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  • 特許-銀めっき液組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】銀めっき液組成物
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/42 20060101AFI20230324BHJP
   C23C 18/16 20060101ALI20230324BHJP
   C23C 18/52 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
C23C18/42
C23C18/16 B
C23C18/52 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019027492
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020132940
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591045677
【氏名又は名称】関東化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(74)【代理人】
【識別番号】100177105
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】本崎 達
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼久 智明
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-266079(JP,A)
【文献】米国特許第05322553(US,A)
【文献】特表2010-510384(JP,A)
【文献】特開昭60-100679(JP,A)
【文献】特開2005-199581(JP,A)
【文献】特開2007-116077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/42
C23C 18/16
C23C 18/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水溶性チオ硫酸化合物、(B)銀イオン源、(C)水および(D)アミノカルボン酸キレート剤およびアミノホスホン酸キレート剤からなる群から選択される少なくとも1種のキレート剤を含有し、アンモニア化合物および亜硫酸塩を含有しない、ニッケルまたはニッケル合金のめっきのための銀めっき液組成物。
【請求項2】
銀イオン源として水溶性銀化合物を含有する、請求項1に記載の銀めっき液組成物。
【請求項3】
pHが3~14である、請求項1または2に記載の銀めっき液組成物。
【請求項4】
pH調整剤を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の銀めっき液組成物。
【請求項5】
置換析出型である、請求項1~のいずれか一項に記載の銀めっき液組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の銀めっき液組成物に、ニッケルまたはニッケル合金を浸漬する工程を含む、銀めっき方法。
【請求項7】
銀めっき液組成物の温度が20~60℃の範囲で、ニッケルまたはニッケル合金を浸漬する、請求項に記載の銀めっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀めっき液組成物、該組成物を用いた銀めっき方法、および、該方法により銀めっき皮膜が形成された銀めっき処理品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体分野における接合材料としてはんだは古くから用いられており、近年、より高い電圧および大きな電流の制御が可能なことで着目されているパワー半導体の分野においても、はんだが接合材料として用いられる。しかしながら、パワー半導体の高機能化が進むと共に、接合材料にかかる電圧および電流が一層増大していることから、接合材料としてのはんだが、耐熱性等の要求に必ずしも応えられなくなりつつあった。
【0003】
はんだに代わる接合材料としては、高い耐熱性および高い放熱特性を有する銀(たとえば、銀焼結材)が有用である。他方、半導体素子の電極材料は銅またはアルミニウムが用いられていることが多く、当該電極と接合材料としての銀とを高い信頼性で接合させるためには、電極表面を銀で被覆することが必要となる。ところが、電極表面を直接銀で被覆した場合には、電極の保護および密着性の確保が十分に達成できないため、電極上にニッケルバリア層を形成し、当該ニッケルバリア層を銀で被覆することで、銀を用いた接合材料と電極とを接合させることが一般的になりつつある。このような接合を実現するためには、ニッケル上に銀を製膜する技術が必要となる。
【0004】
無電解めっき法は、独立パターン上に均一な皮膜を形成でき、かつ操作性も容易であることから幅広い材質の表面改質に用いられる。さらに、無電解めっき法は、イオン化傾向の差によりめっき対象の表面に金属を析出させる置換析出型、および、還元剤の作用によりめっき対象の表面に金属を析出させる還元析出型に大別される。従来から使用されている無電解銀めっき液には、シアン化合物あるいはアンモニアを含有する置換析出型のものがあった(非特許文献1)が、前者は毒性が高いこと、後者は爆発性の銀化合物(雷銀)を生成することから実用的とはいえなかった。現在実用化されている置換析出型の銀めっき液は、銅表面を被覆するためのものがほとんどであり(特許文献1~3)、ニッケル表面を被覆するための置換析出型の銀めっき液としては、錯化剤として亜硫酸塩やイミド基、アミド基を有する有機化合物を含有する、導電性粉末用の銀めっき液(特許文献4)がわずかに知られている程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-309875号公報
【文献】特開2002-356783号公報
【文献】特開2000-144440号公報
【文献】特開2002-266079号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「無電解めっき―基礎と応用―」,電気鍍金研究会編,日刊工業新聞社,1994年5月,p.42-44,175-176
【文献】川島 敏,”アルミニウムのジンケート処理”,表面技術,一般社団法人表面技術協会,2013年12月,第64巻,第12号,p.645-649
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、新規な銀めっき液組成物、特に、銀よりもイオン化傾向の高い金属またはその合金に銀めっきするための新規な銀めっき液組成物、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、(A)水溶性チオ硫酸化合物、(B)銀イオン源および(C)水を含有する銀めっき液組成物を用いることで、銀よりもイオン化傾向の高い金属またはその合金に良好に銀めっきすることが可能となることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1] (A)水溶性チオ硫酸化合物、(B)銀イオン源および(C)水を含有する、銀めっき液組成物。
[2] 銀イオン源として水溶性銀化合物を含有する、前記[1]に記載の銀めっき液組成物。
[3] pHが3~14である、前記[1]または[2]に記載の銀めっき液組成物。
[4] pH調整剤を含有する、前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の銀めっき液組成物。
[5] キレート剤を含有する、前記[1]~[4]のいずれか一つに記載の銀めっき液組成物。
【0010】
[6] 銀よりもイオン化傾向の高い金属またはその合金のめっきのための、前記[1]~[5]のいずれか一つに記載の銀めっき液組成物。
[7] 置換析出型である、前記[1]~[6]のいずれか一つに記載の銀めっき液組成物。
[8] 前記[1]~[7]のいずれか一つに記載の銀めっき液組成物に、銀よりもイオン化傾向の高い金属またはその合金を浸漬する工程を含む、銀めっき方法。
[9] 銀めっき液組成物の温度が20~60℃の範囲で、銀よりもイオン化傾向の高い金属またはその合金を浸漬する、前記[8]に記載の銀めっき方法。
[10] 前記[8]または[9]に記載の方法により銀めっき皮膜が形成された、銀めっき処理品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の銀めっき液組成物により、銀よりもイオン化傾向の高い金属またはその合金に良好に銀めっきすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1はチオ硫酸ナトリウム水溶液に塩化銀を添加して得られた水溶液、および、チオ硫酸ナトリウム水溶液のイオンクロマトグラムを示す図である。
図2図2は実施例5において得られた銀めっき皮膜の表面SEM像を示す図である。
図3図3は実施例5において銀めっきされた、銅皮膜上に無電解ニッケル皮膜が形成されたシリコンウェハの断面SIM像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、本発明の好適な実施態様に基づき、詳細に説明する。
本発明は、(A)水溶性チオ硫酸化合物、(B)銀イオン源および(C)水を含有する、銀めっき液組成物に関する。
【0014】
本発明の銀めっき液組成物に用いられる(A)水溶性チオ硫酸化合物は、後述する銀イオン源と混合されることで、チオ硫酸銀錯体を形成する。たとえば、水溶性チオ硫酸化合物としてのチオ硫酸ナトリウムと銀イオン源としての塩化銀とを水に添加すると、下記(1)式に従ってチオ硫酸銀錯体を形成する。
【0015】
【化1】
【0016】
水溶性チオ硫酸化合物としては、水溶性のチオ硫酸化合物であれば特に制限されないが、チオ硫酸のアルカリ金属塩およびチオ硫酸のアルカリ土類金属塩が好ましく、チオ硫酸のアルカリ金属塩がより好ましく、チオ硫酸ナトリウムが特に好ましい。
水溶性チオ硫酸化合物の濃度は、特に制限されないが、0.1~2000mmol/Lであることが好ましく、1~1000mmol/Lであることがより好ましく、10~500mmol/Lであることが特に好ましい。
【0017】
本発明の銀めっき液組成物に用いられる(B)銀イオン源としては、水中で銀イオンを発生する水溶性銀化合物であれば特に制限されないが、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、硝酸銀および硫酸銀が好ましく、塩化銀、臭化銀およびヨウ化銀がより好ましく、塩化銀が特に好ましい。
銀イオン源の濃度は、特に制限されないが、0.01~1000mmol/Lであることが好ましく、0.1~500mmol/Lであることがより好ましく、1~100mmol/Lであることが特に好ましい。
【0018】
本発明の銀めっき液組成物は、(C)水を含有する。水は、(A)水溶性チオ硫酸化合物および(B)銀イオン源ならびに下記の含有しうる追加成分以外の残部を形成する。
【0019】
本発明の銀めっき液組成物のpHは、特に制限されないが、1~14であることが好ましく、3~14であることが特に好ましい。かかるpHの範囲において、上記(1)式に従って形成されたチオ硫酸銀錯体とめっき対象となる金属との間で電子が速やかに授受され、銀めっきが良好に進行する。たとえば、ニッケルをめっき対象とした場合には、下記(2)式に従ってニッケルが溶解するとともに銀が析出することにより、銀めっき皮膜が形成される。
本発明の銀めっき液組成物は、置換析出型の銀めっき液組成物ということもできる。
【0020】
【化2】
【0021】
本発明の銀めっき液組成物は、pH調整剤を含有してもよい。pH調整剤としては、既知の酸性化合物および塩基性化合物を使用することができる。酸性化合物としては、特に制限されないが、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機鉱酸、および、メタンスルホン酸、酢酸、クエン酸などの有機酸が好ましく、塩酸および硝酸がより好ましく、塩酸が特に好ましい。塩基性化合物としては、特に制限されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、および、水酸化テトラメチルアンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどの有機塩基が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化テトラメチルアンモニウムがより好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0022】
本発明の銀めっき液組成物は、キレート剤を含有することが好ましい。上記式(2)に示されるとおり、本発明の銀めっき液組成物を用いた場合、銀が析出する際にめっき対象となる金属が溶解するが、キレート剤が存在することで溶解した金属が捕捉され、銀めっき液組成物の汚染や性能の劣化の抑制がされるため好ましい。
【0023】
キレート剤としては、特に制限されないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)などのアミノカルボン酸キレート剤、および、エチレンジアミン四酢酸テトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、ニトリロトリスメチレンホスホン酸(NTMP)などのアミノホスホン酸キレート剤が好ましく、アミノカルボン酸キレート剤がより好ましく、エチレンジアミン四酢酸が特に好ましい。
キレート剤の濃度は、特に制限されないが、1~2500mmol/Lであることが好ましく、5~1000mmol/Lであることがより好ましく、10~200mmol/Lであることが特に好ましい。
【0024】
たとえば、ニッケルをめっき対象とし、エチレンジアミン四酢酸をキレート剤とした場合には、溶解したニッケルは下記(3)式に従って捕捉される。
【0025】
【化3】
【0026】
本発明の銀めっき液組成物は、他の追加成分、たとえば、既知の結晶調整剤成分や平滑剤成分、界面活性剤成分をさらに含有することができる。
【0027】
本発明の銀めっき液組成物は、安全性の観点から、シアン化合物およびアンモニア化合物を追加成分として含有しないことが好ましい。また、本発明の銀めっき液組成物は、還元剤を追加成分として含有しないことが好ましい。
【0028】
本発明の銀めっき液組成物は、上記(2)式に示されるとおり、当該組成物中に形成されるチオ硫酸銀錯体と電子の授受が可能な金属またはその合金、すなわち、銀よりもイオン化傾向の高い金属またはその合金をめっき対象とすることができる。よって、本発明の銀めっき液組成物は、銀よりもイオン化傾向の高い金属またはその合金のめっきのための銀めっき液組成物、好ましくは、ニッケル、銅、スズ、コバルトまたはその合金のめっきのための銀めっき液組成物、より好ましくは、ニッケル、銅、またはその合金のめっきのための銀めっき液組成物、特に好ましくは、ニッケルまたはニッケル合金のための銀めっき液組成物として用いることができる。
【0029】
本発明の銀めっき液組成物のめっき対象となる金属またはその合金の形状は、特に制限されないが、板状および膜状(厚膜状または薄膜状)が好ましく、膜状がより好ましい。
【0030】
また、本発明は、本発明の銀めっき液組成物に、銀よりもイオン化傾向の高い金属またはその合金を浸漬する工程を含む、銀めっき方法にも関する。銀よりもイオン化傾向の高い金属またはその合金としては、ニッケル、銅、スズ、コバルトまたはその合金が好ましく、ニッケル、銅、またはその合金がより好ましく、ニッケルまたはニッケル合金が特に好ましい。
本発明の銀めっき方法における、銀よりもイオン化傾向の高い金属またはその合金を浸漬する銀めっき液組成物の温度は、特に制限されないが、10~90℃であることが好ましく、20~60℃であることが特に好ましい。
【0031】
本発明の銀めっき方法により形成される銀めっき皮膜の厚さは、特に制限されないが、0.001~3μmであることが好ましく、0.005~2μmであることがより好ましく、0.01~1μmであることが特に好ましい。
【0032】
さらに、本発明は、本発明の銀めっき方法により銀めっき皮膜が形成された、銀めっき処理品にも関する。
【実施例
【0033】
次に、本発明の銀めっき液組成物について、以下に記載する実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
[チオ硫酸銀錯体の形成の確認]
本発明の銀めっき液組成物中にチオ硫酸銀錯体が形成されていることを確認するために、以下の評価を行った。
50mmol/L濃度のチオ硫酸ナトリウム水溶液に対して20mmol/L濃度となる量の塩化銀を加え、室温下でよく撹拌し無色透明の均一溶液(チオ硫酸ナトリウムと塩化銀との混合水溶液)を得た。また、参照試料として、50mmol/L濃度のチオ硫酸ナトリウム水溶液を得た。これら2種の水溶液を、それぞれ、体積比で100倍に希釈したものを分析試料とし、アニオン型イオンクロマトグラフィー(島津製作所製カラムIC-A1、同社製電気伝導度検出器CDD-6A)を使用して分析を行った。結果を表1および図1に示す。図1における実線のチャートはチオ硫酸ナトリウムと塩化銀との混合水溶液の結果を表し、破線のチャートはチオ硫酸ナトリウム水溶液の結果を表す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から明らかなように、チオ硫酸ナトリウム水溶液と塩化銀との混合水溶液からは、添加した塩化銀とほぼ同一濃度のClイオンが遊離イオンとして検出され、添加した塩化銀とほぼ同一濃度分だけ減少した値としてS 2-イオンが検出された。この結果から、チオ硫酸ナトリウムと塩化銀との混合水溶液中で上記(1)式に従う反応が生じ、チオ硫酸銀錯体が形成されたことは明らかである。また、同様のことが、図1におけるCl(保持時間:約2.5分)およびS 2-(保持時間:約8分)の各ピーク面積の増減からも確認することができた。
【0037】
[銀めっき液組成物の調製]
(実施例1~2)
チオ硫酸ナトリウム、塩化銀およびエチレンジアミン四酢酸を水に溶解させ、得られた水溶液に対して水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpHを調整し、表2に示す成分濃度およびpHをそれぞれ有する実施例1および2の銀めっき液組成物を得た。
【0038】
【表2】
【0039】
[銀めっき皮膜の形成と評価]
(実施例3)
縦2cm×横1cm×厚み0.1mmの銅圧延板に対して、非特許文献1に記載された下記の工程Aに従い、無電解ニッケル皮膜を形成させた。なお、無電解ニッケルめっきは、次亜リン酸を還元剤とするめっき浴を使用した。
【0040】
【数1】
【0041】
次いで、無電解ニッケル皮膜が形成された前記銅圧延板を、30℃に保たれた実施例1の銀めっき液組成物に30分間浸漬することによって、白色無光沢の銀めっき皮膜を無電解ニッケル皮膜上にさらに形成させた。
【0042】
得られた銀めっき皮膜の膜厚を蛍光X線膜厚計(日立ハイテクサイエンス製、FT9500X)で測定したところ、0.37μmであった。また、得られた銀めっき皮膜に対し、JIS H8504「めっきの密着性試験方法」に基づきテープテストにて評価したところ、剥離は発生せず密着性は良好であった。
【0043】
(実施例4)
アルミニウム皮膜が形成された縦1.5cm×横1.5cm×厚み0.8mmのシリコンウェハに対して、非特許文献2に記載された下記の工程Bに従い、無電解ニッケル皮膜を形成させた。なお、無電解ニッケルめっきは、次亜リン酸を還元剤とするめっき浴を使用した。
【0044】
【数2】
【0045】
次いで、アルミニウム皮膜上に無電解ニッケル皮膜が形成された前記シリコンウェハを、30℃に保たれた実施例2の銀めっき液組成物に30分間浸漬することによって、白色無光沢の銀めっき皮膜を無電解ニッケル皮膜上にさらに形成させた。
【0046】
得られた銀めっき皮膜の膜厚を蛍光X線膜厚計(日立ハイテクサイエンス製、FT9500X)で測定したところ、0.35μmであった。また、得られた銀めっき皮膜に対し、JIS H8504「めっきの密着性試験方法」に基づきテープテストにて評価したところ、剥離は発生せず密着性は良好であった。
【0047】
(実施例5)
銅皮膜が形成された縦1.5cm×横1.5cm×厚み0.8mmのシリコンウェハを使用し、上記の工程Aに従い、無電解ニッケル皮膜を形成させた。なお、無電解ニッケルめっきは、次亜リン酸を還元剤とするめっき浴を使用した。
【0048】
次いで、銅皮膜上に無電解ニッケル皮膜が形成された前記シリコンウェハを、30℃に保たれた実施例2の銀めっき液組成物に60分間浸漬することによって、白色無光沢の銀めっき皮膜を無電解ニッケル皮膜上にさらに形成させた。
【0049】
得られた銀めっき皮膜の膜厚を蛍光X線膜厚計(日立ハイテクサイエンス製、FT9500X)で測定したところ、0.41μmであった。また、得られた銀めっき皮膜に対し、JIS H8504「めっきの密着性試験方法」に基づきテープテストにて評価したところ、剥離は発生せず密着性は良好であった。
【0050】
実施例5で得られた銀めっき皮膜の表面SEM(走査電子顕微鏡)像(日立ハイテクサイエンス製、S-4800)を図2に示す。また、銅皮膜上に無電解ニッケル皮膜が形成され、さらにその上に銀めっき皮膜が形成された前記シリコンウェハをFIB(収束イオンビーム)加工した、断面SIM(走査イオン顕微鏡)像(日立ハイテクサイエンス製、FB-2200)を図3に示す。図2および3から、銀めっき皮膜が無電解ニッケル皮膜上に緻密に形成されていることが確認された。
【0051】
実施例1~5の結果から、本発明の銀めっき液組成物は、銀よりもイオン化傾向の高い金属またはその合金に対して良好な銀めっき皮膜を形成できることが確認された。


図1
図2
図3