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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20230324BHJP
   A61B 8/12 20060101ALI20230324BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20230324BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
A61B1/00 715
A61B1/00 530
A61B1/00 716
A61B8/12
G02B23/24 B
G02B23/26 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019008575
(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公開番号】P2020116044
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦塚 正博
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/208218(WO,A1)
【文献】特開2006-145991(JP,A)
【文献】特開平11-332867(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003242(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
A61B 8/00 - 8/15
G02B 23/24 -23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入される挿入部を備えた内視鏡であって、
前記挿入部は、
当該挿入部の延在方向に沿って直線状に貫通した貫通孔を有する硬性部材と、
当該挿入部の延在方向に沿って延在した第1延在部、及び当該第1延在部の先端から当該挿入部の延在方向に交差する方向に延在した第2延在部を有する少なくとも一つの曲げ構造体と、
前記曲げ構造体を保持した状態で、前記硬性部材の基端から先端に向かって前記貫通孔に挿入され、前記第2延在部の先端側を当該貫通孔から外部に露出させる保持部材とを備え
前記第1延在部の少なくとも一部と前記第2延在部とは、
前記貫通孔内に位置する
ことを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記曲げ構造体は、
被写体像を取り込んで撮像する観察光学部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記曲げ構造体は、
被写体に照明光を照射する照明光学部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記曲げ構造体は、
被写体像を取り込んで撮像する観察光学部材と、
被写体に照明光を照射する照明光学部材とによって構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記曲げ構造体は、
3つ以上、設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記硬性部材における外面の先端側には、
前記挿入部の延在方向に対して傾斜し、先端に向かうにしたがって当該硬性部材を先細形状とする第1傾斜面が設けられ、
前記貫通孔は、
前記硬性部材の基端から前記第1傾斜面まで貫通し、
前記保持部材は、
前記挿入部の延在方向に対して傾斜した第2傾斜面が設けられた傾斜部を備え、
前記第2延在部の先端側は、
前記傾斜部を貫通して、前記貫通孔から外部に露出する
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記保持部材は、
前記第2延在部を保持する
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記保持部材の少なくとも一部は、
前記第1延在部及び前記第2延在部で囲まれる空間に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項9】
前記第2延在部の先端側は、
前記保持部材を貫通して、前記貫通孔から外部に露出し、
前記保持部材の外面と前記貫通孔の内面との間は、
シール部材によって封止されている
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項10】
前記挿入部は、
前記硬性部材よりも基端側に設けられた被覆部材をさらに備え、
前記硬性部材及び前記保持部材は、
固定具によって互いに固定され、
前記固定具は、
前記被覆部材によって覆われる
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項11】
前記挿入部は、
前記硬性部材よりも先端側に設けられ、入力した電気信号に応じて超音波を出射するとともに外部から入射した超音波を電気信号に変換する超音波プローブをさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項12】
前記保持部材は、
前記挿入部の延在方向に沿って延在した第1部分と、前記第2延在部の延在方向に対して略垂直方向に延在する第2部分と、により略L字形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柔軟で細長い挿入部を人等の被検体内に挿入し、当該被検体内を観察する内視鏡が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の内視鏡(超音波内視鏡)では、挿入部は、基端から先端まで貫通した貫通孔を有する硬性部材(先端部本体)と、当該貫通孔の内部に配設された曲げ構造体(照明用ライトガイド)とを備える。
ここで、曲げ構造体は、挿入部の延在方向に沿って延在した第1延在部と、当該第1延在部の先端から当該挿入部の延在方向に交差する方向に延在した第2延在部とを有する。
そして、曲げ構造体は、硬性部材に対して、以下に示すように組み立てられる。
すなわち、作業者は、硬性部材の基端から先端に向かって貫通孔に曲げ構造体を挿入した後、第2延在部の延在方向(挿入部の延在方向に対して交差した斜め方向)に沿って曲げ構造体を移動させる。なお、硬性部材から曲げ構造体を分解する際は、当該組立時とは逆の操作を行うこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-345820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の内視鏡では、曲げ構造体の組立時や分解時に挿入部の延在方向に対して交差した斜め方向に曲げ構造体を移動させる必要がある。すなわち、硬性部材には、当該斜め方向への曲げ構造体の移動時に当該曲げ構造体と干渉することを回避するための干渉回避空間を有する大き目の貫通孔を設ける必要がある。したがって、当該干渉回避空間を有する大き目の貫通孔を設ける分、硬性部材(挿入部における先端部分)の小型化を阻害する、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、挿入部における先端部分の小型化を図ることができる内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る内視鏡は、被検体内に挿入される挿入部を備えた内視鏡であって、前記挿入部は、当該挿入部の延在方向に沿って直線状に貫通した貫通孔を有する硬性部材と、当該挿入部の延在方向に沿って延在した第1延在部、及び当該第1延在部の先端から当該挿入部の延在方向に交差する方向に延在した第2延在部を有する少なくとも一つの曲げ構造体と、前記曲げ構造体を保持した状態で、前記硬性部材の基端から先端に向かって前記貫通孔に挿入され、前記第2延在部の先端側を当該貫通孔から外部に露出させる保持部材とを備え、前記第1延在部の少なくとも一部と前記第2延在部とは、前記貫通孔内に位置することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る内視鏡では、上記発明において、前記曲げ構造体は、被写体像を取り込んで撮像する観察光学部材であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る内視鏡では、上記発明において、前記曲げ構造体は、被写体に照明光を照射する照明光学部材であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る内視鏡では、上記発明において、前記曲げ構造体は、被写体像を取り込んで撮像する観察光学部材と、被写体に照明光を照射する照明光学部材とによって構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る内視鏡では、上記発明において、前記曲げ構造体は、3つ以上、設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る内視鏡では、上記発明において、前記硬性部材における外面の先端側には、前記挿入部の延在方向に対して傾斜し、先端に向かうにしたがって当該硬性部材を先細形状とする第1傾斜面が設けられ、前記貫通孔は、前記硬性部材の基端から前記第1傾斜面まで貫通し、前記保持部材は、前記挿入部の延在方向に対して傾斜した第2傾斜面が設けられた傾斜部を備え、前記第2延在部の先端側は、前記傾斜部を貫通して、前記貫通孔から外部に露出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る内視鏡では、上記発明において、前記保持部材は、前記第2延在部を保持することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る内視鏡では、上記発明において、前記保持部材の少なくとも一部は、前記第1延在部及び前記第2延在部で囲まれる空間に位置することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る内視鏡では、上記発明において、前記第2延在部の先端側は、前記保持部材を貫通して、前記貫通孔から外部に露出し、前記保持部材の外面と前記貫通孔の内面との間は、シール部材によって封止されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る内視鏡では、上記発明において、前記挿入部は、前記硬性部材よりも基端側に設けられた被覆部材をさらに備え、前記硬性部材及び前記保持部材は、固定具によって互いに固定され、前記固定具は、前記被覆部材によって覆われることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る内視鏡では、上記発明において、前記挿入部は、前記硬性部材よりも先端側に設けられ、入力した電気信号に応じて超音波を出射するとともに外部から入射した超音波を電気信号に変換する超音波プローブをさらに備えることを特徴とする。
また、本発明に係る内視鏡では、上記発明において、前記保持部材は、前記挿入部の延在方向に沿って延在した第1部分と、前記第2延在部の延在方向に対して略垂直方向に延在する第2部分と、により略L字形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る内視鏡によれば、挿入部における先端部分の小型化を図ることができるとともに、耐久性を良好に維持することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施の形態に係る内視鏡システムを示す図である。
図2図2は、挿入部の先端を示す図である。
図3図3は、硬性部材を基端側から見た図である。
図4図4は、保持部材を先端側から見た斜視図である。
図5図5は、硬性部材に対する照明光学部材及び観察光学部材の組立方法を説明する図である。
図6図6は、硬性部材に対する照明光学部材及び観察光学部材の組立方法を説明する図である。
図7図7は、硬性部材に対する照明光学部材及び観察光学部材の組立方法を説明する図である。
図8図8は、本実施の形態の変形例を示す図である。
図9図9は、本実施の形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0020】
〔内視鏡システムの概略構成〕
図1は、本実施の形態に係る内視鏡システム1を示す図である。
内視鏡システム1は、超音波内視鏡を用いて人等の被検体内の超音波診断を行うシステムである。この内視鏡システム1は、図1に示すように、超音波内視鏡2と、超音波観測装置3と、内視鏡観察装置4と、表示装置5とを備える。
超音波内視鏡2は、本発明に係る内視鏡に相当する。この超音波内視鏡2は、一部を被検体内に挿入可能とし、被検体内の体壁に向けて超音波パルス(音響パルス)を送信するとともに被検体によって反射された超音波エコーを受信してエコー信号を出力する機能、及び被検体内を撮像して画像信号を出力する機能を有する。
なお、超音波内視鏡2の詳細な構成については、後述する。
【0021】
超音波観測装置3は、超音波ケーブル31(図1)を介して超音波内視鏡2に電気的に接続し、超音波ケーブル31を介して超音波内視鏡2にパルス信号を出力するとともに超音波内視鏡2からエコー信号を入力する。そして、超音波観測装置3では、当該エコー信号に所定の処理を施して超音波画像を生成する。
内視鏡観察装置4には、超音波内視鏡2の後述する内視鏡用コネクタ9(図1)が着脱自在に接続される。この内視鏡観察装置4は、図1に示すように、ビデオプロセッサ41と、光源装置42とを備える。
ビデオプロセッサ41は、内視鏡用コネクタ9を介して超音波内視鏡2からの画像信号を入力する。そして、ビデオプロセッサ41は、当該画像信号に所定の処理を施して内視鏡画像を生成する。
光源装置42は、内視鏡用コネクタ9を介して被検体内を照明する照明光を超音波内視鏡2に供給する。
表示装置5は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)を用いて構成され、超音波観測装置3によって生成された超音波画像や、内視鏡観察装置4によって生成された内視鏡画像等を表示する。
【0022】
〔超音波内視鏡の構成〕
次に、超音波内視鏡2の構成について説明する。
超音波内視鏡2は、図1に示すように、挿入部6と、操作部7と、ユニバーサルコード8と、内視鏡用コネクタ9とを備える。
図2は、挿入部6の先端を示す斜視図である。
なお、以下では、挿入部6の構成を説明するにあたって、挿入部6の先端側(被検体内への挿入方向の先端側)を「先端側」とのみ記載し、挿入部6の基端側(挿入部6の先端から離間する側)を「基端側」とのみ記載する。
挿入部6は、被検体内に挿入される部分である。この挿入部6は、図1または図2に示すように、先端側に設けられた超音波プローブ10と、超音波プローブ10の基端側に連結された硬性部材11と、硬性部材11の基端側に連結され湾曲可能とする湾曲部12と、湾曲部12の基端側に連結され可撓性を有する可撓管13(図1)とを備える。なお、湾曲部12は、本発明に係る被覆部材に相当する。
なお、挿入部6、操作部7、ユニバーサルコード8、及び内視鏡用コネクタ9の内部には、光源装置42から供給された照明光を伝送するライトガイド101(図3図6参照)、上述したパルス信号やエコー信号を伝送する振動子ケーブル(図示略)、及び画像信号を伝送する信号ケーブル301(図3図6参照)が引き回されているとともに、流体を流通させるための複数の管路401,402(図3参照)が設けられている。
【0023】
以下、挿入部6を構成する各部材10~13のうち、超音波プローブ10及び硬性部材11の構成について説明する。
超音波プローブ10は、コンベックス型の超音波プローブであり、凸型の円弧を形成するように規則的に配列された複数の圧電素子(図示略)を有する。
ここで、超音波プローブ10は、上述した圧電素子の他、音響レンズや整合層を有し、被検体内の体壁よりも内部の超音波断層画像に寄与する超音波エコーを取得する。そして、超音波プローブ10は、超音波ケーブル31及び上述した振動子ケーブルを介して、超音波観測装置3から入力したパルス信号を超音波パルスに変換して被検体内に送信する。また、超音波プローブ10は、被検体内で反射された超音波エコーを電気的なエコー信号に変換し、上述した振動子ケーブル及び超音波ケーブル31を介して、超音波観測装置3に出力する。
【0024】
図3は、硬性部材11を基端側から見た図である。
硬性部材11は、樹脂材料等から構成された硬質部材であり、図2に示すように、挿入軸Axに沿って直線状に延在する略円柱形状を有する。なお、挿入軸Axとは、挿入部6の延在方向に平行な軸である。
この硬性部材11における外面の先端側には、挿入軸Axに対して傾斜し、先端に向かうにしたがって当該硬性部材11を先細形状とする平坦状の第1傾斜面111(図2)が形成されている。
そして、硬性部材11には、基端から先端までそれぞれ貫通した取付用孔112(図3)及びバルーン用孔113(図3)と、基端から第1傾斜面111までそれぞれ貫通した貫通孔114(図2図3)、送気送水用孔115(図2図3)、処置具チャンネル116(図2図3)、及び起上台用孔117(図3)とが形成されている。
【0025】
取付用孔112は、図3中、下方側に設けられ、先端側から超音波プローブ10が取り付けられる孔である。この取付用孔112の基端側には、接続パイプP1(図3)が嵌合されている。そして、取付用孔112の内部には、接続パイプP1を介して上述した振動子ケーブルが挿通される。
バルーン用孔113は、図3中、下方側に位置するとともに、取付用孔112を挟む左右両側にそれぞれ設けられている。これらバルーン用孔113には、バルーンパイプP2(図5図6参照)の一端側がそれぞれ嵌合されている。また、各バルーンパイプP2の他端には、管路401がそれぞれ取り付けられている。そして、バルーン用孔113、バルーンパイプP2、及び管路401は、超音波プローブ10を覆うように挿入部6の先端に取り付けられたバルーン(図示略)内に流体(例えば水)を充填する、あるいは、当該バルーン内の水を吸引する。
【0026】
貫通孔114は、図3中、左上方側に設けられ、挿入軸Axに沿って直線状に延在し、硬性部材11の基端から第1傾斜面111まで貫通する。そして、貫通孔114の内部には、照明光学部材100及び観察光学部材300が挿通される。
照明光学部材100は、本発明に係る曲げ構造体に相当し、図2または図3に示すように、ライトガイド101(図3)と、照明レンズ102(図2)とを備える。
本実施の形態では、ライトガイド101の出射端側は、第1,第2延在部101a,101bでそれぞれ構成されている(図6参照)。
第1延在部101aは、挿入軸Axに沿って直線状に延在した部分である。
第2延在部101bは、第1延在部101aの先端から挿入軸Axに交差して図6中、左上方側に向けて直線状に延在した部分である。本実施の形態では、第2延在部101bは、外面に接着剤等が塗布されることにより、第1延在部101aよりも硬質化されている。
【0027】
照明レンズ102は、レンズ光軸が第2延在部101bの延在方向に略一致した状態で、当該第2延在部101bの先端に対向する。そして、照明レンズ102は、ライトガイド101における出射端(第2延在部101bの先端)から出射された照明光を被検体内に照射する。
【0028】
観察光学部材300は、本発明に係る曲げ構造体に相当し、照明光学部材100に対して図3中、下方側に配設される。この観察光学部材300は、図2または図3に示すように、信号ケーブル301(図3)と、観察光学系302(図2)とを備える。
観察光学系302は、照明光学部材100から被検体内に照射され、当該被検体内で反射された光(被写体像)を集光する対物光学系302a(図2)と、当該対物光学系302aによって集光された被写体像を撮像する撮像素子(図示略)とを備える。そして、当該撮像素子によって撮像された画像信号は、信号ケーブル301を介して内視鏡観察装置4(ビデオプロセッサ41)に伝送される。
ここで、観察光学部材300の先端側は、上述したライトガイド101と同様に、先端側に向けて挿入軸Axに沿って直線状に延在する第1延在部300a(図6参照)と、当該第1延在部300aの先端から挿入軸Axに交差して図6中、左上方側に向けて直線状に延在した第2延在部300bとで構成されている。なお、第2延在部300bは、金属製の部材等で構成されており、第1延在部300aよりも硬質化されている。
【0029】
本実施の形態では、上述したように、照明光学部材100及び観察光学部材300は、第2延在部101b,300bをそれぞれ備える。このため、本実施の形態に係る超音波内視鏡2は、挿入軸Axに対して鋭角で交差する方向を観察する斜視タイプの内視鏡として構成されている。
以上説明した照明光学部材100及び観察光学部材300は、保持部材500(図2図3)に保持された状態で、貫通孔114の内部に挿通されている。
なお、保持部材500の詳細な構成については、後述する。
【0030】
また、硬性部材11における外周面の基端側には、貫通孔114に向けて窪む凹部118(図7参照)が形成されている。さらに、凹部118の底部分には、保持部材500を硬性部材11に固定するためのネジSc1が挿通されるネジ挿通孔119(図7参照)が形成されている。なお、ネジSc1は、本発明に係る固定具に相当する。
【0031】
送気送水用孔115は、図3中、左下方側に設けられている。この送気送水用孔115の基端側には、接続パイプ(図示略)の一端側が嵌合されている。また、当該接続パイプ(図示略)の他端には、管路402が取り付けられている。そして、送気送水用孔115、当該接続パイプ(図示略)、及び管路402は、対物光学系302aに向けて流体(例えば空気や水)を吐出し、当該対物光学系302aの外面を洗浄する。
【0032】
処置具チャンネル116は、図3中、貫通孔114の右側に設けられ、挿入部6の内部に挿通された穿刺針等の処置具(図示略)を外部に突出させる通路である。この処置具チャンネル116は、処置具挿通孔116a(図3)と、収納溝116b(図2)とを備える。
処置具挿通孔116aは、硬性部材11の基端から先端側に延在した部分である。この処置具挿通孔116aの基端側には、接続パイプ(図示略)の一端側が嵌合されている。また、当該接続パイプの他端には、操作部7における後述する処置具挿入口73から可撓管13及び湾曲部12の内部に引き回された処置具チューブTb(図3)が取り付けられている。そして、処置具挿通孔116aには、当該処置具チューブTbを介した処置具が挿通される。
【0033】
収納溝116bは、処置具挿通孔116aに連通するとともに、当該処置具挿通孔116aから挿入軸Axに沿って先端側に延在した溝である。
そして、収納溝116bには、回動軸RAx(図2)を中心として回動可能とする起上台116cが収納されている。この起上台116cは、処置具挿通孔116aを介して当該収納溝116bに挿通された処置具に当接して当該処置具の収納溝116bからの突出方向を調整する。
【0034】
起上台用孔117は、図3中、処置具チャンネル116の右側に設けられている。この起上台用孔117の内部には、医師等による操作部7へのユーザ操作に応じた動力を起上台116cに伝達するワイヤ(図示略)等が挿通されている。すなわち、起上台116cは、当該ワイヤから動力が伝達されることで、挿入軸Axに対して起上した起上状態、または、当該起上状態から倒置した倒置状態に設定される。
【0035】
操作部7は、挿入部6の基端側に連結され、医師等から各種操作を受け付ける部分である。この操作部7は、図1に示すように、湾曲部12を湾曲操作するための湾曲ノブ71と、各種操作を行うための複数の操作部材72とを備える。また、操作部7には、処置具チューブTbを介して処置具挿通孔116aに連通し、当該処置具チューブTbに処置具を挿通するための処置具挿入口73が設けられている。
【0036】
ユニバーサルコード8は、操作部7から延在し、ライトガイド101、上述した振動子ケーブル、信号ケーブル301、管路401,402が配設されたコードである。
内視鏡用コネクタ9は、ユニバーサルコード8の端部に設けられている。そして、内視鏡用コネクタ9は、超音波ケーブル31が接続されるとともに、内視鏡観察装置4に挿し込まれることでビデオプロセッサ41及び光源装置42に接続する。
【0037】
〔保持部材の構成〕
次に、保持部材500の構成について図4を参照しつつ説明する。
図4は、保持部材500を先端側から見た斜視図である。
保持部材500は、挿入軸Axに沿って直線状に延在した延設部511と、当該延設部511の先端から挿入軸Axに交差して図4中、左下方側に向けて直線状に延在した保持部512とを備え、全体略L字形状を有する。
延設部511は、ライトガイド101における第1延在部101aと第2延在部101bとで囲まれる空間Ar(図6参照)に位置する。言い換えれば、延設部511は、第1延在部101aに対して、第2延在部101bが曲がった側(図6中、上方側)に並設される。
また、延設部511の基端側には、内面にネジ溝を有し、ネジSc1(図7参照)が螺合されるネジ孔511a(図7参照)が形成されている。
【0038】
保持部512は、本発明に係る傾斜部に相当する。この保持部512において、先端側の面512aは、本発明に係る第2傾斜面に相当する。以下では、説明の便宜上、先端側の面512aを第2傾斜面512aと記載する。
また、保持部512には、第2傾斜面512aと表裏をなす基端側の面512bから第2傾斜面512aまでそれぞれ貫通し、当該各面512a,512bに直交して直線状にそれぞれ延在した照明用孔512c及び撮像用孔512dが形成されている。
照明用孔512cの内部には、ライトガイド101における第2延在部101bの先端側及び照明レンズ102がそれぞれ嵌合する。そして、ライトガイド101(2つの第2延在部101bの先端側)及び照明レンズ102は、接着剤等により保持部材500(保持部512)に対してそれぞれ固定(保持)される。
撮像用孔512dには、観察光学部材300における第2延在部300bが貫通する。また、保持部512には、当該保持部512の外面から撮像用孔512dまで貫通し、内面にネジ溝を有するネジ孔(図示略)が形成されている。当該ネジ孔には、保持部512の外面から、ネジSc2(図4)が螺合される。そして、観察光学部材300(第2延在部300b)は、撮像用孔512dの内部に突出したネジSc2の一端が当接することにより、保持部材500(保持部512)に対して固定(保持)される。
【0039】
また、保持部512において、図4中、下方側の面は、基端側に向かうにしたがって下方側に傾斜し、硬性部材11に対して照明光学部材100及び観察光学部材300を位置決めするための位置決め面512eが設けられている。
さらに、貫通孔114の内面において、先端側には、位置決め面512eに倣って傾斜し、当該位置決め面512eに当接する当接面114aが形成されている(図6参照)。
【0040】
〔硬性部材に対する照明光学部材及び観察光学部材の組立方法〕
次に、硬性部材11に対する照明光学部材100及び観察光学部材300の組立方法について説明する。
図5ないし図7は、硬性部材11に対する照明光学部材100及び観察光学部材300の組立方法を説明する図である。具体的に、図5ないし図7は、図3に示すIII-III線の断面図である。なお、図7では、説明の便宜上、照明光学部材100、観察光学部材300、照明用孔512c、及び撮像用孔512dの図示を省略している。
先ず、作業者は、保持部材500に対して、ライトガイド101、照明レンズ102、及び観察光学部材300を固定する。
次に、作業者は、照明光学部材100及び観察光学部材300が固定された保持部材500を手で持ち、図5に示すように、当該保持部材500の先端側を硬性部材11の基端から貫通孔114に挿入する。そして、作業者は、図6に示すように、位置決め面512eを当接面114aに当接させる。これにより、第2傾斜面512aは、第1傾斜面111と面一となる。また、照明光学部材100及び観察光学部材300の各先端は、貫通孔114から外部に露出する。
【0041】
次に、作業者は、図7に示すように、ネジ挿通孔119にネジSc1を挿通するとともに、当該ネジSc1をネジ孔511aに螺合する。これにより、保持部材500は、硬性部材11に固定される。また、作業者は、図7に示すように、保持部512の外周面と貫通孔114の内面との隙間に接着剤等のシール部材600を充填し、当該シール部材600によって当該隙間を封止する。
【0042】
次に、作業者は、図7に示すように、硬性部材11の基端側に湾曲部12を連結する。これにより、凹部118(ネジSc1)は、湾曲部12によって覆われる。より具体的に、湾曲部12は、湾曲可能に連結された複数のリング状部材121(図7では、先端側に位置する一つのリング状部材121のみを図示)と、当該複数のリング状部材121の外周を被覆するゴム等の被覆部材122とを備える。そして、凹部118(ネジSc1)は、リング状部材121と被覆部材122とに覆われる。
以上の工程により、照明光学部材100及び観察光学部材300は、硬性部材11に対して組み立てられる。なお、硬性部材11から照明光学部材100及び観察光学部材300を分解する際には、上述した組立時の各工程を逆に行うこととなる。
【0043】
以上説明した本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態に係る超音波内視鏡2では、挿入部6は、保持部材500を備える。このため、硬性部材11に対する照明光学部材100及び観察光学部材300の組立時や分解時には、照明光学部材100及び観察光学部材300が固定された保持部材500を貫通孔114に沿って直線状に移動させればよい。すなわち、第2延在部101b,300bの延在方向(挿入軸Axに交差した斜め方向)に照明光学部材100及び観察光学部材300を移動させる必要がない。言い換えれば、貫通孔114は、当該斜め方向への照明光学部材100及び観察光学部材300の移動時に当該照明光学部材100及び観察光学部材300と干渉することを回避するための干渉回避空間を有する大き目の貫通孔となることがない。
したがって、本実施の形態に係る超音波内視鏡2によれば、貫通孔114が干渉回避空間を有する大き目の貫通孔となることがないため、硬性部材11(挿入部6における先端部分)の小型化を図ることができる、という効果を奏する。
【0044】
また、本実施の形態に係る超音波内視鏡2では、硬性部材11には、第1傾斜面111が設けられている。一方、保持部材500には、第1傾斜面111と面一となる第2傾斜面512aが設けられている。このため、被検体内への挿入部6の挿入時に、当該挿入部6の先端部分が引っ掛かることを抑制し、挿入性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施の形態に係る超音波内視鏡2では、保持部材500は、照明光学部材100及び観察光学部材300における硬質化された第2延在部101b,300bを保持する。このため、第1延在部101a,300aを保持する構成と比較して、照明光学部材100及び観察光学部材300を安定して保持することができる。
特に、照明光学部材100及び観察光学部材300は、比較的に高い剛性を有する保持部材500によって保持される。このため、挿入部6の先端部分に対して外力が加わった場合であっても、硬性部材11に対する照明光学部材100及び観察光学部材300の位置ずれを抑制し、当該照明光学部材100及び観察光学部材300を安定して保持することができる。
【0046】
また、本実施の形態に係る超音波内視鏡2では、保持部材500において、延設部511は、第1,第2延在部101a,101bで囲まれる空間Arに位置する。すなわち、延設部511は、ライトガイド101の曲げ形状によってデッドスペースとなる空間Arに位置する。このため、空間Ar以外の他の位置に延設部511を位置付ける構成と比較して、硬性部材11(挿入部6における先端部分)の小型化を図ることができる。
【0047】
また、本実施の形態に係る超音波内視鏡2では、保持部512の外周面と貫通孔114の内面との隙間は、シール部材600によって封止される。このため、当該隙間から液体等が貫通孔114の内部に浸入することを抑制することができる。
【0048】
また、本実施の形態に係る超音波内視鏡2では、硬性部材11に対して保持部材500を固定するネジSc1は、湾曲部12によって覆われる。すなわち、硬性部材11及び保持部材500の固定部位が外部に露出することがない。このため、挿入部6の先端部分の耐久性を良好に維持することができる。
【0049】
(その他の実施形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態に係る超音波内視鏡2では、保持部材500に保持される曲げ構造体として、照明光学部材100及び観察光学部材300の両方を採用していたが、これに限らない。当該曲げ構造体として照明光学部材100のみを採用した構成としてもよく、あるいは、当該曲げ構造体として観察光学部材300のみを採用した構成としても構わない。また、例えば、処置具挿通孔116aや送気送水用孔115をパイプ等で構成し、当該パイプ等を本発明に係る曲げ構造体として採用しても構わない。さらに、保持部材500に保持される曲げ構造体は、3つ以上であってもよく、あるいは、単体であってもよい。
【0050】
上述した実施の形態では、本発明に係るシール部材(シール部材600)として、接着剤を採用したが、これに限らず、Oリング等を採用しても構わない。
上述した実施の形態では、保持部材500は、第2延在部101b,300bを保持する構成としていたが、これに限らず、第1延在部101a,300aを保持するように構成しても構わない。
上述した実施の形態では、本発明に係る被覆部材として、湾曲部12を採用したが、これに限らず、湾曲部12以外の他の部材を採用しても構わない。
【0051】
図8及び図9は、本実施の形態の変形例を示す図である。具体的に、図8及び図9は、図5及び図6にそれぞれ対応した断面図である。
上述した実施の形態に係る超音波内視鏡2では、位置決め面512eを当接面114aに当接させることで、第1傾斜面111と第2傾斜面512aとが面一となる位置決め機構を採用していたが、これに限らない。例えば、位置決め機構として、硬質部材11と保持部材500との一方にピン状の突起物(図8及び図9の例では保持部材500に設けられた突起物513)を設け、他方に当該突起物に嵌合する溝(図8及び図9の例では貫通孔114の内面に設けられた溝114b)を設ける。そして、当該突起物が当該溝の端部に当接することで、第1傾斜面111と第2傾斜面512aとが面一となる。
【0052】
上述した実施の形態では、超音波プローブ10は、コンベックス型の超音波プローブで構成されていたが、これに限らず、ラジアル型の超音波プローブで構成しても構わない。
上述した実施の形態では、内視鏡システム1は、超音波画像を生成する機能、及び内視鏡画像を生成する機能の双方を有していたが、これに限らず、内視鏡画像を生成する機能のみを有する構成(超音波プローブ10を省略した構成)としても構わない。
上述した実施の形態において、内視鏡システム1は、医療分野に限らず、工業分野において、機械構造物等の被検体の内部を観察する内視鏡システムとしても構わない。
【符号の説明】
【0053】
1 内視鏡システム
2 超音波内視鏡
3 超音波観測装置
4 内視鏡観察装置
5 表示装置
6 挿入部
7 操作部
8 ユニバーサルコード
9 内視鏡用コネクタ
10 超音波プローブ
11 硬性部材
12 湾曲部
13 可撓管
31 超音波ケーブル
41 ビデオプロセッサ
42 光源装置
71 湾曲ノブ
72 操作部材
73 処置具挿入口
100 照明光学部材
101 ライトガイド
101a 第1延在部
101b 第2延在部
102 照明レンズ
111 第1傾斜面
112 取付用孔
113 バルーン用孔
114 貫通孔
114a 当接面
114b 溝
115 送気送水用孔
116 処置具チャンネル
116a 処置具挿通孔
116b 収納溝
116c 起上台
117 起上台用孔
118 凹部
119 ネジ挿通孔
121 リング状部材
122 被覆部材
300 観察光学部材
300a 第1延在部
300b 第2延在部
300c 位置決め面
301 信号ケーブル
302 観察光学系
302a 対物光学系
401,402 管路
500 保持部材
511 延設部
511a ネジ孔
512 保持部
512a 先端側の面(第2傾斜面)
512b 基端側の面
512c 照明用孔
512d 撮像用孔
512e 位置決め面
513 突起物
600 シール部材
Ar 空間
Ax 挿入軸
P1 接続パイプ
P2 バルーンパイプ
RAx 回動軸
Sc1,Sc2 ネジ
Tb 処置具チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9