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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/50 20060101AFI20230324BHJP
【FI】
H01H73/50 G
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021124379
(22)【出願日】2021-07-29
(62)【分割の表示】P 2019053288の分割
【原出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2021170556
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆
(72)【発明者】
【氏名】今川 誠
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 亮平
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-251049(JP,A)
【文献】特開2008-059959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00 - 69/01
H01H 71/00 - 83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
電源側の端子と負荷側の端子とに繋がる電路と、
該電路を開閉する接点部と、
前記電路に流れる電流により電磁石となる吸引体と、
前記接点部の閉状態を保持可能であり且つ前記吸引体に隙間をあけて対向配置される保持状態と、前記吸引体側に回動することによって前記接点部の閉状態に対する保持を解除して前記接点部を開放可能とする解除状態とに切り替わる切替動作をとるように構成される可動体と、
前記可動体を付勢する付勢手段とを備え、
前記ケースと前記可動体の一方は、前記回動の起点となる軸部を有し、
前記ケースと前記可動体の他方は、前記軸部を受ける軸受部を有し、
前記軸部と前記軸受部との間には、前記可動体が保持状態である場合に、前記可動体の前記吸引体側へのスライドのための動き代となるスペースが設定され、
前記付勢手段は、前記可動体が少なくとも前記保持状態である場合に、前記可動体を前記動き代となるスペースの範囲内でのスライドを許容するようにして前記吸引体から離間する方向へ付勢する、
回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源側と負荷側とを接続する回路に過大電流が流れた際に回路を遮断して負荷側の機器等を保護するための回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の回路遮断器には、例えば、図14に示すように、電源側の端子と負荷側の端子とにつながる電路と、該電路を開閉する一対の接点90、91と、前記電路に流れる電流によって磁力を発生させる磁性板(以下、固定側磁性板と称する)92と、前記固定側磁性板92との間にスペースをあけて対向配置され、且つ前記磁力を受けて前記固定側磁性板92に接近する磁性板(以下、可動側磁性板と称する)93とを備えているものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記可動側磁性板93は、常態においては接点90、91が接触している状態を保持しているが、電路に短絡電流のような過大電流が流れると固定側磁性板92から発生した大きな磁力によって該固定側磁性板92に接近し、これにより、図15に示すように、前記保持を解除するように構成されている。
【0004】
これにより、前記回路遮断器9は、電路に過大電流が流れたときに電路を遮断できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-234914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の回路遮断器9では、固定側磁性板92と可動側磁性板93との間にスペースが形成されている分、固定側磁性板92で発生させた磁力が可動側磁性板93に伝わりにくくなる。これに伴い、上記従来の回路遮断器9では、可動側磁性板93の前記保持を解除する動作が遅くなる結果、電路に過大電流が流れてから電路を遮断するまでに時間がかかることが問題となっていた。
【0007】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、電路に過大電流が流れた際に電路を素早く遮断できる回路遮断器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の回路遮断器は、
ケースと、
電源側の端子と負荷側の端子とに繋がる電路と、
該電路を開閉する接点部と、
前記電路に流れる電流により電磁石となる吸引体と、
前記接点部の閉状態を保持可能であり且つ前記吸引体に隙間をあけて対向配置される保持状態と、前記吸引体側に回動することによって前記接点部の閉状態に対する保持を解除して前記接点部を開放可能とする解除状態とに切り替わる切替動作をとるように構成される可動体と、
前記可動体を付勢する付勢手段とを備え、
前記ケースと前記可動体の一方は、前記回動の起点となる軸部を有し、
前記ケースと前記可動体の他方は、前記軸部を受ける軸受部を有し、
前記軸部と前記軸受部との間には、前記可動体が保持状態である場合に、前記可動体の前記吸引体側へのスライドのための動き代となるスペースが設定され、
前記付勢手段は、前記可動体が少なくとも前記保持状態である場合に、前記可動体を前記動き代となるスペースの範囲内でのスライドを許容するようにして前記吸引体から離間する方向へ付勢する。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の回路遮断器は、可動体の動作速度を速めることによって、電路に過大電流が流れた際に電路を素早く遮断できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る回路遮断器の斜視図である。
図2図2は、同実施形態に係る回路遮断器の分解図である。
図3図3は、同実施形態に係る回路遮断器の吸引体の説明図である。
図4図4は、同実施形態に係る回路遮断器の可動体の説明図である。
図5図5は、同実施形態に係る回路遮断器の内部の拡大図である。
図6図6は、図5のVI-VI線における断面の拡大図である。
図7図7は、同実施形態に係る回路遮断器の軸部と軸受部の説明図である。
図8図8は、同実施形態に係る回路遮断器の動作説明図であって、可動体が保持 状態に切り替えられている状態の説明図である。
図9図9は、図8の領域IXの拡大図である。
図10図10は、同実施形態に係る回路遮断器の動作説明図であって、可動体が 吸引体側にスライドした状態の説明図である。
図11図11は、図10の領域XIの拡大図である。
図12図12は、同実施形態に係る回路遮断器の動作説明図であって、可動体が 吸引体側に回動した状態の説明図である。
図13図13は、図12の領域XIIIの拡大図である。
図14図14は、従来の回路遮断器の説明図であって、電路を遮断する前の状態 の説明図である。
図15図15は、従来の回路遮断器の説明図であって、電路を遮断した後の状態 の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る回路遮断器について添付図面を参照しつつ説明を行う。
【0012】
本実施形態に係る回路遮断器1は、図2に示すように、ケース2と、電源側の端子T1と負荷側の端子T2とに繋がる電路と、該電路を開閉する接点部3と、電路に流れる電流により電磁石となる吸引体4と、接点部3の閉状態を保持し且つ吸引体4に対向配置される保持状態と、吸引体4側に回動して該吸引体4に接触することにより、接点部3の閉状態に対する保持を解除することで接点部3を開放可能とする解除状態とに切り替わる切替動作をとるように構成される可動体5と、可動体5を直接的又は間接的に回動方向の後方側に向けて付勢する付勢手段6と、前記接点部3を開閉する開閉機構7と、高温になると可動体5を吸引体4側に向けて移動させるように変形するバイメタル8と、を備えている。
【0013】
ケース2は、図1に示すように、使用時において分電盤(より具体的には、分電盤への取り付け面)に対向配置される背面20と、該背面20とは反対側の正面21と、横幅方向で並ぶ一対の横側面22と、縦幅方向で並ぶ一対の縦側面23とを有する。なお、本実施形態では、背面20と正面21とが並ぶ方向を高さ方向と称して以下の説明を行う。なお、ケース2の横側面22は、分電盤に設置された状態において、別のケース2の横側面22と対向配置される部分である。
【0014】
図2に示すように、接点部3は、ケース2内での配置位置が固定されている固定側接点部30と、該固定側接点部30に対して接離可能な状態で対向配置される可動側接点部31とを有する。
【0015】
可動側接点部31と固定側接点部30とは前記高さ方向において対向配置されている。そのため、可動側接点部31は、前記高さ方向において固定側接点部30に接離するように構成されている。また、本実施形態では、可動側接点部31が固定側接点部30よりもケース2の正面21側に配置されている。
【0016】
吸引体4は、電路に流れる電流の大きさに応じて磁力を発生させるように構成されている。本実施形態に係る吸引体4は、図3に示すように、互いに対向する一対の側壁部40と、該一対の側壁部40に連続する中間壁部41とを有する。
【0017】
一対の側壁部40には、該一対の側壁部40が対向する方向において貫通する軸孔400が形成されている。
【0018】
また、吸引体4は、一対の側壁部40が前記横幅方向で並ぶようにしてケース2内に配置されており、且つ各側壁部40の軸孔400には、ケース2の横側面22の内側から延出する支軸220が挿通されている。これにより、吸引体4は、ケース2内において、前記横幅方向に延びる支軸220を中心として回転可能となっている。
【0019】
なお、支軸220の先端側は、少なくとも前記縦幅方向における横幅が軸孔400の孔径よりも小さくなっている。そのため、吸引体4は、軸孔400を画定する縁部と支軸220との間に形成されるスペースの範囲内で前記縦幅方向にスライド可能である。
【0020】
さらに、側壁部40は、可動体5に対向配置される吸引側対向面401を有する。吸引側対向面401は、前記高さ方向に対して交差する方向に傾斜している。より具体的に説明すると、吸引側対向面401は、一端部側が他端部側よりも可動体5に近付くようにして傾斜している。なお、本実施形態では、吸引体4自体が前記高さ方向に対して傾いた姿勢でケース2内に配置されている。
【0021】
可動体5は、図4に示すように、吸引体4に対向配置する可動本体部50と、回動起点となる軸部51であって、可動本体部50につながる軸部51と、を有する。
【0022】
可動本体部50は、吸引側対向面401に対向配置される可動側対向面500を有する。
【0023】
可動体5が前記保持状態である場合、吸引側対向面401は、前記高さ方向に沿って真っすぐに延びた姿勢になる。一方、吸引側対向面401は、上述のように前記高さ方向に対して交差する方向に傾斜しているため、可動体5が前記保持状態である場合は、吸引側対向面401が可動側対向面500に対して傾いた姿勢となっている。
【0024】
これに伴い、吸引側対向面401と可動側対向面500との間の隙間は、吸引側対向面401の一端側よりも吸引側対向面401の他端側の方が広くなっている。
【0025】
可動本体部50には、図2に示すように、バイメタル8によって押し操作される押操作部52が設けられている。押操作部52は、バイメタル8よりも、可動体5の保持状態から解除状態への切替動作時の回動方向における前方側に配置されており、バイメタル8と対向している。そのため、バイメタル8が吸引体4側に撓むと、これに伴い、押操作部52が吸引体4側に押されるようになっている。
【0026】
軸部51は、図4に示すように、軸部51自身の軸線方向における中央部に位置し且つ可動本体部50につながる接続部510と、該軸線方向における両端側に位置する一対の軸本体部511とを有する。各軸本体部511は、接続部510から前記横幅方向外側に向かって延出するように形成されており、先端側になるにつれて吸引体4側(可動体5の回動方向前方側)に向かうようにして傾斜している。そのため、軸本体部511が接続部510から延出する方向は、接続部510の軸線方向に対して傾斜している。
【0027】
また、可動側対向面500は、少なくともスライド時に吸引側対向面401の一端部に接触するように構成されている(図5参照)。本実施形態では、可動体5がスライドする前の状態から可動側対向面500が吸引側対向面401の一端部に接触し、スライドした後、すなわち、回動時もまた、可動側対向面500が吸引側対向面401の一端部に接触するように構成されている。
【0028】
軸本体部511は、縦断面が多角形状(本実施形態では矩形状)であり、図6図7に示すように、吸引体4側に向けて配置される前面511aと、該前面511aとは反対側の後面511bと、前面511aと後面511bとに連続する一対の周縁面511cと、を有する。
【0029】
軸本体部511の前面511a、後面511b、及び一対の周縁面511cは、一つながりに形成された隣接面である。また、本実施形態では、図7に示すように、前面511aと各周縁面511c、後面511bと各周縁面511cは、直交又は略直交しており、前面511aと各周縁面511cとの境目、及び後面511bと各周縁面511cとの境目が稜線部511dとして構成されている。
【0030】
また、本実施形態の軸本体部511は、打ち抜き加工により形成されており、各周縁面511cには打ち抜き加工の加工痕跡がついた粗面領域511eと、該粗面領域511eよりも平滑な平滑面領域511fとが前記軸部51自身の板厚方向で並んでいる。そして、平滑面領域511fは、粗面領域511eよりも吸引体4に近い位置に配置されている。
【0031】
ここで、ケース2は、稜線部511dに対して非接触となる状態で隣接面を受ける軸受部24と、保持状態の可動体5の後面511bを受ける後面用受部25とを有する。
【0032】
また、軸受部24は、隣接面である一方の周縁面511c(ケース2の背面20側に位置する周縁面511c)を受けている。本実施形態に係る軸受部24は、前記一方の周縁面511cを受ける受面240と、稜線部511dから離れる方向に向かって湾曲する(外方に向かって膨らむように湾曲する)逃部241と、を有しており、この受面240で周縁面511cを受けている。さらに、受面240は、前記一方の周縁面511c側に向かって凸状に湾曲する。
【0033】
受面240と前記一方の周縁面511cとは、常時接触するように構成されている。また、可動体5が回動する際、軸本体部511は受面240に沿って転がるようにして吸引体4側若しくは吸引体4とは反対側に移動するように構成されている。
【0034】
受面240は、可動体5の回動(切替動作)時における稜線部511dの可動領域外に形成されている。また、受面240は、前記一方の周縁面511c側に向かって凸状に湾曲している。さらに、受面240は、周縁面511cの平滑面領域511fを受けるように構成されている。
【0035】
受面240の頂部は、前記横幅方向に沿って延びている。一方、軸本体部511は、図6図5の断面線VI-VIに対応する位置における回路遮断器1の断面図)に示すように、先端側になるにつれて吸引体4側に向かうようにして傾斜しているため、可動体5が保持状態である場合においては、軸本体部511の基端部が受面240の頂部の後方に配置され、軸本体部511の先端部が受面240の頂部と対応する位置(頂部の上方)に配置されている。すなわち、軸本体部511は、受面240の頂部の後方から該頂部と対応する位置に向かって延出している。
【0036】
逃部241は、可動体5の切替動作時における稜線部511dの可動領域をかわすようにして形成されている。これにより、本実施形態に係る軸受部24は、稜線部511dに対しては非接触となるように構成されている。なお、本実施形態の軸本体部511には4つの稜線部511dが含まれているため、軸受部24には4つの逃部241が形成されている。
【0037】
さらに、本実施形態に係る軸受部24は、軸本体部511の前面(吸引体4側に向けて配置される面)の前方にスペースが形成されるように構成されており、このスペースが可動体5のスライドの動き代となる。
【0038】
また、上述のように、軸受部24は、軸本体部511の平坦な底面を受面240で受けており、可動体5が前方にスライドした状態においては、可動体5の回動方向前方側(吸引体4側に回動する方向側)にスペースが形成されるように構成されている。そのため、このスペースが可動体5の回動の動き代となる。なお、可動体5の回動の動き代は、可動体5がスライドする前から形成されるようにしてもよいし、可動体5がスライドすることで形成されるようにしてもよい。
【0039】
後面用受部25は、保持状態に切り替えられている可動体5の接続部510の後面511bを受けるように構成されているが、例えば、軸本体部511の後面511bや、可動本体部50の後面511bを受けるように構成されていてもよい。なお、接続部510の後面511b、可動本体部50の後面511bとは、軸本体部511の後面511bと同様、吸引体4側とは反対側に向けて配置されている面のことである。
【0040】
図2に示すように、付勢手段6(以下、接触用付勢手段6と称する)は、ケース2内に位置決めされた状態で固定されており、吸引体4を可動体5側に向けて付勢するように構成されている。すなわち、可動体5は、吸引体4を介して接触用付勢手段6の付勢力を受けている。
【0041】
より具体的に説明すると、可動体5は、接触用付勢手段6の付勢力を常に受けている。そして、可動体5が保持状態である場合においては、該付勢力を受けたまま後面511bが後面用受部25に当接している。
【0042】
さらに、可動体5が解除状態に切り替わった場合(吸引体4側に移動して後面511bが後面用受部25から離れた場合)は、前記付勢力によって後面用受部25に当接する位置、すなわち、吸引体4から離間する方向における動き代の一端に対応する位置まで押し戻され、再び後面511bが後面用受部25に当接する。
【0043】
このように、接触用付勢手段6は、吸引体4と可動体5の接触状態を維持するだけでなく、電路を遮断するまでの間は前記縦幅方向での可動体5の配置位置を決定し、電路を遮断した後においては可動体5の位置を初期位置に復帰させる機能を担っている。
【0044】
また、接触用付勢手段6は前記高さ方向において、吸引体4の回動起点(支軸220の位置)から可動体5の回動起点側(軸部51側)にずれた位置(本実施形態では、吸引体4の回動起点と可動体5の回動起点の間)で吸引体4(より具体的には吸引体4の中間壁部41)に接触するように配置されており、吸引体4を可動体5に向けて付勢している。
【0045】
これに伴い、可動体5は、吸引体4を介して接触用付勢手段6の付勢力を受けているが、可動本体部50の後面511bが後面用受部25によって受け止められているため、縦幅方向における配置位置が定まるように構成されている。
【0046】
開閉機構7は、ケース2外部から手動操作可能な手動操作部70と、可動側接点部31と固定側接点部30とが対向する対向方向で移動可能であり且つ該移動に伴って可動側接点部31を固定側接点部30側に押込操作する押込操作部71と、手動操作部70に対する操作に連動して押込操作部71を前記対向方向で移動させる移動操作部72と、押込操作部71を、可動側接点部31が固定側接点部30から離間する方向と同方向に向けて付勢する付勢手段(以下、押戻用付勢手段)73と、を備えている。
【0047】
手動操作部70は、ケース2内に回転可能に設けられている回転部700と、該回転部700を回転周方向における一方側に向けて付勢する操作用付勢手段701と、該回転部700からケース2外に延出する操作レバー702と、を有する。
【0048】
本実施形態に係る手動操作部70は、操作レバー702を操作することによって、回転部700を回転周方向における他方側に向けて回転させると、押込操作部71が可動側接点部31を固定側接点部30側に押込操作し、これにより、接点部3を閉じるように構成されている。
【0049】
押込操作部71は、可動側接点部31が固定側接点部30に接近する方向と同方向での移動に伴って、可動側接点部31を固定側接点部30に向けて押し込むように構成されており、本実施形態では、可動側接点部31をケース2の正面21側から固定側接点部30側に向けて押し込むように構成されている。
【0050】
移動操作部72は、押込操作部71に対してケース2の正面21側で当接する押圧部材720と、押圧部材720と回転部700とを連結するリンク部721と、を有する。
【0051】
押圧部材720は、細長い板状に形成されており、長手方向における中央部がリンク部721によって回転部700(より具体的には、回転部700における回転中心から外れた位置)に連結されている。
【0052】
また、押圧部材720は、長手方向におけるリンク部721の連結位置よりも一端側が押込操作部71に当接し、且つ長手方向におけるリンク部721の連結位置よりも他端側が可動本体部50に掛止可能となっている。
【0053】
なお、本実施形態では、可動本体部50に押圧部材720の前記他端側を掛止するための掛止部501が設けられている。可動本体部50には、吸引側対向面401に対して直交する方向において貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔を画定する縁部によって掛止部501が構成されている。
【0054】
また、押圧部材720の前記一端部は、手動操作部70の回転部700と押込操作部71との間に配置されており、可動側接点部31が固定側接点部30から離間している状態においては、押込操作部71によって回転部700に押し付けられるように構成されている。このとき、押圧部材720の前記他端部は、掛止部501上に配置される。
【0055】
本実施形態の押圧部材720は、回転部700を前記回転周方向における他方側に回転させると、押圧部材720が回転部700から離れる方向に移動するように構成されている。そして、押圧部材720は、回転部700から離れる方向に移動すると、該押圧部材720の前記一端側によって押込操作部71を押し込み(可動側接点部31が固定側接点部30に接近する方向と同方向に押し込み)、該押圧部材720の前記他端側が掛止部501に掛止されるように構成されている。これにより、可動側接点部31と固定側接点部30とが接触した状態が維持されるようになっている。
【0056】
なお、掛止部501に対する押圧部材720の前記他端側の掛止状態が解除されると、押込操作部71が押戻用付勢手段73の付勢力によって押し戻されて、可動側接点部31と固定側接点部30との接触状態が解除されるようになっている。
【0057】
バイメタル8は、電路に流れる過電流により加熱され、該加熱に伴って撓むように形成されている。バイメタル8は、帯板状であり、一方の板面側の熱膨張率が他方の板面側の熱膨張率よりも高くなっている。
【0058】
また、バイメタル8は、長手方向における一端側が可動体5の押操作部52に対向配置されており、加熱に伴って撓む際に押操作部52を押すように構成されている。そして、バイメタル8によって押操作部52が押されると、可動体5は吸引体4側に回動する。
【0059】
本実施形態に係る回路遮断器1の構成は以上の通りである。本実施形態に係る回路遮断器1によれば、電路(接点部30,31)が開いており、且つ押圧部材720の前記他端部が可動本体部50の掛止部501に掛止されていない状態において、可動体5の後面511bが後面用受部25に当接している。
【0060】
また、電路(接点部30,31)を閉じて押圧部材720を可動本体部50に掛止する際、すなわち、可動体5を保持状態に切り替える際においても、可動体5の後面511bは後面用受部25に当接したままである(図8図9参照)。
【0061】
なお、電路(接点部30,31)を閉じて押圧部材720を掛止部501に掛止すると、可動体5は、押圧部材720からの外力(前面511a側から後面511b側に向かう外力)を受けるが、該可動体5の軸部51が軸受部24によって受け止められているため、前記高さ方向での可動体5の位置ずれが防止される。
【0062】
そして、電路に過大電流が流れると、吸引体4が磁力を発生させ、この磁力によって可動体5が吸引体4側へのスライドし(図10図11参照)、また、回動する(図12図13参照)。なお、可動体5のスライドと回動とは同時に起こってもよい。
【0063】
本実施形態の回路遮断器1では、可動体5が保持状態に切り替えられている状態においては、可動体5と吸引体4、より具体的には可動側対向面500と吸引側対向面401の前記一端部とが接触しているため、電路に過大電流が流れてから可動体5が動き始めるまでの応答速度(吸引体4側にスライドし始めるまでの応答速度)が速くなる。すなわち、電路に過大電流が流れてから可動体5が動き始めるまでの応答時間が短縮される。
【0064】
また、可動体5が可動側対向面500と吸引側対向面401の前記一端部とが接触しているため、電路に小さな過大電流(従来の回路遮断器が瞬時引外しできる範囲の短絡電流よりも低い領域の短絡電流)が流れた場合であっても可動体5がスライドする。このように、回路遮断器1では、可動体5の感度も高まる。
【0065】
さらに、回路遮断器1では、可動体5が保持状態に切り替わっている場合、可動側対向面500が軸部51側であるほど吸引側対向面401側に位置するように傾斜するため、吸引体4と可動体5との間のスペースは軸部51側であるほど狭くなる。そして、可動体5が吸引体4に生じた磁力を受けて軸部51が吸引体4側に動くと、前記スペースの軸部51側がさらに狭まるため、前記磁力が可動体5に伝わり易くなり、可動体5の動作速度を速めることができる。
【0066】
また、吸引体4は、回転可能であるため、可動体5の回動に合わせて吸引側対向面401の向きが変わる。本実施形態では、吸引体4の回動起点が吸引側対向面401の他端部側に設定されており、スライドする可動体5によって吸引側対向面401の一端部側が押し操作される。このとき、吸引側対向面401の他端部側は可動側対向面500に接近する方向に移動するため、可動体5のスライド前に可動側対向面500と吸引側対向面401との間隔をより狭めておくことができる。
【0067】
そして、可動体5がスライドの動き代の分だけ吸引体4側にスライド(進出)すると、可動側対向面500と吸引側対向面401との間のスペースがさらに狭まる。これに伴い、吸引体4と可動体5の間の磁気抵抗が小さくなるため、吸引体4の磁力が可動体5に伝わり易くなる。これにより、可動体5が吸引体4側に回動する動作速度が速まる。従って、本実施形態に係る回路遮断器1は、可動体5が動き始めてから電路を遮断するまでの動作時間を短縮でき、遮断時の応答性を向上させることができるという優れた効果を奏し得る。
【0068】
なお、可動体5が保持状態に切り替えられている場合、この可動体5は、接触用付勢手段6によって吸引体4から離間する方向に向けて付勢された状態で動き代の前記一端に位置し、且つ後面511bが後面用受部25に当接するため、保持状態に切り替えられている可動体5を前記動き代の一端に留めておくことができる。従って、可動体5が保持状態に切り替えられ、且つ電路に過大電流が流れる前の状態においては、可動体5と吸引体4との間隔を一定の距離で保つことができ、これにより、可動体5の切替動作の安定性を高めることができる。
【0069】
なお、本発明の回路遮断器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0070】
上記実施形態において、可動側接点部31と固定側接点部30とは前記高さ方向において対向配置されていたが、この構成に限定されない。例えば、可動側接点部31と固定側接点部30とは前記縦幅方向において対向配置されていてもよいし、前記高さ方向に対して交差(傾斜)する方向において対向配置されていてもよい。
【0071】
上記実施形態において、可動側接点部31が固定側接点部30よりもケース2の正面21側に配置されていたが、この構成に限定されない。例えば、可動側接点部31は、固定側接点部30よりもケース2の背面20面側に配置されていてもよい。
【0072】
上記実施形態では、吸引体4を前記高さ方向に対して傾斜させた姿勢で配置することによって、吸引側対向面401が可動側対向面500に対して傾斜するように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、吸引体4を前記高さ方向に対して傾けずに配置し、吸引側対向面401を前記高さ方向に対して傾斜する傾斜面で構成したり、吸引体4に対して可動体5が傾いた姿勢で配置されていたりしてもよい。
【0073】
上記実施形態では、吸引側対向面401が可動側対向面500に対して傾斜するように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、吸引側対向面401と可動側対向面500とが平行となるように構成されていてもよい。この場合、可動体5が待機状態、若しくは保持状態であると、吸引側対向面401全体が可動側対向面500から離間する。
【0074】
上記実施形態において、吸引側対向面401は、前記一端部側が可動側対向面500に接近するようにして傾斜していたが、この構成に限定されない。例えば、吸引側対向面401は、前記他端部側が可動側対向面500に接近するようにして傾斜していてもよい。
【0075】
上記実施形態において、吸引体4は回転可能であったが、この構成に限定されない。例えば、吸引体4は回転不能であってもよい。
【0076】
上記実施形態において、吸引体4の回動起点は、吸引側対向面401の前記一端部側に設定されていたが、この構成に限定されない。例えば、吸引体4の回動起点は、吸引側対向面401の前記他端部側、若しくは前記高さ方向における吸引体4の中央部に設定されていてもよい。なお、吸引側対向面401を可動側対向面500に対して傾けて配置している場合、吸引体4の回動起点は、前記一端部及び前記他端部のうち、可動側対向面500に近い方の端部側に設定されていることが好ましい。
【0077】
上記実施形態の軸受部24では、受面240と逃部241とが連続していたが、この構成に限定されない。例えば、受面240と逃部241とは非連続であってもよい。
【0078】
上記実施形態の軸受部24は、逃部241を湾曲した形状にすることで稜線部511dとの接触を防止できるように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、軸受部24に切欠を形成することにより、軸受部24と稜線部511dとの接触を防止できるようにしてもよい。
【0079】
上記実施形態において、掛止部501は、可動本体部50に貫通孔を形成することにより構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、掛止部501は、押圧部材720の前記他端側を掛止できれば、可動本体部50に凸部を設けたり、凹部を形成したりすることによって構成されていてもよい。
【0080】
上記実施形態において、可動側対向面500は、吸引側対向面401に接触するように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、可動側対向面500は、吸引側対向面401に対して非接触となるように構成されていてもよい。
【0081】
上記実施形態において、可動側対向面500は、可動体5が保持状態に切り替えられている状態で且つ可動体5が吸引体4側にスライドする前から吸引側対向面401に接触するように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、可動側対向面500は、保持状態においては、吸引側対向面401に対して非接触であり、可動体5の吸引体4側へのスライド時に吸引側対向面401に接触するように構成されていてもよい。
【0082】
上記実施形態において、軸本体部511は、4つの稜線部511dを有するように形成されていたが、この構成に限定されない。例えば、軸本体部511は、4つ未満の稜線部511d、若しくは5以上の稜線部511dを有するように形成されていてもよい。
【0083】
上記実施形態において、軸本体部511は、縦断面が矩形状であり、4つの隣接面を有するように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、軸本体部511には、少なくとも2つの隣接面が形成されていればよい。
【0084】
上記実施形態において、軸本体部511の底面が平坦面、軸受部24の受面240が湾曲面となっていたが、この構成に限定されない。可動体5が稜線部511dが非接触の状態で動くことができれば、軸本体部511の底面を湾曲面、軸受部24の受面240を平坦面としてもよい。また、軸受部24の受面240は、例えば、段状、具体的には、吸引体4側が低くなるような段状に形成されていてもよい。
【0085】
上記実施形態において、軸受部24で受け止められている周縁面511cは平坦な面であったが、この構成に限定されない。例えば、軸受部24で受け止められている周縁面511cは湾曲していてもよい。但し、周縁面511cが平坦な面である方が軸本体部511の位置(可動体5の回動起点の位置)がずれにくくなる。
【0086】
上記実施形態の回路遮断器は、
ケースと、
電源側の端子と負荷側の端子とに繋がる電路と、
該電路を開閉する接点部と、
前記電路に流れる電流により電磁石となる吸引体と、
前記接点部の閉状態を保持可能であり且つ前記吸引体に隙間をあけて対向配置される保持状態と、前記吸引体側に回動することによって前記接点部の閉状態に対する保持を解除して前記接点部を開放可能とする解除状態とに切り替わる切替動作をとるように構成される可動体とを備え、
前記可動体は、前記回動の起点となる軸部を有し、
前記ケースは、前記軸部を受ける軸受部を有し、
該軸部には、前記可動体が前記保持状態である場合に、前記軸部の前記吸引体側へのスライドのための動き代となるスペースが設定されるように構成されていてもよい。
【0087】
かかる構成によれば、可動体が保持状態である場合、軸部には前記スライドのための動き代が設定されるため、可動体が吸引体の磁力(吸引力)を受けると軸部が吸引体側に移動しこれに伴い、可動体と吸引体との間のスペースが狭まる。
【0088】
これにより、吸引体と可動体の間の磁気抵抗が小さくなるため、吸引体の磁力が可動体に伝わり易くなる。従って、可動体が吸引体側に回動する速度(可動体の動作速度)が速くなり、電路に過大電流(すなわち、吸引体に可動体を引き寄せる強さの磁力を生じさせる電流)が流れた際に電路が素早く遮断される。
【0089】
上記実施形態の回路遮断器は、
前記可動体が少なくとも前記保持状態に切り替わっている状態で、前記可動体を前記動き代の範囲内で前記スライドを許容するようにして前記吸引体から離間する方向に向けて付勢する付勢手段を備えていてもよい。
【0090】
かかる構成によれば、保持状態に切り替わっている可動体が付勢手段によって吸引体から離れる方向に付勢されるため、保持状態に切り替えられている可動体が電路に過大電流が流れる前に吸引体側に動いてしまうことを防止できる。従って、上記構成の回路遮断器は、意図しないタイミングで電路が遮断されてしまうことを防止できる。
【0091】
上記実施形態の回路遮断器において、
前記可動体は、前記可動体が前記保持状態から前記解除状態への切替動作時の回動方向側に向けて配置される前面と、該回動方向とは反対側に向けて配置される後面と、を有し、
前記ケースは、前記後面を受ける後面用受部を有し、
前記可動体は、前記保持状態であり且つ前記付勢手段からの付勢力を受けた状態で、前記吸引体から離間する方向における前記動き代の一端に配置されるとともに前記後面が前記後面用受部に当接するように構成されていてもよい。
【0092】
かかる構成によれば、付勢手段によって吸引体から離間する方向に向けて付勢されている可動体が、動き代の前記一端に位置している状態で前記後面用受部に当接するため、保持状態に切り替えられている可動体を前記動き代の一端に留めておくことができる。
【0093】
従って、可動体が保持状態に切り替えられた状態で電路に過大電流が流れる前の状態においては、可動体と吸引体との間隔を一定の距離で保つことができ、これにより、可動体の切替動作の安定性を高めることができる。
【0094】
本実施形態の回路遮断器は、
前記接点部を開閉する開閉機構を備え、
前記接点部は、前記ケース内に固定される固定側端子と、該固定側端子に対して接離可能な状態で対向配置される可動側端子と、を有し、
前記開閉機構は、前記可動側端子を前記固定側端子に接触させるように移動操作可能であり、
前記可動体は、前記可動側端子を前記移動操作している状態の前記開閉機構を受けるための可動体側受部を有し、
前記ケースは、前記可動体側受部で前記開閉機構を受けている状態の前記可動体を受け止めるケース側受部を有するようにしてもよい。
【0095】
かかる構成によれば、可動側端子を固定側端子に接触させている状態においては、可動体が可動体側受部によって開閉機構を受けた状態になる。このとき、可動体は、開閉機構からの外力が加わる一方、ケース側受部によって受け止められるため、可動体の配置位置のずれが防止される。
【0096】
本実施形態の回路遮断器において、
前記吸引体は、前記可動体側に向けて配置される吸引側対向面を有し、
前記可動体は、前記吸引側対向面に対向配置される可動側対向面を有し、
前記可動側対向面は、前記可動体が前記保持状態であるときに、一端側が他端側よりも前記吸引側対向面に近くなるように傾斜し、
前記軸部は、前記一端、若しくは前記一端から前記他端側とは反対側にずれた位置の何れかに設けられていてもよい。
【0097】
かかる構成によれば、可動体が保持状態に切り替わっている場合、可動側対向面が軸部側であるほど吸引側対向面側に位置するように傾斜するため、吸引体と可動体との間のスペースは軸部側であるほど狭くなる。
【0098】
そして、可動体が吸引体に生じた磁力を受けて軸部が吸引体側に動くと、前記スペースの軸部側がさらに狭まるため、可動体の回動時に前記磁力が該可動体に伝わり易くなり、可動体の動作速度が速くなる。
【符号の説明】
【0099】
1…回路遮断器、2…ケース、3…接点部、4…吸引体、5…可動体、6…付勢手段(接触用付勢手段)、7…開閉機構、8…バイメタル、20…背面、21…正面、22…横側面、23…縦側面、24…軸受部、25…後面用受部、30…固定側接点部、31…可動側接点部、40…側壁部、41…中間壁部、50…可動本体部、51…軸部、52…押操作部、70…手動操作部、71…押込操作部、72…移動操作部、73…付勢手段(押戻用付勢手段)、220…支軸、240…受面、400…軸孔、401…吸引側対向面、500…可動側対向面、501…掛止部、510…接続部、511…軸本体部、511a…前面、511b…後面、511c…周縁面、511d…稜線部、511e…粗面領域、511f…平滑面領域、700…回転部、701…操作用付勢手段、702…操作レバー、720…押圧部材、721…リンク部、T1…電源側の端子、T2…負荷側の端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15