(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】レバー式コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/629 20060101AFI20230324BHJP
【FI】
H01R13/629
(21)【出願番号】P 2019190861
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 大亮
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-005088(JP,A)
【文献】特開2010-244799(JP,A)
【文献】特開2013-004419(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0221647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
第1軸を中心として回動し得るように前記ハウジングに取り付けた第1レバーと、
第2軸を中心として
前記第1レバーと同じ方向へ回動し得るように前記ハウジングに取り付けた第2レバーと、
前記第2レバーの回動に連動することによって倍力機能を発揮する倍力機能部とを備え、
前記第1レバーは、前記第1レバーの操作部から前記第1軸に向かって延びるガイド部を有し、
前記第2レバーは、前記第1レバーに対し前記ガイド部に沿って相対変位し得るように連結された連結部を有し、
前記第1レバーと前記第2レバーは、前記ハウジングと相手側ハウジングとの嵌合を開始する初期位置と、前記ハウジングと前記相手側ハウジングとの嵌合を完了する嵌合位置との間で連動して回動可能であり、
前記第2レバーが前記初期位置にある状態で前記第2軸と前記連結部を通る仮想線を設定したときに、前記第1軸は前記仮想線よりも前記嵌合位置側に位置するレバー式コネクタ。
【請求項2】
前記連結部が、前記第2レバーの長さ方向における前記第2軸とは反対側の先端部に配置されている請求項1に記載のレバー式コネクタ。
【請求項3】
前記第1レバーと前記第2レバーが前記初期位置にある状態では、前記連結部が、前記ガイド部の長さ方向両端部のうち前記操作部に近い側の操作側端部に位置している請求項1又は請求項2に記載のレバー式コネクタ。
【請求項4】
前記操作部が、前記第1レバーの長さ方向両端部のうち前記第1軸とは反対側の先端部に位置し、
前記ガイド部の長さ方向両端部のうち前記第1軸とは反対側の操作側端部が、前記操作部と隣り合うように位置している請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレバー式コネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングと前記相手側ハウジングの嵌合過程で生じる嵌合抵抗が最大のときに、前記連結部が、前記第1軸と前記第2軸とを結ぶ直線上に位置する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレバー式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レバー式コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コネクタハウジングに回動可能なレバーを取り付けたレバー嵌合式コネクタが開示されている。このレバー嵌合式コネクタと相手側コネクタを嵌合する際には、レバーのカム孔を相手側コネクタの従動ピンに挿入した状態で、レバーを回動操作する。レバーを操作してカム孔と従動ピンを摺接させると、テコ作用によって倍力効果が発揮され、レバー嵌合式コネクタと相手側コネクタが嵌合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レバーに付与する操作力を低減するためには、レバーの支点から操作部までの長さ寸法を大きく確保すればよい。しかし、レバーの支点から操作部までを長くすると、レバー嵌合式コネクタが大型化する。
【0005】
本開示のレバー式コネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、大型化することなく操作力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のレバー式コネクタは、
ハウジングと、
第1軸を中心として回動し得るように前記ハウジングに取り付けた第1レバーと、
第2軸を中心として回動し得るように前記ハウジングに取り付けた第2レバーと、
前記第2レバーの回動に連動することによって倍力機能を発揮する倍力機能部とを備え、
前記第1レバーは、前記第1レバーの操作部から前記第1軸に向かって延びるガイド部を有し、
前記第2レバーは、前記第1レバーに対し前記ガイド部に沿って相対変位し得るように連結された連結部を有し、
前記第1レバーと前記第2レバーは、前記ハウジングと相手側ハウジングとの嵌合を開始する初期位置と、前記ハウジングと前記相手側ハウジングとの嵌合を完了する嵌合位置との間で連動して回動可能であり、
前記第2レバーが前記初期位置にある状態で前記第2軸と前記連結部を通る仮想線を設定したときに、前記第1軸は前記仮想線よりも前記嵌合位置側に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、大型化することなく操作力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1のレバー式コネクタと相手側コネクタとの嵌合を開始した状態をあらわす斜視図である。
【
図2】
図2は、第1レバーと第2レバーが初期位置にある状態をあらわす側面図である。
【
図3】
図3は、第1レバーと第2レバーが初期位置と嵌合位置の間に位置する状態をあらわす側面図である。
【
図4】
図4は、第1レバーと第2レバーが嵌合位置にある状態をあらわす側面図である。
【
図5】
図5は、第1レバーと第2レバーが初期位置にあり、レバー式コネクタと相手側コネクタが離脱している状態をあらわす側断面図である。
【
図6】
図6は、第1レバーと第2レバーが嵌合位置にあり、レバー式コネクタと相手側コネクタが嵌合している状態をあらわす側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のレバー式コネクタは、
(1)ハウジングと、第1軸を中心として回動し得るように前記ハウジングに取り付けた第1レバーと、第2軸を中心として回動し得るように前記ハウジングに取り付けた第2レバーと、前記第2レバーの回動に連動することによって倍力機能を発揮する倍力機能部とを備え、前記第1レバーは、前記第1レバーの操作部から前記第1軸に向かって延びるガイド部を有し、前記第2レバーは、前記第1レバーに対し前記ガイド部に沿って相対変位し得るように連結された連結部を有し、前記第1レバーと前記第2レバーは、前記ハウジングと相手側ハウジングとの嵌合を開始する初期位置と、前記ハウジングと前記相手側ハウジングとの嵌合を完了する嵌合位置との間で連動して回動可能であり、前記第2レバーが前記初期位置にある状態で前記第2軸と前記連結部を通る仮想線を設定したときに、前記第1軸は前記仮想線よりも前記嵌合位置側に位置する。
【0010】
本開示の構成によれば、第1レバーと第2レバーを初期位置から嵌合位置側へ回動させる過程では、操作部に付与した操作力が、連結部と第2レバーを介して第2軸に伝達されることによって、倍力機能が発揮される。この間、連結部が、ガイド部に沿って操作部側から第1軸側へ相対変位するので、操作部は、第2軸から遠ざかるように変位する。したがって、第2レバーを回動させるために必要な操作力が小さくて済む。第1レバーと第2レバーを長くする必要がないので、大型化することなく操作力を低減することができる。
【0011】
(2)前記連結部が、前記第2レバーの長さ方向における前記第2軸とは反対側の先端部に配置されていることが好ましい。この構成によれば、第1レバーと第2レバーが連動して回動する過程で、第2レバーの先端部が第1レバーの側縁から突出することがない。
【0012】
(3)前記第1レバーと前記第2レバーが前記初期位置にある状態では、前記連結部が、前記ガイド部の長さ方向両端部のうち前記操作部に近い側の操作側端部に位置していることが好ましい。この構成によれば、初期位置にある両レバーを、嵌合位置とは反対側へ回動させようとすると、連結部がガイド部の操作側端部に突き当たる。これにより、初期位置の両レバーが嵌合位置とは反対側へ回動することを防止できる。
【0013】
(4)前記操作部が、前記第1レバーの長さ方向両端部のうち前記第1軸とは反対側の先端部に位置し、前記ガイド部の長さ方向両端部のうち前記第1軸とは反対側の操作側端部が、前記操作部と隣り合うように位置していることが好ましい。この構成によれば、両レバーが初期位置にあるときに、第2レバーの側縁から第1レバーの先端部が突出する寸法を、短くすることができる。
【0014】
(5)前記ハウジングと前記相手側ハウジングの嵌合過程で生じる嵌合抵抗が最大のときに、前記連結部が、前記第1軸と前記第2軸とを結ぶ直線上に位置することが好ましい。この構成によれば、第1軸を中心として第1レバーを回動させるための操作部に付与する操作力の向きが、第2軸を中心として第2レバーを回動させる向きと一致する。したがって、操作部に付与した操作力が、ロスなく第2レバーを回動させるための力として発揮される。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示のレバー式コネクタFを具体化した実施例1を、
図1~
図6を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1において、前後の方向については、
図2~6における左方を前方と定義する。上下の方向については、
図1~6にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。
【0016】
本実施例のレバー式コネクタFは、相手側コネクタMに対し上方から接近させるようにして嵌合される。相手側コネクタMは、相手側ハウジング40と、相手側ハウジング40の内部に収容した複数の雄端子金具43(
図6を参照)とを有する。
図5,6に示すように、相手側コネクタMの左右両外側面には、それぞれ、複数(本実施例では3つ)のカムフォロア42が前後方向に間隔を空けて形成されている。相手側ハウジング40の上面は、レバー式コネクタFと対向する嵌合面となっている。
【0017】
レバー式コネクタFは、1つのハウジング10と、複数の雌端子金具16(
図6を参照)と、1つの第1レバー18と、1つの第2レバー24と、左右一対のスライダ30とを有する。ハウジング10は、合成樹脂製のハウジング本体11と、合成樹脂製の電線カバー12とを組み付けた2部品構造である。ハウジング本体11内には複数の雌端子金具16が収容されている。ハウジング本体11の下面は、相手側コネクタMの嵌合面に対し上下方向に対向する嵌合面となっている。
【0018】
ハウジング本体11の上面、即ち相手側ハウジング40への嵌合方向とは反対側の外面からは、各雌端子金具16に接続した電線(図示省略)が上方へ導出されている。ハウジング本体11の上面には電線カバー12が取り付けられている。電線カバー12の内部では、ハウジング本体11から導出された複数本の電線が、後方へ屈曲するように転向させられている。転向した電線は、電線カバー12の後方へ外部へ引き出されている。
【0019】
図5,6に示すように、ハウジング本体11の内部には左右一対のガイド溝13が形成されている。ガイド溝13は、ハウジング本体11の左右両外側面に沿うように配され、両コネクタF,Mの嵌合方向と直交する前後方向に延びている。ガイド溝13の前後両端は、ハウジング本体11の外部へ開放されている。
【0020】
ハウジング本体11の左右両外側面には、軸線を左右方向、即ち両コネクタF,Mの嵌合方向と直交する方向に向けた一対の第1軸14が、同軸状に形成されている。前後方向において、第1軸14は、ハウジング10の中央よりも前方の位置に配置されている。上下方向において、第1軸14は、ハウジング本体11の中央高さよりも上方に配置されている。ハウジング本体11の左右両外側面には、一対の軸受部15(
図6を参照)が形成されている。前後方向において、軸受部15は、ハウジング10の後端部、即ち第1軸14よりも後方の位置に配置されている。上下方向において、軸受部15は、ハウジング本体11の下端部、即ち第1軸14よりも下方の位置に配置されている。軸受部15は、第1軸14に対して斜め下後方へ離隔した位置に配置されている。
【0021】
第1レバー18は、左右対称な一対の第1アーム部19と、両第1アーム部19の先端部同士を連結した形態の操作部20とを有する単一部品である。第1アーム部19の基端部には、第1アーム部19を左右方向に貫通した形態の軸受孔21が形成されている。第1レバー18は、軸受孔21を第1軸14に嵌合することにより、ハウジング10に対して相対的に回動し得るように取り付けられている。第1レバー18をハウジング10に取り付けた状態では、第1アーム部19が、ハウジング10の外側面に対し左右方向のクリアランスを空けて重なるように位置する。
【0022】
第1アーム部19は、直線状に延びた細長い板状をなす。左右両第1アーム部19には、それぞれ、第1アーム部19を左右に貫通した形態のガイド部22が形成されている。ガイド部22は、操作部20側から第1軸14側に向かって第1アーム部19と平行に直線状に延び溝状をなす。ガイド部22は、ガイド部22の長さ方向両端部のうち操作部20に近い側の操作側端部22Aと、第1軸14側に近い軸側端部22Bにおいて閉じている。
【0023】
第2レバー24は、左右対称な一対の第2アーム部25と、両第2アーム部25の先端部同士を連結した形態の繋ぎ部26とを有する単一部品である。左右両第2アーム部25の基端部には、一対の第2軸27が形成されている。一対の第2軸27は、軸線を左右方向に向けて基端部の内面から突出した形態であり、互いに同軸状に配置されている。第2レバー24は、第2軸27を軸受部15に嵌合することにより、ハウジング10に対して相対的に回動し得るように取り付けられている。第2レバー24をハウジング10に取り付けた状態では、第2アーム部25が、ハウジング10の外側面に対し左右方向のクリアランスを空けて重なるように位置するとともに、第1アーム部19の内側面に対して左右方向のクリアランスを空けて重なるように位置する。
【0024】
第2アーム部25は、第2軸27の軸線と平行に見た側面視において、細長く湾曲した形状である。一対の第2アーム部25の先端部には、一対の連結部28が形成されている。一対の連結部28は、軸線を左右方向、即ち第1軸14及び第2軸27と平行な方向を向けた円柱形をなす。一対の連結部28は、第2アーム部25の先端部の外側面から左右方向へ突出している。連結部28の外径寸法は、ガイド部22の幅寸法と同じ寸法か、ガイド部22の幅寸法よりも僅かに小さい寸法である。
【0025】
左右両第2アーム部25には、一対の駆動軸29が形成されている。第2レバー24の長さ方向において、駆動軸29は、第2レバー24の中央と第2軸27との間に配置されている。つまり、第2軸27から駆動軸29までの長さ寸法は、第2軸27から連結部28までの長さ寸法よりも短い。駆動軸29は、軸線を左右方向に向けて第2アーム部25の内面から突出した形態である。
【0026】
第1レバー18と第2レバー24は、連結部28をガイド部22に嵌入することによって、相対的に変位しつつ連動して回動し得るように連結されている。連結された第1レバー18と第2レバー24は、
図1,2,5に示す初期位置と
図4,6に示す嵌合位置との間で回動するようになっている。連動して回動する際には、第1レバー18と第1軸14を中心として回動し、第2レバー24は第2軸27を中心として回動する。
【0027】
両レバー18,24が初期位置にあるときに、第1レバー18は、操作部20が第1軸14及び第2軸27よりも後方に位置するように後傾した姿勢をとる。第2レバー24は、連結部28が第2軸27よりも後方に位置するように後傾している。連結部28は、ガイド部22の操作側端部22Aに位置している。初期位置にある両レバー18,24は、
図2~6に示す側面視において反時計周り方向へ回動させることにより、嵌合位置へ変位する。両レバー18,24が嵌合位置へ回動した状態では、第1レバー18は、操作部20が第1軸14よりも前方に位置するように前傾した姿勢をとる。第2レバー24は、連結部28が第1軸14及び第2軸27よりも前方に位置するように前傾した姿勢をとる。
【0028】
両レバー18,24が初期位置にある状態において、連結部28と第2軸27を結んだ線を仮想線Vと定義する。第1軸14及び第2軸27の軸線と平行に見た側面視において、仮想線Vによって区画される前側と後側の2つの領域のうち、前側の領域を嵌合位置側の領域と定義する。嵌合位置側の領域は、初期位置にある第2レバー24が嵌合位置に向かって回動するときに、連結部28が移動する領域である。両レバー18,24が初期位置にあるときに、第1軸14は仮想線Vよりも嵌合位置側の領域内に位置する。第1軸14は、第2レバー24の回動に伴って連結部28が描く軌跡円の内側に位置する。操作部20は、連結部28が描く軌跡円の外側に位置する。
【0029】
一対のスライダ30は、ハウジング本体11のガイド溝13内に前後方向への相対変位を可能に取り付けられている。スライダ30の後端部には、受動凹部31が形成されている。
図5,6に示すように、スライダ30には、倍力機能部として機能する複数(本実施例では3つ)のカム溝32が形成されている。カム溝32は、両コネクタF,Mの嵌合方向及びスライダ30の移動方向の両方向に対して斜め方向の溝部を有する。カム溝32の入口は、スライダ30の下端縁に開放されている。スライダ30は、受動凹部31を駆動軸29に嵌合させることにより、第2レバー24に連結されている。第2レバー24は、スライダ30に対して駆動軸29を中心として相対的に回動し得るようになっている。
【0030】
レバー式コネクタFと相手側コネクタMを嵌合する際には、
図5に示すように、両レバー18,24を初期位置に変位させた状態から、
図2に示すように、相手側ハウジング40をハウジング10と浅く嵌合させる。両ハウジング10,40を浅く嵌合させると、カムフォロア42がカム溝32の入口に進入する。この状態から、第1レバー18の操作部20に操作力を加えて両レバー18,24を嵌合位置側へ回動させる。操作部20に付与される操作力の向きは、第1レバー18の長さ方向、即ち、第1軸14と操作部20を結んだ方向に対して直角な方向である。
【0031】
両レバー18,24が回動する過程では、第1レバー18の操作部20に付与した操作力が、ガイド部22と連結部28を介すことにより、第2レバー24に対して回動力として伝達される。第1軸14は仮想線Vよりも嵌合位置側に配置されているので、両レバー18,24が嵌合方向へ回動する過程では、連結部28が、ガイド部22に沿って操作側端部22Aから軸側端部22Bに向かって相対変位する。連結部28が軸側端部22Bに向かって移動するのに伴い、操作部20は、連結部28が第2軸27を中心として描く軌跡円(図示省略)に対して、外周側へ遠ざかる方向へ相対的に変位する。これにより、倍力機能と連動する第2軸27から、操作力の付与対象である操作部20までの距離が長くなるので、カム溝32に倍力機能を発揮させるために必要な操作力が小さくなる。
【0032】
また、連結部28の位置は、第1レバー18から第2レバー24へ回動力を伝達する部位であるから、第1レバー18をテコとし、第1軸14をテコの支点としたときに、連結部28はテコの作用点である。操作部20はテコの力点であり、操作部20の位置は第1レバー18が回動しても変化しない。作用点である連結部28は、両レバー18,24が嵌合位置側へ回動するのに伴って、テコの支点である第1軸14に接近していく。したがって、操作部20に付与した操作力を第2レバー24に伝達するときの倍力機能は、両レバー18,24の嵌合位置側への回動が進むのに伴って、増大していく。
【0033】
また、第1レバー18と第2レバー24が初期位置から嵌合位置へ回動する過程では、第1レバー18と第2レバー24が、連結部28を中心として相対的に回動する。
図2に示すように、連結部28から第1軸14に向かう半直線と、連結部28から第2軸27に向かう仮想線Vのなす角度θは、嵌合位置へ向かうのに伴って変動する。この連結部28を頂点として両レバー18,24のなす角度θが小さくなるほど、操作部20に作用する操作力の向きと、第2レバー24が回動する向きとのなす角度が、小さくなる。第2レバー24が回動する方向は、第2軸27と連結部28とを結んだ仮想線Vに対して直角な方向である。
【0034】
第2レバー24に伝達された回動力は、駆動軸29と受動凹部31を介してスライダ30に伝達され、スライダ30は前方へスライドする。第2レバー24をテコとし、第2軸27をテコの支点としたときに、連結部28がテコの力点となり、駆動軸29がテコの作用点となる。第2軸27から駆動軸29までの長さは、第2軸27から連結部28までの長さよりも短いので、第2レバー24からスライダ30に伝達される駆動力は、テコの作用によって増幅される。
【0035】
スライダ30がスライドすると、カムフォロア42がカム溝32の内側縁部に摺接することによって、相手側ハウジング40がハウジング10側へ引き込まれ、両コネクタF,Mの嵌合が進む。この間、カムフォロア42とカム溝32の摺接によって、倍力機能が発揮されるので、第2レバー24からスライダ30に付与すべき駆動力は小さくて済む。両レバー18,24が嵌合位置に到達すると、両コネクタF,Mが正規嵌合状態となる。
【0036】
両レバー18,24が初期位置と嵌合位置との間に位置する状態では、第1軸14は、第2軸27と連結部28とを結んだ仮想線Vよりも嵌合位置側に位置する状態に保たれる。両レバー18,24が嵌合位置に到達すると、第1軸14と第2軸27と連結部28とが、ほぼ一直線状に並ぶように配置される。この形態は、操作部20に作用する操作力の向きと、第2レバー24の回動方向とが、ほぼ平行になることを意味する。したがって、操作部20に付与された操作力が、そのまま第2レバー24に対して回動させるための駆動力として伝達される。本実施例では、両レバー18,24が嵌合位置に到達するときに、ハウジング10と相手側ハウジング40の嵌合過程で生じる嵌合抵抗が最大となる。
【0037】
本実施例のレバー式コネクタFは、ハウジング10と、第1レバー18と、第2レバー24と、カム溝32とを備えている。第1レバー18は、第1軸14を中心として回動し得るようにハウジング10に取り付けられている。第2レバー24は、第2軸27を中心として回動し得るようにハウジング10に取り付けられている。カム溝32は、第2レバー24の回動に連動することによって倍力機能を発揮する倍力機能部である。
【0038】
第1レバー18は、第1レバー18の操作部20から第1軸14に向かって延びるガイド部22を有している。第2レバー24は、第1レバー18に対しガイド部22に沿って相対変位し得るように連結された連結部28を有している。連結部28をガイド部22に嵌合することにより、第1レバー18と第2レバー24は、ハウジング10と相手側ハウジング40との嵌合を開始する初期位置と、ハウジング10と相手側ハウジング40との嵌合を完了する嵌合位置との間で連動して回動する。第2レバー24が初期位置にある状態で第2軸27と連結部28を通る仮想線Vを設定したときに、第1軸14は仮想線Vよりも嵌合位置側に配置されている。
【0039】
本実施例のレバー式コネクタFによれば、第1レバー18と第2レバー24を初期位置から嵌合位置側へ回動させる過程では、操作部20に付与した操作力が、連結部28と第2レバー24を介して第2軸27に伝達されることによって、倍力機能が発揮される。この間、連結部28が、ガイド部22に沿って操作部20側から第1軸14側へ相対変位するので、操作部20は、第2軸27から遠ざかるように変位する。したがって、第2レバー24を回動させるために必要な操作力が小さくて済む。第1レバー18と第2レバー24を長くする必要がないので、大型化することなく操作力を低減することができる。
【0040】
連結部28は、第2レバー24の長さ方向における第2軸27とは反対側の先端部に配置されている。この構成によれば、第1レバー18と第2レバー24が連動して回動する過程で、第2レバー24の先端部が第1レバー18の側縁から突出することがない。
【0041】
第1レバー18と第2レバー24が初期位置にある状態では、連結部28が、ガイド部22の長さ方向両端部のうち操作部20に近い側の操作側端部22Aに位置している。この構成によれば、初期位置にある両レバー18,24を、嵌合位置とは反対側へ回動させようとすると、連結部28がガイド部22の操作側端部22Aに突き当たる。これにより、初期位置の両レバー18,24が嵌合位置とは反対側へ回動することを防止できる。
【0042】
操作部20は、第1レバー18の長さ方向両端部のうち第1軸14とは反対側の先端部に位置している。ガイド部22の長さ方向両端部のうち第1軸14とは反対側の操作側端部22Aが、操作部20と隣り合うように位置している。操作側端部22Aと操作部20が隣り合う方向は、第1レバー18の長さ方向、即ち第1軸14と操作部20とを結ぶ方向である。この構成によれば、両レバー18,24が初期位置にあるときに、第2レバー24の側縁から第1レバー18の先端部が突出する寸法を、短くすることができる。
【0043】
ハウジング10と相手側ハウジング40の嵌合過程で生じる嵌合抵抗が最大のときに、連結部28が、第1軸14と第2軸27とを結ぶ直線上に位置する。この構成によれば、第1軸14を中心として第1レバー18を回動させるための操作部20に付与する操作力の向きが、第2軸27を中心として第2レバー24を回動させる向きと一致する。したがって、操作部20に付与した操作力が、ロスなく第2レバー24を回動させるための力として発揮される。
【0044】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例では、連結部を第2レバーの先端部に配置したが、連結部は、第2レバーの先端部よりも第2軸側の位置に配置してもよい。
上記実施例では、両レバーが初期位置にあるときに、連結部がガイド部の操作側端部に位置するが、両レバーが初期位置にあるときに、連結部はガイド部の操作側端部よりも第1軸側に位置してもよい。
上記実施例では、操作部を第1レバーの先端部に配置したが、操作部は、第1レバーの先端部よりも第1軸に近い位置に配置してもよい。
上記実施例では、ガイド部の操作側端部を、操作部と隣り合うように配置したが、ガイド部の操作側端部は、操作部から離れた位置に配置してもよい。
上記実施例では、第2レバーの回動力がスライダに伝達され、スライダに形成したカム溝が倍力機能を発揮するが、第2レバーに倍力機能部としてのカム溝を形成してもよい。
上記実施例では、両レバーが初期位置と嵌合位置との間に位置する状態では、第1軸が、第2軸と連結部とを結んだ仮想線よりも嵌合位置側に位置するが、両レバーが初期位置から嵌合位置に至る間に、第1軸が上記仮想線よりも初期位置側に位置するようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…ハウジング
11…ハウジング本体
12…電線カバー
13…ガイド溝
14…第1軸
15…軸受部
16…雌端子金具
18…第1レバー
19…第1アーム部
20…操作部
21…軸受孔
22…ガイド部
22A:操作側端部
22B:軸側端部
24…第2レバー
25…第2アーム部
26…繋ぎ部
27…第2軸
28…連結部
29…駆動軸
30…スライダ
31…受動凹部
32…カム溝(カム機能部)
40…相手側ハウジング
42…カムフォロア
43…雄端子金具
F…レバー式コネクタ
M…相手側コネクタ
V…仮想線
θ…第1レバーと第2レバーのなす角度