(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】無線タンパー装置
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20230324BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20230324BHJP
G06K 19/073 20060101ALI20230324BHJP
E05B 39/02 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
G06K19/077 304
G06K19/07 170
G06K19/073 090
E05B39/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018217087
(22)【出願日】2018-11-20
【審査請求日】2021-11-18
(32)【優先日】2017-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】ウェイド ティー.プライス
(72)【発明者】
【氏名】ブルース アール.オルセン
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド ローダー
【審査官】赤穂 州一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-293797(JP,A)
【文献】特開2016-194917(JP,A)
【文献】特開2005-227818(JP,A)
【文献】特表2016-508654(JP,A)
【文献】特開2006-178736(JP,A)
【文献】特開2002-150249(JP,A)
【文献】特開2005-228061(JP,A)
【文献】特開2005-228304(JP,A)
【文献】特開2005-107176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
G06K 19/07
G06K 19/073
E05B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機と、
所定の電気的特性を有する多層プローブと、
前記多層プローブと信号通信する処理装置と、
前記送信機及び前記処理装置と信号通信する電源と、
前記処理装置と信号通信する加速度計と、を含む、無線によるタンパー装置(「WTD」)であって、
前記加速度計は、WTDの運動又は振動を検知するように構成されており、
前記処理装置は、
プロセッサと、
コード化されたコンピュータ実行可能命令が格納されたコンピュータ可読媒体(「CRM」)とを含み、前記コンピュータ実行可能命令は、前記プロセッサに、
タンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定すること、
前記多層プローブに対する物理的トリガー
であって、当該多層プローブの電気的特性に変化を生じさせる物理的トリガーを検知すること、及び、
前記多層プローブに対する前記物理的トリガーを検知した場合
、或いは、WTDの運動又は振動を検知した場合に前記タンパー状態を「タンパリング有り」に設定すること、を行わせるものである、WTD。
【請求項2】
前記WTDの少なくとも一部を封入する封止材をさらに含む、請求項1に記載のWTD。
【請求項3】
トリガースイッチをさらに含み、
前記タンパー状態を初期設定することは、前記トリガースイッチが起動されると、前記タンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定することを含む、請求項1又は2に記載のWTD。
【請求項4】
前記多層プローブは、アンテナ長を有するアンテナであり、
前記物理的トリガーは、前記アンテナ長を短縮する前記多層プローブの破断である、請求項1~3のいずれかに記載のWTD。
【請求項5】
受信機をさらに含み、
前記コンピュータ実行可能命令は、前記プロセッサに、
外部装置からの始動コマンドを受信すること、及び、
前記始動コマンドを認証すること、をさらに行わせるものであり、
前記タンパー状態を初期設定することは、受信した前記始動コマンドが認証されると、前記タンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定することを含む、請求項1~
4のいずれかに記載のWTD。
【請求項6】
前記処理装置は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)であり、
前記CRMは、ファームウェアである、請求項1~
5のいずれかに記載のWTD。
【請求項7】
多層プローブと加速度計とを含む無線によるタンパー装置(「WTD」)でタンパリングを検知する方法であって、
WTDのタンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定することと、
前記多層プローブに対する物理的トリガー
であって、当該多層プローブの電気的特性に変化を生じさせる物理的トリガーを検知することと、
前記加速度計によりWTDの運動又は振動を検知することと、
前記多層プローブに対する前記物理的トリガーを検知した場合
、或いは、WTDの運動又は振動を検知した場合に前記タンパー状態を「タンパリング有り」に設定することと、を含む方法。
【請求項8】
外部装置から始動コマンドを受信することと、
前記始動コマンドを認証することと、をさらに含み、
前記タンパー状態を初期設定することは、受信した前記始動コマンドが認証されると、前記タンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定することを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記物理的トリガーを検知した場合にタンパー状態信号を送信することをさらに含み、
前記タンパー状態信号は、前記タンパー状態が「タンパリング有り」であることを示すものである、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記外部装置からステータスコマンドを受信することと、
前記ステータスコマンドを認証することと、
前記ステータスコマンドを受信した場合にタンパー状態信号を送信することと、をさらに含み、
前記タンパー状態信号は、前記タンパー状態が「タンパリング有り」であることを示すものである、請求項
8又は
9に記載の方法。
【請求項11】
前記物理的トリガーは、前記多層プローブ内における材料層の分離である、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記外部装置からリセット信号を受信することと、
前記タンパー状態を「タンパリング無し」にリセットすることと、をさらに含む、請求項
8又は9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサに関し、具体的には、タンパリング(tampering)を検知するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
民間の移動においては、例えば航空機、バス、船、列車、又はトラックなどの多くの商用ビークルの保管エリアに入れられたアイテムを、保護し安全に保管する必要がある。また、商用の航空機、バス、列車、及び船においては、メインテナンスエリアのように、閉鎖して安全性を確保しておく必要のあるキャビン、クローゼット、パレット(pallets)、及び空間が存在しうる。
【0003】
このような状況の多くにおいて、特定のエリアを物理的にロックすることは、選択できない場合がある。例えば、商用の定期航空機、列車又はバス内の乗客の頭上棚、洗面所、及びギャレー(galleys)は、移動中に随時簡単に利用できなければならない。別の例として、ビークル内の洗面所は、セキュリティのために、乗客がビークルに乗る前に、検査し、安全性を確保して、閉鎖しておく必要が生じ得る。同様に、航空機においては、乗務員関連のアイテムを、頭上荷物棚又はクローゼットに保管しなければならない場合があり、これらもまた閉鎖して安全性を確保する必要がある。また、ギャレー内の貯蔵コンパートメントも、検査、閉鎖、及び、安全性確保の必要が生じ得る。
【0004】
現在のところ、これらのエリアの安全性を確保する方法は、検査を行い、閉鎖し、扉や蓋などの当該エリアへのアクセス箇所に何らかの装置を配置することに限られている。このような装置としては、タンパリングの視覚的証拠を示す様々な装置又はアイテムがあり、例えば、タンパリング事象によって永久的に変化したり破壊されたりする結束バンド、接着シール又はテープ、プラスチック製の南京錠などがある。例えば、
図1には、頭上荷物棚104の頭上荷物棚扉102に貼着された、一例の既知のセキュリティシール100のシステムブロック図が示されている。頭上荷物棚104は、例えば、航空機、バス、列車、又は他の乗客用ビークル内に配置される。セキュリティシール100は、頭上荷物棚本体106と頭上荷物棚扉102の両方に跨るように配置されて、頭上荷物棚本体106と頭上荷物棚扉102との間の間隙108を架け渡している。
【0005】
次に、
図2を参照すると、セキュリティボックス202に取り付けられた、別の例の既知のセキュリティ装置200のシステムブロック図が示されている。この場合も、セキュリティボックス202は、例えば、航空機、バス、列車、又は他の乗客用ビークル内に配置される。セキュリティ装置200は、南京錠型の装置、結束バンド、接着シールもしくはテープ、又は他の同様の装置である。セキュリティボックス202は蓋204を備える保管領域であり、例えば、乗務員アイテム及び/又は緊急装置、救命胴衣、消火器、自動体外式除細動器(「AED」)などを含むセキュリティアイテムを保管するために用いられる。本例では、セキュリティ装置200は、取付アタッチメント206に取り付けられる南京錠型の装置であり、取付アタッチメントは、セキュリティボックス202の蓋204と前壁208の両方に跨るように配置されて前壁208と蓋204との間の間隙210を架け渡すものである。
【0006】
いずれの例においても、頭上荷物棚扉102又はセキュリティボックス202の蓋204が開けられると、セキュリティシール100又はセキュリティ装置200が物理的且つ可視的に損傷され、何者かが頭上荷物棚扉102又は蓋204を開けた(又は開けようとした)ことがわかる。一般的には、(セキュリティシール100又はセキュリティ装置200などの)セキュリティ封止具は、例えば、タンパリング防止シール、セキュリティシール、タンパリング証明セキュリティシール、セキュリティテープ、タンパリング証明テープ、プラスチック製結束バンド又は南京錠として通常知られている種類のテープ又は装置であり、単純化のために、これらを本明細書では「セキュリティ封止具」又は「セキュリティ装置」と称する。一般的に、これらのセキュリティ封止具又は装置は、目視によって検査できるとともに、タンパリング又は破壊が行われた際は容易に認識できるように設計されている。一例として、民間航空機では、航空機に載せるあらゆるアイテムが、関連のセキュリティ担当者によって許可され、一旦許可されると、これらのアイテムがフライト前、フライト中、及びフライト後に不正に開封されることが無いよう、セキュリティ封止具又は装置が使用される。
【0007】
残念ながら、このようなタイプのセキュリティ封止具又は装置は、有用ではあるものの、関連のセキュリティ担当者又は乗務員がビークル内を歩き回って、目視によって、そして場合によっては物理的に、其々のセキュリティ封止具又は装置を個別に検査し、タンパリングが行われたかどうかを調べる必要がある。このことは、ビークルの稼働休止期間に繋がるとともに、ビークルにあるセキュリティ封止具又は装置のすべてを物理的に検査することにより、人件費の増加に繋がる。従って、既知のセキュリティ封止具及び装置の制約に対処するシステム及び方法が、必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
無線によるタンパー装置(「WTD」)が開示される。WTDは、送信機と、多層プローブと、処理装置と、電源とを含む。処理装置は、多層プローブと信号通信し、電源は、送信機及び処理装置と信号通信する。処理装置は、プロセッサと、コンピュータ可読媒体(「CRM」)とを含む。CRMには、コード化されたコンピュータ実行可能命令が格納されており、コンピュータ実行可能命令は、タンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定すること、多層プローブに対する物理的トリガーを検知すること、及び、物理的トリガーを検知した場合にタンパー状態をタンパリング有り状態に設定することを、プロセッサに行わせるものである。
【0009】
動作の一例において、WTDは、タンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定することと、物理的トリガーを検知することと、物理的トリガーを検知した場合にタンパー状態を「タンパリング有り」に設定することとを含む方法を実行する。
【0010】
本発明の他のデバイス、装置、システム、方法、特徴、及び利点は、以下の図面及び詳細な説明を検討することによって、当業者に一層明らかになるであろう。それら追加のシステム、方法、特徴、及び利点は、本記載及び本発明の範囲に包含されるとともに、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、以下の図面を参照することにより、より理解されるであろう。図面における要素は、必ずしも正確な縮尺率で描かれておらず、本発明の原理を説明するにあたって強調を加えている。図面において、異なる図面に共通する部分は、同様の参照数字で示している。
【0012】
【
図1】頭上荷物棚の頭上荷物棚扉に貼着された既知のセキュリティシールの一例のシステムブロック図である。
【
図2】セキュリティボックスに取り付けられた既知のセキュリティ装置の別の例のシステムブロック図である。
【
図3】本開示による、無線によるタンパー装置(「WTD」)の一実施例のシステムブロック図である。
【
図4】本開示による、
図3に示したWTDによって行われる方法の一実施例のフローチャートである。
【
図5A】本開示による、セキュリティテープ又はセキュリティラベルタイプとしてのWTDの一実施例の上面図である。
【
図5B】本開示による、
図5Aに示したWTDの実施例の側面図である。
【
図5C】本開示による、トリガー事象が起こった状態の
図5A及び5Bに示したWTDの斜視図である。
【
図5D】本開示による、トリガー事象が起こった状態の
図5Cに示したWTDの側面図である。
【
図6A】本開示による、
図3に示したWTDの平らな「バンドエイト」型の装置としての一実施例のブロックシステム図である。
【
図6B】本開示による、タンパリングされた後の
図6Aに示したWTDのブロックシステム図である。
【
図7A】本開示による、
図3に示したWTDのハイブリッドタイプの装置としての一実施例のブロックシステム図である。
【
図7B】本開示による、タンパリングされた後の
図7Aに示したWTDのブロックシステム図である。
【
図8】本開示による、
図3に示したWTDのリセット可能な一実施例のブロックシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
無線タンパー装置(wireless tamper device:WTD)が開示される。WTDは、送信機、所定の電気的特性を有する多層プローブ、処理装置、及び、電源を含む。処理装置は、多層プローブと信号通信し、電源は、送信機及び処理装置と信号通信する。処理装置は、プロセッサ及びコンピュータ可読媒体(「CRM」)を含む。CRMには、コード化されたコンピュータ実行可能命令が格納されており、当該命令は、タンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定すること、多層プローブに対する物理的トリガーを検知すること、及び、物理的トリガーを検知した場合にタンパー状態を「タンパリング有り」に設定することを、プロセッサに行わせるものである。従って、動作の一例において、WTDは、タンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定することと、物理的トリガーを検知することと、物理的トリガーを検知した場合にタンパー状態を「タンパリング有り」に設定することとを含む方法を実行する。
【0014】
図3には、本開示による一実施例のWTD300のシステムブロック図が示されている。WTD300は、送信機302、多層プローブ304、処理装置306、及び、電源308を含む。WTD300は、さらに、アンテナ310、受信機312、オプションのセンサ314、及び、オプションの加速度計315(あるいは運動及び/又は振動を測定可能な他のソリッドステート電子センサ)も含み得る。本実施例において、処理装置306は、其々、信号経路316、318、320、322及び323を介して、送信機302、受信機312、電源308、オプションのセンサ314、及びオプションの加速度計315と信号通信する。電源308は、其々、信号経路324、326及び328を介して、送信機302、受信機312及びオプションのセンサ314と信号通信する。アンテナ310は、其々、信号経路330及び332を介して、送信機302及び受信機312と信号通信する。また、多層プローブ304は、信号経路334を介してオプションのセンサ314と信号通信し、オプションのセンサ314及び信号経路334、322を介して処理装置306と信号通信する。本実施例において、WTD300は、任意で、信号経路338を介して処理装置306と信号通信するオプションのトリガースイッチ336も含み得る。オプションの加速度計315は、信号経路339を介して、多層プローブ304と信号通信し得る。
【0015】
本実施例において、処理装置306は、プロセッサ340及びコンピュータ可読媒体(「CRM」)342を含み得る。一般的には、CRM342には、WTD300の動作において様々な機能をプロセッサ340に行わせるためのコード化されたコンピュータ実行可能命令が、格納されている。プロセッサ340は、任意のマイクロプロセッサ又はこれに類する装置、例えば、中央処理装置(「CPU」)、デジタル信号処理(「DSP」)装置、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、又は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)など、であってよい。一般的には、CRM342は、ソフトウェア又はファームウェアであってよく、CRM342に格納されるコンピュータ実行可能命令は、例えば、プロセッサ340によってロード及び実行可能なオペレーティングシステム、ソフトウェア、及び、その他のモジュール、プログラム、又はアプリケーションを含み得る。また、CRM342がファームウェアである場合、コンピュータ実行可能命令は、プロセッサ340の動作を制御するハードウェアロジック(すなわち機械命令)を含み得る。この場合、CRM342は、バスを含む信号経路を介して、プロセッサ340と信号通信し得る。
【0016】
電源308は、例えば、WTD300に長時間電力供給するように構成されたバッテリである。当業者であれば分かるように、送信機302及び受信機312は、其々独立した装置であってもよいし、組み合わされて送受信装置の一部を構成してもよい。多層プローブ304は、タンパリング行為に関連する物理的な力(すなわち物理的トリガー)を検知可能なものであれば任意の種類の多層デバイスであってよく、ここで、物理的トリガーとは、多層プローブ304を物理的に損傷又は破壊することを含み得る。多層プローブ304の例としては、例えばワイヤ、電気基板、又はその他の導電性材料を含み得る複数の材料層を含むものがある。一般的には、多層プローブ304は、例えば積層された2つ以上の材料層を含み、これにより、多層プローブ304は、例えば所定のインピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス、誘電特性、降伏電圧などを含む所定の電気的特性を有する。タンパリングされると、多層プローブ304は、物理的に変質又は損傷され、多層プローブ304内の材料層の一部又は全体が、移動又は相互分離し、これにより、多層プローブ304の電気的特性が、本来の所定の電気的特性から実質的に変化する。
【0017】
一般的には、多層プローブ304は、例えば、タンパリングを検知するために用いられる一種の接着テープであるセキュリティテープ(セキュリティラベルとしても知られる)に類似のセキュリティ装置を、電気的に実現したものである。一般的には、セキュリティテープは、特別なタンパリング防止又はタンパリング証明機能を有する圧力感知テープ又はラベルである。これらの特別なタンパリング防止又はタンパリング証明機能には、例えば、容易に断裂又は亀裂が生じるように意図的に脆弱化されたコンポーネント、いったん切断又は破断されると容易に揃え直すことができない印刷、侵入又はタンパリングを示すために剥離しやすくされた層、開封又はタンパリングを示すための隠された印刷層などがある。本実施例における多層プローブ304も、特別なタンパリング防止機能又はタンパリング証明機能を含むことにより、WTD300がタンパリングされたことをWTD300が示す構成であってもよい。多層プローブ304は、例えば複数の材料層を含み、これらが互いに挟み合わされて多層プローブ304を形成している。一例として、これらの層のうちのいくつかは導電性であり、いくつかは導電層間の誘電体として作用する絶縁性のものである。動作の一例として、電流が誘導されて、導電層間、及び導電層間の誘電層を通って流れる。タンパリング事象が無い場合、多層プローブ304は、所定の電気的特性を有しており、当該特性により、多層プローブ304では、所定量の電流が多層プローブ304を流れ、多層プローブ304の入力間で、対応する所定量の電圧降下が起こる。また、本例において、多層プローブ304は、多層プローブ304の抵抗特性、容量特性、誘導特性の組み合わせに対応する所定のインピーダンス値を有し得る。多層プローブ304が、当該多層プローブ304の1つ以上の層の移動、ずれ、又は損傷を生じさせるようなタンパリングを受けると(すなわち、タンパリング行為に関連する物理的トリガーとも称されるタンパリング事象を経験すると)、このタンパリングによって、多層プローブ304内の層に物理的変化又は変形が生じ、これにより、例えば、導電層の間の距離、配向又はその両方が変化し、誘電層の変形又は損傷が生じる。一例として、このタンパリングにより、多層プローブ304の積層構造内に亀裂、破壊、及び空隙が生じ得る。このような変化の結果、多層プローブ304内の材料層の抵抗、キャパシタンス、インダクタンス、及び、場合によっては実効誘電特性が変化し、これにより、多層プローブ304は、本来の所定の電気的特性とは異なる、新たな電気的特性を有することになる。従って、WTD300は、このように変化した電気的特性を利用して、多層プローブ304が経験した、タンパリング事象に対応するトリガー事象を特定する。
【0018】
別の例として、多層プローブ304は、当該多層プローブ304内に複数の層を含んでおり、これらの層の1つ以上が、導電性ストリップやワイヤなどの1つ以上の導電性プローブを含むものであってもよい。本例では、1つ以上の導電性プローブは、当該多層プローブ304内に導電性ワイヤ又はストリップを1つだけ含むものであってもよく、当該導電性ワイヤ又はストリップが、WTD300の他のデバイスに電気的に接続されて、所定量の電流を流すとともに所定の電気的特性を有する回路を完成する。あるいは、2つ以上の導電性ワイヤ又はストリップを用いてもよく、この場合、これら2つ以上の導電性ワイヤ又はストリップが相互作用し、例えば、1つの導電性ワイヤ又はストリップが多層プローブ304への入力として作用し、別の導電性ワイヤ又はストリップが多層プローブ304の出力として機能し得る。本例において、第1の導電性ワイヤ又はストリップは、多層プローブ304の他の誘電層を介して、第2の導電性ワイヤ又はストリップと信号通信しうる。
【0019】
本例において、多層プローブ304が、当該多層プローブ304の1つ以上の層の移動、ずれ、又は損傷を生じさせるようなタンパリングを受けると、このタンパリングによって、多層プローブ304内の層の物理的変化又は変形が生じ、これにより、例えば、導電性ワイヤ又はストリップの間の距離、配向又はその両方が変化し、誘電層の変形又は損傷が生じる。また、タンパリングによって、導電性ワイヤ又はストリップの1つ以上が破損又は破壊され得る。前述のように、このタンパリングにより、多層プローブ304の積層構造内に亀裂、破壊、及び空隙が生じ得る。このような変化の結果、多層プローブ304内の材料層の抵抗、キャパシタンス、インダクタンス、及び、場合によっては実効誘電特性が変化し、これにより、多層プローブ304は、本来の所定の電気的特性とは異なる、新たな電気的特性を有することになる。従って、WTD300は、このように変化した電気的特性を用いて、多層プローブ304が経験した、タンパリング事象に対応するトリガー事象を特定する。
【0020】
さらに別の例として、アンテナ310が、多層プローブ304であってもよい。換言すれば、アンテナ310と多層プローブ304が同一の要素(すなわち、デバイス、コンポーネント、モジュール又は回路)であってもよく、この場合、アンテナ310は、送信機302及び受信機312の動作の動作周波数の部分長(例えば半波長)に略等しいアンテナ長を有し得る。本例では、物理的トリガーは、例えば、アンテナ長の短縮を引き起こすアンテナ310の損傷又は破壊である。当業者であればわかるように、アンテナ310のアンテナ長が変化すると、アンテナ310の電気的特性が変化し、具体的には、例えば、シフトした新たな周波数でアンテナ310を動作させたり(すなわち、タンパリング行為によるアンテナ310の破壊又は損傷後の、アンテナ310の短くなった新たなアンテナ長に等しい新たな動作周波数になる)、送信機302及び受信機312の元の動作周波数の信号の送受信の効率が低下したり(すなわち、送受信の質が低下する)、アンテナ310の入力インピーダンスが変化したりする。
【0021】
また、実施形態によっては、WTD300は、オプションのセンサ314を有しておらず、多層プローブ304が、処理装置306と直接信号通信(すなわち直接接続)してもよい。この場合、処理装置306が、タンパリング行為に関連する物理的トリガーを感知可能なモジュール又はロジックを含むことになる。多層プローブ304は、処理装置306と直接信号通信することができるので、前述のように、WTD300にオプションのセンサ314を含ませるか、含ませないかは任意である。オプションのセンサ314が設けられる場合、当該センサは、多層プローブ304に対する物理的トリガーを感知するように構成された、例えばデバイス、コンポーネント、モジュール又は回路である。また、オプションのトリガースイッチ336がWTD300に含まれている場合、当該オプションのトリガースイッチ336は、例えば、ユーザ作動スイッチであり、WTD300のタンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定することによって、WTD300を、多層プローブ304に対する物理的トリガーを検知するための作動状態にするものである。
【0022】
オプションのセンサ314に加えて又はこれに代えて、WTD300は、任意で、オプションの加速度計315も含み得る。加速度計は、装置固有の加速度を測定する装置であり、加速度とは、装置自体の瞬間静止系(instantaneous rest frame)における装置の速度の変化率である。(すなわち、装置の運動又は振動を測定する。)オプションの加速度計315がWTD300内に含まれる場合、当該加速度計は、あらゆる運動又は振動(vibration)(振動(oscillating)、往復運動、又は他の周期的な動きである、非常に小さな運動)を物理的トリガーとして検知する。
【0023】
本実施例において、全体としてのWTD300は、封止材344によって部分的又は完全に封入され得る。封止材は、例えば、紙、布、エラストマー、ニトリル、フルオロシリコーン、フルオロエラストマー、ネオプレン、シリコーン、エチレンプロピレンジエンモノマー(「EPDM」)ゴム、ファブリック、ポリマー材料、セラミック、薄い金属、又は他の材料を含み得る。一般的には、封止材344は、センサ外側基材(sensor external substrate)と称され得る。
【0024】
当業者であればわかるように、WTD300に含まれる又はこれに関連付けられる回路、コンポーネント、モジュール、及び/又はデバイスは、互いに信号通信すると説明したが、ここで、信号通信とは、回路、コンポーネント、モジュール、及び/又はデバイスが、別の回路、コンポーネント、モジュール、及び/又はデバイスに対して信号及び/又は情報を送受信することを可能にする、回路、コンポーネント、モジュール、及び/又はデバイス間の任意の種類の通信及び/又は接続のことを指す。通信及び/又は接続は、信号及び/又は情報を、1つの回路、コンポーネント、モジュール、及び/又はデバイスから別の回路、コンポーネント、モジュール、及び/又はデバイスに送ることを可能にする、回路、コンポーネント、モジュール、及び/又はデバイス間の任意の信号経路に沿って行うことができ、信号経路は、無線又は有線の信号経路を含む。信号経路は、例えば、導電性ワイヤ、電磁波導波ガイド、ケーブル、取り付け及び/又は電磁的もしくは機械的連結がなされた端子、半導電性又は誘電性の材料又はデバイス、あるいは他の同様の物理的な接続もしくは連結などの、物理的なものであってもよい。また、信号経路は、自由空間(電磁波伝播の場合)あるいはデジタル部品間の情報経路などの非物理的なものであってもよく、この場合、通信情報は、1つの回路、コンポーネント、モジュール、及び/又はデバイスから、別の回路、コンポーネント、モジュール、及び/又はデバイスに、直接的な電磁接続を介することなく、様々なデジタルフォーマットで送られる。
【0025】
一般的には、動作の一例として、CRM342のコンピュータ実行可能命令は、タンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定すること、多層プローブ304に対する物理的トリガーを検知すること、及び、物理的トリガーを検知した場合に、タンパー状態を「タンパリング有り」に設定することを、プロセッサ340に行わせる。本実施例では、CRM342のコンピュータ実行可能命令は、ユーザがオプションのトリガースイッチ336を介してWTD300を作動状態にすること、あるいは、WTD300と信号通信する外部装置からの「始動(wake)」コマンドを受信することのいずれかによって、タンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定し得る。外部装置は、例えば、サーバ、ユーザ携帯装置、又はWTD300と連携動作可能な他の無線装置である。本実施例において、「作動状態にする(arming)」又は「作動状態とされる(armed)」という用語は、WTD300を動かすか、損傷させるかによるWTD300に対するあらゆるタンパリングを検知する状態に、WTD300がおかれることを意味している。
【0026】
WTD300が外部装置によって作動状態とされる場合では、CRM342のコンピュータ実行可能命令は、プロセッサ340に、外部装置からの始動コマンドを受信させ、次に始動コマンドを認証させる。当業者であればわかるように、始動コマンドの認証にあたっては、一連の所定のセキュリティプロトコルを用いて、当該外部装置が「認証された呼掛け器(interrogator)」であると判定することを含むプロセスが行われる。始動コマンドが認証されると、CRM342のコンピュータ実行可能命令は、プロセッサ340に、タンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定させる。本例では、WTD300のタンパー状態が「タンパリング無し」とはいえなくても、「タンパリング有り」の状態ではないものと仮定しているが、WTD300の状態は、WTD300の設計によって変化しうる。
【0027】
別の例において、当業者であればわかるように、状態を「タンパリング無し」に設定するためには、単に始動コマンドを受信する以上の動作を必要とし得る。始動コマンドは、タンパー状態を「タンパリング無し」に設定するための命令やその他の命令を含み得る。具体的には、始動コマンドの受信によって、最初のセットアップのみが行われ得る。この場合、例えば、WTD300は、初期状態では低電力方式で作動しており、WTD300は数秒間休止状態にあるが、始動コマンドを受信すると、受信機312からの認証済コマンド信号を受信するために、短時間(例えば数ミリ秒間)だけ処理装置306を起動させる。(認証済コマンド信号は、当初の始動コマンドから独立した信号であり得る。)本例では、始動コマンドが、処理装置306に行わせるのは、どのような動作が要求されているかを把握するために受信機312に始動情報パッケージを問い合わせることのみである。要求される動作には、例えば、状態を「タンパリング無し」に設定すること、WTD300の状態を問い合わせた後にレポートを送信すること、あるいは場合によっては、処理装置306で行われるその他のコード化された機能が含まれる。一方、認証済コマンド信号の場合は、いったん認証されると、処理装置306は、例えば、WTD300の初期状態を「タンパリング無し」に設定する、センサの現在の状態を読み取る、残りの電力レベルを読み取る、レポートを作成する、送信を命令する、又はその他の命令を、実際に実行する。別の例として、始動コマンドは、WTD300を「タンパリング無し」状態にする「リセット」機能としても作用し得る。
【0028】
例えば、WTD300には、設置される前の「オフ」状態を含み得る。この場合、タンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定することは、オプションのトリガースイッチ336又は外部装置からの始動コマンドのいずれかを用いてWTD300を作動状態にすることにより、このオフ状態を「タンパリング無し」状態に変更することを含み得る。これに代えて、WTD300は、2つの状態(すなわち「タンパリング無し」と「タンパリング有り」)のみを含むものであってもよく、始動コマンドが受信及び認証されると、あるいは、ユーザがオプションのトリガースイッチ336によってWTD300を作動状態とすると、タンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定することに伴って、WTD300のコンポーネントが起動され得る。いずれの例においても、WTD300は、ユーザにより(オプションのトリガースイッチ336を用いて)直接、あるいはユーザにより(外部装置との無線接続によって)無線で、作動状態とされる。
【0029】
さらに別の例において、WTD300は、最初の使用後の再使用が可能なリセット可能な装置であり得る。本例では、WTD300は、最初に使用された際に、WTD300がタンパリングされたことを物理的トリガーによって検知している。例えば、WTD300は、オプションの加速度計315を含んでおり、WTD300を用いて扉のタンパリングを監視するために、WTD300が扉に配置されて、作動状態とされる。次に、扉が動かされると、コンピュータ実行可能命令は、プロセッサ340に、まず、多層プローブ304(これは、オプションの加速度計315と信号通信し得る)に対する物理的トリガー(すなわち扉の動き)を検知させ、次に、物理的トリガーを検知したことを受けて、タンパー状態を「タンパリング有り」に設定させる。しかしながら、この例では、物理的トリガーは扉の動きであり、この動きはWTD300に何ら損傷を与えていないため、WTD300をリセットして、同じ扉か、あるいは動きの検知が必要な別の用途に、再使用することができる。この例では、(動きのセンサはオプションの加速度計315であるため)WTD300は、オプションのセンサ314を含んでいなくともよい。また、オプションの加速度計315から独立した別体の多層プローブ304も、含んでいなくともよい。多層プローブ304は、オプションの加速度計315の一部であるか、その延長部分、例えば、機械式フィルタ(すなわち振動フィルタ)など、であってよい。本例では、WTD300が再使用の準備が整った状態となると、WTD300が外部装置からリセット信号を受信するか、あるいは、ユーザがオプションのトリガースイッチ336を再び起動し、これにより、コンピュータ実行可能命令が、プロセッサ340に、WTD300の状態をリセットして「タンパリング無し」状態に戻させ、WTD300は、別の物理的トリガーを検知すべく、再び扉を監視することができる。
【0030】
動作において、WTD300がトリガーされると、WTD300は、例えば、物理的トリガーを検知したことを受けてタンパー状態信号を送信するか、外部装置からのステータスコマンドの受信を待つか、何も行わないかのいずれかである。第1の例の場合、タンパリングされると(すなわち多層プローブ304又はオプションの加速度計315において物理的トリガーが検知されると)、コンピュータ実行可能命令は、当該物理的トリガーを検知したことを受けて、プロセッサ340に、タンパー状態を「タンパリング有り」に設定させる。次に、コンピュータ実行可能命令は、プロセッサ340に、物理的トリガーを検知したことを受けて、タンパー状態信号を送信させる。ここで、タンパー状態信号は、タンパー状態が「タンパリング有り」であることを示すものである。この例において、送信機302は、ビーコン又はその他の反復伝送として、タンパー状態信号を外部装置に送信し得る。この例において、例えば、アンテナ310は、多層プローブ304とは別の要素であり、多層プローブ304が破壊又は損傷されている。あるいは、例えば、オプションの加速度計315が、オプションのセンサ314と多層プローブ304とを組み合わせたものであり、送信機302は、アンテナ310を介して、タンパー状態信号を送信する。別の代替例では、多層プローブ304がアンテナ310であり、送信機302は、アンテナ310が損傷又は破壊されることによりアンテナ長が短くなったアンテナ310を介して、タンパー状態信号を送信する。これにより、アンテナ310は、送信機302からタンパー状態信号を受信し、物理的トリガーによって引き起こされたアンテナ長の短縮により(送信機302の元の動作周波数と比べて)変化した周波数で、当該信号を送信する。これらの状況のすべてにおいて、WTD300は、物理的トリガーを検知した後、タンパー状態信号を自動的に送信する。
【0031】
第2の例の場合、WTD300は、物理的トリガーが検知された際に、タンパー状態信号を自動的には送信しない。代わりに、WTD300は、タンパー状態についての外部装置からの問い合わせを待つ。WTD300が外部装置からステータスコマンドを受信すると、コンピュータ実行可能命令は、プロセッサ340に、外部装置からの当該ステータスコマンドを受信させるとともに、当該ステータスコマンドを受信したことを受けてタンパー状態信号を送信させる。第1の例の場合と同様に、本例において、例えば、アンテナ310は、多層プローブ304とは別の要素であり、多層プローブ304が破壊又は損傷されている。あるいは、例えば、オプションの加速度計315が、オプションのセンサ314と多層プローブ304とを組み合わせたものであり、送信機302は、アンテナ310を介して、タンパー状態信号を送信する。別の代替例では、多層プローブ304がアンテナ310であり、送信機302は、アンテナ310が損傷又は破壊されることによりアンテナ長が短くなったアンテナ310を介して、タンパー状態信号を送信する。これにより、アンテナ310は、送信機302からタンパー状態信号を受信し、物理的トリガーによって引き起こされたアンテナ長の短縮によりシフトした周波数で、当該信号を送信する。これらの状況のすべてにおいて、WTD300は、物理的トリガーを検知するとともに外部装置からステータスコマンドを受信した後にのみ、タンパー状態信号を送信する。
【0032】
第3の例の場合、WTD300は、物理的トリガーが検知された際に、何も行わない。本例では、タンパリングが行われると、コンピュータ実行可能命令は、プロセッサ340に、物理的トリガーが検知されたことを受けてタンパー状態を「タンパリング有り」に設定させるか、何も行わないかである。すなわち、(オプションのトリガースイッチ336又は外部装置からの始動コマンドによって)WTD300がいったん作動状態とされると、WTD300は、自動的に「タンパリング無し」のタンパー状態とされる。(すなわち、WTD300は、作動状態とされるとともに、物理的トリガーを検知する準備が整う。)この「タンパリング無し」のタンパー状態にある間、WTD300は、ビーコン又はその他の反復伝送として、タンパー状態信号を外部装置に自動的に送信するか、外部装置からの問い合わせを待ってから、当該問い合わせ(すなわちステータスコマンド)に対してタンパー状態信号で応答するか、のいずれかである。本例では、WTD300は、例えばスリープ状態にあり、この状態では、ステータスについての認証済の要求を受信するまでは、タンパー状態のチェックを行わず、認証済の要求を受信した際に、処理装置306がオプションのセンサ314に直接問い合わせを行って、状態を「タンパリング有り」又は「タンパリング無し」と判定し、その後WTD300が、この状態ステータスを外部装置に即座に報告する。
【0033】
いずれの場合も、物理的トリガーが発生した際に、WTD300は、タンパー状態信号を自動的に送信し続けるか、問い合わせを受けた際に送信するか、「休止」状態でタンパー状態信号を送信しないか、である。これらの例において、WTD300がタンパー状態信号を送信できる能力に影響しうる3つの状況がある。第1及び第2の状況は、アンテナ310が多層プローブ304であり、アンテナ310を破壊又は損傷する物理的トリガーによってダメージを受けているものの、アンテナ310が機能し続けており、信号を送信可能な状況である。このような状況では(前述のように)、WTD300は、プロセッサ340内で信号のタンパー状態を変更することなく、同じタンパー状態信号を送信し続ける。前述のように、このような場合、アンテナ310は、アンテナ長の短縮により、タンパー状態信号の送信周波数を変更することになる。外部装置が、アンテナ310による送信周波数の変化を検知するように構成されている場合、プロセッサ340にWTD300のタンパー状態を変更させる必要はない。これは、タンパリング行為の結果であるタンパー状態信号の送信において、アンテナ310の損傷に起因して周波数が自動的に変化するため、タンパリング行為そのものが効果的な「状態の変化」を引き起こしているからである。外部装置は、このような周波数の変化を検知して、WTD300がタンパリングされたことを示すものとしてこれにフラグを立てるように構成することができる。従って、これらの状況では、WTD300は、いったん作動状態とされると、なんら異なる動作を行う必要はない。物理的トリガーによってアンテナ310が損傷され、この損傷によって周波数が変化し、この周波数の変化を、WTD300がタンパリングされたことを示すフラグとして、外部装置が検知可能であるためである。
【0034】
第3の状況は、多層プローブ304に対する損傷が大きすぎて、WTD300がタンパー状態信号を送信してWTD300がタンパリングされたことを示すことができないような状況である。例えば、多層プローブ304がアンテナ310である場合、アンテナ310に対する損傷が大きすぎるために、アンテナ310が機能せず、従ってタンパー状態信号を送信できない状況が起こり得る。外部装置は、(ステータスコマンドに対する応答としての)WTD300からの応答を期待しているため、外部装置は、このように信号を全く受信しないことにより、WTD300がタンパリングされたものとしてフラグを立てる。あるいは、タンパー状態が「タンパリング無し」である間は、外部装置によるステータスコマンドに対して常に応答するが、いったんタンパリングされると(すなわち、いったん物理的トリガーが検知されると)、ステータスコマンドへのあらゆる応答の送信をWTD300が停止するように、WTD300を構成することもできる。このような状況においても、外部装置は、(ステータスコマンドに対する応答としての)WTD300からの応答を予期しているため、外部装置は、WTD300がタンパリングされたものとしてフラグを立てる。
【0035】
なお、これらの例において、プロセッサ340にタンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定させる際のコンピュータ実行可能命令が、単に、オプションの加速度計315の移動又は多層プローブ304(アンテナ310の場合もある)の損傷を引き起こす物理的トリガーの検知動作が行えるよう、WTD300を作動状態とする命令となるように、WTD300が設計され得る。これは、物理的トリガーを検知可能となるように、単に、WTD300のコンポーネント(すなわち、送信機302、受信機312、加速度計315、処理装置306、オプションのセンサ314、及び多層プローブ304)の電源を入れることを含み得る。この例において、物理的トリガーが起こると、WTD300は自動的に「タンパリング有り」の検知状態となる。これは、物理的トリガーが実際に物理的にWTD300に影響を与え(すなわちWTD300を動かすか、損傷させ)、物理的トリガーの検知に応答してプロセッサ340にタンパー状態を「タンパリング有り」に設定させる際のコンピュータ実行可能命令が、単に、WTD300を、自動的あるいはステータスコマンドの受信に応答してタンパー状態信号を送信できる状態にするものとなるからである。
【0036】
次に
図4を参照すると、同図には、本開示による、WTD300によって行われる方法400の一実施例のフローチャートが示されている。方法400は、404において作動コマンド(arming command)を受信することによって、開始402する。前述のように、作動コマンドは、例えば、ユーザがオプションのトリガースイッチ336を起動すること、あるいは、外部装置から始動コマンドを受信することによって、生成されるコマンドである。作動コマンドが外部装置からの始動コマンドである場合、406において、作動コマンドが認証される。次に、408において、作動コマンドは、前述のように、WTD300に、タンパー状態を「タンパリング無し」に初期設定させる。これにより、WTD300は、作動状態とされ、物理的トリガーを検知するための準備が整う。物理的トリガーが検知されない場合、WTD300は、作動状態にあるとともに物理的トリガーを検知する準備が整った状態を維持する。WTD300は、この場合、受動状態になり、状態ステータスの認証済の要求をWTD300が受信するまでは、何も送信しない。410において物理的トリガーが検知された場合、WTD300は、412において、(前述のように)タンパー状態を「タンパリング有り」に設定し、これは、(前述のように)WTDの物理的な状態変化の結果、自動的に行われ得る。WTD300は、次に、414においてタンパー状態信号を送信するか、あるいは、(前述のように)414において、ステータスコマンドを待った後に当該コマンドに応答してタンパー状態信号を送信する。WTD300が「タンパリング無し」状態であり、410において物理的トリガーが検知されない場合、WTD300は、ステップ412をスキップし、任意で、414において「タンパリング無し」というタンパー状態を送信する。あるいは、前述のように、WTD300は、なんら信号を送信しない場合もあり得る。方法400は、次に416において終了する。WTD300がリセット可能な場合(すなわち、前述のようにWTD300が損傷されておらず再使用可能な場合)、418においてWTD300がリセットされると、方法400はステップ404戻り、次の作動コマンドを待つ。ここで、当該コマンドは、外部装置からのリセット信号を含み得る。418においてWTD300がリセットされない場合、方法400は、416において終了する。
【0037】
本例では、WTD300は、外部からの問い合わせとは無関係に、WTD300の状態を調べるとともにWTD300の状態を更新するために動作しているが、代替の例において、WTD300は、認証されたステータス報告コマンドを受信した際にだけ、状態を調べてもよい。また、WTD300は、タンパー状態の報告のための認証済みの要求を受信しない限り、送信(すなわち状態レポートの送信)を行わなくてもよい。このような要求を受信しない間は、WTD300は、休止状態と受信待ち状態(すなわち受信機312を監視する)状態とを交互に繰り返す。
【0038】
図5Aには、本開示による、セキュリティテープ又はセキュリティラベルタイプの装置(すなわち「バンドエイド」型の装置)としての一実施例であるWTD500の上面図が示されている。本実施例では、封止材502は、テープ又はラベルの形状であり、多層プローブ504の一部又は全体を当該封止材502内に含むものである。本実施例では、前述のように、多層プローブ504は、多層プローブ504内に複数の材料層(すなわち、材料の複数の層)を含む多層デバイスであり、材料層は、例えばワイヤ、電気基板、又はその他の導電材料を含み得る。多層プローブ504は、例えば積層された2つ以上の材料層を含み、これにより、多層プローブ304は、例えば所定のインピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス、誘電特性、降伏電圧などを含む所定の電気的特性を有する。WTD500は、これらの電気的特性の変化を利用して、多層プローブ504が経験した、タンパリング事象に対応するトリガー事象を特定することができる。また、多層プローブ504は、当該多層プローブ504内に複数の層を含んでおり、これらの層の1つ以上が、導電性ストリップやワイヤなどの1つ以上の導電性プローブを含むものであってもよい。
【0039】
本実施例において、封止材502は、例えば、紙、布、エラストマー、ニトリル、フルオロシリコーン、フルオロエラストマー、ネオプレン、シリコーン、EPDMゴム、ファブリック、ポリマー材料、セラミック、薄い金属、又は他の材料を含み得る。一般的には、封止材502は、センサ外側基材と称され得る。
【0040】
本実施例において、封止材502は、WTD500の電子部分506を内部に含んでおり、当該電子部分は、送信機302、受信機312、アンテナ310、処理装置306、電源、及び多層プローブ504の一部を含むものである。封止材502は、オプションのセンサ314及びオプションのトリガースイッチ336も内部に含み得る。本実施例において、電子部分506は、電源308、ならびに、送信機302、受信機312、アンテナ310及び処理装置306を有するシステム・オン・チップ(「SOC」)、ASIC、FPGA、又は、基板もしくは印刷回路基板(「PCB」)を含む。また、本実施例において、WTD500は、多層プローブ504の変形、損傷又は破壊により、タンパリング(すなわち物理的トリガー)を検知する。
【0041】
本実施例では、多層プローブ504は、5つの材料層504a、504b、504c、504d、及び504eを有するものとして示されている。この材料層の数は、例示のみを目的としたものであり、当業者であればわかるように、層の数は、最小で2層から、設計で決められた任意の数まで、設計に応じて変更可能である。この特定の例においては、下層504eは、例えば、電子部分506及び多層プローブ504の他の層を支持する支持層である。WTD500を面に取り付けるため、下層504eは、WTD500の底部に接着面508を含み、当該接着面が、監視対象面に接着される。接着面508は、接着面508を監視対象面に適切に接着する任意の接着手段を含み、例えば接着剤を含む。
【0042】
図5Bには、本開示の実施例によるWTD500の側面図が示されている。当業者であればわかるように、
図5A及び5Bに示したWTD500は、正確な縮尺率では示されておらず、例示のみを目的としたものである。従って、多層プローブ504、電子部分506、及び封止材502の相対的なサイズ及び寸法は、WTD500の設計に応じて変化し得る。
【0043】
次に
図5Cを参照すると、同図には、本開示による、トリガー事象(すなわちタンパリング)が起こった状態のWTD500の斜視図が示されている。本例では、多層プローブ504の第1材料層504aが、第2材料層504bから剥離方向510に剥がれるまで、実質的に変化(すなわち損傷)している。従って、本例において、物理的トリガーは、多層プローブ504内の材料層の分離である。
【0044】
当業者であればわかるように、本例において、多層プローブ504の変形又は損傷は、いかなるものであってもよく、(多層プローブ504の破壊又は広範囲の損傷の一例としての)第1材料層504aの第2材料層504bからの大幅な分離は、単に説明を容易にするために示したものである。また、分離、変形、又は損傷は、材料層504a、504b、504c、504d又は504eのいずれの層間であってもよい。
図5Dには、本開示による、トリガー事象が起こった状態のWTD500の側面図が示されている。
【0045】
図6Aには、本開示による、平らな矩形のバンドエイド型の装置(すなわちセキュリティテープ又はセキュリティラベルタイプの装置)としての一実施例であるWTD600のブロックシステム図が示されている。本実施例は、
図5A~
図5Dに示したものと類似しているが、さらに、多層プローブ602内に導電性のワイヤ又はストリップを有しており、当該ワイヤ又はストリップは、
図5A~5Dに示した複数の材料層504a、504b、504c、504d、504eのいずれかの一部であり得る。
【0046】
本実施例において、封止材604は、大型の矩形で平らなバンドエイド形状である。多層プローブ602は、曲がりながら封止材604内に延びており、封止材604の第1の部分に沿って延びる多層プローブエリア606全体にわたっている。一例として、多層プローブ602は(前述のように)複数の材料層と、多層プローブエリア606におけるタンパリングを検知可能な厚みを有する導電性ワイヤ又はストリップ603(あるいは電流、抵抗、キャパシタンス、電圧などの適切な性能特性を有する他の導電性材料)とを含み得る。本実施例において、多層プローブ602は、電子部分610の第1端608から延出し、導電性ワイヤもしくはストリップ603又は多層プローブ602内の他の導電性材料層を介して、電子部分610の第2端612まで延びている。本実施例では、多層プローブ602は、例えばWTD600内に閉回路を形成する連続した導電性ワイヤ又はストリップ603を含み、これにより、多層プローブ602がタンパリングされていない場合は、電流614が、電子部分610から当該電子部分へと流れる。本実施例において、電子部分610は、封止材604の一部を占有し、送信機302、受信機312、アンテナ310、処理装置306、電源、及び多層プローブ602の一部又はすべてを含む。電子部分610は、オプションのセンサ314及びオプションのトリガースイッチ336も含み得る。本実施例において、電子部分610は、電源308、ならびに、送信機302、受信機312、アンテナ310及び処理装置306を有するSOC、ASIC、FPGA、又は、基板もしくはPCBを含む。本実施例において、WTD600は、多層プローブ602内の多層プローブエリア606における多層プローブ602の変形、損傷又は破壊を通じて、タンパリング(すなわち物理的トリガー)を検知する。一例として、多層プローブ602における変形、損傷、又は破壊は、導電性ワイヤ又はストリップ603の破断を含み得る。
【0047】
タンパリング行為が起こる前は、多層プローブ602は、連続しており損傷が無い。WTD600は、所与の面に(あるいは複数面にわたすように)接着され、当該接着面からの物理的な分離が発生することにより多層プローブ602の変形、損傷又は破壊が生じた際に、これを検知する。本実施例において、WTD600は(例えば接着面508を用いて)平らな面に接合することができる。なお、本実施例では、WTD600を角部に用いることができるように、電子部分610は、WTD600の一端に設けられている。
【0048】
先の実施例と同様に、動作の一例において、WTD600は、外部装置から始動コマンドを受信すると、WTD600が一連の所定のセキュリティプロトコルを行うことによって、呼掛け器の認証を行う。前述のように、別の例において、始動コマンドだけでは、WTD600が、タンパー状態を「タンパリング無し」に設定しない場合もある。WTD600は、タンパー状態を、認証された呼掛け器(すなわち外部装置)に送り返す。より具体的には、WTD600は、まず認証を行い、次に現在のタンパー状態を調べ、レポートを作成・編集したりし、タンパー状態を呼掛け器に送信する。前述のように、タンパリングが発生すると(すなわちWTD600が物理的トリガーを経験すると)、例えば、WTD600のタンパー状態が「タンパリング有り」であることを示すタンパー状態信号をWTD600が送り返すか、WTD600がタンパー状態信号を一切送り返さないかのいずれかである。先の記載からわかるように、本実施例において、多層プローブ602とアンテナ310とは、同一の要素であってもよく、従って、この場合は、多層プローブ602が破壊されると、アンテナ310も破壊されてアンテナ長が短くなり、これにより、WTD600は、変更された(すなわち周波数がシフトした)タンパー状態信号を送り返す。タンパー状態信号が送り返されない場合とは、前述のように、例えば、WTD600がタンパー状態信号を送信することができない程度まで、多層プローブ602が損傷された場合である。例えば、多層プローブ602とアンテナ310とが同じであり、損傷が大きすぎてタンパー状態信号を送信できない場合や、多層プローブ602がアンテナ310とは別体であるものの、多層プローブ602が破壊されるとWTD600内の電流614が遮断されて、WTD600が動作できなくなる場合がある。別の例として、単に、WTD600は、WTD600がタンパリングされていない時のみ、タンパー状態信号を外部装置に送信し、いったんWTD600がタンパリングされると、タンパー状態信号の送信を停止するように、設計されている場合がある。これらの例のすべてにおいて、WTD600は、タンパリングの証拠を、無線と視覚の両方で示唆することができる。
図6Bには、本開示による、タンパリングされた後のWTD600のブロックシステム図が示されている。物理的トリガー616は、多層プローブ602における導電性ワイヤ又はストリップ603の亀裂として示されている。
【0049】
前述のように、本実施例では、導電性ワイヤ又はストリップ603を用いてタンパリングを検知する。ただし、これに代えて、多層プローブ602が、導電性ワイヤ又はストリップ603を含んでおらず、電子部分610の第1端608から電子部分610の第2端612まで電流614を伝導する、多層プローブ602内の少なくとも1つの導電層を用いてもよい。この場合は、物理的トリガー616は、例えば、導電性ワイヤ又はストリップ603を含まない複数の層を有する多層プローブ602における、変形、損傷、又は破壊(すなわち亀裂)である。従って、タンパリングが発生すると、当該少なくとも1つの導電層、その他の非導電性誘電層、又はこれらの両方が変形、損傷又は破壊され、これにより、多層プローブ602の電気的特性が本来の所定の電気的特性から変化する。この電気的特性の変化が、WTD600の電子部分610によって検知され、物理的トリガー616を示すタンパリング事象としてフラグされる。この代替例において、物理的トリガー616は、例えば、
図5C及び5Dについて説明したものと同様の、剥離タイプの損傷である。
【0050】
図7Aには、本開示による、ハイブリッドタイプの装置としての一実施例であるWTD700のブロックシステム図が示されている。本実施例において、封止材702は、平らなシート形状であり、当該シート形状は、第1軸704及び第2軸706によって、第1象限708、第2象限710、第3象限712、及び第4象限714に分割されている。電源308及びその他の電子部品は、WTD700を角部又は交差面に使用できるように、WTD700の1つの象限(すなわち第1象限708)内に設けられている。本実施例において、封止材702は、4つの象限708、710、712、714のすべての一部に設けられた多層プローブ716と、送信機302、受信機312、アンテナ310、処理装置306、電源308、及び多層プローブ716の一部を含む、WTD700の電子部分718とを、内部に含んでいる。4つの事象708、710、712、714のすべてにおける多層プローブ716を含む部分は、電子部分718から延出する多層プローブエリア719として示されている。電子部分718は、オプションのセンサ314及びオプションのトリガースイッチ336も含み得る。本実施例において、電子部分718は、電源308、ならびに、送信機302、受信機312、アンテナ310及び処理装置306を有するSOC、ASIC、FPGA、又は、基板もしくはPCBを含む。前述のように、一例として、多層プローブ716は、多層プローブエリア719におけるタンパリングを検知可能な厚みを有するとともに4つの象限708、710、712、714のすべての一部を構成する導電性ワイヤ又はストリップ717(あるいは電流、抵抗、キャパシタンス、電圧などの適切な性能特性を有する他の導電性材料)を含み得る。前述と同様に、本実施例において、多層プローブ716は、電子部分718の第1端720から延出し、電子部分718の第2端722まで延びるものとして示されている。本実施例では、多層プローブ716は、例えばWTD700内に閉回路を形成する連続した導電性ワイヤ又はストリップ717を含み、これにより、多層プローブ602がタンパリングされていない場合は、電流724がWTD700内を流れる。前述のように、一例において、多層プローブ716とアンテナ310とが、同一の要素であってもよい。
【0051】
また、本実施例では、
図7Bにおいて、WTD700は、多層プローブエリア719における多層プローブ716の変形、損傷又は破壊726(すなわち亀裂)を通じて、タンパリング(すなわち物理的トリガー)を検知し、当該変形、損傷又は破壊は、軸704及び706の一方に沿った、封止材702の破断又は裂け目728であるとともに、多層プローブ716の破断726(導電性ワイヤ又はストリップ717の破断も含み得る)である。あるいは、破断726は、
図5C及び5Dについて説明したものと同様の剥離タイプの損傷であり得る。これらの例のすべてにおいて、WTD700は、図示の導電性ワイヤ又はストリップ717を含んでいても含んでいなくともよい。前述のように、導電性ワイヤ又はストリップ717が設けられていない場合、多層プローブ716は、電子部分718の第1端720と電子部分718の第2端722とに繋がる少なくとも1つの導電層を含む複数の材料層を含み、電子部分718は、多層プローブ716におけるタンパリング事象を検知するように構成されている。
【0052】
先の実施例と同様に、動作の一例において、WTD700は、外部装置から始動コマンドを受信すると、WTD700が一連の所定のセキュリティプロトコルを行うことによって、呼掛け器の認証を行う。前述のように、別の例において、始動コマンドだけでは、WTD700が、タンパー状態を「タンパリング無し」に設定しない場合もある。WTD700は、タンパー状態を、認証された呼掛け器(すなわち外部装置)に送信する。より具体的には、WTD700は、まず認証を行い、次にタンパリングの現在の状態を調べ、レポート作成・編集したりし、タンパー状態を呼掛け器に送信する。前述のように、タンパリングが発生すると(すなわちWTD700が物理的トリガーを経験すると)、例えば、WTD700のタンパー状態が「タンパリング有り」であることを示すタンパー状態信号をWTD700が送り返すか、WTD700がタンパー状態信号を一切送り返さないかのいずれかである。先の記載からわかるように、本実施例において、多層プローブ716とアンテナ310とは、同一の要素であってもよく、従って、この場合は、多層プローブ716が破壊されると、アンテナ310も破壊されてアンテナ長が短くなり、これにより、WTD700は、変更された(すなわち周波数がシフトした)タンパー状態信号を送り返す。タンパー状態信号が送り返されない場合とは、前述のように、例えば、WTD700がタンパー状態信号を送信することができない程度まで、多層プローブ716が損傷された場合である。例えば、多層プローブ716とアンテナ310とが同じであり、損傷が大きすぎてタンパー状態信号を送信できない場合や、多層プローブ716がアンテナ310とは別体であるものの、多層プローブ716が破壊されるとWTD700内の電流724が遮断されて、WTD700が動作できなくなる場合がある。別の例として、単に、WTD700は、WTD700がタンパリングされていない時のみ、タンパー状態信号を外部装置に送信し、いったんWTD700がタンパリングされると、タンパー状態信号の送信を停止するように、設計されている場合がある。これらの例のすべてにおいて、WTD700は、タンパリングの証拠を、無線と視覚の両方で示唆することができる。
図7Bには、本開示による、タンパリングされた後のWTD700のブロックシステム図が示されている。物理的トリガー726は、封止材702の裂け目728に沿った多層プローブ716の亀裂として示されている。
【0053】
図8には、本開示による、リセット可能な一実施例であるWTD800のブロックシステム図が示されている。本実施例において、封止材802は、平らな矩形のシート状であり、アンテナ804の一部を、封止材802のアンテナエリア806内に含んでいる。アンテナ804は、アンテナエリア806全体にわたるように、アンテナエリア806内に延びている。封止材802内には電子部分808も設けられており、電子部分は、電源308、ならびに、送信機302、受信機312、加速度計315及び処理装置306を有するSOC、ASIC、FPGA、又は、基板もしくはPCBを含む。電子部分808は、オプションのトリガースイッチ336も含み得る。本実施例において、アンテナ804は、電子部分808の第1端810から延出し、電子部分808の任意の第2端812まで延びるものとして示されている。一例として、アンテナ804は、ワイヤ、箔、又は電着金属である。本実施例において、アンテナ804は、多層プローブ814内の導電性ワイヤ、ストリップ、又は導電性材料層であり得る。
【0054】
本実施例において、WTD800は、加速度計315によって、タンパリング(すなわち物理的トリガー)を検知する。具体的には、加速度計315は、WTD800における運動又は振動に基づいて物理的トリガーを検知するように設計されている。WTD800の内部及び外部コンポーネントは、物理的トリガー後も変更していないため(すなわちWTD800は破損又は損傷されていないため)、WTD800は、リセット可能であり、その設計寿命にわたって、複数回の物理的トリガー(すなわちタンパリング事象)を検知することができる。
【0055】
先の実施例と同様に、動作の一例において、WTD800は、外部装置から始動コマンドを受信すると、WTD800が一連の所定のセキュリティプロトコルを行うことによって、呼掛け器の認証を行う。前述のように、別の例において、始動コマンドだけでは、WTD800が、タンパー状態を「タンパリング無し」に設定しない場合もある。WTD800は、タンパー状態を、認証された呼掛け器(すなわち外部装置)に送信する。より具体的には、WTD800は、まず認証を行い、次にタンパリングの現在の状態を調べ、レポートを作成・編集したりし、タンパー状態を呼掛け器に送信する。前述のように、タンパリングが発生すると(すなわちWTD800が物理的トリガーを経験すると)、例えば、WTD800のタンパー状態が「タンパリング有り」であることを示すタンパー状態信号をWTD800が送り返すか、WTD800がタンパー状態信号を一切送り返さないかのいずれかである。タンパー状態信号を送り返さない場合として、単に、WTD800は、WTD800がタンパリングされていない時のみ、タンパー状態信号を外部装置に送信し、いったんWTD800がタンパリングされると、タンパー状態信号の送信を停止するように、設計されている場合がある。WTD800は、物理的トリガーを検知することによって損傷されないため、物理的トリガーが検知された後、WTD800は、「タンパリング無し」状態にリセットされて、別の物理的トリガーの検知に再使用することができる。WTD800は、WTD800が「タンパリング有り」状態とされた後に、外部装置からリセット信号を受信することによって、リセットされ得る。そして、WTD800が再使用され得る。あるいは、WTD800は、ユーザがオプションのトリガースイッチ336を再び起動することによって、リセットすることもできる。
【0056】
なお、本発明の様々な局面又は詳細は、本発明の範囲を逸脱することなく変更可能である。これは、すべてを網羅しているものではなく、特許を受けようとする発明を、開示された形態に正確に一致するものに限定するものでもない。また、上記の説明は、例示のみを目的としており、限定のためのものではない。上記説明を踏まえた改変及び変形が可能であり、あるいは、本発明を実施することで、変更及び変形が可能となるかもしれない。特許請求の範囲及びその均等範囲が、本発明の範囲を規定する。
【0057】
上述の様々な実施例におけるフローチャート及びブロック図は、例示的な実施形態による装置や方法について、可能ないくつかの実施例の構造、機能及び処理を示している。この点に関し、フローチャート又はブロック図の各ブロックは、モジュール、セグメント、機能、動作もしくはステップの一部、又は、これらの組み合わせを表し得る。
【0058】
いくつかの代替の実施例において、ブロックに示されている1つ又は複数の機能を、図に示された順序とは異なる順序で実行してもよい。例えば、場合によっては、連続して示されている2つのブロックを、関連する機能に応じて、実質的に同時に実行してもよいし、逆の順序で実行してもよい。また、フローチャート又はブロック図に示されたブロックに対して、さらに他のブロックを追加してもよい。
【0059】
様々な実施例の説明は、例示及び説明のために提示したものであり、すべてを網羅することや、開示した形態での例に限定することを意図するものではない。多くの改変又は変形が当業者には明らかであろう。また、異なる実施例は、他の望ましい例とは異なる特徴をもたらしうる。選択した実施例は、実施例の原理及び実際の用途を最も的確に説明するために、且つ、想定した特定の用途に合わせて種々の改変を加えた様々な実施例のための開示を当業者が理解できるようにするために、選択且つ記載したものである。