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特許7249627ヒーターユニット、排水管、および排水システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】ヒーターユニット、排水管、および排水システム
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20230324BHJP
   F16L 53/35 20180101ALI20230324BHJP
   A61L 2/04 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
E03C1/12 Z
F16L53/35
A61L2/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019029068
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020130682
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】513322419
【氏名又は名称】株式会社モレーンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(72)【発明者】
【氏名】草場 恒樹
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04192988(US,A)
【文献】米国特許第04502164(US,A)
【文献】実開昭52-005326(JP,U)
【文献】特開2012-211637(JP,A)
【文献】特開平07-004745(JP,A)
【文献】特開平2-107160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/298
A61L 2/04
F16L 53/35
C02F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のヒーターと、
前記1以上のヒーターを排水管に配置するための配置機構と、
前記1以上のヒーターを設定されたタイミングでオンおよびオフするタイマーと、
前記タイマーに対し、前記1以上のヒーターをオンおよびオフするタイミングに関するタイミング情報を設定するタイマー設定装置とを具備し、
前記タイマーは、前記タイマー設定装置によって設定された前記タイミング情報を用いて、前記1以上のヒーターをオンおよびオフし、
前記タイミング情報は、オンまたはオフの周期を示す情報、またはオンする時刻とオン状態を継続する時間の情報を有する、ヒーターユニット。
【請求項2】
前記1以上のヒーターによる前記排水管の過熱を防止する過熱防止装置をさらに具備する請求項1載のヒーターユニット。
【請求項3】
前記1以上の各ヒーターは、
前記排水管の一部に巻き付け可能なシート状またはコード状のヒーターであり、
前記配置機構は、
前記排水管の、前記1以上のヒーターが巻き付けられた部分を、少なくとも当該1以上のヒーターと共に覆う、円柱状または角柱状のケースを含む請求項1または請求項2記載のヒーターユニット。
【請求項4】
前記ケースの上面および下面に、
前記排水管の、前記1以上のヒーターが巻き付けられていない部分が貫通し、前記1以上のヒーターが巻き付けられた部分が貫通しないサイズを有する、一対の孔が形成されている請求項記載のヒーターユニット。
【請求項5】
前記ケースは、開閉可能であり、
前記配置機構は、
前記ケースの側面に設けられ、当該ケースを閉じた状態で留めるための1以上の留め具をさらに含む請求項記載のヒーターユニット。
【請求項6】
請求項1から請求項いずれか一項に記載のヒーターユニットが配置された排水管。
【請求項7】
水がたまる箇所を有し、
前記ヒーターユニットは、
前記水がたまる箇所の水面の少なくとも上側に配置されている請求項記載の排水管。
【請求項8】
請求項1から請求項いずれか一項に記載のヒーターユニットと、
前記ヒーターユニットが配置される排水管と、
前記排水管が接続される器具とを具備する排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に設置されたシンク等の器具から流される水を、外部の下水道等に排出する排水システム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、S字型やP字型のトラップを有する排水管が存在した(例えば、特許文献1参照)。この種の排水管では、トラップにたまった水によって通気が遮断される結果、外部の悪臭が排水管を通って室内に侵入することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-172735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、細菌やウイルス等の病原体は、トラップにたまった水を介して移動できるため、上記のような排水管を用いても、外部の病原体が排水管を通って室内に侵入することを防止できない場合があった。
【0005】
例えば、病院や医療介護等の施設において、ある病室から流された水に含まれていた病原体が、排水管を通って別の病室内に侵入すると、施設内で感染が拡大する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第一の発明のヒーターユニットは、1以上のヒーターと、1以上のヒーターを排水管に配置するための配置機構とを具備するヒーターユニットである。
【0007】
かかる構成により、ヒーターの熱により、排水管中に存在、増殖する病原体を除菌、抑制できる。
【0008】
また、本第二の発明のヒーターユニットは、第一の発明に対して、1以上のヒーターを予め設定されたタイミングでオンまたはオフするタイマーをさらに具備するヒーターユニットである。
【0009】
かかる構成により、消費電力を抑えつつ、病原体を除菌、抑制できる。
【0010】
また、本第三の発明のヒーターユニットは、第二の発明に対して、タイマーに対し、1以上のヒーターをオンまたはオフするタイミングに関するタイミング情報を設定するタイマー設定装置をさらに具備し、タイマーは、タイマー設定装置によって設定されたタイミング情報を用いて、1以上のヒーターをオンまたはオフするヒーターユニットである。
【0011】
かかる構成により、消費電力と、病原体の除菌、抑制の効果とのバランスをとることができる。
【0012】
また、本第四の発明のヒーターユニットは、第一から第三いずれか1つの発明に対して、1以上のヒーターによる排水管の過熱を防止する過熱防止装置をさらに具備するヒーターユニットである。
【0013】
かかる構成により、過熱による、ヒーターユニット自体の損傷、排水管またはその周囲への悪影響などを回避できる。
【0014】
また、本第五の発明のヒーターユニットは、第一から第四いずれか1つの発明に対して、1以上の各ヒーターは、排水管の一部に巻き付け可能なシート状またはコード状のヒーターであり、配置機構は、排水管の、1以上のヒーターが巻き付けられた部分を、少なくとも1以上のヒーターと共に覆う、円柱状または角柱状のケースを含むヒーターユニットである。
【0015】
かかる構成により、排水管の適所に配置できるヒーターユニットが実現される。
【0016】
また、本第六の発明のヒーターユニットは、第五の発明に対して、ケースの上面および下面に、排水管の、1以上のヒーターが巻き付けられていない部分が貫通し、1以上のヒーターが巻き付けられた部分が貫通しないサイズを有する、一対の孔が形成されているヒーターユニットである。
【0017】
かかる構成により、排水管の太さの違いに対応可能なヒーターユニットが実現される。
【0018】
また、本第七の発明のヒーターユニットは、第六の発明に対して、ケースは、開閉可能であり、配置機構は、ケースの側面に設けられ、ケースを閉じた状態で留めるための1以上の留め具をさらに含むヒーターユニットである。
【0019】
かかる構成により、着脱が容易なヒーターユニットが実現される。
【0020】
また、本第八の発明の排水管は、第一から第七いずれか1つの発明に対して、ヒーターユニットが配置された排水管である。
【0021】
かかる構成により、ヒーターの熱により、排水管中に存在、増殖する病原体を除菌、抑制できる。
【0022】
また、本第九の発明の排水管は、第八の発明に対して、水がたまる箇所を有し、ヒーターユニットは、水がたまる箇所の水面の少なくとも上側に配置されている排水管である。
【0023】
かかる構成により、排水管の下側の下水道等から、排水管にたまった水を介して、排水管の上側のシンク等に侵入しようとする病原体を、ヒーターの熱で除菌できる。
【0024】
また、本第十の発明の排水システムは、第一から第七のいずれか1つの発明のヒーターユニットと、ヒーターユニットが配置される排水管と、排水管が接続される器具とを具備する排水システムである。
【0025】
かかる構成により、ヒーターの熱により、排水管中に存在、増殖する病原体を除菌し、排水管から器具への病原体の侵入を抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ヒーターの熱により、排水管中に存在、増殖する病原体を除菌、抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施の形態における排水システムの概要図
図2】同ヒーターユニットの開いた状態を示す概要図
図3】同ヒーターユニットの閉じた状態を示す概要図
図4】同制御ユニットの外観図
図5】同制御ユニットの内部構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、ヒーターユニット等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0029】
図1は、本実施の形態における排水システムの概要図である。排水システムは、ヒーターユニット1、ヒーターユニット1が配置される排水管2、および、排水管2が接続される器具3を備える。器具3は、通常、室内に設置される。室内とは、例えば、病院等の施設の病室や処置室や洗面室等の部屋の内部である。または、室内は、家庭のキッチン内や浴室内や居室内などでもよく、その種類は問わない。ただし、器具3は、室外に設置されてもよく、その設置場所は問わない。
【0030】
器具3は、例えば、シンクである。または、器具3は、例えば、浴槽、エアコンなどでもよく、排水管2が接続される道具や機器であれば、その種類は問わない。
【0031】
排水管2は、器具3に接続され、器具3から流された水等の液体を外部に排出する管である。外部とは、通常、部屋の外である。外部は、例えば、下水道でもよいし、排水を処理する処理槽などでもよく、その種類は問わない。
【0032】
排水管2は、例えば、水がたまる箇所21を有する。水がたまる箇所21とは、例えば、トラップである。トラップとは、排水管2の、水がたまるように曲げられた部分である、といってもよい。トラップは、例えば、P字型であるが、S字型やU字型などでもよく、水がたまる形状であれば、そのタイプは問わない。
【0033】
なお、水がたまる箇所21は、排水管2の一部とは限らず、例えば、排水管2に付加された器具であってもよい。この種の器具は、例えば、排水管2の上端に被せられるベル型または椀型の器具であるが、排水管2の一部に設けられるドラム型の貯水部であってもよく、その種類は問わない。
【0034】
排水管2は、例えば、金属で構成される。または、排水管2は、樹脂で構成されてもよく、その素材は問わない。
【0035】
ヒーターユニット1は、排水管2の、水がたまる箇所21の水面の少なくとも上側に配置されることは好適である。ここでいう水面とは、通常、水がたまる箇所21に最も大量の水がたまった状態での水面(つまり、最も高い水面)である。ただし、水面は、例えば、たまった水の一部が蒸発するなどして、水量が減った状態での水面(つまり、最も高い水面より低い水面)でもよい。
【0036】
水面の少なくとも上側に配置されることは、例えば、図1に示されるように、水面の上側にのみヒーターユニット1が配置され、水面の下側にはヒーターユニット1が配置されない場合を含む。
【0037】
また、水面の少なくとも上側に配置されることは、例えば、水面の上側にヒーターユニット1が配置されると共に、水面の下側にも、図示しない別のヒーターユニットが配置される場合も含む。
【0038】
なお、水面の少なくとも上側に配置されることは、例えば、ヒーターユニット1の一部分のみ水面の上側に配置され、他の部分は水面の下側に配置される場合をも含む、と考えてもよい。つまり、ヒーターユニット1の一部分は、水がたまる箇所21よりも上に位置するが、他の部分は、水がたまる箇所21と接していてもよい。ただし、水がたまる箇所21と接する部分が多いと、その部分から、たまっている水に供給される熱量が増え、水温が上昇し、蒸発による水量の減少を招くため、水がたまる箇所21と接する部分は、少ない方が好ましい。
【0039】
従って、例えば、図1に示されるように、ヒーターユニット1の全体が、水面の上側に配置されることは好適である。なお、水面の下側に配置される上記別のヒーターユニットもまた、水がたまっている箇所21と接する部分は少ない方が好ましく、水がたまっている箇所21から離れた箇所(例えば、図示しないS字型のトラップを有する排水管の、水面より下で、かつ水がたまっていない部分など)に配置されることは、より好ましい。
【0040】
ただし、ヒーターユニット1は、例えば、排水管2の、水がたまる箇所21の水面の下側にのみ、配置されてもよい。また、ヒーターユニット1は、例えば、水面の位置とは無関係に、排水管2の1または2以上の各箇所に設けられてもよく、その数や配置される位置は問わない。
【0041】
さらに、ヒーターユニット1は、例えば、水がたまる箇所21を有さない排水管(図示しない)に設けられてもよく、ヒーターユニット1が配置される排水管2のタイプも問わない。
【0042】
図2は、ヒーターユニット1の開いた状態を示す概要図である。なお、このヒーターユニット1は、例えば、P字型のトラップを有する排水管2に配置されるが、S字型やU字型等の、P字型以外の形状のトラップを有する排水管2に配置されてもよいし、トラップを有さない排水管2に配置されてもよく、それが配置される排水管2のタイプは問わない。
【0043】
ヒーターユニット1は、1または2以上のヒーター11、および配置機構12を備える。ヒーター11は、排水管2の少なくとも一部を加熱する部材である。ヒーター11は、例えば、発熱体で構成される。発熱体は、例えば、電熱線である。または、ヒーター11は、例えば、セラミックヒーターでもいし、電磁誘導(IH)式のヒーターでもよく、そのタイプは問わない。
【0044】
ヒーター11は、例えば、シート状(面状といてもよい)またはコード状(線状といったもよい)の、変形可能なヒーターである。この種のヒーター11は、例えば、ニクロム線等の電熱線で構成され、排水管2の一部に巻き付けられる。
【0045】
ただし、ヒーター11は、例えば、変形困難なヒーターでもよい。この種のヒーター11は、例えば、セラミック等で予めリング状に形成され、排水管2の一部に取り付けられてもよい。または、ヒーター11は、例えば、棒状のセラミックヒーターであり、排水管2の長さ方向に取り付けられてもよく、その形状やタイプや配置箇所は問わない。
【0046】
配置機構12は、1以上のヒーター11を排水管2に配置するための機構である。配置機構12は、例えば、開閉可能なケース121、およびケース121を閉じた状態に留めるための1または2以上の留め具122で構成される。
【0047】
ケース121は、1以上のヒーター11を少なくとも収納する。なお、ケース121には、後述するタイマー、後述するタイマー設定装置、および後述する過熱防止装置のうち1以上も収納されてもよい。
【0048】
ケース121は、排水管2の、例えば、コード状またはシート状のヒーター11が巻き付けられた部分を、少なくとも当該1以上のヒーター11と共に覆う。この種のケース121は、例えば、円柱または角柱の形状を有する。なお、円柱等は、完全な円柱等でなくてもよく、例えば、楕円柱や円錐台等の形状でもよいし、局所的に凹凸や変形があっても構わない。
【0049】
そして、円柱状または角柱状のケース121の上面および下面に、一対の孔1211が形成されている。孔1211は、排水管2の、ヒーター11が巻き付けられていない部分が貫通し、ヒーター11が巻き付けられた部分が貫通しないサイズを有する。
【0050】
ケース121は、一対の孔1211を通る直線を含む平面で2分割され、その二つの部分は、一方の端部同士がヒンジ等で結合されており、他方の端部側が、当該直線に対して左右に開閉可能である。
【0051】
左右に開いたケース121は、例えば、図3に示すように、その上面および下面の一対の孔1211を排水管2が貫通し、当該排水管2の、1以上のヒーター11が巻き付けられた部分を覆った状態で閉じられる。
【0052】
ただし、ヒーター11が、例えば、リング状や棒状等のヒーターである場合、ケース121は、排水管2の、リング状等の1以上のヒーター11が取り付けられた部分を、少なくとも当該1以上のヒーター11と共に覆う、リング状等の凸部が形成された円柱または角柱の形状を有していてもよい。
【0053】
ケース121は、例えば、樹脂で構成される。または、ケース121の材料は、例えば、磁器やガラスなどで構成されてもよく、熱伝導性が低い材料であれば、その種類は問わない。ただし、樹脂は、熱伝導性が低いだけでなく、軽量で、破損し難い材料である点で、より好適である。
【0054】
また、例えば、樹脂等のケース121の内面に、断熱材が設けられてもよい。断熱材は、例えば、難燃性であることは好適である。この種の断熱材は、例えば、グラスウールなどであが、その種類は問わない。なお、断熱材は、排水管2に巻かれたヒーター11の上に巻き付けられてもよいし、ケース121の内部の空間に配置されても構わない。
【0055】
留め具122は、例えば、ケース121の側面に設けられるが、ケース121の上面または下面に設けられてもよく、その位置は問わない。
【0056】
本実施の形態では、例えば、図2または図3に示されるように、2つの留め具122が、ケース121の側面の、上面側と下面側に設けられている。なお、2つの留め具122は、その一方がケース121の上面に設けられ、他方がケース121の下面に設けられてもよい。または、2つの留め具122のうち、一方がケース121の側面に設けられ、他方がケース121の上面または下面のいずれかに設けられてもよく、各々の位置は問わない。
【0057】
あるいは、例えば、3以上の留め具122が、例えば、ケース121の側面に設けられてもよい。または、3以上の留め具122は、例えば、ケース121の側面、上面および下面のうち2以上に分散して設けられてもよく、その数や配置される位置は問わない。
【0058】
留め具122は、例えば、図2または図3に示されるような、フック式の留め金具であるが、バックルやマジックテープ(登録商標)等でもよく、そのタイプは問わない。なお、留め具122は、必ずしもケース121に固定されていなくてもよい。例えば、ゴム等の弾性体で構成された1間または2以上の環状の留め具122が、ケース121の側面に巻かれてもよい。
【0059】
また、ヒーターユニット1は、図示しない電源も有する。電源は、例えば、電源線および電源プラグを介してコンセントに接続され、1以上のヒーター11に電流を共有する。ただし、電源は、例えば、蓄電池や発電機などでも構わない。さらに、ヒーターユニット1は、例えば、電源から1以上のヒーター11への電流を通電または遮断するスイッチ、およびスイッチを切り替えるための電源ボタン(図示しない)も有していてもよく、その構成は問わない。
【0060】
なお、ヒーターユニット1は、例えば、図示しないタイマーさらに備えていてもよい。タイマーは、1以上のヒーター11を、予め設定されたタイミングでオンまたはオフする装置である。
【0061】
タイマーは、例えば、メモリ、およびコントローラを備える。なお、メモリは、例えば、ROM、RAM、フラッシュメモリなどで実現され、コントローラは、例えば、MPU、CPUなどで実現されるが、その実現手段は問わない。メモリには、タイミング情報が記憶される。タイミング情報とは、1以上のヒーター11をオンまたはオフするタイミングに関する情報である。タイミング情報は、例えば、周期を示す情報である。この種のタイミング情報は、例えば、“20分ごとオン/オフを繰り返す”や、“オフから1時間後にオン、オンから10分後にオフ”などであるが、その表現形式は問わない。
【0062】
または、タイミング情報は、例えば、周期および時刻を示す情報でもよい。この種のタイミング情報は、例えば、“毎日9時と21時にオン、オンから20後にオフ”や、“毎週月曜日の9時から1時間、オン状態を継続する”などであるが、その表現形式は問わない。または、タイミング情報は、例えば、1または2以上の時刻の集合でもよいし、“x時間後”などでもよく、そのデータ形式は問わない。
【0063】
なお、オンの周期、オン状態の継続時間等は、例えば、1以上のヒーター11の単位時間当たりの発熱量または電力(例えば、1000ワット等)と、病原体の除菌が可能な温度および時間(例えば、80度以上で10分間以上)とを基に決められる。
【0064】
コントローラは、メモリに記憶されたタイミング情報を用いて、1以上のヒーター11をオンまたはオフする。
【0065】
なお、タイマーは、ヒーターユニット1に内蔵または外付けされてもよいし、ヒーターユニット1とは別体でもよい。後者の場合、ヒーターユニット1およびタイマーの各々は、有線または無線の通信モジュールをさらに備え、タイマーのコントローラは、ヒーターユニット1を構成する1以上のヒーター11のスイッチを、通信モジュールを介して遠隔で切り替えてもよい。なお、通信モジュールは、例えば、ネットカークカード、Bluetooth(登録商標)モジュールなどで実現されるが、その実現手段は問わない。
【0066】
または、タイマーは、例えば、ゼンマイ等による機械式のタイマーでもよく、その構成は問わない。
【0067】
また、ヒーターユニット1は、例えば、図示しないタイマー設定装置も備えていてもよい。タイマー設定装置は、タイマーに対し、タイミング情報を設定する装置である。
【0068】
タイマー設定装置は、例えば、操作パネル、およびコントローラを備える。操作パネルは、周期や時刻を入力するための1または2以上のボタンやキーを有し、当該1以上のボタン等を介して入力される周期や時刻を受け付ける。コントローラは、操作パネルを介して受け付けられた周期や時刻を用いて、前述したようなタイミング情報を構成し、タイマーのメモリに書き込む。また、タイマー設定装置は、例えば、ディスプレイも備え、コントローラは、入力された周期等に対応する文字列をディスプレイに表示してもよい。
【0069】
なお、タイマー設定装置は、タイマーと一体でもよいし、タイマーとは別体でもよい。後者の場合、タイマーおよびタイマー設定装置の各々は、有線または無線の通信モジュールをさらに備え、タイマー設定装置のコントローラは、通信モジュールを介してタイマーのメモリにタイミング情報を書き込んでもよい。また、前者の場合、タイマー設定装置のコントローラは、前述したタイマーのコントローラと共通でもよく、タイマー設定装置の構成は問わない。
【0070】
また、ヒーターユニット1は、例えば、図示しない過熱防止装置も備えていてもよい。過熱防止装置は、1以上のヒーター11による排水管2の過熱を防止する装置である。過熱防止装置は、例えば、温度センサ、およびコントローラを備える。温度センサは、排水管2の、1以上のヒーター11が配置された箇所の近傍に設けられ、温度を検知する。コントローラは、検知された温度が閾値を超えた場合に、1以上のヒーター11をオフする。
【0071】
または、コントローラは、例えば、検知された温度が閾値を超えた場合に、1以上のヒーター11をオフすると共に、強制オフ状態に設定することは好適である。強制オフ状態とは、1以上のヒーター11が強制的にオフされ、オンが不可能または困難な状態である、といってもよい。
【0072】
強制オフ状態は、例えば、タイマーによるオンが不可能な状態である。または、強制オフ状態は、例えば、タイマーによるオンが不可能であり、かつ1以上のヒーター11の電源ボタンによるオンも困難な状態であってもよい。なお、電源ボタンによるオンが困難な状態とは、例えば、電源ボタンが予め決められた時間以上、長押しされた場合に、ヒーター11がオンする場合を含む。つまり、過熱防止装置によって設定された強制オフ状態は、例えば、ヒーター11の電源ボタンの長押しによって解除可能であってもよい。
【0073】
また、コントローラは、例えば、検知された温度が、上記閾値よりも低い第二閾値を下回った時点で、強制オフ状態の設定を解除してもよい。
【0074】
なお、過熱防止装置のコントローラは、ヒーターユニット1に内蔵または外付けされてもよいし、ヒーターユニット1とは別体でもよい。後者の場合、過熱防止装置のコントローラは、例えば、前述したタイマーのコントローラ、または前述したとタイマー設定装置のコントローラのうち1以上と共通でもよく、過熱防止装置の構成は問わない。
【0075】
または、タイマー、タイマー設定装置、または過熱防止装置のうち1以上の装置の機能は、例えば、図4および図5に示すような制御ユニット4によって実現されてもよい。つまり、制御ユニット4は、例えば、タイマーに対応するタイマー部、タイマー設定装置に対応するタイマー設定部、および過熱防止装置に対応する過熱防止部のうち1以上を備える、といってもよい。
【0076】
図4は、制御ユニット4の外観図である。制御ユニット4は、例えば、操作パネル、およびディスプレイなどを有する。制御ユニット4は、例えば、ヒーターユニット1の電源と、コンセントとの間に設けられる。
【0077】
図5は、制御ユニット4の内部構成の一例を示す図である。図5において、制御ユニット4は、プログラムを実行するコンピュータであるMPU911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、およびデータを記憶するストレージ914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915と、外部ネットワークや内部ネットワーク等のネットワークへの接続を提供するネットワークカード916と、メモリカードスロット917と、ディスプレイ918と、操作パネル919とを備える。ストレージ914は、例えば、フラッシュメモリなどである。なお、制御ユニット4全体をコンピュータと呼んでもよい。
【0078】
コンピュータに、タイマー部、タイマー設定部、過熱防止部等の機能を実行させるプログラムは、例えば、メモリカード920に記憶されて、メモリカードスロット917に挿入され、ストレージ914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム900に送信され、ストレージ914に記憶されてもよい。プログラムは、実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、メモリカード920、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。なお、コンピュータがどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
【0079】
ただし、ヒーターユニット1は、タイマーもタイマー設定装置も有さず、電源がコンセントに接続されている状態で、常時、発熱するタイプでもよい。その場合、ヒーターユニット1の単位時間当たりの発熱量または電力は、例えば、排水管2の温度が、排水管2内に存在する病原体の増殖を抑制できる温度以上に保たれるような値に設定される。また、ヒーターユニット1の電力が、例えば、“100W”,“200W”等のように、2段階以上に切り替え可能であることは好適である。
【0080】
以下、排水システムの具体的な動作例を説明する。なお、以下の説明は、種々の変更が可能であり、本発明を何ら限定するものではない。
【0081】
本例の排水システムの概要は、図1に示されている。この排水システムを構成する器具3は、病院の病室内に設けられたシンク(以下、シンク3と記す場合がある)である。排水管2は、水のたまる箇所21であるP字型のトラップ(以下、トラップ21)を有する。ヒーターユニット1は、排水管2の、トラップ21の水面の上側に配置される。
【0082】
ヒーターユニット1は、図2に示されるように、排水管2の、トラップ21の水面よも上側の部分に巻き付けられたシート状の2つのヒーター11、および開閉可能な円柱状のケース121を備え、当該ケース121の側面に、2つの留め具122が設けられている。
【0083】
ケース121は、図3に示されるように、その上面および下面に形成された一対の孔1211を排水管2が貫通し、当該排水管2の、2つのヒーター11が巻き付けられた部分を覆うように閉じられ、2つの留め具122によって留められる。それによって、ヒーターユニット1は、排水管2の、トラップ21の水面の上側に配置される。
【0084】
なお、以上で説明したヒーターユニット1は、排水管2に着脱可能であるが、ヒーターユニット1は、予め排水管2に配置されていてもよい。つまり、既存の排水管にヒーターユニット1が装着されることで、排水システムが実現されてもよいし、予めヒーターユニット1が配置された排水管2を、シンク等の器具3に取り付けることで、排水システムが組み立てられても構わない。
【0085】
ヒーターユニット1の電源は、制御ユニット4を介してコンセントに接続される。ユーザが、タイマー設定装置の操作パネルを構成する「曜日」ボタン、「時」ボタン、および「分」ボタンを操作して、“毎日”、“毎時”、および“0分”等の情報を入力する。コントローラは、入力された情報を用いて、例えば、タイミング情報“毎日、毎時0分にオン、オンから20後にオフ”を構成し、メモリに書き込む。ディスプレイには、例えば、入力された情報に対応する文字列“毎日,毎時,0分”等が表示される。
【0086】
コントローラは、例えば、内蔵時計から取得された現在時刻が、タイミング情報の示す毎日毎時0分になると、電源から2つのヒーター11への通電を開始し、通電の開始から20分が経過すると、通電を停止する。メモリには、閾値“摂氏90度”および第二閾値“摂氏60度”も記憶されており、温度センサで検知された温度が閾値“摂氏90度”を超えると、2つのヒーター11への通電を停止し、強制オフ状態を示すフラグをメモリに書き込む。強制オフ状態を示すフラグがメモリに格納されている期間、コントローラは、現在時刻が毎日毎時0分になっても通電を開始しない。
【0087】
温度センサで検知された温度が第二閾値“摂氏60度”を下回ると、コントローラは、メモリから強制オフ状態を示すフラグを削除し、タイミング情報に基づく通電、遮断を再開する。
【0088】
以上、本実施の形態によれば、ヒーターユニット1は、1以上のヒーター11と、1以上のヒーター11を排水管2に配置するための配置機構12とを具備することにより、ヒーターの熱により、排水管中に存在、増殖する病原体を除菌、抑制できる。
【0089】
また、ヒーターユニット1は、1以上のヒーター11を予め設定されたタイミングでオンまたはオフするタイマーをさらに具備することにより、消費電力を抑えつつ、病原体を除菌、抑制できる。
【0090】
また、ヒーターユニット1は、タイマーに対し、1以上のヒーター11をオンまたはオフするタイミングに関するタイミング情報を設定するタイマー設定装置をさらに具備し、タイマーは、タイマー設定装置によって設定されたタイミング情報を用いて、1以上のヒーター11をオンまたはオフすることにより、消費電力と、病原体の除菌、抑制の効果とのバランスをとることができる。
【0091】
また、ヒーターユニット1は、1以上のヒーター11による排水管2の過熱を防止する過熱防止装置をさらに具備することにより、過熱による、ヒーターユニット1自体の損傷、排水管2またはその周囲への悪影響などを回避できる。
【0092】
また、上記構成において、1以上の各ヒーター11は、排水管2の一部に巻き付け可能なシート状またはコード状のヒーターであり、配置機構12は、排水管2の、1以上のヒーター11が巻き付けられた部分を、少なくとも1以上のヒーター11と共に覆う、円柱状または角柱状のケース121を含むことにより、排水管の適所に配置できるヒーターユニットが実現される。
【0093】
また、ヒーターユニット1は、ケース121の上面および下面に、排水管2の、1以上のヒーター11が巻き付けられていない部分が貫通し、1以上のヒーター11が巻き付けられた部分が貫通しないサイズを有する、一対の孔1211が形成されていることにより、排水管の太さの違いに対応可能なヒーターユニットが実現される。
【0094】
また、上記構成において、ケース121は、開閉可能であり、配置機構12は、ケース121の側面に設けられ、ケース121を閉じた状態で留めるための1以上の留め具122をさらに含むことにより、着脱が容易なヒーターユニットが実現される。
【0095】
また、排水管2は、上記のようなヒーターユニット1が配置された排水管であることにより、ヒーターの熱により、排水管中に存在、増殖する病原体を除菌、抑制できる。
【0096】
また、排水管2は、水がたまる箇所21を有し、ヒーターユニット1は、水がたまる箇所21の水面の少なくとも上側に配置されていることにより、排水管の下側の下水道等から、排水管にたまった水を介して、排水管の上側のシンク等に侵入しようとする病原体を、ヒーターの熱で除菌できる。
【0097】
また、排水システムは、ヒーターユニット1と、ヒーターユニット1が配置される排水管2と、排水管2が接続される器具3とを具備することにより、ヒーターの熱により、排水管中に存在、増殖する病原体を除菌し、器具への病原体の侵入を抑制できる。
【0098】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上のように、本発明にかかるヒーターユニットは、ヒーターの熱により、排水管中に存在、増殖する病原体を除菌、抑制できるという効果を有し、ヒーターユニット等として有用である。
【符号の説明】
【0100】
1 ヒーターユニット
2 排水管
3 器具
4 制御ユニット
11 ヒーター
12 配置機構
21 水がたまる箇所
121 ケース
122 留め具
1211 一対の孔
図1
図2
図3
図4
図5