(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】洗面器
(51)【国際特許分類】
A47K 1/04 20060101AFI20230324BHJP
A47K 1/05 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
A47K1/04 C
A47K1/05 Z
(21)【出願番号】P 2021117471
(22)【出願日】2021-07-15
【審査請求日】2021-07-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社藤栄は、令和3年6月2日に、株式会社藤栄主催の展示会において国村あずさが発明した「洗面器」の発明に係る商品を展示して公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】514067591
【氏名又は名称】株式会社OneTaste
(74)【代理人】
【識別番号】100082083
【氏名又は名称】玉田 修三
(72)【発明者】
【氏名】国村 あずさ
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3220857(JP,U)
【文献】特表2009-540163(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0088909(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 1/04、1/05
A47K 3/12、3/18
A47G 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部の周縁から上縁開口状の胴壁が上向きに連成されてなる洗面器であって、
上記胴壁に連続する周壁が上記底板部の周縁から下向きに連成されていると共に、この周壁と上記底板部とによって形成された凹入部に磁石が収容され、かつ、この凹入部がカバー体によって閉塞されて
おり、上記胴壁の周方向の少なくとも一部の内面が平坦面に形成され、この平坦面に、横向き姿勢の当該洗面器における上記底板部にもたせ掛けられたAV機器端末の下端部に係合してAV機器端末を上記底板部と協働して保持する突起が設けられていることを特徴とする洗面器。
【請求項2】
カバー体の全体が上記凹入部に嵌入されている請求項1に記載した洗面器。
【請求項3】
凹入部に収容されている磁石がカバー体の上面に当接している請求項1ないし請求項
2のいずれか1項に記載した洗面器。
【請求項4】
上記周壁の外周面が上記胴壁の外周面に段差なく滑らかに連続している請求項1ないし請求項
3のいずれか1項に記載した洗面器。
【請求項5】
磁石が凹入部の複数箇所に収容されている請求項1ないし請求項
4のいずれか1項に記載した洗面器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性を備える浴室の壁面に磁力を利用して横向き姿勢で吸着保持させることのできる洗面器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の洗面器が先行例1(特許文献1参照)によって提案されている。先行例1では、2枚のゴム状の磁石のうちの一方を浴室の壁面に貼り付けておき、他方を洗面器の平坦な円形の底の裏側に貼り付けておくことによって、壁面側の磁石に洗面器側の磁石を吸い付かせて洗面器を壁面に貼り付けられるようにしている。また、同種の湯おけが先行例2(特許文献2参照)によって提案されている。さらに、先行例3には、浴室用洗面器の外底に設けた磁石体を浴室の壁面に固定した磁性金属に吸着させることによって、洗面器を壁面に横向き掛けして保持させるようにした洗面器についての記述がある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭62-85289号公報
【文献】実登第3220857号公報
【文献】特開2007-236899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、先行例1に記載されているものは、洗面器の底の裏側に磁石がむき出し状態で貼り付けられているので、一般的な洗面器との見栄えや使用感に違和感を感じたり清掃をしにくかったりするだけでなく、磁石の貼り付け箇所に錆やカビが発生したり水垢が付着したりして汚れやすいという問題や、磁石の貼り付け箇所が湯気や水に濡れて早期に剥がれやすくなったり、洗面器に加わる衝撃で磁石が破損したりするおそれがあるという問題があった。他の先行例1,2についても同様の問題があった。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、磁石を利用して磁性面である浴室の壁面に横向き姿勢で保持させることのできる洗面器を提供することを基本とし、磁石の取付箇所が汚れにくくなり、磁石が脱落したり破損したりすることがなくなるほか、見栄えや使用感に違和感を感じたりしにくい洗面器を提供することを目的としている。また、本発明は、スマートフォンや小形テレビ、小形ラジオといったAV機器端末のスタンド型ホルダーとしても使用可能な洗面器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る洗面器は、底板部の周縁から上縁開口状の胴壁が上向きに連成されてなる。そして、上記胴壁に連続する周壁が上記底板部の周縁から下向きに連成されていると共に、この周壁と上記底板部とによって形成された凹入部に磁石が収容され、かつ、この凹入部がカバー体によって閉塞されており、上記胴壁の周方向の少なくとも一部の内面が平坦面に形成され、この平坦面に、横向き姿勢の当該洗面器における上記底板部にもたせ掛けられたAV機器端末の下端部に係合してAV機器端末を上記底板部と協働して保持する突起が設けられている、というものである。
【0007】
このように構成された洗面器によれば、磁石を収容している凹入部がカバー体によって閉塞されているため、磁石の取付箇所が錆やカビ、水垢などで汚れにくくなり、衝撃によって磁石が脱落したり破損したりすることもなくなるほか、磁石がむき出しになっていないので浴室の壁面に吸着保持させたときに壁面が傷付いて痛むということがなく、さらに、見栄えの違和感を感じたり、使用感に違和感を感じたりしにくい。
【0008】
また、平坦面を下にして当該洗面器を床面に横向き姿勢で載置しておいたり浴室の壁面に横向き姿勢で吸着保持させておいたりした状態で、AV機器端末たとえばスマートフォンの下端部を突起に係合させ、かつ、その上端部を底板部にもたせ掛けておくと、当該洗面器がスマートフォンのスタンド型ホルダーとして作用する。
【0009】
本発明では、カバー体の全体が上記凹入部に嵌入されていることが望ましい。これによれば、洗面器の下面が平坦になるので、洗面器を浴室の床に置いたり床の上を擦らせて置き場所を変えたりするときにカバー体に衝撃が加わりにくくなってカバー体が脱落したり破損したりしにくいだけでなく、一般的な形状の洗面器と同じような使用感が得られる。また、側面視でカバー体が見えなくなるのでそれだけ見栄えの違和感を感じなくなる。
【0010】
本発明では、凹入部に収容されている磁石がカバー体の上面に当接していることが望ましく、これによれば、カバー体を設けることによる磁石の吸着作用の減衰が抑制される。ここで、「カバー体の上面」とは、凹入部を閉塞しているカバー体の内面のことである。
【0011】
本発明では、上記周壁の外周面が上記胴壁の外周面に段差なく滑らかに連続していることが望ましい。これによれば、洗面器の外観上、胴壁と周壁が一体化して見栄え使用感が良くなり、一般的な洗面器との見栄えや使用感に違和感を感じたりすることがなくなる。
【0012】
本発明では、磁石が凹入部の複数箇所に収容されている、という構成を採用することが可能である。これによれば、サイズの小さい磁石を用いて底板部全体で磁石の吸着作用を発揮させやすくなる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明に係る洗面器は、磁石を利用して浴室の壁面に横向きに吸着保持させることができるために、洗面器の内面に付着している水滴が流れ落ちやすくなって、それだけ水切り性が向上する。また、この洗面器は、スマートフォンのようなAV機器端末のスタンド型ホルダーとして使用することもでき、そのような形態で使用すると、浴室や居間で音楽や動画などを手軽に楽しむことができるという利点を有している。その上、磁石の取付箇所がカビや水垢で汚れにくくなり、衝撃によって磁石が脱落したり破損したりすることがなくなるという効果を奏するほか、磁石がむき出しになっていないので見栄えや使用感み違和感を感じたりしにくいという効果も奏する。また、カバー体に衝撃が加わりにくいために、カバー体が脱落したり破損したりしにくくなり、さらに、磁石が外部からは見えないので一般的な構成の洗面器との見栄えの違和感も感じなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る洗面器の概略斜視図である。
【
図5】洗面器を浴室の壁面に吸着保持させた状態を例示した側面図である。
【
図6】AV機器端末のスタンド型ホルダーとしての使用形態を例示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る洗面器100の概略斜視図、
図2は同概略側面図、
図3
は同概略分解斜視図である。また、
図4は同洗面器100の要部の縦断側面図、
図5は洗面器100を浴室の壁面200に吸着保持させた状態を例示した側面図である。
【0016】
図1のように、洗面器100は、平面視略円形の底板部10の周縁から上縁開口状の胴壁20が上向きに連成されてなる。図例の洗面器100は略碗形に形作られていて、上拡がり状の胴壁20の上縁に縁枠21が備わっているほか、胴壁20における周方向の一部が傾斜した平坦部22によって形成されていて、その平坦部22の上縁に板片状の把手23が外向きに連成されている。平坦部22の内面は平坦面になっている。底板部10、平坦部22を含む胴壁20及び把手23は樹脂で一体成形されている。なお、底板部10の形状は円形に限らず、三角形や矩形といった他の形状であってもよい。
【0017】
図4に示したように、底板部10には、その周縁から下向きに、上記した胴壁20に連続する周壁30が連成されている。この周壁30は、底板部10の周縁から下窄まり状に延び出てその外周面が上記した胴壁20の外周面に段差なく滑らかに連続しているのであって、この実施形態では、周壁30が高さの低いリブ形状に形成されている。
図2及び
図5には、胴壁20と周壁30との境界線を一転鎖線イで示してある。そして、このようなリブ状の周壁30と底板部10とによって形成されている下向きに開口した凹入部40に磁石50が収容されていると共に、この凹入部40が平板状のカバー体60によって閉塞されている。ここで説明した凹入部40への磁石の収容形態やカバー体60の凹入部40への装着形態を次に詳細に説明する。
【0018】
図3に示したように、底板部10の下面には、その中央部の1箇所とその周囲の3箇所とにそれぞれ円形の凹所31…が偏りを生じないようにバランスよく配備されている。これに対し、カバー体60の上面には、その中央部の1箇所とその周囲の3箇所とにそれぞれ背低筒形の枠部61…が形成されていて、これらの枠部61…のそれぞれが上記した底板部10の円形の凹所31…に各別に対応している。そして、
図4のようにカバー体60が上記したリブ状の周壁30の内側に嵌め込まれていると共に、サイズの小さな円柱状の磁石50が、カバー体60側の背低筒形の枠部61と底板部10側の円形の凹所31とによって形成される4箇所の空所にそれぞれ嵌め込まれている。また、カバー体60側の枠部61に嵌入されている磁石50はカバー体60の上面に当接している。また、リブ状の周壁30の内側に嵌め込まれているカバー体60は、その全体が凹入部40から突出していない形態で凹入部40に嵌入されている。
【0019】
凹入部40への磁石の収容形態やカバー体60の凹入部40への装着形態が上記のようになっていると、洗面器100の外観上、胴壁20と周壁30が一体化して見栄えが良くなり、一般的な洗面器との見栄えの違和感を感じたり、使用感に違和感を感じたりすることがない。また、磁石50を収容している凹入部40がカバー体60によって閉塞されているため、磁石50の取付箇所がカビや水垢で汚れにくくなり、錆も発生しにくくなり、衝撃によって磁石50が脱落したり破損したりすることもなくなるほか、磁石50がむき出しになっていないので見栄えの違和感を感じたりしにくい。さらに、洗面器100を浴室の床に置いたり床の上を擦らせて置き場所を変えたりするときにカバー体60に衝撃が加わりにくくなり、そのことが、カバー体60脱落や破損を防ぐことに役立つ。さらに、凹入部40に収容されている磁石50がカバー体60の上面に当接しているために、カバー体60を設けることによる磁石50の吸着作用の減衰が抑制されるという利点もある。そのほか、この実施形態では、4個のサイズの小さな磁石50…が、凹入部40内で。中央部とその周囲との合計4箇所にバランスよく振り分けて配置されている。このために、4個の磁石50…の吸着作用がカバー体60の下面全体で満遍なく発揮されるようになり、そのことが浴室の壁面に洗面器100を確実に吸着保持させることに役立つ。
【0020】
以上説明した実施形態では、サイズの小さな4個の磁石50…を使用しているけれども、凹入部40に収容する磁石50の数は4個に限らず、それより多くても少なくてもよい。また、磁石50は、カバー体60側の枠部61に接着しておいても、底板部10に接着するようにしておいてもよい。カバー体60についても、周壁30との隙間を接着剤で埋めて水密性を確保しておけば、凹入部40内に水が入らなくなって錆やカビの発生が防止されるようになる。
【0021】
この実施形態に係る洗面器100は、
図5のように、磁石50を収容している凹入部40(
図3参照)側を磁性面である浴室の壁面200に吸着固定することが可能である。こうしておくと、洗面器100が横向きになっているので、洗面器100の内面に付着している水滴が流れ落ちやすくなって、それだけ水切り性が向上する。
【0022】
ところで、実施形態に係る洗面器100は、上記したように略碗形に形作られていて、上拡がり状の胴壁20の上縁に縁枠21が備わっている。そこで、このような胴壁の形状に着目し、実施形態の洗面器100では、胴壁20における周方向の一部を傾斜した平坦部22によって形成し、その平坦部22の上縁に板片状の把手23を外向きに連成している。そして、スマートフォンや小形テレビ、小形ラジオといったAV機器端末のスタンド型ホルダーとして使用できるようにするための工夫を講じている。すなわち、
図1に示したように、上拡がり状の胴壁20の周方向の一部に形成されている平坦部22の内面である平坦面に横長の背低リブでなる突起24を設けている。そして、横向き姿勢の当該洗面器100における底板部10にもたせ掛けた偏平なAV機器端末の下端部を上記突起に係合させておくと、突起24と底板部10とが協働することによってそのAV機器端末が保持されるように構成している。
【0023】
図6はスタンド型ホルダーとしての使用形態を例示した概略斜視図である。同図の使用形態では、浴室の壁面200に洗面器100の平坦部22を下にして、かつ、横向き姿勢にして底板部10を吸着保持させ、平坦部22の内面である平坦面を利用してスマートフォンSの下端部を突起24に係合させると共に、底板部10にスマートフォンSの上端部をもたせ掛けている。このような使用形態によると、浴室の壁面200や洗面器100の胴壁20が音を反射して迫力のある音響効果が得られるために、使用者は入浴しながら音楽や動画を楽しめるようになる。また、図示していないけれども、浴室や居間の床の上に、洗面器100の平坦部22を下にして、かつ、横向き姿勢にしてスマートフォンのスタンドホルダーとして使用することも可能であり、この場合には、把手23が床面に載架されるために、洗面器100が斜め上向きになって好適な音響効果が得られる。
【0024】
なお、洗面器100を吸着保持させる浴室の壁面200は、磁性体が埋め込まれた壁のように壁面自体が磁性面を形成しているものであっても、プラスチックの壁面に磁性板を貼り付けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0025】
10 底板部
20 胴壁
24 突起
30 周壁
40 凹入部
50 磁石
60 カバー体
100 洗面器
S スマートフォン(AV機器端末)