(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】イミダゾピラジン誘導体および医薬としてのその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20230323BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20230323BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230323BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230323BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20230323BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
C07D487/04 144
A61K31/5377
A61K45/00
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/24
C07D487/04 CSP
(21)【出願番号】P 2021571741
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2020065253
(87)【国際公開番号】W WO2020245137
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-12-02
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニーニ リカルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーデンマイヤー ディーター
【審査官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/110703(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/04
A61K 31/5377
A61K 45/00
A61P 25/24
A61P 25/18
A61P 25/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Aの化合物。
【化1】
A
(式中、
R
1は、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、シクロプロピル、F
2HC-、FH
2C-、
及びF
3C-からなる群から選択される1~3個の置換基で置換されていてもよいフェニルを表す)
【請求項2】
R
1が、フルオロ、
及びメチルからなる群から選択される1または2個の置換基で置換されていてもよいフェニルを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1が、
【化2】
を表す、請求項1~2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項4】
【表1】
からなる群から選択される化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物又はその
薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項7】
双極I型障害うつ状態、軽躁状態、躁状態、および混合状態;双極II型障害;抑うつ病性障害;不安性の苦痛、混合性の特徴、メランコリアの特徴、非定型の特徴、気分に一致する精神病性の特徴、気分に一致しない精神病性の特徴、緊張病を同時に伴うまたは伴わない大うつ病性障害の処置および/または予防において使用するための、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
単一抑うつエピソードまたは反復性大うつ病性障害、小うつ病性障害、産後発症の抑うつ病性障害、精神病症状を伴う抑うつ病性障害の処置および/または予防において使用するための、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
別の抗うつ剤を用いた処置に加えて投与されることを特徴とする、請求項6~
8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
行動療法に加えて投与されることを特徴とする、請求項6~
8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤および/または担体を更に含む、請求項6~
10のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式Aの新規のイミダゾピラジン
【化1】
A
それらの調製のための方法、それらを含有する医薬組成物、および治療における、特にNR2Bネガティブアロステリック調節特性に関連のある状態の処置または予防における、それらの使用に関する。
一般式Aによる本発明の化合物は、NR2Bネガティブアロステリック調節特性を示す。
【背景技術】
【0002】
過去20年を超える鋭意研究により、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDA)は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ジスキネジア、脳卒中、運動ニューロン病、精神病、てんかん、不安、統合失調症および疼痛に関係する役割を果たすことが示されている。
【0003】
非選択的NMDA受容体アンタゴニストであるケタミン(ラセミ体ならびにSエナンチオマー)は、主に麻酔の開始と維持に使用される医薬であり、過去数年にわたり、大うつ病性障害(MDD)の処置において麻酔域下用量で臨床的有効性を実証している(Murrough et al. 2013, Am J Psychiatry. 170:1134; Singh et al. 2016, Biol Psychiatry. 80:424)。より正確には、ケタミンは、標準薬物療法への奏効が不十分であるMDD患者において、数日間持続する有効性のすみやかな発現を誘発する(Berman et al. 2000. Biol Psychiatry 47:351, Serafini et al. 2014. Curr. Neuropharmacol.12:444)。しかし、非選択的NMDA受容体アンタゴニストは、それらの適用を制限する様々な望ましくない効果を有する。特に、解離および心因性の副作用は、非選択的NMDA受容体アンタゴニスト、例えばケタミンについて顕著である(Krystal et al. 1994. Arch. Gen. Psychiatry 51:199)。1990年代初頭には、異なるNR2(A~D)サブユニットを含有する複数のNMDA受容体サブタイプが存在することが発見された(Paoletti et al., 2013 Nat Rev. Neurosci 14:383)。より近年には、NR2Bサブタイプ選択的NMDA受容体ネガティブアロステリック調節剤(NR2B NAM)への関心が高まり、広範な臨床的適応、例えば注意、情動、気分、および疼痛、ならびに多数の異なるヒトの障害に関与しているものへの可能性が示されている(Mony et. al. 2009. Br. J. Pharmacol. 157:1301; Chaffey et al., Current Anaesthesia & Critical Care 19, 183)。特に、NR2B NAMは、臨床試験の早期の段階において抗うつ効果も実証している(Preskorn et al. 2008. J Clin Psychopharmacol 70:58)。NR2B NAMを使用し、様々なトランスジェニックマウス株を適用した前臨床試験は、NMDA受容体を含有するNR2Bが、例えば強制水泳試験においてケタミンの好ましい効果を媒介することを示している(Miller et al. 2014 eLife 3:e03581; Kiselycznyk et al. 2015, Behav Brain Res, 287:89)。さらに、選択的NR2B NAMは、解離および精神異常発現性の副作用が大いに減少するため、非選択的NMDA受容体アンタゴニスト、例えばケタミンに対する利点を有する(Jimenez-Sanchez et al. 2014. Neuropsychopharmacology 39:2673)。現在までに説明されているNR2B NAMは、ヒトの薬物療法における使用可能性を制限するそれらの受容体の薬理学および/または他の薬物特性に関して欠点を呈する(Taylor, et al., 2006, Clin Pharmacokinet.45:989;Addy et al. 2009 J of Clinical Pharmacology 49:856)。
【0004】
WO2016/29146は、抗生剤として有用なメチオニル-tRNA合成酵素(MetRS)の阻害剤である、式(I)
【化2】
(I)
の化合物を開示している。WO2016/29146の式(I)は、ベンゾイミダゾールまたはイミダゾピリジン下位構造を呈する特定の実施例1734、1744、1745、1757、1758、1785および1790を包含する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の化合物は、意外なことに強力なNR2Bネガティブアロステリック調節剤(表1を参照のこと)であることが判明し、一方でWO2016/29146の特定の実施例1734、1744、1745、1757、1758、1785および1790は、NR2Bイオンチャネルのむしろ弱いNR2Bネガティブアロステリック調節を示す、または活性をまったく示さない(表2を参照のこと)。
【0006】
さらに、本発明の化合物は、良好な膜透過性および低程度から中程度のインビトロの排出を示す(MDCKアッセイMDR1(p-GP)について表3を参照のこと)。したがって、本発明の化合物は、有効なCNS医薬に必要とされる好都合な脳透過性を示すと予測される。
【0007】
MDCKアッセイは、化合物が血液脳関門を通過する可能性についての情報を提供する。透過性のフィルター支持体上で成長した、分極したコンフルエントなMDCK-MDR1細胞単層にわたる透過性測定は、インビトロの吸収モデルとして使用され、MDCK-MDR1細胞単層にわたる化合物の見かけの透過係数(PE)は、頂端面から基底面への(apical-to-basal)(AB)および基底面から頂端面への(BA)輸送方向で測定される(pH7.4、37℃)。AB透過性(PEAB)は、血液から脳への薬物の吸収を表し、BA透過性(PEBA)は、脳から血液へと戻る薬物の排出を表し、これらは受動的透過性、ならびにMDCK-MDR1細胞上に発現した排出および取り込み輸送体により、主に過剰発現したヒトMDR1により媒介される能動輸送機序の両方を介するものである。両方の輸送方向における同一のまたは類似の透過性は、受動的透過、さらなる能動輸送機序に対するベクトル透過点(vectorial permeability point)を示す。PEABよりも高いPEBA(PEBA/PEAB>5)は、十分な脳への曝露を達成するという目的を損なうであろう、MDR1により媒介される能動排出の関与を示す。したがって、このアッセイは、さらなるインビボの試験に適用可能な化合物の選択のための貴重な支持を提供する。血液脳関門での排出により限定されない高い透過性は、主にCNSにおいて作用する薬物のために使用される化合物についての好都合な特徴である。結果として、血液脳関門での高い透過性を確実にするため、MDR1トランスポーターにおける排出を最小化する(排出<5)ことが極めて好ましい。
【0008】
さらに、本発明の化合物は、ヒト肝ミクロソームにおいて代謝安定性である(表4、代謝安定性を参照のこと)。したがって、本発明の化合物は、ヒトにおいて好都合なインビボのクリアランスを有し、よって、所望の作用持続時間を有すると予測される。
【0009】
ヒト肝ミクロソームにおける安定性は、好都合な薬物動態特性を有する薬物の選択および/または設計の文脈における、化合物の生体内変化に対する感受性を表す。多数の薬物に対する主要な代謝部位は、肝臓である。ヒト肝ミクロソームはシトクロムP450(CYP)を含有し、よって、インビトロでの薬物の代謝を試験するためのモデル系を表す。ヒト肝ミクロソームにおける強化された安定性は、増大したバイオアベイラビリティおよび十分な半減期を含む幾らかの利点に関連し、患者へのより低くより頻度の少ない投薬を可能とする。よって、ヒト肝ミクロソームにおける強化された安定性は、薬物に使用される化合物についての好都合な特徴である。
結果として、本発明の化合物は、ヒトへの使用に対してより実行可能なものでなければならない。
目的である技術的課題は、よって、強力なNR2Bネガティブアロステリック調節剤を提供することである。
【0010】
本発明は、式Aの新規のイミダゾピラジン
【化3】
A
(式中、
R
1は、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、シクロプロピル、F
2HC-、FH
2C-、F
3C-からなる群から選択される1~3個の置換基で置換されていてもよいフェニルを表す)
またはその塩、特にその薬学的に許容される塩を提供する。
別の実施形態では、一般式A中、R
1は、フルオロ、メチルからなる群から選択される1または2個の置換基で置換されていてもよいフェニルを表す。
【0011】
別の実施形態では、一般式A中、
R
1は、
【化4】
を表す。
【0012】
本発明は、意外なことに強力なNR2Bネガティブアロステリック調節剤である一般式Aの新規のイミダゾピラジンを提供する。
本発明の別の態様は、適切な膜透過性および低程度から中程度のインビトロの排出を有するNR2Bネガティブアロステリック調節剤としての、式Aによる化合物を表す。
本発明の別の態様は、ヒト肝ミクロソームにおける高い代謝安定性を有する、NR2Bネガティブアロステリック調節剤としての、式Aによる化合物を表す。
本発明の別の態様は、適切な膜透過性、低程度から中程度のインビトロの排出およびヒト肝ミクロソームにおける高い代謝安定性を有するNR2Bネガティブアロステリック調節剤としての、式Aによる化合物を表す。
【0013】
本発明の別の態様は、1つまたは複数の不活性な担体および/または希釈剤を共に有してもよい、少なくとも1つの式Aによる化合物を含有する医薬組成物を表す。
本発明のさらなる一態様は、NR2Bネガティブアロステリック調節剤に関連する障害の予防および/または処置において使用するための、式Aによる化合物を表す。
本発明の別の態様は、本発明の化合物の製造の方法を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
調製
以下のスキームは、例として、一般式Aによる化合物および対応する中間体化合物の一般的な製造方法を例示するであろう。省略された置換基は、該スキームの文脈内で他に定義されない限り、上記で定義された通りであり得る。
【0015】
【0016】
【0017】
代わりに、合成はラセミのモルホリン-2,4-ジカルボン酸4-tert-ブチルエステルを出発材料として使用して実施することもできる。
スキーム1および2は、40ミリモルの所望の置換モルホリン(ラセミまたはSエナンチオマー)から出発し、過剰の所望の置換ベンジルアルコール、DIPEA(3当量)、必要とされるカップリング剤、例えば、CDIおよび溶媒としてDMFを使用する、最終化合物のグラムスケールでの合成のために成功裏に使用することができる。
【0018】
代替のグラムスケールでの合成は、対応するモルホリン(ラセミまたはSエナンチオマー;40mmol)、TEA(2.5当量)、わずかに過剰の必要とされるイミドイルカーボネートおよび溶媒としてCH3CN/THFの1/1(容量/容量)混合物を使用して実施することもできる。最終化合物は、良好なエナンチオ過剰率から高いエナンチオ過剰率までで得ることができる。代わりに、キラル分離を適用して、純粋なエナンチオマーを得ることもできる。
【0019】
スキーム1および2では、置換基R1は、一般式Aに対して定義されたような意味、これについて直接言及している本発明のすべての実施形態に対して定義されたような意味、具体的には、特許請求の範囲に定義されたような意味を有する。
【0020】
一般的な定義
本明細書において具体的に定義されていない用語は、当業者により本開示および本文脈に照らしてそれらに与えられるであろう意味を与えられるべきである。
本発明の化合物が化学名および式の形態で描写される場合、何らかの不一致がある場合には式が優先する。
アスタリスクは、コア分子またはそれが定義されているように結合している置換基と連結している結合を示すために、部分式において使用され得る。
「置換されている」という用語は、本明細書において使用される場合、指定された原子の実行可能な価数を超えないこと、および置換が安定な化合物をもたらすことを条件として、指定された原子上の任意の1個または複数個の水素が、示された群から選択されたものと置換されていることを意味する。
【0021】
立体化学:
具体的に示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、示された化学式または化学名は、回転異性体、互変異性体およびすべての立体、光学および幾何異性体(例えばエナンチオマー、ジアステレオアイソマー、E/Z異性体等)およびそれらのラセミ体、ならびに異なる割合の分離したエナンチオマーの混合物、ジアステレオアイソマーの混合物、またはそのような異性体およびエナンチオマーが存在する先行する形態のいずれかの混合物、ならびにその薬学的に許容される塩を含む塩を包含するであろう。
【0022】
塩:
「薬学的に許容される」という句は、公正な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症を伴わず、合理的なベネフィット/リスク比に見合う、使用に好適であるこれらの化合物、材料、組成物および/または剤形を表すために、本明細書で使用される。
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、親化合物が酸または塩基との塩または複合体を形成している、開示されている化合物の誘導体を表す。
塩基性部分を含有する親化合物とともに薬学的に許容される塩を形成する酸の例としては、無機酸または有機酸、例えばベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ゲンチジン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、4-メチル-ベンゼンスルホン酸、リン酸、サリチル酸、コハク酸、硫酸および酒石酸が挙げられる。
酸性部分を含有する親化合物とともに薬学的に許容される塩を形成するカチオンおよび塩基の例としては、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、NH4
+、L-アルギニン、2,2’-イミノビスエタノール、L-リシン、N-メチル-D-グルカミンまたはトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタンが挙げられる。
【0023】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、塩基性または酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般的に、そのような塩は、それらの化合物の遊離酸または塩形態を、十分な量の適切な塩基または酸と水中またはエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、もしくはアセトニトリル、またはそれらの混合物のような有機希釈材中で反応させることにより調製することができる。例えば本発明の化合物を精製または単離するのに有用な上述のもの以外の酸の塩(例えばトリフルオロ酢酸塩)も、本発明の一部を構成する。
【0024】
生物学的アッセイおよびデータ
略語の一覧表
DMEM ダルベッコ変法イーグル培地
FBS ウシ胎児血清
FLIPR 蛍光イメージングプレートリーダー
HEK293 ヒト胎児性腎臓細胞に由来する細胞株
HEPES ヒドロキシエチル-ピペラジンエタン-スルホン酸緩衝液
MDCK メイディン-ダービーイヌ腎臓
MDR1 多剤耐性タンパク質1
p-GP p-糖タンパク質
インビトロの効果
インビトロの薬理学活性の決定
本発明の化合物の活性は、以下のインビトロのNMDA NR1/NR2b細胞アッセイを使用して実証することができる:
【0025】
方法:
NMDA NR1/NR2B受容体のテトラサイクリン誘導性発現を有するヒトHEK293細胞株を、化合物の有効性および効力についての試験系として使用した。細胞株を、ChanTest、カタログ番号CT6121から購入した。化合物の活性を、FLIPRtetraシステム(Molecular Devices)において、グリシン/グルタメートアゴニズムにより誘導された細胞内のカルシウム濃度に対する化合物の効果を測定することにより決定した。
【0026】
細胞培養:
細胞を、冷結保存バイアル中の凍結細胞として得て、使用まで-150℃で保管した。
細胞を培養培地(DMEM/F12、10% FBS、5μg/mLブラストサイジン、150μg/mLゼオジン(Zeozin)、500μg/mLジェネティシン)で成長させた。密度が80%コンフルエンスを超えないことが重要である。継代培養のために、細胞をバーゼン液によりフラスコから剥離した。アッセイのために細胞を剥離し、誘導用培地(グルタミンを有しないDMEM/F12、10% FBS、2μg/mLテトラサイクリン、2mMケタミン)で2回洗浄し、アッセイの48時間前に、誘導用培地中、384ウェルのピュアコートアミンプレートに播種する(BD359324、50μl中、1ウェルあたり50000個の細胞)。
化合物の調製:
試験化合物を100% DMSO中に10mMの濃度で溶解し、最初のステップにおいて、DMSO中で5mMの濃度に希釈し、100% DMSO中で段階希釈ステップを続けた。希釈係数および希釈ステップの数は、必要により変動させてもよい。典型的に、水性アッセイ緩衝液(137mM NaCl、4mM KCl、1.8mM CaCl、10mM HEPES、10mMグルコース、pH7,4)で、1:5希釈による8つの異なる濃度を二重に調製し、物質のさらなる中間希釈(1:37.5)を実施し、結果として最終試験濃度の3倍の化合物濃度となり、2,7%のDMSOはアッセイ中0.9%最終DMSO濃度となった。
【0027】
FLIPRアッセイ:
アッセイの日に、細胞をアッセイ緩衝液で3回洗浄し、洗浄後にウェル内に10μLの緩衝液を残した。10μL Caキットローディング緩衝液(AAT Bioquest)を細胞に添加し、プレートを60分、室温で蓋をしてインキュベートした。60μMのグリシン(最終20μM)および3μMのグルタメート(最終1μM)を含有する20μlのアッセイ緩衝液を、カラム1~23に添加した。蛍光(NR1/NR2Bイオンチャネル活性化の結果としてのカルシウム流入を示す)をFLIPRtetra装置で60秒間読み取り、グルタメート誘導効果をモニタリングした。2分後、20μLの化合物またはアッセイ緩衝液中の対照(列1~22)を、ウェルに慎重に添加した。蛍光をFLIPR tetra装置でさらなる6分読み取り、アゴニストによる活性化後の化合物誘導効果をモニタリングした。化合物添加後に5分および5分10秒での平均2回の測定を算出し、IC50算出のためにさらに使用する。各アッセイマイクロタイタープレートは、グリシン/グルタメート誘導蛍光(高対照(high control))についての対照として化合物の代わりにDMSO対照を有するウェル(カラム23または24中)、および低対照(low control)として1μMの参照NR2b NAM(化合物22;参照:Layton, Mark E et al, ACS Chemical Neuroscience 2011, 2(7), 352-362)を有するウェルを含有した。
【0028】
データ評価および算出:
読み取り機の出力ファイルは、ウェルの数および測定された平均蛍光ユニットを含有する。データ評価および算出のために、低対照の測定を0%対照として設定し、高対照の測定を100%対照として設定した。IC50値を、標準の4パラメーターロジスティック回帰式を使用して算出した。算出:[y=(a-d)/(1+(x/c)^b)+d]、a=低値、d=高値;x=濃度 M;c=IC50 M;b=傾斜。
一般構造Aにより包摂され、低いIC50値を呈するNR2Bネガティブアロステリック調節剤が好ましい。
【0029】
【0030】
MDCKアッセイMDR-1(p-GP)
MDCK-MDR1単層(ヒトMDR1 cDNA発現プラスミドをトランスフェクトされたMDCKII細胞)にわたる化合物の見かけの透過係数(Papp)を、頂端面から基底面(AB)および基底面から頂端面(BA)方向で測定する。
【0031】
MDCK-MDR1細胞(6x105細胞/cm2)をフィルター挿入体(Corning、Transwell、ポリカーボネート、孔径0.4μm)上に播種し、9~10日間培養する。DMSOストック溶液中に溶解した化合物(1~20mM)を、0.25%BSAを補充したHTP-4水性緩衝液(128.13mM NaCl、5.36mM KCl、1mM MgSO4、1.8mM CaCl2、4.17mM NaHCO3、1.19mM Na2HPO4、0.41mM NaH2PO4、15mM HEPES、20mMグルコース、pH7.4)で希釈し、輸送溶液を調製する(最終濃度:1または10μM、最終DMSO<=0.5%)。A-BまたはB-A透過性をそれぞれ測定するために、輸送溶液を頂端または側底ドナー側に適用する。レシーバー側には、0.25%BSAを補充したHTP-4緩衝液を含有させる。HPLC-MS/MSによる濃度測定のために、試料を、実験の開始および終了時ならびに様々な時間間隔で最大2時間ドナーから回収し、レシーバー側からも回収する。試料採取されたレシーバー容量を、新鮮なレシーバー溶液で置き換える。排出比を、Papp(b-a)値をPapp(a-b)値で割ることにより算出する。結果を表3に示す。
【0032】
【0033】
上記の実験結果は、本発明の化合物が、良好な膜透過性および低程度から中程度のインビトロ排出を有する強力なNR2B NAMであることを示す。
代謝安定性
試験化合物の代謝分解を、37℃で貯蔵されたヒト肝ミクロソームでアッセイした。時点ごとに60μlの最終インキュベーション容量は、室温でpH7.6のTRIS緩衝液(0.1M)、塩化マグネシウム(5mM水溶液)、ミクロソームタンパク質(ヒトについて1mg/mL)および最終濃度1μMの試験化合物を含有する。37℃での短いプレインキュベーション期間に続き、反応をベータニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、還元型(NADPH、1mM)の添加により開始させ、異なる時点後に、アリコートを溶媒中に移すことにより終了させた。親化合物の量について、遠心分離(10000g、5分)後、上清のアリコートをLC-MS/MSによりアッセイした。半減期を、濃度-時間プロファイルの片対数プロットの傾斜により決定した。結果を表4に示す。
【0034】
【0035】
本発明は、意外なことに以下の主要パラメーターの好都合な組合せをもたらす、式Aによる化合物を提供する:
1)NR2Bネガティブアロステリック調節、
2)ヒト肝ミクロソームにおける好ましい安定性、および
3)MDR1トランスポーターの中程度から低程度のインビトロの排出。
医薬組成物
本発明の化合物を投与するための好適な調製は、当業者に明らかであり、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、坐剤、ロゼンジ、トローチ剤、溶液、シロップ剤、エリキシル剤、サシェ、注射剤、吸入剤および散剤等が挙げられる。薬学的に活性な化合物の含有量は、全体としての組成物の0.1~95質量%、好ましくは5.0~90質量%の範囲で変動してもよい。
好適な錠剤は、例えば、本発明の化合物と周知の賦形剤、例えば不活性な希釈剤、担体、崩壊剤、アジュバント、界面活性剤、結合剤および/または潤沢剤とを混合し、結果として生じた混合物をプレスして錠剤を形成することにより得ることができる。
処置における使用/使用の方法
NR2B NAMのヒトへの治療用途は、Traynelis et al.(Traynelis et al., Pharmacology Reviews, 2010, 62:405)、Beinat et al.(Beinat et al., Current Medicinal Chemistry, 2010, 17:4166)およびMony et al.(Mony et al., British J. Pharmacology, 2009, 157:1301)らによるレビュー内で要約されている。
【0036】
本発明は、NR2Bのネガティブアロステリック調節が以下を含む治療的利益をもつ、精神障害、疾患および状態の処置に有用である化合物に関する:(1)気分障害および気分情動障害;(2)統合失調症スペクトラム障害;(3)不安障害を含む神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害;(4)精神発達の障害;(5)生理学的機能異常および身体的要因に関連する行動症候群;(6)物質関連および嗜癖障害;(7)不快および快の感情価(negative and positive valence)の症状に関連する疾患。
これらの薬理学的効果の観点において、本発明の化合物は以下からなる一覧表から選択される障害、疾患または状態の処置における使用に好適である。
【0037】
(1)双極I型障害うつ病状態、軽躁状態、躁状態、および混合状態;双極II型障害;抑うつ病性障害、例えば単一抑うつエピソードまたは反復性大うつ病性障害、小うつ病性障害、産後発症の抑うつ病性障害、精神病症状を伴う抑うつ病性障害;不安性の苦痛、混合性の特性、メランコリアの特性、非定型の特性、気分に一致する精神病性の特性、気分に一致しない精神病性の特性、緊張病を同時に伴うまたは伴わない大うつ病性障害を含む気分障害および気分情動障害の処置。
(2)統合失調症、ならびに関連する陰性症状および認知症状を伴う統合失調感情障害を含む、統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害に属する気分障害の処置。
(3)不安障害を含む神経症性障害、ストレス関連障害、および身体表現性障害、全般性不安障害、広場恐怖症を伴うまたは伴わないパニック障害、特定恐怖症、社会恐怖症、慢性不安障害;強迫性障害;重度のストレスに対する反応、および適応障害、例えば心的外傷後ストレス障害;その他の神経症性障害、例えば離人感・現実感消失症候群に属する障害の処置。
(4)アスペルガー症候群およびレット症候群を含む広汎性発達障害、自閉性障害、精神遅滞および常同運動に関連した小児自閉症および過動性障害、運動機能の特異的発達障害、学力の特異的発達障害、注意欠陥/多動性障害などの精神発達の障害の処置。
(5)産後および分娩後うつ病を含む産褥に関連した精神障害および行動障害;神経性食欲不振症および神経性過食症を含む摂食障害、ならびにその他の衝動制御障害を含む、生理学的機能異常および身体的要因に関連した行動症候群の処置。
(6)アルコール、大麻、幻覚剤、興奮剤、睡眠薬、タバコにより誘発される物質使用障害である物質関連障害および嗜癖障害の処置。
(7)アンヘドニア、持続的な脅威および喪失感、希死念慮などの不快および快の感情価の症状を伴う疾患の処置。
【0038】
本明細書において使用される場合、特に断りのない限り、「処置する」「処置」という用語は、疾患、状態または障害と闘う目的のためのヒト対象またはヒト患者の管理およびケアを含み、症状もしくは合併症の発症を予防するため、症状もしくは合併症を緩和するため、または疾患、状態もしくは障害を取り除くための本発明の化合物の投与を含むであろう。
【0039】
本明細書において使用される場合、特に断りのない限り、「予防」という用語は、(a)1つもしくは複数の症状の頻度の減少;(b)1つもしくは複数の症状の重症度の減少;(c)さらなる症状の発現の遅延もしくは回避;および/または(d)障害もしくは状態の発現の遅延または回避を含むであろう。
別の態様によると、本発明は、上述の状態の処置および/または予防において使用するための、式Aの化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
別の態様によると、本発明は、式Aの化合物が行動療法、TMS(経頭蓋磁気刺激)、ECT(電気痙攣療法)および他の治療に加えて使用されることを特徴とする、先行する態様のいずれか1つによる式Aの化合物を提供する。
併用療法
本発明による化合物は、当該技術分野において適応症のいずれかの処置に関して使用されることが周知であり本発明の主眼にある、他の処置選択肢と合わせることができる。
【0040】
別の態様によると、本発明は、式Aの化合物が、デュロキセチン、エスシタロプラム、ブプロピオン、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、セルトラリン、パロキセチン、フルオキセチン、ボルチオキセチン、ミルタザピン、シタロプラム、ビラゾドン、トラゾドン、アミトリプチリン、クロミプラミン、アゴメラチン、レボミルナシプラン、リチウム、ドキセピン、ノルトリプチリンからなる列挙から選択される1つまたは複数の抗うつ剤を用いた処置に加えて投与されることを特徴とする、先行する態様のいずれか1つによる式Aの化合物を提供する。「抗うつ剤」という用語は、うつ病または抑うつ症状に関連する疾患を処置するために使用することができる、任意の薬剤または薬物を意味するであろう。
別の態様によると、本発明は、式Aの化合物が、アリピプラゾール、パルミチン酸パリペリドン、ルラシドン、クエチアピン、リスペリドン、オランザピン、パリペリドン、ブレクスピプラゾール、クロザピン、アセナピン、クロルプロマジン、ハロペリドール、カリプラジン、ジプラシドン、アミスルプリド、イロペリドン、フルフェナジン、ブロナンセリン、アリピプラゾールラウロキシルからなる列挙から選択される1つまたは複数の抗精神病薬を用いた処置に加えて投与されることを特徴とする、先行する態様のいずれか1つによる式Aの化合物を提供する。「抗精神病薬」という用語は、精神病または抑うつ症状に関連する疾患を処置するために使用することができる、任意の薬剤または薬物を意味するであろう。
【0041】
別の態様によると、本発明は、式Aの化合物が、リスデキサンフェタミン、メチルフェニデート、アンフェタミン、デキサンフェタミン、デクスメチルフェニデート、アルモダフィニル、モダフィニルからなる列挙から選択される1つまたは複数の精神刺激薬を用いた処置に加えて投与されることを特徴とする、先行する態様のいずれか1つによる式Aの化合物を提供する。「精神刺激薬」という用語は、気分障害または衝動制御障害のような疾患を処置するために使用することができる、任意の薬剤または薬物を意味するであろう。
別の態様によると、本発明は、式Aの化合物が、オキシラセタム、ピラセタム、または天然物であるセイヨウオトギリソウからなる列挙から選択される向知性薬を用いた処置に加えて投与されることを特徴とする、先行する態様のいずれか1つによる式Aの化合物を提供する。
【0042】
別の態様によると、本発明は、式Aの化合物と1つまたは複数の抗うつ剤、抗精神病薬、精神刺激薬、向知性薬または天然物との組合せが、行動療法、TMS(経頭蓋磁気刺激)、ECT(電気痙攣療法)または他の治療に加えて使用されることを特徴とする、先行する態様のいずれか1つによる1つまたは複数の抗うつ剤、抗精神病薬、精神刺激薬、向知性薬または天然物を用いた処置に加えて投与される、式Aの化合物を提供する。
【実施例】
【0043】
実験のセクション
略語:
ACN アセトニトリル
APCI 大気圧化学イオン化
Boc tert-ブチルオキシカルボニル
CDI 1,1’-カルボニルジイミダゾール
CO2 二酸化炭素
d 日
DA ダイオードアレイ
DAD ダイオードアレイ検出器
DCM ジクロロメタン
DIPE ジイソプロピルエーテル
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
ee,e.e. 鏡像異性体過剰率
ELSD 蒸発光散乱検出器
ESI エレクトロスプレーイオン化(MS中)
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
Exp. 実施例
h 時間
HATU O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム- ヘキサフルオロリン酸塩
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HPLC-MS 結合型高速液体クロマトグラフィー質量分析法
IPA イソプロパノール
M モル(mol/L)
MeOH メタノール
min 分
MS 質量分析法
MW 分子量
NH3 アンモニア
PSI ポンド毎平方インチ
rt 室温
Rt 保持時間
scCO2 超臨界CO2
Sol 溶媒
solv 溶媒
TBTU O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
SFC 超臨界流体クロマトグラフィー
【0044】
一般的解析。
すべての反応を、商業用等級の試薬および溶媒を使用して実行した。NMRスペクトルを、TopSpin 3.2 pl6ソフトウェアを使用して、Bruker AVANCE IIIHD 400 MHz機器上で記録した。化学シフトを、内部標準であるトリメチルシランから百万分の一(ppm)ダウンフィールドでδ単位で得る。選択されたデータを、以下の様式で報告する:化学シフト、多重度、結合定数(J)、積分。分析的薄層クロマトグラフィー(TLC)を、Merckシリカゲル60 F254プレートを使用して実行した。すべての化合物を、短波長UV光を使用して単一のスポットとして可視化した。低分解能質量スペクトルを、Agilent 1100 series LC とAgilent 6130四重極型質量分析計(エレクトロスプレー正イオン化)を組み合わせてなる液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)を使用して得た。
【0045】
方法:
HPLC-MS方法およびキラルSFC分析方法に使用される溶媒混合物に対して、%溶媒は対応する溶媒の容量パーセントとして付与される。
【0046】
【0047】
キラルSFC分析方法:
方法2:I_C2_20_MeOH_NH
3_001
【表6】
【0048】
方法3:I_C2_40_IPA_NH
3_001
【表7】
【0049】
方法4:I_SA_20_MEOH_NH
3_001
【表8】
中間体の調製:
(実施例1a)
【化7】
S-モルホリン-2,4-ジカルボン酸4-tertブチルエステル(1.26g、5.45mmol)をDMF(20ml)に溶解した。次いで、HATU(2.28g、5.99mmol)を添加し、続いてピラジン-2,3-ジアミン(600mg、5.45mmol、CAS No.13134-31-1)およびTEA(1.52ml、10.9mmol)を添加した。反応混合物を室温で20時間撹拌した後、後処理した:反応混合物をガラスフィルターで濾過し、濾液を真空中で濃縮した。残渣を40mLのH
2Oで処理し、2時間撹拌した。得た沈殿物を濾別し、大気中で乾燥させた。1.60gの所望の生成物を得た。
【0050】
【0051】
(実施例2a)
方法A(スキーム1による)
【化8】
実施例1a(1.60g、4.95mmol)、炭酸カリウム(2.74g、19.8mmol)およびイソプロパノール(50ml)の混合物を80℃で6時間撹拌した。沈殿物を濾別し、イソプロパノールで洗浄し、濾液を真空中で濃縮した。残渣を終夜乾燥させた。1.50gの所望の生成物を得た。
【0052】
【0053】
(実施例2a)
方法B(直接的環化、スキーム2による)
【化9】
S-モルホリン-2,4-ジカルボン酸4-tertブチルエステル(3.15g、13.62mmol)をDMF(30ml)に溶解した。次いで、HATU(5.7g、15mmol)を添加し、続いてピラジン-2,3-ジアミン(1.5g、13.62mmol、CAS No.13134-31-1)およびTEA(3.8ml、27.2mmol)を添加した。反応混合物を室温で7時間撹拌した後、後処理した:反応混合物をガラスフィルターで濾過し、濾液を真空中で濃縮した。残渣を100mLのH
2Oで処理し、12時間撹拌した。得た沈殿物を濾別し、大気中で乾燥させた。2.0gの所望の環化した生成物を得た。
【0054】
【0055】
(実施例3a)
【化10】
実施例2a(2g、6.55mmol)をDCM(120ml)に溶解し、ジオキサン中HCl(4M、9.83ml、39.3mmol)を添加し、反応混合物を室温で3.5時間撹拌した。溶媒を真空内で蒸発させ、得た残渣を次のステップにそのまま使用した。1.8gの所望の生成物を塩として得た。
【0056】
【0057】
例示的実施形態
(実施例1)
(2-フルオロ-4-メチルフェニル)メタノール(151mg;1.08mmol、CAS No.252004-38-9)およびCDI(175mg;1.08mmol)をDMF(3ml)中で一緒に混合した。反応混合物を50℃で30分間の間加熱した。次いで、実施例3a(150mg;0.54mmol)およびDIPEA(0.28ml;1.62mmol)を順に添加し、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物を3mlのMeOH/水混合物(1/1;容量/容量)で希釈した後、濾過し、半分取HPLCで分離した。残渣を3mLのDIPEで粉砕し、濾過し、大気中で乾燥させた。157mgの所望の化合物を得た。
【表13】
【0058】
(実施例3)
(2-フルオロ-3-メチルフェニル)メタノール(151mg;1.08mmol、CAS No.307975-03-7)およびCDI(175mg;1.08mmol)をDMF(3ml)中で一緒に混合した。反応混合物を50℃で30分間の間加熱した。次いで、実施例3a(150mg;0.54mmol)およびDIPEA(0.28ml;1.62mmol)を順に添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を3mlのMeOH/水混合物(1/1;容量/容量)で希釈した後、濾過し、半分取HPLCで分離した。80mgの所望の化合物を得た。
【0059】
【0060】
(実施例4)
(2-フルオロフェニル)メタノール(116μl;1.08mmol、CAS No.446-51-5)およびCDI(175mg;1.08mmol)をDMF(3ml)中で一緒に混合した。反応混合物を50℃で30分間の間加熱した。次いで、実施例3a(150mg;0.54mmol)およびDIPEA(0.28ml;1.62mmol)を順に添加し、反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応混合物を3mlのMeOH/水混合物(1/1;容量/容量)で希釈した後、濾過し、半分取HPLCで分離した。98mgの所望の化合物を得た。
【0061】
【0062】
(実施例5)
実施例5を、実施例4と同様に合成した。出発材料:実施例3a(150mg、0.54mmol)および(2,4-ジフルオロフェニル)メタノール(121μl、1.08mmol、CAS No.56456-47-4)。粗製物を半分取HPLCで精製した。112mgの所望の化合物を得た。
【0063】
【0064】
(実施例10)
(4-フルオロフェニル)メタノール(157μl、1.44mmol、CAS No.459-56-3)をDMF(6ml)に溶解した。TEA(0.3ml;2.16mmol)を添加し、続いてビス-[1,2,4]トリアゾール-1-イル-メタノン(236mg、1.44mmol)および実施例3a(200mg、0.72mmol)を添加した。反応混合物を50℃で2時間撹拌した後、H2O/MeOH(4ml;1/1;容量/容量混合物)で希釈し、濾過し、半分取HPLCで精製した。
150mgの所望の化合物を得た。
【0065】
【0066】
(実施例12)
実施例12を、実施例10と同様に合成した。出発材料:実施例3a(200mg、0.72mmol)および(4-メチルフェニル)メタノール(176mg、1.44mmol、CAS No.589-18-4)。反応混合物を、半分取HPLCで精製した。117mgの所望の化合物を得た。
【0067】