IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社安川電機の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】植物栽培システム、植物栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20230324BHJP
   A01G 31/06 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
A01G31/00 601B
A01G31/00 601A
A01G31/00 613
A01G31/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022018211
(22)【出願日】2022-02-08
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 龍志
(72)【発明者】
【氏名】益田 栄治
(72)【発明者】
【氏名】三松 沙織
(72)【発明者】
【氏名】池 英昭
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0297803(US,A1)
【文献】特開2016-116451(JP,A)
【文献】特開2015-216872(JP,A)
【文献】特開平05-336856(JP,A)
【文献】特開2017-143779(JP,A)
【文献】特開2014-226098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
A01G 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養液を通水して植物を栽培する、上方から見た形状が前記養液の流れる方向に沿って長尺な略長方形状の栽培槽と、
前記養液を貯留する貯留槽と、
前記栽培槽に接続され、前記養液を所定の水位で越流させて前記栽培槽から前記貯留槽に排水する第1排水路と、
前記栽培槽の底部近傍に接続され、前記養液を前記栽培槽から排水する第2排水路と、
前記第2排水路を開閉する弁と、
前記貯留槽又は前記養液の水路に設けられ、前記栽培槽から排水された前記養液に殺菌処理を行う殺菌装置と、
前記殺菌処理が行われた前記養液を前記栽培槽に給水する給水路と、
を有し、
前記給水路は、
前記栽培槽に対し、前記養液の流れる方向における上流側の端部近傍に接続されており、
前記第1排水路は、
前記栽培槽に対し、前記養液の流れる方向における下流側の端部近傍に接続されており、
前記第2排水路は、
前記栽培槽に対し、前記養液の流れる方向において前記第1排水路と同じ接続位置又は当該接続位置よりも前記下流側の位置に接続されている、
植物栽培システム。
【請求項2】
前記第2排水路は、
前記貯留槽に接続され、前記養液を前記栽培槽から前記貯留槽に排水し、
前記殺菌装置は、
前記栽培槽から前記第1排水路及び前記第2排水路を介して排水された前記養液に殺菌処理を行う、
請求項1に記載の植物栽培システム。
【請求項3】
前記貯留槽に貯留された前記養液を前記給水路を介して前記栽培槽に供給するポンプと、
前記ポンプを制御する第1制御装置と、をさらに有し、
前記第1制御装置は、
前記弁の閉塞時に前記養液を前記栽培槽に供給するように前記ポンプを制御するとともに、前記弁の開放時にも前記養液を前記栽培槽に供給するように前記ポンプを制御する、
請求項1又は2に記載の植物栽培システム。
【請求項4】
前記弁の開放時は、前記弁の閉塞時よりも前記栽培槽への前記養液の供給量が増加するように構成されている、
請求項3に記載の植物栽培システム。
【請求項5】
前記第1制御装置は、
前記弁の開放時は、前記弁の閉塞時よりも前記養液の供給量を増加させるように、前記ポンプを制御する、
請求項4に記載の植物栽培システム。
【請求項6】
前記第2排水路は、
前記ポンプによる前記給水路を介した給水能力よりも大きな排水能力を有するように構成されている、
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の植物栽培システム。
【請求項7】
記給水路と前記第2排水路は、
前記栽培槽において対角に位置する一方側の角及び他方側の角の近傍にそれぞれ接続されている、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の植物栽培システム。
【請求項8】
植物を栽培する、上方から見た形状が養液の流れる方向に沿って長尺な略長方形状の栽培槽に前記養液を通水することと、
前記養液を前記栽培槽の前記養液の流れる方向における上流側の端部近傍に給水することと、
前記栽培槽の前記養液を前記栽培槽の前記養液の流れる方向における下流側の端部近傍において所定の水位で越流させて排水することと、
前記養液の流れる方向において前記養液を越流させて排水する位置と同じ位置又は当該位置よりも前記下流側の位置において前記栽培槽の底部近傍から前記養液を排水することと、
前記栽培槽から排水された前記養液に殺菌処理を行うことと、
前記殺菌処理が行われた前記養液を前記栽培槽に給水することと、
を有する、植物栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、植物栽培システム及び植物栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、給水管及び排水管により養液を順次循環させる養液槽の排水管構造が記載されている。この排水管構造では、排水管は、養液槽の底壁から上方に延出するように設けられて、その上端開口から養液をオーバーフローさせることにより排水し、かつ、底壁近傍に管の内外を貫通する小孔が形成され、その小孔からも排水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-145569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、小孔から十分な排水ができないため、養液槽の藻類の繁殖を抑制することが難しく、養液中の細菌の増殖を招く可能性があった。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、藻類の繁殖を抑制することで養液中の細菌の増殖を抑制することが可能な植物栽培システム及び植物栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、養液を通水して植物を栽培する栽培槽と、前記養液を貯留する貯留槽と、前記栽培槽に接続され、前記養液を所定の水位で越流させて前記栽培槽から前記貯留槽に排水する第1排水路と、前記栽培槽の底部近傍に接続され、前記養液を前記栽培槽から排水する第2排水路と、前記第2排水路を開閉する弁と、前記貯留槽又は前記養液の水路に設けられ、前記栽培槽から排水された前記養液に殺菌処理を行う殺菌装置と、前記殺菌処理が行われた前記養液を前記栽培槽に給水する給水路と、を有する、植物栽培システムが適用される。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、植物を栽培する栽培槽に養液を通水することと、前記栽培槽の前記養液を所定の水位で越流させて排水することと、前記栽培槽の底部近傍から前記養液を排水することと、前記栽培槽から排水された前記養液に殺菌処理を行うことと、前記殺菌処理が行われた前記養液を前記栽培槽に給水することと、を有する、植物栽培方法が適用される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の植物栽培システム等によれば、藻類の繁殖を抑制することで養液中の細菌の増殖を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る植物栽培システムの全体構成の一例を表す図である。
図2】植物栽培システムにおける植物の流れの一例を表す図である。
図3】栽培棚の構成の一例を表す斜視図である。
図4】栽培棚における植物の流れの方向の一例を表す図である。
図5】栽培棚の全体構成の一例を表す側面図である。
図6】移載装置の全体構成の一例を表す斜視図である。
図7】植物栽培システムの養液の給排水構成の一例を表す説明図である。
図8】栽培槽の構成の一例をレール、保持具及び植物と共に表す平面図である。
図9】栽培槽の構成の一例をレール及び保持具と共に表す平面図である。
図10】栽培槽の構成の一例を表す平面図である。
図11図10のXI-XI断面に相当する断面図である。
図12】保持具及びレールの構成の一例を表す、図8のXII-XII断面に相当する断面図である。
図13】制御装置により実行される処理手順の一例を表すフローチャートである。
図14】第2排水路を第1排水路よりも下流側に接続する変形例における栽培槽の構成の一例を表す平面図である。
図15】給水路と第2排水路を栽培槽の対角位置に接続する変形例における栽培槽の構成の一例を表す平面図である。
図16】第2排水路を各水槽部に接続する変形例における栽培槽の構成の一例を表す平面図である。
図17図16のXVII-XVII断面に相当する断面図である。
図18】第1排水路、第2排水路、給水路を各水槽部に接続する変形例における栽培槽の構成の一例を表す平面図である。
図19】栽培槽の底部に傾斜部を設ける変形例における栽培槽の下流側プールの構成の一例を表す断面図である。
図20】栽培槽に第2排水路に向かって窄む壁部を設ける変形例における栽培槽の下流側プールの構成の一例を表す平面図である。
図21】上流側プールにも第2排水路を設ける変形例における栽培槽の構成の一例を表す平面図である。
図22】上流側プールにも第2排水路を設ける変形例における植物栽培システムの養液の給排水構成の一例を表す説明図である。
図23】制御装置のハードウェア構成例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、植物栽培システムの各構成の説明の便宜上、各図中に示す上下左右前後等の方向を適宜使用する場合があるが、各構成の向きや位置を限定するものではない。
【0011】
<1.植物栽培システムの全体構成>
図1及び図2を参照しつつ、本実施形態に係る植物栽培システムの全体構成の一例について説明する。なお、図1及び図2では、各部の詳細な構造については図示を省略し、システム全体の構成を模式的に示している。
【0012】
図1及び図2に示すように、植物栽培システム1は、栽培対象である植物3を保持具5で保持し、当該保持具5を栽培棚7において所定の期間をかけて移動させることにより植物3を生育させ、収穫するシステムである。植物3は例えば葉物野菜である。なお、例えば観葉植物等、野菜以外の植物を栽培してもよい。
【0013】
植物栽培システム1は、多数の保持具5と、栽培棚7と、搬入装置9と、移載装置11と、収穫ロボット13と、搬出装置15とを有する。栽培棚7では、植物3を保持した保持具5が所定の期間をかけて移動されることにより、植物3が生育される。なお、植物栽培システム1が有する栽培棚7の数は1つに限るものではなく、複数でもよい。
【0014】
図2に示すように、搬入装置9は、例えば種子が播種されて発芽した状態の植物3を保持する保持具5を、植物栽培システム1に搬入する。搬入装置9は例えばコンベアである。搬入装置9により搬入された保持具5は、栽培棚7の後方に配置された移載装置11により栽培棚7に移載される。なお、搬入装置9として、例えば無人搬送車(AGV)を使用してもよいし、例えば作業者が台車等を用いて搬入してもよい。
【0015】
移載装置11は、栽培棚7に対して、前方と後方の両側にそれぞれ配置されている。各移載装置11は、栽培棚7の前後の両端部において、棚部から棚部へと保持具5を移載する。また、栽培棚7の後方に配置された移載装置11は、上述したように搬入装置9により搬送された保持具5を栽培棚7に移載する。栽培棚7の前方に配置された移載装置11は、栽培棚7において生育した植物3を保持する保持具5を、収穫ロボット13に移載する。
【0016】
図1に示すように、収穫ロボット13は、ハンド17を備えており、当該ハンド17により植物3を保持し、容器19に収容する。容器19は、例えば番重やコンテナ等である。
【0017】
搬出装置15は、植物3を収容した容器19を載置し、植物栽培システム1から搬出する。搬出装置15は、例えば予め設定されたコースを走行して容器19を搬送する無人搬送車(AGV)である。なお、搬出装置15として、例えばコンベアを使用してもよいし、例えば作業者が台車等を用いて搬出してもよい。
【0018】
<2.栽培棚の構成>
図2乃至図5を参照しつつ、栽培棚7の構成の一例について説明する。
【0019】
図2乃至図5に示すように、栽培棚7には、複数段(例えば8段)の棚部7aが上下方向に多段に積層されて配置されている。図5に示すように、各棚部7aには、養液を通水して植物3を栽培する栽培槽21(図2乃至図4では図示省略)がそれぞれ設置されている。栽培槽21の上部には、複数のレール23が前後方向に沿って略水平に延設されている。図3及び図4に概略的に示すように、複数のレール23は、各棚部7aにおいて左右方向に並設されており、各レール23は略平行に配置されている。
【0020】
レール23(支持具の一例)は、複数の保持具5を長手方向(この例では前後方向)に沿って移動可能に支持する。レール23は、保持具5が前後方向における一方側から供給されることで、他の支持された複数の保持具5が前後方向における他方側に向けて押し出されてスライド移動するように構成されている。
【0021】
栽培棚7における棚部7aの段数は特に限定されるものではないが、本実施形態では例えば8段である場合を一例として説明する。図3及び図4に示すように、説明の便宜上、栽培棚7の棚部7aの段について適宜、最下段の1段をA段、最上段の1段をB段、上から2段目~7段目をまとめてC段という。A段は1つの棚部7aを有し、B段は1つの棚部7aを有し、C段は6つの棚部7aを有する。図4に示す例では、A段の棚部7aには比較的多数(例えば8つ)のレール23が設置されている。B段の棚部7aには、A段よりも少ない数(例えば6つ)のレール23が設置されている。C段の棚部7aのそれぞれには、B段よりもさらに少ない数(例えば4つ)のレール23が設置されている。
【0022】
図5に示すように、栽培棚7の棚部7aの上方には、植物3に光を当てるための複数の光源25が設置されている。各光源25は、各棚部7aの上方にそれぞれ設けられた支持板27の下面に、左右方向に沿って延設されている。各光源25は、前後方向に沿って所定の間隔で配置されている。光源25の種類は特に限定されるものではないが、植物3の光合成を促進するため、例えばLEDや蛍光灯等が使用される。
【0023】
図2及び図4に、栽培棚7の各棚部7aにおける植物3(保持具5)の移動方向の一例を示す。なお、図4における記号SY1は、前側から後側への植物3の移動方向を示し、記号SY2は、反対に後側から前側への植物3の移動方向を示している。図2及び図4に示すように、A段では、各レール23において植物3が後側から前側へ向けて移動される。B段では、各レール23において植物3が前側から後側へ向けて移動される。C段では、各段とも、各レール23において植物3が後側から前側へ向けて移動される。
【0024】
栽培棚7の前側に位置する移載装置11は、A段からB段への植物3(保持具5を含む)の移載(移植)と、C段から収穫ロボット13への植物3の移載(収穫)を行う。移植時には、移載装置11は、植物3の上下方向の移動と併せて左右方向の振り分けも行う。また、栽培棚7の後側に位置する移載装置11は、搬入装置9からA段への植物3の移載と、B段からC段への植物3の移載(移植)を行う。移植時には、移載装置11は、植物3の上下方向の移動と併せて左右方向の振り分けも行う。
【0025】
以上の移動経路において、A段→B段→C段の順で移載されるに従って、左右方向におけるレール間隔が次第に広くなる。これにより、植物3全体の大きさが保持具5よりも小さい育苗段階ではレール間隔が最も狭いA段で密集して栽培し、その後にレール間隔が段階的に広くなるようにB段→C段の順で移動させることができる。これにより、各植物3が次第に大きく生育する段階に応じてレール間隔を広くできる。その結果、栽培棚7全体の設置面積を植物3の栽培に効率的に利用できる。
【0026】
なお、以上説明した栽培棚7の構成は一例であり、上述の内容に限定されるものではない。例えば、栽培棚7の棚部7aの数(栽培棚7が支持する栽培槽21の数)は8以外でもよいし、単数としてもよい。また、複数の棚部7aは、上下方向に限らず、水平方向に並べて配置されてもよい。
【0027】
<3.移載装置の構成>
図6を参照しつつ、移載装置11の構成の一例について説明する。なお、図6では一例として栽培棚7の前側に配置される移載装置11を示しているが、後側の移載装置11についても同様の構成である。図6において、X軸正の方向が右、X軸負の方向が左、Y軸正の方向が後、Y軸負の方向が前、Z軸正の方向が上、Z軸負の方向が下に対応する。
【0028】
図6に示すように、移載装置11は、基台29と、基台29上に設置された門型の支持枠31と、支持枠31に設けられたアクチュエータ33と、ハンド35とを有する。
【0029】
支持枠31は、基台29上にX軸方向に対向するようにZ軸方向に沿って設置された一対の支柱31aと、一対の支柱31aの上端にX軸方向に沿って架け渡された略水平な梁31bとを有する。
【0030】
アクチュエータ33は、X軸ユニット37、Z軸ユニット39、及びY軸ユニット41を有する。X軸ユニット37は、ビーム37aと、スライダ37bと、X軸モータ37cとを有する。ビーム37aは、一対の支柱31a間にX軸方向に略水平に架設される。スライダ37bは、ビーム37aにX軸方向に沿って移動自在に支持される。X軸モータ37cは、例えばビーム37aの左端に取り付けられ、スライダ37bをX軸方向に駆動する。
【0031】
Z軸ユニット39は、ビーム39aと、スライダ39bと、Z軸モータ39cとを有する。ビーム39aは、上端が梁31bにX軸方向に移動自在に支持されるとともに、スライダ37bに固定される。スライダ39bは、ビーム39aにZ軸方向に沿って移動自在に支持される。Z軸モータ39cは、例えばビーム39aの下端に取り付けられ、スライダ39bをZ軸方向に駆動する。
【0032】
Y軸ユニット41は、ビーム41aと、スライダ41bと、Y軸モータ41cとを有する。スライダ41bは、スライダ39bに固定される。ビーム41aは、スライダ41bによりY軸方向に移動自在に支持される。Y軸モータ41cは、例えばビーム41aの前端に取り付けられ、ビーム41aをY軸方向に駆動する。
【0033】
アクチュエータ33では、X軸モータ37cによりスライダ37bがX軸方向に駆動すると、ビーム39aがX軸方向に移動し、これに伴ってビーム41aがX軸方向に移動する。Z軸モータ39cによりスライダ39bがZ軸方向に駆動すると、これに伴ってビーム41aがZ軸方向に移動する。Y軸モータ41cによりスライダ41bとビーム41aとがY軸方向に相対的に駆動すると、これに伴ってビーム41aがY軸方向に移動する。このようにして、アクチュエータ33は、ビーム41aをX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に移動させる。
【0034】
ハンド35は、アクチュエータ33のビーム41aの後側の先端に取り付けられており、保持具5を把持する。アクチュエータ33は、ビーム41aを3軸方向に移動させることにより、ハンド35を前後方向(レール23の長手方向)、左右方向(レール23の並設方向)、及び、上下方向(棚部7aの積み重ね方向。高さ方向)の3方向に沿って移動させる。
【0035】
収穫時には、移載装置11は、生育した植物3を保持した保持具5を、C段のレール23から抜き出して収穫ロボット13に受け渡す。この際、移載装置11は、ハンド35でレール23の端部に位置する保持具5を両側から挟んで把持し、レール23から抜き出す。移植時には、移載装置11は、ハンド35で移動元のレール23の端部に位置する保持具5を両側から挟んで把持し、レール23から抜き出す。そして、ハンド35で把持した保持具5を移動先のレール23の端部に移動させ、レール23に挿入する。この際、ハンド35は、保持具5を把持したままY軸方向(前後方向)に1ピッチ分(保持具5の前後方向の長さ分)だけ押し込む。これにより、挿入した保持具5とレール23上に支持されている複数の保持具5を1ピッチ分スライドさせることができる。このようにして、移載装置11は、保持具5の挿入先のレール23上に支持されている複数の保持具5の列全体を搬送方向に移動させる。挿入した後に、ハンド35が開いて保持具5の把持を解除する。なお、保持具5の移動先のレール23では、一方側の端部から保持具5が挿入される前に、他方側の端部から保持具5が抜き出されており、他方側の端部に1ピッチ分の隙間が形成されている。
【0036】
<4.植物栽培システムの養液の給排水構成>
図7を参照しつつ、植物栽培システム1の養液の給排水構成の一例について説明する。
【0037】
図7に示すように、植物栽培システム1は、栽培槽21と、貯留槽43と、第1排水路45と、第2排水路47と、排水弁49と、循環ポンプ51と、殺菌装置53と、給水路55と、給水弁57と、制御装置59とを有する。
【0038】
栽培槽21は、前述のA段、B段、C段を構成する8つの棚部7aにそれぞれ設置されている。各栽培槽21には養液61が通水されつつ貯留され、レール23により移動可能に支持された保持具5により保持された植物3が栽培される。
【0039】
貯留槽43は、栽培槽21から第1排水路45及び第2排水路47を介して排水された養液を貯留する。貯留槽43は、一時的に養液を貯留することが可能な槽であり、複数の槽が接続されて構成されてもよい。
【0040】
第1排水路45は、一方側の端部が分岐して各栽培槽21にそれぞれ接続され、他方側の端部が合流して貯留槽43に接続されている。第1排水路45と栽培槽21との接続箇所は、養液61を越流させることで栽培槽21内の水位を所定の高さに維持するように構成されている(後述の図11参照)。栽培槽21内の養液61は、第1排水路45を介して貯留槽43に排水される。なお、第1排水路45の貯留槽43側を合流させずに、各栽培槽21と貯留槽43とを別々の第1排水路45で接続してもよい。
【0041】
第2排水路47は、一方側の端部が分岐して各栽培槽21の底部近傍にそれぞれ接続され、他方側の端部が合流して貯留槽43に接続されている。栽培槽21内の養液61は、排水弁49の閉塞時には第2排水路47からは排水されず、排水弁49の開放時には第2排水路47を介して貯留槽43に排水される。第2排水路47は、循環ポンプ51による給水路55を介した給水能力よりも大きな排水能力を有するように構成されてもよい(例えば断面積、長さ、勾配等)。なお、第2排水路47の貯留槽43側を合流させずに、各栽培槽21と貯留槽43とを別々の第2排水路47で接続してもよい。また、第2排水路47の貯留槽43側は,第1排水路45を介して(第1排水路45と合流させて)貯留槽43に接続するように構成してもよい。第2排水路47と第1排水路45を合流させることにより、配管の総延長を短くすることができる。
【0042】
排水弁49は、分岐された複数の第2排水路47の各々に対して設けられ、第2排水路47をそれぞれ開閉する。なお、排水弁49の開度により排水量が調整されてもよい。排水弁49の開閉(開度を含む)は、制御装置59によって制御される。
【0043】
循環ポンプ51(ポンプの一例)は、貯留槽43に貯留された養液61を給水路55を介して栽培槽21に供給する。循環ポンプ51の駆動は、制御装置59によって制御される。例えばインバータ等を使用して循環ポンプ51の回転数(養液61の供給量)を可変に制御してもよい。また、例えば、栽培槽21毎に複数の循環ポンプ51が設けられてもよい。その場合、それぞれの循環ポンプ51の回転数を可変にすることにより、各々の栽培槽21に供給される養液61の供給量を調整することができる。
【0044】
殺菌装置53は、給水路55(水路の一例)に設けられており、栽培槽21から第1排水路45及び第2排水路47を介して排水された養液61に殺菌処理を行う。殺菌装置53は、例えばオゾン、紫外線、触媒、電解水、加熱、薬剤(例えば次亜塩素酸等)等のいずれかを単一的に作用させることで殺菌処理を行ってもよいし、あるいはこれらを複合的に作用させることで殺菌処理を行ってもよい。また殺菌装置53は、膜(フィルタ)等によって細菌類の除菌・分離を行ってもよい。この場合、細菌類を死滅・不活化させる作用は有しないが、養液61から除菌・分離する作用を有する。なお、殺菌装置53が設置される箇所は、給水路55に限るものではなく、例えば貯留槽43に設置されて貯留された養液61に対して殺菌処理を行ってもよい。また、貯留槽43に殺菌処理用の循環水路を接続し、殺菌装置53を当該循環水路に設置してもよいし、殺菌装置53を第1排水路45又は第2排水路47の中途部に設置することもできる。殺菌装置53の動作(例えば殺菌処理の開始又は停止等)は、制御装置59によって制御される。なお、殺菌装置53は作業者によって操作されてもよい。
【0045】
給水路55は、一方側の端部が分岐して各栽培槽21にそれぞれ接続され、他方側の端部が合流して、殺菌装置53及び循環ポンプ51を介して貯留槽43に接続されている。殺菌装置53により殺菌処理が行われた養液61は、給水路55を介して各栽培槽21に給水される。なお、養液61は、給水弁57が閉塞された栽培槽21に対しては供給されず、給水弁57が開放された栽培槽21に対して供給される。
【0046】
給水弁57は、分岐された複数の給水路55の各々に対して設けられ、給水路55をそれぞれ開閉する。なお、給水弁57の開度により給水量が調整されてもよい。給水弁57の開閉(開度を含む)は、制御装置59によって制御される。
【0047】
制御装置59(第1制御装置、第2制御装置の一例)は、排水弁49、循環ポンプ51、殺菌装置53、給水弁57等を制御する。例えば、次のような制御を行う。制御装置59は、通常時は給水弁57を開放するとともに排水弁49を閉塞し、殺菌装置53をオンとして、循環ポンプ51を駆動させる。これにより、栽培槽21に供給された養液61は栽培槽21内を通水し、第1排水路45を介して貯留槽43に排水され、殺菌処理をされつつ再び栽培槽21に供給され、循環される。
【0048】
植物栽培システム1では、衛生上の観点から、養液61中の細菌の増殖を抑制する必要があるため、上記のように養液61を殺菌しながら循環させる。しかしながら、栽培槽21から第1排水路45を介して排水される養液61は主として上澄み部分となるため、栽培槽21の底部近傍では養液61が滞留し易い。このため、藻類が発生する可能性がある。特に、栽培棚7には植物3を生育させるために光源25が配置されるため、栽培槽21の光が当たる部分では藻類が繁殖し易い。養液61中に藻類が繁殖した場合、藻類は殺菌処理で使用される紫外線やオゾン等に対する耐性が細菌類に比べて高いため、殺菌処理では繁殖した藻類を十分に除去できない可能性がある。さらに、藻類が細菌類の住処になると共に、藻類が殺菌作用の阻害要因(例えば、オゾンの消費量の低下や、紫外線透過率の低下等)となることで、殺菌処理の効果が低減し得る。このため、養液61中の細菌の増殖を十分に抑制できない可能性がある。
【0049】
そこで制御装置59は、予め設定された所定のタイミングで排水弁49を開放し、第2排水路47を介して養液61の排水を行う。これにより、栽培槽21の底部近傍の養液61を排水することが可能となり、養液61の淀みを解消できる。その結果、藻類の繁殖を抑制できると共に、細菌類の増殖を抑制することができる。
【0050】
また制御装置59は、排水弁49の開放時にも養液61を栽培槽21に供給するように循環ポンプ51を制御する。すなわち、循環ポンプ51は第2排水路47からの排水時にも停止せずに駆動を維持する。これにより、第2排水路47からの排水時にも栽培槽21への養液61の供給が継続され、栽培槽21の底部近傍の養液61を押し流すことが可能となり、養液61の淀みを効果的に解消できる。
【0051】
また制御装置59は、排水弁49の開放時に、排水弁49の閉塞時(通常時)よりも養液61の供給量を増加させるように、循環ポンプ51を制御(循環ポンプ51の回転数を増大)してもよい。この場合、栽培槽21内を流れる養液61の流速を通常よりも増加させることができるので、養液61の淀みを解消する効果をさらに高めることができる。
【0052】
また制御装置59は、複数の栽培槽21のそれぞれに対応して設置された排水弁49を、栽培槽21ごとに異なるタイミングで開くように制御する。これにより、栽培槽21ごとに異なるタイミングで第2排水路47から排水することができるので、一度に複数の栽培槽21から排水する場合に比べて、貯留槽43や循環ポンプ51の容量及び殺菌装置53の出力等を低減できる。その結果、植物栽培システムの小型化、低コスト化を図ることができる。
【0053】
また制御装置59は、上記予め設定された所定のタイミングとして、植物栽培システム1の付帯設備が動作するタイミングで、排水弁49を開くように制御してもよい。「付帯設備」は、例えば移載装置11や保持具5等である。具体的には、制御装置59は、移載装置11の動作により保持具5(植物3)が移動するタイミングで、排水弁49を開くように制御してもよい。「保持具5が移動するタイミング」は、例えば移植時や収穫時等に、移載装置11が保持具5をレール23の端部から取り出したり、移載装置11が保持具5をレール23の端部に挿入するタイミングである。保持具5(植物3)が移動すると養液61に流れが生じ、栽培槽21内の夾雑物や沈殿物が押し流されるため、上記タイミングで第2排水路47からの排水を行うことにより、夾雑物や沈殿物を効率良く排出することが可能となる。
【0054】
また制御装置59は、植物栽培システム1の付帯設備の動作の有無に応じて、排水弁49を開くタイミングの間隔を変更してもよい。例えば、付帯設備の動作がない場合には一定の時間間隔(例えば15分おき、30分おき等)で第2排水路47からの排水を行い、付帯設備の動作がある場合には、上述のようにその動作タイミングに合わせて排水を行ってもよい。このようにすることで、養液61の水質を良好に維持することができ、藻類の繁殖や細菌類の増殖の抑制効果を高めることができる。
【0055】
また、例えば栽培槽21、第1排水路45、又は貯留槽43等に養液61の水質を計測する水質計を設置しておき、制御装置59は、上記予め設定された所定のタイミングとして、上記水質の計測値に基づくタイミングで排水弁49を開くように制御してもよい。例えば濁度、紫外線透過率、電気伝導率、PH(水素イオン濃度)、BOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)、DO(溶存酸素)、SS(浮遊物質・懸濁物質)等を計測し、それらの計測値が所定のしきい値を上回った場合(または下回った場合)に排水弁49を開放してもよい。
【0056】
<5.栽培槽の構成>
図8図11を参照しつつ、栽培槽21の構成の一例について説明する。図8は栽培槽21の構成の一例をレール23、保持具5及び植物3と共に表す平面図、図9は栽培槽21の構成の一例をレール23及び保持具5と共に表す平面図、図10は栽培槽21の構成の一例を表す平面図である。また、図11は、図10のXI-XI断面に相当する断面図である。なお、図8図10では一例として4本のレール23(水槽部)を備えたC段の栽培槽21の構成を図示しているが、A段及びB段の栽培槽21もレール23(水槽部)の本数が異なる以外は同様の構成である。
【0057】
図10に示すように、栽培槽21は、上流側プール65と、下流側プール67と、複数の水槽部69とを有する。上流側プール65は、上方から見た形状が例えば略長方形状に形成された、上部が開放された水槽である。上流側プール65の底部65aには、底部65aを貫通し、当該底部65aから上方に向けて所定の長さだけ延出する円筒状のパイプ71が設けられている。パイプ71は、例えば上流側プール65の左右方向における略中心位置で、後側の端部近傍に設けられている。パイプ71の下部には給水路55の一方側の端部が接続されており、パイプ71から養液61が供給される。上記構成により、給水路55は栽培槽21の後方側の端部近傍(一方側の端部近傍の一例)に接続される。
【0058】
なお、給水路55の栽培槽21への接続形態は、上記に限定されるものではない。例えば、給水路55は上流側プール65の底部65aに形成された開口に接続されてもよいし、上流側プール65の壁部に接続されてもよい。また、上流側プール65の上部に給水路55の配管を敷設し、上部から養液61を供給してもよい。
【0059】
下流側プール67は、上方から見た形状が例えば略長方形状に形成された、上部が開放された水槽である。図11に示すように、下流側プール67の底部67aには、底部67aを貫通し、当該底部67aから上方に向けて所定の長さだけ延出する円筒状のパイプ63が設けられている。パイプ63は、例えば下流側プール67の左右方向における略中心位置よりも右寄りの位置で前側の端部近傍に設けられている。パイプ63の下部には第1排水路45の一方側の端部が接続されており、栽培槽21内の養液61は、パイプ63の上端開口63aを越流することで、所定の水位が維持されつつ第1排水路45に流出し、栽培槽21から貯留槽43に排水される。上記構成により、第1排水路45は栽培槽21の前方側の端部近傍(他方側の端部近傍の一例)に接続される。
【0060】
なお、第1排水路45の下流側プール67への接続形態(越流部の構造)は、上記に限定されるものではない。例えば、下流側プール67の壁部67cの一部を切り欠く等により堰部を形成し、当該堰部を越流した養液61を第1排水路45に流入させる構造としてもよい。
【0061】
また、下流側プール67の底部67aには開口67bが形成されている。開口67bは、例えば下流側プール67の左右方向における略中心位置よりも左寄りの位置で前側の端部近傍に、パイプ63と左右方向に所定の間隔を空けて並列するように、設けられている。開口67bの下部には第2排水路47の一方側の端部が接続されており、栽培槽21内の養液61は、排水弁49が開放された場合には、第2排水路47を介して栽培槽21から貯留槽43に排水される。上記構成により、第2排水路47は、栽培槽21の中央部よりも前方側(他方側の一例)の位置に接続される。なお、第2排水路47が栽培槽21に接続される箇所は、底部67aに限るものではなく、例えば下流側プール67の壁部67cの下端等、底部近傍であればよい。
【0062】
複数の水槽部69は、左右方向に並列に配置されており、上流側プール65と下流側プール67とを接続する。各水槽部69は、植物3の移動方向(この例では前後方向)に沿って延び、各々が区画されている。各水槽部69は、上方から見た形状が例えば長尺な長方形状に形成された、上部が開放された水槽であり、両端が上流側プール65と下流側プール67とに連通している。水槽部69内には、養液61が上流側プール65から下流側プール67に向けて矢印73方向に通水される。つまり、栽培槽21において後側は養液61の流れ方向の上流側、前側は養液61の流れ方向の下流側となる。水槽部69は、レール23と同数設置される。すなわち、A段の栽培槽21には例えば8つの水槽部69が設けられ、B段の栽培槽21には例えば6つの水槽部69が設けられ、C段の栽培槽21には例えば4つの水槽部69が設けられている。
【0063】
図9に示すように、各水槽部69の上部にはレール23が設置され、複数の保持具5が前後方向に沿って移動可能に支持されている。図8及び図9に示すように、保持具5は植物3を1株ずつ保持する。なお、植物栽培システム1では、植物3の生育状況に応じて保持具5の間に1又は複数のスペーサが挿入されることで、保持具5の前後方向の間隔が調整される。図8及び図9に示す例では、スペーサとして例えば保持具5と共通の部品、すなわち植物3を保持していない空の状態の保持具5が、植物3を保持する保持具5の間に1つずつ挿入されている。上記構成により、第2排水路47は、栽培槽21においてレール23が敷設される領域(植物3が保持される領域の一例)よりも前方側(他方側の一例)の位置に接続される。
【0064】
<6.保持具、レールの構成>
図12を参照しつつ、保持具5及びレール23の構成の一例について説明する。なお、図12図8のXII-XII断面に相当する断面図である。
【0065】
図12に示すように、保持具5は植物3を1株ごとに保持する。つまり、保持具5と植物3の株は1対1の関係である。なお、ここでいう「1株」とは、単一の種子から生育される1つの個体をいう。例えば図12に示す植物3のように、複数(単一でもよい)の葉部3bが1本の茎部3aによって支持されることで1つの個体としてまとまっているものは1株である。また、例えば茎部3aが分岐等により複数ある場合でも、その根部3cがつながることで1つの個体としてまとまっているものは1株である。
【0066】
保持具5は、左右方向、前後方向の各方向においてそれぞれ対称な形状を有する。したがって、保持具5は前後方向(つまり移動方向)において正逆両方向で使用できる方向互換性を有する。保持具5は、摺動性の高い材料(例えば樹脂。金属等でもよい)で一体成形されており、保持具5を支持するレール23に対してスライド可能に構成されている。
【0067】
保持具5は、本体部75、保持筒部77、穴部79、及びガイド板部81を有する。本体部75のうち左右方向両側の縁部は、移載装置11のハンド35により把持される。保持筒部77は、本体部75の中心位置に形成されており、上下方向に貫通した穴部79を有する。ガイド板部81は、本体部75の上面から上方に突出した一対の平板形状部であり、穴部79の上端開口部を挟んだ左右方向の2箇所に並設されている。なお、保持具5は一体成形に限らず、複数の部品で構成されてもよい。
【0068】
図12に示すように、レール23は水槽部69の上部に設けられている。レール23と水槽部69とは、例えば摺動性の高い材料(例えば樹脂。金属等でもよい)で一体成形されている。なお、レール23と水槽部69は別々の部品で構成されてもよい。レール23は、前後方向に延設された左右一対の上レール板23aと、上レール板23aの下方位置で前後方向に延設された左右一対の下レール板23bとを有する。上レール板23aと下レール板23bとの間の空間85に、保持具5の本体部75が収容される。一対の上レール板23aの間には、保持具5のガイド板部81が収容される。
【0069】
水槽部69は、前後方向に延設された一対の側壁部69aと、一対の側壁部69aの下端に亘るように前後方向に延設された底壁部69bとを有する。水槽部69は、全体が上方を開放した断面略U字状の長尺の水槽であり、内部に養液61が貯留される。
【0070】
保持具5の穴部79には培地87が充填され、培地87に播種された種から生育した植物3の茎部3aを保持する。植物3は、穴部79の下端開口部を介して根部3cを水槽部69内の養液61に浸しつつ、穴部79の上端開口部を介して葉部3bをレール23の上方に膨出させて成長する。培地87としては、例えば寒天等のゲル状培地を使用してもよいし、スポンジ、ウレタン、ロックウール等の固形培地を使用してもよい。
【0071】
<7.制御装置の処理手順>
図13を参照しつつ、制御装置59により実行される処理手順(植物栽培方法)の一例について説明する。
【0072】
ステップS10では、制御装置59は、排水弁49を閉塞すると共に、給水弁57を開放する。この際、植物栽培システム1の全部の栽培槽21に対応する排水弁49及び給水弁57を開閉させてもよいし、養液61の通水対象となる栽培槽21が一部である場合には、当該一部の栽培槽21に対応する排水弁49及び給水弁57のみを開閉させてもよい。
【0073】
ステップS20では、制御装置59は、循環ポンプ51を駆動し、貯留槽43に貯留された養液61を給水路55を介して栽培槽21に供給する。これにより、養液61は栽培槽21に貯留され、所定の水位に到達すると第1排水路45を介して貯留槽43に排水され、循環される。
【0074】
ステップS30では、制御装置59は、殺菌装置53による殺菌処理を開始する。なお、殺菌装置53が作業者によって操作される場合には、本ステップS30は不要である。
【0075】
ステップS40では、制御装置59は、複数の栽培槽21のそれぞれに対して設けられた排水弁49のいずれかを開放する所定のタイミングとなったか否かを判定する。前述のように、所定のタイミングは、例えば植物栽培システム1の付帯設備が動作するタイミングでもよいし、一定の時間間隔(例えば15分おき、30分おき等)等でもよい。なお、所定のタイミングは、栽培槽21ごとに異なるタイミングとなるように設定されている。所定のタイミングとなるまで本ステップを繰り返し(ステップS40:NO)、所定のタイミングとなった場合には(ステップS40:YES)、次のステップS50に移る。
【0076】
ステップS50では、制御装置59は、所定のタイミングとなった排水弁49を所定時間だけ開放する。これにより、栽培槽21の養液61は第2排水路47を介して貯留槽43に排水される。所定時間は、例えば栽培槽21の容積と第2排水路47の排水能力に基づいて貯留された養液61の全量が排水される時間等として、予め設定されている。
【0077】
ステップS60では、制御装置59は、植物栽培システム1を停止するか否かを判定する。例えば、システムのメンテナンスを行う場合等、作業者により停止操作がなされた場合には(ステップS60:YES)、本フローを終了する。一方、停止操作がなされていない場合には(ステップS60:NO)、上記ステップS40に戻り、ステップS40~ステップS60を繰り返す。
【0078】
以上説明した処理手順は一例であって、上記手順の少なくとも一部を削除又は変更してもよいし、上記以外の手順を追加してもよい。また、上記手順の少なくとも一部の順番を変更してもよいし、複数の手順が単一の手順にまとめられてもよい。
【0079】
<8.実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の植物栽培システム1は、養液61を通水して植物3を栽培する栽培槽21と、養液61を貯留する貯留槽43と、栽培槽21に接続され、養液61を所定の水位で越流させて栽培槽21から貯留槽43に排水する第1排水路45と、栽培槽21の底部近傍に接続され、養液61を栽培槽21から排水する第2排水路47と、第2排水路47を開閉する排水弁49と、養液61の給水路55に設けられ、栽培槽21から排水された養液61に殺菌処理を行う殺菌装置53と、殺菌処理が行われた養液61を栽培槽21に給水する給水路55と、を有する。
【0080】
植物栽培システム1では、衛生上の観点から、養液61中の細菌の増殖を抑制する必要があるため、養液61を殺菌しながら循環させる。しかしながら、栽培槽21から第1排水路45を介して排水される養液61は主として上澄み部分となるため、栽培槽21の底部近傍では養液61が滞留し易い。滞留により養液61中に藻類が繁殖した場合、藻類は一般に殺菌処理で使用される紫外線やオゾンに対する耐性が細菌類に比べて高いため、殺菌処理では繁殖した藻類を十分に除去できない可能性がある。さらに、藻類が細菌類の住処になると共に、藻類が殺菌作用の阻害要因(例えば、オゾンの消費量の低下や、紫外線透過率の低下等)となることで、殺菌処理の効果が低減し得る。このため、養液中の細菌の増殖を十分に抑制できない可能性がある。
【0081】
本実施形態では、栽培槽21の底部に、排水弁49により開閉される第2排水路47が接続される。排水弁49を開放することにより、栽培槽21の底部近傍の養液61を排水することができる。このようにすることで、栽培槽21における養液61の淀みを解消でき、殺菌処理に対する耐性が比較的高い藻類の繁殖を抑制できる。藻類の繁殖を抑制できる結果、殺菌装置53による殺菌処理の効果が高まり、細菌類の増殖を抑制することができる。
【0082】
また本実施形態において、第2排水路47は、貯留槽43に接続され、養液61を栽培槽21から貯留槽43に排水してもよく、その場合には、殺菌装置53は、栽培槽21から第1排水路45及び第2排水路47を介して排水された養液61に殺菌処理を行ってもよい。
【0083】
この場合、第2排水路47から排水する養液61を系外に排出することなく殺菌処理して循環させることが可能となり、新たな養液61を供給する量を節減する(養液61の廃棄量を低減する)ことができる。したがって、養液61に関するコストの節約や環境負荷への懸念抑制に寄与できる。
【0084】
また本実施形態において、植物栽培システム1は、貯留槽43に貯留された養液61を給水路55を介して栽培槽21に供給する循環ポンプ51と、循環ポンプ51を制御する制御装置59と、をさらに有してもよく、その場合には、制御装置59は、排水弁49の閉塞時に養液61を栽培槽21に供給するように循環ポンプ51を制御するとともに、排水弁49の開放時にも養液61を栽培槽21に供給するように循環ポンプ51を制御してもよい。
【0085】
本実施形態では、排水弁49の閉塞時には栽培槽21から第1排水路45のみを介して排水が行われ、貯留槽43に貯留された養液61が循環ポンプ51により栽培槽21に供給されて、養液61が循環される。そして、排水弁49が開放されて第2排水路47を介して排水が行われる際にも、循環ポンプ51の駆動が維持されて栽培槽21への養液61の供給が継続される。これにより、第2排水路47からの排水時に栽培槽21への養液61の給水を停止する場合に比べて、栽培槽21の底部近傍の養液61を押し流すことが可能となり、養液61の淀みを解消する効果を高めることができる。また、給水量と排水量を調整することにより、排水弁49を常時開放した状態とし、養液61を第1排水路45及び第2排水路47の両方から常に排水しながら水位を一定に保つことも可能となる。この場合、栽培槽21内の養液61の全体を常に入れ替えつつ循環させることができるので、淀みの発生を防止でき、藻類の繁殖や細菌類の増殖の抑制効果をさらに高めることができる。
【0086】
また本実施形態において、植物栽培システム1は、排水弁49の開放時は、排水弁49の閉塞時よりも養液61の供給量が増加するように構成されてもよい。例えば、制御装置59は、排水弁49の開放時は、排水弁49の閉塞時よりも養液61の供給量を増加させるように、循環ポンプ51を制御してもよい。
【0087】
この場合、第2排水路47を介して排水を行う際に、栽培槽21内を流れる養液61の流速を通常よりも増加させることができるので、養液61の淀みを解消する効果をさらに高めることができる。
【0088】
また本実施形態において、第2排水路47は、循環ポンプ51による給水路55を介した給水能力よりも大きな排水能力を有するように構成されてもよい。
【0089】
この場合、第2排水路47を介して排水を行う際に、循環ポンプ51を停止せずに栽培槽21への養液61の供給を継続した状態でも、栽培槽21の水位を徐々に低下させて養液61の全部を排出することができる。養液61の供給を継続しながら栽培槽21内を空にすることができるので、底部に溜まった夾雑物等を洗い流して栽培槽21内を綺麗に洗浄することが可能となる。
【0090】
また本実施形態において、給水路55は、栽培槽21の一方側(例えば後側)の端部近傍に接続されてもよく、第1排水路45は、栽培槽21の他方側(例えば前側)の端部近傍に接続されてもよく、第2排水路47は、栽培槽21の中央部よりも他方側(例えば前側)の位置に接続されてもよい。
【0091】
栽培槽21内の養液61の淀みは、養液61の流れ方向の上流側よりも下流側に生じやすい。本実施形態では、栽培槽21に供給された養液61は一方側(例えば後側)から他方側(例えば前側)に向けて流れ、第1排水路45から排水される。第2排水路47を栽培槽21の中央部よりも他方側(例えば前側)に接続することにより、養液61の流れ方向の下流側の位置において、栽培槽21の底部近傍の養液61を排水することができる。これにより、養液61の淀みを効果的に解消できる。
【0092】
また本実施形態において、第2排水路47は、栽培槽21において植物3が保持される領域よりも他方側(例えば前側)の位置に接続されてもよい。
【0093】
栽培槽21の植物3が保持される領域では、例えば植物3の根や葉の一部等が養液61に沈む等により、夾雑物が発生し易い。このため、当該領域の下流側では養液61の流れで運ばれた夾雑物が沈殿し易い。本実施形態では、栽培槽21の植物3が保持される領域の下流側の位置において、栽培槽21の底部近傍の養液61を排水することができる。これにより、沈殿物を効果的に排出することが可能となり、養液61の水質を向上できる。
【0094】
また本実施形態において、植物栽培システム1は、複数の栽培槽21を支持する栽培棚7をさらに有してもよく、その場合には、第2排水路47は、複数の栽培槽21の各々に対して接続され、排水弁49は、複数の第2排水路47の各々に対して設けられてもよい。
【0095】
この場合、例えば栽培槽21ごとに時間差を設けて養液61を排水することが可能となるので、貯留槽43の容量を低減することができる。
【0096】
また本実施形態において、植物栽培システム1は、排水弁49の開閉を制御する制御装置59をさらに有してもよく、その場合には、制御装置59は、排水弁49を、通常時は閉じておき、予め設定された所定のタイミングで開くように制御してもよい。
【0097】
この場合、通常時は第2排水路47からの排水は行わず、例えば夾雑物を排出できる確率が高いときに第2排水路47からの排水を行うように、排水弁49の開放タイミングを調整することができる。これにより、養液61の水質を向上でき、藻類の繁殖や細菌類の増殖の抑制効果を高めることができる。
【0098】
また本実施形態において、制御装置59は、排水弁49を、栽培槽12ごとに異なるタイミングで開くように制御してもよい。
【0099】
例えば複数の栽培槽21の養液61を一度に排水して貯留槽43に貯留する場合、必要な容量が増大し、貯留槽43の大型化を招く。本実施形態では、栽培槽21ごとに異なるタイミングで排水することができるので、貯留槽43や循環ポンプ51の容量及び殺菌装置53の出力等を低減できる。その結果、植物栽培システム1を小型化、省コスト化できる。
【0100】
また本実施形態において、制御装置59は、排水弁49を、植物栽培システム1の付帯設備が動作するタイミングで開くように制御してもよい。
【0101】
植物栽培システム1において付帯設備が動作する際には、栽培槽21において植物3が移動する。植物3が移動すると養液61に流れが生じ、栽培槽21内の夾雑物や沈殿物が押し流されて、第2排水路47から排出できる可能性が高まる。本実施形態では、付帯設備が動作するタイミングで第2排水路47からの排水を行うので、夾雑物や沈殿物を効率良く排出できる。したがって、養液61の水質を向上でき、藻類の繁殖や細菌類の増殖の抑制効果を高めることができる。
【0102】
また本実施形態において、植物栽培システム1は、植物3を保持する複数の保持具5と、栽培槽21の上部に設けられ、複数の保持具5を移動可能に支持するレール23と、をさらに有してもよく、その場合には、制御装置59は、排水弁49を、保持具5が移動するタイミングで開くように制御してもよい。
【0103】
保持具5が移動すると、植物3の根が浸かっている養液61に流れが生じ、栽培槽21の水槽部69内の夾雑物や沈殿物が下流側プール67に押し流されて、第2排水路47から排出できる可能性が高まる。本実施形態では、保持具5が移動するタイミングで第2排水路47からの排水を行うので、夾雑物や沈殿物を効率良く排出できる。したがって、養液61の水質を向上でき、藻類の繁殖や細菌類の増殖の抑制効果を高めることができる。
【0104】
また本実施形態において、植物栽培システム1は、保持具5をレール23の端部から取り出し、他のレール23に移載する移載装置11をさらに有してもよく、その場合には、制御装置59は、排水弁49を、移載装置11が保持具5をレール23から取り出すタイミングで開くように制御してもよい。
【0105】
保持具5がレール23の端部から取り出されると、水槽部69内の夾雑物や沈殿物が下流側プール67に押し出されて、第2排水路47から排出できる可能性が高まる。本実施形態では、移載装置11が保持具5をレール23から取り出すタイミングで第2排水路47からの排水を行うので、夾雑物や沈殿物を効率良く排出できる。したがって、養液61の水質を向上でき、藻類の繁殖や細菌類の増殖の抑制効果を高めることができる。
【0106】
また本実施形態において、制御装置59は、付帯設備の動作の有無に応じて、排水弁49を開くタイミングの間隔を変更してもよい。
【0107】
この場合、例えば付帯設備の動作がない場合には一定の時間間隔で第2排水路47からの排水を行い、付帯設備の動作がある場合にはその動作タイミングに合わせて排水を行うことができる。このようにすることで、養液61の水質を良好に維持することができ、藻類の繁殖や細菌類の増殖の抑制効果を高めることができる。
【0108】
<9.変形例>
開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0109】
(9-1.第2排水路を第1排水路よりも下流側に接続する場合)
例えば、第2排水路47を第1排水路45よりも下流側の位置において栽培槽21に接続してもよい。
【0110】
図14に、本変形例における栽培槽21の構成の一例を示す。図14に示すように、下流側プール67の底部67aの例えば左右方向且つ前後方向における略中心位置にはパイプ63が設けられており、下流側プール67の左右方向における略中心位置で前側の端部近傍には開口67bが形成されている。すなわち、開口67bはパイプ63の下流側(この例では前側。他方側の一例)に設けられている。パイプ63の下部には第1排水路45が接続され、開口67bには第2排水路47が接続されている。
【0111】
本変形例によれば、第1排水路45の接続位置よりもさらに下流側の位置の底部で第2排水路47を介して養液61を排水するので、栽培槽21の全体について養液61を排水し易くすることができる。これにより、淀みの解消効果をさらに高めることができる。
【0112】
(9-2.給水路と第2排水路を栽培槽の対角位置に接続する場合)
例えば、給水路55と第2排水路47とを、栽培槽21において対角に位置する一方側の角及び他方側の角の近傍にそれぞれ接続してもよい。
【0113】
図15に、本変形例における栽培槽21の構成の一例を示す。図15に示すように、栽培槽21は長方形状の上流側プール65と長方形状の下流側プール67とが複数の水槽部69により接続された構成となっており、全体として概略長方形状に形成されている。上流側プール65の例えば左後側の角部(一方側の角の一例)の近傍には、パイプ71が設けられている。パイプ71には給水路55が接続されている。下流側プール67の例えば右前側の角部(他方側の角の一例)の近傍には、開口67bが形成されている。開口67bには第2排水路47が接続されている。第1排水路45が接続されるパイプ63の設置位置は特に限定されるものではないが、例えば下流側プール67の略中心位置に設けられている。
【0114】
本変形例によれば、栽培槽21における対角位置の一方側の角の近傍で養液61を供給し、対角位置の他方側の角の近傍の底部で養液61を排水するので、栽培槽21の全体に対して養液61を押し流すことができる。これにより、淀みの解消効果をさらに高めることができる。
【0115】
(9-3.第2排水路を各水槽部に接続する場合)
上記実施形態では、栽培槽21を、上流側プール65と下流側プール67とが複数の水槽部69により接続された構成とし、下流側プール67に第1排水路45と第2排水路47を接続する構成としたが、栽培槽21の構成は上記に限られない。例えば、下流側プール67を設置せずに、複数の水槽部69の各々に第2排水路47を接続した構成としてもよい。
【0116】
図16及び図17に、本変形例における栽培槽21Aの構成の一例を示す。図16は栽培槽21Aの全体構成の一例を表す平面図であり、図17は、図16のXVII-XVII断面に相当する断面図である。なお、図16及び図17では一例として4本の水槽部69を備えたC段の栽培槽21Aの構成を図示しているが、A段及びB段の栽培槽21Aも水槽部69の本数が異なる以外は同様の構成としてもよい。
【0117】
図16に示すように、栽培槽21Aは、上流側プール65と、複数の水槽部69と、樋89とを有する。図16及び図17に示すように、各水槽部69の下流側(この例では前側)の端部には、堰部91がそれぞれ形成されている。水槽部69内の養液61は、堰部91の上端を越流することで、所定の水位が維持されつつ樋89に流出する。樋89は、上部が開放された半円筒状の部材であり、下端部(図示省略)が第1排水路45に接続されている。樋89に流出した養液61は、第1排水路45を介して貯留槽43に排水される。
【0118】
各水槽部69の下流側端部の近傍には、例えば左右方向に拡幅された堰き止め部93が設けられている。堰き止め部93では、堰部91により堰き止められた養液61が滞留する。レール23は、水槽部69の後方側端部から堰き止め部93の後側までの領域に設置されており、堰き止め部93の上方は開放されている。図17に示すように、堰き止め部93の底部93aには開口93bが形成されており、開口93bの下部には第2排水路47の一方側の端部が接続されている。これにより、第2排水路47は複数の水槽部69の各々に対して接続される。また、排水弁49は複数の第2排水路47の各々に対して設けられている。各水槽部69内の養液61は、排水弁49が開放することで、第2排水路47を介して貯留槽43に排水される。
【0119】
本変形例によれば、各水槽部69を下流側で合流させる下流側プールを栽培槽から省略できるので、栽培槽21Aを小型化できる。したがって、植物栽培システム1を小型化できる。また、水槽部69ごとに養液61を排水することができるので、例えば栽培槽21Aのうち汚れのひどい水槽部69のみを排水する等、局所的な排水が可能となる。また、例えば水槽部69ごとに時間差を設けて養液61を排水することにより、貯留槽43の容量をさらに低減することができる。
【0120】
(9-4.第1排水路、第2排水路、給水路を各水槽部に接続する場合)
例えば、上流側プール65及び下流側プール67の両方を設置せずに、複数の水槽部69の各々に第1排水路45、第2排水路47、及び給水路55を接続した構成としてもよい。
【0121】
図18に、本変形例における栽培槽21Bの構成の一例を示す。図18に示すように、栽培槽21Bは、複数の水槽部69を有する。各水槽部69の上流側(この例では後側)の端部には、例えば左右方向に拡幅された給水部99がそれぞれ設けられている。給水部99には、給水路55の一方側の端部が接続された円筒状のパイプ71が設けられており、パイプ71から養液61が供給される。
【0122】
各水槽部69の下流側(この例では前側)の端部には、例えば左右方向に拡幅された堰き止め部93がそれぞれ設けられている。堰き止め部93では養液61が滞留する。レール23は、給水部99の前側から堰き止め部93の後側までの領域に設置されており、給水部99及び堰き止め部93の上方は開放されている。堰き止め部93の底部93aには開口93bが形成されており、開口93bの下部には第2排水路47の一方側の端部が接続されている。また、堰き止め部93には、第1排水路45が接続されるパイプ63が設けられている。これにより、水槽部69内の養液61は、パイプ63の上端開口63aを越流することで、所定の水位が維持されつつ第1排水路45に流出し、水槽部69から貯留槽43に排水される。排水弁49は、各堰き止め部93に接続された第2排水路47の各々に対して設けられている。各水槽部69内の養液61は、排水弁49が開放することで、第2排水路47を介して貯留槽43に排水される。
【0123】
本変形例によれば、上流側プール及び下流側プールの両方を栽培槽から省略できるので、栽培槽21Bを小型化できる。したがって、植物栽培システム1を小型化できる。また、水槽部69ごとに養液61を供給又は排水することができるので、例えば栽培槽21Bのうち必要な水槽部69のみに養液61を給水したり、汚れのひどい水槽部69のみを排水する等、局所的な給排水が可能となる。
【0124】
(9-5.栽培槽の底部に傾斜部を設ける場合)
例えば、栽培槽21の底部に傾斜部を設け、第2排水路47を傾斜部の最も下方となる位置に接続してもよい。
【0125】
図19に、本変形例における栽培槽21の下流側プール67の構成の一例を示す。なお、図19では第1排水路45及び第1排水路45が接続されるパイプ63の図示は省略している。図19に示すように、下流側プール67の底部67aは、例えば左右方向の中心側に向かって高さが低くなる傾斜部67dを有している。底部67aの左右方向の略中央位置には、開口67bが形成されている。開口67bには第2排水路47が接続されている。このような構成により、第2排水路47は傾斜部67dの最も下方となる位置に接続されている。
【0126】
本変形例によれば、養液61が重力により自然に第2排水路47に向けて流れるので、第2排水路47を介して効率良く養液を排水することができる。また、栽培槽21の底部に沈殿しやすい藻類や夾雑物等を効果的に集め、養液61とともに排水できる。
【0127】
(9-6.栽培槽に第2排水路に向かって窄む形状の壁部を設ける場合)
例えば、栽培槽21に、第2排水路47の接続箇所に向かって窄む形状の壁部を設けてもよい。
【0128】
図20に、本変形例における栽培槽21の下流側プール67の構成の一例を示す。図20に示すように、下流側プール67は、第2排水路47の接続位置である開口67bに向かって養液61の流路が狭くなるように形成された壁部67cを有する。なお、壁部67cの形状は、図20に示す略三角形状に限るものではなく、例えば台形状や円弧状等、開口67bに向かって流路が狭くなる形状であればよい。
【0129】
本変形例によれば、養液61の流れを第2排水路47に誘導することができるので、第2排水路47を介して効率良く養液61を排水することができる。また、養液61の流速を早めることで淀みの解消効果をさらに高めることができる。また、栽培槽21の底部に沈殿しやすい藻類や夾雑物等を効果的に集め、養液61とともに排水できる。
【0130】
(9-7.上流側プールにも排水路を設ける場合)
上記実施形態では、栽培槽21の下流側プール67に第1排水路45及び第2排水路47を接続する構成としたが、下流側プール67に加えて上流側プール65にも排水路を接続してもよい。
【0131】
図21に、本変形例における栽培槽21の構成の一例を示す。図21に示すように、上流側プール65の底部65aの例えば前側の端部近傍における左右方向の略中心位置には、開口65bが形成されている。開口65bの下部には、第3排水路95(後述の図22参照)の一方側の端部が接続されている。上記構成により、第3排水路95は、栽培槽21においてレール23が敷設される領域(植物3が保持される領域の一例)よりも後方側(一方側の一例)の位置に接続される。なお、第3排水路95が上流側プール65に接続される箇所は、底部65aに限るものではなく、例えば上流側プール65の壁部の下端等、底部近傍であればよい。栽培槽21のその他の構成は、前述の実施形態(図10)と同様であるため説明を省略する。
【0132】
図22に、本変形例における植物栽培システム1の養液の給排水構成の一例を示す。図22に示すように、第3排水路95は、一方側の端部が分岐して各栽培槽21の上流側の底部近傍にそれぞれ接続され、他方側の端部が合流して貯留槽43に接続されている。栽培槽21(特に上流側プール65)内の養液61は、排水弁97の閉塞時には第3排水路95からは排水されず、排水弁97の開放時には第3排水路95を介して貯留槽43に排水される。なお、第3排水路95の貯留槽43側を合流させずに、各栽培槽21と貯留槽43とを別々の第3排水路95で接続してもよい。排水弁97は、分岐された複数の第3排水路95の各々に対して設けられ、第3排水路95をそれぞれ開閉する。なお、排水弁97の開度により排水量が調整されてもよい。排水弁97の開閉(開度を含む)は、制御装置59によって制御される。
【0133】
本変形例によれば、植物3が保持される領域の下流側において養液61を栽培槽21の底部から排水するのに加えて、植物3が保持される領域の上流側においても養液61を栽培槽21の底部から排水することができる。これにより、栽培槽21の上流側で発生した夾雑物や沈殿物等についても排出することが可能となり、藻類の繁殖や細菌類の増殖の抑制効果をさらに高めることができる。
【0134】
(9-7.その他)
以上では、第2排水路47からの排水を貯留槽43に貯留し、循環させる場合について説明したが、例えば第1排水路45からの排水のみを貯留槽43に貯留して循環させ、第2排水路47からの排水については、植物栽培システム1の系外に排出してもよい。あるいは、第2排水路47からの排水の行先を貯留槽43又は系外のいずれかに切り替え可能としてもよい。このようにすることで、第1排水路45からの排水に比べて比較的汚れた排水である第2排水路47からの排水を系外に排出できるので、養液61の水質をより向上できる。
【0135】
また、通常は養液61の循環を行わずに栽培槽21に貯留しておき、必要な場合に排水弁49を開放して第2排水路47を介して貯留槽43に排水してもよい。
【0136】
また以上では、植物3を保持具5で保持し、栽培槽21上に設置したレール23に沿って移動させながら生育させる場合について説明したが、植物3を移動せずに設置する構成としてもよい。例えば、複数の植物3をパレット等の保持具で保持し、当該保持具を栽培槽21の上部に所定期間設置することで生育させるシステムとしてもよい。
【0137】
<10.制御装置のハードウェア構成例>
図23を参照しつつ、制御装置59のハードウェア構成例について説明する。なお、図23中では、循環ポンプ51のモータ(図示省略)に電力を供給する機能に係る構成等を省略して図示している。
【0138】
図23に示すように、制御装置59は、例えば、CPU901と、ROM903と、RAM905と、ASIC又はFPGA等の特定の用途向けに構築された専用集積回路907と、入力装置913と、出力装置915と、記録装置917と、ドライブ919と、接続ポート921と、通信装置923とを有する。これらの構成は、バス909や入出力インターフェース911を介し相互に信号を伝達可能に接続されている。
【0139】
プログラムは、例えば、ROM903やRAM905、ハードディスク等の記録装置917等に記録しておくことができる。
【0140】
プログラムは、例えば、フレキシブルディスクなどの磁気ディスク、各種のCD・MOディスク・DVD等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブルな記録媒体925に、一時的又は非一時的(永続的)に記録しておくこともできる。このような記録媒体925は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することもできる。この場合、これらの記録媒体925に記録されたプログラムは、ドライブ919により読み出されて、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0141】
プログラムは、例えば、ダウンロードサイト・他のコンピュータ・他の記録装置等(図示せず)に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、LANやインターネット等のネットワークNWを介し転送され、通信装置923がこのプログラムを受信する。そして、通信装置923が受信したプログラムは、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0142】
プログラムは、例えば、適宜の外部接続機器927に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、適宜の接続ポート921を介し転送され、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0143】
CPU901が、上記記録装置917に記録されたプログラムに従い各種の処理を実行することにより、上記の図13に示す制御内容等が実現される。CPU901は、例えば、上記記録装置917からプログラムを直接読み出して実行してもよいし、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。CPU901は、例えば、プログラムを通信装置923やドライブ919、接続ポート921を介し受信する場合、受信したプログラムを記録装置917に記録せずに直接実行してもよい。
【0144】
CPU901は、必要に応じて、例えばマウス・キーボード・マイク(図示せず)等の入力装置913から入力する信号や情報に基づいて各種の処理を行ってもよい。
【0145】
CPU901は、上記の処理を実行した結果を、例えば表示装置や音声出力装置等の出力装置915から出力してもよい。CPU901は、必要に応じて処理結果を通信装置923や接続ポート921を介し送信してもよい。CPU901は、処理結果を上記記録装置917や記録媒体925に記録させてもよい。
【0146】
以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0147】
以上の説明において、外観上の寸法や大きさ、形状、位置等が「同一」「同じ」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。それら「同一」「同じ」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に同じ」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0148】
例えばしきい値(図13のフローチャート参照)や基準値等、所定の判定基準となる値あるいは区切りとなる値の記載がある場合は、それらに対しての「同一」「等しい」「異なる」等は、上記とは異なり、厳密な意味である。
【0149】
以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【0150】
以上説明した実施形態や変形例等が解決しようとする課題や効果は、上述した内容に限定されるものではない。実施形態や変形例等によって、上述されていない課題を解決したり、上述されていない効果を奏することもでき、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【符号の説明】
【0151】
1 植物栽培システム
3 植物
5 保持具(付帯設備の一例)
7 栽培棚
11 移載装置(付帯設備の一例)
21 栽培槽
21A 栽培槽
21B 栽培槽
23 レール(支持具の一例)
43 貯留槽
45 第1排水路
47 第2排水路
49 排水弁(弁)
51 循環ポンプ(ポンプ)
53 殺菌装置
55 給水路
59 制御装置(第1制御装置、第2制御装置)
61 養液
65 上流側プール
65a 底部
67 下流側プール
67a 底部
67c 壁部
67d 傾斜部
69 水槽部
95 第3排水路
97 排水弁
【要約】
【課題】藻類の繁殖を抑制することで養液中の細菌の増殖を抑制する。
【解決手段】植物栽培システム1は、養液61を通水して植物3を栽培する栽培槽21と、養液61を貯留する貯留槽43と、栽培槽21に接続され、養液61を所定の水位で越流させて栽培槽21から貯留槽43に排水する第1排水路45と、栽培槽21の底部近傍に接続され、養液61を栽培槽21から排水する第2排水路47と、第2排水路47を開閉する排水弁49と、養液61の給水路55に設けられ、栽培槽21から排水された養液61に殺菌処理を行う殺菌装置53と、殺菌処理が行われた養液61を栽培槽21に給水する給水路55と、を有する。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23