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  • 特許-液状廃棄物処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】液状廃棄物処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20230324BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
A61G12/00 W
A61M1/00 130
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018233989
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020092925
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(73)【特許権者】
【識別番号】595099960
【氏名又は名称】株式会社群馬コイケ
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】坂井 岳
(72)【発明者】
【氏名】猪野 智史
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-056768(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0051739(US,A1)
【文献】特開平04-338001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
A61M 1/00-1/38
A61L 2/00-2/28
C02F 1/00-1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性を有し、内部に形成された液状廃棄物を収容する袋体を収容すると共に負圧発生源と接続された収容空間と、該収容空間と通気可能に接続された通路が形成された取っ手と、を有するボトルと
前記ボトルを被蓋する蓋体に配置され前記ボトルの収容空間に作用する圧力を調整する圧力調整器と、該蓋体に形成され液状廃棄物を吸引するチューブを接続する接続口と、
前記ボトルの取っ手に形成された通路に配置されオゾンを発生するオゾン発生装置と、を有し、
前記オゾン発生装置で発生したオゾンを前記収容空間に供給して該収容空間を脱臭し得るように構成することを特徴とする液状廃棄物処理装置。
【請求項2】
前記収容空間内の臭気を検出する臭気センサと、該臭気センサによって検出した収容空間内の臭気状態に対応させて前記オゾン発生装置を制御する制御部と、を有することを特徴とする請求項1に記載した液状廃棄物処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療現場に於いて発生する血液や体液或いはその他の分泌物等の液状廃棄物を吸引して処理するための処理装置に関し、特に、液状廃棄物を収容した袋体の臭気を脱臭し或いは軽減するための液状廃棄物処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療現場で発生した血液や体液、その他の分泌物または患部の洗浄に使用した生理食塩水等の液状廃棄物は、吸引して袋体に収容して凝固させた後、この袋体ごと廃棄焼却処分している。このような液状廃棄物を収容する袋体は消耗品として取り扱われるため、適度な剛性を有し、繰り返し使用可能な透明な容器に収容して使用するのが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された液状廃棄物処理装置では、可撓性を有する袋体を剛性を有するボトルに収容し、袋体とボトルとの間に構成された空間を負圧状態とすることで、該袋体の内部を負圧状態としている。そして、袋体に接続されたチューブを対象となる部位に接近させることで、液状廃棄物を吸引して袋体に収容している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6194203号(特開2015-024085号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療現場で発生した液状廃棄物は、吸引した血液や痰などが発生する独特の臭気を有しており、ボトルの内部に構成された収容空間に袋体を収容したとき、この収容空間に臭気がこもり、特に、袋体を交換する際に臭気が漏れて周囲に不快感を生じさせるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、液状廃棄物を吸引して収容した袋体を収容した収容空間にこもる臭気を脱臭し、或いは軽減することができる液状廃棄物処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件発明者等は、液状廃棄物を収容した袋体を収容するボトルの収容空間にこもる臭気を脱臭することができる液状廃棄物処理装置の開発を行うに際し、オゾンの持つ特性を利用することに着目した。そして、オゾンの持つ高い酸化性能を液状廃棄物の脱臭に利用することができるか否かについての評価を行った。
【0008】
オゾンは、酸素原子3個から構成される独特の臭気を持つ気体であり、殺菌・脱臭・脱色・酸化など多岐にわたる作用を有する。この作用により、オゾンは、酸化分解力によって、病院内における2次的な感染の原因とされる一般細菌やカビなどの浮遊菌等を殺菌し、また、さまざまな悪臭原因(トイレのスカトール臭・アンモニア臭・生ゴミの腐敗臭等)及びニコチン・一酸化炭素・硫化水素等の化学物質を分解することが知られている。
【0009】
評価方法として、実際に複数の被験者が臭気を嗅ぐことによって評価を行う嗅覚測定法(官能試験)を用いた。この嗅覚測定法は、悪臭防止法に基づき、環境中の悪臭を客観的に定量する方法として用いられているものである。本方法では、その公定法である「三点比較式臭袋法」によって評価を行った。
【0010】
特に、被験者(嗅覚パネル)は一般的な嗅覚を有することが必要である。このため、被験者候補に対し「基準臭液によるパネル選定試験」を行い、一定の基準を満たした6名のパネルを採用して評価を行った。
【0011】
評価対象としては、医療機関で発生した「液状廃棄物」の代わりに、この液状廃棄物から発生する悪臭の性質に類似したものとして「豚肉腐敗臭」とした。そして、腐敗する前の豚肉をビニル袋に包み、この包みを液状廃棄物処理装置を構成する収容空間と同程度の容積を有する密閉容器に封入して二つの試料(第1試料、第2試料)を作成した。
【0012】
第1試料は豚肉を包んだビニル袋を封入したままの状態とし、第2試料にはオゾン発生装置を配置した。そして、一定期間経過させて両試料に於ける豚肉を同程度に腐敗させた後、第2試料に配置されたオゾン発生装置を作動させて24時間のオゾン暴露を行った。
【0013】
二つの試料から夫々の原臭を吸引してにおい袋に注入し、各パネルによって臭気の測定をした。その結果、二つの試料の臭気は明らかに異なり、第1試料では原臭を10万倍に希釈しても5人が臭気を感じており、30万倍に希釈しても2名が臭気を感じ、全員が臭気を感じなくなったのが100万倍に希釈したときであった。第2試料では1000倍に希釈した状態では5名が臭気を感じるものの、3000倍に希釈すると全員が臭気を感じなくなった。
【0014】
上記評価の結果、本発明に係る液状廃棄物処理装置は、液状廃棄物を収容する袋体を収容すると共に負圧発生源と接続された収容空間と、オゾンを発生するオゾン発生装置と、前記オゾン発生装置と前記収容空間を接続する通路と、を有し、前記オゾン発生装置で発生したオゾンを前記収容空間に供給して該収容空間を脱臭し得るように構成したものである。
【発明の効果】
【0015】
上記液状廃棄物処理装置では、オゾン発生装置を設けると共に、該オゾン発生装置と収容空間を通路によって接続したので、発生したオゾンを収容空間に供給することで、袋体に液状廃棄物を収容したときに生じた臭気をオゾンによって脱臭することができる。
【0016】
特に、オゾン発生装置により収容空間に供給されたオゾンが、該収容空間の内部に滞留している臭気を酸化、分解し、従来より問題となっていた液状廃棄物を収容した袋体を交換する際に於ける、不快悪臭の拡散を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施例に係る液状廃棄物処理装置の概略構成を説明する図である。
図2】本実施例に係る液状廃棄物処理装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る液状廃棄物処理装置(以下「処理装置」という)について説明する。本発明に係る処理装置は、医療機関に於ける血液や体液、或いは在宅医療に於ける痰などに代表される液状廃棄物を吸引して袋体に収容したとき、該袋体から発生する臭気をオゾンによって脱臭し、或いは軽減することを可能としたものである。
【0019】
このため、本発明に係る処理装置は、袋体を収容する収容空間と、オゾン発生装置と、収容空間とオゾン発生装置を接続する通路と、を有している。そして、オゾン発生装置で発生したオゾンを通路を介して収容空間に供給することで、該収容空間を脱臭し、或いは軽減することが可能である。
【0020】
袋体を収容する収容空間がどのように構成されるかは限定するものではない。しかし、適度な剛性を有する容器(ボトル)を形成し、該ボトルの内部に収容空間を形成することが好ましい。以下、内部に収容空間を形成した容器をボトルという。
【0021】
本発明に於いて、収容空間の容量は限定するものではなく、液状廃棄物の吸引対象が、医療機関に於ける手術室か、病室か、或いは在宅医療か、等に対応させて選択される袋体の形状や容量に応じて適宜設定することが好ましい。
【0022】
また、収容空間を形成したボトルの形状や容積も限定するものではない。更に、ボトルの材質も限定するものではなく、袋体に収容した液状廃棄物の重量や、収容空間に作用する負圧の程度などの条件に対応させて適宜設定することが好ましい。特に、収容空間に収容された袋体に於ける吸引量を目視で確認し得るようにするため、収容空間は透明であることが好ましい。
【0023】
オゾン発生装置によってオゾンを発生させる発生方式を限定するものではなく、コロナ放電方式、無声放電方式など市場に提供されている発生装置を採用することが可能である。
【0024】
オゾン発生装置のオゾン発生能力は特に限定するものではなく、取り付けるべきボトルに収容される袋体の容量などに対応させて選択することが好ましい。即ち、袋体の容量はボトルの収容空間の容積と対応するため、ボトルに形成された収容空間の容積に対応させてオゾン発生装置の仕様を設定することが好ましい。
【0025】
また、オゾン発生装置をボトルのどの部位に配置するかは限定するものではなく、例えば、ボトルに形成された取っ手内の空間にオゾン発生装置を配置しても良い。このように、取っ手内の空間にオゾン発生装置を配置した場合であっても、これらの取っ手内の空間と収容空間を通路で接続することは必須である。
【0026】
オゾン発生装置を如何なる手段で作動させるかも限定するものではなく、ボトルの何れかに電池を取り付けると共にスイッチを設けておき、該スイッチを手動で操作することで、オゾン発生、オゾン停止を行えるようにすることが可能である。
【0027】
オゾン発生装置から収容空間に供給されたオゾンは、該収容空間に接続された負圧発生源の方向に流れる。このため、収容空間と負圧発生源との接続部位にオゾンフィルターを設けることが好ましい。このようにオゾンフィルターを設けることで、収容空間に供給されたオゾンが該収容空間の外部に流出することを防ぐことが可能となる。
【0028】
次に、本発明に係る液状廃棄物処理装置の実施例について図を用いて説明する。液状廃棄物処理装置は、図1に示すように、本体Aと、該本体Aの持手部分に装着されたオゾン発生装置Bを有して構成されている。
【0029】
本体Aは、液状廃棄物を吸引して収容した袋体を封入するボトル11と、該ボトル11の上面を被蓋する蓋体に配置され吸引圧力を調整する圧力調整器12と、外部より吸引圧力を導入するチューブ13と、患部より液状廃棄物を導くチューブの接続口14を有して構成されている。蓋体は、液状廃棄物を収容した袋体を交換する際に取外し可能な構造である。
【0030】
オゾン発生装置Bは、オゾンを発生する電極15と、オゾンをボトル11に接続することで供給するパイプ16と、容器の悪臭の状態を感知する臭気センサ17と、該臭気センサ17の検知状態に基づいてオゾンの発生を制御する制御系18と、駆動用電源部19を有して構成されている。
【0031】
オゾン発生装置Bは、図2のブロック図に示すように、充電池により電源の供給を行う電源部21と、電源部21から供給された電圧、電流を適切に変換し各部に供給を行う電源制御部22と、ボトル11内の臭気状態を感知する臭気センサ23(17)と、高電圧発生回路と放電電極によりオゾンを発生するオゾン発生部25と、オゾン発生装置Bの電源管理及び、臭気センサ23(17)からの情報を処理し、オゾン発生部25を制御し、適切なオゾン発生量を確保する中央制御部24を有して構成されている。
【0032】
本実施例に於いて、オゾン発生装置Bは既存の医療用吸引器の手持部分に収納され、従来の使用法に大きな影響を与えないような設計としている。
【0033】
また、オゾン発生装置Bへの電源供給を行う電池に対して、適切な交換若しくは充電が行われれば、臭気センサ23(17)から得た収容空間内部の臭気状態に対して、制御系により自動的に適切な量のオゾンを容器内部に供給する機能を有する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る液状廃棄物処理装置は、例えば医療現場において廃棄する必要のある血液や体液その他の分泌物等の液状廃棄物を吸引して凝固処理し、廃棄する際に利用して有利である。
【符号の説明】
【0035】
A 本体
B オゾン発生装置
11 ボトル
12 圧力調整器
13 チューブ
14 チューブの接続口
15 電極
16 パイプ
17 臭気センサ
18 制御系
19 駆動用電源部
21 電源部
22 電源制御部
23 臭気センサ
24 中央制御部
25 オゾン発生部
図1
図2