(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】ポジ型感光性樹脂組成物およびそれから調製された硬化膜
(51)【国際特許分類】
G03F 7/023 20060101AFI20230324BHJP
G03F 7/075 20060101ALI20230324BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230324BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20230324BHJP
C08G 77/392 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/075 511
G03F7/004 501
C08L83/08
C08G77/392
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018230933
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】10-2017-0183384
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨノック・キム
(72)【発明者】
【氏名】ゲウン・フー
(72)【発明者】
【氏名】ジュ-ヤン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-フワ・リー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ハン・ヤン
【審査官】倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/028360(WO,A1)
【文献】特開平06-027671(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0043259(KR,A)
【文献】特開2010-032977(JP,A)
【文献】特開2009-204805(JP,A)
【文献】特開2016-126349(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03040370(EP,A1)
【文献】特開2013-210558(JP,A)
【文献】国際公開第2017/078272(WO,A1)
【文献】特開2007-137800(JP,A)
【文献】特開2007-233125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/023
G03F 7/075
G03F 7/004
C08L 83/08
C08G 77/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジ型感光性樹脂組成物であって、
(A)光により活性化される感光性基を末端に含有するシロキサンコポリマーと、
(B)アクリル系コポリマーと、
(C)溶媒と、を含
み、
前記シロキサンコポリマー(A)が、下記式1で表されるシラン化合物に由来する構造単位を含み、
[式1]
(R1)
n
Si(OR2)
4-n
nは、0~3の整数であり、
R1は、それぞれ独立して、C
1-12
アルキル、C
2-10
アルケニル、C
6-15
アリール、3~12員ヘテロアルキル、4~10員ヘテロアルケニル、または6~15員ヘテロアリールであり、
R2は、それぞれ独立して、水素、C
1-6
アルキル、C
2-6
アシル、またはC
6-15
アリールであり、
前記ヘテロアルキル、前記ヘテロアルケニル、および前記ヘテロアリールは、それぞれ独立して、O、N、およびSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有し、
前記シロキサンコポリマー(A)は、nが0である上記式1で表されるシラン化合物に由来する構造単位を、Si原子モル数に基づいて10~40モル%の量で含む、ポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記感光性基が、スルホン化ジアゾキノン系化合物に由来するスルホン化ジアゾキノン基である、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記スルホン化ジアゾキノン基が、スルホン化ジアゾベンゾキノン基またはスルホン化ジアゾナフトキノン基である、請求項2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記アクリル系コポリマー(B)が、(b-1)エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸無水物、またはそれらの組み合わせに由来する構造単位と、(b-2)エポキシ基を含有する不飽和化合物に由来する構造単位と、ならびに(b-3)構造単位(b-1)および(b-2)とは異なるエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位と、を含有する、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記シロキサンコポリマー(A)が、前記シロキサンコポリマー(A)と前記アクリル系コポリマー(B)との合計重量に基づき30~85重量%の範囲の量で使用される、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
1,2-キノンジアジド化合物をさらに含む、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
エポキシ化合物をさらに含む、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
下記式5で表される少なくとも1つのシラン化合物をさらに含む、ポジ型感光性樹脂組成物であって、
[式5]
(R5)
nSi(OR6)
4-n
nは、0~3の整数であり、
R5は、それぞれ独立して、C
1-12アルキル、C
2-10アルケニル、C
6-15アリール、3~12員ヘテロアルキル、4~10員ヘテロアルケニル、または6~15員ヘテロアリールであり、
R6は、それぞれ独立して、水素、C
1-6アルキル、C
2-6アシル、またはC
6-15アリールであり、
前記ヘテロアルキル、前記ヘテロアルケニル、および前記ヘテロアリールは、それぞれ独立して、O、N、およびSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物から調製された硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物およびそれから調製された硬化膜に関する。より詳細には、本発明は、膜保持率および接着性に優れたポジ型感光性樹脂組成物、ならびにそれから調製され、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等に用いられる硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、薄膜トランジスタ(TFT)の基板上には、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイ等の中の透明電極とデータ線との接触を防止するための絶縁のために、透明な平坦化膜が形成されている。データ線の近傍に位置する透明画素電極を介して、パネルの開口率を向上させることができ、ひいては高輝度/高解像度を達成することができる。このような透明な平坦化膜を形成するためには、特定のパターン形状を付与するためにいくつかの処理工程が用いられ、処理工程がより少なくて済むため、ポジ型感光性樹脂組成物が広く用いられている。
【0003】
従来のポジ型感光性樹脂組成物に関しては、シロキサンポリマーやアクリル樹脂等を原料として用いる技術が導入されてきた。
【0004】
アクリル樹脂は、アクリルの架橋特性のために硬化膜の耐薬品性を向上させることができるが、膜保持率が低く、下基板との結合力が弱く接着性が悪いという問題がある。シロキサンポリマーは、その膜保持率が高く、シラノール基が下基板とのバインダーとして作用し、それにより、アクリル樹脂に比べて接着性が向上するという利点がある。
【0005】
そこで、アクリル樹脂とシロキサンポリマーを併用することにより、アクリル樹脂とシロキサンポリマー、およびそれから形成される硬化膜の利点を全て併せ持つ組成物を提供することを目的とする技術が提案されてきた(日本特許第5,099,140号参照)。しかし、シロキサンポリマーは、現像時にアクリル樹脂よりも溶解速度が速く、接着性や膜保持率を十分に向上させることができないため、膜の保持力が低いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
解決すべき技術課題
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等に用いられるポジ型感光性樹脂組成物、およびそれから調製される硬化膜を提供することを目的とする。ポジ型感光性樹脂組成物は、アクリル樹脂とシロキサンポリマーの両方をバインダーとして含む。シロキサンポリマーの末端、すなわち、シロキサンポリマーのシラノール基に、感光性を有するジアゾキノン基が導入される。ジアゾキノン基は露光時に光により活性化されるため、現像時に未露光領域で溶解が抑制され、露光領域では溶解速度が維持される。これにより、接着性および膜保持率をさらに向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)光により活性化される感光性基を末端に含有するシロキサンコポリマーと、(B)アクリル系コポリマーと、(C)溶媒と、を含む、ポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【0009】
他の目的を達成するために、本発明は、(1)下記の式1で表される少なくとも2つのシラン化合物を共重合させてシロキサンコポリマーを得ること、(2)スルホン化ジアゾキノン系化合物をシロキサンコポリマーと反応させて、シロキサンコポリマーの末端にスルホン化ジアゾキノン基を導入すること、を含む、シロキサンコポリマーを調製するための方法を提供する。
【0010】
[式1]
(R1)nSi(OR2)4-n
【0011】
前記の式1において、nは、0~3の整数であり、R1は、それぞれ独立して、C1-12 アルキル、C2-10アルケニル、C6-15アリール、3~12員ヘテロアルキル、4~10員ヘテロアルケニル、もしくは6~15員ヘテロアリールであり、R2は、それぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アシル、もしくはC6-15アリールであり、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、およびヘテロアリールは、それぞれ独立して、O、N、およびSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する。
【0012】
さらに他の目的を達成するために、本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物から調製された硬化膜を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、光により活性化される感光性基として末端にスルホン化ジアゾキノン基を含有するシロキサンコポリマーを含む。シラノール基は、硬化膜の形成時に未露光領域のスルホン化ジアゾキノン基で保護され、シロキサンコポリマーの溶解速度を低下させる。これにより、膜保持率および接着性をさらに向上させることができる。さらに、スルホン化ジアゾキノン基は、露光された領域において、紫外線によってカルボキシル基に変換される。これにより、現像工程において、現像液に溶解し易くなり(すなわち、溶解性が向上する)、それにより、感度(またはパターンコントラスト)を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)光により活性化される感光性基を末端に含むシロキサンコポリマーと、(B)アクリル系コポリマーと、(C)溶媒と、を含む。必要に応じて、ポジ型感光性樹脂組成物は、(D)1,2-キノンジアジド系化合物と、(E)エポキシ化合物と、(F)下記の式3で表される少なくとも1つのシラン化合物と、(G)界面活性剤と、および/または(H)接着補助剤と、をさらに含んでもよい。
【0015】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」という用語は、「アクリレート」および/または「メタクリレート」を意味する。
【0016】
下記される各成分の重量平均分子量は、ポリスチレン標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶離液:テトラヒドロフラン)により測定される。
【0017】
(A)シロキサンコポリマー
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、光により活性化される感光性基を末端に含むシロキサンコポリマー(またはポリシロキサン)を含む。この場合、感光性基は、スルホン化ジアゾキノン系化合物に由来するスルホン化ジアゾキノン基であってもよい。その詳細を以下に示す。
【0018】
シロキサンコポリマー(A)は、シラン化合物および/またはその加水分解物の縮合物を含む。この場合、シラン化合物またはその加水分解物は、一官能性~四官能性シラン化合物であってもよい。
【0019】
その結果、シロキサンコポリマー(A)は、以下のQ、T、D、およびM型から選択されるシロキサン構造単位を含んでもよい。
【0020】
-Q型シロキサン構造単位:例えば4個の加水分解性基を有する四官能性シラン化合物またはシラン化合物の加水分解物から誘導され得る、ケイ素原子と、隣接する4個の酸素原子とを含むシロキサン構造単位。
【0021】
-T型シロキサン構造単位:例えば、3個の加水分解性基を有する三官能性シラン化合物またはシラン化合物の加水分解物から誘導され得る、ケイ素原子と、隣接する3つの酸素原子とを含むシロキサン構造単位。
【0022】
-D型シロキサン構造単位:例えば、2個の加水分解性基を有する二官能性シラン化合物またはシラン化合物の加水分解物から誘導され得る、ケイ素原子と、隣接する2個の酸素原子とを含むシロキサン構造単位(すなわち、線状シロキサン構造単位)。
【0023】
-M型シロキサン構造単位:例えば、1個の加水分解性基を有する一官能性シラン化合物またはシラン化合物の加水分解物から誘導され得る、ケイ素原子と、隣接する1個の酸素原子とを含むシロキサン構造単位。
【0024】
例えば、シロキサンコポリマー(A)は、下記の式1で表される化合物から誘導される構造単位を含んでもよい。例えば、シロキサンコポリマーは、シラン化合物および/またはその加水分解物の縮合物であってもよい。
【0025】
[式2]
(R1)nSi(OR2)4-n
【0026】
前記の式1において、nは、0~3の整数であり、R1は、それぞれ独立して、C1-12アルキル、C2-10アルケニル、C6-15アリール、3~12員ヘテロアルキル、4~10員ヘテロアルケニル、もしくは6~15員ヘテロアリールであり、R2は、それぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アシル、もしくはC6-15アリールであり、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、およびヘテロアリールは、それぞれ独立して、O、N、およびSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する。
【0027】
R1がヘテロ原子を有する構造単位の例としては、エーテル、エステル、およびスルフィドが挙げられる。
【0028】
化合物は、nが0である四官能性シラン化合物、nが1である三官能性シラン化合物、nが2である二官能性シラン化合物、またはnが3である一官能性シラン化合物であってもよい。
【0029】
シラン化合物の特定の例としては、例えば、四官能性シラン化合物として、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラベンジルオキシシラン、およびテトラプロポキシシラン、三官能性シラン化合物として、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、d3-メチルトリメトキシシラン、ノナフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、p-ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]プロピルトリメトキシシラン、[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]プロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、および3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸、二官能性シラン化合物として、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-クロロプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、シクロヘキシルジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、およびジメトキシジ-p-トリルシラン、ならびに一官能性シラン化合物として、トリメチルシラン、トリブチルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、および(3-グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシランを挙げることができる。
【0030】
四官能性シラン化合物の中では、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、およびテトラブトキシシランが好ましく、三官能性シラン化合物の中では、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、およびブチルトリメトキシシランが好ましく、二官能性シラン化合物の中では、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、およびジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0031】
これらのシラン化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記のように、シロキサンコポリマー(A)は、光により活性化される感光性基を末端に含んでもよい。感光性基は、スルホン化ジアゾキノン系化合物に由来するスルホン化ジアゾキノン基であってもよい。具体的には、スルホン化ジアゾキノン基は、スルホン化ジアゾベンゾキノン基またはスルホン化ジアゾナフトキノン基であってもよい。
【0033】
スルホン化ジアゾキノン系化合物は、異なる結合位置(4-、5-、6-)にスルホン基を有する構造異性体、および/または異なる位置に窒素、酸素等を有する構造異性体を含んでいてもよい。例えば、それは
【0034】
【0035】
であってもよい。
【0036】
上記において、R4は、C1-10アルコール、または2~6個のフェノール基を有するバラスト残基であってもよい。その詳細を以下に示す。
【0037】
具体的には、シロキサンコポリマー(A)は、末端に4-ジアゾナフトキノンスルホン酸、5-ジアゾナフトキノンスルホン酸、または6-ジアゾナフトキノンスルホン酸を含有していてもよい。好ましくは、シロキサンコポリマーは、化学的に安定であり、4-ジアゾナフトキノンスルホン酸または5-ジアゾナフトキノンスルホン酸を含有する場合、感光性の点で優れている。
【0038】
スルホン化ジアゾキノン系化合物のいくつかは、紫外線等の光によりカルボキシル基を有する構造に変換されてもよい(下記の反応スキーム1参照)。
【0039】
【0040】
上記反応スキーム1において、R4は上記の通りである。
【0041】
上記反応スキーム1を参照すると、スルホン化ジアゾキノン系化合物は、紫外線によってインデンケテンの構造に転換される。インデンケテン構造が水と反応すると、それは3-インデンカルボン酸の構造に変換され、これはアルカリに可溶である。このような構造変化は、現像時に現像液として使用されるアルカリ水溶液中のシロキサンコポリマー(A)の溶解速度において、露光領域と未露光領域との間に差を生じさせる。
【0042】
具体的には、このような構造変化は、紫外線に露光された領域に存在するスルホン化ジアゾキノン系化合物に由来するスルホン化ジアゾキノン基を含有するシロキサンコポリマー(A)を、アルカリ水溶液に容易に溶解させることができる(すなわち、迅速な溶解)。一方、このような構造変化は未露光領域では起こらないので、シロキサンコポリマーは溶解阻害を示す傾向がある。したがって、シロキサンコポリマー(A)の溶解速度における露光領域と未露光領域との間の差は、ポジ型のパターンを実現できるだけでなく、より優れた膜保持率を得ることができる。すなわち、シラノール基は、硬化膜の形成時に未露光領域のスルホン化ジアゾキノン基で保護され、シロキサンコポリマーの溶解速度を低下させる。これにより、膜保持率および接着性をさらに向上させることができる。さらに、スルホン化ジアゾキノン基は、露光された領域において、紫外線によってカルボキシル基に変換される。これにより、現像工程において、現像液に溶解し易くなり(すなわち、溶解性が向上する)、それにより、感度(またはパターンコントラスト)を維持することができる。
【0043】
上記したような末端にスルホン化ジアゾキノン基を含有するシロキサンコポリマー(A)は、以下の構造を有していてもよい。具体的には、シロキサンコポリマー(A)は、下記式2~4で表される構造単位から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0044】
【0045】
上記式中、Aは、OまたはN2であり、AがOである場合、BはN2であり、AがN2である場合、BはOであり、R3は、C1-12アルキル基、C2-10アルケニル基、C6-15アリール基、3~12員のヘテロアルキル基、4~10員のヘテロアルケニル基、または6~15員のヘテロアリール基であり、R4は、C1-10アルコール、または2~6個のフェノール基を有するバラスト残基である。
【0046】
より具体的には、R4は、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールであってもよい。また、R4は、2~6個のフェノール基、すなわち、フェノール性水酸基を有する、C10-50芳香族基であってもよい。R4は、DQ基またはDNQ基に結合したスルホンおよびエステル基であってもよい。
【0047】
バラスト残基を形成することができる化合物の例としては、
【0048】
【0049】
が挙げられてもよい。
【0050】
具体的には、バラスト残基を形成する化合物は、2個以上、または3個以上のフェノール基を有していてもよい。具体的には、化合物が
【0051】
【0052】
【0053】
である場合、シロキサンコポリマーに結合した後は化学的に安定であり、現像時のパターン形成や現像性の点で有利である。
【0054】
シロキサンコポリマー(A)は、シロキサンコポリマーの構造単位の総モル数に基づいて、前記式2~4の構造単位から選択された少なくとも1種を1~99モル%含んでもよい。上記範囲内であれば、紫外線露光および現像時において膜保持率および感度をさらに向上させることができる。
【0055】
スルホン化ジアゾキノン基は、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザ、X線、電子ビーム等の光源により活性化されてもよい。具体的には、シロキサンコポリマー(A)は、波長帯域が200~500nmの波長365nmに基づき5~200mJ/cm2の照射線量率で光照射されると、アルカリ水溶液中での溶解度が増大され得る。より具体的には、溶解度は、約200~900%、または約200~800%まで増大され得る。
【0056】
さらに、末端にスルホン化ジアゾキノン基を含有するシロキサンコポリマー(A)は、以下の方法により調製されてもよい。具体的には、それは、(1)上記の式1で表される少なくとも2つのシラン化合物を共重合させてシロキサンコポリマーを得ること、(2)スルホン化ジアゾキノン系化合物をシロキサンコポリマーと反応させて、シロキサンコポリマーの末端にスルホン化ジアゾキノン基を導入すること、を含む方法により調製されてもよい。
【0057】
より具体的には、上記工程(1)において、上記式1のシラン化合物の2つ以上を加水分解および/または縮合させて、それらの加水分解物または縮合物を得る。上記式1のシラン化合物の加水分解物または縮合物を得るための条件は、特に限定されない。例えば、式1のシラン化合物は、必要に応じて、エタノール、2-プロパノール、アセトン、酢酸ブチル等の溶媒、および反応に必須の水で希釈し、触媒として酸(例えば、塩酸、酢酸、硝酸等)または塩基(例えば、アンモニア、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム等)を加え、次いで、混合物を攪拌し、加水分解重合反応を完結させることにより、それらの所望の加水分解物または縮合物を得ることができる。
【0058】
前記式1のシラン化合物の加水分解重合によって得られる縮合物(またはシロキサンコポリマー)の重量平均分子量は、500~50,000Da(=g/mole)であることが好ましい。上記範囲内であれば、成膜性、溶解性、現像液中での溶解速度等の点でより好ましい。
【0059】
本明細書にて使用される溶媒または酸もしくは塩基触媒の種類および量は、制限なく、任意に選択され得る。加水分解重合反応は、20℃以下の低温で行われてもよい。しかし、反応は、加熱または還流によって促進されてもよい。必要とされる反応時間は、シランモノマーの種類および濃度、反応温度等によって変化する。このようにして得られた縮合物の分子量が約500~50,000Daになるまで反応を進行させるには通常15分~30日かかる。ただし、反応時間はこの範囲に限定されない。
【0060】
次に、工程(2)において、シロキサンコポリマーとスルホン化ジアゾキノン系化合物とを室温で3時間激しく攪拌して反応させ、スルホン化ジアゾキノン基、具体的には、スルホン化ジアゾベンゾキノン基またはスルホン化ジアゾナフトキノン基をシロキサンコポリマーの末端に導入する。
【0061】
上記工程(2)において、スルホン化ジアゾキノン系化合物は、固形含量に基づくシロキサンコポリマー100重量部に基づき0.1~0.75重量部の範囲の量で使用される。
【0062】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、シロキサンコポリマーの末端にスルホン化ジアゾキノン基を上記の方法で導入し、次いで、シロキサンコポリマーをアクリル系コポリマーと混合することにより調製されてもよい。
【0063】
具体的には、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(a)下記式1で表される2つ以上のシラン化合物を共重合させて、シロキサンコポリマーを得ることと、(b)スルホン化ジアゾキノン系化合物とシロキサンコポリマーを反応させて、シロキサンコポリマーの末端にスルホン化ジアゾキノン基を導入することと、(c)そこへアクリル系コポリマーを添加することと、(d)そこへ溶媒を添加して、次いで、混合物を均一に混合することと、を含む方法により、調製されてもよい。
【0064】
上記工程(a)および(b)は、シロキサンコポリマー(A)の調製方法(すなわち、工程(1)および(2))と同様にして行われてもよい。
【0065】
その後、シロキサンコポリマー(A)とアクリル系コポリマーを混合して反応させるために、アクリル系コポリマーを加える(工程(c))。末端にスルホン化ジアゾキノン基を含むシロキサン系コポリマー(A)は、下部基板との接着力が低い等のアクリル系コポリマーの欠点を補うとともに、感光性樹脂組成物の膜保持率を向上させる働きがある。
【0066】
具体的には、初めに、スルホン化ジアゾキノン系化合物をシロキサンコポリマーと反応させて、シロキサンコポリマーの末端にスルホン化ジアゾキノン基を導入する。次いで、シロキサンコポリマーをアクリル系コポリマーと混合する。
【0067】
シロキサンコポリマー(スルホン化ジアゾキノン基の導入前)とアクリル系コポリマーとの混合物を、スルホン化ジアゾキノン系化合物と混合すると、アクリル系コポリマーに含まれるカルボキシル基とスルホン化ジアゾキノン基に含まれるスルホン化ジアゾキノン基との間の結合は、シロキサンコポリマーのシラノール基とスルホン化ジアゾキノン基との間の水素結合形成反応よりも競合的に起こる。その結果、スルホン化ジアゾキノン基は、シロキサンコポリマーの末端のシラノール基に十分に導入されない。これにより、露光後の現像時に残存するシロキサンコポリマー(スルホン化ジアゾキノン基とシラノール基とが互いに結合していないもの)が速やかに溶解し、それにより、膜保持率が低下し、接着性が損なわれるという問題が生じる。
【0068】
本発明では、これらの問題を解決するために、まず、シロキサンコポリマーをスルホン化ジアゾキノン基と会合させ、次いで、アクリル系コポリマーと混合することにより、未露光領域に存在するシロキサンコポリマーのアルカリ現像液中での溶解速度を低下させることができる。
【0069】
したがって、本発明のシロキサンコポリマー(A)を含む感光性樹脂組成物を塗布した基板を紫外線に露光させると、未露光領域の溶解速度が遅くなる一方、露光領域の溶解速度が速くなる。これにより、基板への膜の保持力が向上するため、接着性や膜保持率を向上させる効果を得ることができる。
【0070】
次に、工程(d)において、溶媒を加え、均一に混合して、感光性樹脂組成物を調製する。
【0071】
溶媒の詳細については後述する。
【0072】
シロキサンコポリマー(A)は、線状シロキサン構造単位(すなわち、D型構造単位)を含んでもよい。この線状シロキサン構造単位は、二官能性シラン化合物、例えば、上記式1でnが2である化合物に由来するものであってもよい。具体的には、シロキサンポリマー(A)は、nが2である上記式1で表される化合物に由来する構造単位を、Si原子モル数に基づいて0.5~50モル%または1~30モル%の量で含んでもよい。上記範囲内であれば、硬化膜がある程度の硬度を保ちながら柔軟な特性を有し、外部応力に対する耐クラック性をより高めることができる。
【0073】
さらに、シロキサンコポリマー(A)は、nが1である上記式1で表されるシラン化合物に由来する構造単位(すなわち、T型構造単位)を含んでもよい。シロキサンコポリマー(A)は、nが1である上記式1で表される化合物に由来する構造単位を、Si原子モル数に基づいて40~85モル%または50~80モル%の量で含んでもよい。上記の範囲内であれば、正確なパターン形状を形成するのにより有利である。
【0074】
また、シロキサンコポリマー(A)は、硬度、感度、および保持率の点から、アリール基を有するシラン化合物に由来する構造単位を含むことが好ましい。例えば、シロキサンコポリマー(A)は、アリール基を有するシラン化合物に由来する構造単位を、Si原子モル数に基づいて30~70モル%または35~50モル%の量で含んでもよい。アリール基を有するシラン化合物に由来する構造単位は、例えば、R1がアリール基である上記式1のシラン化合物、好ましくは、nが1であり、R1がアリール基である上記式1のシラン化合物、具体的には、nが1であり、R1がフェニル基である式1のシラン化合物に由来する構造単位(すなわち、T-フェニル型の構造単位)であってよい。
【0075】
シロキサンコポリマー(A)は、nが0である上記式1で表されるシラン化合物に由来する構造単位(すなわち、Q型構造単位)を含んでもよい。シロキサンコポリマー(A)は、nが0である上記式1で表される化合物に由来する構造単位を、Si原子モル数に基づいて10~40モル%または15~35モル%の量で含んでもよい。上記範囲内であれば、感光性樹脂組成物は、パターン形成時にアルカリ水溶液中でのその溶解性を適度なレベルに保つことができる。これにより、組成物の溶解性の低下、または溶解性の大幅な上昇に起因する不具合を防止することができる。
【0076】
ここで、本明細書で使用される「Si原子モル数に基づくモル%」という用語は、シロキサンポリマーを構成する全構造単位中に含まれるSi原子の全モル数に対して、特定の構造単位に含まれるSi原子のモル数のパーセンテージを意味する。
【0077】
シロキサンコポリマー(A)中のシロキサン単位のモル量は、Si-NMR、1H-NMR、13C-NMR、IR、TOF-MS、元素分析、灰分測定等を組み合わせて測定されてもよい。例えば、フェニル基を有するシロキサン単位のモル量を測定するために、シロキサンポリマー全体に対してSi-NMR分析を行う。次に、フェニル結合Siピーク面積およびフェニル非結合Siピーク面積の分析が行われる。モル量は、ピーク面積の比から得られる。
【0078】
シロキサンコポリマー(A)は、溶媒を除く固形含量に基づく組成物の全重量に基づき、50~90重量%、好ましくは、20~80重量%の範囲の量で使用されてもよい。
【0079】
(B)アクリル系コポリマー
本発明によるポジ型感光性樹脂組成物は、アクリル系コポリマー(B)を含んでいてもよい。
【0080】
アクリル系コポリマー(B)は、(b-1)エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸無水物、またはそれらの組み合わせに由来する構造単位と、(b-2)エポキシ基を含有する不飽和化合物に由来する構造単位と、ならびに(b-3)構造単位(b-1)および(b-2)とは異なるエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位と、を含有してもよい。
【0081】
アクリル系コポリマー(B)は、現像工程において現像性を発現させるためのアルカリ可溶性樹脂であり、塗布時に膜を形成するための基盤および最終パターンを形成するための構造の役割も果たす。
【0082】
(b-1)エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸無水物、またはそれらの組み合わせに由来する構造単位
構造単位(b-1)は、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸無水物、またはそれらの組み合わせに由来する。エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸無水物、またはそれらの組み合わせは、分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を含有する重合性不飽和化合物である。それは、不飽和モノカルボン酸、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α-クロロアクリル酸、および桂皮酸;不飽和ジカルボン酸、およびその無水物、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、およびメサコン酸;3価以上の不飽和ポリカルボン酸、およびその無水物;ならびに2価以上のポリカルボン酸のモノ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]エステル、例えば、モノ[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]スクシネート、モノ[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]フタレート、から選択される少なくとも1つであってもよい。しかし、これらに限定されるものではない。上記の中では、(メタ)アクリル酸が、現像性の観点から好ましい。
【0083】
構造単位(b-1)の量は、アクリル系コポリマー(B)を構成する構造単位の合計モルに基づいて、5~50モル%、好ましくは、10~40モル%であってもよい。上記範囲内であれば、好ましい現像性を維持しつつ、膜のパターン形成を達成することができる。
【0084】
(b-2)エポキシ基含有不飽和化合物に由来する構造単位
構造単位(b-2)は、エポキシ基を含有する不飽和モノマーに由来する。エポキシ基を含有する不飽和モノマーの特定の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、4,5-エポキシペンチル(メタ)アクリレート、5,6-エポキシヘキシル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロペンチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジルアクリレート、α-n-プロピルグリシジルアクリレート、α-n-ブチルグリシジルアクリレート、N-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルベンジル)アクリルアミド、N-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルフェニルプロピル)アクリルアミド、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、およびそれらの組み合わせが挙げられる。室温での貯蔵安定性、および溶解性の観点から、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、またはそれらの混合物が好ましい。
【0085】
エポキシ基を含有する不飽和化合物に由来する構造単位(b-2)の量は、アクリル系コポリマー(B)を構成する構造単位の合計モルに基づいて、1~45モル%、好ましくは、3~30モル%であってもよい。上記範囲内であれば、組成物の貯蔵安定性が維持され、ポストベーク時の膜保持率が有利にも向上し得る。
【0086】
(b-3)構造単位(b-1)および(b-2)とは異なるエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位
構造単位(b-3)は、構造単位(b-1)および(b-2)とは異なるエチレン性不飽和化合物に由来する。構造単位(b-1)および(b-2)とは異なるエチレン性不飽和化合物は、芳香族環を有するエチレン性不飽和化合物、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、プロポキシスチレン、p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、アセチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ビニルフェノール、o-ビニルベンジルメチルエーテル、m-ビニルベンジルメチルエーテル、およびp-ビニルベンジルメチルエーテル;不飽和カルボン酸エステル、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、メチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、エチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、プロピルα-ヒドロキシメチルアクリレート、ブチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、4,5-エポキシペンチル(メタ)アクリレート、5,6-エポキシへキシル(メタ)アクリレート、および6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート;N-ビニル基を含有するN-ビニル三級アミン、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、およびN-ビニルモルホリン;不飽和エーテル、例えば、ビニルメチルエーテル、およびビニルエチルエーテル;ならびに不飽和イミド、例えば、N-フェニルマレイミド、N-(4-クロロフェニル)マレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、およびN-シクロヘキシルマレイミドからなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
【0087】
構造単位(b-3)の量は、アクリル系コポリマー(B)を構成する構造単位の全モル数に対して、5~70モル%、好ましくは、15~65モル%であってもよい。上記範囲内であれば、アクリル系コポリマー(すなわち、アルカリ可溶性樹脂)の反応性を制御し、アルカリ水溶液中でのその溶解性を高めることができ、その結果、感光性樹脂組成物の適用性を著しく向上させることができる。
【0088】
アクリル系コポリマー(B)は、構造単位(b-1)、(b-2)、および(b-3)を与える化合物の各々を調合し、分子量調節剤、重合開始剤、溶媒等を加えた後、窒素を投入して、重合のために混合物をゆっくりと攪拌することにより、調製されてもよい。
【0089】
分子量調節剤は特に限定されない。それは、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン等のメルカプタン化合物、またはα-メチルスチレンダイマーであってもよい。
【0090】
重合開始剤は特に限定されない。それは、アゾ化合物、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、および2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル);過酸化ベンゾイル;過酸化ラウリル;t-ブチルペルオキシピバレート;または1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンであってもよい。重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
また、溶媒は、アクリル系コポリマー(B)の調製に通常用いられる溶媒であってもよい。それは、好ましくは、メチル3-メトキシプロピオネート、またはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)であり得る。
【0092】
特に、重合反応中の反応条件をより穏やかに保ちながら反応時間を長く保つことにより、未反応モノマーの残存量を低減することができる。
【0093】
反応条件および反応時間は特に限定されない。例えば、反応温度は、従来の温度よりも低い温度、例えば、室温~60℃、または室温~65℃に調整してもよい。次いで、十分な反応が起こるまで反応時間を維持する。
【0094】
上記方法によりアクリル系コポリマー(B)が調製される場合、アクリル系コポリマー(B)中の未反応モノマーの残存量を極めて微量に低減することができる。
【0095】
ここで、本明細書で用いられるアクリル系コポリマー(B)の「未反応モノマー(または残留モノマー)」という用語は、アクリル系コポリマー(B)の構造単位(b-1)~(b-3)の提供を目的としているが、反応に関与しない(すなわち、コポリマーの鎖を形成しない)化合物(すなわち、モノマー)の量を意味する。
【0096】
具体的には、本発明の感光性樹脂組成物中に残存するアクリル系コポリマー(B)の未反応モノマーの量は、コポリマー100重量部に対して(固形含量に基づく)、2重量部以下、好ましくは、1重量部以下であってもよい。
【0097】
ここで、固形含量という用語は、溶媒を除く組成物の量を意味する。
【0098】
このようにして調製されたコポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準を参照とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(溶離液:テトラヒドロフラン)で測定した場合、500~50,000Da、好ましくは、3,000~30,000Daの範囲であってもよい。上記範囲内であれば、基板との接着性が優良であり、物理的、化学的特性が良好であり、粘度が適正である。
【0099】
アクリル系コポリマー(B)は、溶媒を除く固形含量に基づく組成物の全重量に基づき、1~90重量%、好ましくは、10~70重量%の範囲の量で使用されてもよい。
【0100】
シロキサンコポリマー(A)は、シロキサンコポリマー(A)およびアクリル系コポリマー(B)の全重量に基づき、10~99重量%、好ましくは、30~85重量%の範囲の量で使用されてもよい。上記範囲内であれば、現像性が適切に調整されるので、膜形成やパターン解像性に優れるという利点がある。
【0101】
(C)溶媒
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、上記成分を溶媒に混合した液状組成物の形態で調製されてもよい。溶媒は、例えば、有機溶媒であってもよい。
【0102】
本発明によるポジ型感光性樹脂組成物における溶媒の量は特に限定されない。例えば、固形含量が組成物の全重量に基づいて10~70重量%、または15~60重量%となるように、溶媒が使用されてもよい。
【0103】
固形含量という用語は、溶媒を除く、組成物を構成する成分を意味する。溶媒の量が上記範囲内であれば、組成物の塗布が容易になり、その流動性を適切なレベルに維持することができる。
【0104】
本発明の溶媒は、上記成分を溶解し、化学的に安定であれば特に限定されない。例えば、溶媒は、アルコール、エーテル、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート、芳香族炭化水素、ケトン、エステル等であってもよい。
【0105】
溶媒の特定の例としては、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルアセトアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、エチル2-ヒドロキシプロピオネート、エチル2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオネート、エチルエトキシアセテート、エチルヒドロキシアセテート、メチル2-ヒドロキシ-3-メチルブタノエート、メチル2-メトキシプロピオネート、メチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-エトキシプロピオネート、メチル3-エトキシプロピオネート、メチルピルベート、エチルピルベート、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチルラクテート、ブチルラクテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0106】
上記の中では、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、ケトン等が好ましい。特に、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、メチル2-メトキシプロピオネート、γ-ブチロラクトン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等が好ましい。
【0107】
上記溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
(D)1,2-キノンジアジド系化合物
本発明によるポジ型感光性樹脂組成物は、1,2-キノンジアジド系化合物(D)をさらに含んでいてもよい。
【0109】
1,2-キノンジアジド系化合物は、シロキサンコポリマー(A)と併用することにより、硬化膜のパターン形成性および透明性をさらに向上させるため、必要に応じて、1,2-キノンジアジド系化合物が使用されてもよい。
【0110】
1,2-キノンジアジド系化合物は、フォトレジスト分野で感光剤として用いられる化合物であってもよい。
【0111】
1,2-キノンジアジド系化合物の例としては、フェノール化合物と1,2-ベンゾキノンジアジド-4-スルホン酸または1,2-ベンゾキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステル;フェノール化合物と1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸または1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステル;水酸基がアミノ基で置換されたフェノール化合物と1,2-ベンゾキノンジアジド-4-スルホン酸または1,2-ベンゾキノンジアジド-5-スルホン酸とのスルホンアミド;水酸基がアミノ基で置換されたフェノール化合物と1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸または1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸とのスルホンアミド、が挙げられる。上記化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0112】
フェノール化合物の例としては、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(p-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリ(p-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3-トリス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルプロパン、4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、ビス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインデン-5,6,7,5’,6’,7’-ヘキサノール、2,2,4-トリメチル-7,2’,4’-トリヒドロキシフラバン等が挙げられる。
【0113】
1,2-キノンジアジド系化合物のより具体的な例としては、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸のエステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸のエステル、4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸とのエステル、4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸のエステル等が挙げられる。
【0114】
上記化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
上記で例示された好ましい化合物が用いられると、感光性樹脂組成物の透明性がさらに向上され得る。
【0116】
1,2-キノンジアジド系化合物(D)は、固形含量に基づくシロキサンコポリマー(A)の100重量部に基づき、2~30重量部、好ましくは、2~20重量部の範囲の量で使用されてもよい。上記範囲内であれば、パターンがより容易に形成されやすくなり、パターン形成時に塗膜の表面が粗くなるという欠陥、および現像時にパターンの底部にスカムが生じるという欠陥を抑制することができる。
【0117】
(E)エポキシ化合物
本発明に従うポジ型感光性樹脂組成物は、シロキサンコポリマー(A)とともに、エポキシ化合物をさらに含んでもよい。エポキシ化合物は、樹脂組成物の内部密度を高め、それから形成される硬化膜の耐薬品性を向上させ得る。
【0118】
エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を含有する不飽和モノマーのホモオリゴマーまたはヘテロオリゴマーであってもよい。
【0119】
少なくとも1個のエポキシ基を含有する不飽和モノマーの例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、4,5-エポキシペンチル(メタ)アクリレート、5,6-エポキシヘキシル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロペンチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジルアクリレート、α-n-プロピルグリシジルアクリレート、α-n-ブチルグリシジルアクリレート、N-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルベンジル)アクリルアミド、N-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルフェニルプロピル)アクリルアミド、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、グリシジルメタクリレートが用いられてもよい。
【0120】
エポキシ化合物は、当該技術分野において周知の任意の従来の方法によって合成することができる。
【0121】
市販のエポキシ化合物の例としては、GHP03(グリシジルメタクリレートホモポリマー、Miwon Commercial Co.,Ltd.)が挙げられる。
【0122】
エポキシ化合物(E)は、下記構造単位をさらに含んでいてもよい。
【0123】
それらの特定の例は、スチレン;アルキル置換基を有するスチレン、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、およびオクチルスチレン;ハロゲンを有するスチレン、例えば、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、およびヨードスチレン;アルコキシ置換基を有するスチレン、例えば、メトキシスチレン、エトキシスチレン、およびプロポキシスチレン;p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、アセチルスチレン;芳香族環を有するエチレン性不飽和化合物、例えば、ジビニルベンゼン、ビニルフェノール、o-ビニルベンジルメチルエーテル、m-ビニルベンジルメチルエーテル、およびp-ビニルベンジルメチルエーテル;不飽和カルボン酸エステル、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、メチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、エチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、プロピルα-ヒドロキシメチルアクリレート、ブチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、およびジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート;N-ビニル基を有する三級アミン、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、およびN-ビニルモルホリン;不飽和エーテル、例えば、ビニルメチルエーテル、およびビニルエチルエーテル;不飽和イミド、例えば、N-フェニルマレイミド、N-(4-クロロフェニル)マレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、およびN-シクロヘキシルマレイミド、に由来する任意の構造単位を含んでもよい。上記に例示された化合物に由来する構造単位は、エポキシ化合物(E)中に、単独でまたはその2種以上の組み合わせとして、含有されてもよい。
【0124】
具体的には、上記の中では、重合性の観点から、スチレン系化合物が好ましい。
【0125】
特に、耐薬品性の観点から、エポキシ化合物(E)は、上記のもののうちカルボキシル基を含有するモノマーに由来する構造単位を用いないことにより、カルボキシル基を含まないことがより好ましい。
【0126】
構造単位は、エポキシ化合物(E)を構成する構造単位の総モル数に対して、0~70モル%、好ましくは、10~60モル%の量で含まれていてもよい。上記範囲内であれば、それは、膜強度の点で、より有利であり得る。
【0127】
好ましくは、エポキシ化合物(E)の重量平均分子量は、100~30,000Daの範囲であってもよい。より好ましくは、その重量平均分子量は1,000~15,000Daの範囲であってもよい。エポキシ化合物の重量平均分子量が100Da以上であると、硬化膜はより優れた硬度を有し得る。また、エポキシ化合物の重量平均分子量が30,000Da以下であれば、硬化膜の厚さが均一になり、それらは膜上にある任意の段差を平坦化するのに適している。
【0128】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、エポキシ化合物(E)は、固形含量に基づくシロキサンコポリマー(A)の100重量部に基づいて、0~40重量部、好ましくは、5~25重量部の範囲の量で用いられてもよい。上記範囲内であれば、感光性樹脂組成物の耐薬品性および感度がより好まししいものとなり得る。
【0129】
(F)シラン化合物
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、下記の式5で表される少なくとも1つのシラン化合物、特に、T型および/またはQ型のシランモノマーを含んでもよく、それにより、シロキサンコポリマー中の反応性の高いシラノール基(Si-OH)の含有量を低減することにより、エポキシオリゴマー等のエポキシ化合物を伴う、プロセス後処理の際の耐薬品性を改善し得る。
【0130】
[式5]
(R5)nSi(OR6)4-n
【0131】
上記式5において、nは、0~3の整数であり、R5は、それぞれ独立して、C1-12アルキル、C2-10アルケニル、C6-15アリール、3~12員ヘテロアルキル、4~10員ヘテロアルケニル、もしくは6~15員ヘテロアリールであり、R6は、それぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アシル、もしくはC6-15アリールであり、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、およびヘテロアリールは、それぞれ独立して、O、N、およびSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する。
【0132】
R5がヘテロ原子を有する構造単位の例としては、エーテル、エステル、およびスルフィドが挙げられる。
【0133】
化合物は、nが0である四官能性シラン化合物、nが1である三官能性シラン化合物、nが2である二官能性シラン化合物、またはnが3である一官能性シラン化合物であってもよい。
【0134】
シラン化合物の特定の例としては、例えば、四官能性シラン化合物として、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラベンジルオキシシラン、およびテトラプロポキシシラン、三官能性シラン化合物として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、d3-メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、p-ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]プロピルトリメトキシシラン、[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]プロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、および3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸、二官能性シラン化合物として、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、シクロヘキシルジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、およびジメトキシジ-p-トリルシラン、ならびに一官能性シラン化合物として、トリメチルシラン、トリブチルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、および(3-グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシランを挙げることができる。
【0135】
四官能性シラン化合物の中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、およびテトラブトキシシランが好ましく、三官能性シラン化合物の中でも、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランおよび2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが好ましく、二官能性シラン化合物の中でも、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、およびジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0136】
これらのシラン化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0137】
シラン化合物(F)は、固形含量に基づくシロキサンコポリマー(A)の100重量部に基づき、0~20重量部、好ましくは、4~12重量部の範囲の量で使用されてもよい。上記範囲内であれば、硬化膜の耐薬品性をより向上させることができる。
【0138】
(G)界面活性剤
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、必要に応じて、その塗布性を向上させるために界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
【0139】
界面活性剤の種類は特に限定されない。それらの例としては、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0140】
界面活性剤(G)の具体例としては、フッ素系およびシリコン系の界面活性剤、例えば、Dow Corning Toray Co.,Ltd.によって提供されるFZ-2122、BM CHEMIE Co.,Ltd.によって提供されるBM-1000およびBM-1100、Dai Nippon Ink Chemical Kogyo Co.,Ltd.によって提供されるMegapack F-142 D、F-172、F-173、およびF-183、Sumitomo 3M Ltd.によって提供されるFlorad FC-135、FC-170C、FC-430、およびFC-431、Asahi Glass Co.,Ltd.によって提供されるSufron S-112、S-113、S-131、S-141、S-145、S-382、SC-101、SC-102、SC-103、SC-104、SC-105、およびSC-106、Shinakida Kasei Co.,Ltd.によって提供されるEftop EF301、EF303、およびEF352、Toray Silicon Co.,Ltd.によって提供されるSH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428、DC-57、およびDC-190;非イオン系界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等を含む、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等を含む、ポリオキシエチレンアリールエーテル;ならびにポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート等を含む、ポリオキシエチレンジアルキルエステル;ならびにオルガノシロキサンポリマーKP341(Shin-Etsu Chemical Co.,Ltd.製)、(メタ)アクリレート系コポリマーPolyflow No.57および95(Kyoei Yuji Chemical Co.,Ltd.製)等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0141】
界面活性剤(G)は、固形含量に基づくシロキサンコポリマー(A)の100重量部に基づき、0.001~5重量部、好ましくは、0.05~2重量部の範囲の量で使用されてもよい。上記量の範囲内で、組成物のコーティングを容易に実施することができる。
【0142】
(H)接着補助剤
本発明の感光性樹脂組成物は、基板との接着性を向上させるための接着補助剤をさらに含んでもよい。
【0143】
接着補助剤は、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つの反応基を有してもよい。
【0144】
接着補助剤の種類は特に限定されない。それは、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、およびβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。膜保持率を向上させることができ、基板との接着性に優れた、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、またはN-フェニルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0145】
接着補助剤(H)は、固形含量に基づくシロキサンコポリマー(A)の100重量部に基づき、0~5重量部、好ましくは、0.001~2重量部の範囲の量で使用されてもよい。上記範囲内であれば、基板との接着性をより向上させることができる。
【0146】
上記以外にも、本発明の感光性樹脂組成物には、組成物の物性に悪影響を及ぼさない範囲で他の添加成分が含まれていてもよい。
【0147】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物として使用することができる。
【0148】
特に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、光により活性化される感光性基として末端にスルホン化ジアゾキノン基を含むシロキサンコポリマーを含む。シラノール基は、硬化膜の形成時に未露光領域のスルホン化ジアゾキノン基で保護され、シロキサンコポリマーの溶解速度を低下させる。これにより、膜保持率および接着性をさらに向上させることができる。さらに、スルホン化ジアゾキノン基は、露光された領域において、紫外線によってカルボキシル基に変換される。このため、シロキサンコポリマーは、現像工程において現像液に溶解しやすくなる(溶解性が向上する)。これにより、感度を向上させることができる。すなわち、スルホン化ジアゾキノン基で安定化されたシラノール基を含有するシロキサンコポリマー(A)を用いるため、シロキサンコポリマー(A)のアルカリ溶液中での溶解性が光により向上する。これにより、膜保持率および接着性を良好に保つことができる。
【0149】
本発明は、感光性樹脂組成物から形成された硬化膜を提供する。
【0150】
硬化膜の形成方法としては、公知の方法、例えば、感光性樹脂組成物を基板に塗布して硬化させる方法等が挙げられる。
【0151】
より具体的には、硬化工程において、基板上に塗布された感光性樹脂組成物を、例えば、60~130℃の温度でプリベークし、溶媒を除去し、次いで、所望のパターンを有するフォトマスクを用いて露光し、現像液、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液を用いて現像して、被膜層上にパターンを形成する。その後、必要に応じて、パターン形成された塗布層を、例えば、150~300℃の温度で10分~5時間のポストベークを行い、所望の硬化膜を調製する。露光は、波長帯域が200~500nmの波長365nmに基づき10~200mJ/cm2の照射線量率で実施されてもよい。本発明の方法によれば、プロセスの観点から所望のパターンを容易に形成することができる。
【0152】
感光性組成物の基板上への塗布は、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケータ法等により、所望の厚さ、例えば、2~25μmの厚さで実施されてもよい。また、露光(照射)に用いる光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザ等を使用することができる。また、必要に応じて、X線や電子線等を用いてもよい。
【0153】
本発明の感光性樹脂組成物は、耐熱性、透明性、誘電率、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性の点で優れた硬化膜を形成することができる。したがって、このようにして調製された本発明の硬化膜は、硬化膜を熱処理したり、溶媒、酸、アルカリ等に浸漬したり、接触させたりする場合に、表面粗さのない優れた光線透過率を有する。したがって、硬化膜は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイのTFT基板の平坦化膜として、有機ELディスプレイの仕切り壁として、半導体装置の層間絶縁膜として、光導波路のコア材またはクラッド材等として、有利に使用することができる。また、本発明は、硬化膜を保護膜として含む電子部品を提供する。
【0154】
以下、下記実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。但し、これらの実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0155】
以下の合成例において、重量平均分子量は、ポリスチレン標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0156】
合成例1:ジアゾキノン基含有シロキサンポリマー(A-1)の合成
工程1:シロキサンポリマーI
還流凝縮器を備えた反応器に、40重量%のフェニルトリメトキシシラン、15重量%のメチルトリメトキシシラン、20重量%のテトラエトキシシラン、および20重量%の純水を仕込んだ。これに、5重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、Chemtronics)を添加し、次いで、混合物の全重量に基づき0.1重量%のシュウ酸触媒の存在下、7時間還流下で混合物を攪拌し、次いで、それを冷却した。その後、得られた混合物をPGMEAで希釈し、得られた固形含量は40重量%であった。その結果、約5,000~8,000Daの重量平均分子量を有するシロキサンポリマーIが合成された。
【0157】
工程2:シロキサンポリマーII
還流凝縮器を備えた反応器に、20重量%のフェニルトリメトキシシラン、30重量%のメチルトリメトキシシラン、20重量%のテトラエトキシシラン、および15重量%の純水を仕込んだ。これに、15%重量%のPGMEAを添加し、次いで、混合物の全重量に基づき0.1重量%のシュウ酸触媒の存在下、6時間還流下で混合物を攪拌し、次いで、それを冷却した。その後、得られた混合物をPGMEAで希釈し、得られた固形含量は30重量%であった。その結果、約8,000~13,000Daの重量平均分子量を有するシロキサンポリマーIIが合成された。
【0158】
工程3:ジアゾキノン基含有シロキサンコポリマー(A-1)
上記工程1および2で合成されたシロキサンポリマーIおよびIIを、同じ固形含量(30重量%)で混合した。次に、そこへ、スルホン化ジアゾキノン系化合物として、シロキサンポリマーIおよびIIの混合物の全固形含量に基づき0.38重量%のTPA-523(Miwon Commercial Co.,Ltd.)を添加し、次いで、混合物を3時間攪拌し、末端にスルホン化ジアゾキノン基、具体的には、スルホン化ジアゾナフトキノン基を含有するシロキサンコポリマー(A-1)が合成された。
【0159】
合成例2~16:ジアゾキノン基含有シロキサンコポリマー(A-2~A-16)の合成
シロキサンポリマーIおよびIIの混合物の全固形含量に基づくスルホン化ジアゾキノン系化合物の固形含量を、以下の表2に示されるように変更したことを除き、合成例1と同様にして、ジアゾキノン基を含有するシロキサンコポリマーを調製した。
【0160】
合成例17:ジアゾキノン基不含シロキサンコポリマーの合成
シロキサンコポリマーIの調製についての合成例1の工程1と同様にして、ジアゾキノン基を含まないシロキサンコポリマーを調製した。
【0161】
合成例18:アクリル系コポリマー(B)の合成
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、溶媒として200重量部のPGMEAを仕込み、溶媒をゆっくりと攪拌しながら、溶媒の温度を70℃まで昇温した。次に、そこへ、20.3重量部のスチレン、16.5重量部のメタクリレート、20.8重量部のグリシジルメタクリレート、30.6重量部のメチルメタクリレート、および11.8重量部のメタクリル酸を加え、次いで、ラジカル重合開始剤として、3重量部の2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を5時間かけて滴下して加え、重合反応を行った。その後、得られた混合物をPGMEAで希釈し、得られた固形含量は32重量%であった。その結果、約9,000~11,000Daの重量平均分子量を有するアクリル系コポリマーが合成された。
【0162】
合成例18:エポキシ化合物の合成
冷却管を備えた三つ口フラスコを、自動温度調節器を備えた撹拌機の上に置いた。このフラスコにグリシジルメタクリレート(100モル%)からなるモノマー100重量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)10重量部、PGMEA100重量部を仕込み、フラスコに窒素を充填する。その後、溶液をゆっくりと撹拌しながら、溶液の温度を80℃まで昇温し、この温度を5時間保持した。その後、得られた混合物をPGMEAで希釈し、得られた固形含量は20重量%であった。その結果、約6,000~10,000Daの重量平均分子量を有するエポキシ化合物が合成された。
【0163】
実施例および比較例:感光性樹脂組成物の調製
上記合成例で調製された化合物を用いて、以下の実施例および比較例の感光性樹脂組成物を調製した。
【0164】
以下の実施例および比較例で用いた成分は以下の通りである。
【0165】
【0166】
実施例1
6.938gの合成例3のシロキサンコポリマー(A-1)、15.1815gの合成例18のアクリル系コポリマー(B)、1.5705gの合成例19のエポキシ化合物(E)、1.25gのシラン化合物(F)、および0.06gの界面活性剤(G)を均一に混合した。この場合、各含量は、溶媒を除いた固形含量に基づくものである。混合物をPGMEAに溶解し、得られた混合物の固形含量は25重量%であった。この溶液を3時間撹拌し、孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、25重量%の固形含量を有する組成物溶液を得た。
【0167】
実施例2~18および比較例1~5
以下の表2に示されるように各成分の種類および/または含量を変更した以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物の各々を調製した。
【0168】
【0169】
試験例1:感度評価
実施例および比較例で調製された樹脂組成物の各々を、スピンコートにより、ガラス基板上に塗布した。その後、塗布した基板を100℃で保持したホットプレート上で90秒間プリベークを行い、乾燥膜を形成した。乾燥膜を、マスクと基板との間の隙間が25μmである、1μm~30μmのサイズ範囲の正方形の孔を有するマスクを介して、波長200nm~450nmの光を照射するアライナー(型名:MA6)を用いて、365nmの波長に基づく、0~200mJ/cm2の照射線量率で、一定時間露光した(すなわち、漂白工程)。次いで、それを、2.38重量%のTMAHの水溶液である現像液を用いて、パドルノズルを介して23℃で、60秒間現像した。このようにして得られた露光膜を230℃の対流式オーブンで30分間加熱して、厚さ2μmを有する硬化膜を調製した。上記手順で10μmのマスクサイズにつき形成された孔パターンについて、10μmの限界寸法(CD、単位:μm)を得るための露光エネルギー量を測定した。値(mJ/cm2)が小さいほど、感度が良い。
【0170】
試験例2:膜保持率の評価
実施例および比較例で調製された樹脂組成物の各々を、スピンコートにより、ガラス基板上に塗布した。その後、塗布した基板を100℃で保持したホットプレート上で90秒間プリベークを行い、乾燥膜を形成した。次いで、乾燥膜を、2.38重量%のTMAHの水溶液である現像液を用いて、パドルノズルを介して23℃で、60秒間現像した。次いで、波長200nm~450nmの光を照射するアライナー(型名:MA6)を用いて、波長365nmに基づく照射線量率200mJ/cm2で一定時間それを露光した(すなわち、漂白工程)。その後、得られた露光膜を230℃の対流式オーブンで30分間加熱し、厚さ2μmの硬化膜を調製した。膜保持率(%)は、測定装置(SNU Precision)を用いて、プリベーク後の膜厚に対するポストベーク後の膜厚のパーセントによる割合を算出することによって、以下の等式1から得た。数値が高いほど、膜保持率が良好である。具体的には、膜保持率が50%以上であれば、良好と評価した。それが70%以上であれば、優良と評価した。
[等式1]
膜保持率(%)=(ポストベーク後の膜厚/プリベーク後の膜厚)×100
【0171】
試験例3:接着性の評価
実施例および比較例で調製された樹脂組成物の各々を、スピンコートにより、ガラス基板上に塗布した。その後、塗布した基板を100℃で保持したホットプレート上で90秒間プリベークを行い、乾燥膜を形成した。1μm間隔の、1μm~30μmの6ラインの各パターンを塗布したものを有するフォトマスクを用いたことを除き、実施例1と同様にして硬化膜を得た。次に、窒化シリコン基板上の1~30μmのラインパターンに残存する最小のラインパターンの程度を顕微鏡で観察した。顕微鏡観察では、ラインパターンをマスクで剥離した後に残った最低のCDサイズのパターンを現像接着性として評価した。最小残留パターンサイズが小さいほど、現像接着性が良好である。具体的には、最小残存パターンサイズが4μm以下であれば、◎とした。5μm以上8μm未満の場合は○とした。8μm以上であれば×印をつけた。
【0172】
試験例4:透過率の評価
上記試験例2と同様にして、各硬化フィルムを得た。UV可視スペクトロメーター(Cary100、Agilent Korea)を用いて、厚さ2μmのポストベーク膜の波長400nmにおける透過率を測定した。波長400nmにおける値が高いほど、透過率が良好である。具体的には、80%以上であれば良好と評価した。85%以上であれば優良と評価した。
【0173】
試験例5:耐薬品性の評価
上記試験例2と同様にして、各硬化膜を得た。非接触型膜厚測定装置(SNU Precision)を用いて、硬化膜の初期厚(T1)を測定した。次に、50℃に保たれた恒温槽に、剥離用薬品(商品名:TOK-106)を入れた。硬化膜を3分間、剥離用薬品に浸漬した。硬化膜を脱イオン水(超純水)で洗浄し、残留物を空気で除去した。次に、膜厚(T2)を測定した。
【0174】
この測定値から下記等式2により(すなわち、耐薬品性の評価試験時の膨潤厚さの算出)、耐薬品性を算出した。このような場合、耐薬品性の評価試験後の厚みの変化(%)が105%以下であれば、耐薬品性は良好と評価された。103%以下であれば優良と評価した。
【0175】
[等式2]
耐薬品性の評価試験後の膨潤厚さの変化(%)=剥離用薬品中に浸漬時の膜厚(T2)-剥離用薬品に浸漬前の膜厚(T1)
【0176】
試験例6:硬化膜の外観評価
上記試験例2と同様にして硬化膜を得た。硬化膜の表面を肉眼で観察した。
【0177】
【0178】
上記表3に示されるように、本発明の範囲内にある実施例の組成物は、全体的に感度、接着性、および膜保持率に優れていた。対照的に、本発明の範囲内にはない比較例の組成物は、これらの特性の少なくとも1つが不利であることを示した。