(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】ドレンキャップ
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20230324BHJP
【FI】
E04D13/04 E
(21)【出願番号】P 2019140458
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】592179137
【氏名又は名称】株式会社アルテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 敦郎
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-055140(JP,A)
【文献】特開2011-017128(JP,A)
【文献】実開平06-037426(JP,U)
【文献】特開2016-079566(JP,A)
【文献】特開2019-120117(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0049036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口を覆う通水構造のキャップ本体と、該キャップ本体の下部内周の複数箇所から下方に張り出し且つ前記排水口の内部に窄めて挿入されてから自身の弾性力により広がって前記排水口直下の排水管内側に圧接する板ばね部材とを備えたドレンキャップであって、前記各板ばね部材の上端部が前記キャップ本体の軸心に近接する方向へ移動し得るようガイド機構を介して前記キャップ本体の下部内周に装備され且つ前記キャップ本体の軸心から離間する方向へ向け弾発体により付勢されていることを特徴とするドレンキャップ。
【請求項2】
各板ばね部材の上端部がキャップ本体の軸心に近接する方向へ延びるガイド部を成し且つ該ガイド部より先の部分が下方に向かうに従い前記キャップ本体の軸心から離間する方向へ開く圧接部を成していることを特徴する請求項1に記載のドレンキャップ。
【請求項3】
キャップ本体の下部内周の複数箇所から半径方向内側へ向けガイド機構が突設され、該各ガイド機構に各板ばね部材のガイド部が摺動自在に嵌挿されていると共に、各ガイド機構に前記ガイド部を付勢する弾発体としてコイルばねが収容されていることを特徴する請求項2に記載のドレンキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を排水する排水口に取り付けられるドレンキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルやマンション等の建築物の屋上や各階のベランダには、雨水を排水する排水口(ドレン)が設けられているのが一般的であり、この種の排水口には、雨水に随伴される落ち葉、小枝、紙、又は、ビニール等といった固形物の侵入防止や、排水口が剥き出しになることによる危険性の回避、美観の保持等といった観点からドレンキャップが取り付けられている。
【0003】
図6に示す如く、従来におけるドレンキャップ1の場合には、建築物の屋上やバルコニー等を構成するコンクリート躯体2に、その表面に溜まる雨水を排出するための排水管3が鉛直方向に埋設され、該排水管3の上端部に、雨水を呼び込む排水口4を形成するドレン本体5が嵌着されている。
【0004】
ここで、前記コンクリート躯体2の表面には、防水シート6が被覆されるようになっているが、この防水シート6は、前記ドレン本体5上端の鍔部7と中空円盤形の防水層押え8とで挟み付けるように固定されており、この防水層押え8は、前記ドレン本体5上端の鍔部7に対しネジ止めされるようになっている。
【0005】
そして、前記排水口4が通水構造のキャップ本体9により覆われており、該キャップ本体9は、図示の如きドーム形を成し且つ雨水を通すための複数の開口10を備え、その内部中央に心棒部9aを備え且つ該心棒部9aに二枚の板ばね部材11がビスで固定されている。尚、この板ばね部材11は、長さが排水口4の径よりも十分に長くなっており、二枚の板ばね部材11が十文字に交差するよう重ね合わせた状態で固定されている。
【0006】
図7は前記キャップ本体9を排水口4に取り付ける様子を示すもので、前記キャップ本体9を取り付ける際は、作業員が二枚の板ばね部材11を撓ませて該各板ばね部材11の下端部を排水口4の直径よりも窄めて排水口4の内部に板ばね部材11を挿入するようしており、その挿入後に作業員の手が板ばね部材11から放されると、該板ばね部材11の下端部が自身の弾性力により広がって前記排水口4直下の排水管3内側に圧接し、これによりキャップ本体9が固定される。
【0007】
ただし、斯かる従来のドレンキャップ1にあっては、十文字に交差させた二枚の板ばね部材11を排水口4の径よりも小さく窄ませて排水口4に挿入するようにしていたため、該排水口4の開口面積のうちの多くの領域が、前記各板ばね部材11の十文字の交差部分により塞がれてしまい、雨水に随伴される落ち葉等が引っ掛かることで排水口4の詰まりが起こり易いという課題があった。
【0008】
そこで、下記の如き特許文献1が本発明と同じ出願人により提案されており、この特許文献1にあっては、
図8に示す如く、キャップ本体9の下部内周の複数箇所に個別に板ばね部材11’を装備し、該各板ばね部材11’により排水口4(
図6参照)の開口面積を極力狭めないようにしたドレンキャップ1’となっている。尚、
図8に示すドレンキャップ1’において、前述の
図6及び
図7と機能的に変わらない構成要件については、説明の便宜上から同じ符号を付すことで説明を割愛している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このようにキャップ本体9の下部内周の複数箇所に個別に板ばね部材11’を装備したドレンキャップ1’では、排水口4(
図6参照)の開口面積を極力狭めなくて済むというメリットが得られる一方、様々な口径の排水口4に対し各板ばね部材11’の撓み量だけで対応させなければならなかったため、比較的狭い範囲の排水口4の口径にしか対応させることができず、しかも、その対応させることが可能な範囲内で口径が大きくなるにつれ撓み量が少なくなって圧接力が弱くなるという課題があった。
【0011】
本発明は、上述の実情に鑑みてなしたもので、従来よりも広い範囲の排水口の口径に対応させることが可能で且つ排水口の口径に関わらず良好な固定性能を発揮させることが可能なドレンキャップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、排水口を覆う通水構造のキャップ本体と、該キャップ本体の下部内周の複数箇所から下方に張り出し且つ前記排水口の内部に窄めて挿入されてから自身の弾性力により広がって前記排水口直下の排水管内側に圧接する板ばね部材とを備えたドレンキャップであって、前記各板ばね部材の上端部が前記キャップ本体の軸心に近接する方向へ移動し得るようガイド機構を介して前記キャップ本体の下部内周に装備され且つ前記キャップ本体の軸心から離間する方向へ向け弾発体により付勢されていることを特徴とするものである。
【0013】
而して、このようにすれば、各板ばね部材の上端部を前記キャップ本体の軸心に近接する方向へ移動させることにより、前記各板ばね部材の上端部の配置位置を排水口の口径に合わせて調整することが可能となり、例えば、前記排水口の口径が比較的大きければ、前記各板ばね部材の上端部を前記キャップ本体の軸心から離間する方向へ引き離した状態で使用し、斯かる状態で前記各板ばね部材の上端部より先の部分を窄めて前記排水口の内部に挿入し、前記各板ばね部材を自身の弾性力により広げて前記排水口直下の排水管内側に圧接させることで前記キャップ本体を固定すれば良い。
【0014】
また、前記排水口の口径が比較的小さければ、前記各板ばね部材の上端部を弾発体の付勢力に抗して前記キャップ本体の軸心に近接する方向へ引き寄せた状態で使用し、斯かる状態で前記各板ばね部材の上端部より先の部分を窄めて前記排水口の内部に挿入し、前記各板ばね部材を自身の弾性力により広げて前記排水口直下の排水管内側に圧接させることで前記キャップ本体を固定すれば良い。
【0015】
この結果、従来の如き各板ばね部材の撓み量だけで排水口の口径に合わせる場合と比較して、より広い範囲の排水口の口径に対応させることが可能となり、しかも、前記各板ばね部材の上端部より先の部分を各移動位置で同じように撓ませて過不足ない圧接力を確保することが可能となる。
【0016】
また、前記各板ばね部材の上端部の配置位置を排水口の口径に合わせることで前記各板ばね部材の上端部より先の部分を排水管内側に沿わせて圧接させることが可能となり、前記排水口の開口面積が前記各板ばね部材により殆ど狭められなくて済むので、雨水に随伴される落ち葉等が引っ掛かる虞れが殆どなくなって排水口の詰まりが起こり難くなる。
【0017】
更に、本発明をより具体的に実施するにあたっては、各板ばね部材の上端部がキャップ本体の軸心に近接する方向へ延びるガイド部を成し且つ該ガイド部より先の部分が下方に向かうに従い前記キャップ本体の軸心から離間する方向へ開く圧接部を成していることが好ましい。
【0018】
また、各板ばね部材を前述の如きガイド部と圧接部を成すようにした場合、キャップ本体の下部内周の複数箇所から半径方向内側へ向けガイド機構が突設され、該各ガイド機構に前記各板ばね部材のガイド部が摺動自在に嵌挿されていると共に、各ガイド機構に前記ガイド部を付勢する弾発体としてコイルばねが収容されていると良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明のドレンキャップによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0020】
(I)各板ばね部材の上端部をキャップ本体の軸心に近接する方向へ移動させることにより、前記各板ばね部材の上端部の配置位置を排水口の口径に合わせて調整することができるので、従来の如き各板ばね部材の撓み量だけで排水口の口径に合わせる場合と比較して、より広い範囲の排水口の口径に対応させることができ、しかも、前記各板ばね部材の上端部より先の部分を各移動位置で同じように撓ませて過不足ない圧接力を確保することができ、排水口の口径に関わらず良好な固定性能を発揮させることができる。
【0021】
(II)各板ばね部材の上端部の配置位置を排水口の口径に合わせることで前記各板ばね部材の上端部より先の部分を排水管内側に沿わせて圧接させることができるので、前記排水口の開口面積が前記各板ばね部材により殆ど狭められないようにして前記排水口の詰まりを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のドレンキャップの一実施例を示す断面図である。
【
図2】
図1のドレンキャップを排水口から抜き出した状態を示す断面図である。
【
図4】
図3のガイド機構の詳細を示す斜視図である。
【
図5】
図4の各板ばね部材のガイド部を引き出した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図6のドレンキャップを排水口に取り付ける様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0024】
図1~
図5は本発明のドレンキャップの一実施例を示すもので、
図1に本発明のドレンキャップを使用状態で示している通り、建築物の屋上やバルコニー等を構成するコンクリート躯体2の表面に防水シート6が被覆され、該防水シート6上に溜まる雨水を排出するための排水口4を上端部に開口した排水管3が前記コンクリート躯体2の鉛直方向に埋設されており、前記排水口4を覆う通水構造のキャップ本体12と、該キャップ本体12の下部内周の複数箇所から下方に張り出し且つ前記排水口4の内部に窄めて挿入されてから自身の弾性力により広がって前記排水口4直下の排水管3内側に圧接する板ばね部材13とを備えたドレンキャップ14となっているが、前記各板ばね部材13の上端部が前記キャップ本体12の軸心Oに近接する方向へ移動し得るようガイド機構15を介して前記キャップ本体12の下部内周に装備され且つ前記キャップ本体12の軸心Oから離間する方向へ向けコイルばね16(弾発体)により付勢されているところが特徴となっている。
【0025】
ここで、
図2に前記ドレンキャップ14を排水口4から抜き出した非使用状態で示している通り、前記キャップ本体12は、雨水を通すための複数の開口17を備えたドーム形を成しており、また、前記各板ばね部材13は、その上端部が前記キャップ本体12の軸心Oに近接する方向へ延びるガイド部13aを成し且つ該ガイド部13aより先の部分が下方に向かうに従い前記キャップ本体12の軸心Oから離間する方向へ開く圧接部13bを成している。
【0026】
更に、
図3に
図2のIII-III方向の矢視図を示す如く、キャップ本体12の下部内周の複数箇所から半径方向内側へ向けガイド機構15が突設され、該各ガイド機構15に前記各板ばね部材13のガイド部13aが摺動自在に嵌挿されていると共に、各ガイド機構15に前記ガイド部13aを付勢するコイルばね16が収容されている。
【0027】
より詳細に説明すると、
図4に示す如く、前記各ガイド機構15は、上下に二分割された二つのピース15a,15bから成る構造となっており、その分割されたピース15a,15bの相互間に前記各板ばね部材13のガイド部13aとコイルばね16とが挟み込まれて収容され且つ上側のピース15aのボス部18(
図1及び
図2参照)に対し下側のピース15bを通しビス19が下から螺着されて相互の組み付けが成されるようになっている。
【0028】
この際、前記各ガイド機構15の先端側には、前記各板ばね部材13のガイド部13aの両側を摺動自在に嵌入せしめるガイド溝20が形成され、該ガイド溝20により前記ガイド部13aの両側が円滑に案内されるようになっていて、
図5に示す如く、前記ガイド部13aをコイルばね16を引き伸ばしつつ引き出した際に、前記ガイド部13aのガタつきのない移動が実現されるようになっている。
【0029】
尚、前記コイルばね16は、前記各板ばね部材13のガイド部13aを前記キャップ本体12の軸心Oから離間する方向へ引き込む引っ張り形式のコイルばね16となっており、該コイルばね16の先端が前記ガイド部13aの掛止穴13cに掛止され且つ前記コイルばね16の基端が前記ボス部18に掛止されている。
【0030】
而して、このようにすれば、各板ばね部材13のガイド部13aを前記キャップ本体12の軸心Oに近接する方向へ移動させることにより、前記各板ばね部材13のガイド部13aの配置位置を排水口4の口径に合わせて調整することが可能となり、例えば、前記排水口4の口径が比較的大きければ、前記各板ばね部材13のガイド部13aを前記キャップ本体12の軸心Oから離間する方向へ引き離した状態で使用し、斯かる状態で前記各板ばね部材13の圧接部13bを窄めて前記排水口4の内部に挿入し、前記各板ばね部材13を自身の弾性力により広げて前記排水口4直下の排水管3内側に圧接させることで前記キャップ本体12が固定される。
【0031】
また、前記排水口4の口径が比較的小さければ、前記各板ばね部材13のガイド部13aをコイルばね16の付勢力に抗して前記キャップ本体12の軸心Oに近接する方向へ引き寄せた状態で使用し、斯かる状態で前記各板ばね部材13の圧接部13bを窄めて前記排水口4の内部に挿入し、前記各板ばね部材13を自身の弾性力により広げて前記排水口4直下の排水管3内側に圧接させることで前記キャップ本体12が固定される。
【0032】
この結果、従来の如き各板ばね部材11(
図6及び
図7参照)の撓み量だけで排水口4の口径に合わせる場合と比較して、より広い範囲の排水口4の口径に対応させることが可能となり、しかも、前記各板ばね部材13の圧接部13bを各移動位置で同じように撓ませて過不足ない圧接力を確保することが可能となる。
【0033】
更に、
図1に図示しているように、前記各板ばね部材13におけるガイド部13aと圧接部13bとの屈曲部分の位置を排水口4の口径に合わせることで前記圧接部13bを排水管3内側に沿わせて圧接させることが可能となり、前記排水口4の開口面積が前記各板ばね13により殆ど狭められなくて済むので、雨水に随伴される落ち葉等が引っ掛かる虞れが殆どなくなって排水口4の詰まりが起こり難くなる。
【0034】
従って、上記形態例によれば、各板ばね部材13のガイド部13aをキャップ本体12の軸心Oに近接する方向へ移動させることにより、前記各板ばね部材13のガイド部13aの配置位置を排水口4の口径に合わせて調整することができるので、従来の如き各板ばね部材13の撓み量だけで排水口4の口径に合わせる場合と比較して、より広い範囲の排水口4の口径に対応させることができ、しかも、前記各板ばね部材13の圧接部13bを各移動位置で同じように撓ませて過不足ない圧接力を確保することができ、排水口4の口径に関わらず良好な固定性能を発揮させることができる。
【0035】
更に、各板ばね部材13におけるガイド部13aと圧接部13bとの屈曲部分の位置を排水口4の口径に合わせることで前記各板ばね部材13の圧接部13bを排水管3内側に沿わせて圧接させることができるので、前記排水口4の開口面積が前記各板ばね部材13により殆ど狭められないようにして前記排水口4の詰まりを効果的に防止することもできる。
【0036】
尚、本発明のドレンキャップは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、弾発体として引っ張り形式のコイルばねを採用する以外に、圧縮形式のコイルばねを逆向きに用いても良く、更には、トーションばねやゼンマイばね等といった各種形式の弾発体を利用して、各板ばね部材の上端部をキャップ本体の軸心から離間する方向へ付勢し得るように構成することも可能であること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
3 排水管
4 排水口
12 キャップ本体
13 板ばね部材
13a ガイド部
13b 圧接部
14 ドレンキャップ
15 ガイド機構
16 コイルばね(弾発体)
O 軸心