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  • 特許-加飾フィルム及び移動体 図1
  • 特許-加飾フィルム及び移動体 図2
  • 特許-加飾フィルム及び移動体 図3
  • 特許-加飾フィルム及び移動体 図4
  • 特許-加飾フィルム及び移動体 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】加飾フィルム及び移動体
(51)【国際特許分類】
   B32B 33/00 20060101AFI20230324BHJP
【FI】
B32B33/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019024439
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020131465
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390023009
【氏名又は名称】共和レザー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】石原 淳士
(72)【発明者】
【氏名】森田 潤哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】室伏 翼
(72)【発明者】
【氏名】寺井 賢人
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 忠彦
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-136269(JP,A)
【文献】実開平03-038251(JP,U)
【文献】実開昭48-039613(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線部と、該直線部に連続して設けられている曲線部とを備えている板状の被着体に貼付される、加飾フィルムにおいて、
前記直線部に対応して延び、前記直線部に貼付されるフィルム直線部と、該フィルム直線部に連続して設けられ、前記曲線部に貼付されるフィルム曲線部と、を有し、
前記フィルム曲線部は、前記被着体の前記曲線部の端部で裏側に折り返されて貼付され、
前記フィルム曲線部の裏側に折り返される部分の外周端には、凸部と凹部とが交互に設けられ、
前記凸部及び前記凹部は、前記フィルム曲線部の前記外周端に複数設けられ、波形状をなしていることを特徴とする加飾フィルム。
【請求項2】
前記凹部と前記凸部との間隔は、前記フィルム直線部から離れるに従い小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項3】
前記凹部及び前記凸部が、前記被着体の前記曲線部の端部で裏側に折り返されて貼付されている状態で、
前記曲線部の前記端部から前記凹部の底までの距離が、1mm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加飾フィルム。
【請求項4】
前記凹部及び前記凸部が、前記被着体の前記曲線部の端部で裏側に折り返されて貼付されている状態で、
前記曲線部の前記端部から前記凸部の先端までの距離が、10mm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の加飾フィルム。
【請求項5】
前記被着体は、車両用サイドドアの上部に位置するサッシュ部であり、前記直線部は、前記サッシュ部の上部に位置し、車両前後方向に延び、前記曲線部は、前記直線部の車両前方側または車両後方側に連続して設けられ、車両下方に湾曲していることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の加飾フィルム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の加飾フィルムを備えた移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾フィルム及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道車両、航空機などの外装材として、さまざまな意匠の合成樹脂製の加飾フィルム(以下、加飾フィルムと称することがある)が用いられている。加飾フィルムを、自動車等の外面に貼り付ける加飾方法を行うことで、自動車等の外装として、任意の意匠を簡易に付与することができる。また、加飾フィルムは、自動車等の本来の外装材を傷付けることなく剥離することができ、張り替えも行うことができる。
【0003】
このような加飾フィルムには、例えば特許文献1に開示されているように、接着層を有しているものが知られている。この例の加飾フィルムは、表皮層、加飾層、接着層を有し、さらに、接着層には、接着層保護シート(セパレーター)が貼られている。
【0004】
一方で、加飾フィルムは、外観を向上させること等を目的として、自動車等の外装に用いられることがある。当該加飾フィルムを外装に貼付することにより、車体の表面の強度を向上すること及び複雑な意匠を付与すること等が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-149725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記例のように、加飾フィルムに接着層を設ける場合、単層の加飾フィルムに比較し、柔軟性が低下する。一方で、このような加飾フィルムが貼付される自動車の外装は、3次元形状を有する複雑な形状を有していることが多い。
【0007】
また、加飾フィルムを事前に賦形を行わない場合、例えば車体の3次元形状に追従させながら貼付すると、被着体となる車体のパネル材の端部に、しわが発生しやくなる。例えば、自動車のサイドドアのサッシュの上部に加飾フィルムを貼付する場合には、サッシュの前後に設けられた曲線部の裏面にシワが発生しやすくなる可能性がある。このため、複雑な形状に加飾フィルムを見栄えよく貼付することについて、改善に余地があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、曲線部を有する被着体に対して、しわの発生を抑制して貼付することができる加飾フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る加飾フィルムは、直線部と、該直線部に連続して設けられている曲線部とを備えている板状の被着体に貼付される。当該加飾フィルムにおいて、前記直線部に対応して延び、前記直線部に貼付されるフィルム直線部と、該フィルム直線部に連続して設けられ、前記曲線部に貼付されるフィルム曲線部と、を有し、前記フィルム曲線部は、前記被着体の前記曲線部の端部で裏側に折り返されて貼付され、前記フィルム曲線部の裏側に折り返される部分の外周端には、凸部と凹部とが交互に設けられ、前記凸部及び前記凹部は、前記フィルム曲線部の前記外周端に複数設けられ、波形状をなしている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、曲線部を有する被着体に対して、しわの発生を抑制して加飾フィルムを貼付することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る加飾フィルムが貼付された車両用リアサイドドアのサッシュ部を示す斜視図である。
図2図2のサッシュ部の外面に加飾フィルムを添付した状態を、車幅方向側から見た側面図である。
図3図2のX部を拡大して示す拡大側面図である。
図4図3のサッシュ部の裏側を概略的に示す斜視図である。
図5図3に示す凸部及び凹部の変形例であって、(A)は第1の変形例を示し、(B)は第2の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る加飾フィルムの一実施形態について、図面(図1図5)を参照しながら説明する。本実施形態の加飾フィルム20は、直線部11と曲線部12とを有する被着体に貼付されるものであり、当該被着体について車両用サイドドアのサッシュ部10を例示して説明する。
【0013】
なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印O方向は、車幅方向の外側を示している。また、外面は、車幅方向外側を臨む面を示し、裏側は、車幅方向内側を示している。
【0014】
本実施形態の加飾フィルム20の被着体となるサッシュ部10は、図1に示すように、4ドアタイプの車両のリアサイドドア1のドア本体部2の車両上方側に設けられている。先ず、サッシュ部10について説明する。
【0015】
リアサイドドア1は、図1に示すように、ドア本体部2と、サッシュ部10を有している。サッシュ部10は、ドア本体部2の上方側に配置された枠状で、リアサイドドア1の窓ガラス(図示せず)を支持する部分である。当該サッシュ部10は、車幅方向外側を臨む外面を有し、外面の裏側(車幅方向内側)に窓ガラスを支持するガラスラン等が設けられている。また、サッシュ部10は、直線部11と、曲線部12とを有している。
【0016】
直線部11は、図1に示すように、サッシュ部10の上部に位置し、車両前後方向に延びている。曲線部12は、直線部11の車両後方側に連続して設けられ、車両後方に向かうに従い車両下方に湾曲している。サッシュ部10の後部は、曲線部12の下方に連続して設けられ、曲線部12の下端から車両下方に延びている。また、サッシュ部10の前部は、直線部11の前部に連続して設けられ、ドア本体部2に向かって下方に延びている。
【0017】
サッシュ部10の外面は、車幅方向外側を臨む。直線部11の裏面には、モール等を取り付けるための段差形状部15を有している。段差形状部15は、直線部11及び曲線部12の裏側(車幅方向内側)に設けられている。図4では、曲線部12の裏側の段差形状部15を示している。
【0018】
続いて、サッシュ部10に貼付される加飾フィルム20について説明する。加飾フィルム20は、直線部11及び曲線部12の外面を覆うように貼付される。当該加飾フィルム20は、樹脂材料により形成されており、複数の層が積層されることによって構成されている。本実施形態の加飾フィルム20は、接着層(図示せず)を有し、当該接着層が、サッシュ部10の直線部11及び曲線部12の外面に接着されることにより、加飾フィルム20がサッシュ部10の外面を覆う状態で貼付される。
【0019】
加飾フィルム20は、サッシュ部10の直線部11の長手方向(車両前後方向)に沿って延びる長尺のシート状であり、直線部11に貼付されるフィルム直線部21と、フィルム直線部21に連続して設けられ、曲線部12に貼付されるフィルム曲線部22と、を有している。当該フィルム曲線部22の外周端には、図2及び図3に示すように、凸部23と凹部24とが交互に設けられている。
【0020】
凸部23及び凹部24は、フィルム曲線部22が曲線部12の外面に貼付された状態では、車両上方側に配置されている。すなわち、当該状態で、図2及び図3に示すように、車両上方側に位置する凸部23は車両上方に突出し、車両上方側に位置する凹部24は、車両下方に凹む。凸部23は、図2及び図3に示すように、略三角形状で、凸部23の先端には、R形状が形成されている。また、凹部24も、凸部23と同様に略三角形状で、底には、R形状が形成されている。一方で、加飾フィルム20の図2における下端は、サッシュ部10の下端の形状に対応するように形成されている。
【0021】
加飾フィルム20は、加飾フィルム20の下端とサッシュ部10の下端とを合わせて、サッシュ部10の外面に貼り付ける。このとき、フィルム直線部21の上端は、図3に示すように、サッシュ部10の直線部11の上端よりも車両上方に突出し、フィルム曲線部22の凸部23及び凹部24は、曲線部12の上端よりも車両上方に突出している。なお、加飾フィルム20をサッシュ部10に貼り付けるときは、直線部11から曲線部12に向かって徐々に貼り付けていくとよい。また、図2の破線に示すように、加飾フィルムの離型紙にスリットを入れておき、順次離型紙を剥がしていくことで作業効率を高めることができる。
【0022】
その後、直線部11及び曲線部12のそれぞれの上端から車両上方に突出している部分を、サッシュ部10の裏側に折り返して、裏面に貼り付ける。なお、図2及び図3では、上端から車両上方に突出している部分がサッシュ部10の裏側に折り返される前の状態を示している。
【0023】
フィルム曲線部22が、サッシュ部10の曲線部12の外面に貼り付けられ、凸部23と凹部24が、外面の上端で外面の裏面に折り返されて、裏面に貼り付けられるとき、隣接する凸部23と凸部23が互いに近づいた状態で、裏面に貼付される。すなわち、しわになって加飾フィルム20がよりやすくなる部分に凹部24を設けることにより、しわの発生を抑制した状態で、凸部23を曲線部12の外面の裏側に貼り付けることができる。
【0024】
その結果、サッシュ部10の曲線部12のしわの発生が抑制され、サッシュ部10の外観品質(見栄え)が向上する。さらに、しわ、及び浮きが発生することなく加飾フィルム20を貼り付けることにより、加飾フィルム20の十分な接着強度を確保することが可能となり、加飾フィルム20の剥がれ不良を防止できる。
【0025】
また、本実施形態の凸部23及び凹部24は、図2図4に示すように、フィルム曲線部22の外周端に複数設けられ、波形状をなしている。加飾フィルム20の外周端の加工には、例えばカッティングプロッター等が用いられている。このため、外周端に不連続となる部分を有しない波形状を設けることにより、加飾フィルム20の外周端を加工しやすくなる。すなわち、凸部23及び凹部24を連続する波形状とすることにより、加飾フィルム20を効率よく製造することができる。
【0026】
また、本実施形態の凸部23と凹部24との間隔は、フィルム直線部21から離れるに従い小さくなっている。すなわち、当該間隔は、車両後方に向かうに従い小さくなるように設定されている。すなわち、加飾フィルム20の外周端は、フィルム直線部21から離れるに従い、凸部23及び凹部24の数が増加するように形成されている。このように凸部23及び凹部24を設定することにより、単位長さ当りのしわのよりを、逃がすことができる部分の数を増やすことができる。
【0027】
通常、被着体に加飾フィルム20の直線部11を貼り付けた後に、曲線部12を貼りつけるので直線部11から離れた部位にしわがよりやすい。すなわち、加飾フィルム20をサッシュ部10に貼り付ける場合、サッシュ部10の上部に位置する直線部11から貼り付けて、その後、曲線部12に加飾フィルム20を貼りつける。サッシュ部10は、図2に示すように、曲線部12は、直線部11から離れるほど曲率が大きい。そのため、直線部11から離れた部位にしわがよりやすい構造になっていることが多い。これに対して、上記したように凸部23及び凹部24の間隔を設定することにより、単位長さ当りのしわのよりを、逃がすことができる部分の数を増やすことができる。
【0028】
また、本実施形態では、フィルム曲線部22の凸部23及び凹部24が、サッシュ部10の外面の端部で裏側に折り返されて貼付されている。このとき、曲線部12の上端から凹部24の底までの距離は、1mm以上に設定されている。この例では、図4に示す距離Aを、1mm以上として例えば7mm以下としておくとよい。これにより、外面に凹部24が配置されることが防止されるため、サッシュ部10の外面、すなわち、鋼板表面が露出することを防止できる。
【0029】
また、本実施形態では、フィルム曲線部22の凸部23及び凹部24が、サッシュ部10の外面の端部で裏側に折り返されて貼付されるとき、曲線部12の上端から凸部23の先端までの距離は、10mm以下に設定されている。この例では、図4に示す距離Bを、例えば7mm以上として10mm以下としておくとよい。距離Aの最大値は、距離Bの最小値より小さく設定される。
【0030】
サッシュ部10の裏側には、上記したように、モール等が取り付けられる段差形状部15等が設けられている。このため、サッシュ部10の外面の端部で裏側に折り返される部分の面積が大きいと、段差形状部15に干渉する可能性がある。段差形状部15に加飾フィルム20が貼付されると、貼付されにくい部分が発生するため、加飾フィルム20の接着強度が低下する可能性がある。これに対して、サッシュ部10の曲線部12の上端から凸部23の先端までの距離を上記のように設定することにより、曲線部12の裏側の平面に凸部23等を貼り付けることができるため、接着強度の低下を抑制できる。
【0031】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0032】
上記実施形態では、被着体を車両用サイドドアのサッシュ部10としているが、これに限らない。本実施形態の加飾フィルム20を、例えば図1に示すルーフパネル31、ルーフサイドアウタパネル32、バックドア33の上部等のように、湾曲している部分(曲線部)を有しているようなパネル材に適用してもよい。
【0033】
また、本実施形態では、サッシュ部10の曲線部12の上部に対応する部分に、凸部23及び凹部24を設けているが、これに限らない。サッシュ部10の曲線部12の下部に対応する部分に凸部23及び凹部24を設けることもできる。
【0034】
また、本実施形態の凸部は、図2及び図3に示すように、頂点にR形状を有する三角形状で、凹部も底にR形状を有する三角形状であるが、これに限らない。例えば、図5(A)に示すように、凸部23及び凹部24を、略長方形状としてもよいし、図5(B)に示すように、凹部24を略三角形状に切り欠くように形成し、凸部23を台形状に形成してもよい。
【0035】
また、本実施形態の加飾フィルム20は、車両のサッシュ部10に貼付した例について説明しているが、これに限らない。当該加飾フィルム20は、車両の他の部位に貼付してもよいし、さらに、車両以外の他の移動体に貼付してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 リアサイドドア
2 ドア本体部
10 サッシュ部
11 直線部
12 曲線部
15 段差形状部
20 加飾フィルム
21 フィルム直線部
22 フィルム曲線部
23 凸部
24 凹部
31 ルーフパネル
32 ルーフサイドアウタパネル
33 バックドア
図1
図2
図3
図4
図5