(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】基板作業装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20230324BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20230324BHJP
H05K 13/08 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
G06T1/00 400D
H05K13/08 Q
(21)【出願番号】P 2019115390
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政二
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-177627(JP,A)
【文献】特開2013-243168(JP,A)
【文献】特開平10-275221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板作業装置であって、
基板に対する電子部品の実装作業を行う搭載ヘッドと、
前記搭載ヘッドを前記基板に対して移動させる駆動装置と、
前記搭載ヘッドにより保持された電子部品を対象物として撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像を画像処理する画像処理部と、を備え、
前記撮像部は、主走査方向に画素を一列状に配置したライン撮像部を副走査方向に複数ライン有するエリアセンサであり、
前記撮像部は、前記複数ラインのうち一部の特定ラインを用いて、前記搭載ヘッドによって前記副走査方向に移動する前記電子部品を連続して撮像し、
前記画像処理部は、前記ライン撮像部の副走査方向の撮像スケールS1と前記搭載ヘッドの副走査方向の移動ピッチである機械スケールS2とのスケール差Δがある場合、
前記ライン撮像部の前記特定ラインで撮影した画像データの副走査方向のスケールを、前記撮像スケールS1から前記機械スケールS2に変更する画像補正処理を実行する、基板作業装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板作業装置であって、
前記画像処理部は、前記副走査方向に隣接するライン間の画素の輝度差dPから、スケール変更に伴う輝度の変化量を補完して、前記ライン撮像部の前記特定ラインで撮影した画像データの副走査方向のスケールを、前記撮像スケールS1から前記機械スケールS2に変更する、基板作業装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の基板作業装置であって、
前記撮像スケールS1が前記機械スケールS2より小さい場合、
前記撮像部は、前記特定ラインと前記副走査方向で前記特定ラインの1つ後に位置する後方ラインで、前記電子部品を撮像し、
前記画像処理部は、
N番目のラインとN+1番目のラインの画素の輝度差dPと前記撮像スケールS1を用いて、N番目のラインとN+1番目のラインの画素間の輝度変化率dP/S1を算出し、
N番目のラインの画素について、機械スケール相当の画素に対する副走査方向のずれ量Wnを、前記スケール差Δから算出し、
前記輝度変化率dP/S1と、前記ずれ量Wnと、補正前のN番目の画素の輝度値P
(n)に基づいて、N番目の画素について、補正後の輝度値P'
(n)を算出する、基板作業装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の基板作業装置であって、
前記撮像スケールS1が前記機械スケールS2より大きい場合、
前記撮像部は、前記特定ラインと前記副走査方向で前記特定ラインの1つ前に位置する前方ラインで、前記電子部品を撮像し、
前記画像処理部は、
N-1番目のラインとN番目のラインの画素の輝度差dPと前記撮像スケールS1を用いて、N-1番目のラインとN番目のラインの画素間の輝度変化率dP/S1を算出し、
N番目のラインの画素について、機械スケール相当の画素に対する副走査方向のずれ量Wnを、前記スケール差Δから算出し、
前記輝度変化率dP/S1と、前記ずれ量Wnと、補正前のN番目の画素の輝度値P
(n)とに基づいて、N番目の画素について、補正後の輝度値P'
(n)を算出する、基板作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ライン状に延びる複数の撮像領域を有する撮像部が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、エリア型撮像素子であるCMOSエリアセンサに設けられた第1~第4撮像ラインにより、移動する対象物を撮像することが開示されている。上記特許文献1に記載の撮像装置は、COMSエリアセンサを制御するドライバと、CMOSエリアセンサにより撮像された対象物の画像を保存するメモリと、移動する対象物の位置を検出するロータリーエンコーダとをさらに備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駆動装置による電子部品の移動ピッチである機械スケールと、電子部品を撮像する撮像部の撮像スケールが合っていない場合、画像の重なりや抜けが生じて、画質が低下することがあった。
【0006】
本発明は、機械スケールと撮像スケールの不一致による画像の重なりや抜けを抑制して、良質な画質を取得することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基板作業装置は、基板に対する電子部品の実装作業を行う搭載ヘッドと、前記搭載ヘッドを前記基板に対して移動させる駆動装置と、前記搭載ヘッドにより保持された電子部品を対象物として撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された画像を画像処理する画像処理部と、を備え、前記撮像部は、主走査方向に画素を一列状に配置したライン撮像部を副走査方向に複数ライン有するエリアセンサであり、前記撮像部は、前記複数ラインのうち一部の特定ラインを用いて、前記搭載ヘッドによって前記副走査方向に移動する前記電子部品を連続して撮像し、前記画像処理部は、前記ライン撮像部の副走査方向の撮像スケールS1と前記搭載ヘッドの副走査方向の移動ピッチである機械スケールS2とのスケール差Δがある場合、前記ライン撮像部の前記特定ラインで撮影した画像データの副走査方向のスケールを、前記撮像スケールS1から前記機械スケールS2に変更する画像補正処理を実行する。
この装置は、撮像スケールS1と機械スケールS2のスケール差Δに基づいて、画像のスケールを変更する。スケールの不一致が解消され、画像の重なりや抜けを抑制することが出来る。
【0008】
前記基板作業装置の一実施態様として、前記画像処理部は、前記副走査方向に隣接するライン間の画素の輝度差dPから、スケール変更に伴う輝度の変化量を補完して、前記ライン撮像部の前記特定ラインで撮影した画像データの副走査方向のスケールを、前記撮像スケールS1から前記機械スケールS2に変更してもよい。補完は、スケール変更に伴う輝度の変化量を補う意味である。この構成では、輝度の変化量を補完するため、スケール変更に伴って輝度情報が失われることがなく、良質な画像データが得られる。
【0009】
前記基板作業装置の一実施態様として、前記撮像スケールS1が前記機械スケールS2より小さい場合、前記撮像部は、前記特定ラインと前記副走査方向で前記特定ラインの1つ後に位置する後方ラインで、前記電子部品を撮像し、前記画像処理部は、N番目のラインとN+1番目のラインの画素の輝度差dPと前記撮像スケールS1を用いて、N番目のラインとN+1番目のラインの画素間の輝度変化率dP/S1を算出し、N番目のラインの画素について、機械スケール相当の画素に対する副走査方向のずれ量Wnを、前記スケール差Δから算出し、前記輝度変化率dP/S1と、前記ずれ量Wnと、補正前のN番目の画素の輝度値P(n)に基づいて、N番目の画素について、補正後の輝度値P'(n)を算出してもよい。
【0010】
前記基板作業装置の一実施態様として、前記撮像スケールS1が前記機械スケールS2より大きい場合、前記撮像部は、前記特定ラインと前記副走査方向で前記特定ラインの1つ前に位置する前方ラインで、前記電子部品を撮像し、前記画像処理部は、N-1番目のラインとN番目のラインの画素の輝度差dPと前記撮像スケールS1を用いて、N-1番目のラインとN番目のラインの画素間の輝度変化率dP/S1を算出し、N番目のラインの画素について、機械スケール相当の画素に対する副走査方向のずれ量Wnを、前記スケール差Δから算出し、前記輝度変化率dP/S1と、前記ずれ量Wnと、補正前のN番目の画素の輝度値P(n)とに基づいて、N番目の画素について、補正後の輝度値P'(n)を算出してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機械スケールと撮像スケールの不一致による画像の重なりや抜けを抑制して、良質な画質を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】撮像スケールと機械スケールが一致している場合の画像データ
【
図7】撮像スケールと機械スケールが一致していない場合の画像データ
【
図8】撮像スケールと機械スケールが一致していない場合の画像データ
【
図11】画像データのずれ量の説明図(S1<S2)
【
図17】画像データのずれ量の説明図(S1>S2)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
1.部品実装装置の構成
図1~
図3を参照して、本発明の一実施形態による部品実装装置1の全体構成について説明する。なお、以下の説明では、基板搬送方向に沿う方向をX方向とし、水平面内でX方向と直交する方向をY方向とし、X方向およびY方向に直交する上下方向をZ方向とする。部品実装装置1は、「基板作業装置」の一例である。
【0015】
部品実装装置1は、IC、トランジスタ、コンデンサおよび抵抗などの電子部品Eを、プリント基板などの基板Aに実装する装置である。部品実装装置1は、基台2と、部品供給部3と、搬送部4と、ヘッドユニット5と、支持部6と、レール部7と、部品撮像装置8と、基板カメラ9と、制御部10とを備えている。
【0016】
基台2は、部品供給部3、搬送部4、レール部7、部品撮像装置8および制御部10を配置する基礎となる台である。基台2には、Y方向の両側に、部品供給部3が配置されている。基台2上には、搬送部4、レール部7および部品撮像装置8が設けられている。
【0017】
部品供給部3は、基板Aに実装される電子部品Eを供給する装置である。部品供給部3は、複数のテープフィーダ3aを含んでいる。テープフィーダ3aは、ヘッドユニット5による電子部品Eの取出しのための部品保持動作に応じて、部品供給テープを送り出すことにより、電子部品Eを供給する。
【0018】
搬送部4は、実装前の基板Aを、基台中央の実装作業位置に搬入し、実装後の基板Aを搬出する。搬送部4は、一対のコンベア部4aを含んでいる。
【0019】
ヘッドユニット5は、
図2に示すように、部品実装用のヘッドユニット5であり、実装作業位置において固定された基板Aに電子部品Eを実装する。具体的には、ヘッドユニット5は、複数の搭載ヘッド51と、搭載ヘッド51を上下方向に移動させるためのZ軸モータ52と、搭載ヘッド51の先端に装着されたノズル51aを上下方向に沿って延びる回転軸線周りに回転させるためのR軸モータ53とを含んでいる。
【0020】
搭載ヘッド51は、真空発生装置(図示せず)に接続されており、真空発生装置から供給される負圧によって、先端に装着されたノズル51aに電子部品Eを保持(吸着)可能に構成されている。また、搭載ヘッド51は、Z軸モータ52により、電子部品Eを保持する際または保持された電子部品Eを実装する際の下降位置と、保持された電子部品Eを基板Aに搬送する際の上昇位置との間で、上下方向に移動可能に構成されている。
【0021】
支持部6は、
図1に示すように、ヘッドユニット5を基板搬送方向(X方向)に移動可能に支持する。具体的には、支持部6は、基板搬送方向に延びるボールねじ軸6aと、ボールねじ軸6aを回転させるX軸モータ6bとを含んでいる。ヘッドユニット5には、支持部6のボールねじ軸6aと係合するボールナット(図示せず)が設けられている。ヘッドユニット5は、X軸モータ6bによりボールねじ軸6aが回転されることにより、ボールねじ軸6aと係合するボールナットとともに、支持部6に沿って基板搬送方向に移動可能に構成されている。ボールねじ軸6a、X軸モータ6bは、搭載ヘッド51をX方向(副走査方向)に移動させる駆動装置である。
【0022】
支持部6は、ロータリーエンコーダ6cを有している。エンコーダ6cは、X軸モータ6bの角位置を検出する位置センサである。エンコーダ6cは、X軸モータ6bが所定角度回転するごとに、パルス信号Spを出力する。
【0023】
一対のレール部7は、支持部6をY方向に移動可能に支持するように構成されている。具体的には、レール部7は、支持部6のX方向の両端部をY方向に移動可能に支持する一対のガイドレール7aと、Y方向に延びるボールねじ軸7bと、ボールねじ軸7bを回転させるY軸モータ7cとを含んでいる。支持部6には、レール部7のボールねじ軸7bと係合するボールナット(図示せず)が設けられている。支持部6は、Y軸モータ7cによりボールねじ軸7bが回転されることにより、ボールねじ軸7bと係合するボールナットとともに、一対のレール部7に沿ってY方向に移動可能に構成されている。ボールねじ軸7b、Y軸モータ7cは、搭載ヘッド51をY方向(主走査方向)に移動させる駆動装置である。
【0024】
レール部7は、ロータリーエンコーダ7dを有している。エンコーダ7dは、Y軸モータ7cの角位置を検出する位置センサである。エンコーダ7dは、Y軸モータ7cが所定角度回転するごとに、パルス信号Spを出力する。
【0025】
このような構成により、ヘッドユニット5は、基台2上を水平方向に(X方向およびY方向に)移動可能に構成されている。これにより、ヘッドユニット5は、部品供給部3の上方に移動して、部品供給部3から供給される電子部品Eを保持(吸着)することが可能である。また、ヘッドユニット5は、実装作業位置において固定された基板Aの上方に移動して、保持(吸着)された電子部品Eを基板Aに実装することが可能である。
【0026】
部品撮像装置8は、搭載ヘッド51に保持された電子部品Eを撮像する部品認識用のカメラである。部品撮像装置8は、基台2の上面上に固定されており、電子部品Eの下方から、搭載ヘッド51に保持された電子部品Eを撮像する。
【0027】
制御部10は、部品撮像装置8による電子部品Eの撮像画像に基づいて、電子部品Eの保持状態(回転姿勢および搭載ヘッド51に対する保持位置)を認識し、基板Aに対する電子部品Eの搭載位置や搭載角度を補正する処理を行う。
【0028】
部品撮像装置8は、
図3に示すように、電子部品Eに発光素子11aからの照明光を照射する照明部11と、電子部品Eによる照明光の反射光を受光して電子部品Eを撮像する二次元イメージセンサ12(エリアセンサ)とを備えている。二次元イメージセンサ12は、搭載ヘッド51により保持された電子部品Eを対象物として撮像する撮像部である。
【0029】
二次元イメージセンサ12は、
図3に示すように、主走査方向(Y方向)に画素Gを一列状に配置したライン撮像部Lを、副走査方向に複数ライン有するエリアセンサである。以下、ライン撮像部Lを単にラインLとも呼ぶ。二次元イメージセンサ12は、ラインLごとに画像の読み出しを行うことが出来る。二次元イメージセンサ12は、特定のラインLだけを使用して対象物の撮像が可能なROI(Region of Interest)機能を有している。
【0030】
この例では、L1~L12の全12ラインのうち、一部の特定ラインを使用して対象物の撮影を行う。この例では、L5~L8の4ラインを使用して対象物の撮像を行う。つまり、有効ライン数は4である。ROI機能は、移動物体の連続撮影を高速で行うことが出来るというメリットがある。二次元イメージセンサ12は、たとえば、任意の撮像部分の画像の切り出しが可能なCMOSイメージセンサである。
【0031】
部品撮像装置8は、二次元イメージセンサ12から出力される各ラインLの画像データから部品画像を生成する画像処理部13を含んでいる。
【0032】
画像処理部13は、演算処理部であるCPU21と、ROMおよびRAMなどからなるメモリ22とを有している。メモリ22は、後述する画像補正処理を実行するためのプログラムやデータが記憶されている。画像補正処理を実行するためのデータは、撮像スケールS1のデータと機械スケールS2のデータを含む。
【0033】
部品撮像装置8は、撮像制御部14と、照明制御部15を有している。撮像制御部14は、イメージセンサ12による電子部品Eの撮影タイミングと、照明制御部15を介して発光素子11aの点灯タイミングを制御する。
【0034】
制御部10は、
図3に示すように、CPU10aと、メモリ10bとを含み、部品実装装置1の動作を制御する制御回路である。制御部10は、部品供給部3、搬送部4、ヘッドユニット5、支持部6、レール部7、部品撮像装置8に電気的に接続されている。制御部10は、部品供給部3、搬送部4、ヘッドユニット5、支持部6、レール部7、部品撮像装置8および基板カメラ9などを生産プログラムに従って制御することにより、ヘッドユニット5により基板Aに電子部品Eを実装させる制御を行うように構成されている。
【0035】
2.電子部品Eの撮像動作
制御部10は、ヘッドユニット5の搭載ヘッド51に保持された電子部品Eが、部品撮像装置8上を移動するタイミングに合わせて撮像トリガTrを部品撮影装置8の撮像制御部14に出力する。
【0036】
具体的には、エンコーダ6cのパルス信号Spに基づいて出力タイミングを決めており、制御部10は、パルス信号Spが所定回数出力されるごとに、パルス信号Spに同期して撮像トリガTrを出力する。
図4の例では、搭載ヘッド51が、機械スケールS2の4倍分の距離を移動する間隔で撮影を行う。機械スケールS2は後述するように、8パルス周期であり、S2=Lp×8であることから、撮影トリガTrの周期Npは、8×4=32回である。
【0037】
制御部10から出力された撮影トリガTrは、撮像制御部14を介して、イメージセンサに入力される。イメージセンサ12は、撮像トリガTrに応答して、電子部品Eを撮像する。具体的には、ROI機能による4つの有効ラインL5~L8を用いて電子部品Eを撮像する。
図4の例では、時刻t1、時刻t2、時刻t3に撮像トリガTrが出力されており、
図5に示すように、X方向(副走査方向)に3分割して、電子部品Eを撮像する。
【0038】
電子部品Eを複数回に分けて連続的に撮影する場合、移動する電子部品Eに対して、撮像タイミングが、ずれていないことが望ましい。しかし、撮像スケールS1と機械スケールS2に相違がある場合(S1≠S2)、撮像タイミングにずれが生じて、画像に抜けが生じたり、重なりが生じる場合がある。
【0039】
撮像スケールS1は、(1)式で示すように、電子部品Eを撮影する時のライン撮像部Lの副走査方向の視野サイズD'である(
図6参照)。つまり、1ライン(1画素)当たりの視野サイズD'である。尚、Dはライン撮像部Lの副走査方向の画素サイズ、Z1は部品撮像装置8から電子部品Eまでの距離である。
【0040】
機械スケールS2は、X軸モータ6bによる搭載ヘッド51のX方向(副走査方向)の移動ピッチであり、LpとQから求めることが出来る。Lp(
図4参照)は、パルス信号Sp毎のX軸モータ6bによる搭載ヘッド51のX方向(副走査方向)の移動ピッチである。つまり、エンコーダ6cが1回のパルス信号Spを出力する間に、搭載ヘッド51がX方向に移動する距離である。X軸モータ6bの角位置を検出するエンコーダ6cは、機械スケールS2の1/Qの分解能であり、機械スケールS2は、エンコーダ6cによる搭載ヘッド51の移動ピッチLpと分周比Qの積として求めることが出来る。
【0041】
S1=D'・・・・・・・・(1)
S2=Lp×Q・・・・・(2)
【0042】
一般的に、「分周比Q」の値は、2、4、8、16などの定数(整数)である。この例では、「Q」=8であり、S2=Lp×8である。
【0043】
尚、
図4に示す四角枠Mは、1画素(1セル)あたりの画像データのサイズを示している。また、四角枠M内の数字は有効ラインのラインカント(番号)を示している。他の図も同様である。
【0044】
撮像スケールS1と機械スケールS2は、製造時の検査工程の測定値を用いることが出来る。また、測定値に限らず、設計値や理論値でもよい。撮像スケールS1と機械スケールS2は、製造段階でメモリ22に記憶しておくとよい。
【0045】
機械スケールS2と撮像スケールS1は、一致することが望ましい(S1=S2)。しかし、撮像スケールS1は視野のサイズ、機械スケールS2は、移動ピッチLpと分周比Qとを用いて上記の式(2)から算出されるスケールであり、2つのスケールS1、S2は、物理世界が異なる別のスケールである。そのため、2つのスケールS1、S2が一致しない場合がある(S1≠S2)。
【0046】
撮像スケールS1が機械スケールS2よりも小さい場合(S1<S2)、例えば、S1=24μM、S2=25μMの場合、電子部品Eの移動に対して撮像タイミングが遅れることになるから、各回の画像間に、画像の抜けが発生する。例えば、
図7に示すように、1回目に撮像したラインL8の画像と、2回目に撮像したラインL5の画像との間に、画像の抜けが発生する。また、2回目の撮像したラインL8の画像と、3回目に撮像したラインL5の画像との間に、画像の抜けが生じる。
【0047】
撮像スケールS1が機械スケールS2よりも大きい場合(S1>S2)、例えば、S1=24μM、S2=23μMの場合、電子部品Eの移動に対して撮像タイミングが早くなるから、各回の画像に、重なりが発生する。例えば、
図8に示すように、1回目に撮像したラインL8の画像と、2回目に撮像したラインL5の画像との間に重なりが発生する。また、2回目の撮像したラインL8の画像と、3回目に撮像したラインL5の画像との間に、重なりが発生する。
【0048】
画像処理部13のCPU21は、画像の抜けや重なりを解消するため、イメージセンサ12から出力される各有効ラインL5~L8の画像データを補正する画像補正処理を実行する。画像補正処理は、各有効ラインL5~L8の画像データのX方向のスケールを、撮像スケールS1から機械スケールS2に変更する補正である。
【0049】
(S1<S2の場合)
撮像スケールS1が機械スケールS2よりも小さい場合、イメージセンサ12により、L5~L9の5つのラインで、電子部品Eを撮像する。つまり、4本の有効ラインL5~L8に加えて、副走査方向(イメージセンサ12に対する電子部品Eの移動方向)で、有効ラインL8の後方(
図5の右側)に位置する後方ラインL9でも撮像を行う。
【0050】
そして、CPU21は、
図9に示すように、X方向に隣接する2ラインの画像データから輝度値Pを補完して、4つの有効ラインL5~L8で撮影した各画像データのX方向のスケールを撮像スケールS1から機械スケールS2に変更する。
【0051】
つまり、1番目の有効ラインL5と2番目の有効ラインL6の画素の輝度差dPから、スケール変更に伴う輝度の変化量を補完して、1番目の有効ラインL5の画像データのX方向のスケール誤差を修正する。
【0052】
また、2番目の有効ラインL6と3番目の有効ラインL7の画素の輝度差dPから、スケール変更に伴う輝度の変化量を補完して、2番目の有効ラインL6の画像データのX方向のスケール誤差を修正する。
【0053】
同様に、3番目の有効ラインL7と4番目の有効ラインL8の画素の輝度差dPから、スケール変更に伴う輝度の変化量を補完して、3番目の有効ラインL7の画像データのX方向のスケール誤差を修正する。そして、4番目の有効ラインL8と補正用に追加した5番目の有効ラインL9の画素の輝度差dPから、スケール変更に伴う輝度の変化量を補完して、4番目のラインL8の画像データのX方向のスケール誤差を修正する。
【0054】
下記の(4)式は、輝度値Pの補正式である。
P'(n)=P(n)+[(P(n+1)-P(n))/S1]×Wn・・・・(4)式
【0055】
P'(n)は補正後のN番目のラインLの画素Gの輝度値、P(n)は補正前のN番目のラインLの画素Gの輝度値である。S1は撮像スケール、Naは有効ライン数である。
【0056】
(4)式の[(P
(n+1)-P
(n))/S1]は、X方向に隣接する画素間の輝度変化率dP/S1、つまり、
図10に示す輝度変化直線Fの傾きを示している。
図10は、N番目とN+1番目のラインについて、画素Gの輝度値を棒グラフで示した図である。
【0057】
Wnは、
図11に示すように、機械スケール相当の画像データと比較した時の各有効ラインLの画素のX方向のずれ量であり、以下の(5)式により求めることが出来る。
【0058】
Wn=Δ×Lc・・・・・・・・・・(5)
【0059】
Δは機械スケールS2と撮像スケールS1のスケール差である。S2=25μM、S1=24μMの場合、スケール差Δは1μMである。
【0060】
Lcは、有効ラインのライン番号(ラインカウント)である。1番目の有効ラインL5の場合、ラインカウントLcは「1」である。2番目の有効ラインL6の場合、ラインカウントLcは「2」である。
【0061】
例えば、1番目の有効ラインの場合、
図12に示すように、補正前の輝度値P
(1)に対して、ずれ量W1による輝度増加分を加えた輝度値、つまり、輝度変化直線F上のC1点の輝度値が、補正後の輝度値P'
(1)として得られる。ずれ量W1は、機械スケール相当の画像データと比較した時の1番目の有効ラインL1の画素のX方向のずれ量である。
【0062】
また、2番目の有効ラインの場合、
図13に示すように、補正前の輝度値P
(2)に対して、ずれ量W2による輝度増加分を加えた輝度値、つまり、輝度変化直線F上のC2点の輝度値が、補正後の輝度値P'
(2)として得られる。
図14は、各有効ラインL5~L8について、補正後の輝度値P'
(n)の分布を棒グラフで示している。
【0063】
(S1>S2の場合)
撮像スケールS1が機械スケールS2よりも大きい場合、
図15に示すように、イメージセンサ12により、L4~L8の5つのラインで、電子部品Eを撮像する。つまり、4本の有効ラインL5~L8に加えて、副走査方向(イメージセンサ12に対する電子部品Eの移動方向)で、有効ラインL5の前方(
図5の左側)に位置する前方ラインL4でも撮像を行う。
【0064】
そして、CPU21は、X方向に隣接する2ラインの画像データから輝度値Pを補完して、有効ラインL5~L8の画像データのX方向のスケールを撮像スケールS1から機械スケールS2に変更する。
【0065】
つまり、補正用に追加したラインL4と1番目の有効ラインL5の画素の輝度値から、スケール変更に伴う輝度の変化量を補完して、1番目の有効ラインL5の画像データのX方向のスケールを撮像スケールS1から機械スケールS2に変更する。
【0066】
また、1番目の有効ラインL5と2番目の有効ラインL6の画素の輝度値から、スケール変更に伴う輝度の変化量を補完して、2番目の有効ラインL6の画像データのX方向のスケールを、撮像スケールS1からを機械スケールS2に変更する。
【0067】
同様に、2番目の有効ラインL6と3番目の有効ラインL7の画素の輝度値から、スケール変更に伴う輝度の変化量を補完して、3番目の有効ラインL7の画像データのX方向のスケールを、撮像スケールS1から機械スケールS2に変更する。そして、3番目の有効ラインL7と4番目の有効ラインL8の画素の輝度値から、スケール変更に伴う輝度の変化量を補完して、4番目のラインL8の画像データのX方向のスケールを、撮像スケールS1から機械スケールS2に変更する。
【0068】
下記の(6)式は、輝度値Pの補正式である。
P'(n)=P(n)-[(P(n)-P(n-1))/S1]×Wn・・(6)式
【0069】
P'(n)は補正後のN番目のラインLの画素Gの輝度値、P(n)は補正前のN番目のラインLの画素Gの輝度値である。S1は、撮像スケールである。
【0070】
(6)式の[(P
(n)-P
(n-1))/S1]は、X方向に隣接する画素間の輝度変化率dP/S1、つまり、
図16に示す輝度変化直線Fの傾きを示している。
図16は、N-1番目とN番目のラインについて、画素Gの輝度値を棒グラフで示した図である。
【0071】
Wnは、
図17に示すように、機械スケール相当の画像データと比較した時の各有効ラインLの画素のX方向のずれ量である。
【0072】
例えば、1番目の有効ラインの場合、
図18に示すように、補正前の輝度値P
(1)に対して、画素のずれ量W1による輝度減少を減じた輝度値、つまり、輝度変化直線F上のC3点の輝度値が、補正後の輝度値P'
(1)として得られる。
【0073】
また、2番目の有効ラインの場合、
図19に示すように、補正前の輝度値P
(2)に対して、画素のずれ量W2による輝度減少分を減じた輝度値、つまり、輝度変化直線F上のC4点の輝度値が、補正後の輝度値P'
(2)として得られる。
【0074】
画像処理部13は、イメージセンサ12により電子部品Eの撮像が行わる都度、上記の画像補正処理を実行する。そして、補正後のデータから部品画像を作成して、制御部10に出力する。
【0075】
3.効果説明
この発明では、イメージセンサ12の有効ラインL5~L8で撮影した各画像データのX方向のスケールを、撮像スケールS1から機械スケールS2に変更する補正を行うため、撮像スケールS1と機械スケールS2の不一致による画像の重なりや、抜けが生じることを抑制できる。
【0076】
電子部品Eと部品撮像装置8の相対的な位置関係のずれは、撮影スケールS1に影響する。つまり、基台2に対する部品撮像装置8の取付位置精度や、ヘッドユニット5の取付位置精度により、撮像スケールS1と機械スケールS2にスケール差Δが生じる場合がある。この技術を適用することで、部品撮像装置8やヘッドユニット5を、基台2に対して、高精度に位置決めする必要が無くなるというメリットがある。
【0077】
また、この技術を適用することで、2つのスケールS1、S2を一致させる制約はなくなるため、部品撮像装置8やX軸モータ66の選定種類が拡大するため、調整のロバスト性が高い。
【0078】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
(1)実施形態1では、画像処理部13を、部品撮像装置8に対して設けたが、制御部10に設けてもよい。
【0080】
(2)実施形態1では、制御部10から部品撮像装置8に撮影トリガTrを出力して、部品撮像装置8による電子部品Eの撮影タイミングを制御した。これ以外にも、エンコーダ6cの出力するパルス信号Spを部品撮像装置(撮像制御部)8に入力して、部品撮像装置8にて撮影タイミングを制御してもよい。
【0081】
(3)実施形態1では、輝度値の補完及び画像データのスケールを変更する処理を、画像処理部13のCPU21で行った。これらの処理は、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上のハード回路や、CPUとハード回路の組み合わせにより構成してもよい。
【0082】
(4)実施形態1では、画像データを撮像スケールS1から機械スケールS2に変更するにあたり、画像データの輝度を補正する処理、つまり、スケール変更に伴う輝度の変化量を補完する処理を行った。輝度の補正は、任意の処理であり、輝度は補正前の値を使用し、スケールだけを補正してもよい。
【0083】
(5)実施形態1では、イメージセンサ12は、搭載ヘッド51が機械スケールS2の4倍分の距離を移動する間隔で、電子部品Eの撮影を行った。イメージセンサ12は、搭載ヘッド51が機械スケールS2の5倍分の距離や6倍分の距離を移動する間隔で、電子部品の撮影を行ってもよい。この場合、イメージセンサ12のライン撮像部Lの有効ライン数を5ラインや6ラインにするとよい。
【符号の説明】
【0084】
1 部品実装装置(基板作業装置)
5 ヘッドユニット
8 部品撮像装置
12 二次元イメージセンサ(撮像部)
51 搭載ヘッド
A 基板
E 電子部品
G 画素
P 輝度値
L1~L12 ライン撮像部
L5~L8 有効ライン(特定ライン)