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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】カッティング装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/34 20060101AFI20230324BHJP
   B26D 7/24 20060101ALI20230324BHJP
   B26D 5/00 20060101ALI20230324BHJP
   B26D 5/30 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
B26D5/34 B
B26D7/24
B26D5/00 F
B26D5/30 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019010456
(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公開番号】P2020116690
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】513161689
【氏名又は名称】ACS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳史
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-131697(JP,A)
【文献】特開平10-156966(JP,A)
【文献】特開平04-269198(JP,A)
【文献】米国特許第04824515(US,A)
【文献】特開2005-238409(JP,A)
【文献】特表2006-512591(JP,A)
【文献】特開平11-165720(JP,A)
【文献】特開2001-152639(JP,A)
【文献】特開2000-158169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 5/34
B26D 7/24
B26D 5/00
B26D 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を設置するベースと、
前記材料を切断するための切断手段と、
前記切断手段を保持するとともに前記ベースに載置された前記材料に対して該切断手段を移動させて該材料を切断する第一移動手段と、
前記材料の側部までの距離を検出する距離検出手段と、
前記距離検出手段を前記材料の側部に向けて指向させた状態で前記ベースを挟んで対向配置で保持するとともに、該距離検出手段が対向する方向に対して交差する移動方向に該距離検出手段を移動させる第二移動手段と、
前記第一移動手段、前記距離検出手段、及び前記第二移動手段に接続される制御手段と、を備えるカッティング装置において、
前記制御手段は、前記第二移動手段によって前記距離検出手段を移動させ、該第二移動手段における前記移動方向の位置とその位置において該距離検出手段で得られる前記材料の側部までの距離とを関連付けることによって前記ベースに載置された該材料が占める材料領域を特定するカッティング装置。
【請求項2】
前記材料を所定の形状で切断するためのカットラインに関する情報が入力される入力手段を備え、
前記制御手段は、前記材料領域の内側に前記カットラインが収まると判別される場合は前記第一移動手段を駆動させて前記切断手段による前記材料の切断を実行する一方、該カットラインが該材料領域を越えると判別される場合は該材料の切断を不実行とする請求項1に記載のカッティング装置。
【請求項3】
前記第二移動手段は、前記ベースの表面に向けて指向され前記材料領域における高さを検出する高さ検出手段を備える請求項1又は2に記載のカッティング装置。
【請求項4】
前記第二移動手段は、前記材料の側部に向けて指向され前記距離検出手段よりも上方に設けられる材料有無検出手段を備える請求項1~3の何れか一項に記載のカッティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断手段を移動させてベースに載置した材料を切断するカッティング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、特許文献1に示すように、材料を載置するベース(プロッター盤面)と、切断刃を前後、左右、上下方向に移動させ、更にこれを回転、傾倒させることが可能なカッターヘッドとを備え、材料を任意の形状に切断することができるカッティング装置を提案している。このカッティング装置では、所望する切断形状に応じたカットラインに関する情報を入力することができるため、材料を任意の形状で切断することが可能である。ここで、入力するカットラインに関する情報とは、例えば複数の点の位置とこれらの点の順序であって、点の位置は、例えばベースの右手前の所定点を原点と設定したうえで、この原点を基準とするXY座標によって指定する。そして、指定した順番でこれらの点を通るように切断刃を動かして、材料を所望する形状に切断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-237215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなカッティング装置で切断される材料は、装置の使用者がベースに載置することが一般的である。すなわち、ベースに対して毎回同じ位置に材料が置かれるとは限らない。このため、載置した材料の位置がずれていると、切断刃は設定した通りに移動しても切断の途中で切断刃が材料から外れてしまい、意図した形状で切断できずに材料が無駄になるおそれがある。また、通常とは異なる外形の材料を使用した場合も、切断の途中で切断刃が材料から外れてしまう懸念がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、ベースに載置される材料の位置がずれていたり、材料の外形が通常と異なっていたりしても、意図しない形状での切断を防止して材料を無駄にすることがないカッティング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、材料を設置するベースと、前記材料を切断するための切断手段と、前記切断手段を保持するとともに前記ベースに載置された前記材料に対して該切断手段を移動させて該材料を切断する第一移動手段と、前記材料の側部までの距離を検出する距離検出手段と、前記距離検出手段を前記材料の側部に向けて指向させた状態で前記ベースを挟んで対向配置で保持するとともに、該距離検出手段が対向する方向に対して交差する移動方向に該距離検出手段を移動させる第二移動手段と、前記第一移動手段、前記距離検出手段、及び前記第二移動手段に接続される制御手段と、を備えるカッティング装置において、前記制御手段は、前記第二移動手段によって前記距離検出手段を移動させ、該第二移動手段における前記移動方向の位置とその位置において該距離検出手段で得られる前記材料の側部までの距離とを関連付けることによって前記ベースに載置された該材料が占める材料領域を特定するカッティング装置である。
【0007】
このようなカッティング装置においては、前記材料を所定の形状で切断するためのカットラインに関する情報が入力される入力手段を備え、前記制御手段は、前記材料領域の内側に前記カットラインが収まると判別される場合は前記第一移動手段を駆動させて前記切断手段による前記材料の切断を実行する一方、該カットラインが該材料領域を越えると判別される場合は該材料の切断を不実行とすることが好ましい。
【0008】
また前記第二移動手段は、前記ベースの表面に向けて指向され前記材料領域における高さを検出する高さ検出手段を備えることが好ましい。
【0009】
そして前記第二移動手段は、前記材料の側部に向けて指向され前記距離検出手段よりも上方に設けられる材料有無検出手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカッティング装置では、ベースを挟んで対向配置で保持される距離検出手段を、これらの距離検出手段が対向する方向と交差する方向に移動させることによって、ベースに載置された材料の外縁を検出することができるため、この外縁に基づいて、ベースに載置された材料が占める材料領域を特定することができる。
【0011】
ここで、上述したカッティング装置にカットラインに関する情報が入力される入力手段を設け、特定した材料領域の内側にカットラインが存在すると判別される場合は第一移動手段を駆動させて切断手段による材料の切断を実行する一方、カットラインが材料領域を越える場合は材料の切断を不実行とすることによって、意図しない形状での切断を防止することができるため、材料が無駄になることがなくなる。
【0012】
このようなカッティング装置は、ベースの表面に向けて指向され材料領域における高さを検出する高さ検出手段を設けることが好ましい。切断される材料は、使用者がベースに載置することが一般的であるため、想定以上の厚みとなる材料が使用される可能性がある。このような厚い材料が使用されると、切断開始前に切断刃が材料に衝突し、切断刃が破損してしまうおそれがあるが、上述のように構成する場合は、載置された材料の厚みを把握することができるため、例えば所定値以上の厚みとなる材料が載置された場合には材料の切断を不実行とする等の対応を行うことによって、このような不具合を防止することができる。
【0013】
また、材料の側部に向けて指向され距離検出手段よりも上方に設けられる材料有無検出手段を設ける場合も、想定以上の厚い材料が使用された際の不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に従うカッティング装置の一実施形態を概略的に示した平面図である。
図2図1の実施形態におけるヘッド部周辺を示す側面図である。
図3図1の実施形態におけるヘッド部の正面図である。
図4図1の実施形態におけるヘッド部の側面図である。
図5】ベースに載置された材料の外縁を検出して材料領域を特定する方法について示した図である。
図6】特定した材料領域において高さ検出手段を移動させる方法について示した図である。
図7】特定した材料領域とカットラインの位置関係について示した図である。
図8】材料有無検出手段について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従うカッティング装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1における符号1は、本発明に従うカッティング装置の一実施形態を示している。本実施形態のカッティング装置1は、ベース2、ヘッド3、距離検出手段10、高さ検出手段11を備えている。またヘッド3は、図2図4に示すように材料Wを切断する切断刃(切断手段)Sを保持している。
【0016】
ベース2は、符号Wで示す材料を載置するものであって、材料Wを載置する表面は、本実施形態では図1に示したXYZ直交座標系に対して、そのXY平面に平行に延在しているものとする。なお、本実施形態でXY平面は水平方向に延在するものであり、Z方向は高さ方向である。またベース2の表面は、平面視において、X方向(幅方向)よりもY方向(前後方向)が長くなる矩形状に形成されている。なおベース2の表面には、負圧によって材料Wを吸着保持するための吸着穴が設けられている。またベース2には、カッティング装置1に設けられる各種手段を駆動するための電源、エア源等に接続するための付帯設備の他、使用者がカッティング装置1を操作する際に使用する操作部2aが設けられている。本実施形態の操作部2aは、図1に示すようにベース2の幅方向中央であって、使用者にとって手前側に設けられている。また、カッティング装置1で材料Wを所定の形状に切断するにあたって指定する点の座標の原点Oは、操作部2a付近の使用者から見てベース2の右手前に設定している。
【0017】
上述した材料Wは、図示例では平面視において矩形状をなす平板状に形成されたものであるが、形状はこれに限定されるものではない。またその材質は、段ボールのような紙製品や、薄板状の合成樹脂板あるいは金属板、更には比較的厚みのあるポリエチレンや発泡材など、種々のものが含まれる。
【0018】
ベース2とヘッド3との間には、X、Y方向移動手段4、Z方向移動手段5が設けられていて、これによりヘッド3及びヘッド3に保持される切断刃Sは、ベース2に対してX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動することができる。また距離検出手段10は、Y軸方向に移動できるように構成されていて、本実施形態では後述するように、X、Y方向移動手段4のX軸フレーム4aに設けられている。そして高さ検出手段11は、X軸方向、及びY軸方向に移動できるように構成されているものであって、本実施形態ではX、Y方向移動手段4のX軸移動ベース4dに設けられている。なお、本明細書等において、切断手段を移動させるものと規定する「第一移動手段」は、本実施形態ではX、Y方向移動手段4及びZ方向移動手段5の他、以下に説明するθ方向移動手段6、α方向移動手段7がこれに相当する。また距離検出手段を移動させるものと規定する「第二移動手段」は、本実施形態ではX、Y方向移動手段4におけるX軸フレーム4aがこれに相当する。すなわち、本実施形態では、「第一移動手段」で「第二移動手段」を兼用した例を示している。
【0019】
本実施形態のX、Y方向移動手段4は、Y軸方向に延在するとともにベース2に対してX軸方向に間隔をあけて設けられる一対のY軸レール(不図示)と、Y軸レールを摺動するY軸ナット(不図示)と、Y軸ナットに保持されるX軸フレーム4aと、図2に示すようにX軸方向に延在するとともにX軸フレーム4aに対してZ軸方向に間隔をあけて設けられる一対のX軸レール4bと、X軸レール4bを摺動するX軸ナット4cと、X軸ナット4cに保持されるX軸移動ベース4dを含んで構成されている。また詳細な説明は省略するが、X、Y方向移動手段4には、X軸フレーム4aやX軸移動ベース4dを移動させるための駆動手段も含まれていて、本実施形態ではサーボモータを使用している。なお、他のモータ(ステッピングモータなど)を用いてもよい。また、上述したレールとナットとの組み合わせに限られず、タイミングベルトとプーリを利用した機構、ボールねじを用いた機構、ラックとピニオンを利用した機構を用いてもよい。
【0020】
またZ方向移動手段5は、Z軸方向に延在するとともにX軸移動ベース4dに対してX軸方向に間隔をあけて設けられる一対のZ軸レール5aと、Z軸レール5aを摺動するZ軸ナット5bと、Z軸ナット5bに保持されるZ軸移動ベース5cを含んで構成されている。更にZ方向移動手段5は、Z軸モータ5dと、Z軸モータ5dの回転によってZ軸移動ベース5cを移動させるボールねじ5eを備えている。
【0021】
ヘッド3は、切断刃SをZ軸周りに回転可能なθ方向移動手段6と、切断刃SをZ軸に直交するα軸(図4参照)周りに回転可能なα方向移動手段7と、切断刃Sを、その長手方向に振動させる振動手段8と、切断刃Sで材料Wを切断する際に材料Wを押えておく材料押圧手段9(図2参照)とを備えている。
【0022】
θ方向移動手段6は、Z軸方向に間隔をあけて設けられる一対のベアリング6aに回転可能に支持されるθ回転軸6bと、θ回転軸6bに保持されるθ軸ベース6c(図3参照)とを含んで構成されている。またθ方向移動手段6は、θ回転軸6bを回転させるものとして、θ回転軸6bに取り付けられるθ軸プーリ6dと、タイミングベルトを介してθ軸プーリ6dを回転させるθ軸モータ6eを備えている。
【0023】
α方向移動手段7は、図3に示すようにθ軸ベース6cに回転可能に支持されるα回転軸7aと、α回転軸7aに取り付けられるα軸プーリ7bと、図2に示すようにタイミングベルトを介してα軸プーリ7bを回転させるα軸モータ7cとを含んで構成されている。更にα方向移動手段7は、α回転軸7aとともに回転するスプラインケース7dと、スプラインケース7dに対して進退可能に設けられるスプライン軸7eと、スプライン軸7eの先端に設けられ、切断刃Sを保持するホルダー7fを備えている。
【0024】
振動手段8は、図2に示すようにスプライン軸7eの後端に連結するクランク8aと、回転可能に軸支されるとともにクランク8aを進退移動させる偏心カム付きシャフト8bと、偏心カム付きシャフト8bに取り付けられる振動付与用プーリ8cと、ベルト(タイミングベルト)を介して振動付与用プーリ8cを回転させる振動付与用モータ8dとを含んで構成されている。すなわち、振動付与用モータ8dによって偏心カム付きシャフト8bが回転すると、その偏心量の振幅をもってクランク8aが振動し、これによりホルダー7fを取り付けたスプライン軸7eも振動するため、ホルダー7fに保持される切断刃Sを長手方向に沿って振動させることができる。
【0025】
切断刃Sは、図2図4に示すように平刃状になるものであり、図3に示すように平板状になる延在面S1の側縁部には、材料Wを切断する刃先S2が設けられている。切断刃Sは、ホルダー7fに対して取り外し可能であって、ホルダー7fに保持される部位から先端の切先S3までの長さが比較的長い長尺の切断刃(長尺切断手段)や、長さの短い短尺の切断刃(短尺切断手段)の他、刃先S2が延在面S1の両側に設けられた両刃のものや片側だけに設けられた片刃のものなど、種々の切断刃Sを取り付けることができる。
【0026】
材料押圧手段9は、図2に示すように切断刃Sの近傍に設けられる押圧板9aと、押圧板9aをヘッド3に対してZ軸方向に移動可能に支持するガイド9bと、押圧板9aを材料Wに対して押圧するための弾性体9cとを含んで構成されている。
【0027】
そして、図1に示した距離検出手段10は、ベース2に載置された材料Wの側部までの距離を検出するものである。このような距離検出手段10としては、例えばレーザ光を利用した非接触型のレーザ型センサを採用することができる。本実施形態では、操作部2a付近の使用者からの視点で右側に位置する右側距離検出手段10aと左側に位置する左側距離検出手段10bが、互いに対向するようにX軸方向に指向した状態で、ベース2を挟むようにしてX軸フレーム4aに設けられている。
【0028】
高さ検出手段11は、ベース2の表面に向けて指向され、ベース2に載置された材料Wの高さを計測することができるものであって、例えばレーザ光を利用した非接触型のレーザ型センサによって実現することができる。また本実施形態の高さ検出手段11は、図1に示すようにX、Y方向移動手段4におけるX軸移動ベース4dに取り付けられていて、X軸方向、Y軸方向に移動して、ベース2の表面全域の高さを計測することができる。
【0029】
またカッティング装置1は、材料Wを所定の形状で切断するためのカットラインに関する情報が入力される入力手段(不図示)を備えている。このような入力手段としては、例えばカッティング装置1に接続される情報端末(コンピュータ)が挙げられる。また、本実施形態におけるカットラインに関する情報とは、カットライン上の複数の点の位置とこれらの点の順序であって、点の位置は、図1に示したベース2の原点Oを基準としてXY座標で指定する。
【0030】
更にカッティング装置1は、このようなX、Y方向移動手段4、Z方向移動手段5、θ方向移動手段6、α方向移動手段7、及び振動手段8、距離検出手段10、高さ検出手段11、及び入力手段と接続される、不図示のコントロール基板(制御手段)を備えている。コントロール基板は、距離検出手段10や高さ検出手段11、入力手段からの情報に基づいて、ベース2に載置された材料Wの形状や位置などを特定したり、X、Y方向移動手段4、Z方向移動手段5、θ方向移動手段6、α方向移動手段7、及び振動手段8に対して指令を送って、これらを個別に又は連動して駆動させたりすることができる。
【0031】
次に、このような構成になるカッティング装置1を用いて材料Wを所定の形状で切断する方法について、図5図7を参照しながら説明する。
【0032】
この方法では、まず、距離検出手段10によってベース2に載置された材料Wが占める領域(材料領域)を特定する工程を実行する。本実施形態では、図5(a)において矢印で示すように、X、Y方向移動手段4のX軸フレーム4aをY軸方向に移動させる。このとき、X軸フレーム4aに設けられた右側距離検出手段10aは、ベース2に載置された材料Wの右側側部までの距離を計測し、左側距離検出手段10bは、材料Wの左側側部までの距離を計測する。すなわち、X軸フレーム4aにおけるY軸方向の位置と、その位置での右側距離検出手段10a及び左側距離検出手段10bで計測される材料Wの左右の側部までの距離とを関連付けることによって材料Wの外縁を規定することができるため、規定した外縁の内側を、材料Wが占める材料領域Aとして特定することができる(図7(a)を参照)。
【0033】
なお材料領域Aは、右側距離検出手段10aと左側距離検出手段10bによって材料Wの全ての外縁を計測し終わる前であっても、部分的に予測することが可能である。例えば、図5(a)に示す角部E1は、図中に矢印で示すようにX軸フレーム4aをY軸方向に移動させる際、当初は右側距離検出手段10aと左側距離検出手段10bで計測されていなかった材料Wの側部外縁までの距離が、右側距離検出手段10aと左側距離検出手段10bで同時に計測し始められ、且つ計測した距離によって算出される両者の側部外縁の位置が一致することによって、ここに存在すると予測できる。また角部E2は、右側距離検出手段10aで計測される材料Wの右側側部までの距離が、これまで減少していたのが増加に転じることによって予測可能である。同様にして角部E3は、左側距離検出手段10bで計測される材料Wの左側側部までの距離が、これまで減少していたのが増加に転じることによって予測できる。そして角部E4は、これまで右側距離検出手段10aと左側距離検出手段10bで計測されていた材料Wの側部外縁までの距離が同時に計測されなくなり、且つその時点での両者の側部外縁の位置が一致することによって、ここに存在すると予測できる。
【0034】
また、図5(b)のように材料Wが載置された場合においては、外縁L1や外縁L2について予測することが可能である。外縁L1については、図中に矢印で示すようにX軸フレーム4aを移動させる際、当初は右側距離検出手段10aと左側距離検出手段10bで計測されていなかった材料Wの側部外縁までの距離が、右側距離検出手段10aと左側距離検出手段10bで同時に計測し始められ、且つ計測した距離によって算出される両者の側部外縁の位置が所定の間隔をあけている場合において、ここに存在すると予測できる。また外縁L2については、これまで右側距離検出手段10aと左側距離検出手段10bで計測されていた材料Wの側部外縁までの距離が同時に計測されなくなり、且つその時点での両者の側部外縁の位置が所定の間隔をあけている場合において、ここに存在すると予測できる。
【0035】
このようにして材料領域Aを特定した後は、材料Wの厚みを計測する工程を実行する。本実施形態においては、X、Y方向移動手段4によって高さ検出手段11をX軸方向、Y軸方向に移動させることができるため、材料Wの任意の位置での厚みを計測することができる。例えば図6(a)に示すように、高さ検出手段11を、角部E1を通る直線に沿うように移動させる(図示例では角部E1から角部E4に向かって直線状に移動させる)ことによって、材料Wの厚みを概略的に把握するようにしてもよいし、図6(b)に示すように、材料Wの外縁に沿って螺旋状に高さ検出手段11を移動させることによって、材料Wの厚みを細密的に掴むようにしてもよい。
【0036】
なお、上述したように材料Wの全ての外縁を計測し終わる前であっても角部E1の位置を予測することは可能であるため、X軸フレーム4aの進行方向に対して右側距離検出手段10a及び左側距離検出手段10bが高さ検出手段11よりも前方に位置させることによって、X軸フレーム4aをY軸方向に移動させる際、まず右側距離検出手段10a及び左側距離検出手段10bで角部E1の位置を特定し、角部E1に高さ検出手段11させて、材料Wの厚みを計測することができる。すなわち、X軸フレーム4aを一回動かすだけで、材料領域Aの特定と材料Wの厚みの計測を完了させることができる。
【0037】
その後は、入力したカットラインが材料領域Aの内側に収まるか否かを判別する工程を実行する。本実施形態のカットラインCは、図7(a)に示すように菱形に近い形状であるとする。また入力手段で入力されたカットラインCに関する情報は、点C1、C2、C3、C4のXY座標と、切断する順番(本実施形態ではC1、C2、C3、C4の順)とする。ここで、図7(a)に示すように、特定した材料領域Aの内側にカットラインCが収まると判別される場合は、所期した菱形に近い形状で材料Wを切断することができると判別できるため、切断刃SをカットラインCに沿って移動させて材料Wの切断を実行する。一方、図7(b)に示すように、カットラインCが材料領域Aを越えると判別される場合は、切断刃Sによる切断を行わず、例えば警告を発して使用者に材料Wの置き直しを促すこととする。このように本実施形態のカッティング装置1によれば、所期した形状で切断できないと予測される場合には切断は行われないため、材料を無駄にすることがない。
【0038】
載置される材料Wは、想定した以上に厚いものが使用されるおそれがあり、この場合は、切断開始点に移動させる前に切断刃Sが材料Wに衝突し、切断刃Sが破損してしまうおそれがある。一方、本実施形態においては、高さ検出手段11で材料Wの厚みを把握することができるため、このような不具合を防止することができる。ここで、材料Wの厚みが所定値以上であれば、例えば警告を発するなどして使用者に材料Wの変更を促すことが好ましい。なお、材料Wの厚みが所定値以下になることが明らかであれば、材料Wの厚みを計測する工程は省略してもよい。
【0039】
材料Wの厚みを把握することができる場合は、ヘッド3を2つ設けるとともに、一方のヘッド3には長尺の切断刃Sを装着し、他方のヘッド3には短尺の切断刃Sを装着しておき、制御手段からの指令に基づいて検出される高さに応じた最適な長さの切断刃Sで切断を行うようにしてもよい。なお、ヘッド3を複数設ける以外にも、例えばヘッド3に対して切断刃Sを自動で着脱できるように構成するとともにストッカーに種々の切断刃Sを収納しておき、制御手段からの指令に基づいてヘッド3をストッカーまで移動させ、装着済みの切断刃Sから他の切断刃Sに装着し直すようにしてもよい。
【0040】
また材料Wの厚みは、高さ検出手段11以外の構成でも把握することができる。このような構成としては、例えば図8に示す実施例が挙げられる。この実施例では、上述したX軸フレーム4aに対し、材料Wの側部に向けて指向される材料有無検出手段12を、右側距離検出手段10a及び左側距離検出手段10bよりも上方に設けている。このような材料有無検出手段12は、例えば投光した光が材料Wによって遮られたり反射したりすることによって材料Wの有無を検出することができる非接触型の光電センサによって実現することができる。なお、右側距離検出手段10a及び左側距離検出手段10bと同様に、材料Wの側部までの距離を検出することが可能なレーザ型センサによっても材料Wの有無を検出することができる。すなわち、このような材料有無検出手段12で材料Wを検出できるときは、少なくとも材料有無検出手段12が位置する高さ以上の厚みとなる材料Wが載置されていることが判別できる。従って、例えば切断刃Sを移動させる際に切先S3が位置する高さよりも高い位置に材料有無検出手段12を設けておくことによって、切断刃Sが材料Wに衝突して破損する不具合を防止することができる。
【0041】
以上、本発明のカッティング装置について具体的な実施形態を示して説明したが、本発明はこれまでに述べた実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に従う範疇で種々の変更を加えたものも含まれる。例えば上述した実施形態では、固定した材料Wに対して切断刃Sを動かすことによって切断を行うようにしていたが、固定した切断刃Sに対して材料Wを動かすようにしてもよい。また、距離検出手段10と高さ検出手段11は、切断刃Sを移動させるX、Y方向移動手段4に設けたが、これとは別に設けられる他のX、Y方向移動手段に設けてもよい。なお、距離検出手段10や高さ検出手段11が移動する向きなどは任意に設定できるものであって、図面に示した軌跡に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 :カッティング装置
2 :ベース
2a :操作部
3 :ヘッド
4 :X、Y方向移動手段(第一移動手段、第二移動手段)
4a :X軸フレーム
4b :X軸レール
4c :X軸ナット
4d :X軸移動ベース
5 :Z方向移動手段(第一移動手段)
5a :Z軸レール
5b :Z軸ナット
5c :Z軸移動ベース
5d :Z軸モータ
5e :ボールねじ
6 :θ方向移動手段(第一移動手段)
6a :ベアリング
6b :θ回転軸
6c :θ軸ベース
6d :θ軸プーリ
6e :θ軸モータ
7 :α方向移動手段(第一移動手段)
7a :α回転軸
7b :α軸プーリ
7c :α軸モータ
7d :スプラインケース
7e :スプライン軸
7f :ホルダー
8 :振動手段
8a :クランク
8b :偏心カム付きシャフト
8c :振動付与用プーリ
8d :振動付与用モータ
9 :材料押圧手段
9a :押圧板
9b :ガイド
9c :弾性体
10 :距離検出手段
10a:右側距離検出手段
10b:左側距離検出手段
11 :高さ検出手段
12 :材料有無検出手段
A :材料領域
C :カットライン
S :切断刃(切断手段)
W :材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8