(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
A45D 19/02 20060101AFI20230324BHJP
A42B 1/00 20210101ALI20230324BHJP
【FI】
A45D19/02 A
A42B1/00 Z
(21)【出願番号】P 2019032029
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000112299
【氏名又は名称】ピップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】貴志 公介
(72)【発明者】
【氏名】相良 裕子
(72)【発明者】
【氏名】河内 法子
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-245709(JP,A)
【文献】特開2012-092462(JP,A)
【文献】特開2009-213724(JP,A)
【文献】実開平07-044275(JP,U)
【文献】実公昭45-020669(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 19/02
A42B 1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部に装着されて使用され、前記使用者の頭部の上方から落下する水が前記使用者の顔面にかかることを抑制するキャップであって、
前記キャップが、前記使用者の頭部が挿入可能な頭部挿入部と、前記頭部挿入部の外周に設けられる庇部とを備え、
前記庇部は、前記庇部の外縁よりも内側に、前記水が落下可能な複数の排水孔が設けられ
、
前記排水孔が、第1の面積を有する第1の排水孔と、前記第1の面積とは異なる第2の面積を有する第2の排水孔とを備え、
前記庇部が、前記第1の排水孔が設けられる第1の領域と、前記第2の排水孔が設けられる第2の領域と、前記排水孔が設けられない第3の領域とを備え、
前記第1の領域、前記第2の領域および前記第3の領域が、前記頭部挿入部の外周の周方向に沿って設けられている、
キャップ。
【請求項2】
前記庇部が、前記
第1および第2の領域と前記
第3の領域とを判別するための特徴部を備える、
請求項
1記載のキャップ。
【請求項3】
前記庇部が、前記第1の領域と前記第2の領域とを判別するための有孔領域特徴部を備える、
請求項1
または2記載のキャップ。
【請求項4】
前記庇部が、前記庇部の内縁から外縁に向かって延びる凸状の山部および凹状の谷部を備え、
前記山部および前記谷部は、前記谷部の底部の延びる方向が、前記山部の頂部の延びる方向に対して、前記内縁から前記外縁に向かって下方に傾斜するように配置される、
請求項1~
3のいずれか1項に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば洗髪時に顔面に水がかかるのを抑制するために、たとえば特許文献1に開示されるように、洗髪用キャップが用いられている。洗髪用キャップは、使用者の目から離れた位置で水が下方に落下するように構成されているので、水に対する恐怖心を和らげる効果を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の洗髪用キャップを使用すると、水に対する恐怖心を和らげることができるが、使用を継続していると、水に対する恐怖心をいつまでたっても克服することができない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、水に対する恐怖心を和らげることができるとともに、水に対する恐怖心を克服する一助とすることができるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のキャップは、使用者の頭部に装着されて使用され、前記使用者の頭部の上方から落下する水が前記使用者の顔面にかかることを抑制するキャップであって、前記キャップが、前記使用者の頭部が挿入可能な頭部挿入部と、前記頭部挿入部の外周に設けられる庇部とを備え、前記庇部は、前記庇部の外縁よりも内側に、前記水が落下可能な複数の排水孔が設けられることを特徴とする。
【0007】
また、前記排水孔が、大きさの異なる複数の排水孔を備えることが好ましい。
【0008】
また、前記庇部が、前記排水孔が設けられる領域と、前記排水孔が設けられない領域とを備え、前記庇部が、前記排水孔が設けられる領域と前記排水孔が設けられない領域とを判別するための特徴部を備えることが好ましい。
【0009】
また、前記排水孔が、第1の面積を有する第1の排水孔と、前記第1の面積とは異なる第2の面積を有する第2の排水孔とを備え、前記庇部が、前記第1の排水孔が設けられる第1の領域と、前記第2の排水孔が設けられる第2の領域とを備え、前記庇部が、前記第1の領域と前記第2の領域とを判別するための有孔領域特徴部を備えることが好ましい。
【0010】
また、前記庇部が、前記庇部の内縁から外縁に向かって延びる凸状の山部および凹状の谷部を備え、前記山部および前記谷部は、前記谷部の底部の延びる方向が、前記山部の頂部の延びる方向に対して、前記内縁から前記外縁に向かって下方に傾斜するように配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水に対する恐怖心を和らげることができるとともに、水に対する恐怖心を克服する一助とすることができるキャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るキャップが使用者の頭部に装着された状態を示す斜視図である。
【
図2】(a)は、本発明の一実施形態に係るキャップの上面図であり、(b)は、(a)のII-II線断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るキャップの第3の領域が使用者の頭部の前方(図中左側)に位置付けられて使用されている状態を模式的に示す図であり、(a)は、使用者の図示を省略したキャップの上面図であり、(b)は、使用者の頭部に装着された状態の(a)のキャップのIII-III線断面の模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るキャップの第2の領域が使用者の頭部の前方(図中左側)に位置付けられて使用されている状態を模式的に示す図であり、(a)は、使用者の図示を省略したキャップの上面図であり、(b)は、使用者の頭部に装着された状態の(a)のキャップのIV-IV線断面の模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るキャップの第1の領域が使用者の頭部の前方(図中左側)に位置付けられて使用されている状態を模式的に示す図であり、(a)は、使用者の図示を省略したキャップの上面図であり、(b)は、使用者の頭部に装着された状態の(a)のキャップのV-V線断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るキャップを説明する。ただし、以下の実施形態は一例にすぎず、本発明のキャップは、以下の実施形態に限定されることはない。
【0014】
本実施形態のキャップ1は、
図1に示されるように、使用者の頭部Hに装着されて使用される。キャップ1は、使用者の頭部Hに装着されることで、使用者の頭部Hの上方から落下する水が使用者の顔面にかかることを抑制する。キャップ1は、特に、使用者が頭部Hの髪を洗う際に水が顔面にかかるのを抑制する目的で洗髪用キャップとして好適に使用することが可能であるが、洗髪用としての使用に限定されることはなく、頭部Hの上方から水が落下する際に顔面に水がかかるのを抑制するニーズのある他の用途にも使用可能である。
【0015】
キャップ1は、
図1に示されるように、使用者の頭部Hが挿入可能な頭部挿入部2と、頭部挿入部2の外周に設けられる庇部3とを備える。キャップ1は、使用者の頭部Hが頭部挿入部2に挿入されることで、使用者の頭部Hに装着される。キャップ1は、本実施形態では使用者の頭部Hの上部を覆う部分が設けられていないので、使用者の頭髪の少なくとも一部が上側に露出するように使用者の頭部Hに装着される。したがって、使用者は、キャップ1を頭部Hに装着した状態で頭部Hの髪を洗うことができる。ただし、キャップ1は、洗髪以外の用途に用いられる場合には、使用者の頭部Hの上部を覆う部分が設けられてもよい。
【0016】
頭部挿入部2は、使用者の頭部Hが挿入される部位である。頭部挿入部2は、使用者の頭部Hが挿入されることで実質的に閉じられて、頭部Hと庇部3との間を水が通過するのが抑制される。頭部挿入部2は、
図1および
図2(a)に示されるように、外周の全部に庇部3が設けられた略円形状の孔として形成されている。頭部挿入部2は、使用者の頭部Hの大きさに対応する大きさを有し、使用者の頭部Hが挿入されることで実質的に閉じられる大きさに形成されている。ただし、頭部挿入部2は、使用者の頭部Hが挿入された状態の少なくとも頭部Hの前方位置において、頭部Hと庇部3との間を水が通過するのを抑制して顔面に水がかかるのを抑制することができれば、本実施形態に限定されることはない。たとえば、頭部挿入部2は、必ずしも外周の全部に庇部3が設けられていなくてもよく、外周の一部に庇部3が設けられた構造であってもよい。また、頭部挿入部2は、使用者の頭部Hの形状に適合するように変形可能に構成されていてもよい。
【0017】
庇部3は、使用者の頭部Hの上方から落下する水が使用者の顔面にかかるのを抑制する部位である。庇部3は、
図1および
図2(a)に示されるように、頭部挿入部2の外周に沿って設けられ、頭部挿入部2の外周の全部に亘る略円環状に形成されている。庇部3は、頭部挿入部2の外周に位置し、頭部挿入部2を画定する内縁31と、内縁31よりも外側(使用者の頭部Hから離れる側)に位置する外縁32との間に延在する。庇部3は、庇部3の上面に落下する水Wが、庇部3の上面に沿って外縁32に向かって流れ、外縁32を越えて下方に落下するように構成されている(
図3~
図5を参照)。キャップ1は、使用者の頭部Hの上方から落下する水Wが使用者の顔面(特に目)から離れた位置(外縁32を越えた位置)で下方に落下するように構成されているので、使用者の水に対する恐怖心を和らげることができる。
【0018】
なお、庇部3は、使用者の頭部Hの上方から落下する水が使用者の顔面にかかるのを抑制することができれば、必ずしも頭部挿入部2の外周の全部に亘って設けられる必要はない。庇部3は、キャップ1が使用者の頭部Hに装着される際に、少なくとも使用者の頭部Hの前方の位置に有ればよく、頭部挿入部2の外周の一部に設けられていてもよい。庇部3の形状もまた、特に限定されることはなく、略楕円環状、略半円環状など、他の形状であってもよい。庇部3は、使用者の頭部Hの上方から落下する水が使用者の顔面にかかるのを抑制することができるように、その大きさを適宜設定することができる。
【0019】
庇部3は、使用者の頭部Hの上方から落下する水の衝撃や、表面に滞留する水の荷重によって破損するのを抑制する強度を有していればよく、その材質は特に限定されない。庇部3は、たとえば合成樹脂や金属により形成することができるが、使用者による取扱いの容易さの観点から、軽量であることが好ましく、合成樹脂により形成されることが好ましい。また、庇部3は、使用者の頭部Hへの取り付け易さの観点から、使用者の頭部Hの形状に応じて変形可能であることがさらに好ましく、構成材料として、たとえば低密度ポリエチレン、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)などの軟質樹脂が好適に採用される。
【0020】
庇部3は、本実施形態では、
図1および
図2に示されるように、庇部3の内縁31から外縁32に向かって延びる凸状の山部33および凹状の谷部34を備えている。山部33および谷部34は、互いに隣接して設けられている。山部33および谷部34は、谷部34の底部34aの延びる方向が、山部33の頂部33aの延びる方向に対して、内縁31から外縁32に向かって下方に傾斜するように配置される(
図2(b)を参照)。したがって、庇部3の上面に落下した水は、山部33から谷部34に流れ、谷部34に沿って内縁31から外縁32に向かって流れ、外縁32から下方に落下する。このように水が優先的に流れる方向を設けることで、庇部3上に水が滞留することが抑制されるので、滞留する水の荷重で庇部3が変形することを抑制できる。それにより、庇部3の強度を低く抑えることができるので、庇部3を軽量化することができる。
【0021】
庇部3は、本実施形態では、山部33および谷部34が頭部挿入部2の外周に沿って、頭部挿入部2の外周の全部に亘って交互に連続的に配置された波板状に形成されている。しかし、庇部3は、使用者の頭部Hの上方から落下する水が使用者の顔面にかかるのを抑制することができれば、図示された例に限定されることはなく、山部33および谷部34が庇部3の一部だけに設けられていてもよいし、山部33および谷部34が全く設けられずに平坦に形成されていてもよい。
【0022】
庇部3は、本実施形態では、
図1および
図2に示されるように、庇部3の内縁31と山部33および谷部34との間に設けられる壁部35をさらに備えている。壁部35は、山部33および谷部34よりも上方に突出すように形成されている。庇部3は、内縁31側に、上方に突出する壁部35が設けられることで、上方から落下した水は優先的に壁部35から外縁32側に流れるので、内縁31近傍に水が滞留することが抑制される。したがって、使用者の頭部Hと庇部3との間を通って水が落下するのが抑制される。
【0023】
庇部3は、
図1および
図2(a)に示されるように、庇部3の外縁32よりも内側(頭部Hに近い側)に、水が落下可能な複数の排水孔P1、P2が設けられている。排水孔P1、P2は、庇部3を上下方向に貫通する孔であり、庇部3の上面に落下する水を庇部3の下に落下させる。庇部3の外縁32よりも内側に排水孔P1、P2が設けられることで、庇部3の上面に落下する水Wの少なくとも一部は、外縁32よりも内側の、使用者の顔面により近い側で水Wが落下する(
図4および
図5を参照)。キャップ1は、使用者の顔面により近い側で水を落下させることで、使用者を水に慣れさせることができるので、使用者の水に対する恐怖心を克服する一助とすることができる。
【0024】
複数の排水孔P1、P2は、
図2(a)に示されるように、内縁31からの距離がそれぞれ略同一になるように、そして、頭部挿入部2の外周の周方向に沿って互いに(少なくとも一部は略同一の)間隔を空けて配置される。複数の排水孔P1、P2の内縁31からの距離をそれぞれ略同一とすることで、使用者の頭部Hからの距離を略同一とすることができ、それによって落下する水の顔面からの距離を略同一とすることができる。また、複数の排水孔P1、P2がそれぞれ互いに略同一の間隔を空けて配置されることで、顔面の前を落下する水の量が周方向で変動するのを抑制することができる。ただし、排水孔P1、P2は、庇部3の外縁32よりも内側に設けられて庇部3の上面に落下する水を下方に落下させることができればよく、設けられる位置は図示された例に限定されない。
【0025】
排水孔は、
図2(a)に示されるように、大きさの異なる複数の排水孔P1、P2を備える。より具体的には、排水孔は、第1の面積A1を有する第1の排水孔P1と、第1の面積A1とは異なる第2の面積A2を有する第2の排水孔P2とを備えている。本実施形態では、第1の面積A1が、第2の面積A2よりも大きい。このように排水孔が大きさの異なる複数の排水孔P1、P2を備えることで、使用者の頭部Hの前方に位置付ける排水孔P1、P2の種類を選択することができ、それによって使用者の顔面に近い位置で落下する水の量を選択(調節)することができる。キャップ1は、使用者の水に対する恐怖心の大きさに応じて落下する水の量を調節することで、使用者の水に対する恐怖心を徐々に克服する一助とすることができる。
【0026】
第1の排水孔P1は、本実施形態では、
図2(a)に示されるように、複数(図示された例では8つ)備えている。複数の第1の排水孔P1はそれぞれ、内縁31からの距離がそれぞれ略同一になるように、そして、頭部挿入部2の外周の周方向に沿って互いに略同一の間隔を空けて配置される。第1の排水孔P1のそれぞれは、頭部挿入部2の外周の周方向に沿って、庇部3の山部33と谷部34とに交互に設けられている。第1の排水孔P1が庇部3の山部33に設けられている場合は、山部33の上の水の大部分は谷部34に流れるので、第1の排水孔P1を介して落下する水の量は少ない。一方、第1の排水孔P1が庇部3の谷部34に設けられている場合は、谷部34に沿って流れる水が第1の排水孔P1に流れ込むので、第1の排水孔P1を介して落下する水の量は多くなる。
【0027】
第2の排水孔P2は、本実施形態では、
図2(a)に示されるように、複数(図示された例では8つ)備えている。複数の第2の排水孔P2はそれぞれ、内縁31からの距離がそれぞれ略同一になるように、そして、頭部挿入部2の外周の周方向に沿って互いに(少なくとも一部は略同一の)間隔を空けて配置される。第2の排水孔P2はすべて、庇部3の山部33に設けられている。第2の排水孔P2が庇部3の山部33に設けられていることで、山部33の上の水の大部分は谷部34に流れるので、第2の排水孔P2を介して落下する水の量は少ない。
【0028】
排水孔は、本実施形態では面積が異なる2種類の排水孔P1、P2を備えているが、面積が同じ排水孔を複数備えていてもよいし、面積が異なる3種類以上の排水孔を備えていてもよい。また、排水孔は、複数備えられていればよく、その数は限定されない。また、排水孔は、本実施形態では庇部3の山部33および/または谷部34に設けられているが、他の部位に設けられてもよい。
【0029】
ここで、庇部3は、
図2(a)に示されるように、排水孔P1、P2が設けられる領域S1、S2と、排水孔P1、P2が設けられない領域S3とを備えている。より具体的には、庇部3は、第1の排水孔P1が設けられる第1の領域S1と、第2の排水孔P2が設けられる第2の領域S2と、排水孔P1、P2が設けられない第3の領域S3とを備えている。本実施形態では、第1の領域S1、第2の領域S2および第3の領域S3は、頭部挿入部2の外周の周方向に沿って連続的に設けられている。キャップ1は、庇部3の排水孔P1、P2が設けられる領域S1、S2を使用者の頭部Hの前方に位置するようにキャップ1を使用者の頭部Hに装着することにより、使用者の顔面により近い位置で水Wを落下させることができる(
図4および
図5を参照)。そして、使用者の頭部Hの前方に位置付ける領域を第1の領域S1または第2の領域S2のいずれかに選択することにより、使用者の顔面により近い位置で落下する水Wの量を選択することができる。また、キャップ1は、庇部3の第3の領域S3を使用者の頭部Hの前方に位置するようにキャップ1を使用者の頭部Hに装着することにより、使用者の顔面から遠い位置で水Wを落下させることができる(
図3を参照)。なお、庇部3は、本実施形態では第1~第3の領域S1~S3の3つの領域を備えているが、その数や配置は特に限定されることはなく、1つまたは2つの領域により構成されていてもよいし、4つ以上の領域により構成されていてもよい。
【0030】
庇部3は、
図1および
図2(a)に示されるように、排水孔P1、P2が設けられる領域S1、S2と排水孔P1、P2が設けられない領域S3とを判別するための特徴部F1、F2、F3を備えている。特徴部F1、F2、F3は、本実施形態では、排水孔P1、P2が設けられる領域S1、S2を判定するための有孔領域特徴部(第1の特徴部F1、第2の特徴部F2)と、排水孔P1、P2が設けられない領域S3を判定するための無孔領域特徴部(第3の特徴部F3)とを備えている。有孔領域特徴部は、庇部3の排水孔P1、P2が設けられる領域S1、S2に設けられ、無孔領域特徴部は、庇部3の排水孔P1、P2が設けられない領域S3に設けられる。なお、特徴部F1、F2、F3は、本実施形態では有孔領域特徴部および無孔領域特徴部の両方を備えているが、排水孔P1、P2が設けられる領域S1、S2と排水孔P1、P2が設けられない領域S3とを判別するという目的のためには少なくともいずれか一方を備えていてもよい。
【0031】
有孔領域特徴部は、本実施形態では、第1の排水孔P1が設けられる第1の領域S1と第2の排水孔P2が設けられる第2の領域S2とを判別するために用いることができるように構成されている。有孔領域特徴部は、
図2(a)に示されるように、第1の排水孔P1が設けられる第1の領域S1を判定するための第1の特徴部F1と、第2の排水孔P2が設けられる第2の領域S2を判定するための、第1の特徴部F1とは異なる第2の特徴部F2とを備えている。第1の特徴部F1は、第1の領域S1に設けられ、第2の特徴部F2は、第2の領域S2に設けられる。より具体的には、第1の特徴部F1は、第1の領域S1の、頭部挿入部2の外周の周方向における略中央に設けられ、第2の特徴部F2は、第2の領域S2の、頭部挿入部2の外周の周方向における略中央に設けられる。第1の特徴部F1および第2の特徴部F2がそれぞれ第1の領域S1および第2の領域S2の略中央に設けられることで、頭部Hの前方位置に対する位置合わせが容易である。なお、有孔領域特徴部は、本実施形態では第1の特徴部F1および第2の特徴部F2の両方を備えているが、第1の領域S1と第2の領域S2とを判別するという目的のためには少なくともいずれか一方のみを備えていてもよい。
【0032】
特徴部F1、F2、F3は、使用者の少なくとも視覚および/または触覚により存在が認識可能な部位である。特徴部F1、F2、F3は、
図2(a)に示されるように、排水孔P1、P2とは別に設けられている。特徴部F1、F2、F3は、たとえば、排水孔P1、P2よりも大きな形状である、あるいは文字が付されているなど、排水孔P1、P2よりも認識容易に形成されている。したがって、使用者は、湯気で曇っていて視界が遮られているような風呂場でキャップ1を使用する場合に、排水孔P1、P2を容易に認識できないときであっても、特徴部F1、F2、F3を認識することで、排水孔P1、P2が設けられている領域S1、S2と排水孔P1、P2が設けられていない領域S3とを容易に判別することができ、また、第1の排水孔P1が設けられる第1の領域S1と第2の排水孔P2が設けられる第2の領域S2とを容易に判別することができる。
【0033】
第1~第3の特徴部F1~F3は、互いに対して識別可能であればよく、その構成は特に限定されない。本実施形態では、
図2(a)に示されるように、第1の特徴部F1は、上面視が略台形状の凹部であり、第2の特徴部F2は、上面視が略円形状の凹部であり、第3の特徴部F3は、上面視が略三角形状の凹部である。つまり、第1の特徴部F1、第2の特徴部F2および第3の特徴部F3は、互いに異なる形状的特徴を有しているので、互いに対して視覚および/または触覚により識別可能である。たとえば、使用者は、第1~第3の特徴部F1~F3を目で認識することにより、第1~第3の領域S1~S3を互いに判別して、必要とする第1~第3の領域S1~S3を頭部Hの前方に位置付けて、キャップ1を頭部Hに装着することができる。また、使用者は、キャップ1を使用している際に頭部Hの前方に位置付ける第1~第3の領域S1~S3を変更する場合には、キャップ1の上面にある第1~第3の特徴部F1~F3を視認することはできないが、手で触れることにより認識して、第1~第3の領域S1~S3を互いに判別して、必要とする第1~第3の領域S1~S3を頭部Hの前方に位置付けることができる。
【0034】
また、第1~第3の特徴部F1~F3はそれぞれ、
図2(a)に示されるように、たとえば「1」、「2」、「3」などの異なる数字(または文字、絵など)が付されていてもよい。第1~第3の特徴部F1~F3は、互いに異なる数字、文字、絵などが付されることで、使用者が目で見て明確に認識しやすい。使用者はもちろんのこと、たとえば、使用者によるキャップ1の使用を補助する、親などの使用補助者もまた、キャップ1を上面から見ることによって、第1~第3の領域S1~S3を容易に判別することができる。
【0035】
つぎに、
図3~
図5を参照して、本実施形態のキャップ1の使用方法について説明する。ただし、本発明のキャップは、以下の説明に限定されることはない。
【0036】
キャップ1は、たとえば水に対する恐怖心が大きい使用者に適用される場合には、
図3に示されるように、排水孔P1、P2が設けられない第3の領域S3が頭部Hの前方(図中左側)に位置するように頭部Hに取り付けられる。このとき、使用者は、第3の特徴部F3を認識することで、第3の領域S3を容易に判定することができる。キャップ1が頭部Hに装着された状態では、頭部Hの上方から庇部3の上面に落下した水Wは、庇部3の内縁31から外縁32に向かって流れ、外縁32を越えて下方に落下する(
図3(b)を参照)。このとき、落下する水Wは、使用者の顔面(特に目)から離れた位置にあるために、使用者が感じる水に対する恐怖心を和らげることができる。
【0037】
キャップ1は、たとえば水に対する恐怖心を克服しようとする使用者に適用される場合には、
図4および
図5に示されるように、排水孔P1、P2が設けられる領域S1、S2が頭部Hの前方(図中左側)に位置するように頭部Hに取り付けられる。このとき、使用者は、有孔領域特徴部(第1の特徴部F1、第2の特徴部F2)を認識することで、排水孔P1、P2が設けられる領域S1、S2を容易に判定することができる。キャップ1が頭部Hに装着された状態では、頭部Hの上方から庇部3の上面に落下した水Wは、庇部3の内縁31から外縁32に向かって流れ、外縁32を越えて水Wが落下すると同時に、外縁32よりも内側に位置する排水孔P1、P2から水Wが落下する(
図4(b)、
図5(b)を参照)。キャップ1は、顔面(特に目)により近い位置で水Wを落下させて、使用者を水に慣れさせることで、使用者が水に対する恐怖心を克服する一助とすることができる。
【0038】
このとき、相対的に小さい面積を有する第2の排水孔P2が設けられる第2の領域S2と(
図4を参照)、相対的に大きい面積を有する第1の排水孔P1が設けられる第1の領域S1と(
図5を参照)を順に選択してもよい。
【0039】
すなわち、キャップ1は、まず、
図4に示されるように、相対的に小さい面積を有する第2の領域S2が頭部Hの前方(図中左側)に位置するように頭部Hに取り付けられる。このとき、使用者は、第2の特徴部F2を認識することで、第2の排水孔P2が設けられる第2の領域S2を容易に判定することができる。キャップ1が頭部Hに装着された状態では、頭部Hの上方から庇部3の上面に落下した水Wは、庇部3の内縁31から外縁32に向かって流れ、外縁32を越えて水Wが落下すると同時に、外縁32よりも内側に位置する第2の排水孔P2から水Wが落下する(
図4(b)を参照)。キャップ1は、顔面(特に目)により近い位置で、相対的に少ない量の水Wを落下させて、使用者を少しだけ水に慣れさせることで、使用者の水に対する恐怖心を少しだけ取り除くことができる。
【0040】
つぎに、使用者が少しだけ水に慣れてくると、キャップ1は、
図5に示されるように、第1の領域S1が頭部Hの前方(図中左側)に位置するように頭部Hに取り付けられる。このとき、使用者は、第1の特徴部F1を認識することで、第1の排水孔P1が設けられる第1の領域S1を容易に判定することができる。キャップ1が頭部Hに装着された状態では、頭部Hの上方から庇部3の上面に落下した水Wは、庇部3の内縁31から外縁32に向かって流れ、外縁32を越えて水Wが落下すると同時に、外縁32よりも内側に位置する第1の排水孔P1から水Wが落下する(
図5(b)を参照)。キャップ1は、顔面(特に目)により近い位置で、相対的に多い量の水Wを落下させて、使用者をさらに水に慣れさせることで、使用者の水に対する恐怖心をさらに多く取り除くことができる。
【0041】
以上に示したように、使用者の顔面により近い位置で落下させる水の量を段階的に増やしていくことで、キャップ1は、使用者が段階的に水に対する恐怖心を克服する一助とすることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 キャップ
2 頭部挿入部
3 庇部
31 内縁
32 外縁
33 山部
33a 頂部
34 谷部
34a 底部
35 壁部
A1 第1の面積
A2 第2の面積
F1 第1の特徴部
F2 第2の特徴部
F3 第3の特徴部
H 使用者の頭部
P1 第1の排水孔
P2 第2の排水孔
S1 第1の領域
S2 第2の領域
S3 第3の領域
W 水