(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】立体構造物及び立体構造製造方法
(51)【国際特許分類】
E04C 2/30 20060101AFI20230324BHJP
F16S 1/04 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
E04C2/30 J
F16S1/04
(21)【出願番号】P 2022026629
(22)【出願日】2022-02-24
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】519305524
【氏名又は名称】株式会社OUTSENSE
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】石松 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀井 柊我
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大直
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0039164(US,A1)
【文献】特開2007-222202(JP,A)
【文献】実開昭54-039199(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16S 1/04-1/08
E04C 2/30
E04F 13/08
A63H 1/00-37/00
A63F 9/10-9/12
B65D 5/00-5/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形の要素が複数行及び複数列の格子状に配列されて立体形状を表すメッシュにおける複数本の要素列を平面展開した複数本の帯部材であって、各要素に応じた形状の四角形板が帯状に連なった形状を各々が有する
互いに別体に形成された複数本の列帯部材と、
前記メッシュにおける複数本の要素行を平面展開した複数本の帯部材であって、各要素に応じた形状の四角形板が帯状に連なった形状を各々が有する
互いに別体に形成された複数本の行帯部材と、を備え、
前記複数本の要素列の配列に応じて前記複数本の列帯部材が
、互いの側辺どうしが接するように並べられた列帯群における表裏面のうちの一方の面に、前記複数の要素行の配列に応じて前記複数本の行帯部材が
、互いの側辺どうしが接するように並べられた行帯群が、前記メッシュにおける互いに同一の要素に対応する四角形板どうしが重なり合うように、各帯部材における四角形板どうしの境界線で折り曲げられつつ重ねられて前記立体形状が形成されることを特徴とする立体構造物。
【請求項2】
前記列帯群及び前記行帯群のうち少なくとも一方の帯群における四角形板は、前記メッシュにおいて対応する位置の要素と同じ四角形を有することを特徴とする請求項1に記載の立体構造物。
【請求項3】
前記列帯群における四角形板と、前記行帯群における四角形板とは、互いに重なり合うものどうしで同じ四角形を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の立体構造物。
【請求項4】
前記複数本の列帯部材のうちの少なくとも1本の列帯部材又は前記複数本の行帯部材のうちの少なくとも1本の行帯部材が、少なくとも一対の内角が非直角となった非矩形板を含む複数の四角形板で構成されることを特徴とする請求項1~3のうち何れか一項に記載の立体構造物。
【請求項5】
前記メッシュは、前記格子状に配列された複数の四角形の要素うちの少なくとも一部の要素が更に対角線で三角形の要素に分割されて前記立体形状を表し、
前記複数本の列帯部材及び前記複数本の行帯部材それぞれを構成する四角形板のうち、前記メッシュにおいて前記三角形の要素に分割された要素に対応する四角形板が、前記三角形の要素に応じた形状の三角形板に対角線で折り曲げ可能に分割されており、
前記メッシュにおける互いに同一の要素に対応する三角形板どうしが重なり合うように、当該三角形板を有する四角形板が対角線で折り曲げられつつ、前記列帯群及び前記行帯群が重ね合わされて前記立体形状が形成されることを特徴とする請求項1~4のうち何れか一項に記載の立体構造物。
【請求項6】
請求項1~5のうち何れか一項に記載の立体構造物を製造する立体構造製造方法であって、
前記複数本の列帯部材を
互いに別体に形成する列帯形成工程と、
前記複数本の行帯部材を
互いに別体に形成する行帯形成工程と、
前記複数本の列帯部材が、互いの側辺どうしが接するように並べられた前記列帯群における前記一方の面に、
前記複数本の行帯部材が、互いの側辺どうしが接するように並べられた前記行帯群を、前記メッシュにおける互いに同一の要素に対応する四角形板どうしが重なり合うように、各帯部材における四角形板どうしの境界線で折り曲げつつ重ねて前記立体形状を形成する立体形成工程と、
を備えたことを特徴とする立体構造製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠壁、玩具、試作物等に適用される立体構造物及び立体構造製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三角形等の多角形板が複数枚繋ぎ合わされて構築された立体構造物が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の立体構造物では、大小さまざまな大きさや形状の多角形板がヒンジ連結によって繋ぎ合わされて立体の表面形状を構築している。各多角形板は、立体表面を多角形グリッドで区切ったときの多角形ポリゴンの形状を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載の立体構造物では、立体表面を区切った多角形グリッドにおけるポリゴン数分の多角形板が立体の表面形状の構築に必要となる。そして、そのような多角形グリッドにおけるポリゴン数は、目的とする立体の表面形状によっては膨大なものとなる可能性がある。つまり、上記の立体構造物には、その表面形状によっては膨大なパーツ数の多角形板を必要とし、それら多数の多角形板をパズルのピースのように繋ぎ合わせる作業が作業者にとって負担となりがちという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、作業負担を抑えて製造することができる立体構造物及び立体構造製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための立体構造物は、四角形の要素が複数行及び複数列の格子状に配列されて立体形状を表すメッシュにおける複数本の要素列を平面展開した複数本の帯部材であって、各要素に応じた形状の四角形板が帯状に連なった形状を各々が有する互いに別体に形成された複数本の列帯部材と、前記メッシュにおける複数本の要素行を平面展開した複数本の帯部材であって、各要素に応じた形状の四角形板が帯状に連なった形状を各々が有する互いに別体に形成された複数本の行帯部材と、を備え、前記複数本の要素列の配列に応じて前記複数本の列帯部材が、互いの側辺どうしが密着するように並べられた列帯群における表裏面のうちの一方の面に、前記複数の要素行の配列に応じて前記複数本の行帯部材が、互いの側辺どうしが密着するように並べられた行帯群が、前記メッシュにおける互いに同一の要素に対応する四角形板どうしが重なり合うように、各帯部材における四角形板どうしの境界線で折り曲げられつつ重ねられて前記立体形状が形成されることを特徴とする。
【0007】
上記の立体構造物は、格子状のメッシュにおける要素列を平面展開した列帯部材と、要素行を平面展開した行帯部材と、で構成されている。立体の形成作業は、列帯群と行帯群を、四角形板どうしが重なり合うように、各帯部材を境界線で折り曲げつつ重ねるだけとなる。このような構成によれば、メッシュの各要素をパーツ化して繋ぎ合わせる作業等と比べると大幅に作業負担を抑えて立体形状を形成することができる。このように、上記の立体構造物は、作業負担を抑えて製造することができるものとなっている。
【0008】
ここで、前記列帯群及び前記行帯群のうち少なくとも一方の帯群における四角形板は、前記メッシュにおいて対応する位置の要素と同じ四角形を有することが好適である。
【0009】
この構成によれば、メッシュの要素と同じ四角形の四角形板を有する列帯群又は行帯群によって、立体構造物の外壁が稠密に形成されることとなるので、隙間の無い良好な外観を得ることができる。
【0010】
また、前記列帯群における四角形板と、前記行帯群における四角形板とは、互いに重なり合うものどうしで同じ四角形を有することが好適である。
【0011】
この構成によれば、立体構造物の外壁が、どの場所についても、列帯群における四角形板と行帯群における四角形板とが重なった二重壁構造となるので、壁強度を向上させることができる。
【0012】
また、前記複数本の列帯部材のうちの少なくとも1本の列帯部材又は前記複数本の行帯部材のうちの少なくとも1本の行帯部材が、少なくとも一対の内角が非直角となった非矩形板を含む複数の四角形板で構成されることが好適である。
【0013】
この構成によれば、正方形板や長方形板といった矩形板のみで構成されたものと比べ、非矩形板を含む複数の四角形板で構成される列帯部材や行帯部材は、境界線で折り曲げて形成可能な立体形状の自由度が増すこととなる。つまりは、そのような列帯部材や行帯部材を備える立体構造物の形状についての自由度を増大させることができる。
【0014】
また、前記メッシュは、前記格子状に配列された複数の四角形の要素うちの少なくとも一部の要素が更に対角線で三角形の要素に分割されて前記立体形状を表し、前記複数本の列帯部材及び前記複数本の行帯部材それぞれを構成する四角形板のうち、前記メッシュにおいて前記三角形の要素に分割された要素に対応する四角形板が、前記三角形の要素に応じた形状の三角形板に対角線で折り曲げ可能に分割されており、前記メッシュにおける互いに同一の要素に対応する三角形板どうしが重なり合うように、当該三角形板を有する四角形板が対角線で折り曲げられつつ、前記列帯群及び前記行帯群が重ね合わされて前記立体形状が形成されることが好適である。
【0015】
この構成によれば、少なくとも一部の四角形板が三角形板に対角線で折り曲げ可能に分割されているので、四角形板のみで立体構造物が構成される場合と比べて、より精細な立体構造物を構成することができる。また、対角線での折り曲げにより列帯部材や行帯部材を捩じれ変形させることが可能となり、列帯部材や行帯部材で形成可能な形状の自由度、つまりは、立体構造物の形状についての自由度を増大させることもできる。
【0016】
また、上記目的を達成するための立体構造製造方法は、上述の立体構造物を製造する立体構造製造方法であって、前記複数本の列帯部材を互いに別体に形成する列帯形成工程と、前記複数本の行帯部材を互いに別体に形成する行帯形成工程と、前記複数本の列帯部材が、互いの側辺どうしが密着するように並べられた前記列帯群における前記一方の面に、前記複数本の行帯部材が、互いの側辺どうしが密着するように並べられた前記行帯群を、前記メッシュにおける互いに同一の要素に対応する四角形板どうしが重なり合うように、各帯部材における四角形板どうしの境界線で折り曲げつつ重ねて前記立体形状を形成する立体形成工程と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
上記の立体構造製造方法によれば、メッシュの各要素をパーツ化して繋ぎ合わせる作業等と比べ、列帯群と行帯群の重ね合わせという負担の少ない作業によって立体構造物が製造される。このように、上記の立体構造製造方法によれば、作業負担を抑えて立体構造物を製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の立体構造物は、作業負担を抑えて製造することができるものとなっており、本発明の立体構造製造方法によれば、作業負担を抑えて立体構造物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の立体構造物を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されている立体構造物の分解斜視図である。
【
図3】
図2に示されている列帯部材及び行帯部材を示す平面図である。
【
図4】
図1~3に示されている立体構造物を製造する立体構造製造方法を示す模式的なフローチャートである。
【
図5】第2実施形態の立体構造物を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示されている立体構造物の分解斜視図である。
【
図7】
図6に示されている列帯部材及び行帯部材を示す平面図である。
【
図8】第3実施形態の立体構造物を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示されている立体構造物を構成する列帯部材を示す平面図である。
【
図10】
図8に示されている立体構造物を構成する行帯部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、第1実施形態に係る立体構造物及び立体構造製造方法を説明する。
【0021】
図1は、第1実施形態の立体構造物を示す斜視図であり、
図2は、
図1に示されている立体構造物の分解斜視図である。また、
図3は、
図2に示されている列帯部材及び行帯部材を示す平面図である。
【0022】
本実施形態の立体構造物1は、中央が突出した四角推状の壁構造であり、意匠壁としての利用が想定された構造物となっている。この立体構造物1は、2本の列帯部材111,112及び2本の行帯部材121,122を備えている。
【0023】
2本の列帯部材111,112は、4つの四角形の要素M1a,M1b,M1c,M1dが2行及び2列の格子状に配列されて四角推状の立体形状を表すメッシュM1における2本の要素列M111,M112を平面展開した2本の帯部材である。
図3に示されているように、平面展開された状態では、各列帯部材111,112は、各要素M1a,M1b,M1c,M1dに応じた平行四辺形状の四角形板111a,111b,112a,112bが2枚ずつ列方向に連なったブーメラン形状を有している。
【0024】
同様に、2本の行帯部材121,122は、メッシュM1における2本の要素行M121,M122を平面展開した2本の帯部材である。各行帯部材121,122は、各要素M1a,M1c,M1b,M1dに応じた形状の四角形板121a,121b,122a,122bが2枚ずつ行方向に帯状に連なったブーメラン形状を有している。
【0025】
そして、立体構造物1は、次のような列帯群11及び行帯群12が互いに重ね合わされて四角推状の立体形状が形成されたものとなっている。列帯群11は、メッシュM1における2本の要素列M111,M112の配列に応じて2本の列帯部材111,112が並べられた配列構造である。また、行帯群12は、メッシュM1における2本の要素行M121,M122の配列に応じて2本の行帯部材121,122が並べられた配列構造である。立体構造物1は、列帯群11における表裏面のうち意匠側とは反対側となる裏面に行帯群12が重ねられたものとなっている。この列帯群11への行帯群12の重ね合わせは次のように行われる。即ち、この重ね合わせは、同一の要素M1a,M1c,M1b,M1dに対応する列帯部材111,112と行帯部材121,122の四角形板111a,111b,112a,112b,121a,122a,121b,122bが重なり合うように行われる。また、このときには、列帯部材111,112が四角形板111a,111b,112a,112bどうしの境界線111c,112cで折り曲げられる。同様に、行帯部材121,122が四角形板121a,121b,122a,122bどうしの境界線121c,122cで折り曲げられる。これらの折り曲げにより、四角推状の立体形状が形成される。
【0026】
この立体構造物1を製造する立体構造製造方法は、次のような工程を備えた作業となる。
【0027】
図4は、
図1~3に示されている立体構造物を製造する立体構造製造方法を示す模式的なフローチャートである。
【0028】
この
図4に示されている立体構造製造方法は、列帯形成工程S11、行帯形成工程S12、及び立体形成工程S13を備えている。列帯形成工程S11は、
図3に示されているように各々がブーメラン型を有する2本の列帯部材111,112を形成する工程である。同様に、行帯形成工程S12も、各々がブーメラン型を有する2本の行帯部材121,122を形成する工程となっている。これらの列帯形成工程S11及び行帯形成工程S12の実行には優先順は特になく、何れの工程が先に行われてもよく、あるいは同時並行に行われることとしてもよい。これら2つの工程によって2本の列帯部材111,112及び2本の行帯部材121,122が形成されると立体形成工程S13が実行される。立体形成工程S13は、
図2に示されているように、列帯群11の裏面に行帯群12を重ねて立体形状を形成する工程である。この重ね合わせは、上述のように同一の要素M1a,M1b,M1c,M1dに対応する四角形板111a,111b,112a,112b,121a,122a,121b,122bどうしが重なり合うように行われる。また、各帯部材が四角形板111a,111b,112a,112b,121a,122a,121b,122bどうしの境界線111c,112c,121c,122cで折り曲げられる。これら一連の作業により、四角推状の立体構造物1が形成される。
【0029】
以上に説明した第1実施形態の立体構造物1は、格子状のメッシュM1における要素列M111,M112を平面展開した列帯部材111,112と、要素行M121,M122を平面展開した行帯部材121,122と、で構成されている。そして、列帯群11と行帯群12を、四角形板111a,111b,112a,112b,121a,122a,121b,122bどうしが重なり合うように、境界線111c,112c,121c,122cで折り曲げつつ重ねるだけで立体が形成される。このような構成によれば、メッシュM1の各要素M1a,M1b,M1c,M1dをパーツ化して繋ぎ合わせる作業等と比べると大幅に作業負担を抑えて立体形状を形成することができる。このように、上記の立体構造物1は、作業負担を抑えて製造することができるものとなっている。
【0030】
また、この立体構造物1を製造する第1実施形態の立体構造製造方法によれば、上述のパーツの繋ぎ合わせ等といった作業と比べ、列帯群11と行帯群12の重ね合わせという負担の少ない作業によって立体構造物1が製造される。このように、上記の立体構造製造方法によれば、作業負担を抑えて立体構造物1を製造することができる。
【0031】
ここで、本実施形態では、列帯群11の四角形板111a,111b,112a,112b及び行帯群12の四角形板121a,122a,121b,122bは次のような形状を有している。即ち、各々、メッシュM1において対応する位置の要素M1a,M1b,M1c,M1dと同じ四角形(本実施形態では平行四辺形)を有している。この構成によれば、列帯群11の四角形板111a,111b,112a,112bの側辺どうしが隙間なく接し、同様に行帯群12の四角形板121a,122a,121b,122bの側辺どうしも隙間なく接することとなる。その結果、立体構造物1の外壁が稠密に形成されることとなるので、隙間の無い良好な外観を得ることができる。
【0032】
また、本実施形態では、列帯群11における四角形板111a,111b,112a,112bと、行帯群12における四角形板121a,122a,121b,122bとは、互いに重なり合うものどうしで同じ四角形(平行四辺形)を有している。この構成によれば、立体構造物1の外壁が、どの場所についても、列帯群11における四角形板111a,111b,112a,112bと行帯群12における四角形板121a,122a,121b,122bとが重なった二重壁構造となる。その結果、立体構造物1の壁強度を向上させることができる。
【0033】
また、本実施形態では、列帯部材111,112及び行帯部材121,122は、全ての内角が非直角となった非矩形(平行四辺形)の四角形板111a,111b,112a,112b,111a,111b,112a,112bで構成される。この構成によれば、正方形板や長方形板といった矩形板のみで構成されたものと比べ、各境界線111c,112c,121c,122cで各帯部材を折り曲げて形成可能な立体形状の自由度が増すこととなる。つまりは、そのような列帯部材111,112や行帯部材121,122を備える立体構造物1の形状についての自由度を増大させることができる。
【0034】
以上で第1実施形態の説明を終了し、次に第2実施形態について説明する。尚、この第2実施形態では、立体構造製造方法については、
図4にフローチャートで示されている第1実施形態の立体構造製造方法と同じであるので図示及び説明を割愛する。
【0035】
図5は、第2実施形態の立体構造物を示す斜視図であり、
図6は、
図5に示されている立体構造物の分解斜視図である。また、
図7は、
図6に示されている列帯部材及び行帯部材を示す平面図である。
【0036】
本実施形態の立体構造物2は、正方形板の中央が四角推状に突出した形状の意匠壁となっている。この立体構造物2は、4本の列帯部材211,212,213,214と、4本の行帯部材221,222,223,224と、を備えている。4本の列帯部材211,212,213,214は、4行×4列のメッシュM2における4本の要素列M211,M212,M213,M214を展開した帯部材である。また、4本の行帯部材221,222,223,224は、メッシュM2における4本の要素行M221,M222,M223,M224を展開した帯部材である。列帯部材211,212,213,214及び行帯部材221,222,223,224は、何れもメッシュM2の各要素M2aの形状に応じた四角形板21a,22aが4枚連なった形状を有している。尚、メッシュM2の要素M2a及び各帯部材の四角形板21a,22aについては、図示の煩雑さを避けるため、1つの要素及び列/行各帯部材について1つの四角形板のみに符号が付されている。
【0037】
また、本実施形態では、各帯部材の四角形板21a,22aが、メッシュM2の中央に近い内角ほど鋭角となった非矩形板(台形板)となっている。その結果、列帯部材211,212,213,214及び行帯部材221,222,223,224は、メッシュM2の中央に近いものほど中央で大きく屈曲した屈曲帯形状を有したものとなっている。
【0038】
また、本実施形態では、メッシュM2は、格子状に配列された複数の四角形の要素M2aの全てが更に対角線M2a-1で三角形の要素に分割されて立体形状を表している。そして、列帯部材211,212,213,214及び行帯部材221,222,223,224の四角形板21a,22aも、メッシュM2における三角形の要素に応じた形状の三角形板に対角線21a-1,22a-1で折り曲げ可能に分割されている。
【0039】
立体構造物2は、上述した第1実施形態の立体構造物1と同様に、4本の列帯部材211,212,213,214からなる列帯群21の裏面に、4本の行帯部材221,222,223,224からなる行帯群22が重ね合わされたものとなる。このとき、メッシュM2における互いに同一の要素M2aに対応する三角形板どうしが重なり合うように、当該三角形板を有する四角形板21a,22aが対角線21a-1,22a-1で折り曲げられつつ、列帯群21及び行帯群22が重ね合わされる。
【0040】
以上に説明した第2実施形態の立体構造物2も、上述の第1実施形態と同様に、作業負担を抑えて製造することができることは言うまでもない。
【0041】
また、本実施形態では、立体構造物2が、4本の列帯部材211,212,213,214と4本の行帯部材221,222,223,224の8つのパーツ数で構成される。他方、本実施形態とは異なり、メッシュM2の要素M2aを個別にパーツ化して繋ぎ合わせる場合のパーツ数は16個となる。つまり、本実施形態によれば、必要とされるパーツ数が抑えられるので、この点においても作業負担を抑えて製造することができる。
【0042】
また、本実施形態では、列帯部材211,212,213,214及び行帯部材221,222,223,224の四角形板21a,22aが三角形板に対角線21a-1,22a-1で折り曲げ可能に分割されている。この構成によれば、四角形板のみで立体構造物が構成される場合と比べて、より精細な立体構造物2を構成することができる。また、対角線21a-1,22a-1での折り曲げにより列帯部材211,212,213,214や行帯部材221,222,223,224を捩じれ変形させることが可能となる。その結果、列帯部材211,212,213,214や行帯部材221,222,223,224で形成可能な形状の自由度、つまりは、立体構造物2の形状についての自由度を増大させることもできる。
【0043】
以上で第2実施形態の説明を終了し、次に第3実施形態について説明する。尚、この第3実施形態でも、立体構造製造方法については、
図4にフローチャートで示されている第1実施形態の立体構造製造方法と同じであるので図示及び説明を割愛する。
【0044】
図8は、第3実施形態の立体構造物を示す斜視図である。また、
図9は、
図8に示されている立体構造物を構成する列帯部材を示す平面図であり、
図10は、
図8に示されている立体構造物を構成する行帯部材を示す平面図である。
【0045】
本実施形態の立体構造物3は、正面から見たときに矩形に見えるとともに、複雑な凹凸形状を有する意匠壁である。ただし、形状は複雑であるものの、その基本構造は、第1及び第2実施形態と同様に、複数本(本実施形態では10本)の列帯部材311と、複数本(10本)の行帯部材321と、を備えた構造となっている。複数本の列帯部材311は、メッシュM3(本実施形態では10列×10行)における複数本の要素列M311を展開した帯部材であり、複数本の行帯部材321は複数本の要素行M321を展開した帯部材である。また、本実施形態でも、各帯部材の四角形板31a,32aは、目標とする複雑な立体形状に応じて、矩形、平行四辺形、及び台形等といった様々な形状を有する四角形板となっている。このような四角形板で構成された結果、
図9及び
図10に示されているように、平面展開された列帯部材311及び行帯部材321は、何れも複雑に折れ曲った形状の帯部材となっている。尚、
図8~
図10では、図示の煩雑さを避けるため、複数本の列帯部材に「311」という一の符号が付され、同様に、複数本の行帯部材に「321」という一の符号が付されている。また、メッシュM3の要素M3a及び各帯部材の四角形板31a,32aについては、1つの要素及び列/行各帯部材について1つの四角形板のみに符号が付されている。
【0046】
また、本実施形態でも、上述の第2実施形態と同様に、メッシュM3は、格子状に配列された複数の四角形の要素M3aの全てが更に対角線M3a-1で三角形の要素に分割されて立体形状を表している。そして、列帯部材311及び行帯部材321の四角形板31a,32aも、メッシュM3における三角形の要素に応じた形状の三角形板に対角線31a-1,32a-1で折り曲げ可能に分割されている。
【0047】
立体構造物3は、上述した第1実施形態の立体構造物1と同様に、列帯群31の裏面に行帯群32が重ね合わされたものとなる。本実施形態では、列帯群31は10本の列帯部材311からなり、行帯群32は10本の行帯部材321からなる。このとき、メッシュM3における互いに同一の要素M3aに対応する三角形板どうしが重なり合うように、当該三角形板を有する四角形板31a,32aが対角線31a-1,32a-1で折り曲げられつつ、列帯群31及び行帯群32が重ね合わされる。
【0048】
以上に説明した第3実施形態の立体構造物3も、上述の第1実施形態と同様に、作業負担を抑えて製造することができることは言うまでもない。
【0049】
また、本実施形態でも、上述の第2実施形態と同様に、立体構造物3の構成に必要とされるパーツ数が抑えられるので、この点においても作業負担を抑えて製造することができる。
【0050】
尚、以上に説明した第1~第3実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これに限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によっても尚本発明の立体構造物及び立体構造製造方法の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0051】
例えば、第1~第3実施形態では、立体構造物及び立体構造製造方法の一例として、何れも意匠壁としての利用が想定された凹凸壁である立体構造物1,2,3及びその製造方法が例示されている。しかしながら、立体構造物及び立体構造製造方法は、これらに限るものではなく、箱、球、柱等といった壁以外の構造物及びその製造方法であってもよく、立体構造の具体的な形状等を問うものではない。
【0052】
また、上述の第1実施形態では、立体構造物及び立体構造製造方法の一例として、何れも直交格子のメッシュM1,M2,M3に基づいて列帯部材や行帯部材が形成された立体構造物1,2,3及びその製造方法が例示されている。しかしながら、立体構造物及び立体構造製造方法は、これらに限るものではない。列帯部材や行帯部材の形成の基となるメッシュは、部分的、あるいは全体的に、縦横が直交しない非直交格子であってもよい。
【0053】
また、上述の第1実施形態では、立体構造物及び立体構造製造方法の一例として、2本の列帯部材111,112及び2本の行帯部材121,122を備えた立体構造物1及びその製造方法が例示されている。また、第2実施形態では、立体構造製造方法については第1実施形態と同様であるため割愛されているが、4本の列帯部材211,212,213,214及び4本の行帯部材221,222,223,224を備えた立体構造物2が例示されている。そして、第3実施形態でも、立体構造製造方法については割愛されているが、10本の列帯部材311及び10本の行帯部材321を備えた立体構造物3が例示されている。しかしながら、立体構造物及び立体構造製造方法は、これらに限るものではなく、複数本の列帯部材及び複数本の行帯部材を備えた立体構造物及びその製造方法であれば、各帯部材の具体的な本数等を問うものではない。
【0054】
また、第1~第3実施形態では、立体構造物及び立体構造製造方法の一例として、列帯群11,21,31の裏面に行帯群12,22,32を重ねる立体構造物1,2,3及びその製造方法が例示されている。しかしながら、立体構造物及び立体構造製造方法は、これに限るものではなく、列帯群の表面に行帯群が重ねられた構造物やその製造方法であってもよい。
【0055】
また、第1~第3実施形態では、列帯群及び行帯群の各一例として、何れもメッシュM1,M2,M3の要素と同じ四角形の四角形板を有する列帯群11,21,31及び行帯群12,22,32が例示されている。しかしながら、列帯群及び行帯群は、これらに限るものではなく、一方の帯群のみがメッシュの要素と同じ四角形を有することとしてもよく、何れの帯群もメッシュの要素と異なる四角形を有することとしてもよい。ただし、少なくとも一方の帯群における四角形板がメッシュM1,M2,M3の要素と同じ四角形を有することで、立体構造物1,2,3について隙間の無い良好な外観を得ることができる点は上述した通りである。
【0056】
また、第1~第3実施形態では、列帯群及び行帯群の各一例として、互いに重なり合うものどうしで同じ形状の四角形板を有する列帯群11,21,31及び行帯群12,22,32が例示されている。しかしながら、列帯群及び行帯群は、これらに限るものではなく、互いに重なり合うものどうしで異なる形状の四角形板を有することとしてもよい。ただし、互いに重なり合うものどうしで同じ形状の四角形板を有する列帯群11,21,31及び行帯群12,22,32によれば、立体構造物1,2,3の壁強度を向上させることができる点は上述した通りである。
【0057】
また、第1~第3実施形態では、列帯部材及び行帯部材の一例として、全帯部材を構成する四角形板の全てが平行四辺形や台形といった非矩形となった列帯部材111,・・・,311及び行帯部材121,・・・,321が例示されている。しかしながら、列帯部材及び行帯部材は、これらに限るものではなく、何れか1本の帯部材における一部の四角形板のみが非矩形となっていてもよく、あるいは全帯部材における全ての四角形板が正方形や長方形といった矩形となっていてもよい。ただし、少なくとも1本の列帯部材111,・・・,311や行帯部材121,・・・,321が、非矩形板を含む複数の四角形板で構成されることで立体構造物1,2,3の形状についての自由度を増大させることができる。
【0058】
また、また、第2及び第3実施形態では、列帯部材及び行帯部材の一例として、構成する全ての四角形板が三角形板に分割されている列帯部材111,・・・,311や行帯部材121,・・・,321が例示されている。しかしながら、列帯部材及び行帯部材は、これに限るものではなく、第1実施形態に例示されているように、全ての四角形板が三角形板に分割されないこととしてもよい。あるいは、一部の四角形板のみが三角形板に分割されることとしてもよい。ただし、少なくとも一部の四角形板が三角形板に分割されることで、精細な立体構造物2,3を構成することができ、その形状についての自由度を増大させることもできる点は上述した通りである。
【符号の説明】
【0059】
1,2,3 立体構造物
11,21,31 列帯群
12,22,32 行帯群
21a-1,22a-1,31a-1,M2a-1,M3a-1 対角線
21a,22a,31a,32a,111a,111b,112a,112b,121a,121b,122a,122b 四角形板
111,112,211,212,213,214,311 列帯部材
111c,112c,121c,122c 境界線
121,122,221,222,223,224,321 行帯部材
M1,M2,M3 メッシュ
M1a,M1b,M1c,M1d,M2a,M3a 要素
M111,M112,M211,M212,M213,M214,M311 要素列
M121,M122,M221,M222,M223,M224,M321 要素行
S11 列帯形成工程
S12 行帯形成工程
S13 立体形成工程
【要約】
【課題】作業負担を抑えて製造することができる立体構造物及び立体構造製造方法を提供する。
【解決手段】立体構造物1が、メッシュの要素列を平面展開した複数本の列帯部材111,112と、要素行を平面展開した複数本の行帯部材121,122と、を備え、複数本の列帯部材111,112が並べられた列帯群11の裏面に、複数本の行帯部材121,122が並べられた行帯群12が、メッシュにおける互いに同一の要素に対応する四角形板111a,・・・,122bどうしが重なり合うように、各帯部材における四角形板111a,・・・,122bどうしの境界線111c,・・・,122cで折り曲げられつつ重ねられて立体形状が形成されることを特徴とする。
【選択図】
図2