハロゲン、好ましくは塩素原子、であり、及び1<x≦3である)。該アルキル基は、直鎖状、分岐状、若しくは環状、又はそのような基の混合であることができる。
【0039】
好ましいアルミニウム化合物は、塩化ジアルキルアルミニウム又はトリアルキルアルミニウム化合物、例えば塩化ジメチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、及びトリエチルアルミニウム、又はそれらの混合物である。最も好ましくは、該アルミニウム化合物は、トリアルキルアルミニウム化合物、特にトリエチルアルミニウム化合物、である。
【0040】
第4~第6族の遷移金属化合物は好ましくは、第4族遷移金属化合物、又はバナジウム化合物であり、より好ましくはチタン化合物、である。特に好ましくは、チタン化合物は、式XyTi(OR8)4-yのハロゲン含有チタン化合物である(式中、R8は、C1~20アルキル、好ましくはC2~10、及びより好ましくはC2~8アルキル基、であり、Xは、ハロゲン、好ましくは塩素原子、であり、及びyは、1、2、3、又は4、好ましくは3又は4、及びより好ましくは4、である)。
【0041】
好適なチタン化合物は、トリアルコキシチタニウムモノクロリド、ジアルコキシチタニウムジクロリド、アルコキシチタニウムトリクロリド、及びチタニウムテトラクロリドを包含する。好ましくは、チタニウムテトラクロリドが使用される。
【0042】
内部有機化合物、好ましくは内部電子供与体、が、下記の式(I)
【0043】
【化2】
式(I)において、R
1は、直鎖状又は分岐状のC
2~C
6-アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐状のC
2~C
4-アルキル基、すなわちエチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル基、及び最も好ましくはエチル基、である、
の1,2-ジエーテル化合物から選択される。
【0044】
従って、該内部電子供与体は好ましくは、エチルテトラヒドロフルフリルエーテル、n-プロピルテトラヒドロフルフリルエーテル、イソプロピルテトラヒドロフルフリルエーテル、n-ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、sec-ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、tert-ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、又はそれらの混合である。最も好ましくは、該内部電子供与体は、エチルテトラヒドロフルフリルエーテルである。
【0045】
MgCl2
*mROHアダクトにおいて、Rは、1~12個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子、例えば1~4個の炭素原子、を有する直鎖状又は分岐状のアルキル基である。アルコールとして、典型的にはエタノールが使用され、すなわちRはエチル基であり、且つmは、0~6、より好ましくは1~4、特に2.7~3.3、である。
【0046】
従って、MgCl2
*mROHアダクトにおいて最も好ましくは、Rはエチルであり、且つmは、1~4、より好ましくは2.7~3.3、である。本発明の方法に従うと、本質的特徴は、第13族金属化合物を用いてMgCl2
*mROHを前処理する前に、その前処理中に、又はその前処理の後に、但し第4~第6族の遷移金属の化合物で処理する前において、上記で定義された内部電子供与体のような内部有機化合物が、触媒混合物に添加されることである。
【0047】
式(I)の添加される化合物/添加されるMgCl2
*mROHアダクトと触媒混合物とのモル比は、0.02~0.20モル/モル、好ましくは0.05~0.15モル/モル、の範囲である。
【0048】
従って、本発明の第1の好ましい実施態様に従うと、固体の触媒コンポーネントは、
i)固体のMgCl2
*mROH担体(式中、mは1~4であり、Rは、1~8個のC原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキル基である)を用意すること、
ii)工程i)の固体担体粒子を、Al化合物で前処理すること、
iii)式(I)の内部有機化合物を、工程ii)の前処理された固体担体中に添加すること、
又は
iii’)工程ii)と同時に、式(I)の内部有機化合物を、固体担体中に添加すること、
iv)工程iii)又はiii’)の前処理された固体担体粒子を、TiCl4で処理すること、そして
v)固体の触媒コンポーネントを回収すること
によって調製される。
【0049】
従って、本発明の第2の好ましい実施態様に従うと、固体の触媒コンポーネントは、
i)固体のMgCl2
*mROH担体(式中、mは1~4であり、Rは、1~8個のC原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキル基である)を用意すること、
ii-1)式(I)の内部有機化合物を、工程i)の固体担体中に添加すること、
iii-1)工程ii-1)の固体担体粒子を、Al化合物で前処理すること、
iv-1)工程iii-1)の前処理された固体担持粒子を、TiCl4で処理すること、そして
v-1)固体の触媒コンポーネントを回収すること
によって調製される。
【0050】
上記実施態様に従うと、Al化合物は、内部有機化合物を担体に添加する前若しくはその後、又は内部有機化合物を担体に添加すると同時に、固体担体に添加されることができる。該内部有機化合物は好ましくは、内部電子供与体である。
【0051】
上記の第1及び第2の実施態様において最も好ましくは、固体のMgCl2
*mROH担体においてmは2.7~3.3であり、及びROHはエタノールであり、アルミニウム化合物はトリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリエチルアルミニウム、であり、且つ内部電子供与体としてエチルテトラヒドロフルフリルエーテルが使用される。
【0052】
本発明の触媒調製法に従うと、第13族金属化合物、好ましくはアルミニウム化合物、での前処理は、不活性な有機溶媒中、好ましくは不活性な脂肪族炭化水素溶媒中、例えばヘプタン中、の上記アルミニウム化合物の溶液を添加することによって行われることができる。本発明の方法は、濃縮されたアルミニウム化合物溶液を使用することをまた可能にする。トリエチルアルミニウム(TEA)が用いられる場合、無希釈のTEA又は不活性な炭化水素、例えばヘプタン、中のその溶液が使用されることができる。より濃縮された溶液を使用することによって、触媒の形態が有利な状態で存続し、且つ廃棄物の削減が達成されることが判った。
【0053】
回収された本発明の、固体の触媒コンポーネントは、1~10、好ましくは2~8、特に3~7、のMg/Tiモル/モル比;10モル/モル以上、好ましくは16モル/モル以上、のMg/Al比;及び、4~40、好ましくは7~30、のCl/Tiモル/モル比、を有さなければならない。
【0054】
従って、本発明の、固体のMgCl2担持触媒コンポーネントは、Ti、Mg、Al、及びCl、並びに式(I)(式(I)においてR1は、直鎖状又は分岐状のC2~C6-アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐状のC2~C4-アルキル基、最も好ましくはエチル基、である)の内部有機化合物を含有し;及び固体の触媒コンポーネントは、1~10、好ましくは2~8、のMg/Tiモル/モル比、≧10モル/モル、好ましくは≧16モル/モル、のMg/Al比、及び4~40、好ましくは7~30、のCl/Tiモル/モル比、を有する。
【0055】
最も好ましくは、本発明の、固体のMgCl2担持触媒コンポーネントは、Ti、Mg、Al、及びCl、並びに内部電子供与体としてエチルテトラヒドロフルフリルエーテルを含み;並びに3~7のMg/Tiモル/モル比、≧16モル/モルのMg/Al比、及び7~30のCl/Tiモル/モル比を有する。
【0056】
触媒コンポーネントのMgは好ましくは、固体のMgCl2
*mROH担体にのみ由来する、すなわち触媒コンポーネントの調製において、追加のMg化合物が使用されない。
【0057】
本発明の、固体の触媒コンポーネントの粒子は、微細粒子又は凝集物なしに、粒子サイズにおいて均一である。
【0058】
本発明の触媒を使用することによって製造される、又は本発明の方法によって調製されるポリマーが狭い分子量分布(MWD:molecular weight distribution)を有することは、本発明の更なる利点である。特に、本発明の触媒コンポーネント、及び/又は本発明の方法によって、すなわち内部電子供与体として式(I)の1,2-ジエーテルを使用することによって、調製される触媒コンポーネントは、最近の先行技術と比較しても、改善された「活性」-「水素応答」バランスを有する。
【0059】
従って、分子量の増加は、触媒の生産性を犠牲に行われるのでない。生産性は、類似のタイプであるが異なる内部電子供与体を使用する触媒コンポーネントの使用と比較して、いっそう高められる。従って、本発明の方法によって調製される触媒の性能は、良好な生産性を保持しつつ、水素の量がより高くても、またより低くても、いずれの場合にも重合が可能となるように、ポリエチレンの調製ウィンドウの更なる拡大を可能にする。
【0060】
特に、「活性」-「水素応答」バランス及びモル質量変動、MWD、コモノマー応答、コモノマー組成物分布(CCD:comonomer composition distribution)の最適な組み合わせが、ポリエチレンを生成する為に、本発明の触媒を非常に魅力的なものにする。
【0061】
本発明の触媒は、上記で定義された通りの、固体の触媒コンポーネントに加えて、活性剤としても知られている助触媒を含む。助触媒は、第13族金属の有機金属化合物、典型的にはアルミニウム化合物、である。これらの化合物は、アルキルアルミニウムハロゲン化合物、好ましくはアルキルアルミニウムクロリド、例えばエチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド等を包含する。それらはまた、トリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、及びトリ-n-オクチルアルミニウム、を包含する。また、他のアルミニウムアルキル化合物、例えばイソプレニルアルミニウム、がまた使用されうる。特に好ましい助触媒は、トリアルキルアルミニウム化合物であり、そのうちトリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、及びトリイソブチルアルミニウムが特に使用される。
【0062】
本発明の触媒はまた、外部添加剤、例えば外部電子供与体、を含みうる。好適な外部添加剤、典型的には外部電子供与体、は、エーテル化合物、典型的にはテトラヒドロフラン、シロキサン、又はシランタイプの外部供与体、及び/又は先行技術から公知であるハロゲン化アルキルを包含する。
【0063】
本発明の触媒は、エチレンを、任意的に1以上のコモノマーと、重合する為に使用されることができる。一般的に使用されるコモノマーは好ましくは、C3~C20-α-オレフィンから選択される、より好ましくはC4~C10-α-オレフィン、例えば1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、及び1-デセン、並びにジエン、例えばブタジエン、1,7-オクタジエン、及び1,4-ヘキサジエン、又は環状オレフィン、例えばノルボルネン、より選択される、α-オレフィンコモノマー、及びその任意の混合である。最も好ましくは、該コモノマーは、1-ブテン及び/又は1-ヘキセンである。
【0064】
本発明の触媒は、広範囲のポリエチレンポリマーの製造を可能にする。従って、高密度、中密度、及び低密度のエチレンポリマーの製造が可能である。
【0065】
本発明の触媒は、ポリエチレンを製造する為に、任意の一般的に使用される単一モード及び多モードのプロセスにおいて使用されることができる。典型的には、ポリエチレンポリマーは、多モードプロセス構成において製造される。多峰性エチレンコポリマーは、少なくとも2つの重合段階を含む、当技術分野において知られている任意の好適な重合プロセスにおいて生成されうる。カスケードモードで重合段階を操作することが好ましい。該重合は、スラリー、溶液、若しくは気相状態、又はそれらの組み合わせ中で運用されうる。カスケード式のスラリー及び気相重合段階を含む好適なプロセスが、とりわけ国際公開第92/12182号パンフレット及び国際公開第96/18662号パンフレットにおいて開示されている。
【0066】
多モード重合構成において、重合段階は、スラリー及び気相反応器から選択される重合反応器を含む。1つの好ましい実施態様において、該多モード重合構成は、少なくとも1つのスラリー反応器を含み、幾つかの実施態様において、2つのスラリー反応器、その後に少なくとも1つの気相反応器、好ましくは1つの気相反応器、を含む。
【0067】
該触媒は、当技術分野において知られている任意の手段によって、重合プロセスに移されうる。従って、該触媒を希釈剤中に懸濁し、そしてそれを均一なスラリーとして維持することが可能である。国際公開第2006/063771号パンフレットに開示されている通り、20~1500mPa・sの粘度を有するオイルを希釈剤として使用することが特に好ましい。該触媒を、グリース及びオイルからなる粘稠な混合物と混合し、得られたペーストを重合ゾーンに供給することがまた可能である。更になおも、例えば欧州特許出願公開第428054号明細書に開示されている様式で、該触媒を沈降させ、そしてそのようにして得られた触媒粘稠物の一部を重合ゾーンに導入することが可能である。
【0068】
スラリー状態での重合は、不活性な希釈剤、典型的には炭化水素希釈剤、例えばメタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等、又はそれらの混合物内で通常行われる。好ましくは、該希釈剤は、1~4個の炭素原子を有する低沸点炭化水素、又はそのような炭化水素の混合物である。特に好ましい希釈剤は、おそらくは少量のメタン、エタン、及び/又はブタンを含有するプロパンである。
【0069】
スラリー重合における温度は典型的には、40~115℃、好ましくは60~110℃、特に70~100℃、である。圧力は、1~150bar、好ましくは10~100bar、である。
【0070】
スラリー重合は、スラリー重合で使用される任意の公知の反応器内で行われうる。そのような反応器は、連続撹拌槽型反応器及びループ反応器を包含する。ループ反応器内で重合を実施するのが特に好ましい。当技術分野において知られている通り、ポリマーの分子量を制御する為に、水素が、任意的に反応器内に供給される。その上、ポリマー生成物の密度及び形態を制御する為に、1以上のα-オレフィンコモノマーが反応器内に添加されうる。そのような水素及びコモノマー供給材料の実際の量は、得られたポリマーの所望のメルトインデックス(又は分子量)及び密度(又はコモノマー含有量)に依存する。
【0071】
気相での重合が、流動床反応器中で、高速流動床反応器中で、又は固定床(settled bed)反応器中で、又はこれらの任意の組み合わせ中で行われる。
【0072】
典型的には、流動床又は固定床の重合反応器は、50~100℃、好ましくは65~90℃、の温度で操作される。圧力は好適には、10~40bar、好ましくは15~30bar、である。
【0073】
また、1以上の帯電防止剤が、必要な場合には、スラリー及び/又は気相反応器内に導入されうる。該プロセスは更に、プレ反応器及びポスト反応器を含みうる。
【0074】
重合工程の前に、予備重合工程が行われうる。該予備重合工程がスラリー又は気相状態で行われうる。好ましくは、予備重合が、スラリー状態で、特にループ反応器内で、行われる。予備重合工程における温度は典型的には、0~90℃、好ましくは20~80℃、及びより好ましくは30~70℃、である。
【0075】
圧力は重要でなく、典型的には1~150bar、好ましくは10~100bar、である。
【0076】
該重合は、連続的に又はバッチ式で行われ得、好ましくは、該重合は連続的に行われる。
【0077】
本発明に従うエチレン(コ)ポリマーを生成する為の好ましい多段階プロセスは、スラリー相重合段階及び気相重合段階を含む。各段階は、1以上の重合反応器を含むことができる。1つの好適な反応器構成は、1~2つのスラリー反応器、好ましくはループ反応器及び1つの気相反応器、を含む。そのような重合構成は、例えば特許文献、例えばBorealisの国際公開第92/12182号パンフレット及び国際公開第96/18662号パンフレット、に記載されており、且つBorstar技術として知られている。
【0078】
実験の部
方法
ICP分析(Al、Mg、Ti)
代表的な試験部分が採取できるように、乾燥触媒粉末からなる試料が混合される。およそ20~50mgの試料が、不活性な雰囲気内で、20ml容量のクリンプキャップバイアル内にサンプリングされ、そして粉末の正確な重量が記録される。
【0079】
既知容量(V)の試験溶液がメスフラスコ中に用意される。試料消化は、冷やされたバイアル中で、少量の新たに蒸留された(D)水(Vの5%)、その後に濃硝酸(HNO3、65%、Vの5%)を添加することによって行われる。混合物がメスフラスコに移される。溶液は、D水を用いて最終容量Vまで稀釈され、そして2時間放置して安定化された。
【0080】
水性試料の元素分析は、Thermo Elemental iCAP6300誘導結合プラズマ-発光分光分析装置(ICP-OES:Inductively Coupled Plasma–Optical Emission Spectrometer)を使用して、室温で行われる。該装置は、ブランク(5%のHNO3溶液)、並びに5%のHNO3 DI水溶液に溶解したAl、Ti、及びMgの各溶液について0.5ppm、1ppm、10ppm、50ppm、100ppm、及び300ppmの6つの標準を使用して、Al、Ti、及びMgについて校正される。カーブリニアフィッティング(Curvelinear fitting)及び1/濃度の重み付けが、校正曲線の為に使用される。
【0081】
分析直前に、ブランク及び300ppmのAl、100ppmのTi、Mg標準を使用して、校正が検証され且つ調整される(「レスロープ(reslope)」と命名される装置機能)。品質管理試料(QC;5%のHNO3 DI水溶液に溶解した20ppmのAl及びTi、50ppmのMg)が、レスロープを確認する為に測定される。QC試料は、5試料毎に、及びスケジュール化された分析セットの終了時にまた測定される。
【0082】
マグネシウムの含有量が、285.213nmを使用してモニタリングされ、及びチタン含有量が336.121nmのラインを使用してモニタリングされる。アルミニウムの含有量が、試験部分のAl濃度が0~10重量%である場合、167.079nmのラインにより、及び10重量%超のAl濃度について396.152nmのラインによりモニタリングされる。
【0083】
報告される数値は、同一の試料から採取された3つの連続した一定分量の平均であり、且つ試験部分の最初の重量及び希釈容量のソフトウェアへのインプットに基づき、元の触媒試料に関連付けられる。
【0084】
滴定による塩化物含有量
触媒試料中の塩化物含有量は、硝酸銀を用いた滴定によって測定される。50~200mgの試験部分が、隔壁密閉式のバイアル内で、窒素下で秤量される。1部の濃HNO3(68%、分析グレード)及び4部の新たに蒸留された水からなる溶液が、シリンジを使用して、2.5mLの一定分量で試料に添加される。反応及び触媒材料の溶解の後、該溶液が、新たに蒸留された過剰の水を使用して、滴定カップに移される。次に、該溶液は、Mettler Toledo T70自動滴定装置において、0.1MのAgNO3の商業的に認可された溶液を用いて速やかに滴定される。滴定の終点はAg電極を使用して決定される。総塩化物量が滴定から計算され、そして元の試料の重量に関連付けられる。
【0085】
メルトフローレート
MFR2:190℃、2.16kg負荷時
MFR5:190℃、5kg負荷時
メルトフローレートは、ISO 1133に従って測定され、且つg/10分として表わされる。MFRは、流動性の指標、従ってポリマーの加工適性である。メルトフローレートが高いほど、ポリマーの粘度は低い。
【0086】
分子量の平均、分子量分布(Mn、Mw、Mz、PDI、MWD)
多分散指数PDI(polydispersity index)=Mw/Mn(ここで、Mnは数平均分子量であり、且つMwは重量平均分子量である)により記載される分子量の平均(Mz、Mw、及びMn)、分子量分布(MWD)、及びその広さは、下記の式:
【0087】
【0088】
を使用して、ISO 16014-1:2003、ISO 16014-2:2003、ISO 16014-4:2003、及びASTM D6474-12に従って、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)によって決定される。
【0089】
一定の溶出容量間隔ΔViについて、Ai及びMiはそれぞれ、溶出容量Viに関連付けられている、クロマトグラフィーピークスライス領域及びポリオレフィン分子量(MW)であり、ここで、Nは、積分限界間のクロマトグラムから得られるデータポイントの数に等しい。
【0090】
PolymerChar社(Valencia、スペイン)製の赤外線(IR)検出器(IR4又はIR5)を備えた高温GPC装置、又は3×Agilent-PLgel Olexis及び1×Agilent-PLgel Olexisガードカラムを備えたAgilent Technologies社製の示差屈折計(RI)が使用される。溶媒及び移動相として、250mg/Lの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチル-フェノールを用いて安定化された1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)が使用される。クロマトグラフィーシステムは、160℃及び1mL/分の一定流速において操作される。200μLの試料溶液が、分析毎に注入される。データ収集は、Agilent Cirrusソフトウェア、バージョン3.3、又はPolymerChar GPC-IRコントロールソフトウェアを使用して行われる。
【0091】
カラムセットは、0.5kg/モル~11500kg/モルの範囲に19個の狭いMWDポリスチレン(PS)標準を用いて、汎用的な校正(ISO 16014-2:2003に従う)を使用して校正される。PS標準は、室温で数時間にわたり溶解される。ポリスチレンピーク分子量からポリオレフィン分子量への変換は、マルク-ホウィンクの式及び下記のマルク-ホウィンクの定数を使用することによって達成される:
KPS=19×10-3mL/g,ηPS=0.655
KPE=39×10-3mL/g,ηPE=0.725
KPP=19×10-3mL/g,ηPP=0.725
【0092】
3次多項式近似が、校正データを近似させる為に使用される。
【0093】
全ての試料は、0.5~1mg/mlの範囲の濃度に調製され、そして連続的な穏やかな振盪下、PPについて2.5時間、又はPEについて3時間、160℃で溶解される。
【0094】
溶融温度
溶融温度は、5~10mgの試料について、Mettler DSC2示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter)を使用して、ISO 11357に従って、示差走査熱量計(DSC)によって測定される。
【0095】
FTIR分光法によるPE中のコモノマー含有量
コモノマー含有量は、OPUSソフトウェアと共にBruker Tensor37分光光度計を使用して、フーリエ変換赤外分光法(FTIR:Fourier transform infrared spectroscopy)に基づいて決定される。
【0096】
およそ0.3グラムの試料が、厚さ250μmのフィルムに圧縮成形される。シリコーンペーパーが、該フィルムの両側に使用される。該フィルムは、汚染を回避する為に素手で触れられない。該フィルムは、Fontijne Press model LabEcon300を使用することによってプレスされる。成形は、2分間の予熱+2分間のライトプレス+1分間のフルプレスによって、160℃で行われる。冷却が、フルプレスパワー(full press power)で4分間行われる。
【0097】
ブテンコモノマー含有量は、およそ1378cm-1の波数での吸収から決定され、且つ参照ピークは2019cm-1である。分析は、2cm-1の分解能、4000~400cm-1の波数スパン、及び128のスウィープ回数を使用して行われる。少なくとも2つのスペクトルが各フィルムから得られる。
【0098】
コモノマー含有量は、1400cm-1~1330cm-1の波数に由来するスペクトルから決定される。ベースラインは下記の方法を使用して決定される:セット波数範囲内で、最も高いピークが配置され、そして次に、この最も高いピークに対して左側及び右側に最小値が配置される。該ベースラインはこれら最低値を結びつける。最も高いピークでの吸収値は、参照ピークの面積によって除算される。
【0099】
本方法についての校正プロットが、コモノマーのタイプ毎に、個別に作成される。不明な試料のコモノマー含有量は、校正試料のコモノマー含有量の範囲内にある必要がある。校正試料材料内のコモノマー含有量は、NMR分光測定法によって事前に決定される。
【0100】
コモノマー含有量は、校正曲線及び下記の式を使用することによって自動的に計算される:
WE=C1×A0+C0
(式中、
WE=結果(重量%)
A0=参照ピーク(AR)の面積に対する測定されたピークの吸収(AQ);
C1=校正曲線の勾配;
C0=校正曲線のオフセット)。
【0101】
コモノマー含有量は、得られたスペクトルの両方から決定され、且つ数値はこれらの結果の平均として計算される。
【実施例】
【0102】
原材料
ヘプタンに溶解された、標準の10重量%及び25重量%のTEA(トリエチルアルミニウム)溶液が、Chemtura社からの100%TEA-Sを希釈することによって調製された。
【0103】
表1に示される通りの特徴を有するMgCl2
*3EtOH担体が、Grace社から受け取った。
【0104】
【0105】
2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(DTHFP)が、ジアステレオマー(D,L-(rac)-DTHFP及びメソ-DTHFPの混合物(1:1)として、TCI EUROPE N.V.より供給された。
【0106】
エチルテトラヒドロフルフリルエーテル(またはETE、または2-(エトキシメチル)テトラヒドロフラン;CAS:62435-71-6)が、Sigma-Aldrich社より供給された。
【0107】
TiCl4は、Sigma-Aldrich社によって供給された(金属不純物<1000ppm,金属分析>99.9%)。
【0108】
下記の実施例において、比較用の及び本発明の触媒コンポーネントの調製、並びに重合における触媒の使用が記載されている。触媒及びポリマー特性は、表2に開示されている。
【0109】
比較例1(CE1)
触媒コンポーネントが、国際公開第2016/097193号パンフレットに記載されている手順に類似した下記の調製法に従って調製された。
【0110】
内部有機化合物としてのDTHFPが、TEAの添加直前に添加された。
【0111】
A.前処理された支持体材料の調製:
不活性な雰囲気のグローブボックス内(<1ppmのO2,H2O):2つのゴム製スリーブ式セプタ、温度計、及び機械式スターラーを備えた、乾燥した300mL、四ツ口丸底フラスコが、7.01g(30mモルのMg)の粒状17μmのMgCl2
*3EtOH担体で充填された。該フラスコは該グローブボックスから取り出された;窒素入口及び出口が取り付けられた。該フラスコは0℃の冷却浴内に配置され、そして40mLのヘプタンに溶解された0.56gの2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(DTHFP/Mg=0.1モル/モル)の溶液で充填された。分散物が、335rpmで、およそ10分間撹拌された。ヘプタンに溶解されたトリエチルアルミニウム(107.55g、94.2mモルのAl;Al/EtOH=1.0モル/モル)の10重量%溶液が、温度を5℃未満に保ちながら、1時間で、滴下で添加された。得られた懸濁物は、20分で80℃まで加熱され、そして335rpmで、30分間、この温度で保たれた。懸濁物は、80℃で、5分間静置され、そして液体が、カニューレを介して吸い上げられた。得られた前処理後の支持体材料は室温まで冷却され、そして170mLのトルエンを用いて室温で洗浄された(トルエンの添加,335rpmで15分間撹拌,5分間静置,カニューレでの吸い上げ)。
【0112】
B.触媒コンポーネントの調製:
室温で、70mLのトルエンが、前処理された支持体材料に添加された。混合物が335rpmで、およそ1分間撹拌された。無希釈のTiCl4(3.3mL、30mモル;Ti/Mg=1.0モル/モル)が滴下で添加され、そして温度が25~35℃に維持された。得られた懸濁物は、20分で、90℃まで加熱され、そして335rpmで、60分間、この温度に保たれた。懸濁物は、90℃で、5分間静置され、そして液体は、カニューレを使用して吸い上げられた。加熱のスイッチが切られ、そして得られた触媒が70mLのトルエンを用いて2回(混合物の温度は、周囲温度の洗浄溶媒を添加することによって、洗浄工程全体を通じて室温までゆっくりと低下された)、そして70mLのヘプタンを用いて1回洗浄された(周囲温度のトルエン又はヘプタンの添加,335rpmで、15分間撹拌,5分間静置,そしてカニューレでの液体の吸い上げ)。触媒は、最初に70℃の窒素流れ内で、そして次に、減圧下で、約0.5時間乾燥された。収量は4.3g(86.7%,Mg基準)であった。
【0113】
C.エチレンと1-ブテンとのベンチスケール共重合
比較例1からの触媒コンポーネント(6.6mg)が、エチレンと1-ブテンとの共重合において試験された。トリエチルアルミニウム(TEA)が、15のAl/Tiモル比で助触媒として使用された。重合反応は、下記の手順に従って、3Lのベンチスケール反応器内で行われた。
【0114】
空の3Lベンチ-スケール反応器が、20℃で、70mLの1-ブテンで充填され、そして200rpmで撹拌された。次に、プロパン(1250mL)が、重合媒体として反応器に添加され、続いて、水素ガス(0.40bar)が添加された。該反応器が85℃まで加熱され、そしてエチレンのバッチ(3.7bar)が添加された。反応器圧が、0.2barの過剰の圧力に保たれ、そして撹拌速度が550rpmまで高められた。触媒及び助触媒が、追加の100mLのプロパンと共に反応器に添加された(数秒間の、触媒とTEAとの事前接触)。全反応器圧が、連続的なエチレン供給により37.5barに維持された。60分後に、モノマー及びH2を排出することによって、重合が中止された。得られたポリマーは、秤量前に、乾燥するまでドラフトチャンバー内に終夜放置された。
【0115】
D.重合結果
重合反応の結果が表2に示されている。触媒の活性は、生成されたポリマーの量に基づいて計算された。分子量及び分子量分布はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された。ブテン-コモノマー含有量はFTIRによって測定された。コポリマーの溶融温度はDSCによって測定された。
【0116】
実施例1(IE1)
内部有機化合物としてエチルテトラヒドロフルフリルエーテルが、TEAの添加直前に添加された。
【0117】
A.前処理された支持体材料の調製:
不活性な雰囲気のグローブボックス内(<1ppmのO2,H2O):2つのゴム製スリーブ式セプタ、温度計、及び機械式スターラーを備えた、乾燥した300mL、四ツ口丸底フラスコが、7.01g(30mモルのMg)の粒状17μmのMgCl2
*3EtOH担体で充填された。該フラスコは該グローブボックスから取り出され、窒素入口及び出口が取り付けられた。該フラスコは0℃の冷却浴内に配置され、そして40mLのヘプタンに溶解された0.40gのエチルテトラヒドロフルフリルエーテル(ETE/Mg=0.1モル/モル)の溶液で充填された。分散物が、335rpmで、およそ10分間撹拌された。ヘプタンに溶解されたトリエチルアルミニウム(107.55g、94.2mモルのAl;Al/EtOH=1.0モル/モル)の10重量%溶液が、温度を5℃未満に保ちながら、1時間で、滴下で添加された。得られた懸濁物は、20分で80℃まで加熱され、そして335rpmで、30分間、この温度に保たれた。懸濁物は、80℃で、5分間静置され、そして液体が、カニューレを介して吸い上げられた。得られた前処理後の支持体材料は室温まで冷却され、そして170mLのトルエンを用いて室温で洗浄された(トルエンの添加,335rpmで15分間撹拌,5分間静置,カニューレでの吸い上げ)。
【0118】
B.触媒コンポーネントの調製:
室温で、70mLのトルエンが、前処理された支持体材料に添加された。混合物が335rpmで、およそ1分間撹拌された。無希釈のTiCl4(3.3mL、30mモル;Ti/Mg=1.0モル/モル)が滴下で添加され、そして温度が25~35℃に維持された。得られた懸濁物は、20分で、90℃まで加熱され、そして335rpmで、60分間、この温度に保たれた。懸濁物は、90℃で、5分間静置され、そして液体は、カニューレを使用して吸い上げられた。加熱のスイッチが切られ、そして得られた触媒が70mLのトルエンを用いて2回(混合物の温度は、周囲温度の洗浄溶媒を添加することによって、洗浄工程全体を通じて室温までゆっくりと低下された)、そして70mLのヘプタンを用いて1回洗浄された(周囲温度のトルエン又はヘプタンの添加,335rpmで、15分間撹拌,5分間静置,そしてカニューレでの液体の吸い上げ)。触媒は、最初に70℃の窒素流れ内で、そして次に、減圧下で、約0.5時間乾燥された。収量は3.9g(93.9%、Mg基準)であった。
【0119】
C.エチレンと1-ブテンとのベンチスケール共重合
本発明の実施例1からの触媒(7.0mg)が、エチレンと1-ブテンとの共重合において試験された。トリエチルアルミニウム(TEA)が、15のAl/Tiモル比で助触媒として使用された。重合反応は、比較例1に記載の手順に従って、3Lのベンチスケール反応器内で行われた。
【0120】
D.重合結果
重合反応の結果が表2に示されている。触媒の活性は、生成されたポリマーの量に基づいて計算された。分子量及び分子量分布はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された。ブテン-コモノマー含有量はFTIRによって測定された。コポリマーの溶融温度はDSCによって測定された。
【0121】
【0122】
*試験共重合条件下で:T=85℃,C2=5モル%,H2/C2=20モル/kモル,C4/C2=970モル/kモル,t=1時間,Al/Ti=15モル/モル
【0123】
上記結果からわかる通り、本発明の実施例(IE1)により生成されたポリマーの触媒活性及び分子量は、比較例1(CE1)よりも高い。同時に、MWDはより狭く(PDIはかなり低い,
図1)、同一の溶融温度であってもコモノマー含有量はより低く、IE1の場合に、取り込まれたコモノマーの、有利でより均一な分布を示す。例示的な触媒の形態が同様に均一である。