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特許7249725表面処理された酸化セリウム粉末及び研磨組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】表面処理された酸化セリウム粉末及び研磨組成物
(51)【国際特許分類】
   C01F 17/10 20200101AFI20230324BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20230324BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20230324BHJP
   C01F 17/235 20200101ALI20230324BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230324BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
C01F17/10
C09K3/14 550D
C09G1/02
C01F17/235
B24B37/00 H
H01L21/304 622B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020511755
(86)(22)【出願日】2017-08-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 KR2017009568
(87)【国際公開番号】W WO2019045151
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】517076293
【氏名又は名称】アドバンスト ナノ プロダクツ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ソン,セ ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ムーン サン
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104178033(CN,A)
【文献】特開2012-146974(JP,A)
【文献】特開2007-051057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 17/00
C09K 3/00
C09G 1/00
B24B 37/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸、ギ酸、ピバル酸、プロピオン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸から選ばれた一種以上の飽和または不飽和カルボン酸から選択される有機物で表面処理された酸化セリウム粉末であって、
下記の測定値の比率が10.0≦A/B≦35.0
である粉末。
A:表面測定条件でのXPS測定時のO-Cピーク面積/O-Ceピーク面積
B:エッチング測定条件でのXPS測定時のO-Cピーク面積/O-Ceピーク面積
【請求項2】
請求項1に記載の研摩剤用酸化セリウム粉末。
【請求項3】
請求項1または2に記載の酸化セリウム粉末と溶剤からなる研磨剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理された酸化セリウム粉末及び研磨組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の高集積化に伴い、フォトリソグラフィーマージンを確保し且つ配線の長さを最小化するために、下部膜の平坦化技術が要求される。下部膜を平坦化するための方法として、BPSG(BoroPhosphorus Silicate Glass)リフロー、SOG(Spin On Glass)エッチバック(etch back)、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing、以下「CMP」という)工程などがある。CMP工程は、リフロー工程やエッチバック工程で達成できない広い空間領域の平坦化及び低温平坦化を達成することができるので、次世代の半導体素子で有力な平坦化技術として台頭している。
【0003】
しかし、配線抵抗を低減するために配線の厚さを増加させるにつれて、金属間の電気的絶縁のための金属間絶縁層(InterMetal Dielectric layer、以下「IMD」という)のデポ量も相対的に増加することにより、CMP段階で平坦化させるための絶対除去量が大幅に増加している。
ところが、従来のCMP用スラリーは、除去速度が遅いため、CMP時間が非常に長くなることにより、工程生産性に劣るという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国公開特許第10-2002-0007607号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、研磨速度に非常に優れた、表面処理された酸化セリウム粉末及びこれを含む研磨組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、
本発明は、有機物で表面処理された酸化セリウム粉末であって、X線光電子分光(XPS)測定時のO-Cピーク面積がO-Ceピーク面積よりもさらに大きい酸化セリウム粉末を提供する。特に、O-Cピーク面積がO-Ceピーク面積に対して1.1倍乃至4.0倍の範囲内である酸化セリウム粉末を提供する。
【0007】
また、本発明は、有機物で表面処理された酸化セリウム粉末であって、アルゴンイオンで2KeV、300sの条件にて表面エッチングした後、XPS測定時のO-Ceピーク面積がO-Cピーク面積よりもさらに大きい酸化セリウム粉末を提供する。特に、OCのピーク面積がO-Ceピーク面積に対して0.10倍乃至0.40倍の範囲内である酸化セリウム粉末を提供する。
【0008】
また、本発明は、有機物で表面処理された酸化セリウム粉末において、次の数式を満足する酸化セリウム粉末を提供する。
【0009】
4.0≦A/B≦40
A:表面測定条件でのXPS測定時のO-Cピーク面積/O-Ceピーク面積
B:エッチング測定条件でのXPS測定時のO-Cピーク面積/O-Ceピーク面積
【0010】
特に、次の数式を満足する酸化セリウム粉末を提供する。
【0011】
10.0≦A/B≦35.0
【0012】
前記有機物は、酢酸、ギ酸、ピバル酸、プロピオン酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸を含むカルボン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸を含む炭素数8~20の飽和または不飽和脂肪酸の中から選択でき、前記酸化セリウム粉末は、研磨剤の用途に使用できる。
【0013】
また、本発明は、研磨剤及び溶剤を含む研磨組成物であって、前記研磨剤は、前記酸化セリウム粉末を含む研磨組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
上述した構成的特徴を有する本発明は、研磨速度に非常に優れた、表面処理された酸化セリウム粉末及びこれを含む研磨組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。下記の説明は、本発明の具体的な一例についてのものであるので、たとえ断定的、限定的な表現があっても、特許請求の範囲から定められる権利範囲を限定するものではない。
【0016】
本発明による一実施例は、有機物で表面処理された酸化セリウム粉末であって、X線光電子分光(XPS)測定時のO-Cピーク面積がO-Ceピーク面積よりもさらに大きい酸化セリウム粉末を提供する。特に、O-Cピーク面積がO-Ceピーク面積に対して1.1倍乃至4.0倍の範囲内である酸化セリウム粉末を提供する。
【0017】
本発明に係る別の一実施例は、有機物で表面処理された酸化セリウム粉末であって、2KeV、300sの条件で表面エッチングした後、XPS測定時のO-Ceピーク面積がO-Cピーク面積よりもさらに大きい酸化セリウム粉末を提供する。特に、O-Cピーク面積がO-Ceピーク面積に対して0.10倍乃至0.40倍の範囲内である酸化セリウム粉末を提供する。
【0018】
本発明に係る別の一実施例は、有機物で表面処理された酸化セリウム粉末であって、次の数式を満足する酸化セリウム粉末を提供する。
【0019】
4.0≦A/B≦40
A:表面測定条件でのXPS測定時のO-Cピーク面積/O-Ceピーク面積
B:エッチング測定条件でのXPS測定時のO-Cピーク面積/O-Ceピーク面積
【0020】
特に、次の数式を満足する酸化セリウム粉末を提供する。
【0021】
10.0≦A/B≦35.0
【0022】
本発明者は、酸化セリウム粉末の表面処理が研磨速度に関連することを確認した。特に、どのように表面処理が施されたかによって、研磨速度性能に大きな影響を及ぼし、XPS測定時に上記の範囲を満足すればこそ研磨速度が著しく向上することを見出し、後述する実施例から分かるように、上記の範囲内で研磨速度に非常に優れることを確認した。
【0023】
上記の範囲を満足する酸化セリウム粉末と研磨組成物の製造方法は、制限されず、様々な方法で製造できる。酸化セリウム粉末は、湿式酸化法、ゾルゲル(Sol Gel)法、水熱合成法、か焼法などを使用することができ、後述する実施例で望ましい方法を提示する。つまり、セリウム前駆体と塩基性物質とを混合してセリウム前駆体を酸化させて酸化セリウムを得ることができる。その後、洗浄及び乾燥を行い、粉砕した後、熱処理して有機物で表面処理した後、水で希釈して酸化セリウム粉末を含む研磨組成物を得ることができる。本発明の一実施例に係る酸化セリウム粉末を得るために、有機物の種類や有機物の含有量などが重要な因子として作用できるが、実施例を介して具体的に例示している。セリウム前駆体としては、特に制限されず、好ましくは塩の形態であり得る。その非制限的な例としては硝酸セリウム(cerium nitrate)、酢酸セリウム(cerium acetate)、これらの水和物などがあり、これらは単独で或いは2種以上組み合わせて使用できる。
【0024】
酸化セリウム粉末を表面処理するために使用する有機物は、制限されないが、酢酸、ギ酸、ピバル酸、プロピオン酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸などのカルボン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸などの炭素数8~20の飽和または不飽和脂肪酸などを挙げることができる。表面処理方法としては、粉末を別個の分散機を用いて表面処理剤でコーティングする方法があり、この他にも、表面処理は、水に酸化セリウム粉末と表面処理剤を仕込んで撹拌することにより研磨組成物を製造する過程において行われてもよいが、これに限定されない。
【0025】
酸化セリウム粉末を含む研磨組成物は、溶剤として、水を使用してもよく、有機溶剤を一部混合して使用してもよい。この他にも、多様な添加剤、例えば、分散剤、欠陥抑制剤、酸化剤、研磨促進剤、pH調整剤などが含まれ得る。
以下、実施例についてより詳細に説明する。
【0026】
<実施例1>
硝酸セリウム水和物(Ce(NO・6HO)2.5kgを水3.5kgに溶解した後、1時間撹拌して前駆体溶液を製造した。アンモニア水3.2kgを0.4kg/minの流量で前駆体溶液に投入し、前駆体溶液は攪拌した。アンモニア水の投入が完了した後、80℃に昇温し、圧力を2barに昇圧して攪拌しながら12時間反応させた。得られた酸化セリウムをフィルタープレスで濾過、洗浄し、200℃で12時間乾燥させた後、粉砕し、ベルト炉にて900℃で90分間熱処理を行った。その後、酢酸を酸化セリウム粉末に対して重量%添加して分散機で分散させて表面処理し、0.3μmのノミナル(nominal)フィルターで濾過し、希釈して酸化セリウムスラリーを製造した。
粉末の表面処理特性を分析するために、次の条件でX線光電子分光(XPS)を行って粉末の表面を測定し、その結果を表2に示した。
【0027】
<測定条件>
1.XPS装備名/メーカー:K-Alpha+/ThermoFisher Scientific製
【0028】
2.測定条件
1)X線源:Monochromated Al X-Ray sources(Al Kα line:1486.6eV)
2)X線電源:12kV、10mA
3)サンプリングエリア:400μm(直径)
4)ナロースキャン:パスエネルギー(pass energy)40eV、ステップサイズ0.05eV
5)真空:3x10-9mbar
6)キャリブレーション:No
7)フラッドガンは電荷補償に使用される(Flood gun is used for charge compensation):ON
【0029】
また、粉末表面の一部を下記の条件でエッチングし、上記の条件でXPSを行い、その結果を表2に示した。
【0030】
<エッチング条件>
Arイオンエッチング:2keV、600sec、ラスターサイズ2x2mm
また、酸化セリウムスラリーの研磨テストのために、下記の条件でテストし、その結果を表2に示した。
【0031】
研磨テスト:CMP装備(モデル名:斗山UNIPLA231)
パッド:IC1000TM A2 PAD 20‘*1.18’ ACAO:1Y10
時間:60秒
スピンドル速度:85rpm
ウエハー圧力:5psi
スラリーフローレート:200cc/min
ウエハー:8inch(PETEOS)
ウエハー厚さ:12000Å
【0032】
<実施例2>乃至<実施例5>
実施例1において下記表1に提示した条件以外は実施例1と同様にして行った。
【0033】
<比較例1>乃至<比較例3>
実施例1において下記表1に提示した条件以外は実施例1と同様にして行った。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
表2より、A/Bの値が高い場合には、研磨速度(RR)値が高いが、比較例2のようにA/Bの値が過度に高い場合には、むしろRR値が低いことが分かった。このようにA/Bの値が研磨速度性能と深く関連していることを確認することができる。
【0037】
また、Aの値は1よりも高く、Bの値は1よりも低い場合には、RR値が高いことが分かった。
【0038】
また、O-Cピーク面積がO-Ceピーク面積に対して1.1倍乃至4.0倍の範囲内である場合には研磨速度に優れており、O-Cピーク面積がO-Ceピーク面積に対して0.10倍乃至0.40倍の範囲内である場合には研磨速度に優れていることを確認することができる。