(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】微小血管閉塞(MVO)及び心筋梗塞の冠動脈内解析
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20230324BHJP
A61B 5/0215 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
A61B5/02 A
A61B5/0215 B
(21)【出願番号】P 2020537457
(86)(22)【出願日】2018-09-19
(86)【国際出願番号】 US2018051760
(87)【国際公開番号】W WO2019060421
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-21
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520094835
【氏名又は名称】コルフロー セラピューティクス アーゲー
【氏名又は名称原語表記】CORFLOW THERAPEUTICS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ホーエム、ヨーン ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ、ロバート エス.
(72)【発明者】
【氏名】ロスマン、マーティン ティ.
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0189654(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0168649(US,A1)
【文献】特表2013-534845(JP,A)
【文献】特表2016-507272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A61M 25/00-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器及び該臓器に血液を供給する血管を有している身体においてカテーテルを用いて微小血管閉塞(MVO)を
含む微小血管機能不全性疾患を評価するためのシステムであって、該システムは、
コンピュータ化された診断及び注入システムを備え、該コンピュータ化された診断及び注入システムは、複数の注入液を注入するようにカテーテルに結合されるように構成されるとともに、
時間の関数として第1の圧力応答を判定するために、少なくとも注入液が
第1の注入液流量でカテーテルを介して血管に注入された後に、前記カテーテルを使用して感知された血圧の
第1の計測を実施し、
時間の関数として第2の圧力応答を判定するために、少なくとも注入液が第2の注入液流量でカテーテルを介して血管に注入された後に、前記カテーテルを使用して感知された血圧の第2の計測を実施し、
時間の関数として第3の圧力応答を判定するために、少なくとも注入液が第3の注入液流量でカテーテルを介して血管に注入された後に、前記カテーテルを使用して感知された血圧の第3の計測を実施し、
前記第1の圧力応答を前記第1の注入液流量で割ることにより、第1の微小血管抵
抗の計算を実施し、
前記第2の圧力応答を前記第2の注入液流量で割ることにより、第2の微小血管抵抗の計算を実施し、
前記第3の圧力応答を前記第3の注入液流量で割ることにより、第3の微小血管抵抗の計算を実施し、かつ、
前記第1の微小血管抵抗の計算と、前記第2の微小血管抵抗の計算と、前記第3の微小血管抵抗の計算とに基づいて、
微小血管抵抗のレベルの変化を判定する
ように構成される、システム。
【請求項2】
前記コンピュータ化された診断及び注入システムは、
前記第1の計測と、前記第2の計測と、前記第3の計測
とを実施して
微小血管抵抗のレベルの変化をリアルタイムで判定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コンピュータ化された診断及び注入システムは、ウォーターフォール圧を判定し、
かつウォーターフォール圧について
第1の微小血管抵抗
の計算、第2の微小血管抵抗の計算、又は第3の微小血管抵抗の計算を補正するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第3の注入液流量は前記第2の注入液流量よりも多く、前記第2の注入液流量は前記第1の注入液流量よりも多い、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記
第1の計測、前記第2の計測、又は前記第3の計測は、ウォーターフォール圧を計測することを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記
第1の計測、前記第2の計測、又は前記第3の計測は、血流予備量比を計測することを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記コンピュータ化された診断及び注入システムは、注入液流量を段階的に増加して段階的な方式で注入液を注
入するように構成される、請求項5又は6に記載のシステム。
【請求項8】
前記コンピュータ化された診断及び注入システムは、前記注入液の注入を停止した後に指数関数的な血圧の
減衰時間を測定するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コンピュータ化された診断及び注入システムは
、リアルタイム
で第1の微小血管抵抗と、第2の微小血管抵抗と、第3の微小血管抵抗を計算するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記コンピュータ化された診断及び注入システムは、前記血管の閉塞後に指数関数的な血圧の
減衰時間を測定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記カテーテルは、血管内の順行性の血流を遮断するのに適した閉塞用バルーンを含む経皮的経血管的カテーテルからなり、該経皮的経血管的カテーテルは、閉塞用バルーンより末梢側で血管に複数の注入液を注入するために構成されたルーメンと、閉塞用バルーンより末梢側で血管内の血圧を感知するために構成されたセンサとを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記経皮的経血管的カテーテルは、心筋血管内の順行性血流を遮断するために、前記心筋血管内に挿入されるように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
圧力ガイドワイヤをさらに備え、該圧力ガイドワイヤは前記経皮的経血管的カテーテルを受承するように構成されており、前記コンピュータ化された診断及び注入システムは前記圧力ガイドワイヤ上の冠動脈内心電図計測を実施するように構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記コンピュータ化された診断及び注入システムはモバイル型コンソールの形態に構成される、請求項1から13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記コンピュータ化された診断及び注入システムはモジュール式システムである、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
心臓を含む多くの臓器の微小血管系の微小血管閉塞(MVO)及びその他の機能不全性疾患の診断及び治療のための方法及び装置。
【背景技術】
【0002】
心臓発作又はSTEMI(「STEMI」は急性のECG ST部分型の心筋梗塞として定義される)は、典型的にはフィブリン及び血小板に富む血塊に、関連する塞栓性のプラーク及びデブリを伴うことによる、心外膜冠状動脈の突然の閉塞によって引き起こされる。急性壁内心筋梗塞(心臓発作)の心電図上の徴候は、ST部分の上昇を伴うECGトレースである(STEMI)。ST部分の上昇は、細胞死を伴う進行中の虚血性心筋傷害をもたらしている閉塞を伴う場合の多い、重症の冠状動脈狭窄の特徴である。大血管の閉塞は、血塊による小血管又は狭窄部の閉塞(微小血管閉塞又はMVOと称される)を伴うことが多く、かつ塞栓性デブリはさらに、心臓の筋肉が細胞の生命を維持するのに必要な血液、酸素及び重要な栄養素を奪われるので、深刻な問題でもある。
【0003】
介入性心臓病学は、重度に狭窄又は閉塞した心外膜冠状動脈を、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーン、及びステントを使用して心臓カテーテル室において開大することに非常に熟練している。しかしながら、微小血管閉塞はカテーテル室では診断することができず、より重要なことには、たとえ正確に診断できたとしても/正確に診断できた時でも、MVOを治療することはできない。
【0004】
心筋サルベージ(血液及び酸素の欠乏による死から筋肉を救済すること)は、STEMIに罹患している患者の良好な長期転帰を保証するための重要な懸案事項である。良好な長期転帰の鍵となる要素は、(自宅での、又は病院の外での)冠状動脈の閉塞とカテーテル室における閉塞した動脈の開大との間の時間を最小限にすることを含んでいる。介入性心臓病学者は合理化された効率的な救急医療システムを実践することにより動脈閉塞時間を短縮することが可能であるが、該システムの目標はSTEMI患者を可能なかぎり早くカテーテル室に到着させ、長期的なSTEMI合併症を回避することである。STEMI及びMVOに起因する合併症には、収縮期及び拡張期心不全、不整脈、動脈瘤、心室破裂並びに多数の他の重篤な合併症が挙げられる。これらの合併症は著しく寿命を縮め、かつ生活の質に厳しい制約を課す可能性がある。
【0005】
急性心筋梗塞についての現代の介入的治療法は、目覚ましい臨床結果を伴い、時とともに成熟してきた。30日目における心臓発作/STEMIの死亡率は、30%超から5%未満へと低下しており、これは冠状動脈閉塞の際に可能なかぎり早く心臓を血液で再潅流することにより達成される。この目標は、心臓発作の開始後可能なかぎり迅速にカテーテル室で冠状動脈を開大するように臨床ケアシステムを合理化することにより達成される。ステント挿入及びバルーン血管形成を含む応急処置は、急性心臓発作治療の初期及び後期の臨床結果を改善するために必要なものとして異論の余地はない。
【0006】
しかしながら、STEMI患者の治療及び長期的合併症の低減については、かなりの課題が残っている。これらの問題には、心不全(心臓機能の低下及び心肥大)、心臓/心室破裂、持続性の虚血性胸痛/狭心症、左心室瘤及び左室内血塊、並びに悪性不整脈が含まれる。
【0007】
後期心不全は、左心室機能の低下及び心筋の損傷によって引き起こされる急性STEMIの25~50%に合併する。心不全は、心臓が形状及び大きさについてリモデリングするにつれて悪化し、そして機能を失う。75歳未満の患者における全ての新たな心不全のうちほぼ半分は、STEMIに関係している。
【0008】
長年のSTEMI治療法の研究から、心外膜冠状動脈/太い冠状動脈の開大は、心筋サルベージを行いかつ長期的な患者予後を最適化するには不十分であることが示されている。心臓発作後の後期の結果が不十分である最も一般的な理由は、微小血管閉塞(MVO)である。MVOは、典型的には凝血塊による、内部の心臓微小血管における閉塞又は重度の血流制限である。これらの微小血管は、ステント挿入及び従来の血栓溶解療法を受け付けない。よって、心外膜冠状動脈が広く開存しているにもかかわらず、残りのMVOが心臓への血流を妨げて重症の心筋損傷からの虚血性細胞死を引き起こす。
【0009】
よってMVOは、依然として心臓病学の重要な最先端領域である。心臓の微小血管は、STEMIの際に凝血塊及びデブリ(血小板、フィブリン、及び塞栓性のプラーク物質)で満たされることの多い小動脈、細動脈、毛細血管及び小静脈を備える。あまりにも多くの場合において、微小血管の閉塞(MVO)はステント留置の後でさえ解消せず、かつ重篤で長期的な予後不良を有する。
【0010】
ステント挿入及びバルーン血管形成が心外膜冠状動脈の開大に成功しても、MVOはSTEMI患者においては非常に一般的である。MVOは、開大した心外膜動脈及び新しく留置されたステントを通る血流が良好であっても、全てのSTEMI患者の過半数に生じる。
【0011】
MVOの程度は、心筋障害の重症度及び患者の転帰にとって重要である。MVOは、MVOの位置、程度及び重症度を計測する心臓MRIによって最も良好に画像化される。しかしながらMRIは、患者が個別の撮像エリアかつ個別のスキャナ内にいることを必要とするので、緊急に、又は心臓カテーテル処置の際には、実施することができない。
【0012】
MVOの重要な特徴については下記に概要を示すことができる:
1. STEMIにおけるMVO及び微小血管機能不全は、心臓発作後の初期及び後期の主な合併症の主要な原因である。
【0013】
2. 血管造影法の「ノーリフロー」又は「ローリフロー」はMVOによって引き起こされ、かつ心臓内の微小血管の閉塞が原因である。MVOは、カテーテル室における冠状動脈の治療中に視覚化されるような、心外膜冠状動脈を満たす非常に動きの遅いX線造影剤により、X線透視で特性解析される。
【0014】
3. MVOは、長時間の虚血/酸素、血液、及びグルコースのような重要な代謝に関わる栄養素の欠乏から、心筋細胞の傷害及び死を引き起こす。MVOの顕微分析は、血小板及びフィブリン塊で満たされた微小血管、死んだ心筋細胞、炎症細胞、筋細胞死、及び閉塞した心筋内毛細血管に沿った内皮細胞死を示す。
【0015】
4. 調査されたMVOは、血小板及びフィブリンに富む血栓、血小板‐好中球凝集塊、死にかけた血球並びに塞栓性のデブリによって完全に閉塞された心臓の細動脈及び毛細血管を強く示す。
【0016】
5. MVOが急性STEMI/心筋梗塞に合併する場合、はるかに大きな心臓/心筋の障害が生じ、かつ心室機能の低下が早期に生じる。
6. MVOは非常によくみられる。MVOは、
a. 心外膜側の血流にかかわらず全てのSTEMI及びNSTEMIの53%において、
b. 広範囲壁内STEMIの90%において、
c. X線で視覚化された血流がTIMI3(正常)であるMIの40%において
生じ、かつ
d. MVOは梗塞サイズについての制御が行われた後の事象の唯一の最も有力な予後マーカーである。
【0017】
7. 微小血管閉塞の患者はMVOでない患者よりも多く遅発性の主要心血管イベント(MACE)を有する(45%対9%)。
8. MVOは急性及び慢性の心血管有害転帰の最も優れた予測因子である。
【0018】
9. MVOは後期の線維性瘢痕となり、心臓機能の低下の原因となる。
MVOは従来のカテーテル室で診断することはできない。さらに、有効な従来の治療法は利用できていない。数多くの考えられる過去の治療法は全て、本質的に効果がなく、かつ場合によっては危険であることが証明された。
【0019】
過去のMVO治療法が直面した問題には、薬物を伴う急速な流体ボーラス注入が含まれる。この失敗は、流体は最も抵抗の小さい通路を進んで行くものであるとして、最もよく理解される。MVOで閉塞した血管の流れは非常に遅く、極めて高い流体力学的抵抗を有している。冠状動脈内への直接の薬物ボーラスは、注入された薬剤が開大した閉塞していない微小流路にしか入らず、STEMIの閉塞した微小血管にはほとんど又は全く入らないので、MVOに対する効果はほとんどない。研究から、局所注入された薬物のうちわずか1/1000しか閉塞した微小血管に入らず、ほとんどの薬物は開大した未閉塞の微小血管に入ることが示唆されている。この不利な比率で閉塞した微小流路に高用量の薬物を送達することは、注入された全ての薬物が最終的には体循環に入るので、受容しがたいほど毒性の高い全身薬物濃度をもたらす。高い全身薬物濃度は、患者を、危険な全身性出血及び大流量の注入速度による血管解離を含むその他の全身性合併症のリスクに直面させる。
【0020】
MVOの解明は心臓病学者にとって強く必要とするものである。多数の臓器(例えば心臓、脳、腸、四肢、肝臓、及び腎臓)のMVOで閉塞した微小血管に治療剤を首尾よくかつ効率的に送達する技術及び方法は、利用可能ではない。そのような治療法は、簡素で、効率的で、安全で、かつカテーテル室において使用し易くなければならない。そのような方法は、毒性の全身濃度を引き起こすことなく高用量の治療剤を閉塞した流路へ送達しなければならず、かつ血流の回復後に微小血管を治療するために利用可能であることは、再潅流傷害を防止又は制限するというさらなる目標を可能にすることになろう。
【発明の概要】
【0021】
微小血管閉塞(MVO)及び組織壊死/梗塞を診断及び治療するためにリアルタイムの冠動脈内血管抵抗(RTIVR)及びコンプライアンスを計測することが可能な、装置及び方法が当分野において必要とされている。
【0022】
心臓を含む多くの臓器の微小血管系の微小血管閉塞(MVO)及びその他の機能不全性疾患の診断及び治療のための方法及び装置。より具体的には、非限定的な実施形態としては、微小血管閉塞を伴う臓器及び症例において適切に診断し、開存性を回復し、血流を開大及び維持し、かつ再潅流傷害を制限するための新規な装置及び方法が含まれる。侵襲的な血管造影手技/治療手技のような状況の際にリアルタイムでMVOを検出及び計測するか又は治療するために、既知の先行技術の方法は利用可能ではない。そのような手技には、臓器系、例えば心臓(急性心筋梗塞‐直接的経皮的冠動脈インターベンション(PPCI))、脳(卒中(CVA)、腸管虚血/梗塞、肺塞栓/梗塞、重症下肢虚血/梗塞、腎虚血/梗塞、及びその他のものについての治療法が含まれる。本発明の方法を使用して、特殊な注入用及び感知用カテーテル、診断用薬剤、治療剤、並びに専用アルゴリズムを備えた制御コンソールを具備しているシステムは、閉塞を引き起こす微小血管の凝血塊及びデブリを排除することにより、MVOを診断及び治療することが可能である。該技法は、MVOを同時に診断及び治療するための、新規な装置、方法、及びソフトウェアの組み合わせを含んでいる。これにより、診断上及び治療上の意思決定のためのリアルタイムの術者フィードバックを伴うリアルタイムの手術が可能となり、したがって介入的手技のための実現可能なシステムが作り出される。
【0023】
本発明は、添付図面の図において、例として、かつ限定ではないものとして例証されており、前記図面において同様の参照記号は類似の要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、冠状動脈及びその他のヒト/動物の血管系のためのモジュール式コンピュータ化された診断及び注入システムの例を示す図。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、閉塞用バルーンを有している注入カテーテルの例を示す図。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、閉塞用バルーンを有している注入カテーテルの例を示す図。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による、閉塞及び注入のアルゴリズムのグラフを示す図。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による、リアルタイムの冠動脈内血管抵抗を計算するグラフを示す図。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態による、90分間の第二対角枝より末梢側における左冠動脈前下行枝(LAD)閉塞の後の血管造影上のノーリフローを示す、ブタの非臨床試験の写真スライドを示す図。
【
図7】本発明のいくつかの実施形態による、微小血管閉塞(MVO)を有する二腔の高分解能ガドリニウム増強磁気共鳴画像(MRI)スキャン像を示す、ブタの非臨床試験の写真スライドを示す図。
【
図8】本発明のいくつかの実施形態による、200マイクロメートルの血管における血小板に富むMVOを示す、ブタの非臨床試験の写真スライドを示す図。
【
図9A】本発明のいくつかの実施形態による、微小血管閉塞(MVO)を有する四腔の磁気共鳴画像(MRI)スキャン像を示す、ブタの非臨床試験の写真スライドを示す図。
【
図9B】本発明のいくつかの実施形態による、微小血管閉塞(MVO)を有する二腔の磁気共鳴画像(MRI)スキャン像を示す、ブタの非臨床試験の写真スライドを示す図。
【
図10】本発明のいくつかの実施形態による、
図9A~
図9Bに示されたMVOの位置の図形表現を示す図。
【
図11】本発明のいくつかの実施形態による、左心室全体のMVOの割合(%)及び梗塞サイズの割合(%)を示す、ブタの非臨床試験のグラフを示す図。
【
図12】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の結果をヒトのデータと比較する表。
【
図13】本発明のいくつかの実施形態による、ヒトに近いMVOを作出するためのブタの非臨床試験における継続使用の動物の結果を示す表。
【
図14】本発明のいくつかの実施形態による、被験動物番号14の結果を示しているブタの非臨床試験の血管造影像を示す図。
【
図15】本発明のいくつかの実施形態による、被験動物番号14の結果を示しているブタの非臨床試験の血管造影像を示す図。
【
図16】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験のMRI高分解能スキャンからのデータを示す図。
【
図17】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の
図18~
図20の写真スライドに示されるような、被験動物12のセクション1由来の、心内膜から心外膜境界部までの組織構造区分ブロックの位置関係を示す図。
【
図18】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の組織構造セクション1、ブロック1の写真スライドを示す図。
【
図19】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の組織構造セクション1、ブロック2の写真スライドを示す図。
【
図20】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の組織構造セクション1、ブロック5の写真スライドを示す図。
【
図21】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の被験動物8からの組織構造セクションブロック8の写真スライドを示す図。
【
図22】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の被験動物3からの組織構造セクションブロック8の写真スライドを示す図。
【
図23A】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の被験動物3からの組織構造セクションブロック8の写真スライドを示す図。
【
図24】本発明のいくつかの実施形態による、ヒト組織構造切片の写真スライドを示す図。
【
図25】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からのデータを用いて得られたキャパシタンスの低下に起因する梗塞心筋においてより急速な圧力低下を示すグラフ。
【
図26A】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からの心拍数補正を伴わないTau及びTau40計算値を比較するチャートを示す図。
【
図26B】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からの心拍数補正を伴わないTau及びTau40計算値を比較するチャートを示す図。
【
図27A】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からの心拍数補正を伴うTau
*及びTau40
*計算値を比較するチャートを示す図。
【
図27B】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からの心拍数補正を伴うTau
*及びTau40
*計算値を比較するチャートを示す図。
【
図28】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からのT1、T2及びT3におけるウォーターフォール圧を比較するチャートを示す図。
【
図29】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からのリアルタイムの血管抵抗をグラフ表示するチャートを示す図。
【
図30】本発明のいくつかの実施形態による、7匹の被験動物でのブタの非臨床試験からのリアルタイムの血管抵抗の平均値をグラフ表示するチャートを示す図。
【
図31A】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からのリアルタイムの血管抵抗の7匹の被験動物全体での統計的有意差を、フロー注入の値ごとの統計的有意差とともにグラフ表示するチャートを示す図。
【
図31B】本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からのリアルタイムの血管抵抗の7匹の被験動物全体での統計的有意差を、フロー注入の値ごとの統計的有意差とともにグラフ表示するチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[概要]
微小血管閉塞(MVO)を解消するために使用される装置及び方法のリアルタイムでの有効性を測定するように構成されたシステム及び装置が含まれる。結果がリアルタイムで示されるので、治療を変更してより迅速にMVOを解消又は改善するために、装置及び方法を迅速に変えることができる。閉塞用バルーンを使用する注入システムは、順行性の血流を短時間遮断し、注入液が流量を次第に高めて段階的に注入されるにつれての血管の圧力応答を計測する。順行性血流の閉塞中、リアルタイムの血管抵抗の計算は、式R(t)=P(t)/Qmean(t)を使用して行うことが可能であり、前記式中、Qmean(t)は、注入システムによって生じた流量平均値であり;P(t)は、フロー注入から生じた血管内の末梢圧力応答であり;R(t)は、2つの他の既知パラメータを使用した計算上の血管抵抗である。本明細書中の記載された発明の実施例は、微小血管閉塞(MVO)及び組織壊死/梗塞を診断及び治療するために冠状動脈及びその他のヒトの血管系に使用され得る。
【0026】
以降の開示内容は、RTIVRを計測するための手法及びその手法を使用することから得られた非臨床試験データについて概説する。該データは、本明細書中に記載されたシステム/装置/方法がRTIVR、Tau及びウォーターフォール圧を計測する能力、並びにこれらのパラメータがMVO及び組織壊死/梗塞を検出することが可能であることを示す。
【0027】
本[概要]は、本願の教示のうちの一部の概観であって、本発明の唯一又は網羅的な取り扱いであるようには意図されない。本発明に関するさらなる詳細は、[詳細な説明]及び添付の特許請求の範囲に見出される。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその法的な等価物によって定義される。
【0028】
[詳細な説明]
本発明の以降の詳細な説明は、本発明が実行されうる具体的な態様及び実施形態を図解で示している添付図面の内容に言及する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実行するのを可能にするように十分詳細に記載されている。本発明内容における「1つの(an)」「1つの(one)」、又は「様々な(various)」実施形態への言及は必ずしも同一の実施形態についての言及ではなく、かつそのような言及は2以上の実施形態を想定している。以降の詳細な説明は論証的であって、限定的な意味で解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲、加えてそのような特許請求の範囲について与えられる全ての範囲の法的な等価物によって、定義される。
【0029】
本発明は、微小血管閉塞(MVO)及び組織壊死/梗塞を診断及び治療するためにRTIVRを計測するための独自の技法のための、装置、システム及び方法を提供する。本願はさらに、2017年1月4日に出願され、かつ2017年7月6日に米国特許出願公開第2017/0189654号明細書として公開された米国特許出願第15/398,470号明細書(「’470出願」)に開示された主題の全体を参照により組み込むものである。本願に記載の装置及び方法には上記の’470出願に記載された装置及び方法が含まれるが、それらに限定はされない。
【0030】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による、冠状動脈及びその他のヒト/動物の血管系のための、モジュール式コンピュータ化された診断及び注入システム100(本明細書中以降は「注入システム」)の実施例を示している。注入システム100は、臨床用の即時使用可能なモジュール式システムであることができ、モバイル型コンソールの形態に構成可能である。注入システム100は、下記すなわち:
● リアルタイムの冠状動脈の圧力及び血流量;
● 圧力/抵抗の時間パラメータ;
● ウォーターフォール圧若しくは冠状動脈楔入圧;
● 冠動脈内心電図(ECG);並びに/又は
● 血流予備量比(FFR)計測値
のうち少なくとも1以上によりMVO診断を可能にする。
【0031】
注入システム100は、下記すなわち:
● 認可された薬剤の注入;
● 標的を定めた低流量の注入;及び/又は
● 診断パラメータの連続モニタリング
のうち少なくとも1以上によりMVO治療を可能にすることが可能である。
【0032】
図2は、本発明のいくつかの実施形態による、閉塞用バルーン、バルーンマーカー及び注入用ルーメンを有する注入カテーテルの実施例200を示している。
図3は、本発明のいくつかの実施形態による、0.356mm(0.014”)の圧力計測用ガイドワイヤ上にラピッド・エクスチェンジ(RX)式で設置された閉塞用バルーンを有している注入カテーテルの実施例300を示している。
図2~
図3に示されるような注入カテーテルは、所望の血管を閉塞し、所望の流体を注入し、かつ血管内部の圧力をリアルタイムかつ閉塞用バルーンより末梢側で計測するために、本明細書中に記載のシステム/装置/方法において使用することが可能である。
図2~
図3に示されるような注入カテーテルは、6Fガイドシース対応型カテーテル、コンプライアント型の5×10mm閉塞用バルーンを備えることが可能であり、かつ0.356mm(0.014”)の圧力ガイドワイヤ上で受承可能である。
図2~
図3に示されるような注入カテーテルは、広範なフロー注入範囲、例えば5~50ml/分、を備えることが可能であり、かつ軸方向のフロー注入を備え得る。当業者であれば、カテーテルの寸法、構成、及び注入範囲は変更可能でありかつ依然として本発明の範囲内にあることができることを認識するであろう。
【0033】
いくつかの実施形態では、該カテーテルは患者の心筋に血液を供給している心筋の血管の中に挿入可能である。いくつかの実施形態では、心筋の血管又は近隣の血管は、MVOを有していても有していなくてもよく、かつ心筋梗塞を有していても有していなくてもよい。カテーテルは、バルーンを拡張させることによりカテーテルの周囲の心筋血管内における順行性の血流を遮断することが可能である。いくつかの実施形態では、心筋の血管はステントを備えていてもよく、かつ、カテーテルは、バルーンを拡張させることによりステントの内部から順行性の血流を遮断することが可能である。
【0034】
図4は、本発明のいくつかの実施形態による、閉塞及び注入のアルゴリズムのグラフ400を示している。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されたシステム/装置/方法は注入アルゴリズムを備えることができる。注入アルゴリズムは、
図1に示されるようなモジュール式コンピュータ化された注入システム100によって作り出されることが可能である。注入システム100は、血管を閉塞させない間に、閉塞用バルーンより末梢側の生来の冠状動脈の血圧を計測することが可能である。血管閉塞時、注入システム100は、圧力の低下について時間(Tau-)及び圧力パラメータを計測することが可能である。グラフ400では、Tau-の計測は401に示されている。注入システム100は、これらの値が安定しているときにウォーターフォール圧(WFP)又は冠状動脈楔入圧(CWP)を計測することが可能である。グラフ400では、WFPの計測は402に示されている。いくつかの実施形態では、注入システム100はその後、段階的な方式で生理食塩水又はリンゲル液を注入する。本実施例では、流量は0ml/分から5、10、20、30及び40ml/分へと段階的に増加され、かつ各流量値を15秒間保持する。40ml/分の最後のフロー注入の後、流れは停止されてTau40-と呼ばれる圧力低下が計測される。Tau40-の後、WFP及びCWPが再び計測され、バルーンは収縮せしめられて順行性の血流が再開される。注入の圧力、段階数、及び回数は本発明の意図を変更することなく変えることができる。グラフ400では、段階的な圧力上昇の計測は403及び404に示されている。グラフ400では、Tau40-の計測は405に示されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、Tau-は、生来の血管の閉塞後の指数関数的な冠動脈内血圧の減衰に要する時間として記述することが可能である。いくつかの実施形態では、注入システム100の血管抵抗診断の手順は:5、10、20、30及び40ml/分の5段階(各15秒;合計26.25ml)での室温のリンゲル液の注入、を含むことができる。いくつかの実施形態では、ポンプ流量を増大させると末梢の圧力が高まり、注入システム100の血管抵抗の計算すなわち:R=P/Qを可能にすることが可能である。いくつかの実施形態では、Tau40-は、40ml/分のリンゲル液注入の停止後の指数関数的な冠動脈内リンゲル液の圧力減衰に要する時間として記述することが可能である。
【0036】
図5は、本発明のいくつかの実施形態による、リアルタイムの冠動脈内血管抵抗を計算するグラフ500を示している。グラフ500には、圧力減衰(Tau)、ウォーターフォール圧(WFP)又は冠状動脈楔入圧(CWP)及びリアルタイムの冠動脈内血管抵抗の計測値が示されている。
図5は、リアルタイムの冠動脈内血管抵抗が下記に述べる注入アルゴリズムを使用してどのように計算されるかを示す。
図5では、ポンプ流量は501と表示された点線であり、末梢の圧力は502と表示された薄灰色の線であり、かつ血管抵抗は503で表示された暗色の線である。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のシステム/装置/方法は下記を含むことができる:
流量が0ml/分~5、10、20、30及び40ml/分の段階を踏んで増大するにつれて、注入システム100はリアルタイムの血管抵抗を、式R(t)=P(t)/Q
mean(t)を使用して計算するが、前記式中、
● Q
mean(t)は注入システムによって生成された流量平均値であり、
● P(t)は、フロー注入から生成された血管内の末梢圧力応答であり、
● R(t)は、2つの他の既知パラメータを使用した計算上の血管抵抗である。
【0037】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されたシステム/装置/方法は、流量が増加するにつれて血管抵抗が低下し、かつ血管抵抗は30~40ml/分の正常な冠血流のあたりで最小のプラトーに到達すること、を提示することが可能である。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されたシステム/装置/方法は、血管抵抗の最大の変化は低い流量値において生じ、小さな流量値では冠微小循環を開大するには十分でないことから「ダイオード」効果によって引き起こされる可能性が最も高いこと、を提示することが可能である。
【0038】
いくつかの実施形態では、心臓の血管内の圧力‐流量動力学で見られるキャパシタンスは、毛細血管/微小血管系の弾性率だけでなく心筋自体の弾性率とも関係する可能性がある。いくつかの実施形態では、キャパシタンスは、心筋構造、及び心臓骨格の線維化に関係する実質的な診断機能を含むことができる。いくつかの実施形態では、この機能は重要な臨床上の意義となり得る。
【0039】
図6~
図31は、冠血管抵抗を計測するための、上述の実施形態を使用して開発されたMVOモデルに関する。いくつかの実施形態では、該MVOモデルはin vitroの方法で、又はヒト若しくは動物において使用可能である。いくつかの実施形態では、
図6~
図31は、冠血管抵抗を計測するための、上述の実施形態を使用して開発されたブタの非臨床試験のMVOモデルに関する。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されたシステム/装置/方法は、ヒトで見られるような程度の一致したMVOを生じるブタの閉塞‐再潅流モデルを提供することが可能である。これらの非臨床試験では、MVOは左心室全体の2.34±1.07%であり、これはヒトでの所見と一致する。いくつかの実施形態では、該モデルはヘパリンによる血液凝固阻止の使用により微小血栓を生じないことが示されている。いくつかの実施形態では、低用量のヘパリン実験では微小血栓を生じることが示されている。いくつかの実施形態では、MVOは高度の側副血行路形成を有する被験体では生成されていないことが示されている。
【0040】
この非臨床試験のMVOモデルは、MVOがチューリッヒ大学/ETHにおいて継続使用の一連の15匹の動物で作成されたことを提示する、本明細書中に記載されたシステム/装置/方法を含んでいる。
【0041】
一例の方法では、
● n=15(一連の合計はn=23)
● 57kg(50~74kg)のブタ
● ヘパリン処理してACT>150、アミオダロンを予め投与して細動除去のために開胸。
【0042】
● 第二対角枝より末梢側に閉塞用バルーンを有している
図2~
図3に示されたような注入カテーテルを用いた90分のLAD閉塞。
● すべての圧力計測は硝酸なしで完了。
【0043】
● ガドリニウム造影剤で増強したMRIスキャンの前に6時間の再潅流。
計測及び画像化には、
● 手技的な血管造影。
【0044】
● 3つの時点すなわち:
● T1:血管閉塞の前;
● T2:90分の閉塞及び10分の再潅流の後;並びに
● T3:合計4時間(240分)の再潅流の後でMRIへの搬送前
における全ての注入システムパラメータ(Tau、WFP及びリアルタイムの抵抗)(n=7)。
【0045】
● 実施例の圧力ガイドワイヤを使用する連続的な圧力ワイヤの記録。
● 圧力ガイドワイヤ上の冠動脈内ECG計測。
● MRIスキャン:全機能による画像化;初期及び後期のガドリニウム増強された画像化;>5匹の被験動物の潅流された拍動していない心臓における高分解能撮像。
【0046】
● コアの梗塞及び境界ゾーンの組織像;選択された被験動物における詳細な組織像、
を使用した。
図6は、本発明のいくつかの実施形態による、90分間の第二対角枝より末梢側における左冠動脈前下行枝(LAD)閉塞の後の血管造影上のノーリフローを示す、ブタの非臨床試験の写真スライド600を示している。
図7は、本発明のいくつかの実施形態による、微小血管閉塞(MVO)を有する二腔の高分解能ガドリニウム増強磁気共鳴画像法(MRI)のスキャン像を示す、ブタの非臨床試験の写真スライド700を示している。MVO702が白線で囲まれている。
図8は、本発明のいくつかの実施形態による、200マイクロメートルの血管内の血小板に富むMVOを示す、ブタの非臨床試験の写真スライド800を示している。
【0047】
図9Aは、本発明のいくつかの実施形態による、微小血管閉塞(MVO)を有する四腔の磁気共鳴画像法(MRI)スキャン像を示す、ブタの非臨床試験の写真スライド900を示している。
図9Bは、本発明のいくつかの実施形態による、微小血管閉塞(MVO)を有する二腔の磁気共鳴画像法(MRI)スキャン像を示す、ブタの非臨床試験の写真スライド902を示している。ブタの非臨床試験では、MVOは被験動物15匹のうち14匹において生じ、MRIでの%MVOは大規模臨床試験におけるヒトの所見と一致している。
図10は、本発明のいくつかの実施形態による、
図9A~
図9Bに示されたMVOの位置の図形表現1000を示している。この図形表現は、基部1001、心室中部1002、心尖部1003、及び心尖1004のMVOを示している。
【0048】
図11は、本発明のいくつかの実施形態による、左心室全体のMVOの割合(%)及び梗塞サイズの割合(%)を示す、ブタの非臨床試験のグラフ1100を示している。
図12は、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の結果をヒトのデータと比較する表1200を示している。
図13は、本発明のいくつかの実施形態による、ヒトに近いMVOを作出するためのブタの非臨床試験における継続使用の動物の結果を示す表1300を示している。
【0049】
図14は、本発明のいくつかの実施形態による、左冠動脈前下行枝(LAD)における被験動物番号14の結果を示している、ブタの非臨床試験の血管造影像1400を示す。被験動物番号14では、実質的な側副血行路形成により梗塞もMVOも生じなかった。
図15は、本発明のいくつかの実施形態による、バルーンによる閉塞を用いたLADにおける被験動物番号14の結果を示している、ブタの非臨床試験の血管造影像1500を示している。
【0050】
図16は、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験のMRI高分解能スキャン像からのデータ1600を示している。関連するMVO情報は1601において白線で囲まれている。
【0051】
図17は、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の
図18~
図20の写真スライドに示されるような、被験動物12のセクション1からの、心内膜から心外膜境界部までの組織構造区分ブロックの位置関係1700を示している。概要を述べると、区分スライドが示すのは、MVOの直近位の領域:最小限の組織学的変化(変性した筋線維の散在)、血栓症の証拠無し。MVO領域:最小限~中程度の心筋の変性/壊死に、毛細血管の鬱血及び内皮の腫脹を伴っている。血栓症の証拠無し。
図17に示されるように、各ブロックから:a)内側の心内膜~心外膜表面の最初のセクション;b)50μmごとのブランクのセクション;及びc)500μmごとの染色されたセクション。
【0052】
図18は、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の組織構造セクション1、ブロック1の写真スライド1800を示している。
図18はMVOレベル8で検出されたMVOエリアに近い心腔中部の領域を示す。この領域は内側の心内膜(セクション1、ブロック1)に位置し、かつ散在する心筋線維の変性/壊死(MI)からは離れており、組織学的な異常は認められない。
【0053】
図19は、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の組織構造セクション1、ブロック2の写真スライド1900を示している。
図19はMVOレベル8で検出されたMVOエリアに近い心腔中部の領域を示す。この領域は、内側の心内膜表面から2500マイクロメートル(セクション1、ブロック2)に位置し、かつ散在する心筋線維の変性/壊死(MI)からは離れており、組織学的な異常は認められない。
【0054】
図20は、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の組織構造セクション1、ブロック5の写真スライド2000を示している。
図20はMVOレベル8で検出されたMVOエリアに近い心腔中部の領域を示す。この領域は、内側の心内膜表面に位置し(セクション1、ブロック5)、かつ散在する心筋線維の変性/壊死(MI)からは離れており、組織学的な異常は認められない。
【0055】
図21は、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の被験動物8からの組織構造セクションブロック8の写真スライド2100を示している。
図21は心尖部レベル14及び15に位置する。心筋梗塞(MI)が毛細血管の鬱血及び内皮の腫脹を伴って示されている。血管周囲の浮腫があり、2101では直径100マイクロメートルの動脈が腫れているように見える。
図22は、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の被験動物3からの組織構造セクションブロック8の写真スライド2200を示している。
図22は、ブロック8、レベル14の心尖部領域であり、2201及び2202に血栓を示している。潜在的原因:被験動物3で使用された低用量ヘパリンが原因で微小血管内に形成された血小板に富む血栓による微小血管の詰まり。
【0056】
図23Aは、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験の被験動物3からの組織構造セクションブロック8の写真スライド2300を示している。
図23Aは、ブロック8、レベル14の心尖部領域であって
図22よりも200マイクロメートル遠くに位置し、かつ、それぞれ
図22の血栓位置2201及び2202に相当する2301及び2302の各々において、もはや血栓が存在しないことを示している。
図23Bは、本発明のいくつかの実施形態による、
図22及び
図23Aに例証されたMVO発生の例を示している。
図23Bは、多数の微小血管2304の様々な位置で薄切している顕微鏡写真がどのようにして薄切位置2306に応じた血栓2305による遮断の有無を示すことができるかを示している。既知の心筋梗塞のエリアの病理学標本は均質な血栓性閉塞を示さない。視覚化されるような血栓は、別々の個々の毛細血管の寄せ集めである。ありそうな説明は、血栓が小さい場合が多く、毛細血管全体を塞ぐことがないということである。血栓は血管内の異なる位置で生じるので、単一の、無作為に切られた組織構造平面セクションは、各々の血管内の血栓とは交差しないであろう。従って、
図23Bに例証されるように、ほぼ完全な閉塞を有する血管は、組織構造の平面2306がすべての血栓と交差するとは限らないので、写真スライドではそのようには見えない。例えば、
図22は2つの血栓を示しているが、200マイクロメートル離れた位置の
図23Aはもはや血栓が存在しないことを示している。このことは、内皮の障害によって引き起こされた微小血栓形成が、血管の長い区間に沿って延びていない「栓のような」血小板に富む凝血塊である可能性があることを実証している。これは、上記の小さな血小板血栓を有効に除去することができる血小板溶解剤を使用する治療手法につながるものである。
【0057】
図24は、本発明のいくつかの実施形態による、ヒト組織構造切片の写真スライド2400を示している。
図24は梗塞の領域内の死後標本の顕微鏡写真である。矢印2401及び2402は、血小板フィブリン血栓で完全に塞がれた2つの小血管を指している。この顕微鏡検査は、CMRIスキャンによって予測されたような微小血管閉塞を裏付けている。
【0058】
図4、
図5、及び
図25~
図31は、RTIVRアルゴリズム及びMVOモデルの実施例を使用した結果について示している。本発明の実施形態には、
● 障害の程度がより高いことによりTau-が短縮されること(T1、T2及びT3)。
【0059】
● 手動のバルーン拡張時間、血管の大きさ、生来の冠血流量などの影響を受けるのでTau-の標準偏差(SDEV)は大きいこと。
● Tau40-は注入ポンプによって制御されており心拍動(例えば心臓の拍動機能の収縮期又は拡張期)にも合わせた規定の時点で停止させることが可能であるので、SDEVはより小さいこと。
【0060】
● 心拍動に応じたTau-値の調整(Tau*と呼ばれる)は、心筋の障害の増大を診断するための信頼性のあるパラメータを与えること。
● Tau40*-は、MVO及び梗塞に関連する最も正確なパラメータであるように思われること。
【0061】
● WFP及びCWPは実験全体を通じて不変であるように思われること。しかしながら、tauはCWPに線形従属する。
● 冠血管抵抗の平均値は、先述のように流量増加とともに低下してプラトーになること。
【0062】
● 末梢圧力の増大は冠血管抵抗に反比例すること、並びに、この末梢圧力の増大はさらに、リンゲルのフロー注入が規定の流量値5、10、20、30及び40ml/分の別々の段階に分けてなされるので冠血管系を診断するために使用可能であること。
【0063】
● T1、T2及びT3におけるRTIVRの間に差異があること。
● 7匹の動物のRTIVRには統計的有意差があること。
● この統計的有意差は、MVO/梗塞サイズを診断するために、かつ患者がまだカテーテル室にいる間に冠血管系の様々な治療の効果をリアルタイムで計測するために、使用可能であること。
【0064】
のうち1以上が含まれ得る。
図25は、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からのデータを用いて得られたキャパシタンスの低下に起因する梗塞心筋におけるより急速な圧力低下を示すグラフ2500を示している。グラフ2500は、ベースライン2501、10分間再潅流のライン2502、及び4時間再潅流のライン2503を示す。グラフ2500はさらに、Tau-時間を、T1:ベースライン2501に関係する健康な心筋について、T2:10分間再潅流のライン2502に関係する90分間LAD閉塞について、及びT3:4時間再潅流のライン2503に関係する90分間LAD閉塞について、示すチャート2504を備えている。グラフ2500はさらに、各データポイントのラインに関連する点線の多項式傾向線も備えている。
【0065】
図26A、
図26Bは、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からの、心拍数補正を伴わないTau及びTau40計算値を比較しているチャート2600及び2601を示している。
図27A、
図27Bは、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からの、心拍数補正を伴ったTau及びTau40計算値を比較しているチャート2700及び2701を示している。
図26及び
図27は、Tauの計算が被験動物番号17~23(7匹の被験動物)において心拍数に左右されることを示している。上述のように、心拍動に対するTau-値の調整(Tau
*と呼ばれる)は、心筋の障害の増大を診断するための信頼性のあるパラメータを与える可能性がある。加えて、調整されたTau40-(Tau40
*-として知られる)は、MVO及び梗塞と相関する極めて正確なパラメータである可能性がある。
【0066】
図28は、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からのT1、T2、及びT3におけるウォーターフォール圧を比較するチャート2800を示している。T3における変化は、カテーテルがT2とT3との間で再配置されたので、閉塞用バルーンの配置の違いによって引き起こされた可能性が最も高い。チャート2800は、被験動物番号8~23(15匹の被験動物)におけるウォーターフォール圧をグラフ表示している。
【0067】
図29は、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からのリアルタイムの血管抵抗をグラフ表示するチャート2900を示している。チャート2900は
図5と併せて見ることが可能であり、リアルタイムの血管抵抗を、2901で示されるベースライン、2902で示される10分間再潅流、及び2093で示される4時間再潅流を用いてグラフ表示している。ベースラインは健康な心筋である。2902は、90分間の閉塞及び10分間の再潅流を伴ったT2を表している。2903は、90分間の閉塞及び4時間の綿密な再潅流を伴ったT3を表している。
【0068】
図30は、本発明のいくつかの実施形態による、7匹の被験動物におけるブタの非臨床試験からのリアルタイムの血管抵抗の平均値をグラフ表示するチャート3000を示している。チャート3000は、7匹の被験動物(被験動物番号17~23)にわたる結果から作成された。ベースライン3001、10分間再潅流のライン3002、及び4時間再潅流のライン3003が示されている。10分間再潅流のライン3002及び4時間再潅流のライン3003は、断続線であるライン3002と極めて近い行路をとっている。
【0069】
図31A、
図31Bは、本発明のいくつかの実施形態による、ブタの非臨床試験からのリアルタイムの血管抵抗についての7匹の動物における統計的有意差を、フロー注入の値ごとの統計的有意差とともに示しているチャート3100及び表3104を示している。ベースライン3101及び10分間再潅流のライン3102が示されている。チャート3100及び表3104は7匹の被験動物(被験動物番号17~23)における結果から作成された。
【0070】
実施例
実施例1では、微小血管閉塞(MVO)を解析するための方法が提供される。様々な実施形態において、該方法は、血管内の順行性の血流がほぼ遮断されている該血管内の遮断位置の末梢側で、かつ少なくとも、晶質液が遮断位置の末梢側の血管に1以上の異なるフロー注入速度で注入された後に、感知される第1の複数の圧力計測値を受け取ることを含み得る。該方法は、血管への注入が停止され、かつ血管内の順行性の血流がほぼ遮断されたままである後で取得されるように構成された第2の複数の圧力計測値を受け取ることを含み得る。該方法はさらに、様々な時点において、その様々な時点における血管抵抗に関係する複数の計測値を測定するために、1以上の異なるフロー注入速度を圧力計測値に関連づける計算を実施することを含み得る。
【0071】
実施例2では、実施例1の主題は、治療用溶液の注入に関連した血管抵抗に関係する計測値の変化を計測することをさらに含み得る。
実施例3では、実施例2の主題は、圧力計測値に基づいて複数の様々な時点におけるウォーターフォール圧を測定することをさらに含み得る。実施例2の主題は、様々な時点におけるウォーターフォール圧の変化を計測することをさらに含み得る。
【0072】
実施例4では、実施例3の主題は、治療用溶液の注入の治療効果の尺度を経時的に測定するためのベースラインとして、血管抵抗及びウォーターフォール圧の当初の計測値を使用することをさらに含み得る。
【0073】
実施例5では、先行する実施例1~4のうちいずれかの主題は、様々な時点において圧力値を様々なフロー注入速度で割ることに基づいて、複数の動的微小血管抵抗(dMVR)値を測定することを含み得る。
【0074】
実施例6では、実施例3又は4のいずれかの主題は、様々な時点において圧力値をフロー注入速度で割ることに基づいて、複数の動的微小血管抵抗(dMVR)値を測定することをさらに含み得る。実施例6の主題は、ウォーターフォール圧を使用してdMVRを補正することをさらに含み得る。
【0075】
実施例7では、実施例5又は6のいずれかの主題は、様々な時点について測定された複数のdMVR値を使用して、MVOのレベルの変化を判定することをさらに含み得る。
実施例8では、先行する実施例1~8のいずれかの主題は、ある期間にわたってMVOのレベルの変化をリアルタイムで測定することをさらに含み得る。
【0076】
実施例9では、実施例8の主題は、ある期間にわたるMVO及びdMVRのレベルの変化に基づいて、適用されたMVOを治療するために治療法の効能の尺度を測定することをさらに含み得る。
【0077】
実施例10では、先行する実施例のうちいずれかの主題は、血管が心臓に血液を供給する血管からなることをさらに含み、かつ、ある期間にわたる心筋梗塞の程度の変化を計測するために血管抵抗のレベルの変化を判定することをさらに備える。
【0078】
実施例11では、先行する実施例1~9のうちいずれかの主題は、血管が脳に血液を供給する血管からなることをさらに含み、かつ、ある期間にわたる卒中の程度の変化を計測するために血管抵抗のレベルの変化を判定することをさらに備える。
【0079】
実施例12では、先行する実施例1~9のうちいずれかの主題は、血管が腸に血液を供給する血管からなることをさらに含み、かつ、ある期間にわたる腸管虚血又は腸管梗塞の程度の変化を計測するために血管抵抗のレベルの変化を判定することをさらに備える。
【0080】
実施例13では、先行する実施例1~9のうちいずれかの主題は、血管が肺に血液を供給する血管からなることをさらに含み、かつ、ある期間にわたる肺塞栓又は肺梗塞の程度の変化を計測するために血管抵抗のレベルの変化を判定することをさらに備える。
【0081】
実施例14では、先行する実施例1~9のうちいずれかの主題は、血管が下肢に血液を供給する血管からなることをさらに含み、かつ、ある期間にわたる重症下肢虚血又は重症下肢梗塞の程度の変化を計測するために血管抵抗のレベルの変化を判定することをさらに備える。
【0082】
実施例15では、先行する実施例1~9のうちいずれかの主題は、血管が腎臓に血液を供給する血管からなることをさらに含み、かつ、ある期間にわたる腎虚血又は腎梗塞の程度の変化を計測するために血管抵抗のレベルの変化を判定することをさらに備える。
【0083】
実施例16では、先行する実施例1~9のうちいずれかの主題は、血管が肝臓に血液を供給する血管からなることをさらに含み、かつ、ある期間にわたる肝虚血又は肝梗塞の程度の変化を計測するために血管抵抗のレベルの変化を判定することをさらに備える。
【0084】
実施例17では、臓器及び該臓器に血液を供給する血管を有している身体においてMVOを計測するためのシステムであって、該システムは、血管内の順行性の血流を遮断するのに適した閉塞用バルーンを備えている経皮的経血管的カテーテルであって、閉塞用バルーンより末梢側で血管に注入液を注入するために構成されたルーメンと、閉塞用バルーンより末梢側で血管内の血圧を感知するように構成されたセンサとを備えているカテーテルを、備え得る。実施例17の主題は、複数の注入液を注入するためにカテーテルに結合されるように、かつ、少なくとも注入液が注入液流量でカテーテルを介して血管に注入された後で1以上の血圧の計測を実施するように構成された、コンピュータ化された診断及び注入システムをさらに含み得る。実施例17の主題はさらに、ある期間にわたって異なる時点における微小血管抵抗のより多くの計算値のうちの1つにおいて動的微小血管抵抗の計算を実施するように構成された、コンピュータ化された診断及び注入システムであって、微小血管抵抗は、圧力計測値を注入液体積流量の値で割ることにより、かつ複数の体積流量及び計測された圧力値に関して計算される、システムを含み得る。実施例17の主題はさらに、少なくとも様々な時点で実施された動的微小血管抵抗の計測に基づいて、ある期間にわたってMVOのレベルの変化を判定するように構成された、コンピュータ化された診断及び注入システムを含み得る。実施例17の主題はさらに、1以上の計測を実施し、動的微小血管抵抗の計算を実施し、かつMVOのレベルの変化を判定するように構成された、コンピュータ化された診断及び注入システムを含み得る。実施例17の主題はさらに、複数の注入液を注入するようにカテーテルに結合されるように構成され、かつ
少なくとも注入液が注入液流量でカテーテルを介して血管に注入された後に、血圧の1以上の計測を実施し;
ある期間にわたって異なる時点における微小血管抵抗のより多くの計算値のうちの1つにおける動的微小血管抵抗の計算であって、微小血管抵抗は、圧力計測値を注入液体積流量の値で割ることにより、かつ複数の体積流量及び計測された圧力値に関して計算される、計算を実施し;かつ、
少なくとも様々な時点で実施された動的微小血管抵抗の計測に基づいて、ある期間にわたってMVOのレベルの変化を判定する
ように構成された、コンピュータ化された診断及び注入システムを含み得る。
【0085】
実施例18では、実施例17の主題は、コンピュータ化された診断及び注入システムが、様々な時点で注入液を注入するように、かつ1以上の計測を実施してある期間にわたってMVOの変化をリアルタイムで測定するように構成されるように、構成可能である。
【0086】
実施例19では、実施例18の主題は、コンピュータ化された診断及び注入システムが、注入液圧力応答を、ウォーターフォール圧を生じる注入液体積流量で割ることにより、動的微小血管抵抗を判定し、ウォーターフォール圧について動的微小血管抵抗を調整し、かつ少なくとも様々な時点について測定された動的微小血管抵抗の値に基づいて、ある期間にわたるMVOのレベルの変化を判定するように構成されることをさらに含む。
【0087】
実施例20では、実施例17~19のいずれか1つ又は任意の組み合わせの主題は、コンピュータ化された診断及び注入システムが複数の増加する注入液流量で注入液を注入するように構成されるように、構成され得る。
【0088】
実施例21では、MOVを計測するための別の方法が提供される。該方法は、臓器に血液を供給する血管内の順行性の血流を、血管内に配置された閉塞用バルーンを拡張させることにより、ほぼ遮断することと;複数の増加する流量で閉塞用バルーンの末梢側の血管に注入液を注入することと;様々な流量に対する圧力応答を感知することと;dMVRを計算することと;注入液の注入を停止することと;血管内の閉塞用バルーンの末梢側の血圧を感知することと;少なくとも注入液の注入が停止された後で1以上のパラメータを計測することであって、該1以上のパラメータには圧力減衰後の最小圧力(ウォーターフォール圧)が含まれることと;治療期間の様々な時点において閉塞用バルーンの末梢側の血管に治療用注入液を注入することにより、MVOを治療することであって、該治療用注入液は閉塞用バルーンの末梢側の血管系の任意の閉塞部分に流入して、注入液と血管系内の任意の閉塞性物質との混合を促進することと;治療期間中の様々な時点において1以上のパラメータをリアルタイムで計測することと;様々な時点においてリアルタイムで計測された1以上のパラメータの値に基づいてMVOの治療の結果を判定することと;閉塞用バルーンを収縮させることにより前記カテーテルの周囲の血管内における順行性の血流の遮断を解除することと、を含み得る。
【0089】
実施例22では、実施例21のいずれか1つ又は任意の組み合わせにおいて見出されるような1以上のパラメータを計測するという主題は、任意選択で、注入液の導入に応答した感知される血圧の変化である圧力応答を計測することと、計測された圧力応答を複数の増加する流量の各流量について使用して、リアルタイムの血管抵抗を計算することとを含むことが可能であり、また実施例21のいずれか1つ又は任意の組み合わせにおいて見出されるようなMVOの治療の結果を判定するという主題は、任意選択で、治療期間中の様々な時点について計算されたリアルタイムの血管抵抗の値を比較することを含むことができる。
【0090】
実施例23では、実施例22の主題は、1以上のパラメータを計測することが、注入液の導入が停止された後の感知される血圧の指数関数的減衰の時間の尺度である圧力減衰パラメータを計測することからなる、ということを含む。
【0091】
実施例24では、実施例21~23の主題は、動的微小血管抵抗計測値を、計測されたウォーターフォール圧で補正することを含む。
実施例25では、実施例21~24の主題は、任意選択で、心拍数を計測すること及び該心拍数について圧力減衰パラメータを補正することを含み得る。
【0092】
実施例26では、MVOを計測するための方法が提供される。該方法は、血管内の順行性の血流がほぼ遮断されている遮断位置の末梢側で感知される血管内圧力の1以上の計測を実施することを含み得る。1以上の計測は、少なくとも注入液が遮断位置の末梢側の血管に注入液流量で注入された後に実施され得る。該方法は、ある期間にわたって異なる時点において圧力の1以上の計測値の圧力減衰の計測を実施することをさらに含み得る。圧力減衰の計測は、注入液の注入が停止された後でありかつ血管内の順行性の血流がほぼ遮断されたままである間に計測された圧力の減衰の時間に関するものである。該方法は、少なくとも様々な時点で実施された圧力減衰の計測に基づいて、その期間におけるMVOのレベルの変化を判定することをさらに含み得る。
【0093】
実施例27では、実施例26の主題は、任意選択で、その期間における心筋梗塞の程度の変化を計測するためにMVOのレベルの変化を判定することをさらに含み得る。該血管は心臓に血液を供給する。
【0094】
実施例28では、実施例26の主題は、任意選択で、その期間における卒中の程度の変化を計測するためにMVOのレベルの変化を判定することをさらに含み得る。該血管は脳に血液を供給する。
【0095】
実施例29では、実施例26の主題は、任意選択で、その期間における腸管虚血又は腸管梗塞の程度の変化を計測するためにMVOのレベルの変化を判定することをさらに含み得る。該血管は腸に血液を供給する。
【0096】
実施例30では、実施例26の主題は、任意選択で、その期間における肺塞栓又は肺梗塞の程度の変化を計測するためにMVOのレベルの変化を判定することをさらに含み得る。該血管は肺に血液を供給する。
【0097】
実施例31では、実施例26の主題は、任意選択で、その期間における重症下肢虚血又は重症下肢梗塞の程度の変化を計測するためにMVOのレベルの変化を判定することをさらに含み得る。該血管は下肢に血液を供給する。
【0098】
実施例32では、実施例26の主題は、任意選択で、その期間における腎虚血又は腎梗塞の程度の変化を計測するためにMVOのレベルの変化を判定することをさらに含み得る。該血管は腎臓に血液を供給する。
【0099】
実施例33では、実施例26の主題は、任意選択で、その期間における肝虚血又は肝梗塞の程度の変化を計測するためにMVOのレベルの変化を判定することをさらに含み得る。該血管は肝臓に血液を供給する。
【0100】
実施例34では、実施例26~33のいずれか1つ又は任意の組み合わせにおいて見出されるような、その期間におけるMVOのレベルの変化を判定するという主題は、任意選択で、圧力減衰の計測に基づいて時定数(Tau)を測定することと、様々な時点で測定されたTauの値に基づいてその期間におけるMVOのレベルの変化を判定することとを含み得る。Tauは、圧力の指数関数的減衰の時間の尺度である。
【0101】
実施例35では、実施例26~34のいずれか1つ又は任意の組み合わせの主題は、任意選択で、遮断位置の末梢側の血管に注入液を注射することをさらに含み得る。注入液にはリンゲル液が挙げられる。
【0102】
実施例36では、実施例35の主題は、任意選択で、複数の増加する注入液流量でリンゲル液を注入することをさらに含み得る。
実施例37では、実施例24~36のいずれか1つ又は任意の組み合わせにおいて見出されるようなTauを測定するという主題は、任意選択で、心拍数を得ること及び該心拍数についてTauを補正することを含み得る。
【0103】
実施例38では、実施例26~37のいずれか1つ又は任意の組み合わせの主題は、任意選択で、1以上の計測を実施すること及びその期間にわたってMVOのレベルの変化をリアルタイムで測定することをさらに含み得る。
【0104】
実施例39では、実施例26~38のいずれか1つ又は任意の組み合わせの主題は、任意選択で、その期間にわたってMVOを治療する治療法を適用すること、及びその期間にわたるMVOのレベルの変化に基づいて該治療法の効能を判定することをさらに含み得る。
【0105】
実施例40では、実施例26~39のいずれか1つ又は任意の組み合わせの主題は、任意選択で、その期間にわたって様々な時点で圧力の1以上の計測値についての抵抗の計測を実施することをさらに含むことが可能であり、かつ、実施例26~39のいずれか1つ又は任意の組み合わせにおいて見出されるようなその期間にわたるMVOのレベルの変化を判定するという主題は、任意選択で、抵抗の計測に基づいて血管内抵抗を判定すること、及び様々な時点について測定された血管内抵抗の値に基づいてその期間にわたるMVOのレベルの変化を判定することをさらに含み得る。
【0106】
先述の実施例は限定的でも排他的でもなく、かつ本発明の範囲は、特許請求の範囲及び図面を含めた本明細書全体によって決まることになっている。
上記の説明は添付図面の参照を含んでおり、添付図面は[詳細な説明]の一部を形成している。図面は、例証として、本発明が実行されることが可能な様々な実施形態を示している。本願はさらに「実施例」にも言及する。そのような実施例は、図示又は記述された要素の他にも要素を備えることが可能である。先述の実施例は、本発明の実施例及び変更形態の網羅的又は排他的なリストであるようには意図されていない。
【0107】
本明細書中に記載された方法実施例は、少なくとも一部は機械又はコンピュータに実装されることが可能である。いくつかの実施例は、上記実施例に記述されているような方法を実施する電子装置を構成するように機能する命令を備えてコード化されたコンピュータ可読媒体又は機械可読媒体を含むことができる。そのような方法の実装には、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高水準言語コードなどのようなコードが含まれ得る。そのようなコードは、様々な方法を実施するためのコンピュータ読取り可能な命令を含むことができる。コードは、コンピュータプログラムプロダクトの一部分を形成してもよい。さらに、実施例において、コードは、例えば実行中又はその他の時点で、1以上の揮発性で、非一時的な、又は不揮発性の有形的な、コンピュータ可読媒体に有形的に格納することが可能である。これらの有形的なコンピュータ可読媒体の例には、限定するものではないが、ハードディスク、着脱可能な磁気ディスク、着脱可能な光ディスク(例えばコンパクトディスク及びデジタルビデオディスク)、磁気カセット、メモリカード又はメモリスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)などが挙げられる。
【0108】
上記の説明は、例証であって限定的ではないように意図されている。例えば、上記の実施例(又はその1以上の態様)は、互いに組み合わせて使用可能である。その他の実施形態は、例えば当業者が上記の説明を閲覧すれば、使用されることが可能である。
【0109】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に、そのような特許請求の範囲について与えられる全ての範囲の等価物を加えて基準として、決定されるべきである。