(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】自動倉庫及び自動倉庫の制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20230324BHJP
B65G 1/04 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
G05D1/02 Q
B65G1/04 555A
(21)【出願番号】P 2018163176
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊介
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-118639(JP,A)
【文献】特開平11-157613(JP,A)
【文献】特開平6-95734(JP,A)
【文献】特開2013-23320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/12
B65G 1/00 - 1/133
B65G 1/14 - 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物を収容可能な複数段の格納部と、
前記格納部の各前記段のそれぞれの側方において延びる走行路であって複数の位置マーカーが付された走行路と、
各前記走行路に配置され、車輪と、前記車輪を駆動する走行駆動部と、前記格納部に対して前記物を出し入れする格納物出し入れ機構と、前記車輪の回転に応じた走行距離を出力する走行距離出力部と、前記複数の位置マーカーを検出する位置検出部とを含み、前記走行路を走行する台車と、
昇降する昇降棚を含み、各前記段に配置される前記台車に荷を受け渡すための昇降機構部と、
前記台車を現在位置から目的位置に向わせる処理であって、前記走行距離出力部からの出力に基づき、前記台車が前記目的位置の手前の減速開始位置に達すると、停止用低速による走行に至るように前記台車の減速を開始すると共に、前記台車が前記停止用低速で走行中に、前記位置検出部からの出力に基づき、前記目的位置に達したと判定されたときに、前記台車を停止させる処理を実行する制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、前記台車の減速の開始から前記停止用低速による走行開始までの間において、前記台車の加速度を変更するように制御
し、かつ、前記台車の速度を加速した後に減速させるように制御する、自動倉庫。
【請求項2】
物を収容可能な複数段の格納部と、
前記格納部の各前記段のそれぞれの側方において延びる走行路であって複数の位置マーカーが付された走行路と、
各前記走行路に配置され、車輪と、前記車輪を駆動する走行駆動部と、前記格納部に対して前記物を出し入れする格納物出し入れ機構と、前記車輪の回転に応じた走行距離を出力する走行距離出力部と、前記複数の位置マーカーを検出する位置検出部とを含み、前記走行路を走行する台車と、
昇降する昇降棚を含み、各前記段に配置される前記台車に荷を受け渡すための昇降機構部と、
を備えた自動倉庫の制御方法であって、
前記台車を現在位置から目的位置に向わせ、この際に、前記走行距離出力部からの出力に基づき、前記台車が前記目的位置の手前の減速開始位置に達すると、停止用低速による走行に至るように前記台車の減速を開始すると共に、前記台車が前記停止用低速で走行中に、前記位置検出部からの出力に基づき、前記目的位置に達したと判定されたときに、前記台車を停止させ、
前記台車の減速の開始から前記停止用低速による走行開始までの間において、
前記台車の加速度を変更するように制御し、かつ、前記台車の速度を加速した後に減速させるように制御する、自動倉庫の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動倉庫及び自動倉庫の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、移動装置に車輪と連動するパルスエンコーダーを設け、このパルスエンコーダーの発信パルスを利用して移動装置の走行距離を判定し、設定距離だけ走行させるように制御する移動装置の走行制御方式を開示している。移動装置の走行経路は略等間隔おきに設置した番地設定部材により複数のゾーンに区画され、ゾーンの終端近傍に停止位置が設定されるゾーンには、当該停止位置の手前に固有番地を持たない被検出部材が設置されている。特許文献1の走行制御方式では、移動装置の走行開始と同時に前記パルスエンコーダーの発信パルスで前記総走行距離を減算して残走行距離を演算し、走行途中で各ゾーン始端又は被検出部材を通過する度に当該ゾーン始端又は被検出部材から行き先停止位置までの総走行距離を演算し、この演算結果をそのときの残走行距離と置換し、残走行距離がゼロとなったところで移動装置を自動停止させるように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の技術では、置換後の残走行距離と所定の演算距離とが等しくなる位置まで走行したとき、減速停止制御が行われ、移動装置は最終的に停止位置で自動停止する。所定の演算距離は、予め設定されている走行速度条件と総走行距離とに基づいて演算される、行き先き停止位置と減速開始位置までの距離である。
【0005】
しかしながら、移動装置の車輪と連動するパルスエンコーダーの発信パルスに基づく走行距離と、実際の走行距離との差異は、停止位置に近づいても生じ得る。例えば、移動装置が減速を開始したときに、加速度に変化が生じるため、車輪の滑りが生じ易く、上記誤差が生じ得る。
【0006】
特許文献1に開示の技術では、置換による補正後の残走行距離に基づいて、減速処理を開始する位置を決定しているため、移動装置が停止位置に近づいた状態での誤差補正に対応困難であり、目的位置に正確に近づけない場合がある。
【0007】
本発明は、台車がなるべく早く正確に目的位置に移動できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る自動倉庫は、物を収容可能な複数段の格納部と、前記格納部の各前記段のそれぞれの側方において延びる走行路であって複数の位置マーカーが付された走行路と、各前記走行路に配置され、車輪と、前記車輪を駆動する走行駆動部と、前記格納部に対して前記物を出し入れする格納物出し入れ機構と、前記車輪の回転に応じた走行距離を出力する走行距離出力部と、前記複数の位置マーカーを検出する位置検出部とを含み、前記走行路を走行する台車と、昇降する昇降棚を含み、各前記段に配置される前記台車に荷を受け渡すための昇降機構部と、前記台車を現在位置から目的位置に向わせる処理であって、前記走行距離出力部からの出力に基づき、前記台車が前記目的位置の手前の減速開始位置に達すると、停止用低速による走行に至るように前記台車の減速を開始すると共に、前記台車が前記停止用低速で走行中に、前記位置検出部からの出力に基づき、前記目的位置に達したと判定されたときに、前記台車を停止させる処理を実行する制御ユニットと、を備え、前記制御ユニットは、前記台車の減速の開始から前記停止用低速による走行開始までの間において、前記台車の加速度を変更するように制御し、かつ、前記台車の速度を加速した後に減速させるように制御する。
【0013】
上記課題を解決するため、第2の態様は、物を収容可能な複数段の格納部と、前記格納部の各前記段のそれぞれの側方において延びる走行路であって複数の位置マーカーが付された走行路と、各前記走行路に配置され、車輪と、前記車輪を駆動する走行駆動部と、前記格納部に対して前記物を出し入れする格納物出し入れ機構と、前記車輪の回転に応じた走行距離を出力する走行距離出力部と、前記複数の位置マーカーを検出する位置検出部とを含み、前記走行路を走行する台車と、昇降する昇降棚を含み、各前記段に配置される前記台車に荷を受け渡すための昇降機構部と、を備えた自動倉庫の制御方法であって、前記台車を現在位置から目的位置に向わせ、この際に、前記走行距離出力部からの出力に基づき、前記台車が前記目的位置の手前の減速開始位置に達すると、停止用低速による走行に至るように前記台車の減速を開始すると共に、前記台車が前記停止用低速で走行中に、前記位置検出部からの出力に基づき、前記目的位置に達したと判定されたときに、前記台車を停止させ、前記台車の減速の開始から前記停止用低速による走行開始までの間において、前記台車の加速度を変更するように制御し、かつ、前記台車の速度を加速した後に減速させるように制御する。
【発明の効果】
【0014】
第1の態様によると、台車がなるべく早く正確に目的位置に移動できる。
【0017】
第2の態様によると、制御ユニットは、台車が目的位置に達する時間を早くすることができる。
【0019】
第3の態様によると、台車は目的位置により正確に近づくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】位置マーカーと格納物との位置関係を示す説明図である。
【
図7】位置検出部と位置マーカーとを示す説明図である。
【
図8】自動倉庫の電気的構成を示すブロック図である。
【
図10】制御ユニットによる台車の速度制御例を示すフローチャートである。
【
図11】台車の位置と速度との関係を示す説明図である。
【
図12】台車の位置と速度との関係を示す説明図である。
【
図13】移載台車を複数ユニットに分解した分解斜視図である。
【
図15】アーム駆動ユニットからアームに力を伝達する部分を示す図である。
【
図17】アーム駆動ユニットの部分的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態に係る台車走行装置、自動倉庫及び台車走行装置の制御方法について説明する。ここでは、台車走行装置が自動倉庫に組込まれた例で説明する。
【0022】
<全体構成について>
自動倉庫の全体構成について説明する。
図1は自動倉庫20を示す概略側面図であり、
図2は自動倉庫を示す概略平面図である。
【0023】
自動倉庫20は、格納部21と、台車走行装置40とを備える。
【0024】
格納部21は、後述する台車走行装置40の走行路42の少なくとも一側方に設けられる。ここでは、一対の格納部21が走行路42の両側に設けられる。走行路42を走行する移載台車50は、一対の格納部21の両方に対して格納物30を出し入れすることができる。
【0025】
格納部21は、複数の棚ユニット22を備える。棚ユニット22は、複数の棚板24を備える。棚板24は、上下方向において間隔をあけて支持されており、それぞれの棚板24に格納物30を載置することができる。ここでは、各棚板24に複数(
図1では4つ又は5つ)の格納物30を一列に並べて載置することができる。複数の棚ユニット22が一列に並ぶように配置されることで、格納部21が構成されている。格納部21全体として見ると、複数の格納物30が上下左右に配列した状態で格納される。各棚板24に対しては、走行路42側から格納物30が出し入れされる。
【0026】
格納部21の延在方向の一端部には仮置き棚26及び昇降機構部28が設けられている。
【0027】
昇降機構部28は、昇降棚28aと、昇降駆動機構28bとを備えている。昇降駆動機構28bによって、昇降棚28aが各段の棚板24に対向する位置に昇降駆動される。これにより、入庫される格納物30を、格納すべき棚板24の上下位置に昇降移動させることができる。また、逆に、出庫される格納物30を、格納された棚板24の位置から取出しに適した高さ位置に昇降移動させることができる。
【0028】
仮置き棚26は、リザーバとも呼ばれる部分であり、格納部21と昇降機構部28との間に設けられている。仮置き棚26は、各段の棚板24に対応して設けられている。各仮置き棚26は、昇降機構部28から格納物30を受取って、移載台車50によって格納物30が受取られるまで当該格納物30を一時的に載置可能に構成されている。また、これとは逆に、移載台車50から格納物30を受取って、昇降機構部28が格納物30を受取にくるまで、当該格納物30を一時的に載置可能に構成されている。
【0029】
なお、仮置き棚26と昇降機構部28との間の格納物30の移載は、例えば、それらに設けられたローラをモータ等の回転駆動部によって正逆両方向に回転駆動させることによって、或は、シリンダ等のアクチュエータの駆動により、仮置き棚26又は昇降機構部28に載置された格納物30を押すこと等によって行うことができる。
【0030】
仮置き棚26及び昇降機構部28は、格納部21の延在方向中間部に設けられていてもよい。仮置き棚26及び昇降機構部28は、格納部21に対して複数箇所に設けられていてもよい。
【0031】
台車走行装置40は、走行路42と、台車52と、制御ユニット90とを備える。
【0032】
走行路42は、格納部21に沿って、ここでは、一対の格納部21の間で、その間の延在方向に沿って設けられている。従って、格納部21は、複数の格納物30を走行路42の延在方向に沿って並べた状態で格納することができる。走行路42は、格納部21の延在方向に沿い、かつ、仮置き棚26迄延在している。
【0033】
ここでは、複数の走行路42が、上下の各棚板24に対応して設けられている。各走行路42は、一対のレール43、43を備える。一対のレール43、43は、一対の格納部21に水平方向に沿って当該格納部21の延在方向に沿って支持されている。これにより、一対のレール43、43は、間隔をあけた並列姿勢で支持される。
【0034】
ここでは、レール43、43は、各棚ユニット22の横フレームを兼ねている。レール43、43は、棚ユニット22のフレームとしての機能を持たず、棚ユニット22とは別体として構成されていてもよい。また、走行路が一対のレールによって構成されている必要は無く、例えば、台車が走行可能な細長い板状の走行路として構成されていてもよいし、また、台車を吊下げ状態で支持するレールとして構成されていてもよい。
【0035】
台車52は、上記走行路42を往復走行可能に構成されている。台車52には、格納部21に対して格納物30を出し入れする格納物出し入れ機構60が設けられている。台車に格納物出し入れ機構60が組込まれたものを、移載台車50ということとする。格納物出し入れ機構60は、仮置き棚26に対しても格納物30を出し入れすることができる。
【0036】
ここでは、複数の走行路42及び複数の移載台車50が、上下の各棚板24に対応して設けられている例で説明するが、これは必須ではない。例えば、上下の複数の棚板24に共通する1つの走行路が設けられ、当該走行路を移載台車が走行してもよい。この場合、移載台車に昇降機構を設けて、上下の複数の棚板に対して格納物を出し入れできるようにするとよい。また、1つの走行路に対して複数の移載台車が走行してもよい。
【0037】
制御ユニット90は、上記移載台車50の走行動作、格納物30の出し入れ動作を制御する。ここでは、制御ユニット90は、仮置き棚26と昇降機構部28との間での格納物30の移載動作、昇降機構部28の昇降動作等をも制御する。
【0038】
この自動倉庫20においては、制御ユニット90による制御下、入庫される格納物30は、昇降機構部28から仮置き棚26及び移載台車50を経由して格納物30に入庫され、格納保管される。また、制御ユニット90による制御下、出庫される格納物30は、移載台車50から仮置き棚26、昇降機構部28を経由して外部に出庫される。
【0039】
<走行路>
走行路42について説明する。
図3は走行路42の一方のレール43を示す部分斜視図である。
【0040】
レール43は、側板部43aと、上板部43bと、下板部43cと、垂下片43dとを備える。側板部43aの上縁部から上板部43bが延出しており、側板部43aの下縁部から上板部43bと同方向に下板部43cが延出している。上板部43bのうち側板部43aとは反対側の縁部から垂下片43dが下向きに延出している。垂下片43dの上下方向寸法は、側板部43aの上下方向寸法よりも短く、ここでは、側板部43aの上下方向寸法の半分程度である。このため、垂下片43dの下側縁部と下板部43cの先端縁部との間に、レール43の延在方向に沿って細長い隙間43sが空いている。
【0041】
このレール43は、側板部43aを格納部21側に向けると共に、隙間43sを、一対の格納部21間の空間に向けた姿勢で、格納部21に水平姿勢で支持されている。後述するように移載台車50には、車輪55、56が設けられ、当該車輪55、56がレール43の上板部43b上を走行することができる。
【0042】
また、レール43には、複数の位置マーカー44が付されている。位置マーカー44は、移載台車50が、走行路42における位置を検出できるようにするためのマーカーである。ここでは、位置マーカー44は、垂下片43dの下側縁部が部分的に凹んだ部分である。位置マーカー44は、例えば、垂下片43dの下側縁部を部分的に切り欠くこと等によって形成される。後述するように、移載台車50には、上記位置マーカー44を検出する位置検出部53が設けられる。位置検出部53は、例えば、光センサ等によって構成され、位置検出部53が位置マーカー44を検出することによって、移載台車50が走行路42における位置を検出できる。
【0043】
位置マーカー44及び位置検出部53の構成例は上記例に限られない。レールに付された突起部分を光センサ等で検出する構成であってもよいし、レールに付された永久磁石を磁気センサ等で検出する構成であってもよい。レールに部分的に付された位置マーカーを、移載台車に設けられた位置検出部によって検出できる構成であればよい。
【0044】
上記位置マーカー44は、走行路42における移載台車50の位置を示すためのものであるが、ここでは、位置マーカー44は、移載台車50が、格納部21及び仮置き棚26に対して格納物30を出し入れする位置を示すものとして用いられている。
【0045】
位置マーカー44と、格納部21及び仮置き棚26における格納物30の格納位置との関係を説明する。
図4は位置マーカー44と格納部21及び仮置き棚26における格納物30との位置関係を示す説明図である。
図4において1つの棚ユニット22の棚板24の幅をWで示す。
【0046】
図4の最上部には棚ユニット22の棚板24に5つの格納物30を格納した状態が示されている。ここでは、棚板24の右側から順に、格納物30(1)、10(3)、10(5)、10(7)、10(8)と区別することとする。その下には棚板24に4つの格納物30を格納した状態が示されている。ここでは、棚板24の右側から順に、格納物30(2)、10(4)、10(6)、10(8)と区別することとする。その下にはレール43における位置マーカー44の位置が示されている。1つの棚ユニット22に対応するレール43には、複数(ここでは8つ)の位置マーカー44が付されている。複数の位置マーカー44は、棚板24に格納された5つの格納物30又は4つの格納物30に対応する位置に形成されている。ここでは、1つの棚ユニット22に対応するレール43において、右側から順に44(8)、44(1)、44(2)、44(3)、44(4)、44(5)、44(6)、44(7)と区別することとする。
図4において、棚板24の右側には仮置き棚26が配置され、棚板24の左側には同様の棚板24が繰返して配置されるものとして説明する。
【0047】
移載台車50が格納物30を出し入れする位置と、位置検出部53が設けられる位置とは、レール43の延在方向に沿ってずれている(
図4の移載台車50の位置検出部53と格納物30の位置参照)。移載台車50の位置検出部53が位置マーカー44(1)を検出した位置で移載台車50は棚板24の格納物30(1)を出し入れすることができる。同様に、移載台車は、位置マーカー44(2)、44(3)、44(4)、44(5)、44(6)、44(7)、44(8)を検出した位置で、格納物30(2)、10(3)、10(4)、10(5)、10(6)、10(7)、10(8)を出し入れすることができる。
【0048】
なお、仮置き棚26の隣の棚板24の位置マーカー44(8)を検出した位置では、移載台車50は、仮置き棚26に対して格納物30(8)を出し入れできる。また、仮置き棚26から最も遠い棚板24では、位置マーカー44(8)を有するレールが延長されている。
【0049】
制御ユニット90には、走行路42の全体の一方の端部からの各位置マーカー44の位置(距離)が記憶されている。制御ユニット90は、走行路42の全体の一方の端部を初期位置として、当該初期位置から離れる方向に移動する場合に、位置マーカー44を検出する毎に位置マーカー44のカウント数を加算し、また、初期位置に近づく方向に移動する場合には、位置マーカー44を検出する毎に位置マーカー44のカウント数を減算していくことで、位置マーカー44に基づいて走行路42における移載台車50の走行位置を特定することができる。
【0050】
本例では、棚板24の格納位置に対応する位置に位置マーカー44を設けた例で説明したが、複数の位置マーカーは格納位置と対応付けられている必要は無い。複数の位置マーカー44は、棚板24に4つの格納物30を格納する場合と5つの格納物30を格納する場合に対応付けた位置に設けられているため、各間の距離は不均一である。複数の位置マーカーは均等間隔で設けられてもよい。
【0051】
<移載台車について>
移載台車50について説明する。
図5及び
図6は移載台車50を示す斜視図である。
【0052】
移載台車50は、台車52と、格納物出し入れ機構60とを備える。
【0053】
台車52は、ベース54と、車輪55、56と、走行駆動部58とを備えており、走行路42を走行可能に構成されている。
【0054】
ベース54は、長尺状のフレーム、ベースプレート54c等の組合わせによって構成されている。このベース54に対して、走行駆動部58、格納物出し入れ機構60等が組込まれる。また、ベースプレート54c上に格納物30が載置支持される。ベース54の一端部の両側部に車輪55が回転可能に支持されている。
【0055】
走行駆動部58は、モータ59等を備えている。走行駆動部58の両側部に車輪56が設けられている。走行駆動部58に備えられたモータ59の回転駆動力がギヤ等を介して車輪56に伝達され、モータ59の駆動によって車輪56が正逆両方向に回転駆動される。走行駆動部58は、ベース54の他端部に取付けられ、これにより、駆動用の車輪56がベース54の他端部の両側部に設けられる。
【0056】
台車52の一側の車輪55、56が一方のレール43に回転可能に支持され、台車52の他側の車輪55、56が他方のレール43に回転可能に支持される。そして、台車52が一対のレール43に跨るように走行可能に支持される。この状態で、走行駆動部58の駆動により、車輪56を回転駆動させることで、台車52が一対のレール43上を両方向に走行することができる。
【0057】
格納物出し入れ機構60は、移載台車50と格納部21又は仮置き棚26との間で、格納物30を出し入れ可能に構成されている。ここでは、格納物出し入れ機構60は、伸縮可能な一対のアーム62、62を備える。一対のアーム62、62は、ベース62a、62aと、当該ベース62a、62aに対して、モータ等の駆動部の駆動によって移載台車50の両側の両方向(一対の格納部21に向う方向)に進退可能な進退アーム62b、62bを備える。また、進退アーム62b、62bの両端にモータ等の駆動部の駆動によって倒伏可能な引っ掛け片63が設けられている。一対のアーム62、62は、ベースプレート54cを挟む位置に設けられている。
【0058】
そして、格納物30を移載台車50に移載する際には、移載台車50を棚板24又は仮置き棚26に載置された格納物30に対向させた状態で、一対の進退アーム62b、62bを進出移動させて、当該格納物30を両側から挟む位置に配設する。この状態で、引っ掛け片63を倒して格納物30の奥側に引っ掛ける。そして、一対の進退アーム62b、62bを移載台車50側に退避移動させると、格納物30が移載台車50のベースプレート54cに取込まれる。
【0059】
また、移載台車50上の格納物30を棚板24又は仮置き棚26に移載する際には、送出し方向手前側の引っ掛け片63を倒して格納物30に引っ掛けた状態で、一対の進退アーム62b、62bを移載台車50から進出移動させる。すると、ベースプレート54c上の格納物30が棚板24又は仮置き棚26に送込まれる。
【0060】
この台車52には、車輪55又は56の回転に応じた走行距離を出力する走行距離出力部が設けられている。ここでは、走行距離出力部は、上記モータ59に組込まれたエンコーダである。この点については、後でさらに説明する。
【0061】
また、台車52には、複数の位置マーカー44を検出する位置検出部53が設けられている。
図7は位置検出部53と位置マーカー44とを示す説明図である。
【0062】
図5~
図7に示すように、位置検出部53は、台車52の一側に設けられている。
【0063】
ここでは、位置検出部53は、支持部53aと、一対の光センサ53b、53bとを含む。
【0064】
支持部53aは、U字状に形成されている。一対の光センサ53b、53bの投光部が支持部53aの一端部に設けられ、一対の光センサ53b、53bの受光部が支持部53aの他端部に設けられる。支持部53aの両端部の間に、レール43の垂下片43dの下側縁部を配設した状態で、台車52が走行路42に沿って走行する。
【0065】
位置検出部53が、位置マーカー44が設けられた箇所以外の位置に存在する状態では、一対の光センサ53b、53bの投光部からの光が垂下片43dによって遮られた状態となる。位置検出部53が、位置マーカー44が設けられた位置に存在すると、一対の光センサ53b、53bの投光部からの光が位置マーカー44を通って受光部によって受光され、もって、位置マーカー44を検出することができる。
【0066】
ここでは、位置検出部53は、一対の光センサ53b、53bを備えているため、位置マーカー44からの位置検出部53のずれの方向を検出することができる。すなわち、一対の光センサ53b、53bは、レール43の延在方向に沿って横並びに設けられている。光センサ53b、53bの間隔は、それらの2つの検知用光が位置マーカー44を通過可能な大きさに設定されている。このため、一対の光センサ53b、53bの両方で光が検出された場合には、位置検出部53が位置マーカー44に対して正確な位置に存在することがわかる。これに対して、一対の光センサ53b、53bの一方で光が検出されている場合には、位置マーカー44に対して、台車52が、光が検出されていない光センサ53b側に位置ずれしていることがわかる。このような場合には、台車52を、光が検出されている光センサ53b側に移動させれば、当該位置ずれを解消できる。もって、台車52を、位置マーカー44に対して正確な位置に移動させることができる。
【0067】
なお、光センサ53bは、1つのみ設けられてもよい。光センサは、反射型の光センサであってもよい。
【0068】
<制御ユニットについて>
図8は自動倉庫20の電気的構成を示すブロック図である。自動倉庫20は、台車52の走行制御等を行う制御ユニット90を備える。ここでは、制御ユニット90は、格納物出し入れ機構60、仮置き棚26、昇降機構部28等を制御し、自動倉庫20に対する入出庫制御を行う。
【0069】
制御ユニット90は、CPU91、RAM92、記憶部93、入出力部94等がバスラインを介して相互接続されたコンピューターによって構成されている。RAM92はCPU91が所定の手順に従った処理を行う際の作業領域として供される。記憶部93は、フラッシュメモリ或はハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されている。
【0070】
入出庫指令部95は、格納物30の格納指令、格納物30の出庫指令等を受付けるインターフェース端末であり、入出力部94を通じて制御ユニット90に接続されている。入出庫指令部95は、例えば、操作者による指令を受付けるものであってもよい。移載台車50の各部も入出力部94を通じて制御ユニット90に接続されている。ここで、移載台車50は、格納物出し入れ機構60、位置検出部53を備えると共に、走行用のモータ59としてサーボモータ59を備える。
図8では図示を省略しているが、仮置き棚26、昇降機構部28等も制御ユニット90に制御可能に接続されている。
【0071】
サーボモータ59は、モータ本体59aと、エンコーダ59bと、ドライバ59cとを備える。エンコーダ59bは、モータ本体59aの回転に応じた信号(例えば、パルス信号)を出力する。ドライバ59cは、制御ユニット90の制御下、エンコーダ59bから出力される信号に基づいてモータ本体59aをフィードバック制御する。これにより、制御ユニット90は、台車52の位置制御、速度制御、加速度制御等を行うことができる。エンコーダ59bからの検出信号は、制御ユニット90にも送られ、台車52の位置制御等に供される。
【0072】
ここでは、サーボモータ59のエンコーダ59bを走行距離出力部として用いた例で説明した。走行距離出力部は、車輪55、車輪56、又はそれらの車軸部等に組込まれたエンコーダであってもよい。
【0073】
記憶部93には、入出庫プログラム93a、格納データ93c、マーカー位置データ93d等が記憶されている。
【0074】
入出庫プログラム93aは、入出庫指令に基づいて格納物30を格納物30に対して入出庫すべく、昇降機構部28、仮置き棚26、移載台車50等を制御するプログラムである。この入出庫プログラム93aには、台車52の走行制御、特に、台車52を現在位置から目的位置に移動させるための走行制御モジュール93bが含まれている。CPU91が本入出庫プログラム93aを読込んで当該入出庫プログラム93aに記述された演算を実行することで、入出庫制御、特に、台車52の走行制御を実行する。
【0075】
走行制御モジュール93bは、台車52を加速した後、減速して現在位置から目的位置に向わせる処理を記述している。走行制御モジュール93bは、当該処理中において、エンコーダ59bからの出力に基づき、台車52が目的位置よりも手前の低速走行開始位置に達すると停止用低速による走行を開始させる処理を含む。また、走行制御モジュール93bは、台車52が停止用低速で走行中に、位置検出部53からの出力に基づき、目的位置に達したと判定されたときに、台車52を停止させる処理を含む。さらに、走行制御モジュール93bは、低速走行開始位置として、目的位置に応じた初期低速走行開始位置を初期設定し、位置検出部53からの出力に基づき、台車52が初期低速走行開始位置よりも手前の調整位置に達したと判定されたときに、低速走行開始位置を再設定し、台車52が再設定された低速走行開始位置で停止用低速による走行を開始するように、台車52の速度制御を実行する処理を含む。
【0076】
格納データ93cは、格納物30の特定情報と格納位置とを対応付けたデータである。この格納データ93cに基づき、格納物30における空き格納位置が特定され、当該空き格納位置に基づいて、格納物30を入庫する際の格納位置が決定される。格納物30の格納後には、当該格納物30の特定情報と格納位置とが対応付けられて格納データ93cに記憶される。また、格納された格納物30を取出す際には、格納データ93cに基づき、指定された格納物30の格納位置が特定される。
【0077】
マーカー位置データ93dは、複数の位置マーカー44の位置を特定したデータである。
図9はマーカー位置データ93dの一例を示す図である。
【0078】
このマーカー位置データ93dでは、台車52の初期位置(例えば、仮置き棚26に対して格納物30を出し入れする位置)を基準として、当該初期位置からの各位置マーカー44の距離が対応付けられている。
【0079】
複数の棚ユニット22のそれぞれの棚板24に対して、仮置き棚26に近いものから順に24(1)、24(2)、24(3)・・・の番号が付されている。各棚板24において、複数の位置マーカー44に対して仮置き棚26に近いものから順次44(8)、44(1)、44(2)、44(3)、44(4)、44(5)、44(6)、44(7)の番号が付されている。また、全ての位置マーカー44に対して仮置き棚26に近いものから順次、0、1、2、3、4、5・・・・の通し番号が付されている。そして、位置マーカー44の全ての通し番号に対して、初期位置(棚板24(1)の位置マーカー44(1)の位置)を原点として、当該原点からの距離が対応付けられている。
【0080】
制御ユニット90は、初期位置から台車52が走行する際に、検出された位置マーカー44の数をカウントしていく。そして、いずれの位置マーカー44に達した位置で、位置マーカーのカウント数とマーカー位置データ93dとに基づいて、初期位置に対する台車52の距離を求めることができる。また、台車52が、初期位置に戻らずに、次の場所に移動する際にも、初期位置から離れる方向に移動する場合には、位置マーカー44のカウント数を加算していき、初期位置に近づく方向に移動する場合には、位置マーカー44のカウント数を減算していく。そして、いずれの位置マーカー44に達した位置で、位置マーカーのカウント数とマーカー位置データ93dとに基づいて、初期位置に対する台車52の距離を求めることができる。また、台車52がいずれかの位置マーカー44に対応する位置(格納物30を出し入れする位置でもある)から他のいずれかの位置マーカー44に対応する位置に移動する際には、マーカー位置データ93dに基づいて移動距離を求めることができる。
【0081】
上記マーカー位置データ93dでは、距離はmm単位で登録されているが、エンコーダ59bからのパスル数に応じた値として登録されてもよい。mm単位で定義された距離と、パスル単位で登録された距離とは、比例関係にあるため、相互に変換可能な値である。以下では、距離(位置)をmm単位で説明する場合も、パルス数で説明する場合もある。
【0082】
上記マーカー位置データ93dは、台車52を初期位置から遠ざかる方向に移動させる際に各位置マーカー44を検出した時点でのエンコーダ59bのパルス数を登録していくことによって、ティーチングされたデータであってもよい。この場合、台車52の滑りを抑制するため、台車を一定速度でゆっくり移動させるとよい。マーカー位置データ93dは、設計上のデータ等から導きだされた値として登録されたものであってもよい。
【0083】
上記マーカー位置データ93dは、上下方向の各棚段に対して登録されている。
【0084】
制御ユニット90による処理について、特に、台車52の走行制御を中心に説明する。
【0085】
自動倉庫20の各棚段においては、台車52が格納部21又は仮置き棚26に対して格納物30を出し入れ可能な位置で停止している。つまり、台車52は、複数の位置マーカー44のいずれかに対応する位置に停止している。上記したように、初期位置から台車52が走行する際において、位置マーカー44の数を加算又は減算していくことで、台車52がいずれの位置マーカー44に対応する位置に停止しているか、すなわち、現在位置が特定されている。
【0086】
自動倉庫20に対して格納物30の入庫指令が入力されると、格納データ93cに基づき当該格納部21における空き格納位置から格納位置が1つ特定される。また、自動倉庫20に対して格納物30の出庫指令が入力されると、格納データ93cに基づき当該格納物30の格納位置が特定される。これらの格納位置が台車52の目的位置として設定される。
【0087】
制御ユニット90は、目的位置が設定されると、台車52を現在位置から目的位置に移動させるべく、
図10に示す処理を実行する。
【0088】
まず、ステップS1において、初期低速走行開始位置及び減速開始位置を特定する。
【0089】
初期低速走行開始位置は、低速走行開始位置として、目的位置に応じた位置として初期設定される。この初期低速走行開始位置は、目的位置よりも第1距離手前の位置に設定される。第1距離は、多少の誤差が生じても台車52が目的位置を通り過ぎることなく、停止用低速で目的位置を通過できるような値として設定される値である。停止用低速は、位置検出部53により目的位置に対応する位置マーカー44を検出したときに、直ぐに停止できる速度である。第1距離は、実験的、経験的、推論的に事前に決定された値であってもよい。ここで、上記のように、現在位置に対応する位置マーカー44及び目的位置に対応する位置マーカー44は上記のように特定されていることから、マーカー位置データ93dを参照することにより、現在位置と目的位置との距離がわかる。初期低速走行開始位置は、現在位置と目的位置との距離から第1距離を減算した位置として設定することができる。第1距離は、例えば、45mmとしてもよい。
【0090】
減速開始位置は、低速走行開始位置よりも第2距離手前の位置に設定される。第2距離は、最高速度、台車52の減速度(負の加速度)等に基づいて、事前に決定された値であってもよい。走行距離等に応じて台車52の最高速度等が変る場合には、最高速度等に基づいてその都度演算された値であってもよい。例えば、減速開始位置は、上記初期低速走行開始位置から第2距離を減算した位置として設定してもよい。
【0091】
次ステップS2では、現在位置から目的位置までの位置マーカー44の数が特定される。現在位置に対応する位置マーカー44の通し番号及び目的位置に対応する位置マーカー44の通し番号が上記のように特定されていることから、制御ユニット90は、現在位置から目的位置に達するまでの位置マーカー44の数を特定することができる。
【0092】
次ステップS3では、調整位置を決定する。調整位置は、いずれかの位置マーカー44に対応する位置であって初期低速走行開始位置よりも手前の位置に設定される。
【0093】
調整位置は、複数の位置マーカー44のうち初期低速走行開始位置よりも調整用距離以上又は調整用距離を超えて離れかつ目的位置に最も近いものが設けられる位置に設定されてもよい。例えば、調整用距離は、400mmとしてもよい。
【0094】
後述するように、調整位置が初期低速走行開始位置に近ければ、それまでの台車52の滑り等を考慮して理想的な低速走行開始位置になるべく近い位置に低速走行開始位置を設定できる。しかしながら、調整位置が初期低速走行開始位置に近すぎると、調整を行う時点で台車52の速度が遅くなりすぎて、移動時間が長くなってしまう。そこで、調整位置は、複数の位置マーカー44のうち初期低速走行開始位置よりも調整用距離以上又は調整用距離を超えて離れかつ目的位置に最も近いものが設けられる位置に設定されてもよい。調整用距離は、台車の速度、位置マーカー44の位置等に応じて実験的、経験的に設定することができる。
【0095】
調整位置は、上記調整用距離、初期低速走行開始位置に対する位置マーカー44の距離に応じて、減速開始位置よりも手前に設定される場合もあるし、減速開始位置を超えた位置(台車52の減速開始後に台車52が通過する位置)となる場合もある。
【0096】
次ステップS4では、制御ユニット90は、現在位置から目的位置に向けて走行制御を開始する。走行制御は、台車52を現在位置から目的位置に向わせる処理であって、台車52を加速させる処理と、この処理の後に、台車52を減速させる処理とを含む。走行制御は、台車52の加速後に、台車が一定の最高速度を保って走行する処理を含んでいてもよい。走行制御は、いわゆる台形速度制御である。
【0097】
台車52を加速させる処理は、現在位置から所定の第3距離離れた定速移行位置まで一定の加速度で加速する処理としてもよい。
【0098】
台車52の減速を加速させる処理は、減速開始位置にて、台車52を一定の減速度(負の加速度)にて減速させる制御、低速走行開始位置にて台車52を所定の停止用速度で走行させる制御、台車52が停止用低速で走行中に目的位置に達すると台車52を停止させる処理を含んでもよい。
【0099】
次ステップS5では、制御ユニット90は、位置検出部53からの出力に基づき、台車52が調整位置に達したか否かが判定される。NOと判定されると、ステップS4の走行制御を継続し、YESと判定されると、ステップS6に進む。
【0100】
ステップS6では、低速走行開始位置を再設定する。低速走行開始位置の再設定は、調整位置に対応する位置マーカー44の位置に基づいて、目的位置から第1距離手前の位置に低速走行開始位置が位置するように再度設定し直すことにより行われる。
【0101】
例えば、マーカー位置データ93dに基づく現在位置から調整位置に対応する位置マーカー44迄の距離をL1、エンコーダ59bの出力に基づく台車52の走行距離をL2とする。台車52が滑り等を生じずに走行すれば、距離L1と距離L2とは同じとなるが、台車52に滑り等が生じると、距離L1と距離L2とは異なる値となる。一般的には、台車52の加速時には、減速時よりも滑りが生じ易いので、L1<L2となる。
【0102】
この場合、低速走行開始位置(現在位置からの距離)は、次式により決定される位置に再設定してもよい。
【0103】
(再設定後の低速走行開始位置)=|(距離L1)-(距離L2)|+(初期低速走行開始位置)・・・式(1)
つまり、初期低速走行開始位置に対して、台車52の滑りによる走行距離不足分を加算して、再設定後の低速走行開始位置とする。
【0104】
次ステップS7では、再設定後の低速走行開始位置に応じた速度制御を行う。特に、台車52が再設定された低速走行開始位置で停止用低速による走行を開始するように、台車52の速度制御を実行する。
【0105】
ここで、目的位置と位置マーカー44との関係によっては、調整位置が低速走行開始位置に又はその手前に位置する場合と、調整位置が低速走行開始位置よりも目的位置側に位置する場合がある。前者の場合には、再設定後の低速走行開始位置に基づいて、減速開始位置を調整することで、ステップS4と同様の処理を行うことで対応できる。
【0106】
後者の場合には、台車52は既に減速を開始しているため、再設定後の低速走行開始位置に応じて台車52の速度制御を調整するとよい。
【0107】
例えば、制御ユニット90は、台車52が再設定された低速走行開始位置で停止用低速による走行を開始するように、台車52の再加速制御を行ってもよい。再加速を行う時間については、台車52の位置と低速走行開始位置との距離、加速度、減速度等を所定の式に代入する演算により求められてもよいし、予め設定されたテーブル(例えば、台車の位置と低速走行開始位置との距離と台車の速度とに再加速時間を対応付けたテーブル)により決定されてもよい。例えば、台車52が調整位置に達した時点で、台車52の速度、台車52の位置と低速走行開始位置との距離は判明しているため、加速度及び減速度(負の加速度)等の条件を事前に設定しておけば、台車52が調整位置に達した時点での台車52の速度を前提として、台車52が低速走行開始位置にて停止用低速による走行を開始するように、上記再加速時間を決定可能である。
【0108】
なお、上記後者の場合において、台車52を再加速させずに、一定速度で走行する期間を設けたり、調整位置での台車52の速度を前提に再設定後の低速走行開始位置で停止用低速に達するように減速度を緩やかにしたりしてもよい。
【0109】
次ステップS8では、制御ユニット90は、エンコーダ59bの出力に基づいて、台車52が低速走行開始位置に到達したか否かを判定し、NOと判定されると、ステップS7に戻り、YESと判定されると、ステップS9に進む。
【0110】
ステップS9では、制御ユニット90は、台車52が停止用低速で走行するように制御する。
【0111】
次ステップS10では、制御ユニット90は、位置検出部53からの出力に基づき、台車52が目的位置に達したか否かを判定し、NOと判定されると、ステップS9に戻り、YESと判定されると、ステップS11に進む。
【0112】
ステップS11では、制御ユニット90は、台車52を停止させる。
【0113】
これにより、走行処理が終了する。この後、制御ユニット90は、必要に応じて、移載台車50の格納物30を格納部21又は仮置き棚26に送込んだり、格納部21又は仮置き棚26の格納物30を移載台車50に取込んだりする制御を実行する。
【0114】
<動作>
上記処理に基づく台車52の動作を、
図11及び
図12を参照して説明する。
【0115】
図11は台車52が現在位置から目的位置に向う場合における位置と速度との関係を示す説明図である。
図11におけるティーチングに基づく位置は台車52に対してティーチングを行って各位置マーカー44の位置を教示した場合の位置を示し、これらは、エンコーダ59bのパルス数で表現されている。
図11では目的位置が0(pls)であり、低速走行開始位置が15000(pls)である。実測位置は、エンコーダ59bの出力に基づく、台車52の走行位置を示す。
【0116】
図11において、ラインAは台車52の理想的な速度変化を示している。台車52が滑らずに走行する場合を想定すると、台車52は、現在位置から一定加速度で加速し、定速移行位置にて最高速度に達し、その後、減速開始位置に達すると、一定減速度で減速して低速走行開始位置に達し、低速走行開始位置にて停止用低速で走行し、目的位置にて停止するとよい。
【0117】
制御ユニット90は、エンコーダ59bからの出力に基づいて、初期位置、定速移行位置、減速開始位置、低速走行開始位置にて、加速、定速走行開始、減速、定速走行開始となるように速度制御する。上記例では、制御ユニット90は、エンコーダ59bからの出力に基づいて、現在位置から15000(pls)の距離で低速走行開始位置となるように、減速開始位置で一定の減速度で減速するように制御することが考えられる。
【0118】
しかしながら、実際には、台車52がレール43に対して滑ること等が原因で、レール43に対する台車52の位置と、エンコーダ59bからの出力に基づく台車52の位置との間には誤差が生じ得る。特に、台車52の加速時に滑りが生じ易いため、レール43に対する台車52の位置に対して、エンコーダ59bからの出力に基づく台車52の位置は大きくなり易い。例えば、エンコーダ59bからの出力に基づく台車52の実測位置は、ティーチングに基づく予定の位置よりも早く検出される。
【0119】
このため、エンコーダ59bからの出力のみに基いて台車52を制御すると、ラインBに示すように、低速走行開始位置及び減速開始位置は、レール43に対する理想的な位置よりも手前に設定されるように制御されてしまう。このため、台車52が停止用低速で走行する距離及び時間が大きくなってしまい、台車52が現在位置から目的位置に移動するのに要する時間が長くなってしまう。
【0120】
図12は台車52が現在位置から目的位置に向う場合における位置と速度との関係を示す説明図である。
図12では
図11と同様に理想的なラインAが示されている。ラインAの下には、調整位置にて低速走行開始位置を再設定した場合のラインCが示されている。また、
図12の最下部には、位置マーカー44のいくつかが図示されている。この
図12では、調整位置は減速開始位置と低速走行開始位置に設定されているものとして説明する。
【0121】
初期低速走行開始位置は、低速走行開始位置として、目的位置に応じた位置として初期設定されている。この初期低速走行開始位置は、目的位置よりも第1距離手前の位置に設定される。第1距離は、多少の誤差が生じても台車52が目的位置を通り過ぎることなく、停止用低速で目的位置を通過できるような値として設定される値である。
【0122】
ここで、上記のように、現在位置に対応する位置マーカー44及び目的位置に対応する位置マーカー44に基づき、マーカー位置データ93dを参照することにより、現在位置と目的位置との距離がわかる。初期低速走行開始位置は、現在位置と目的位置との距離から第1距離を減算した位置(
図12で示す例では15000(pls))として設定することができる。
【0123】
初期の減速開始位置は、例えば、初期低速走行開始位置を基準として、設定される値である。例えば、上記したように、減速開始位置は、初期低速走行開始位置を基準として、第2距離手前の位置に設定されてもよい。
【0124】
調整位置は、ここでは、複数の位置マーカー44のうち初期低速走行開始位置よりも調整用距離(例えば、400mm)以上離れかつ目的位置に最も近いものが設けられる位置に設定されるとする。
【0125】
上記したように位置マーカー44の間隔は同じでないことから、調整位置は、減速開始位置よりも手前に設定される場合もあるし、減速開始位置を超えた位置(台車52の減速開始後に台車52が通過する位置)となる場合もある。
【0126】
制御ユニット90は、台車52が理想的なラインAで走行するように、エンコーダ59bからの出力に基づき、台車52の速度、加速度制御を行う。この際、台車52に滑り等が生じていると、エンコーダ59bの出力に基づく台車52の走行距離(実測位置)は、ティーチング(マーカー位置データ93d)に基づく予定位置よりも進んで測定される。
【0127】
制御ユニット90は、位置検出部53からの出力に基づき、台車52が調整位置に達したと判断すると、その調整位置を基準として、低速走行開始位置を再設定する。ここでは、ティーチング(マーカー位置データ93d)に基づく低速走行開始位置が15000(pls)、調整位置が10000(pls)に設定されているとする。台車52が調整位置に達した時点における、エンコーダ59bの出力に基づく台車52の走行距離が13000(pls)とすると、上記式(1)から、低速走行開始位置を18000(pls)と再設定する。
【0128】
そして、再設定後の低速走行開始位置に基づいて、台車52の速度制御を行う。ここでは、制御ユニット90は、台車52が再設定された低速走行開始位置で停止用低速による走行を開始するように、台車52の再加速制御を行う。再加速を行う時間については、上記したように、台車52の位置と低速走行開始位置との距離、加速度、減速度等を所定の式に代入する演算により求められてもよいし、予め設定されたテーブルにより決定されてもよい。
【0129】
再設定後の低速走行開始位置(
図12のラインC参照)は、再設定を行う前の低速走行開始位置(
図11のラインB参照)よりも目的位置に近づく。このため、台車52が停止用低速で走行する距離が短くなり、台車52が現在位置から目的位置に移動するのに要する時間をなるべく短くできる。
【0130】
なお、上記例は、調整位置が減速開始位置よりも目的位置側に存在する例であるが、調整位置が減速開始位置よりも現在位置側に存在する場合には、通常、再設定後の低速走行開始位置及びこれに基づく減速開始位置が目的位置にずれて設定され、再設定後のそれらの位置に基づき、台車52の速度制御がなされる。
【0131】
<効果等>
以上のように構成された台車走行装置40、自動倉庫20及び台車走行装置40の制御方法によると、位置検出部53からの出力に基づき、台車52が初期低速走行開始位置よりも手前の調整位置に達したと判定されたときに、低速走行開始位置を再設定し、台車52が再設定された低速走行開始位置で停止用低速による走行を開始するように、台車の速度制御を実行する。このため、台車52が減速を開始するか否かとは関係無く、再設定された低速走行開始位置で停止用低速による走行を開始するように、台車52の速度制御を実行することができ、台車52がなるべく早く正確に目的位置に移動できる。
【0132】
すなわち、台車52が現在位置から目的位置に移動する時間をなるべく短くするために、低速走行行開始位置を目的位置に近づけると、台車52の滑り等が原因でエンコーダ59bの出力に基づく台車52の走行距離に大きな誤差が生じた場合に、台車52が目的位置を通り過ぎてしまう恐れがある。上記を回避するために、低速走行開始位置を目的位置から遠ざけると、台車52が停止用低速で走行する距離が長くなり、台車52が現在位置から目的位置に移動する時間が長くなりすぎる可能性がある。
【0133】
そこで、台車52が減速を開始するか否かとは関係無く、台車52が調整位置に達すると、低速走行開始位置を再設定するようにすると、低速走行開始位置を目的位置になるべく近づけることができる。結果、台車52が停止用低速で走行する距離をなるべく小さくすることができ、台車52をなるべく早く目的位置に移動させることができる。
【0134】
つまり、引用文献1の場合には、置換による補正後の残走行距離に基づいて、減速処理を開始する位置を決定しているが、本実施形態においては、減速開始位置を再設定し、再設定後の減速開始位置に基づいて、速度制御を行う。調整位置が減速開始位置に達する前であれば減速開始位置を調整することもあるし、調整位置が減速開始位置を超えている場合には、台車52が停止用低速になるまでの加減速度を調整することもある。このため、目的位置、或は、低速走行開始位置になるべく近い調整位置で、走行誤差を補正して、台車52がなるべく早く正確に目的位置に移動できるようにすることができる。
【0135】
また、調整位置を、複数の位置マーカー44のうち初期低速走行開始位置よりも調整用距離以上又は調整用距離を超えて離れかつ目的位置に最も近いものが設けられる位置に設定すれば、調整位置が初期低速走行開始位置よりも調整用距離以上又は調整用距離を超えて離れた位置に設定されるため、台車52が再設定された低速走行開始位置で停止用低速による走行を開始するように、台車52の速度制御を実行し易い。また、当該条件を満たしつつ、調整位置がなるべく目的位置の近くに設定されるため、台車52は目的位置により正確に停止できる。
【0136】
また、台車52が減速を開始するときに、走行路42に対して台車52が滑り、車輪55、56の回転に応じたエンコーダ59bの出力に基づく台車52の位置と、走行路42における台車52の実際の位置との間に誤差が生じ易い。この場合に、調整位置が台車52の減速開始後に台車52が通過する位置に設定可能であると、台車52が減速を開始するときに生じた誤差の影響を抑制することができ。台車52は目的位置により正確に停止できる。
【0137】
また、台車52が再設定された低速走行開始位置で停止用低速による走行を開始するように、台車52の再加速制御が可能であると、台車52が目的位置に達する時間を早くすることができる。一般的には、初期低速走行開始位置よりも再設定後の低速走行開始位置が目的位置に近い位置に設定されれば、台車52の再加速制御を行うとよい。
【0138】
上記台車走行装置40を備えた自動倉庫20によると、移載台車50を、格納物30に格納された複数の格納物30を出し入れできる位置に正確に停止させることができる。また、目的位置になるべく近い位置で、移載台車50が停止用低速で走行することができるため、移載台車50の走行時間を短くでき、格納物30の出し入れを迅速に行える。
【0139】
<格納物の幅調整に適した台車の構成について>
上記格納部21には、幅が異なる格納物30が格納される。上記したように、棚ユニット22の棚板24に、5つの格納物30が格納される場合には、比較的幅が小さい格納物30が格納される。棚板24に4つの格納物30が格納される場合には、比較的幅が大きい格納物30が格納される。
【0140】
図5及び
図6に示す移載台車50は、出し入れを行う格納物30の幅に応じた構成とされていてもよく、以下では、そのための構成について説明する。
【0141】
図13は、
図5及び
図6に示す移載台車50を、複数ユニットに分解した分解斜視図である。
【0142】
移載台車50は、ベースフレームユニット70と、ベースプレートユニット71と、走行ユニット72と、2つのアームユニット73、74と、アーム駆動ユニット75との組合せにより構成されている。
【0143】
ベースフレームユニット70は、一対のサイドフレーム70b、70bの一端部の主フレーム70aが連結された構成とされている。主フレーム70aの両端部に車輪55が回転可能に支持されている。
【0144】
ベースプレートユニット71は、格納物30を載置可能な板状部分を有するユニットであり、ベースプレート54cに対応する部分である。
【0145】
ベースフレームユニット70及びベースプレートユニット71によりベース54が構成される。
【0146】
走行ユニット72は、走行駆動部58の両端部に車輪55が回転駆動可能に設けられた構成とされている。走行ユニット72は、ベースフレームユニット70の一対のサイドフレーム70b、70bの両端部に連結される。これにより、台車52の4隅に車輪55、56が設けられることになる。
【0147】
2つのアームユニット73、74は、ベース62a、62aと、当該ベース62a、62aに対して進退可能な進退アーム62b、62bとを含む。2つのアームユニット73,74は、ベースプレートユニット71の一対のサイドフレーム70b、70bに掛渡すようにして、当該一対のサイドフレーム70b、70bに支持される。
【0148】
アーム駆動ユニット75は、アームユニット73、74のベース62a、62aに対して進退アーム62b、62bを進退駆動させるユニットである。本アーム駆動ユニット75の駆動力が進退アーム62b、62bに伝達され、進退アーム62b、62bが進退移動する。このアーム駆動ユニット75は、ベースフレームユニット70の一対のサイドフレーム70b、70bに支持されている。
【0149】
移載台車50のうち格納物30の幅に応じて変更すべき箇所は、主として、格納物出し入れ機構60の一対のアーム62、62の間隔である。
【0150】
このため、移載台車50の構成ユニットのうち、走行ユニット72と、2つのアームユニット73、74とについては、格納物30の幅が変っても同じものを用いることができる。
【0151】
ベースフレームユニット70については、一対のサイドフレーム70b、70bの長さを、大きい方の格納物30の幅に対応した大きさとしておけば、一対のサイドフレーム70b、70bに対する2つのアームユニット73、74の固定位置を変更することで、格納物30の幅が変っても同じものを用いることができる。
【0152】
ベースプレートユニット71については、格納物30の幅に応じて複数種の幅寸法のものを準備しておき、対象となる格納物30の幅に応じたものをベースフレームユニット70に取付ければよい。
【0153】
アーム駆動ユニット75については、1つのモータ78の回転駆動力を一対のアーム62、62に伝達する構成のものであるため、格納物30の幅に応じた工夫がなされている。
【0154】
図14はアーム駆動ユニット75を示す斜視図であり、
図15はアーム駆動ユニット75からアーム62に力を伝達する部分を示す図であり、
図16はアーム駆動ユニット75の側面図であり、
図17はアーム駆動ユニット75の部分的な斜視図である。
【0155】
アーム駆動ユニット75は、一対のサイドプレート76、76と、連結フレーム77、77、77と、モータ78と、駆動シャフト79と、伝達ベルト80と、複数のプーリー81、81、82、82とを備える。
【0156】
一対のサイドプレート76、76は、格納物30の幅に応じた間隔、即ち、一対のアーム62、62の間隔に応じた間隔で、連結フレーム77、77、77によって平行姿勢で支持される。連結フレーム77、77、77の長さを、大きい方の格納物30の幅に対応した大きさとしておけば、連結フレーム77、77、77に対する2つの一対のサイドプレート76、76の固定位置を変更することで、格納物30の幅が変っても同じものを用いることができる。
【0157】
モータ78は、連結フレーム77、77に支持されたモータブラケット77aによって支持されている(
図14参照)。モータ78の回転軸は、連結フレーム77、77の延在方向に一致している。モータ78の回転軸部には駆動プーリー78aが連結されている。
【0158】
サイドプレート76の両端部には、一対のプーリー81、81が回転可能に支持されている。伝達ベルト80は、当該一対のプーリー81、81に巻掛けられている。伝達ベルト80の外周には、幅方向に沿う溝が並列状態で形成されている。各図において、伝達ベルト80の溝が一部省略されている場合がある。
【0159】
一対のプーリー81、81に巻掛けられた伝達ベルト80の一方の経路部分の内側には、複数の補助プーリー83が設けられている。複数の補助プーリー83によって、伝達ベルト80が内周側に移動することが抑制されている。
【0160】
本アーム駆動ユニット75がベースフレームユニット70に固定された状態で、一対のプーリー81、81に巻掛けられた伝達ベルト80の一方の経路部分がアームユニット73の進退アーム62bに形成された歯部に押し当てられる(
図15参照)。そして、モータ78の駆動によって伝達ベルト80を正逆両方向に回転駆動させることによって、進退アーム62bを、ベース62aの両端側に進退移動させることができる。伝達ベルト80のうち進退アーム62bの歯部が噛合う部分の内周側に、複数の補助プーリー83が設けられ、伝達ベルト80の内周側への移動が抑制されているため、当該歯部と伝達ベルト80との噛合いがより確実に保たれ易い。
【0161】
一対のプーリー81、81に巻掛けられた伝達ベルト80の他方の経路部分の内側には、一対のプーリー82、82が設けられている。一対のプーリー82、82の間には補助プーリー84が設けられている。一対のプーリー82、82の間には、後述する駆動中継プーリー79aを配設可能な間隔が設けられている。
【0162】
駆動中継プーリー79aは、一対のプーリー82、82の間において、伝達ベルト80の外周側から当該伝達ベルト80に押し当てられる。駆動中継プーリー79aが押し当てられた伝達ベルト80の内周側部分は、補助プーリー84によって受止められる。そして、駆動中継プーリー79aが正逆両方向に回転すると、その回転方向に従って伝達ベルト80が正逆両方向に回転する。
【0163】
これらのモータ78、一対のプーリー81、81、82、82、伝達ベルト80、補助プーリー83、84等は、格納物30の幅が変っても同じものを用いることができる。
【0164】
駆動シャフト79の両端部には、駆動中継プーリー79aが固定されている。駆動シャフト79の延在方向中間部には、中間受プーリー79bが固定されている。
【0165】
駆動シャフト79は、次のようにしてサイドプレート76、76に回転可能に支持されている。すなわち、駆動シャフト79の両端部に、軸受86aを含むブラケット86が取付けられている。サイドプレート76、76には、その縁部(下側縁部)から駆動シャフト79を配設可能なU字状の凹部76aが切り欠くこと等によって形成されている(
図16参照)。そして、駆動シャフト79の両端部を当該凹部76a内に配設し、ブラケット86をサイドプレート76、76の外面等にネジ止等によって固定すると、サイドプレート76によって駆動シャフト79が回転可能に支持される。
【0166】
駆動シャフト79のうち中間受プーリー79bが固定された部分の近傍部分については、上記と同様の構成によって、軸受を有するブラケット87によってモータブラケット77aに回転可能に支持されている。
【0167】
駆動シャフト79を上記のように固定する際、事前に中間受プーリー79bには、中継ベルト88が装着されている。駆動シャフト79を上記のように固定する前又は後に、中継ベルト88は、中間受プーリー79b及び駆動プーリー78aに巻掛けられる。これにより、モータ78の回転駆動力が中継ベルト88を介して駆動シャフト79に伝達され、モータ78の正逆両方向への回転駆動に伴い、駆動シャフト79が正逆両方向に回転駆動される。
【0168】
また、駆動シャフト79を上記のように固定すると、駆動中継プーリー79aは、一対のプーリー82、82の間において、伝達ベルト80の外周側から当該伝達ベルト80に押し当てられる。このため、モータ78の正逆両方向への回転駆動力が、駆動シャフト79を介して、伝達ベルト80に伝達される。これにより、モータ78によって伝達ベルト80を正逆両方向に回転させて、進退アーム62bを進退移動させることができる。
【0169】
格納物30の幅が変ると、駆動シャフト79の両端に取付けられたブラケット86の間隔が代り、駆動中継プーリー79aの間隔も変る。そこで、駆動シャフト79については、当該駆動シャフト79の長さが異なるものを複数種準備しておき、格納物30の幅に応じた駆動シャフト79を用いるようにするとよい。
【0170】
かかる移載台車50によると、移載台車50を複数のユニットによって構成し、複数の構成ユニットのうち、走行ユニット72と、2つのアームユニット73、74とについては、格納物30の幅が変っても同じものを用いることができる。ベースフレームユニット70については、格納物30の幅に応じて一対のサイドフレーム70b、70bの長さを変更したものを用い、ベースプレートユニット71については、格納物30の幅に応じて幅を変更したものを用い、アーム駆動ユニット75については、格納物30の幅に応じて駆動シャフト79の長さを変えたものを用いる。
【0171】
このため、異なる幅の格納物30を出し入れする移載台車50の構成部品の多くを共用化できる。これにより、異なる幅の格納物30への対応容易化、移載台車50の低コスト化が可能となる。
【0172】
特に、格納物30の複数の幅が予め想定される場合には、当該格納物30の幅に応じた複数長さのサイドフレーム70b、70b、複数幅のベースプレートユニット71、複数長さの駆動シャフト79を予め製造して準備しておくことで、異なる幅の格納物30用の移載台車50を迅速に提供することが可能となる。
【0173】
{変形例}
ここでは、台車走行装置が自動倉庫に組込まれた例で説明したが、台車走行装置自体は、自動倉庫に組込まれた例に限られず、何らかの作業用の装置等を備えた台車が走行路に沿って走行する各種態様に適用可能である。
【0174】
また、自動倉庫は、各種コンテナ、梱包体を格納する他、書籍、ファイル等を格納するものであってもよい。また、格納物は、格納部及び移載台車に載置支持される場合に限られず、吊下げられる態様等で支持されてもよい。
【0175】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0176】
本開示は下記の各態様を開示する。
第1の態様に係る台車走行装置は、複数の位置マーカーが付された走行路と、車輪と、前記車輪を駆動する走行駆動部と、前記車輪の回転に応じた走行距離を出力する走行距離出力部と、前記複数の位置マーカーを検出する位置検出部とを含み、前記走行路を走行する台車と、前記台車を現在位置から目的位置に向わせる処理であって、前記走行距離出力部からの出力に基づき、前記台車が前記目的位置の手前の低速走行開始位置に達すると停止用低速による走行を開始すると共に、前記台車が前記停止用低速で走行中に、前記位置検出部からの出力に基づき、前記目的位置に達したと判定されたときに、前記台車を停止させる処理を実行する制御ユニットと、を備え、前記制御ユニットは、前記低速走行開始位置として、前記目的位置に応じた初期低速走行開始位置を初期設定し、前記位置検出部からの出力に基づき、前記台車が前記初期低速走行開始位置よりも手前の調整位置に達したと判定されたときに、前記低速走行開始位置を再設定し、前記台車が再設定された前記低速走行開始位置で前記停止用低速による走行を開始するように、前記台車の速度制御を実行する。
第2の態様は、第1の態様に係る台車走行装置であって、前記調整位置は、前記複数の位置マーカーのうち前記初期低速走行開始位置よりも調整用距離以上又は調整用距離を超えて離れかつ前記目的位置に最も近いものが設けられる位置に設定されるものである。
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る台車走行装置であって、前記調整位置は、前記台車の減速開始後に前記台車が通過する位置に設定可能とされている。
第4の態様は、第3の態様に係る台車走行装置であって、前記制御ユニットは、前記台車が再設定された前記低速走行開始位置で前記停止用低速による走行を開始するように、前記台車の再加速制御が可能とされている。
第5の態様に係る自動倉庫は、第1から第4のいずれか1つの態様に係る台車走行装置と、前記走行路の少なくとも一側方に、複数の格納物を前記走行路の延在方向に沿って並べた状態で格納可能な格納部と、を備え、前記台車に前記格納部に対して前記格納物を出し入れする格納物出し入れ機構が設けられているものである。
第6の態様は、複数の位置マーカーが付された走行路と、車輪と、前記車輪を駆動する走行駆動部と、前記車輪の回転に応じた走行距離を出力する走行距離出力部と、前記複数の位置マーカーを検出する位置検出部とを含み、前記走行路を走行する台車とを備えた台車走行装置の制御方法であって、前記台車を現在位置から目的位置に向わせ、この際に、走行距離出力部からの出力に基づき、前記台車が前記目的位置の手前の低速走行開始位置に達すると停止用低速による走行を開始すると共に、前記台車が前記停止用低速で走行中に、前記位置検出部からの出力に基づき、前記目的位置に達したと判定されたときに、前記台車を停止させる。
第1の態様によると、制御ユニットは、位置検出部からの出力に基づき、台車が初期低速走行開始位置よりも手前の調整位置に達したと判定されたときに、低速走行開始位置を再設定し、台車が再設定された前記低速走行開始位置で前記停止用低速による走行を開始するように、台車の速度制御を実行する。このため、台車が減速を開始するか否かと関係無く、調整位置に達したと判定されると、制御ユニットは、台車が再設定された低速走行開始位置で停止用低速による走行を開始するように、台車の速度制御を実行する。これにより、台車がなるべく早く正確に目的位置に移動できる。
第2の態様によると、調整位置は、複数の位置マーカーのうち初期低速走行開始位置よりも調整用距離以上又は調整用距離を超えて離れているため、台車が再設定された低速走行開始位置で停止用低速による走行を開始するように、台車の速度制御を実行し易い。また、当該条件を満たしつつ、調整位置がなるべく目的位置の近くに設定されるため、台車は目的位置により正確に停止できる。
台車が減速を開始するときに、走行路に対して台車が滑り、走行距離出力部に基づく台車の位置と走行路における台車の実際の位置との間に誤差が生じ易い。この場合に、第3の態様のように、調整位置が台車の減速開始後に台車が通過する位置に設定可能であると、台車が減速を開始するときに生じた誤差の影響を抑制することができるため、台車は目的位置により正確に停止できる。
第4の態様によると、制御ユニットは、台車が再設定された低速走行開始位置で停止用低速による走行を開始するように、台車の再加速制御が可能であるため、台車が目的位置に達する時間を早くすることができる。
第5の態様によると、台車を、格納部に格納された複数の格納物を出し入れできる位置により正確に近づけることができる。
第6の態様によると、位置検出部からの出力に基づき、台車が初期低速走行開始位置よりも手前の調整位置に達したと判定されたときに、低速走行開始位置を再設定し、台車が再設定された前記低速走行開始位置で前記停止用低速による走行を開始するように、台車の速度制御を実行する。このため、台車が減速を開始するか否かと関係無く、台車が初期低速走行開始位置よりも手前の調整位置に達したと判定されたときに、低速走行開始位置を再設定し、台車が再設定された低速走行開始位置で停止用低速による走行を開始するように、台車の速度制御を実行する。これにより、台車は目的位置により正確に近づくことができる。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0177】
20 自動倉庫
21 格納部
22 棚ユニット
24 棚板
30 格納物
40 台車走行装置
42 走行路
43 レール
44 位置マーカー
50 移載台車
52 台車
53 位置検出部
58 走行駆動部
59 サーボモータ(モータ)
59a モータ本体
59b エンコーダ
59c ドライバ
60 格納物出し入れ機構
62 アーム
90 制御ユニット
91 CPU
93a 入出庫プログラム
93b 走行制御モジュール
93d マーカー位置データ