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特許7249665液相GAPペプチド合成のための系及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】液相GAPペプチド合成のための系及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/53 20060101AFI20230324BHJP
   C07K 1/02 20060101ALI20230324BHJP
   C07K 1/06 20060101ALI20230324BHJP
   C07K 1/10 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
C07F9/53
C07K1/02
C07K1/06
C07K1/10
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020181298
(22)【出願日】2020-10-29
(62)【分割の表示】P 2018551910の分割
【原出願日】2016-12-21
(65)【公開番号】P2021038230
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】62/270,432
(32)【優先日】2015-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510048509
【氏名又は名称】テキサス テック ユニヴァーシティー システム
【氏名又は名称原語表記】TEXAS TECH UNIVERSITY SYSTEM
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】リ グイゲン
(72)【発明者】
【氏名】サイフェルト コール
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/117440(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/152603(WO,A1)
【文献】特開2011-178776(JP,A)
【文献】特許第6842471(JP,B2)
【文献】Organic & Biomolecular Chemistry,2014年,12,2895-2902
【文献】Advanced Synthesis & Catalysis,2009年,351,313-318
【文献】RN 1215304-35-0 REGISTRY,2010年04月01日
【文献】Liebigs Ann Chem,1973年,p.1494-1504
【文献】Chemische Berichte,1966年,Vol.99, No.2,p.504-513
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fmoc-tBuベースの液相ペプチド合成(SolPPS)を含み、下記保護基が以下から選択される、C末端保護のための保護基を使用するペプチド合成方法。
【化1】


(式中、Rは、H、Me、及びOMeからなる群から選択され;
Yは、O、S、及びNHからなる群から選択され;
Xは、O、S、及びNHからなる群から選択される)
【請求項2】
保護基:
【化2】
が、下記:
【化3】
によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
保護基:
【化4】
が、下記:
【化5】
(式中、Rは、H、Me、及びOMeからなる群から選択され;
Yは、S、及びNHからなる群から選択される)
によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
保護基:
【化6】
が、下記:
【化7】
(式中、Rは、H、Me、及びOMeからなる群から選択され;
Xは、O、S、及びNHからなる群から選択され;
Yは、O、S、及びNHからなる群から選択される)
によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
保護基:
【化8】
が、下記:
【化9】
(式中、Rは、H、Me及びOMeからなる群から選択される)
によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
保護基:
【化10】
が、下記:
【化11】
(式中、Rは、H、Me、及びOMeからなる群から選択され;
Xは、O、S、及びNHからなる群から選択される)
によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
下記から選択される保護基をアミノ酸に結合させる方法であって、
【化12】


(式中、Rは、H、Me、及びOMeからなる群から選択され;
Yは、O、S、及びNHからなる群から選択され;
Xは、O、S、及びNHからなる群から選択される)、
前記保護基をアミノ酸化合物:
【化13】
(式中、Pgは、Cbz、Fmoc、Boc、Bn、Fm、及びtBuからなる群から選択され;
Zは一般的な可変基である)
と反応させるステップを含む、前記方法。
【請求項8】
以下のステップ:
【化14】
(式中、BnDppOHは、第1の保護基であり;
Pgは、Cbz、Fmoc、Boc、Bn、Fm、及びtBuからなる群から選択され;
Zは一般的な可変基である)
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
保護基が、下記化合物である
【化15】
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
以下のステップ:
【化16】
(式中、BnDppYHは第1の保護基であり、
Pgは、Cbz、Fmoc、Boc、Bn、Fm、及びtBuからなる群から選択され;
Zは一般的な可変基である)
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
第1の保護基が、
【化17】


(式中、Rは、H、Me、及びOMeからなる群から選択され;
Xは、O、S、及びNHからなる群から選択される)
である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
以下のステップ:
【化18】

(式中、BnDppYHは第1の保護基であり;
Pgは、Cbz、Fmoc、Boc、Bn、Fm、及びtBuからなる群から選択され;
Zは一般的な可変基である)
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
以下のステップ、
【化19】
(式中、BzDppOHは第1の保護基であり;
Pgは、Cbz、Fmoc、Boc、Bn、Fm、及びtBuからなる群から選択され;
Zは一般的な可変基である)
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
保護基が、
【化20】


(式中、Rは、H、Me、及びOMeからなる群から選択され;
Xは、O、S、及びNHからなる群から選択される)
である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
基支援精製(GAP)ペプチド合成を実施する方法であって、
下記:
【化21】


(式中、Rは、H、Me、及びOMeからなる群から選択され;
Yは、O、S、及びNHからなる群から選択され;
Xは、O、S、及びNHからなる群から選択される)
から選択される保護基をアミノ酸に結合させるステップ;及び
続いて結果として得られる前記保護基が結合した前記アミノ酸にFmoc-tBuベースの液相ペプチド合成(SolPPS)カップリング反応を行うステップを含み、
前記カップリング反応が溶媒中で起こる、
前記方法。
【請求項16】
前記反応が酢酸エチルの中で起こる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記反応がジクロロメタンの中で起こる、請求項15記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、著作権保護の対象となる資料を含む。本著作権者は、何人かによる特許開示のファクシミリ複製に対しては、それが特許商標庁のファイル又は記録に表れる場合は意義を唱えるものではないが、それ以外の場合には、全ての著作権を留保する。
【0002】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2015年12月21日出願の「System And Method For SolutionPhase GAP Peptide Synthesis」と題する米国特許出願第62/270,432号の優先権を主張する。前述の特許出願は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は一般に、ペプチド合成の分野に関する。特に、この系は、クロマトグラフィー、再結晶化、又はポリマー支持体のない液相ペプチド合成を提供し、高い全体収率及び純度を可能とする。開示される系及び方法は、多種多様なシナリオをサポートし、様々な生成物及びサービスを含む。
【0004】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
なし。
【背景技術】
【0005】
最近の研究努力は、カラムクロマトグラフィー及び再結晶化を回避することに特に重点を置いて、精製化学の分野において著しい進歩をもたらした。この研究は、十分に官能基化した基を出発材料又は新たに生成された生成物に意図的に導入することにより、クロマトグラフィー及び/又は再結晶化などの従来の精製方法を回避する有機合成のための化学としての基支援精製(GAP、Group-Assisted Purification)化学/技術として定義さ
れてきた。こうした研究は、合成有機化学の全分野を網羅する可能性を秘めている。
【0006】
保護基が広範囲に使用される一分野が、固相法及び液相法の両方に係るペプチド合成である。固相ペプチド合成(SPPS、Solid-Phase Peptide Synthesis)は、1960年
代にMerrifieldによって開発され、研究及び製造のために多数の科学的専門分野で使用される標準的なプロトコルとなっている(図1A参照)。ポリマー支持体の長所は、各カップリング/脱保護ステップ後に成長するペプチドの精製を容易にするその能力にあり、それがカラムクロマトグラフィーの使用を回避させる。SPPSの主な欠点は、規模拡大が難しいことである。多くのポリマー支持体は高価であり、使用する材料の質量の大部分を占める。保護基は、多数の官能基が存在するほぼ全ての複雑な合成において見いだされる。効果的な保護基は、多種多様な条件に対して堅牢であることが必要であり、高収率で付加及び除去されなければならない。GAP化学にとって理想的な例は、半永久的保護基がGAPに求められる必要な溶解度特性を導入したものである。しかし、ほとんどの従来の保護基は無極性であり、従って、ほとんどの基質の場合に求められるGAP溶解度を生じさせない。適切な溶解度制御を生じさせる保護基を開発できれば、GAP化学は潜在的に、保護基の使用が求められる全ての合成に拡張される可能性がある。
【0007】
幾つかのアプローチが既に利用されている。公開された特許出願国際公開第2014093723A2号パンフレットは、GAPを備えるキラル補助剤でイミンを保護し、次いで、それらのキラルN-ホスホニルイミンを求電子試薬として不斉ホウ素付加反応に使用することを教示する。精製は、GAP法により行われている。この研究は、新規なペプチド標的に潜在的に組み込まれる可能性がある新規なアミノ酸誘導体を合成するために潜在
的に使用される可能性のある、キラルα-ボロン酸アミンへの容易なアクセスを提供するという点で価値がある。
【0008】
米国特許第8,383,770B2号明細書は、SPPSにおけるFmoc及びBocN-末端保護基の使用を教示する。この技術は業界で周知であり、広く適用されている。Boc基及びFmoc基は、ペプチド化学のあらゆる分野で数十年間使用されており、好適なFmoc基は、ほとんど全てが固相に限定されている。溶液中で経済的に実現可能なFmoc保護スキームの例は存在せず、文献にもほとんど例がない。
【0009】
米国特許第5,516,891A号明細書は、FmocベースのSolPPSの数少ない例の1つを提供する。ここでも、脱保護中に副生物として、ポリマー支持体なしに除去することが困難であるN-フルオレニルメチルピペリジン(NFMP、N-fluorenylmethylpiperidine)が形成されるため、Fmocペプチド合成は、ほとんど全てがSPPSに
限定されている。Fmoc脱保護のための標準的なプロトコルは、DMF又はDCM溶液中のFmocペプチドを過剰量のピペリジンと共に撹拌し、プロセス中にFmoc基を脱保護してNFMPを形成することである。’891号特許明細書は、ピペリジンの代わりに4-アミノメチルピペリジン(4AMP、4-aminomethylpiperidine)で脱保護するこ
とによるこの不純物の除去を教示する。これは、NFMPの代わりに、余分なアミノ基が存在するために水中に抽出することができるNFMP-CHNHを形成する。この方法の問題点は、4AMPを使用するコストが高いことである。Sigma Aldrich社によると
、4AMPは1グラム当たり$3.80かかるが、ピペリジンは1グラム当たり$0.12しかかからない。これが、この方法が非常に費用がかかる理由であり、業界で受け入れられなかった理由である。
【0010】
従って、本技術分野において、固相ペプチド合成の精製の利点を維持しながらこれらの限界を克服することができる、経済的に実現可能なGAPペプチド合成系を開発する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2014093723A2号パンフレット
【文献】米国特許第8,383,770B2号明細書
【文献】米国特許第5,516,891A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本開示は、ポリマー支持体の大量廃棄を伴わずに液相において起こるが、SPPSの精製の利点の全てを維持して両方法の長所を与える反応を従来の液相ペプチド合成(SolPPS、solution-phase peptide synthesis)及びSPPSの両方の代替法として利用した、ペプチド合成のための系及び方法を提供することにより、本技術分野における欠点に取り組む。GAP化学の長所を利用することにより、経済的に実現可能であり、ペプチドの商業生産にとって有用なFmoc-SolPPS戦略が提示される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本開示の目的は、C末端保護のための新規なGAPベンジル型保護基の開発により、GAPペプチド合成(GAP-PS、GAP peptide synthesis)を可能にすること
である(図1B参照)。C末端保護に関連して、GAP-PSは、その温和な脱保護プロトコルのためにSPPSにおいて最も使用される方法であるFmoc/tBu戦略を用いて達成し得る。この戦略は、ポリマー支持体なしに除去することが困難である脱保護中の副生物としてのN-フルオレニルメチルピペリジン(NFMP)の形成のために、現在ほ
とんど全てがSPPSに限定されている。従って、本開示の目的は、ペプチド合成の一般的方法の一例としての液相Fmoc/tBu戦略を利用することにより、1グラムを超える標的ペプチド、例えばチモペンチンを高収率かつ高純度で提供することである。この新規な保護基を用いた様々なアミノ酸の保護も、一定の定量的収率で達成されている。
【0014】
一態様において、ペプチド合成のための方法が提供される。方法は、液相ペプチド合成(SolPPS)を用いたFmoc/tBut戦略を使用して、高純度(99%)での高収率(50%超)を可能とする。本発明は、SolPPSと共に基支援精製(GAP)を利用し、再結晶化又はクロマトグラフィーの代わりに沈殿によってペプチドを精製できるようにする。開示される方法はさらに、固相ペプチド合成(SPPS)を回避することで、実際に形成される生成物の量を増加させる。
【0015】
本発明の別の目的は、C末端に化学的に結合する新規なC末端保護基(本明細書においては「BnDppOH」、「BnDppYH」、「BzDppOH」と呼ぶ)を提供することである。このGAP基の使用も、特異である。以前のGAP基がアミノ保護基として作用するのに対し、本発明は、カルボン酸のための保護基を開示する。カルボン酸を保護することにより、以前のGAP-PS法との決定的な違いである、ペプチド合成をNからCへの方向ではなく業界的に好適なCからNへの方向とすることが可能であり、さらに、ペプチド鎖を成長させるための一時的な保護基としてFmocを使用することが可能となる。Fmoc脱保護中、固体支持体なしで除去することが困難なNFMPが形成される。本発明は、GAPペプチドを選択的に沈殿させることで溶液中にNFMPを残す除去方法を提供する。
すなわち本発明は、以下に関する。
1.以下からなる群から選択される、基支援精製(GAP)ペプチド合成のための保護基:
【化1】

(式中:
Rは、H、Me、及びOMeからなる群から選択され;
Yは、O、S、及びNHからなる群から選択され;
Xは、O、S、及びNHからなる群から選択される)、
2. Fmoc-tBuベースの液相ペプチド合成(SolPPS)を含む、C末端保護のための保護基を形成する方法、
3.保護基:
【化2】

が、下記:
【化3】


によって生成される、上記2に記載の方法、
4.保護基:
【化4】

が、下記:
【化5】


(式中、Rは、H、Me、及びOMeからなる群から選択され;
Yは、S、及びNHからなる群から選択される)
によって生成される、上記2に記載の方法、
5.保護基:
【化6】

が、下記:
【化7】

(式中、Rは、H、Me、及びOMeからなる群から選択され;
Xは、O、S、及びNHからなる群から選択され;
Yは、O、S、及びNHからなる群から選択される)
によって生成される、上記2に記載の方法、
6.保護基:
【化8】

が、下記:
【化9】


(式中、Rは、H、Me及びOMeからなる群から選択される)
によって生成される、上記2に記載の方法、
7.保護基:
【化10】

が、下記:
【化11】




(式中、Rは、H、Me、及びOMeからなる群から選択され;
Xは、O、S、及びNHからなる群から選択される)
によって生成される、上記2に記載の方法、
8.上記1に記載の保護基を以下のアミノ酸化合物:
【化12】


と反応させることを含む、上記1に記載の保護基をアミノ酸に結合させる方法、
9.以下のステップ:
【化13】


(式中、BnDppOHは、上記1に記載の保護基であり;
Pgは、Cbz、Fmoc、Boc、Bn、Fm、及びtBuからなる群から選択され;
Zは、一般的な可変基である)
を含む、上記8に記載の方法、
10.保護基が、以下の化合物:
【化14】

である、上記9に記載の方法、
11.以下のステップ:
【化15】


(式中、BnDppYHは、上記1に記載の保護基であり;
Pgは、Cbz、Fmoc、Boc、Bn、Fm、及びtBuからなる群から選択され;
Zは、一般的な可変基である)
を含む、上記8に記載の方法、
12.保護基が、
【化16】

(式中、Rは、H、Me、及びOMeからなる群から選択され;
Xは、O、S、及びNHからなる群から選択される)
からなる群から選択される、上記11に記載の方法、
13.以下のステップ:
【化17】


(式中、BnDppYHは、上記1に記載の保護基であり;
Pgは、Cbz、Fmoc、Boc、Bn、Fm、及びtBuからなる群から選択され;
Zは、一般的な可変基である)
を含む、上記8に記載の方法、
14.以下のステップ:
【化18】


(式中、BzDppOHは、上記1に記載の保護基であり;
Pgは、Cbz、Fmoc、Boc、Bn、Fm、及びtBuからなる群から選択され;
Zは、一般的な可変基である)
を含む、上記8に記載の方法、
15.保護基が、
【化19】

(式中、Rは、H、Me、及びOMeからなる群から選択され;
Xは、O、S、及びNHからなる群から選択される)
を含む群から選択される、上記14に記載の方法、
16.基支援精製(GAP)ペプチド合成を実施する方法であって、上記1に記載の保護基をアミノ酸に結合させ、続いて結果として得られる前記保護基が結合した前記アミノ酸にFmoc-tBuベースの液相ペプチド合成(SolPPS)カップリング反応を行うステップを含む、前記方法、
17.反応が、酢酸エチルの中で起こる、上記16に記載の方法、
18.反応が、ジクロロメタンの中で起こる、上記16に記載の方法、
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示の前述の目的及び他の目的、特徴、並びに長所は、添付図面に図示される下記の実施形態の説明から明らかとなる。参照符号は、様々な図面を通じて同じ部分を指している。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、本開示の原理を例示することに重点を置いている。
図1A】固相ペプチド合成(SPPS)の先行技術の方法を図示する。
図1B】C末端保護のためのベンジル型保護基の使用を含む、本開示の方法を図示する。
図2図1Bで利用される保護基の開発のための方法を図示する。
図3図2の保護基の直交性及びGAP能力を試験するための概略を図示する。
図4A-4B】図2の保護基を様々なアミノ酸に結合させる方法の概略をそれぞれ図示する。
図5】本発明のペプチド合成の典型的非限定的例の例示を目的とする、図2の保護基を使用したチモペンチンの合成の概略を図示する。
図6】本発明の実施形態において使用可能な他の保護基を図示する。
図7】本発明の実施形態において利用される、図6の保護基の生成、合成及び製造のための代替的な方法を図示する。
図8】本発明の実施形態において利用される、図6の保護基の生成、合成及び製造のための別の代替的な方法を図示する。
図9A】「BnDppYH」の保護基を様々なアミノ酸に結合させる方法の概略を図示する。
図9B図9Aに示す方法の概略において利用される保護基「BnDppYH」を図示する。
図10A】「BnDppZH」の保護基を様々なアミノ酸に結合させる方法の概略を図示する。
図10B図10Aに示す方法の概略において利用される保護基「BzDppOH」を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の様々な実施形態の実施及び使用を以下に詳細に論ずるが、当然ながら、本開示は、多種多様な特定の状況、商品、又はサービスにおいて具体化できる多くの適用可能な本発明の概念を提供する。本明細書において論ずる特定の実施形態は、本開示を実施し使用する特定の方法の例示に過ぎず、本開示の範囲を定めるものではない。
【0018】
本明細書において言及する出版物及び特許出願は全て、本開示が関連する当業者の技術水準を示すものである。出版物及び特許出願は全て、個々の出版物又は特許出願のそれぞれが具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0019】
以下に本開示を、その一部を形成し、特定の例示的実施形態を実例として示す添付図面を参照してより詳細に説明する。しかし、主題は様々な異なる形態で具体化されてもよく、従って、包含され請求される主題は、本明細書に記載されるいかなる例示的実施形態にも限定されないと解釈されることを意図している。例示的実施形態は、単に説明のためだけに提供される。同様に、請求又は包含された主題に対する合理的に広い範囲が意図されている。とりわけ、例えば、主題は、方法、組成物、又は系として具体化してもよい。従って、実施形態は、例えば、方法、組成物、化合物、材料、又はそれらの任意の組合せの形態を取ることができる。従って、下記の詳細な説明は、限定的な意味で捉えられることを意図するものではない。
【0020】
明細書及び請求の範囲を通じて、用語は、明示的に述べられた意味を超えて、文脈において示唆又は暗示された微妙な意味を有することがある。同様に、「一実施形態において」という語句は、本明細書において使用された場合、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らず、「別の実施形態において」という語句は、本明細書において使用された場合、必ずしも異なる実施形態を指すとは限らない。例えば、請求される主題が、全体又は一部において例示的実施形態の組合せを含むことが意図される。
【0021】
一般に、用語は、少なくとも部分的には文脈における用法から理解され得る。例えば、「及び」、「又は」、又は「及び/又は」などの用語は、本明細書において使用された場合、そうした用語が使用される文脈に少なくとも部分的に依存し得る様々な意味を含み得る。典型的には、例えばA、B又はCのように、リストを関連づけるために使用した場合、「又は」は、排他的な意味で使用されるA、B、又はC、に加えて、包含的な意味で使用されるA、B、及びC、を意味することも意図している。加えて、「1又は2以上」という用語は、本明細書において使用した場合、文脈に少なくとも部分的に依存して、任意の特徴、構造、又は特性を単数形の意味で説明するために使用されてもよく、特徴、構造、又は特性の組合せを複数形の意味で説明するために使用されてもよい。同様に、「1つの(a)」、「1つの(an)」、又は「その(the)」などの用語は、ここでも、文脈に少なくとも部分的に依存して、単数形の用法を伝えるもの、又は複数形の用法を伝えるものと理解することができる。加えて、「に基づく」という用語は、要因の排他的な集合を伝えることを必ずしも意図するものではなく、ここでも、文脈に少なくとも部分的に依存して、必ずしも明示的に記載されていない追加の要因の存在を許容するものであってもよいと理解され得る。
【0022】
従って、本開示の実施形態は、新規なC末端保護基のための系及び方法を提供することである。新規な保護基の設計において、保護基のGAP官能基化セグメントが多種多様な条件に対して安定であることが必要なのは明らかであった。GAP化学に対して必要な溶解度特性を提供しなければならないことに配慮がなされた。また、保護基は、現在の保護戦略の反応性に対して効率的かつ直交的に作用しなければならない。そのため、GAP基
を導入しつつ望ましい反応性を維持するために、修飾されたベンジル保護基を利用した。選択したGAP基は、GAP化学を使用したホスフィンオキシド基で以前に成功していることが公知であることから、ジフェニルホスフィンオキシドである。また、この基のベンジル基のパラ位への結合は、広範な種々の条件に対して安定していることが文献で広く知られているトリフェニルホスフィンオキシド部分を創出する。この安定性は、基質が曝露され得る複数の脱保護条件との干渉を回避するために必要であり、それによって真の直交性が確立される。
【0023】
初期の努力は、キラルアミンの合成のためのキラルなN-ホスホニル及びN-ホスフィニルイミン化学の開発に焦点を当て、多くの成功を収めた。溶解度を制御することにより、キラルアミン生成物を粗混合物から選択的に沈殿させることができ、それによりクロマトグラフィー及び再結晶化を回避することができる。さらなる努力は、この技術を他の基質及び官能基へと拡張した。これを行うため、GAP特性がキラル補助剤から得られ、修正を伴って本開示のGAP保護基のための基礎を提示する。
【0024】
本開示の例示的実施形態において、この新規な保護基の合成は、市販のジフェニル(p-トリル)ホスフィン1(図2)から開始される。過マンガン酸カリウムで1を酸化すると、ホスフィン酸化によって安息香酸2及びGAP基が得られる。このGAP基がジフェニルホスフィンオキシド(Dpp、diphenylphosphine oxide)である。エステル化とそ
れに続くホウ化水素還元が、GAPを備えるベンジルアルコール4、又は「BndppOH」(或いは「HOBndpp」)を高収率で与える。次に、この新規な保護基の直交性とGAP能力を試験する。Boc-Phe-OHの保護は、カルボジイミドカップリング試薬としてEDCIを使用して容易かつ定量的であった(図3)。生成物5aを酢酸エチル/石油エーテル溶媒混合物から白色固体として選択的に沈殿させ、それによってGAP化学の要件を満たすことができる。Boc基の脱保護も定量的であり、Bndpp基の喪失をもたらさなかった。Bndpp基は、接触水素化を使用して容易に除去することができ、脱保護アミノ酸を洗い流した後、再利用のために「HBndpp」7aとして回収し再循環することもできる。7aを過マンガン酸塩酸化に付することが2を与え、これは、前述したようにHOBndpp4に変換することができる(図2)。
【0025】
図4A~4Bは、図2の保護基を様々なアミノ酸に結合させる方法の概略を図示する。種々の側鎖保護基を有する様々なBoc及びFmocアミノ酸の保護の定量的収率が一定であるアミノ酸の保護のための完全な基質の範囲を、以下の表1に示す。注目すべきは、トリプトファン、アルギニン、バリン、及びシステインの定量的保護である。
【0026】
【表1】

【0027】
一実施形態において、GAP化学/技術によるFmoc/tBu液相ペプチド合成のための方法が、カルボン酸のための新規なベンジル型GAP保護基の開発と共に提示される。この新規なGAP保護基は、ポリマー支持体の代わりに利用され、クロマトグラフィー又は再結晶化なしでCからNへのFmocペプチド合成を促進する。GAP保護基は、存在する他の保護基との直交関係を維持しながら高収率で付加及び除去することができる。GAPペプチド合成のためのこの新規な保護基の第1の試験として、1グラムを超えるペンタペプチド薬物チモペンチン(免疫賦活剤)が高全体収率(83%)及び高純度(99%)で合成された。
【0028】
本発明の一実施形態において、下記の化合物を含む、基支援精製(GAP)ペプチド合成のための以下の保護基が提示される:
【0029】
【化1】
【0030】
(式中、Rは、H、Me、又はOMeであり;Yは、O、S、又はNHであり;Xは、O、S、又はNHである)。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、Fmoc-tBuベースの液相ペプチド合成(SolPPS)を含む、C末端保護のための保護基を形成する方法を提供する。方法は、保護基:
【0032】
【化2】
【0033】
であって、下記:
【0034】
【化3】
【0035】
(式中、前記保護基は、(p-トリル)ジフェニルホスフィンを過マンガン酸カリウム(KMnO)と共に還流し、カルボン酸生成物を単離し、カルボン酸生成物を酸性エタノール(EtOH、H)中で還流し、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を添加することによって形成される)
によって生成される保護基を含む。
【0036】
別の実施形態において、本発明は、保護基:
【0037】
【化4】
【0038】
であって、下記:
【0039】
【化5】

【0040】
(式中、保護基は、ジブロミドをブチルリチウム(nBuLi)、ジフェニルクロロホスフィン(PhPCl)、二酸化炭素(CO)、及び過酸化水素(H、H)と単一反応で反応させてカルボン酸生成物を生成し、カルボン酸生成物を単離し、カルボン酸生成物を酸性エタノール(EtOH、H)中で還流し、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を添加してアルコール生成物を形成し、アルコール生成物をメシン酸無水物MsO又はYHで処理することによって生成する;式中、Rは、H、Me、又はOMeであり、Yは、S、又はNHである)
によって生成される保護基を生成する方法を提示する。
【0041】
別の実施形態において、保護基:
【0042】
【化6】
【0043】
が、下記:
【0044】
【化7】
【0045】
(式中、エチルエステル誘導体をジフェニルクロロホスフィン(PhPCl)と反応させ、続いて過酸化水素(H)と反応させて酸化する。結果として得られたホスフィンオキシドを水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)で処理してアルコールを生成し、それをメシン酸無水物(MsO)及びYHで処理して(1C)を形成する;式中、Rは、H、Me、又はOMeであり、Xは、O、S、又はNHであり;Yは、O、S、又はNHである)
によって生成される。
【0046】
別の実施形態において、保護基:
【0047】
【化8】
【0048】
が、下記:
【0049】
【化9】

【0050】
(式中、ジブロミドをブチルリチウム(nBuLi)、ジフェニルクロロホスフィン(PhPCl)、二酸化炭素(CO)、及び過酸化水素(H、H)とワンポット式に反応させてカルボン酸生成物(1D)を生成する;式中、Rは、H、Me、又はOMeである)
によって生成される。
【0051】
本発明の別の実施形態において、保護基:
【0052】
【化10】
【0053】
が、下記:
【0054】
【化11】
【0055】
(式中、エチルエステル誘導体をジフェニルクロロホスフィン(PhPCl)と反応させ、続いて酸化のために過酸化水素(H)と反応させる。結果として得られたホスフィンオキシドを水酸化リチウム(LiOH)と水(HO)で処理し、カルボン酸生成物(1E)を形成する;式中、Rは、H、Me、又はOMeであり;Xは、O、S、又はNHである)
によって生成される。
【0056】
別の実施形態において、本発明は、保護基1A、1B、1C、1D、又は1Eをアミノ酸に結合させる方法であって、請求項1に記載の保護基を以下のアミノ酸化合物と反応させることを含む方法を提供する。
【0057】
【化12】
【0058】
こうした方法は、以下のステップ:
【0059】
【化13】
【0060】
(式中、BnDppOHは保護基(1A、1B、1C、1D、又は1E)であり;式中、Pgは、Cbz、Fmoc、Boc、Bn、Fm、又はtBuを含んでもよいがこれらに限定されず;式中、Zは、一般的な可変基である)
を含んでもよい。
【0061】
別の実施形態において、本発明の方法は、以下の保護基を含む。
【0062】
【化14】
【0063】
方法は、以下のステップ:
【0064】
【化15】
【0065】
(式中、BnDppYHは保護基(1A、1B、1C、1D、又は1E)であり;式中、Pgは、Cbz、Fmoc、Boc、Bn、Fm、又はtBuを含んでもよいがこれらに限定されず;式中、Zは、一般的な可変基である)
をさらに含んでもよい。
【0066】
本発明の別の実施形態において、方法は、以下の保護基:
【0067】
【化16】
【0068】
(式中、Rは、H、Me、又はOMeであり;式中、Xは、O、S、又はNHである)
を含む。
【0069】
別の実施形態において、方法は、以下のステップ:
【0070】
【化17】
【0071】
(式中、BnDppYHは、保護基1A、1B、1C、1D、又は1Eであり;Pgは、Cbz、Fmoc、Boc、Bn、Fm、又はtBuを含んでもよいがこれらに限定されず;式中、Zは、一般的な可変基である)
を含む。
【0072】
別の実施形態において、本発明の方法は、以下のステップ:
【0073】
【化18】
【0074】
(式中、BzDppOHは、保護基1A、1B、1C、1D、又は1Eであり;Pgは、Cbz、Fmoc、Boc、Bn、Fm、又はtBuを含んでもよいがこれらに限定されず;Zは、一般的な可変基である)
を含む。
【0075】
別の実施形態において、方法は、以下の保護基を含む:
【0076】
【化19】
【0077】
(式中、Rは、H、Me、又はOMeからなる群から選択され;式中、Xは、O、S、又はNHからなる群から選択される)。
【0078】
本発明の別の実施形態において、基支援精製(GAP)ペプチド合成を実施する方法が提供され、方法は、本明細書に記載のいずれかの方法を使用して保護基1A、1B、1C、1D、又は1Eをアミノ酸に結合するステップ、及び、次いで、結果として得られる生成物に本明細書に記載の方法でFmoc-tBuベースの液相ペプチド合成(SolPPS)カップリング反応を行うステップを含む。こうしたGAP-PSの方法は、酢酸エチル、或いは、ジクロロメタンの中で反応が起こることをさらに含んでもよい。
【0079】
本明細書において論じた原理は、多くの異なる形態で具体化してもよい。本開示の好適な実施形態を記載するが、完全性のためには少なくとも図面を参照すべきである。
【実施例1】
【0080】
新規な保護基の最初の適用のため、Fmoc/tBu SolPPS戦略を扱う際の能力が試験される。この非限定的例のための所望の標的ペプチドは、免疫調節ポリペプチド、チモポイエチンの薬理学的に興味深い、生物学的に活性のあるペンタペプチドサブユニットであるチモペンチンである。短ペプチドの場合、チモペンチンは、様々な官能基(1つの芳香族、2つの塩基性(グアニジンを持つものが1つ)、2つの酸性、及び1つのβ分岐)を持つアミノ酸を含有する。これが、チモペンチンを、GAP保護基の例示的な使用及び幾つかの側鎖保護基の除去に耐えるその能力のための理想的な候補とする。チモペンチンの合成を図5に示す。化合物5kをまず、DCM中の30%ピペリジンで10分間処理してFmoc基を除去し、続いて塩化アンモニウムで洗浄して過剰なピペリジンを除去する。DCM層(乾燥後)には、次のFmocアミノ酸(記載した側鎖保護)が、TBTUカップリング試薬及びDIPEAと共に、直接充填される。20分間カップリングした後、反応混合物を塩化アンモニウムと0.5M水酸化物ナトリウムで(それぞれ)洗浄し、乾燥させ、真空排気した。カップリング後の粗生成物は、数種の不純物を含有し、中でも注目すべきは、NFMP及びテトラメチル尿素(カップリングに由来)である。GAP精製手順は、混合物を最小量の酢酸エチルに溶解させ、続いて石油エーテルでGAPペプチドを選択的に沈殿させるだけでこれらの不純物を容易に除去することができる。テトラペプチド及びペンタペプチド断片については、沈殿前に少量のDCMを酢酸エチルに添加して溶解性を補助する。最後のカップリングステップ及び9kの合成に続き、最後のFmoc基を前述同様除去するが、操作後、DCM層を濃縮し、側鎖脱保護のためにペプチドをTFA/DCM/HO(6/3/1)溶液に溶解させる。ペンタペプチド10k(この時点でBndppを唯一の保護基として持つ)を、ジエチルエーテルを使用して沈殿させる。次いで、このペプチドを水素化に付し、GAP基を除去する。生成物を、クロロホルムから10%酢酸(水溶液)で抽出することにより単離する。生成物を、クロロホルムから10%酢酸(水溶液)で抽出することにより単離する。予期外であるが、生成物ペプチドのHPLC分析は、カラムクロマトグラフィー、再結晶化、又はポリマー支持体なしで化合物がほぼ99%純粋であることを明らかにする。GAP基は、抽出後にクロロホルム層を真空排気するだけで回収することができる。この原料に図2の合成方法を施すと、BndppOHを再生することができる。
【0081】
一般的方法:溶媒は全てACSグレードであり、さらなる精製を加えずに使用した。HRMS分析は、Orbitrap質量分析器を使用して実施した。HPLC分析は、UV検出器を備えたPerkin Elmer社製Flexarアイソクラティックポンプを使用して行った。Fmoc及びBoc保護アミノ酸は、BachemBio社から購入し、カップリングに直接使用した。
【0082】
安息香酸2の合成:10.0gの1を500mL丸底フラスコに入れ、続いて130mLの0.43MのNaOH(水)溶液、次いで22.2gのKMnOを入れた。反応物を還流下で12時間撹拌し、その後反応混合物を高温のうちにセライトを通してろ過した。結果として得られた溶液をジエチルエーテルで2回洗浄し、続いて50%HSOを添加して生成物を沈殿させた。ろ過後、安息香酸2を白色固体として回収した;収量10.8g、93%;この生成物を直接次の反応に付した。
【0083】
エステル3の合成:10.8gの2を、300mLのエタノールと3mL塩化チオニルと共に500mL丸底フラスコに入れた。反応物を12時間還流し撹拌した。完了後、反応物を室温に冷却し、揮発性物質を真空排気し、エステル3を白色固体として得た;収量11.8g、99%;この生成物を直接次の反応に付した。
【0084】
BndppOH4の合成:11.8gのエステル3を、300mLのエタノールと共に500mL丸底フラスコに入れた。反応物を0℃に冷却し、その後、3.82gのNaBHを少しずつ添加した。反応物を室温にし、12時間撹拌した。溶媒を真空排気し、続いて、DCMに粗生成物を溶解し、2MのHCl(水溶液)で3回洗浄した。次いで、有機層をMgSO上で乾燥させ、ろ過し、真空排気してBndppOH4を白色固体として得た;収量9.96g、96%;この化合物は以前に異なる方法で合成されており、NMRデータは、文献に見られるものと一致する30H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.62~7.57(m,4H)、7.54~7.47(m,4H)、7.45~7.40(m,4H)、7.38~7.36(m,2H)、4.70(s,2H)。
【0085】
Bndpp保護のための一般手順:100mgのBndppOH、2.0当量のPG-AA-OH、及び10mLのDCMを、20mLスクリューキャップバイアル中0℃で撹拌した。124mg(2.0当量)のEDCI(HCl)を添加し、反応物を10分間撹拌し、その時点で4mg(10モル%)のDMAPを添加し、反応物を室温にして2時間撹拌した。反応混合物を飽和NHCl(水溶液)で2回、続いて飽和NaCO(水溶液)で2回洗浄した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、ろ過し、真空排気して粗保護アミノ酸を得た。粗混合物を最小量の酢酸エチルに溶解させ、続いて石油エーテルで沈殿させ、結果として得られた白色沈殿物をろ過することにより、GAP精製を実施した。この同じ手順を、600mgのBndppOHと上記と同じ当量の他の試薬を使用してより大規模に反応を行った5kを除く全ての基質に使用した。
【0086】
化合物凡例
化合物5a。白色固体;収量180mg、99%;融点62~63℃;H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.69~7.63(m,6H)、7.58~7.52(m,2H)、7.49~7.45(m,4H)、7.35~7.32(m,2H)、7.24~7.18(m,3H)、7.07~7.05(d,J=6.4Hz,2H)、5.20~5.12(m,2H)、4.96~4.95(d,J=7.8Hz,1H)、4.68~4.58(m,1H)、3.09~3.07(d,J=5.9Hz,2H)、1.40(s,9H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ=171.9、155.2、139.3、135.9、133.0、132.6、132.5、132.2、132.1、132.0、129.4、128.8、128.6、128.2、128.1、127.2、80.2、66.3、54.6、38.5、28.4;31P NMR(162MHz,CDCl)δ=29.28;HRMS(ESI):m/z[C3334NOP+H]の計算値:556.2253、実測値:556.2235。
【0087】
化合物5b。白色固体;収量189mg、99%;融点76~77℃;H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.69~7.64(m,6H)、7.58~7.54(m,2H)、7.49~7.44(m,6H)、6.65(bs,1H)、5.52~5.50(d,J=5.9Hz,1H)、5.27~5.19(m,2H)、4.54(bs,1H)、4.38~4.32(m,2H)、3.09~2.91(m,2H)、2.06~2.00(m,1H)、1.98(s,3H)、1.43(s,9H);13
NMR(100MHz,CDCl)δ=170.9、170.4、139.3、133.5、132.8、132.6、132.5、132.4、132.2、132.1、131.8、128.7、128.2、80.7、66.7、54.2、42.2、34.5、28.4、23.3、22.5、14.2;31P NMR(162MHz,CDCl)δ=29.46;HRMS(ESI):m/z[C3035PS+H]の計算値:583.2032、実測値:583.2012。
【0088】
化合物5c。白色固体;収量246mg、99%;融点86~87℃;H NMR(
400MHz,CDCl)δ=7.76~7.74(d,J=7.5Hz,2H)、7.69~7.63(m,6H)、7.60~7.52(m,4H)、7.47~7.42(m,6H)、7.40~7.36(t,J=7.4Hz,2H)、7.31~7.27(t,J=7.4Hz,2H)、5.48~5.46(d,J=7.3Hz,1H)、5.22(s,2H)、4.65~4.57(bs,1H)、4.43~4.34(m,3H)、4.22~4.19(t,J=6.9Hz,1H)、3.10~3.02(m,2H)、1.88~1.84(m,1H)、1.72~1.68(m,1H)、1.42(s,9H)、1.38~1.24(m,4H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ=172.4、156.2、143.9、141.4、139.5、132.9、132.6、132.2、131.8、128.7、128.0、127.8、127.2、125.2、120.1、79.3、67.2、66.4、54.0、47.3、40.0、32.1、29.8、28.5、22.5;31P NMR(162MHz,CDCl)δ=29.37;HRMS(ESI):m/z[C4547P+H]の計算値:759.3199、実測値:759.3183。
【0089】
化合物5d。白色固体;収量227mg、99%;融点85~86℃;H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.76~7.74(d,J=7.5Hz,2H)、7.66~7.52(m,10H)、7.46~7.36(m,8H)、7.29~7.26(t,J=7.2Hz,2H)、5.86~5.84(d,J=8.6Hz,1H)、5.29~5.20(dd,J= 12.8Hz,12.4Hz,2H)、4.69~4.66(m,1H)、4.44~4.31(m,2H)、4.24~4.21(t,J=7.0Hz,1H)、3.01~2.95(dd,J=4.3Hz,17.0Hz,1H)、2.81~2.76(dd,J=4.2Hz,17.0Hz,1H)、1.39(s,9H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ=170.9、170.2、156.1、143.9、143.8、141.4、139.5、132.7、132.6、132.5、132.2、132.1、131.7、128.7、128.6、128.0、127.9、127.2、125.2、120.1、82.1、67.4、66.7、50.7、47.2、37.8、28.1;31P NMR(162MHz,CDCl)δ=29.75;HRMS(ESI):m/z[C4240NOP+H]の計算値:702.2621、実測値:702.2602。
【0090】
化合物5e。白色固体;収量257mg、97%;融点98~99℃;H NMR(400MHz,CDCl)δ=8.10~8.08(d,J=7.7Hz,1H)、7.76~7.74(d,J=7.5Hz,2H)、7.68~7.61(m,6H)、7.56~7.36(m,14H)、7.31~7.25(m,3H)、7.21~7.18(t,J=7.5Hz,1H)、5.48~5.46(d,J=8.2Hz,1H)、5.21~5.06(dd,J=12.9,47.8Hz,2H)、4.84~4.79(m,1H)、4.41~4.34(m,2H)、4.22~4.18(t,J=7.0Hz,1H)、3.28~3.27(d,J=5.7Hz,2H)、1.63(s,9H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ=171.6、155.8、149.6、143.9、143.8、141.4、139.1、135.5、132.9、132.6、132.5、132.2、132.1、131.8、130.4、128.7、128.6、127.8、127.2、125.2、124.8、124.3、122.8、120.1、118.9、115.5、114.8、84.0、67.4、66.6、54.3、47.2、28.2;31P NMR(162MHz,CDCl)δ=29.32;HRMS(ESI):m/z[C5045P+H]の計算値:817.3043、実測値:817.3031。
【0091】
化合物5f。白色固体;収量304mg、99%;融点117~118℃;H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.75~7.73(d,J=7.5Hz,2H)
、7.69~7.63(m,4H)、7.60~7.55(m,4H)、7.53~7.46(m,8H)、7.39~7.35(t,J=7.4Hz,2H)、7.29~7.27(d,J=7.4Hz,2H)、6.61(bs,2H)、5.88(bs,1H)、5.50~5.35(dd,J=9.7Hz,J=52.8Hz,2H)、5.03~5.00(d,J=11.8Hz,1H)、4.36~4.34(m,3H)、4.20~4.16(t,J=7.0Hz,1H)、3.25~3.15(m,2H)、2.90(s,2H)、2.78~2.67(m,2H)、2.58(s,3H)、2.51(s,3H)、2.06(s,3H)、1.68~1.57(m,2H)、1.42(s,6H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ=172.0、158.6、156.6、156.2、143.8、141.3、140.0、138.3、133.3、132.5、132.4、132.2、132.0、131.9、131.8、130.8、128.9、128.8、127.8、127.2、125.2、124.6、121.1、120.0、119.8、117.4、86.4、68.0、67.2、66.2、53.5、47.1、43.3、40.5、29.6、28.6、25.2、19.4、18.1、12.6;31P NMR(162MHz,CDCl)δ=31.03;HRMS(ESI):m/z[C5355PS+H]の計算値:939.3556、実測値:939.3538。
【0092】
化合物5g。白色固体;収量204mg、99%;融点81~82℃;H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.77~7.75(d,J=7.2Hz,2H)、7.70~7.53(m,10H)、7.48~7.44(m,6H)、7.41~7.37(t,J=7.2Hz,2H)、7.32~7.28(t,J=7.2Hz,2H)、5.36~5.34(d,J=8.8Hz,1H)、5.22(s,2H)、4.44~4.32(m,3H)、4.24~4.21(t,J=6.8Hz,1H)、2.26~2.17(m,1H)、0.97~0.95(d,J=6.8Hz,3H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ=172.0、156.3、143.9、143.8、141.4、139.4、132.6、132.5、132.2、132.1、128.7、128.6、128.1、128.0、127.8、127.1、125.1、120.1、67.1、66.2、59.1、47.2、31.3、19.1、17.6;31P NMR(162MHz,CDCl)δ=29.45;HRMS(ESI):m/z[C3936NOP+H]の計算値:630.2409、実測値:630.2392。
【0093】
化合物5h。白色固体;収量287mg、99%;融点121~122℃;H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.76~7.71(t,J=6.4Hz,2H)、7.65~7.51(m,12H)、7.46~7.40(m,4H)、7.38~7.31(m,4H)、7.24~7.20(m,9H)、7.15~7.13(m,6H)、6.75(s,1H)、6.13~6.11(d,J=8.8Hz,1H)、5.21~5.11(q,J=12.8Hz,2H)、4.69~4.65(m,1H)、4.43~4.38(m,1H)、4.30~4.26(t,J=8.9Hz,1H)、4.20~4.16(t,J=7.1Hz,1H)、3.18~3.13(dd,J=4.2Hz,J=15.8Hz,1H)、2.87~2.82(dd,J=4.2Hz,J=15.8Hz,1H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ=171.0、169.4、156.4、144.3、144.0、143.8、141.4、139.6、132.6、132.5、132.2、132.0、128.7、128.6、128.2、127.9、127.6、127.5、127.4、127.2、125.3、120.1、71.1、67.4、66.6、51.2、47.2、38.8;31P NMR(162MHz,CDCl)δ=29.38;HRMS(ESI):m/z[C5747P+H]の計算値:887.3250、実測値:887.3230。
【0094】
化合物5i。白色固体;収量195mg、99%;融点78~79℃;H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.76~7.75(d,J=7.6Hz,2H)、7.70~7.63(m,6H)、7.59~7.53(m,4H)、7.48~7.37(m,8H)、7.31~7.28(t,J=7.6Hz,2H)、5.37~5.35(d,J=7.6Hz,1H)、5.23(s,2H)、4.49~4.38(m,3H)、4.23~4.19(t,J=7.2Hz,1H)、1.46~1.44(d,J=7.2Hz,3H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ=172.9、155.8、144.0、143.8、141.4、139.5、132.9、132.6、132.5、132.2、132.1、131.9、128.7、128.6、127.9 127.8、127.2、125.2、120.1、67.2、66.4、53.6、49.8、47.3、31.7、22.8、18.7、14.3;31P NMR(162MHz,CDCl)δ=29.28;HRMS(ESI):m/z[C3732NOP+H]の計算値:602.2096、実測値:602.2080。
【0095】
化合物5j。白色固体;収量189mg、99%;融点79~80℃;H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.76~7.75(d,J=7.5Hz,2H)、7.70~7.63(m,6H)、7.60~7.53(m,4H)、7.48~7.42(m,6H)、7.41~7.37(t,J=7.5Hz,2H)、7.31~7.27(t,J=7.4Hz,2H)、5.42~5.37(m,1H)、5.23(s,2H)、4.41~4.39(d,J=7.1Hz,2H)、4.24~4.21(t,J=7.0Hz,1H)、4.06~4.05(d,J=5.6Hz,2H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ=169.9、156.4、143.9、141.4、139.3、132.9、132.6、132.2、132.1、131.8、128.7、128.6、128.1、128.0、127.9、127.2、125.2、120.1、67.4、66.4、47.2、42.9;31P NMR(162MHz,CDCl)δ=29.33;HRMS(ESI):m/z[C3630NOP+H]の計算値:588.1940、実測値:588.1925。
【0096】
化合物5k。白色固体;yield、99%;融点99~100℃;H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.77~7.75(d,J=7.6Hz,2H)、7.69~7.64(m,6H)、7.56~7.53(t,J=7.4Hz,4H)、7.48~7.44(m,4H)、7.41~7.36(m,4H)、7.31~7.27(t,J=7.4Hz,2H)、6.95~6.93(d,J=8.4Hz,2H)、6.87~6.85(d,J=8.4Hz,2H)、5.28~5.26(d,J=7.9Hz,1H)、5.22~5.13(q,J=8.5Hz,2H)、4.70~4.68(m,1H)、4.44~4.32(m,2H)、4.21~4.18(t,J=6.9Hz,1H)、3.09~3.06(m,2H)、1.30(s,9H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ=171.5、155.7、154.7、143.9、143.8、141.4、139.2、132.9、132.6、132.5、132.2、132.1、129.9、128.8、128.6、128.2、128.0、127.9、127.2、125.2、124.3、120.1、78.6、67.1、66.5、55.0、47.3、37.8、28.9;31P NMR(162MHz,CDCl)δ=29.29;HRMS(ESI):m/z[C4744NOP+H]の計算値:750.2984、実測値:750.2966。
【0097】
化合物6aの合成:Boc-Phe-OBndpp5a(80mg)を5mL(60%)のTFA/DCMに溶解させ、室温で撹拌した。1時間後、溶媒混合物を真空排気し、粗生成物をDCMに溶解させた。1MのHCl(水溶液)で2回洗浄した後、有機層をMgSOで乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗6aHCl塩を得た。粗生成物を最小量の酢酸
エチルに溶解させ、続いて石油エーテルで沈殿させることによりGAP精製を行った。精製した生成物をろ過により白色固体として単離した;収量71mg、99%;融点68~71℃(分解);H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.57~7.40(m,12H)、7.10~7.04(m,7H)、4.99~4.96(d,J=10.4Hz,2H)、4.41(bs,1H)、3.43(bs,1H)、3.25(bs,1H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ=169.1、138.6、134.3、132.5、132.3、132.2、132.1、132.0、131.5、129.6、128.8、128.7、128.6、128.3、128.2、127.5、67.0、54.6、36.6;31P NMR(162MHz,CDCl)δ=29.79;HRMS(ESI):m/z[C2826NOP+H]の計算値:456.1729、実測値:456.1725。
【0098】
HBndpp7aの合成:Boc-Phe-OBndpp5a(100mg)をメタノールと10%Pd/C(20mg)の5mL混合物に溶解させた。反応混合物をH雰囲気(バルーン)下に置き、室温で12時間撹拌した。次いで、反応混合物をセライトを通してろ過し、メタノールを真空排気した。粗固形物をDCMに溶解させ、飽和NaCO(水)溶液で2回洗浄した。有機層をMgSO上で乾燥させ、ろ過し、真空排気してHBndpp7aを白色固体として得た;収量51mg、97%;この化合物は以前に異なる方法で合成されており、NMRデータは、文献に見られるものと一致する30
NMR(400MHz,CDCl)δ=7.68~7.63(m,4H)、7.57~7.52(m,4H)、7.48~7.44(m,4H)、7.29~7.26(m,2H)、2.41(s,3H)。
【0099】
Fmoc脱保護及びカップリングのための一般手順:Fmoc-(AA)n-OBnDppを30%ピペリジン/DCM(1グラム当たり100mL)に溶解させ、室温で10分間撹拌した。反応混合物を飽和NHCl(水溶液)で3回洗浄し、MgSO上で乾燥させ、ろ過した。結果として得られたDCM溶液に、1.2当量のTBTU、1.2当量のFmoc-AA-OH、及び2.4当量のDIPEAを添加し;カップリング反応物を20分間撹拌した。次いで、反応混合物を飽和NHCl(水溶液)で2回、続いて0.5MのNaOHで2回洗浄した。合わせた有機層をMgSO上で乾燥させ、ろ過し、真空排気して粗ペプチドを得た。粗混合物(Fmoc-(AA)n+1-OBndpp、NFMP、及びテトラメチル尿素を含有)を最小量の酢酸エチル(より長いペプチドについては幾らかのDCMを用いて)に溶解させ、続いて生成物を石油エーテルで沈殿させることにより、GAP精製を実施した。生成物ペプチドを真空ろ過により白色固体として定量的収率で取り出した。
【0100】
化合物9k、Fmoc-Arg(Pbf)-Lys(Boc)-Asp(tBu)-Val-Tyr(tBu)-OBndpp。白色固体;収量3.08g、97%(6kから3ステップにわたり);融点124~125℃;溶離剤としてのIPA中0.1%エタノールアミンを用いた分析的NP-HPLCでの保持時間:8.85分、純度92.0%;HRMS(ESI):[C9011417PS+H]についてのm/z計算値:1657.7903、実測値:1657.7871。
【0101】
側鎖保護基の脱保護:Fmoc-Arg(Pbf)-Lys(Boc)-Asp(tBu)-Val-Tyr(tBu)-OBnDpp9kを100mLの30%ピペリジン/DCMに溶解させ、室温で10分間撹拌した。次いで、反応混合物を飽和NHCl(水溶液)で2回洗浄し、MgSO上で乾燥させ、ろ過し、真空排気した。次いで、粗生成物をTFA/DCM/HO(6/3/1)に溶解させ、室温で1時間撹拌した。反応混合物を真空排気して飽和させ、次いで、生成物ペプチドをジエチルエーテルで沈殿させた。ろ過後、ペプチド10kを白色固体として得、次のステップに直接使用した。
【0102】
BnDppの脱保護:水素化ボトル中の100mgの乾燥Pd/Cに、150mLのメタノール中のH-RKDVY-OBnDpp10kを添加した。ボトルを70PSIのH雰囲気に置き、室温で24時間振とうした。反応混合物をセライトを通してろ過し、真空排気して乾燥させた。粗生成物を10%酢酸(水溶液)とクロロホルムの混合物に溶解させ、その後水層をクロロホルムで2回洗浄した。水層を真空排気してチモペンチンを白色固体として得た;収量1.09g、87%;溶離剤としての0.06%TFA/HO中50%MeCNを用いた分析的RP-HPLCでの保持時間:1.24分、純度98.9%;HRMS(ESI):[C3049+H]についてのm/z計算値:680.3731、実測値:680.3730。喜ばしいことに、生成物ペプチドのHPLC分析は、カラムクロマトグラフィー、再結晶化、又はポリマー支持体なしで化合物がほぼ99%純粋であることを明らかにする。GAP基は、抽出後にクロロホルム層を真空排気するだけで回収することができる。この原料に図2の合成方法を施すと、BndppOHを再生することができる。
【0103】
さらなるGAP基及び結合方法
図6は、本発明の実施形態において使用可能な代表的な保護基を図示する。図7~8は、BndppOHの開発に使用可能な代替的な方法(図2に示す方法の代替法)、及び図6に示すような他の代表的保護基の開発に使用可能な代替的な方法を図示する。
【0104】
図4A~4Bはそれぞれ、図2の保護基を様々なアミノ酸に結合させる方法の概略を図示する。保護基を結合させる他の方法を図9A~9B及び10A~10Bに示す。図9Aは、「BnDppYH」の保護基を様々なアミノ酸に結合させる方法の概略を図示する。図9Bは、図9Aに示す方法の概略において利用される保護基「BnDppYH」を図示する。図10Aは、「BzDppOH」の保護基を様々なアミノ酸に結合させる方法の概略を図示する。図10Bは、図10Aに示す方法の概略において利用される保護基「BzDppOH」を図示する。
【0105】
これらの追加の保護基は、本発明の実施形態に整合する「BnDppOH」と同じ方式でペプチド合成に使用することができる。これらの追加の保護基の場合のペプチドカップリング反応は、酢酸エチル及びジクロロメタン中で行うことができる。
【0106】
当業者は認識することであるが、本開示の方法及び系は、多くの方法で実施してもよく、そのようなものは、前述の例示的な実施形態及び実施例によって限定されるものではない。換言すれば、ハードウェア及びソフトウェア又はファームウェアと個々の機能との様々な組合せにおいて単一又は複数のコンポーネントによって実施される機能要素は、クライアントレベル若しくはサーバレベルのいずれか、又はその両方において様々なソフトウェアアプリケーションに分散されてもよい。この点に関し、本明細書に記載された異なる実施形態の任意の数の特徴は、単一又は複数の実施形態に統合されてもよく、本明細書に記載された全ての特徴より少ない特徴又は多くの特徴を有する代替の実施形態が可能である。
【0107】
機能性はさらに、全体又は一部において、現在知られているか、今後知られるようになる様式で多数のコンポーネントに分散されてもよい。従って、本明細書に記載の機能、特徴、及び選択を達成する際に無数の組合せが可能である。さらに、本開示の範囲は、現在及び今後当業者が理解するように、記載された特徴及び本明細書に記載の方法、組成物、又は化合物になされ得る変形及び修正を行うための従来公知の様式を包含する。
【0108】
さらには、本開示においてダイアグラム、概略図又はフローチャート(例えば図など)として提示及び説明される方法の実施形態は、その技術のより完全な理解を与えるために
例として提供される。開示された方法は、本明細書に提示される操作及び論理の流れに限定されない。様々操作の順序が変更され、より大きな操作の一部として記載された下位操作が独立して実施される代替の実施形態が企図される。
【0109】
本開示の目的のために様々な実施形態を記載したが、そのような実施形態は、本開示の教示をそれらの実施形態に限定するものとみなすべきではない。本開示に記載された系及び方法の範囲内にとどまる結果を得るために、上記の要素及び操作に対して様々な変更及び修正を行うことができる。
【0110】
(関連する参考文献)
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図1A
図1B
図2
図3
図4A-4B】
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B