(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】ポリフェノール類を含有する沈殿が抑制された液状組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 2/62 20060101AFI20230324BHJP
A23L 29/25 20160101ALI20230324BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230324BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230324BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230324BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230324BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230324BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230324BHJP
A61K 36/82 20060101ALI20230324BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20230324BHJP
A23F 3/16 20060101ALN20230324BHJP
【FI】
A23L2/00 L
A23L29/25
A61K47/36
A61K9/08
A61K9/10
A61K47/44
A61K8/73
A61K8/9789
A61K36/82
A61K31/353
A23F3/16
(21)【出願番号】P 2018228161
(22)【出願日】2018-12-05
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 亮
(72)【発明者】
【氏名】由井 一希
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-148778(JP,A)
【文献】特開2013-027347(JP,A)
【文献】特開2013-039106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A61K、A23F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャ由来のポリフェノール類、及び、沈殿を抑制するために有効な量のガティガム及び/又はアラビアガムを含有
し、
ガティガム及びアラビアガムの総含有量1質量部に対するチャ由来のポリフェノール類の総含有量が、5~15000質量部である、液状組成物
(但し、カテキン、ヒスチジン若しくはコハク酸又はそれらの塩、及びアラビアガムが配合された液状組成物を除く)。
【請求項2】
前記
チャ由来のポリフェノール類が、
チャ抽出物に由来する、請求項1に記載の液状組成物。
【請求項3】
前記
チャ抽出物由来の可溶性固形分が、0.35~3質量%である、請求項2に記載の液状組成物。
【請求項4】
前記
チャ由来のポリフェノール類の総含有量が0.05~1.5質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項5】
ガティガム及びアラビアガムの総含有量が、1~1000ppmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項6】
ガティガム及び/又はアラビアガム
、並びに油性成分及び/又は油溶性香料を含有する
乳化物を、チャ由来のポリフェノール類を含有する液状組成物に含有させることを含む、
チャ由来のポリフェノール類を含有する液状組成物の沈殿抑制方法。
【請求項7】
ガティガム及び/又はアラビアガム
、並びに油性成分及び/又は油溶性香料を含有する
乳化物である、
チャ由来のポリフェノール類を含有する液状組成物の沈殿抑制用組成物。
【請求項8】
乳化粒子のメジアン径が1μm以下である、請求項
7に記載の沈殿抑制用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノール類を含有する沈殿が抑制された液状組成物、ポリフェノール類を含有する液状組成物の沈殿抑制方法、及び、ポリフェノール類を含有する液状組成物の沈殿抑制用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェノール類は植物が有する成分であり、茶抽出液や、果物、野菜等の搾汁液等に含まれ、植物の抽出物や搾汁液の色味、風味に関与する。また、ポリフェノール類は抗酸化作用や各種の薬効作用を有することも多数報告がなされている。
【0003】
近年、水で還元することによって飲料を調製することができる茶抽出物、果汁等の濃縮物等が上市されている。このような濃縮物においては、ポリフェノール類の濃度が高いために、経時的に濃縮物の成分の沈殿が生じて濃縮物の品質を損ないやすいことが知られている。また、このような沈殿形成は、温度が低下するとより進行しやすいことが知られている。
【0004】
これまでに、紅茶等の飲料の内容液を安定化するためにショ糖脂肪酸エステルや有機酸グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤の組合せを用いる手段が報告されている(特許文献1)。また、カラギーナンの添加によるポリフェノール類の一つであるタンニンを含む不溶性成分の生成抑制手段が報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-341933号公報
【文献】特開2000-316475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、いずれの手段によってもポリフェノール類を含有することで経時的に生じる沈殿の抑制効果については十分とは言えず、改善の余地があった。
【0007】
そこで本発明は、ポリフェノール類を含有していても沈殿が抑制された液状組成物を提供することを目的とする。また、ポリフェノール類を含有する液状組成物の沈殿抑制方法及び、ポリフェノール類を含有する液状組成物の沈殿抑制用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、アラビアガム及び/又はガティガムが、ポリフェノール類を含有する液状組成物の沈殿を抑制することを新たに見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の液状組成物を提供する。
項1.
ポリフェノール類、及び、沈殿を抑制するために有効な量のガティガム及び/又はアラビアガムを含有する、液状組成物。
項2.
前記ポリフェノール類が、植物抽出物に由来する、項1に記載の液状組成物。
項3.
前記植物抽出物由来の可溶性固形分が、0.35~3質量%である、項2に記載の液状組成物。
項4.
前記ポリフェノール類の総含有量が0.05~1.5質量%である、項1~3のいずれか一項に記載の液状組成物。
項5.
ガティガム及びアラビアガムの総含有量が、1~1000ppmである、項1~4のいずれか一項に記載の液状組成物。
【0010】
また、本発明は、以下の沈殿抑制方法を提供する。
項6.
ガティガム及び/又はアラビアガムを含有する組成物を含有させることを含む、ポリフェノール類を含有する液状組成物の沈殿抑制方法。
【0011】
さらに、本発明は、以下の沈殿抑制用組成物を提供する。
項7.
ガティガム及び/又はアラビアガムを含有することを特徴とする、ポリフェノール類を含有する液状組成物の沈殿抑制用組成物。
項8.
さらに油性成分及び/又は油溶性香料を含有し、乳化物である、項7に記載の沈殿抑制用組成物。
項9.
乳化粒子のメジアン径が1μm以下である、項8に記載の沈殿抑制用組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液状組成物がポリフェノール類を含有していても経時的に生じる沈殿を抑制することができ、液状組成物の保存による品質低下が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[液状組成物]
本発明の液状組成物は、ポリフェノール類、及び沈殿を抑制するために有効な量のガティガム及び/又はアラビアガムを含有する。
【0014】
(ポリフェノール類)
本発明の液状組成物は、ポリフェノール類を含有する。ポリフェノール類としては、例えば、カテキン類(カテキン、ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等);カテキン類重合体;フラボノール類(ケルセチン、ミリセチン、ケンフェロール等)及びその配糖体;フラボン類(アビゲニン、クリシン、ルテオリン等);イソフラボン類(ダイゼイン、ゲニステイン等)及びその配糖体;フラバノン類(ナリンゲニン、へスペレチン等)及びその配糖体;アントシアニジン類(シアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジン等)及びその配糖体;カルコン類;クルクミン類;リグナン類;クマリン類;フェニルカルボン酸類等を挙げることができる。即ち、ポリフェノール類には、非重合体のカテキン類とカテキン類重合物を包含する概念である「タンニン」が包含される。本発明の液状組成物には、これらのポリフェノール類が、1種単独で含有されても、2種以上が含有されていてもよいが、カテキン類及びカテキン類重合体から選択される1種以上の成分が含有されることがより好ましい。
【0015】
ポリフェノール類の由来としては、特に限定されず、例えばチャ、コーヒー、カカオ、大豆、果実類(ブドウ、リンゴ、イチゴ、ブルーベリー、カシス、柑橘類等)、野菜類(キャベツ、ホウレンソウ、ダイコン、タマネギ、トマト、ショウガ、ゴマ等)、ウコン、シナモン、黒豆、グァバ葉、ホップ等の植物抽出物又は植物搾汁液が挙げられるが、中でも植物抽出物が好ましく、チャ及び/又はコーヒー抽出物がより好ましく、チャ抽出物が更に好ましい。
【0016】
上記ポリフェノール類を得るために使用される植物の部位は、特に限定されず、葉、茎、根、地下茎、花、果実、つぼみ、種子、樹皮等を用いることができるが、葉又は茎であることが好ましい。
【0017】
ポリフェノール類を含む植物抽出物を得る方法としては、攪拌抽出、カラム法、ドリップ抽出等が挙げられるが、簡便な方法としては、植物を、例えば40~140℃の水に浸漬し、0.1分~120時間加熱処理して抽出物を得る方法が挙げられる。また抽出時の水にあらかじめアスコルビン酸ナトリウム等の有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。また、セルラーゼ、マスセラーゼ、カルボヒドラーゼ等の酵素による処理又は化学的な処理によって植物をあらかじめ細胞壁を溶解してもよい。さらに煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を併用してもよい。このようにして得られた植物抽出物は、そのままでも、乾燥又は濃縮してもよく、液体、スラリー、半固体、又は固体(粉末又は顆粒状)の状態で、本発明に用いるポリフェノール類を含有する植物抽出物として使用することができる。
【0018】
本発明の液状組成物にポリフェノール類として植物抽出物を用いる場合、植物抽出物に由来する可溶性固形分の総含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、液状組成物の全量に対して、好ましくは0.35~3質量%、より好ましくは0.4~2.5質量%、更に好ましくは0.45~2質量%である。なお本明細書において、植物抽出物に由来する可溶性固形分とは、植物抽出物を乾燥させた際に、固体として得られる画分を指す。特にチャ抽出物に由来する可溶性固形分は、茶固形分と呼ぶ。
【0019】
ポリフェノール類の由来としてチャを用いる場合は、Camellia属(例えばC.sinensis及びC.assamica)若しくはやぶきた種、又はそれらの雑種等の樹木の茶葉から製茶されたものが好ましい。茶葉の発酵の様式は特に限定されず、煎茶、玉露、かぶせ茶、番茶、ほうじ茶等の緑茶;君山銀針、蒙頂黄芽等の黄茶、白毫銀針等の白茶;鉄観音、凍頂烏龍茶、武夷岩茶等の青茶(烏龍茶);及び、ダージリン、アッサム、ウヴァ、祁門紅茶、ニルギリ、シッキム等の紅茶;プーアール茶、阿波番茶等の黒茶から選ばれる1種以上を用いることができるが、中でも紅茶、緑茶、及び青茶から選択される1種以上を含むことが好ましく、緑茶及び/又は紅茶であることがより好ましく、緑茶又は紅茶であることが更に好ましく、紅茶であることが特に好ましい。
【0020】
チャ由来のポリフェノール類として、茶葉から抽出した抽出液の代わりに、茶抽出物の濃縮物を用いても、茶葉からの抽出液と茶抽出物の濃縮物とを併用してもよい。ここで、茶抽出物の濃縮物とは、茶葉から熱水又は水溶性有機溶媒により抽出された抽出物を濃縮したものであり、例えば、特開昭59-219384号公報、特開平4-20589号公報、特開平5-260907号公報、特開平5-306279号公報等に記載されている方法により調製したものをいう。具体的には、茶抽出物の濃縮物として、市販の三井農林社製「ポリフェノン」、伊藤園社製「テアフラン」、太陽化学社製「サンフェノン」等のカテキン含有製剤を用いることもできる。
【0021】
本発明の液状組成物において、ポリフェノール類の総含有量は、特に限定はされないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、液状組成物の全量に対して、好ましくは0.05~1.5質量%、より好ましくは0.1~1.2質量%、更に好ましくは0.2~1質量%である。ここで、ポリフェノール類の総含有量とは、(+)-カテキンを標準物質としてFolin-Ciocalteu法を用いて得られる(+)-カテキン換算値である。Folin-Ciocalteu法は、「Determination of substances characteristic of green and black tea -Part 1: Content of total polyphenols in tea - Colorimetric method using Folin-Ciocalteu reagent」(ISO 14502-1:2005) の方法に基づく。
【0022】
(ガティガム、アラビアガム)
本発明の液状組成物に用いられるガティガムは、シクンシ科ガティノキ(Anogeissus Latifolia)の樹液(分泌液)に由来する多糖類であり、増粘安定剤(食品添加物)として公知の多糖類である。本発明で使用するガティガムは商業的に入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の「ガティガムRD」を挙げることができる。
【0023】
ガティガムとしては、限定はされないが、低分子化されたガティガム(低分子ガティガ
ム)であってもよい。低分子ガティガムの重量平均分子量は、限定はされないが、例えば
、0.020×106~1.10×106とすることができる。なお、ガティガムの分子量の測定は、国際公開第2018/062554号公報に記載される、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)を用いた方法により行われる。
【0024】
本発明の液状組成物に用いられるアラビアガムは公知であり、マメ科植物であるアカシア属の植物(例えば、アカシア・セネガル(Acacia senegal)やアカシア・セイアル(Acacia seyal等)の樹液から得られる多糖類である。アラビアガムの分子構造は完全には明らかにされていないが、ガラクトース、アラビノース、ラムノース、及びグルクロン酸を構成糖とすることが知られている。
【0025】
アラビアガムは商業的に入手することができ、かかる製品としては、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ガムアラビックSD」等が挙げられる。
【0026】
本発明の液状組成物に用いられるアラビアガムとして、前記アラビアガムを改質した、改質アラビアガムを用いることも可能である。改質の方法としては、例えば、90~180℃で15分~72時間加熱処理する方法や、アラビアガムから金属塩を除去又は低減する方法等が挙げられる。アラビアガムから金属塩を除去又は低減する方法としては、例えば、有機溶媒中でのイオン交換処理、電気透析膜、又はイオン交換樹脂等による脱塩処理が例示できる。これら改質アラビアガムは、例えば、特表2006-522202号公報、又は特開2005-179417号公報に記載された方法等に従って製造することができる。
【0027】
前記性質を有する改質アラビアガムは、例えば、特表2006-522202号公報に記載の方法に従って製造することができる。一例として、アカシア・セネガル種に属するアラビアガムを110℃で10時間以上、又はこれと実質的に同じ効果を得ることができる条件下で加熱することによって、前記性質を有する改質アラビアガムを製造することができる。加熱時間の条件としては、例えば72時間が挙げられる。また、上記性質を有する改質アラビアガムは商業的に入手することができ、かかる製品として例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「SUPER GUM EM10」等が挙げられる。
【0028】
本発明で用いるアラビアガムは、特に限定されないが、例えば、前記重量平均分子量が好ましくは90万~500万、より好ましくは120万~500万、更に好ましくは150万~500万、更により好ましくは150万~450万、特に好ましくは200万~400万であるアラビアガム、及び/又は、アラビノガラクタン蛋白質含量が好ましくは17~30質量%、より好ましくは20~30質量%であるアラビアガムが例示される。
【0029】
アラビアガムの重量平均分子量及びアラビノガラクタン蛋白質含量(質量%)は、例えば、光散乱(MALLS)検出器、屈折率(RI)検出器及び紫外線(UV)検出器の3つの検出器を備えたゲル濾過クロマトグラフィーにより測定することができる。詳細には、特表2006-522202号公報に記載の方法に従って測定することができる。
【0030】
本発明の液状組成物において、アラビアガム及びガティガムの総含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、液状組成物の全量に対して、好ましくは1ppm以上、より好ましくは2ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、特に好ましくは20ppm以上、最も好ましくは40ppm以上である。
また、アラビアガム及びガティガムの総含有量は、特に限定されないが、粘度を低く保つ観点から、液状組成物の全量に対して、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは900ppm以下、更に好ましくは800ppm以下、特に好ましくは700ppm以下、最も好ましくは600ppm以下である。
【0031】
本発明の液状組成物において、ガティガムの含有量は、特に限定されないが、粘度を低く保つ観点から、液状組成物の全量に対して、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは800ppm以下、更に好ましくは600ppm以下、特に好ましくは400ppm以下、最も好ましくは200ppm以下である。
【0032】
本発明の液状組成物において、アラビアガムの含有量は、特に限定されないが、粘度を低く保つ観点から、液状組成物の全量に対して、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは900ppm以下、更に好ましくは800ppm以下、特に好ましくは700ppm以下、最も好ましくは600ppm以下である。
【0033】
(各成分の比)
本発明の液状組成物において、ガティガム及びアラビアガムの総含有量1質量部に対するポリフェノール類の総含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、好ましくは0.1~15000質量部、より好ましくは1~5000質量部、更に好ましくは5~1000質量部、特に好ましくは10~500質量部である。
【0034】
(その他成分)
本発明の液状組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、ポリフェノール類、ガティガム、及びアラビアガム以外の、飲料に用いられ得る公知の栄養成分(アミノ酸類、ビタミン類、ミネラル等);アルコール;酒類;塩類(食塩、塩化マグネシウム、酸性リン酸カリウム、酸性リン酸カルシウム、リン酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウム等);呈味成分(塩味、うま味等を含む);果汁(濃縮物を含む);果肉;野菜;野菜汁(濃縮物を含む);ピューレ;エキス;甘味料(果糖ぶどう糖液糖、グルコース、スクロース、フルクトース、ガラクトース、マルトース、マンノース、ラクトース、ハチミツ、水飴等);糖アルコール(ソルビトール、キシリトール、マルチトール、還元パラチノース、ラクチトール等);高感度甘味料(スクラロース、アセスルファムK、アスパルテーム、ネオテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、ソーマチン、ステビア、グリチルリチン、モネリン、アリテーム、グリチルリチン酸二ナトリウム等);苦味料(イソ-α酸、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ等);酸味料(リン酸、乳酸、グルコン酸カリウム、DL-リンゴ酸ナトリウム、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸等);香料;着色料(ベニバナ黄色素、カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン、果汁色素、野菜色素、合成色素等);食品添加物(食物繊維、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ポリソルベート、キラヤサポニン等)、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、多価アルコール(プロピレングリコール、グリセリン等)、pH調整剤、保存料、酸化防止剤(ビタミンC、ビタミンE、抽出トコフェロール等)、増粘剤、安定化剤、糊料等);医薬品、医薬部外品又は化粧品の有効成分又は添加剤、等を1種以上含有することができる。
【0035】
(pH)
本発明の液状組成物のpHは、特に限定されないが、風味を良好とする観点から、好ましくは2.0~8.0、より好ましくは3.0~7.5、更に好ましくは3.5~7.0、特に好ましくは4.0~7.0、最も好ましくは4.6~6.5である。
【0036】
(用途)
本発明の液状組成物は、特に限定されず、食品、医薬品、医薬部外品、又は化粧品としてそのまま使用されるものであってもよく、あるいはこれらの製造に用いられてもよいが、例えば、還元濃縮飲料組成物等として、飲料の製造に用いることが好ましい。
【0037】
本発明の液状組成物を用いて製造される飲料は、食品、医薬品及び医薬部外品を含み、経口により体内に摂取され得る液状の組成物であれば、特に限定されず、例えば、清涼飲料、アルコール飲料、液剤、ドリンク剤等が挙げられ、好ましくは清涼飲料であり、より好ましくは茶系飲料であり、更に好ましくは紅茶、緑茶、又は烏龍茶である。
【0038】
本発明の液状組成物を用いた飲料の製造には、工業的な飲料製造の他に、サーバーやカップベンダー(カップ式自動販売機)によって、あるいは消費者又は飲食品の提供者によって、本発明の液状組成物が水、シロップ、炭酸水、アルコール類等又はこれらの混合物により希釈することが含まれる。
【0039】
本発明の液状組成物を化粧品又は化粧品の製造原料として用いる場合、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、化粧品の形態としては、例えばマウスウォッシュ、化粧水、美容液等のように透明又は半透明の液状物であることが好ましい。
【0040】
本明細書において、清涼飲料とは、特に限定されないが、例えば茶系飲料(緑茶、紅茶、烏龍茶、ほうじ茶、杜仲茶、麦茶、プーアール茶、玄米茶、ジャスミン茶、そば茶、雑穀茶、ルイボスティー、マテ茶等)、コーヒー飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜入り混合果汁飲料、果肉飲料、炭酸飲料、麦芽飲料、乳酸菌飲料、スポーツ飲料、ゼリー飲料、ココア飲料、チョコドリンク、乳性飲料、エネルギー飲料、健康飲料(薬系ドリンク、健康サポート飲料、機能性清涼飲料、スポーツドリンク、ビネガードリンク、麦芽ドリンク等)、植物性飲料(米、豆乳、アーモンドを主原料とする穀物飲料等)、甘酒、しるこ、スープ飲料、粉末スープ飲料等のアルコール度数1度未満の飲料を指す。
【0041】
本明細書において、アルコール飲料は、飲料中のアルコール含量が1度以上の飲料であり、例えば、酒税法上の「酒」を指すアルコール飲料が挙げられる。具体的には、清酒類(清酒、合成清酒)、焼酎、ビール、果実酒類(果実酒、梅酒等の甘味果実酒)、ウイスキー類(ウイスキー、ブランデー)、スピリッツ類(スピリッツ)、リキュール類、発泡酒、その他の醸造酒(マッコリ等)、雑酒(粉末酒、その他の雑酒)等を挙げることができる。
【0042】
(容器・形態)
本発明の液状組成物の容器は、特に限定されない。飲料としてそのまま供される場合は、例えば、瓶、アルミ缶、スチール缶、ボトル缶、PETボトル、紙パック(ゲーブルトップ、LL容器等)等に充填される。また、飲料の製造用途で供される場合は、上記の容器形態の他、例えば、一斗缶、ドラム缶等に充填される。さらに消費者又は飲食品の提供者が希釈して用いる用途で供される場合は、飲料と同様の容器形態のほか、プラスチックや紙等を材料とするポーションタイプのカートリッジ、アルミパウチ(スティック形状等)、ドレッシング容器やソース容器のようなキャップ付き狭口ボトル等に充填される。
【0043】
(保存)
本発明の液状組成物の保存温度は、特に限定されず、例えば40℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、15℃以下、10℃以下、8℃以下、5℃以下とすることができるが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、好ましくは20℃以下であり、より好ましくは15℃以下であり、更に好ましくは10℃以下であり、特に好ましくは8℃以下であり、最も好ましくは5℃以下である。
【0044】
(製造方法)
本発明の液状組成物の製造方法は、ポリフェノール類、並びに沈殿を抑制するために有効な量のガティガム及び/又はアラビアガムを含有させる工程を含む。
【0045】
本発明の液状組成物の製造方法において、特に限定されないが、ガティガム及びアラビアガムとして、以下の[沈殿抑制用組成物]の項に記載した沈殿抑制用組成物を用いることが好ましい。
【0046】
ポリフェノール類、並びに沈殿を抑制するために有効な量のガティガム及び/又はアラビアガムを含有させる工程において、ポリフェノール類、ガティガム、及びアラビアガムは、いずれか1種以上を同時に含有させてもよいし、全て別々に含有させてもよい。
【0047】
本発明の液状組成物の製造には、さらに加熱殺菌工程、容器充填工程等を含むことができる。
【0048】
[沈殿抑制方法]
本発明の沈殿抑制方法は、ポリフェノール類を含有する液状組成物に用いられるものであって、ガティガム及び/又はアラビアガムを含有する組成物を含有させることを含む。
【0049】
本明細書において、「沈殿」とは溶液中に混じっている微小固体が底に沈んでたまることを意味し、溶液が透明でない状態を指す「濁り」とは区別される。即ち、微粒子が底に沈まずに浮遊している状態は、濁りが生じている状態であって、沈殿は生じていないと判断する。
【0050】
本発明の沈殿抑制方法に用いられるガティガム及びアラビアガムの種類及び量、並びに液状組成物のポリフェノール類及びその他の成分の種類及び量、組成物の性状等は、いずれも上記の[液状組成物]の項に記載したとおりである。
【0051】
[沈殿抑制用組成物]
本発明のポリフェノール類を含有する液状組成物の沈殿抑制用組成物は、ガティガム及び/又はアラビアガムを含有する。
【0052】
本発明の沈殿抑制用組成物において、アラビアガム及びガティガムの総含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、沈殿抑制用組成物の全量に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上、最も好ましくは3質量%以上である。
【0053】
本発明の沈殿抑制用組成物において、アラビアガムを含有する場合、アラビアガムの含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、沈殿抑制用組成物の全量に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上、最も好ましくは20質量%以上である。
【0054】
本発明の沈殿抑制用組成物は、特に限定されず、乳化物(乳化懸濁液)、乳化物に賦形剤を加えて乾燥させた固体状物等の態様をとり得るが、乳化物又は乳化物に賦形剤を加えて乾燥させた固体状物であることが好ましく、本発明の効果を更に高める観点から、乳化物であることがより好ましい。
【0055】
(態様1.乳化物)
本発明の沈殿抑制用組成物が乳化物である場合、沈殿抑制用組成物は、油性成分及び/又は油溶性香料をさらに含む。この場合の乳化物は、油性成分及び/又は油溶性香料が水相に対して乳化して得られるO/W型の乳化物が好ましい。
【0056】
油性成分としては、例えば、油溶性色素、油溶性生理活性物質、油性溶媒等を挙げることができる。
【0057】
油溶性色素としては、例えば、パプリカ色素、アナトー色素(ノルビキシン、ビキシン等)、トマト色素、マリーゴールド色素、ヘマトコッカス藻色素、カロテノイド色素(デュナリエラカロチン、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、β-カロチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、リコピン、ルテイン、アポカロテナール、フコキサンチン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン等)、クロロフィル等が挙げられる。
【0058】
油溶性生理活性物質としては、例えば、肝油、ビタミンA(レチノール等)、ビタミンA油、ビタミンD(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等)、ビタミンB2酪酸エステル、アスコルビン酸脂肪酸エステル、ビタミンE(トコフェロール、トコトリエノール等)、ビタミンK(フィロキノン、メナキノン等)等の脂溶性ビタミン類;レスベラトロール、油溶性ポリフェノール、グリコシルセラミド、セサミン、ホスファチジルセリン、コエンザイムQ10、ユビキノール、α-リポ酸;α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸等のω-3系脂肪酸、リノール酸、及びγ-リノレン酸等のω-6系脂肪酸、植物ステロール等が挙げられる。
【0059】
油性溶媒としては、例えば、菜種油、パーム油、大豆油、オリーブ油、ホホバ油、ヤシ油、エレミ樹脂、マスティック樹脂等の植物性油脂類、牛脂、豚脂等の動物性油脂類、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、ロジン、ダンマル樹脂、エステルガム、中鎖トリグリセライド(MCT)等が挙げられる。
【0060】
油溶性香料(脂溶性香料を含む。以下、同じ。)は、香気成分を含有する油溶性又は脂溶性の物質である。本発明の効果が損なわれない限りにおいて特に限定されず、例えば、動物性・植物性の天然原料から、不揮発性溶剤による抽出、揮発性溶剤による抽出、超臨界抽出等により得られる抽出物;水蒸気蒸留や圧搾法等により得られる精油や回収フレーバー等の天然香料;化学的手法で合成された合成香料;これらの香料を油脂や溶媒に配合・溶解した香料ベース等が例示できる。天然香料の例として、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン等の抽出物、コールドプレス等の精油、チンキと呼ばれるアルコール抽出物等が挙げられる。より具体的には、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、マンダリン油等の柑橘系精油類;ラベンダー油等の花精油又はアブソリュート類;ペパーミント油、スペアミント油、シナモン油等の精油類;オールスパイス、アニスシード、バジル、ローレル、カルダモン、セロリ、クローブ、ガーリック、ジンジャー、マスタード、オニオン、パプリカ、パセリ、ブラックペパー等のスパイス類の精油又はオレオレジン類;リモネン、リナロール、ゲラニオール、メントール、オイゲノール、バニリン、ネロール、シトロネロール、シトラール、シンナミックアルデヒド、アネトール、ペリラアルデヒド、γ-ウンデカラクトン等の合成香料類;コーヒー、カカオ、バニラ、ローストピーナッツ等の豆由来の抽出油;紅茶、緑茶、ウーロン茶等のエキストラクト類;その他合成香料化合物等を挙げることができる。
【0061】
本発明の沈殿抑制用組成物のうち、乳化物の態様において含有される上記の油性成分及び油溶性香料は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
本発明の沈殿抑制用組成物のうち、乳化物の態様において含有される上記の油性成分及び油溶性香料の総含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、沈殿抑制用組成物の全量に対して、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.2~10質量%、更に好ましくは0.3~5質量%、特に好ましくは0.5~3質量%である。
【0063】
本発明の沈殿抑制用組成物のうち乳化物の態様では、香味を良好とし、乳化物の安定性を高める観点から、さらに多価アルコールを含有することが好ましい。このような多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール(D-ソルビトール)、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、キシロース、グルコース、ラクトース、マンノース、オリゴトース、果糖ブドウ糖液糖、ショ糖等が挙げられるが、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上含有することが好ましく、プロピレングリコール及び/又はグリセリンを含有することがより好ましい。
【0064】
本発明の沈殿抑制用組成物のうち、乳化物の態様において含有される多価アルコールの総含有量は特に限定されないが、本発明の効果を更に高める観点から、例えば、多価アルコールとしてプロピレングリコールを用いる場合は、沈殿抑制用組成物の全量に対して、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは6質量%以上、特に好ましくは8質量%以上であり、また、例えば、グリセリンを用いる場合は、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上である。
【0065】
本発明の沈殿抑制用組成物は、さらに乳化剤を含有することができる。乳化剤の種類は特に限定されないが、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、有機酸モノグリセリド等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、キラヤ抽出物、サポニン、ポリソルベート(例、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80)等が挙げられる。これらの乳化剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
本発明の沈殿抑制用組成物における乳化剤の総含有量は、特に限定されないが、用いる対象となる液状組成物の香味及び風味を良好とする観点から、沈殿抑制用組成物の全量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0067】
乳化物の調製方法としては、特に限定されないが、例えば国際公開第2013/084518号公報に記載された方法等が挙げられる。
【0068】
本発明の沈殿抑制用組成物のうち、乳化物の態様においては、分散性を高める観点から、乳化物の乳化粒子のメジアン径は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.8μm以下、さらに好ましくは0.7μm以下である。
【0069】
本明細書において、粒子のメジアン径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される体積基準の累積粒度分布曲線における、累積体積50容量%の体積累積粒径(D50)を指す。特に限定されないが、より具体的には、サンプル分散液(例えば、沈殿抑制用組成物を0.1質量%となるように懸濁した溶液)について、例えばMT3300EXII(マイクロトラック・ベル社製)等のレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて、粒度分布を測定して求めることができる。
【0070】
(態様2.固体形状)
本発明の沈殿抑制用組成物のうち、固体形状の態様においては、さらに賦形剤を含有することが好ましい。賦形剤としては、例えば、澱粉分解物(デキストリン、粉飴等)、糖類(単糖(グルコース、フルクトース等)、二糖(例えば、ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース等)、オリゴ糖(セロオリゴ糖、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖等)、糖アルコール(キシリトール、ソルビトール、ラクチトール、マルチトール等)、還元糖化物等)、食物繊維(例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グァーガム酵素分解物等)等が挙げられる。係る態様において、賦形剤の含有量は、特に限定されないが、沈殿抑制用組成物の全量に対して、例えば、1~95質量%が挙げられ、好ましくは5~95質量%、より好ましくは10~90質量%、更に好ましくは20~90質量%、特に好ましくは30~90質量%である。
【0071】
本発明の沈殿抑制用組成物のうち、固体形状の態様においては、さらに、乳化剤を含有してもよい。乳化剤の種類及び量は、上記の乳化物の態様の項で記載したものと同じである。
【0072】
(その他成分)
さらに、本発明の沈殿抑制用組成物には、その態様にかかわらず、その他成分として、本発明の効果を損なわない限りにおいて、ガティガム、アラビアガム、油性成分、油溶性香料、多価アルコール、乳化剤、及び賦形剤以外に、食品、医薬品、医薬部外品、又は化粧品に用いられ得る公知の栄養成分、アルコール、酒類、塩類、呈味成分、果汁、果肉、野菜、野菜汁、ピューレ、エキス、甘味料、糖アルコール、高感度甘味料、苦味料、酸味料、香料、着色料、食品添加物(食物繊維、pH調整剤、保存料、酸化防止剤、増粘剤、安定化剤等)、医薬品又は医薬部外品の有効成分又は添加剤、等を1種以上配合することができる。これらの成分の具体例は上記の[液状組成物]の項で記載したとおりである。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。なお、実施例中の「部」「%」は、それぞれ「質量部」「質量%」を意味する。また、文中「*」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製であることを示し、文中「※」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
【0074】
[材料]
紅茶用フレーバーとしてコウチャフレーバーコンパウンド(*)、ガティガムとしてGATIFOLIA RD(*)、アラビアガムとしてアラビアガム SD(*)、カラギナン(κカラギナン)としてCSK-1(F)(*)、抽出トコフェロールとしてトコフェロール 70(s)(日清オイリオグループ社製)、食用油脂としてO.D.O(日清オイリオグループ社製)を以下の試験で用いた。
【0075】
[試験例1.ポリフェノール類を含有する液状組成物の沈殿抑制効果の検証]
まず、紅茶エキスパウダー(DAMIN FOODSTUFF(ZANG ZHOU)社製、ポリフェノール類含有率約36質量%)を2kg、砂糖14kgを水に溶解し、100.0Lに調整した後で、85℃で30分間加熱殺菌することによって、紅茶シロップを調製した。このとき、紅茶シロップのpHは5.0、Brixは15.7°、比重は1.054、茶固形分は1.9質量%、ポリフェノール類は約0.72質量%であった。
【0076】
得られた紅茶シロップ40mLに、ガティガムを終濃度で1、4、10、又は40ppmとなるように添加したものを調製し、実施例1-1-1~4とした。同様に、紅茶シロップ40mLに、アラビアガムを終濃度で4、10、又は40ppm添加したもの、カラギナンを終濃度で1、4、10又は40ppmとなるように添加したものを調製し、それぞれ実施例1-2-1~3、比較例1-1~4とした。さらに、ガティガム、アラビアガム、又はカラギナンを添加しない紅茶シロップを対照1とした。なお、アラビアガム、ガティガム又はカラギナンの添加量は、紅茶シロップの量に比べて十分に小さく、紅茶シロップのポリフェノール濃度は添加前と実質的に変わらない。
【0077】
得られたポリフェノール類を含有する液状組成物を、それぞれスクリュー瓶(内径32.4mm、高さ78mm、マルエム社製)中に入れ、5℃で28日間静置した。その間の沈殿の量を以下の基準によりスコア化し、比較した。なお、スクリュー瓶中の試料液の高さは約50mmであった。なお5℃での保存は、室温前後での保存に比べて、より沈殿が生じやすいことを確認している。
<沈殿量の評価基準>(堆積した沈殿の厚さを目安として目視でスコアを決定)
スコア0:沈殿を認めない(沈殿厚さ0mm)
スコア1:沈殿を少量認める(沈殿厚さ0.1mm未満)
スコア2:沈殿がやや多い(沈殿厚さ0.1mm以上0.5mm未満)
スコア3:沈殿が多い(沈殿厚さ0.5mm以上1.0mm未満)
スコア4:沈殿が非常に多い(沈殿厚さ1.0mm以上)
【0078】
5℃静置時の沈殿量スコアの経時変化を表1~3に示す。1ppmのガティガム添加で1日後から、4ppmのアラビアガムの添加で3日後から沈殿が抑制されていることが示された。また、これらは濃度依存的に沈殿抑制効果を示した。ガティガムのほうが、アラビアガムよりもより高い沈殿抑制効果を示した。一方、カラギナンでは1~40ppmのいずれの濃度でも、沈殿抑制効果は見られなかった。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
[試験例2.沈殿抑制用組成物の調製]
表4、5の処方の乳化組成物を調製した。それぞれ、まず油溶性香料である紅茶用フレーバーと油性成分である食用油脂、抽出トコフェロール、ショ糖酢酸イソ酪酸エステルを均一に混合して油性溶液を得た。続いて、残りの原材料を水に溶解して調製した水溶液に、得られた油性溶液を添加して攪拌混合した。得られた混合物を高圧ホモジナイザー(APV Gaulin社製高圧ホモジナイザー15MR-8TA)を用いて、圧力350kg/cm2で4回乳化処理を行い、ガティガムを含有する乳化組成物(実施例2-1、表4)、アラビアガムを含有する乳化組成物(実施例2-2、表5)が得られた。
【0083】
【0084】
【0085】
レーザー回折式粒度分布計で測定した乳化物(実施例2-1及び2-2)中の乳化粒子のD50粒子径は、いずれも1μmより小さかった。
【0086】
また、賦形剤を含む固形形状の沈殿抑制用組成物を調製した。表6の処方に記載された量の油溶性香料である紅茶用フレーバーと油性成分である抽出トコフェロール及び食用油脂を均一に混合し、油性溶液を得た。その後、水相成分であるガティガム、クエン酸、及びデキストリンを200質量部の水に溶解して調製した水溶液に、油性溶液を加え、攪拌混合した。次いで、高圧ホモジナイザー(APV Gaulin社製高圧ホモジナイザー15MR-8TA)を用いて、圧力2.942kPa(300kg/cm2)で2回処理を行い、得られた乳化液を噴霧乾燥機(入口温度:140℃、出口温度80℃、APV Nordic Anhydro社製)を用いて噴霧乾燥し、ガティガムを含有する粉末組成物(実施例2-3)を調製した。
【0087】
【0088】
[試験例3.各沈殿抑制用組成物の評価]
試験例2で得られたガティガム含有乳化組成物(実施例2-1)、アラビアガム含有乳化組成物(実施例2-2)、ガティガム含有粉末組成物(実施例2-3)を、試験例1と同じ紅茶シロップに、それぞれ終濃度で1000ppmとなるように添加したものを調製し、それぞれ実施例3-1~3とした。即ち、実施例3-1、3-3にはガティガムが40ppm、実施例3-2にはアラビアガムが240ppm含まれる。
【0089】
得られたポリフェノール類を含有する液状組成物を試験例1と同様にして5℃で28日間静置し、その間の沈殿の量をスコア化し、比較した。
【0090】
5℃静置時の沈殿量スコアの経時変化を表7に示す。いずれの実施例も沈殿抑制効果を示したが、特にガティガムを用いた場合は、その剤形にかかわらず高い沈殿抑制効果を示すことがわかった。
【0091】