(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】シャント抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 3/00 20060101AFI20230323BHJP
H01C 13/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H01C3/00 Z
H01C13/00 J
(21)【出願番号】P 2022099310
(22)【出願日】2022-06-21
(62)【分割の表示】P 2019078630の分割
【原出願日】2019-04-17
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】芦田 尚也
(72)【発明者】
【氏名】村上 建二
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/005824(WO,A1)
【文献】特開昭55-001128(JP,A)
【文献】特開2017-212297(JP,A)
【文献】特開2008-082957(JP,A)
【文献】実開平1-73790(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 3/00
H01C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の第1の抵抗体と、
前記第1の抵抗体を挟んで当該第1の抵抗体に溶接にて接合された矩形状の二つの母材と、
前記第1の抵抗体と異なる位置に、前記二つの母材に溶接にて接合された第2の抵抗体と、を有し、
前記第2の抵抗体は、平面視、下向きコ字状に形成され、該第2の抵抗体の上面と、前記二つの母材の上面とが面一となり、該第2の抵抗体の下側面が前記二つの母材の上側面に溶接により接合されることによって、当該第2の抵抗体は、前記第1の抵抗体に近接する位置で、且つ、前記第1の抵抗体と非接触で、前記二つの母材に接合されてなるシャント抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャント抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシャント抵抗器として、特許文献1に記載のようなシャント抵抗器が知られている。
図7に示すように、このシャント抵抗器100は、抵抗体101を挟んで抵抗体101を溶接101aすることにより抵抗体101と接合された二つの板状の母材102と、母材102のそれぞれに溶接103aにより接合された測定端子部103とを備えるものである。なお、符号102aは、図示しないボルトの軸部を通過させるための円形状のボルト孔である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなシャント抵抗器100に電流が流れると抵抗体101が発熱し、もって、その発熱温度に依存して抵抗体101の抵抗値が変化することとなる。そのため、発熱温度を上昇させないようにするため、抵抗体101の抵抗値を低くする必要がある。例えば、シャント抵抗器100に400Aの大電流が流れる際、抵抗体101の抵抗値は、100μΩぐらいが好ましいとされ、シャント抵抗器100に1000Aの大電流が流れる際、抵抗体101の抵抗値は、30μΩ~50μΩぐらいが好ましいとされている。
【0005】
そこで、抵抗体101の抵抗値を低くするため、抵抗体101の幅W10(
図7(b)参照)を狭くすることが考えられる。例えば、抵抗体101の抵抗値を100μΩとするには、抵抗体101の幅W10(
図7(b)参照)を8mm程度にし、抵抗体101の抵抗値を30μΩ~50μΩとするには、抵抗体101の幅W10(
図7(b)参照)を3mm程度にする必要がある。
【0006】
しかしながら、上記のように抵抗体101の幅W10(
図7(b)参照)を狭くすると、二つの母材102で抵抗体101を挟んだ状態で、抵抗体101を溶接101aして、抵抗体101と二つの母材102とを接合するのが非常に困難であるといった問題があった。それゆえ、抵抗値を低くすることは、非常に困難であるといった問題があった。
【0007】
一方、抵抗体101の抵抗値は、抵抗体101自体の体積によって変わることが知られているため、
図7に示すように、抵抗体101に凹形状からなる切欠部101bを設け、抵抗体101自体の体積を減少させることによって、抵抗体101の抵抗値を調整する手法が一般的に知られている。
【0008】
しかしながら、上記のような手法では、抵抗値を高めることはできても、抵抗値を低くすることはできず、これによっても、抵抗値を低くすることができないといった問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、簡単容易に抵抗値を低くすることができるシャント抵抗器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
請求項1の発明によれば、矩形状の第1の抵抗体(10)と、
前記第1の抵抗体(10)を挟んで当該第1の抵抗体(10)に溶接(Y1)にて接合された矩形状の二つの母材(11)と、
前記第1の抵抗体(10)と異なる位置に、前記二つの母材(11)に溶接(Y2D)にて接合された第2の抵抗体(12D)と、を有し、
前記第2の抵抗体(12D)は、平面視、下向きコ字状に形成され、該第2の抵抗体(12D)の上面(12Da)と、前記二つの母材(11)の上面(11a)とが面一となり、該第2の抵抗体(12D)の下側面(12Db)が前記二つの母材(11)の上側面(11c)に溶接(Y2D)により接合されることによって、当該第2の抵抗体(12D)は、前記第1の抵抗体(10)に近接する位置で、且つ、前記第1の抵抗体(10)と非接触で、前記二つの母材(11)に接合されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
請求項1に係る発明によれば、第2の抵抗体(12D)は、平面視、下向きコ字状に形成され、該第2の抵抗体(12D)の上面(12Da)と、二つの母材(11)の上面(11a)とが面一となり、該第2の抵抗体(12D)の下側面(12Db)が二つの母材(11)の上側面(11c)に溶接(Y2D)により接合されることによって、当該第2の抵抗体(12D)は、第1の抵抗体(10)に近接する位置で、且つ、第1の抵抗体(10)と非接触で、二つの母材(11)に接合されている。これにより、二つの母材(11)に接合されている抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12D)の接合面積が増加することとなるから、抵抗値を低くすることが可能となる。
【0014】
しかして、本発明によれば、抵抗値を低くすることが可能となり、もって、簡単容易に抵抗値を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態に係るシャント抵抗器の斜視図、(b)は同実施形態に係るシャント抵抗器の平面図である。
【
図2】他の実施形態に係るシャント抵抗器の平面図である。
【
図3】他の実施形態に係るシャント抵抗器の平面図である。
【
図4】他の実施形態に係るシャント抵抗器の底面図である。
【
図5】他の実施形態に係るシャント抵抗器の平面図である。
【
図6】(a)は実施例に係る母材の平面図、(b)は実施例に係る第1の抵抗体及び第2の抵抗体の平面図、(c)は実施例に係るシャント抵抗器の実験条件を示した平面図である。
【
図7】(a)は従来のシャント抵抗器の斜視図、(b)は従来のシャント抵抗器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るシャント抵抗器の一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0017】
本実施形態に係るシャント抵抗器は、電気自動車(EV車)、ハイブリット車(HV車)、プラグインハイブリット車(PHV車)等で使用される高電圧用途のバッテリー、又は、インバータからモータ回路へ大電流が流れる電流経路の電流値を計測する際に用いられるもので、
図1に示すように、シャント抵抗器1は、第1の抵抗体10と、第1の抵抗体10を挟んで溶接Y1により第1の抵抗体10と一体的に形成された二つの母材11と、第1の抵抗体10と異なる位置に、二つの母材11に溶接Y2にて接合された第2の抵抗体12と、二つの母材11の上面11aにそれぞれ溶接Y3により立設固定されている測定端子13と、で構成されている。
【0018】
第1の抵抗体10は、
図7に示す抵抗体101と同一のものであって、
図1(b)に示すように、例えば、厚み約3mm~5mmの厚板状で、上面10a、下面10b、上側面10c、下側面10d、左側面10e、右側面10fからなる短尺の矩形状に形成されており、
図7(b)に示す幅W10と同一の幅W10で形成されている。そしてさらに、この第1の抵抗体10は、例えば、Cu-Mn系合金、Cu-Ni系合金、Ni-Cr系合金、等で形成されている。
【0019】
かくして、このように形成される第1の抵抗体10は、
図1に示すように、図示左に位置する母材11が第1の抵抗体10の左側面10eに溶接Y1により接合され、図示右に位置する母材11が第1の抵抗体10の右側面10fに溶接Y1により接合されている。これにより、一対の母材11が、第1の抵抗体10を挟むように第1の抵抗体10と一体的に形成されることとなる。
【0020】
母材11は、
図7に示す母材102と同一のものであって、所謂バスパーと呼ばれるもので、銅等の金属からなり、
図1に示すように、例えば、厚み約3mm~5mmの厚板状で、上面11a、下面11b、上側面11c、下側面11d、一側面11e、他側面11fからなる長尺の矩形状に形成されている。そしてこの母材11の幅方向に沿う他側面11f側(第1の抵抗体10の接合部と反対側)には、図示しないボルトの軸部を通過させるための円形状のボルト孔11gが上下方向に貫通して形成されている。
【0021】
かくして、このように形成される母材11は、
図1に示すように、図示左に位置する母材11の一側面11eが、第1の抵抗体10の左側面10eに溶接Y1により接合され、図示右に位置する母材11の一側面11eが、第1の抵抗体10の右側面10fに溶接Y1により接合されることとなる。これにより、一対の母材11と、第1の抵抗体10とが溶接Y1により一体的に形成されることとなる。
【0022】
第2の抵抗体12は、
図1に示すように、例えば、厚み約3mm~5mmの厚板状で短尺の矩形状に形成されており、例えば、Cu-Mn系合金、Cu-Ni系合金、Ni-Cr系合金、等で形成されている。
【0023】
かくして、このように形成される第2の抵抗体12は、
図1(b)に示すように、第2の抵抗体12の上面12aと、第1の抵抗体10の上面10aとが面一となり、第2の抵抗体12の下側面12bと、第1の抵抗体10の上側面10cとが接触するように、第2の抵抗体12の下側面12bが一対の母材11の上側面11cに溶接Y2により接合されることとなる。これにより、一対の母材11と、第2の抵抗体12とが溶接Y2により一体的に形成されることとなる。
【0024】
測定端子13は、
図7に示す測定端子部103と同一のものであって、電流検出用のプリント基板を実装可能なもので、銅,錫メッキ等で形成されており、
図1に示すように、二つの母材11上にそれぞれ溶接Y3により立設固定されるものである。
【0025】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、第1の抵抗体10を挟んで溶接Y1により第1の抵抗体10と一体的に形成された二つの母材11に、第2の抵抗体12を、第1の抵抗体10と異なる位置に溶接Y2にて接合することによって、二つの母材11に接合されている抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12)の接合面積が増加することとなる。これにより、抵抗値を低くすることが可能となる。
【0026】
すなわち、高電圧用途のバッテリー、又は、インバータからモータ回路へ大電流が流れる電流経路の電流値を計測する際、二つの母材11に、電流が流れることとなるが、抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12)の接合面積が増加すると、それに伴い電流経路が増大することとなる。しかるに、電流経路が増大すると、従来に比べ、抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12)に流れる電流が流れやすくなり、もって、抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12)の発熱温度を従来よりも低くすることができる。これにより、抵抗値を低くすることが可能となる。
【0027】
しかして、本実施形態によれば、第1の抵抗体10の幅W10(
図1(b)参照)を狭くせずとも、すなわち、従来と同一の幅W10(
図1(b),
図7(b)参照)のままで、第1の抵抗体10と異なる位置に、第2の抵抗体12を二つの母材11に溶接Y2にて接合させるだけで、抵抗値を低くすることが可能となるため、簡単容易に抵抗値を低くすることができる。
【0028】
また、本実施形態によれば、抵抗値を調整するにあたって、抵抗値を高くしようとすれば、
図7に示すような手法を用い、第1の抵抗体10及び/又は第2の抵抗体12に凹形状からなる切欠部を設け、第1の抵抗体10及び/又は第2の抵抗体12自体の体積を減少させることによって、抵抗値を高くすれば良い。一方、抵抗値を低くしようとすれば、第2の抵抗体12よりも長尺にする等面積の大きい新たな第2の抵抗体を、二つの母材11に溶接Y2にて接合すれば良い。
【0029】
しかして、本実施形態によれば、簡単容易に抵抗値を調整することができる。
【0030】
またさらに、抵抗値を低くすれば、抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12)の発熱温度を従来よりも低くすることができるため、発熱ロスを低減させることができる。
【0031】
そしてさらに、測定端子13に電流検出用のプリント基板を実装した際、放熱フィンが必要となるが、抵抗値を低くすれば、抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12)の発熱温度を従来よりも低くすることができるため、放熱フィンを小型化、又は、不要にすることができる。
【0032】
ところで、本実施形態において示したシャント抵抗器1の形状はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態において、第1の抵抗体10と第2の抵抗体12を別々に設ける例を示したが、それに限らず、一体化させても良い。しかしながら、別々に設けた方が、抵抗値を調整するにあたって、抵抗値を低くする際、第2の抵抗体12だけ変更すれば良いため、好ましい。
【0033】
一方、第2の抵抗体12の形状はどのような形状でも良く、二つの母材11に接合する位置は、
図1に示すものに限らず、どのような位置でも良い。例えば、
図2に示すようなシャント抵抗器1Aのようにすることもできる。この点、
図2を参照して具体的に説明する。なお、
図1に示すシャント抵抗器1と同一の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略することとする。
【0034】
図2に示すシャント抵抗器1Aと、
図1に示すシャント抵抗器1との相違は、新たにもう一つ第2の抵抗体12を接合している点が相違するだけでそれ以外は同一である。すなわち、
図2に示すように、新たなもう一つの第2の抵抗体12は、第2の抵抗体12の上面12aと、第1の抵抗体10の上面10aとが面一となり、第2の抵抗体12の上側面12cと、第1の抵抗体10の下側面10dとが接触するように、第2の抵抗体12の上側面12cが一対の母材11の下側面11dに溶接Y2により接合されることによって、一対の母材11に接合されることとなる。これにより、一対の母材11と、一対の第2の抵抗体12とが溶接Y2により一体的に形成されることとなる。
【0035】
しかして、このようにしても、電流経路が増大することとなり、従来に比べ、抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12)に流れる電流が流れやすくなる。それゆえ、抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12)の発熱温度を従来よりも低くすることができ、もって、抵抗値を低くすることが可能となる。なお、抵抗値を調整するにあたって、抵抗値を低くする際、第2の抵抗体12自体を取り替えるのではなく、
図2に示すように、別の第2の抵抗体12を二つの母材11に溶接Y2にて新たに接合しても良い。
【0036】
また、
図3に示すようにシャント抵抗器1Bのようにすることもできる。この点、
図3を参照して具体的に説明する。なお、
図1に示すシャント抵抗器1と同一の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略することとする。
【0037】
図3に示すシャント抵抗器1Bと、
図1に示すシャント抵抗器1との相違は、第2の抵抗体の形状と、接合位置が異なるだけでそれ以外は同一である。すなわち、
図3に示すように、第2の抵抗体12Bは、平面視、略矩形状に形成され、左側面12Ba側に、平面視コ字状の第1の切欠部12Ba1が設けられ、右側面12Bb側に、平面視右向きコ字状の第2の切欠部12Bb1が設けられている。そしてこのように形成される第2の抵抗体12Bは、第1の抵抗体10と直交するように、第1の抵抗体10の上面10aに載置され、一対の母材11と接触している部分(第2の抵抗体12Bの左側面12Ba側、及び、右側面12Bb側)が溶接Y2Bにより接合されることとなる。これにより、一対の母材11と、第2の抵抗体12Bとが溶接Y2Bにより一体的に形成されることとなる。なお、この際、第2の抵抗体12Bと測定端子13が接触し、測定端子13が誤った電流値を測定しないように、第1の切欠部12Ba1、第2の切欠部12Bb1内に一対の測定端子13がそれぞれ位置するようにしている。
【0038】
しかして、このようにしても、電流経路が増大することとなり、従来に比べ、抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12B)に流れる電流が流れやすくなる。それゆえ、抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12B)の発熱温度を従来よりも低くすることができ、もって、抵抗値を低くすることが可能となる。
【0039】
また一方、
図4に示すようなシャント抵抗器1Cのようにすることもできる。この点、
図4を参照して具体的に説明する。なお、
図1に示すシャント抵抗器1と同一の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略することとする。
【0040】
図4に示すシャント抵抗器1Cと、
図1に示すシャント抵抗器1との相違は、第2の抵抗体の形状と、接合位置が異なるだけでそれ以外は同一である。すなわち、
図4に示すように、第2の抵抗体12Cは、平面視、略矩形状に形成されている。そしてこのように形成される第2の抵抗体12Cは、第1の抵抗体10と直交するように、第1の抵抗体10の下面10bに載置され、一対の母材11と接触している部分(第2の抵抗体12Cの左側面12Ca側、及び、右側面12Cb側)が溶接Y2Cにより接合されることとなる。これにより、一対の母材11と、第2の抵抗体12Cとが溶接Y2Cにより一体的に形成されることとなる。
【0041】
しかして、このようにしても、電流経路が増大することとなり、従来に比べ、抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12C)に流れる電流が流れやすくなる。それゆえ、抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12C)の発熱温度を従来よりも低くすることができ、もって、抵抗値を低くすることが可能となる。
【0042】
ところで、
図1に示すシャント抵抗器1、
図2に示すシャント抵抗器1A、
図3に示すシャント抵抗器1B、
図4に示すシャント抵抗器1Cの何れも、第1の抵抗体10と、第2の抵抗体12,12B,12Cが接触している例を示したが、
図5に示すシャント抵抗器1Dに示すように、接触してなくとも良い。この点、
図5を参照して具体的に説明する。なお、
図1に示すシャント抵抗器1と同一の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略することとする。
【0043】
図5に示すシャント抵抗器1Dと、
図1に示すシャント抵抗器1との相違は、第2の抵抗体の形状と、接合位置が異なるだけでそれ以外は同一である。すなわち、
図3に示すように、第2の抵抗体12Dは、平面視、下向きコ字状に形成され、第2の抵抗体12Dの上面12Daと、一対の母材11の上面11aとが面一となり、第2の抵抗体12Dの下側面12Dbが一対の母材11の上側面11cに溶接Y2Dにより接合されることとなる。これにより、一対の母材11と、第2の抵抗体12Dとが溶接Y2Dにより一体的に形成されることとなる。なお、この際、第1の抵抗体10と、第2の抵抗体12Dとは、近接する位置に位置しているが、非接触の状態となっている。
【0044】
しかして、このようにしても、電流経路が増大することとなり、従来に比べ、抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12D)に流れる電流が流れやすくなる。それゆえ、抵抗体(第1の抵抗体10、第2の抵抗体12D)の発熱温度を従来よりも低くすることができ、もって、抵抗値を低くすることが可能となる。
【0045】
なお、上記例示したシャント抵抗器1、1A、1B、1C、1Dは、低抵抗が要求されるヒューズ用のシャント抵抗器としても適用可能である。
【0046】
<実施例>
次に、実施例を用いて、本発明を更に詳しく説明する。
【0047】
図1に示すシャント抵抗器1と従来のシャント抵抗器をそれぞれ10個用いて、抵抗値の測定を行った。
【0048】
シャント抵抗器1のサイズとして、母材11は、
図6(a)に示すように、母材11の横幅38mm(母材11の他側面11fから一側面11eまでの距離)、母材11の縦幅18mm(母材11の上側面11cから下側面11dまでの距離)、母材11の上側面11cから母材11のボルト孔11gの中心点までの距離9mm、母材11の他側面11fから母材11のボルト孔11gの中心点までの距離12mm、母材11のボルト孔11gの直径8.0mmである、厚み3.0mmのものを使用した。
【0049】
また、第1の抵抗体10は、
図6(b)に示すように、横幅8.0mm、縦幅18mmである、厚み2.0mmのものを使用した。そして、第2の抵抗体12は、
図6(b)に示すように、横幅16mm、縦幅2.0mmである、厚み2.0mmのものを使用した。
【0050】
なお、従来のシャント抵抗器は、第2の抵抗体12がないだけで、それ以外は、母材11及び第1の抵抗体10と同一である。
【0051】
かくして、このようなサイズに形成されたシャント抵抗器1に対して、
図6(c)に示すように、電流が図示右側から左側に流れるように、母材11の他側面11f側(図示黒丸参照)に、電流を印加し、電圧検出ピッチが12mmとなるように、測定端子13を配置した。なお、従来のシャント抵抗器も同一の条件で実験を行った。
【0052】
このような条件の元、シャント抵抗器1、従来のシャント抵抗器をそれぞれ、サンコール株式会社製の抵抗測定治具に載置し、HIOKI社製RM3543 RESISTANCE HiTESTERの抵抗測定機を用いて、抵抗値の測定を行った。その結果が、表1に示すものである。
【0053】
【0054】
上記表1の結果に示すように、シャント抵抗器1の抵抗値は、何れも、従来のシャント抵抗器の抵抗値よりも低いことが分かる。そしてさらに、従来のシャント抵抗器の抵抗値の平均値を取ると、0.09949mΩであるのに対し、シャント抵抗器1の抵抗値の平均値は、0.08446mΩであることから、従来のシャント抵抗器に比べシャント抵抗器1は、約15%抵抗値が低くなっていることが分かる。
【0055】
してみると、本実施形態に係るシャント抵抗器を使用すれば、抵抗値を低くすることが可能となることが分かった。それゆえ、本実施形態によれば、簡単容易に抵抗値を低くすることができる
【符号の説明】
【0056】
1D シャント抵抗器
10 第1の抵抗体
11 母材
11a (母材の)上面
11c (母材の)上側面
12D 第2の抵抗体
12Da (第2の抵抗体の)上面
12Db (第2の抵抗体の)下側面
13 測定端子
Y2D 溶接