(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】アミノシリコーンポリマー、それを含むシリコーンエマルジョン、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 77/26 20060101AFI20230323BHJP
C08G 77/06 20060101ALI20230323BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20230323BHJP
C08J 3/03 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
C08G77/26
C08G77/06
C08L83/08
C08J3/03 CFH
(21)【出願番号】P 2021577363
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 KR2020008582
(87)【国際公開番号】W WO2021002668
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0079600
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521060187
【氏名又は名称】ケーシーシーシリコーンコーポレーション
【氏名又は名称原語表記】KCC Silicone Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ユ ヒョン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】パク チョン ウン
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-511688(JP,A)
【文献】特表2019-501981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00-77/62
C08L 83/00-83/16
C08J 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ-末端ポリシロキサン、アミノシランおよび下記化学式1で表されるアルキルアルコキシシランを含むアミノシリコーンポリマー組成物
の反応生成物であるアミノシリコーンポリマー; 溶媒; 非イオン乳化剤; およびカチオン乳化剤を含むシリコーンエマルジョンであって、
前記アミノシリコーンポリマーは、アミノシリコーンポリマーの総重量に対して100~1,000ppmのオクタメチルシクロテトラシロキサンおよび10~900ppmのデカメチルシクロペンタシロキサンを含み、
前記アミノシリコーンポリマーの重量平均分子量は50,000~200,000g/molであり、
前記シリコーンエマルジョンは、シリコーンエマルジョン100重量部を基準にして、25~40重量部のアミノシリコーンポリマー、50~70重量部の溶媒、1~5重量部の非イオン乳化剤、および2~10重量部のカチオン乳化剤を含み、
前記シリコーンエマルジョンは、25℃で粘度が1~500cPであり、
前記シリコーンエマルジョン総重量を基準に固形分含量が30~50重量%である、シリコーンエマルジョン:
[化学式1]
R
1
4-nSi(OR
2)
n
前記化学式1中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、C
1-10アルキル基であり、
nは2~3である。
【請求項2】
前記組成物は、100重量部の
前記ヒドロキシ-末端ポリシロキサン、1~10重量部の
前記アミノシランおよび0.1~1重量部の
前記アルキルアルコキシシランを含む、請求項1に記載の
シリコーンエマルジョン。
【請求項3】
前記ヒドロキシ-末端ポリシロキサンは、25℃での粘度が1~5,000cPであり、重量平均分子量が100~50,000g/molであり、重合度が1~1,000である、請求項1に記載の
シリコーンエマルジョン。
【請求項4】
第1溶媒および
前記非イオン乳化剤を混合して第1混合物を製造するステップと、
前記第1混合物および
前記アミノシリコーンポリマーを混合して第2混合物を製造するステップと、
前記第2混合物および
前記カチオン乳化剤を混合し、中和剤および第2溶媒を投入して第3混合物を製造するステップとを含み、
前記ステップは、それぞれ15~30℃で行われる、
請求項1~3のいずれか一項に記載のシリコーンエマルジョンの製造方法。
【請求項5】
前記アミノシリコーンポリマーは、
前記組成物を80~95℃で反応させて製造される、
請求項4に記載のシリコーンエマルジョンの製造方
法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノシリコーンポリマーと、それを含み、コンディショニング効果に優れるとともに親環境性に優れたシリコーンエマルジョン、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂は、温度変化に応じた粘度の変化が少なく、酸素や二酸化炭素などに対する透過性に優れて皮膚呼吸を妨害せず、毛髪に使用時に持続的な光沢とツヤを付与するため、毛髪洗浄剤または化粧品などの多様な化粧料分野の原料として広く用いられている。この際、シリコーン樹脂は、通常、有機溶剤または水に分散したエマルジョン形態で用いられている。
【0003】
前記シリコーンエマルジョンは、通常、高い粘度を有するシリコーンゴム(gum)、乳化剤、中和剤および水などを添加し、オイル/水(O/W)エマルジョン形態に製造される。特に、シリコーンエマルジョンは、毛髪の損傷を防止し、損傷した毛髪を保護して毛髪に光沢性およびクシ通しなどを向上させるという効果があり、持続性および保管安定性に優れており、化粧料組成物の原料として広く用いられている。
【0004】
これに関し、日本公開特許第2000-178358号(特許文献1)には、低分子量ポリオルガノシロキサンの塩基性水性乳化重合により製造されたヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンの水性エマルジョン、およびアミノ官能性シランの塩基触媒縮合反応の生成物を含むシリコーンエマルジョンが開示されている。上述したように、乳化重合法により製造された特許文献1のシリコーンエマルジョンは、平衡化反応により環状シロキサンを1重量%以上含有する。しかし、環状シロキサンを1重量%以上含むシリコーンエマルジョンは、毒性および残留性の問題により、化粧品の原料として使用し難いという問題がある。
【0005】
したがって、コンディショニング効果である使用感および持続性に優れるとともに親環境性に優れたシリコーンエマルジョンおよびその製造方法に対する研究開発が必要な状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、コンディショニング効果である使用感および持続性に優れ、環状シロキサンを少量含み、メタノールを含まないため親環境性に優れたシリコーンエマルジョン、その製造方法、および前記シリコーンエマルジョンに含まれるアミノシリコーンポリマーを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ヒドロキシ-末端ポリシロキサン、アミノシランおよび下記化学式1で表されるアルキルアルコキシシランを含むアミノシリコーンポリマー組成物を提供する:
【0008】
[化学式1]
R1
4-nSi(OR2)n
【0009】
前記化学式1中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、C1-10アルキル基であり、
nは2~3である。
【0010】
また、本発明は、前記アミノシリコーンポリマー組成物から製造され、25℃での粘度が10,000~100,000cPであるアミノシリコーンポリマーを提供する。
また、本発明は、前記アミノシリコーンポリマー、溶媒、非イオン乳化剤およびカチオン乳化剤を含むシリコーンエマルジョンを提供する。
【0011】
また、本発明は、第1溶媒および非イオン乳化剤を混合して第1混合物を製造するステップと、
前記第1混合物およびアミノシリコーンポリマーを混合して第2混合物を製造するステップと、
前記第2混合物およびカチオン乳化剤を混合し、中和剤および第2溶媒を投入して第3混合物を製造するステップとを含み、
前記ステップは、それぞれ15~30℃で行われる、シリコーンエマルジョンの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシリコーンエマルジョンは、メタノールを含まないため環境に優しく、コンディショニング効果である使用感および持続性に優れ、常温および高温での貯蔵安定性に優れる。また、前記シリコーンエマルジョンは、環状シロキサンであるオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)およびデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)を少量含んでおり、人体刺激性が低い。このため、前記シリコーンエマルジョンは、化粧料組成物の原料として非常に好適である。
【0013】
また、本発明に係るシリコーンエマルジョンの製造方法は、高粘度のアミノシリコーンポリマーを製造した後、それを用いてシリコーンエマルジョンを製造するが、加熱なしに常温で容易にシリコーンエマルジョンを製造することができるため経済的である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の「重量平均分子量」は、当業界で周知の方法により測定することができ、例えば、GPC(gel permeation chromatograph)などの方法により測定した値を示すことができる。
【0015】
アミノシリコーンポリマー組成物
本発明に係るアミノシリコーンポリマー組成物は、ヒドロキシ-末端ポリシロキサン、アミノシランおよびアルキルアルコキシシランを含む。
【0016】
ヒドロキシ-末端ポリシロキサン
ヒドロキシ-末端ポリシロキサンは、主樹脂であって、それを含むシリコーンエマルジョンの低温柔軟性、高温安定性および耐候性を向上させる役割、および前記シリコーンエマルジョンから製造された塗膜の表面張力を調節してスリップ性を向上させる役割をする。
前記ヒドロキシ-末端ポリシロキサンは、下記化学式2で表されてもよい。
【0017】
【0018】
前記化学式2中、
lは1~1,000の整数である。
【0019】
具体的に、前記化学式2中、lは1~500の整数、または1~100の整数であってもよい。前記化学式2中、lが前記範囲内である場合、それを含むシリコーンエマルジョンのスリップ性、光沢および耐摩耗性を向上させ、損傷毛髪におけるコンディショニング効果に優れる。
【0020】
また、前記ヒドロキシ-末端ポリシロキサンは、25℃での粘度が1~5,000cP、1~1,000cP、または1~200cPであってもよい。前記ヒドロキシ-末端ポリシロキサンの25℃での粘度が前記範囲である場合、アミノシリコーンポリマーの製造時にヒドロキシ-末端ポリシロキサンの反応速度が向上することができる。
【0021】
前記ヒドロキシ-末端ポリシロキサンは、重量平均分子量(Mw)が100~50,000g/mol、500~10,000g/mol、または800~5,000g/molであってもよい。前記ヒドロキシ-末端ポリシロキサンの重量平均分子量が前記範囲内である場合、アミノシリコーンポリマーの製造が容易であるという効果がある。
【0022】
また、前記ヒドロキシ-末端ポリシロキサンは、重合度が1~1,000、1~100、1~50、または20~30であってもよい。前記ヒドロキシ-末端ポリシロキサンの重合度が前記範囲内である場合、ポリマーの粘度および分子量が所望の物性を得ることができ、それを用いてアミノシリコーンポリマーを製造する際に反応速度が速いため経済性に優れるという効果がある。
【0023】
前記ヒドロキシ-末端ポリシロキサンは、ヒドロキシ-末端ポリシロキサンの総重量を基準に、ヒドロキシ基が0.1~30重量%、0.1~10重量%、または0.1~5重量%で含まれてもよい。前記ヒドロキシ-末端ポリシロキサンが、ヒドロキシ基の含量が前記含量範囲内で含まれる場合、アミノシリコーンポリマーの製造時に反応速度が速いという効果がある。
【0024】
アミノシラン
アミノシランは、前記ヒドロキシ-末端ポリシロキサンにアミン官能基を導入させ、アミノシリコーンポリマーに柔らかい使用感を付与するという効果がある。
【0025】
前記アミノシランは、アミノアルコキシシランであってもよく、具体的に、下記化学式3で表されてもよい。
【0026】
【0027】
前記化学式3中、
R4は、C1-5アルキレン基であり、
R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、C1-5アルキル基またはC1-5アルコキシ基である。
【0028】
具体的に、前記化学式3中、前記R4は、メチレン(-CH2-)、1,2-エチレン(-CH2CH2-)、1,1-エチレン(-CH(CH3)-)、1,1-プロピレン(-CH(CH2CH3)-)、1,2-プロピレン(-CH2CH(CH3)-)、1,3-プロピレン(-CH2CH2CH2-)、2,4-ブチレン(-CH2(CH3)CH2CH2-)または1,4-ブチレン(-CH2CH2CH2CH2-)であってもよい。
【0029】
また、前記R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、メトキシ、エトキシ、n-ブトキシまたはiso-ブトキシのアルコキシ基、またはメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピルまたはn-ブチルのアルキル基であってもよい。
【0030】
前記アミノシランは、100重量部のヒドロキシ-末端ポリシロキサンに対して1~10重量部、または3~7重量部の含量で組成物に含まれてもよい。前記アミノシランの含量が前記範囲内である場合、目的とするアミンの含量を有するポリマーの製造が可能であり、それを用いてエマルジョンを製造する際に、損傷毛髪を保護し、コンディショニング効果に優れることができる。
【0031】
アルキルアルコキシシラン
アルキルアルコキシシランは、ポリマー合成反応を促進させてポリマーチェーンを長くし、同一反応時間内に粘度が高いアミノシリコーンポリマーを製造できる役割をする。
前記アルキルアルコキシシランは、下記化学式1で表されてもよい。
【0032】
[化学式1]
R1
4-nSi(OR2)n
【0033】
前記化学式1中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、C1-10アルキル基であり、
nは2~3である。
【0034】
具体的に、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n-ブチル、またはiso-ブチルであり、より具体的に、メチルまたはエチルであってもよい。
【0035】
また、前記アルキルアルコキシシランは、100重量部のヒドロキシ-末端ポリシロキサンに対して0.1~1重量部、または0.3~0.7重量部の含量で組成物に含まれてもよい。前記アルキルアルコキシシランの含量が前記範囲内である場合、反応時間内に所望の粘度のアミノシリコーンポリマーの製造が可能であるという効果がある。
【0036】
第1添加剤
前記アミノシリコーンポリマー組成物は、触媒および中和剤などの第1添加剤をさらに含んでもよい。この際、前記第1添加剤は、100重量部のヒドロキシ-末端ポリシロキサンに対して0.1~5重量部、または0.5~2.5重量部の含量で組成物に含まれてもよい。
【0037】
前記触媒は、縮合反応を誘導可能な塩基性化合物を意味し、例えば、塩基性触媒であってもよい。例えば、前記触媒は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。この際、前記触媒は、100重量部のヒドロキシ-末端ポリシロキサンに対して0.1~4重量部、または0.5~2重量部の含量で組成物に含まれてもよい。
【0038】
また、前記中和剤は、アミノシリコーンポリマー組成物のpHを調節する役割をし、シリコーンの製造時に通常用いられるpH調節剤であれば、特に制限されずに使用可能である。例えば、前記中和剤は、クエン酸、酢酸、乳酸、ギ酸、硝酸、グリコール酸、リン酸のような任意の有機酸または無機酸が挙げられる。この際、前記中和剤は、100重量部のヒドロキシ-末端ポリシロキサンに対して0.01~3重量部、または0.1~1重量部の含量で組成物に含まれてもよい。
【0039】
アミノシリコーンポリマー
また、本発明に係るアミノシリコーンポリマーは、上述したようなアミノシリコーンポリマー組成物から製造され、25℃での粘度が10,000~100,000cPであってもよい。
【0040】
前記アミノシリコーンポリマーは、ポリマーの総重量に対して、100~1,000ppm、または200~600ppmのオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、および10~900ppm、または10~700ppmのデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)を含んでもよい。前記アミノシリコーンポリマーのD4およびD5の含量が前記範囲内である場合、シリコーンエマルジョンの人体刺激性を低減するという効果がある。
また、前記アミノシリコーンポリマーは、メタノールを含まないため環境に優しい。
【0041】
具体的に、前記アミノシリコーンポリマーは、25℃での粘度が10,000~90,000cP、または10,000~80,000cPであってもよい。アミノシリコーンポリマーの25℃での粘度が前記範囲内である場合、毛髪に吸着力が優れ、損傷毛髪に対するコンディショニング効果に優れたエマルジョンの製造が可能である。
【0042】
また、前記アミノシリコーンポリマーは、重量平均分子量(Mw)が50,000~200,000g/mol、または50,000~150,000g/molであってもよい。アミノシリコーンポリマーの重量平均分子量が前記範囲内である場合、毛髪に吸着力が優れており、毛髪に光沢および柔らかさを効果的に付与することができる。
【0043】
シリコーンエマルジョン
また、本発明に係るシリコーンエマルジョンは、上述したようなアミノシリコーンポリマー、溶媒、非イオン乳化剤およびカチオン乳化剤を含む。
【0044】
アミノシリコーンポリマー
アミノシリコーンポリマーは、シリコーンエマルジョンの主樹脂として、溶媒に分散する分散相(dispersed phase)である。この際、前記アミノシリコーンポリマーは、シリコーンエマルジョンにコンディショニング効果である使用感および持続性を付与する。
前記アミノシリコーンポリマーは、上述したような物性および特性を有することができる。
【0045】
また、前記アミノシリコーンポリマーは、シリコーンエマルジョン100重量部を基準に25~40重量部、または28~35重量部の含量でシリコーンエマルジョンに含まれてもよい。前記アミノシリコーンポリマーの含量が前記範囲内である場合、分散した粒子の大きさが小さく、安定性に優れたエマルジョンの製造が容易であるという効果がある。
【0046】
溶媒
前記溶媒は、アミノシリコーンポリマーが分散する分散媒介体であり、シリコーンエマルジョンの粘度を調節して作業性を向上させる役割をする。
この際、前記溶媒は、水であってもよく、具体的に、脱イオン水、純水、超純水および蒸留水からなる群から選択された1種以上を含んでもよい。
【0047】
また、前記溶媒は、シリコーンエマルジョン100重量部を基準に50~70重量部、または55~65重量部の含量でシリコーンエマルジョンに含まれてもよい。前記溶媒の含量が前記範囲内である場合、それを含むシリコーンエマルジョンの粘度が適切であり、安定性が向上するという効果がある。
【0048】
非イオン乳化剤
非イオン乳化剤は、シリコーンエマルジョンに乳化性を付与する役割をする。
前記非イオン乳化剤は、シリコーンエマルジョンに通常用いられる非イオン界面活性剤または非イオン乳化剤であれば、特に制限されずに使用可能であり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエステル、ポリオキシアルキレンソルビン酸アルキルエステル、ナトリウムラウリルエーテルスルフェートおよびステアリルトリメチル塩化アンモニウムなどが挙げられる。この際、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは炭素数が3~23であり、前記ポリオキシエチレンアリールアルキルエーテルのアリールは炭素数が6~10であり、アルキルは炭素数が3~23であってもよい。また、前記ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテルのアルキレンは炭素数が2~5であり、アルキルは炭素数が3~23であってもよい。さらに、前記ポリオキシアルキレンアリールエステルのアルキレンは炭素数が2~5であり、アリールは炭素数が6~10であってもよい。さらに、前記ポリオキシアルキレンソルビン酸アルキルエステルのアルキレンは炭素数が2~5であり、アルキルは炭素数が3~23であってもよい。
【0049】
また、前記非イオン乳化剤は、HLB(Hydrophilic Lipophilic Balance)値が1~20であり、重量平均分子量(Mw)が10~5,000g/molであり、25℃での粘度が1~5,000cPであってもよい。具体的に、前記非イオン乳化剤は、HLB値が5~15であり、Mwが100~1,500g/molであり、25℃での粘度が1~500cPであってもよい。非イオン乳化剤のHLB値が前記範囲内である場合、乳化が円滑に行われ、安定性に優れたエマルジョンの製造が容易であるという効果がある。
【0050】
前記非イオン乳化剤は、シリコーンエマルジョン100重量部を基準に1~10重量部、または1~5重量部の含量でシリコーンエマルジョンに含まれてもよい。前記非イオン乳化剤の含量が前記範囲内である場合、乳化が容易であり、エマルジョンの乳化安定性が向上するという効果がある。
【0051】
カチオン乳化剤
カチオン乳化剤は、シリコーンエマルジョンに乳化性を付与する役割をする。
前記カチオン乳化剤は、シリコーンエマルジョンに通常用いられるカチオン界面活性剤またはカチオン乳化剤であれば、特に制限されずに使用可能であり、例えば、第4級アンモニウム塩が挙げられる。前記第4級アンモニウム塩は、例えば、ジセチルジメチルアンモニウムクロライド、塩化セトリモニウムおよび塩化ベヘントリモニウムなどが挙げられる。
【0052】
また、前記カチオン乳化剤は、カチオン乳化剤の総重量を基準にアミンの含量が0.01~1重量%であり、重量平均分子量(Mw)が10~10,000g/molであってもよい。具体的に、前記カチオン乳化剤は、カチオン乳化剤の総重量を基準にアミンの含量が0.05~0.5重量%、0.1~0.3重量%、または0.15~0.25重量%であり、重量平均分子量が10~800g/mol、10~500g/mol、または100~500g/molであってもよい。カチオン乳化剤のアミンの含量および重量平均分子量が前記範囲内である場合、乳化が容易であり、エマルジョンの安定性が向上するという効果がある。
【0053】
前記カチオン乳化剤は、シリコーンエマルジョン100重量部を基準に1~10重量部、または2~10重量部の含量でシリコーンエマルジョンに含まれてもよい。前記カチオン乳化剤の含量が前記範囲内である場合、シリコーンエマルジョンの乳化が容易であり、溶剤および水に対する希釈安定性に優れる。
【0054】
第2添加剤
前記シリコーンエマルジョンは、防腐剤および中和剤からなる群から選択された1種以上の第2添加剤をさらに含んでもよい。この際、前記第2添加剤は、シリコーンエマルジョン100重量部を基準に0.1~5重量部、または0.1~1重量部の含量でシリコーンエマルジョンに含まれてもよい。
【0055】
前記防腐剤は、前記シリコーンエマルジョンが微生物に汚染されて変質することで安定性が低下する問題を防止する役割をする。また、前記防腐剤は、通常、シリコーン組成物に用いられる防腐剤であれば、特に制限されない。例えば、前記防腐剤は、ナトリウムベンゾエート、フェノキシエタノール、ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジアゾリジニル尿素、イミダゾリニル尿素、15クオタニウム、DMDMヒダントイン、塩化ベンザルコニウム、2-ブロモ-2-ニトロ-プロパン-1,3-ジオール、デヒドロ酢酸、2-ジクロロ-ベンジルアルコール、ナトリウムヒドロキシメチル-グリシネート、トリクロサン、安息香酸、クロロ安息香酸、ベンジルアルコール、ベンジルホルマール、サリチル酸、エデト酸ナトリウム、ソルビン酸、カルシウムベンゾエート、メチルベンゾエートおよびベンジルベンゾエートからなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0056】
前記中和剤は、シリコーンエマルジョンのpHを調節する役割をし、シリコーン組成物に通常用いられるpH調節剤であれば、特に制限されずに使用可能である。例えば、前記中和剤は、クエン酸、酢酸、乳酸、ギ酸、硝酸、グリコール酸、リン酸のような任意の有機酸または無機酸が挙げられる。
【0057】
前記シリコーンエマルジョンは、分散した粒子の平均粒径が50~400nm、または100~270nmであってもよい。シリコーンエマルジョンに分散した粒子の平均粒径が前記範囲内である場合、エマルジョンの貯蔵安定性が向上し、塗布時にコーティング面に均一にコーティングされるという効果がある。
【0058】
また、前記シリコーンエマルジョンは、25℃での粘度が1~500cP、1~100cP、または1~50cPであってもよい。シリコーンエマルジョンの25℃での粘度が前記範囲内である場合、エマルジョンの貯蔵安定性が向上するという効果がある。
【0059】
さらに、前記シリコーンエマルジョンは、固形分の含量がシリコーンエマルジョンの総重量を基準に30~50重量%、または35~55重量%であってもよい。シリコーンエマルジョンの固形分の含量が前記範囲内である場合、エマルジョンの貯蔵安定性を向上させ、コンディショニング効果である使用感および持続性を向上させるという効果がある。
【0060】
上述したような本発明に係るシリコーンエマルジョンは、メタノールを含まないため環境に優しく、コンディショニング効果である使用感および持続性に優れ、常温および高温での貯蔵安定性に優れる。また、前記シリコーンエマルジョンは、D4およびD5を少量含んでおり、人体刺激性が顕著に少ない。このため、前記シリコーンエマルジョンは、化粧料組成物の原料として非常に好適である。
【0061】
シリコーンエマルジョンの製造方法
本発明に係るシリコーンエマルジョンの製造方法は、第1溶媒および非イオン乳化剤を混合して第1混合物を製造するステップと、前記第1混合物およびアミノシリコーンポリマーを混合して第2混合物を製造するステップと、前記第2混合物およびカチオン乳化剤を混合し、中和剤および第2溶媒を投入して第3混合物を製造するステップとを含み、前記ステップは、それぞれ15~30℃で行われる。
【0062】
具体的に、前記シリコーンエマルジョンの製造方法は、高粘度のアミノシリコーンポリマーを製造し、溶媒、非イオン乳化剤、カチオン乳化剤などと、前記アミノシリコーンポリマーを混合するステップを含んでもよい。上述したように、高粘度のアミノシリコーンポリマーを製造し、他の成分とアミノシリコーンポリマーを混合する場合、前記混合は常温で行われることができるため経済性が向上し、それにより製造されたシリコーンエマルジョンは、常温および高温での貯蔵安定性に優れるという効果がある。
【0063】
第1混合物を製造するステップ
本ステップにおいては、第1溶媒および非イオン乳化剤を混合して第1混合物を製造する。
前記第1溶媒は、前記シリコーンエマルジョンの溶媒において説明したとおりであり、前記非イオン乳化剤は、前記シリコーンエマルジョンにおいて説明したとおりである。
【0064】
この際、前記第1溶媒は、シリコーンエマルジョン100重量部に対して0.5~5重量部、または0.5~3重量部の含量で混合されてもよい。
また、前記混合としては、通常、エマルジョンの製造に用いられる方法であれば、特に制限されずに使用可能であり、例えば、ミキサーおよびインペラを用いて撹拌してもよい。
本ステップは15~30℃、または常温(例えば、20~25℃)で行われてもよい。
【0065】
第2混合物を製造するステップ
本ステップにおいては、前記第1混合物およびアミノシリコーンポリマーを混合して第2混合物を製造する。
【0066】
前記アミノシリコーンポリマーは、上述したとおりであり、例えば、ヒドロキシ-末端ポリシロキサン、アミノシランおよび下記化学式1で表されるアルキルアルコキシシランを含む組成物を80~95℃で反応させて製造されてもよい。
【0067】
[化学式1]
R1
4-nSi(OR2)n
【0068】
前記化学式1中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
nは2~3である。
【0069】
具体的に、前記アミノシリコーンポリマーは、ヒドロキシ-末端ポリシロキサン、アミノシランおよび前記化学式1で表されるアルキルアルコキシシランを80~95℃、または85~95℃で混合し、触媒を添加し反応させて反応生成物を製造するステップと、前記反応生成物を1時間~10時間、または3時間~9時間35~45℃に冷却し、中和剤を添加するステップとを含む方法により製造されてもよい。この際、前記反応生成物は、80~95℃での粘度が10,000~100,000cPであってもよい。
【0070】
前記ヒドロキシ-末端ポリシロキサン、アミノシラン、アルキルアルコキシシラン、触媒および中和剤の具体例および含量は、前記アミノシリコーンポリマー組成物において説明したとおりである。
【0071】
また、前記第2混合物は、第1混合物中にアミノシリコーンポリマーが分散した形態であってもよく、この際、分散した粒子の平均粒径が50~400nm、または100~270nmであってもよい。
【0072】
第3混合物を製造するステップ
本ステップにおいては、前記第2混合物およびカチオン乳化剤を混合し、中和剤および第2溶媒を投入して第3混合物を製造する。
【0073】
前記カチオン乳化剤および中和剤は、前記シリコーンエマルジョンにおいて説明したとおりであり、前記第2溶媒は、前記シリコーンエマルジョンの溶媒において説明したとおりである。
また、前記第2溶媒は、シリコーンエマルジョン100重量部に対して1~10重量部、または3~8重量部の含量で含まれてもよい。
本ステップは15~30℃、または常温(例えば、20~25℃)で行われてもよい。
【0074】
また、前記製造方法は、第3混合物に第3溶媒を添加してシリコーンエマルジョンを製造するステップをさらに含んでもよい。
この際、前記第3溶媒は、前記シリコーンエマルジョンの溶媒において説明したとおりである。
【0075】
また、前記第3溶媒は、シリコーンエマルジョン100重量部に対して45~68重量部、または55~65重量部の含量で含まれてもよい。この際、第3溶媒は、1回または数回に分けて投入してもよい。
本ステップは15~30℃、または常温(例えば、20~25℃)で行われてもよい。
【0076】
上述したような本発明に係るシリコーンエマルジョンの製造方法は、高粘度のアミノシリコーンポリマーを製造した後、それを用いてシリコーンエマルジョンを製造するが、加熱なしに常温で容易にシリコーンエマルジョンを製造することができるため経済的である。
【0077】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明の理解を助けるためのものにすぎず、如何なる意味でも本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
[実施例]
実施例1.シリコーンエマルジョンの製造
1-1:アミノシリコーンポリマーの製造
反応器にヒドロキシ-末端ポリシロキサン95.18重量部を投入し、95℃まで昇温し、30分間撹拌した。その後、第1アミノシラン3重量部およびメチルトリエトキシシラン0.32重量部を投入し、触媒として20重量%のNaOH水溶液1重量部を10分間投入した。その後、粘度を確認して目標粘度(25,000cP)に達した際に5時間40℃に冷却し、中和剤として酢酸0.5重量部を添加して中和してアミノシリコーンポリマーを製造した。
【0079】
製造されたアミノシリコーンポリマーは、25℃での粘度が25,000cPであり、重量平均分子量が80,000g/molであった。
【0080】
1-2:シリコーンエマルジョンの製造(常温撹拌)
反応器にインペラが取り付けられたホモミキサーを設け、溶媒として脱イオン水(第1溶媒)1.5重量部および非イオン乳化剤2.5重量部を投入し、25℃で20分間撹拌した。その後、実施例1-1のアミノシリコーンポリマー32重量部を80分間徐々に投入した。アミノシリコーンポリマーの投入完了後、30分ごとに分散粒子の粒径を測定し、25℃で90分間撹拌した。分散粒子の平均粒径が270nm未満に達すると、カチオン乳化剤2重量部を投入して撹拌した。その後、中和剤として23重量%の酢酸水溶液0.3重量部を投入し、25℃で30分間撹拌した。その後、脱イオン水(第2溶媒)5重量部を投入し、25℃で30分間撹拌した後、脱イオン水(第3溶媒)20重量部を投入し、25℃で30分間撹拌した。その後、脱イオン水(第4溶媒)20重量部の投入および25℃で撹拌後、脱イオン水(第5溶媒)16.7重量部の投入および25℃で撹拌してシリコーンエマルジョンを製造した。この際、撹拌速度は500rpmに一定に維持した。
【0081】
実施例2~13および比較例1~4.シリコーンエマルジョンの製造
表1~3に記載されたような組成で成分を使用し、アミノシリコーンポリマーの製造時に温度および冷却処理時間を調節したことを除いては、実施例1と同様の方法によりシリコーンエマルジョンを製造した。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
比較例および実施例で用いられた各成分の製造会社および製品名などは表4に示した。
【表4】
【0086】
試験例:シリコーンエマルジョンの特性評価
実施例1~13および比較例1~4のシリコーンエマルジョンの物性を下記のような方法により測定し、その結果を表5および6に示した。
【0087】
(1)分散した粒子の平均粒径
Marvern社製のMaster Size 3000を用いて、シリコーンエマルジョン中に分散した粒子の平均粒径(nm)を測定した。
【0088】
(2)粘度
ブルックフィールド(Brookfiled)粘度計およびヘリパススタンド(helipath stand)#93を用いて、シリコーンエマルジョンを2.5rpmで撹拌しつつ25℃での粘度を測定した。
【0089】
(3)貯蔵安定性(常温)
シリコーンエマルジョンを25℃のオーブンに7日間放置しつつシリコーンエマルジョンの外観を観察し、水層とオイル層の層分離可否を判断して常温安定性を評価した。この際、水層とオイル層の層分離が発生しない場合には良好と評価し、7日以内に層分離が発生した場合には水層とオイル層の層分離が発生した経過日を記載した。
【0090】
(4)貯蔵安定性(高温)
シリコーンエマルジョンを50℃のオーブンに7日間放置しつつシリコーンエマルジョンの外観を観察し、水層とオイル層の層分離可否を判断して高温安定性を評価した。この際、水層とオイル層の層分離が発生しない場合には良好と評価し、7日以内に層分離が発生した場合には水層とオイル層の層分離が発生した経過日を記載した。
【0091】
(5)D4、D5およびメタノールの含量
ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて、シリコーンエマルジョン中のオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)およびメタノールの含量を測定した。この際、化合物の含量が測定器の限界値未満である場合にはN.D.に表わした。
【0092】
(6)使用感
シリコーンエマルジョンを2.0重量%の濃度となるように水に希釈してサンプルを製造した。その後、前記サンプルを10名の実験対象者に使用するようにした後、密着感とコーティング性を基準に使用感の評価を行い、5点満点を基準に評価した。
【0093】
(7)持続性
前記項目(6)と同一のサンプルを同一の実験対象者に使用するようにした後、持続性の評価を行い、5点満点を基準に評価した。
【0094】
【0095】
【0096】
表5および6から分かるように、実施例1~13のシリコーンエマルジョンは、常温および高温での貯蔵安定性に優れ、D4およびD5を少量含み、メタノールを含まないため環境に優しく、人体刺激性も低く、使用感および持続性にも優れるものであった。
【0097】
これに対し、比較例1~3のシリコーンエマルジョンは、D4およびD5を多量含み、メタノールを含むため親環境性が低く、人体刺激性が高く、常温および高温での貯蔵安定性も低かった。また、トリメチルエトキシシランを含む比較例4のシリコーンエマルジョンは、使用感および持続性が足りなかった。