(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】柱吊治具及びワイヤ固定具
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20230324BHJP
【FI】
E04G21/16
(21)【出願番号】P 2019121876
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 孝
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-272386(JP,A)
【文献】実開平04-100185(JP,U)
【文献】特開2003-064877(JP,A)
【文献】特開2005-290786(JP,A)
【文献】実開平04-073163(JP,U)
【文献】特開昭58-181963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/16
B66C 1/00-3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り上げ装置に連結されて、上下の端部に開口部を有する係合部が側面に取り付けられた柱を建て起こす柱吊治具であって、
前記吊り上げ装置から延びるワイヤと連結する枠状のヘッド部材と、
前記ヘッド部材より下方に配置され、前記ヘッド部材から延びるワイヤと連結し、前記柱の前記係合部に着脱可能に固定されるワイヤ固定具と、を備え、
前記ワイヤ固定具は、
前記ヘッド部材から延びるワイヤと連結する基部と、
前記係合部の下側端部の開口部に挿入される第一係止片が形成された第一係止部と、
前記係合部の上側端部の開口部に挿入される第二係止片が形成され、上下方向に移動可能に設けられる第二係止部と、
前記第二係止部を前記基部から前記係合部に向けて付勢する付勢部と、を有することを特徴とする柱吊治具。
【請求項2】
前記ワイヤ固定具の前記基部は、前記ヘッド部材から延びるワイヤと連結し上下方向を中心軸として回転可能な環状部を有することを特徴とする請求項1に記載の柱吊治具。
【請求項3】
前記ワイヤ固定具は、作業員が前記第二係止部を把持できるよう、前記第二係止部に背面側から正面側に向かって突出するよう設けられた把持部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の柱吊治具。
【請求項4】
前記係合部は、板状部材を折り曲げることにより上下の端部に複数の開口部が形成されるよう前記柱の側面に取り付けられており、
前記第一係止片は、前記係合部の下側端部の前記複数の開口部に対応して複数、前記第一係止部に形成され、
前記第二係止片は、前記係合部の上側端部の前記複数の開口部に対応して複数、前記第二係止部に形成され、
前記第一係止部と前記第二係止部は、前記第二係止部が前記付勢部により前記基部から前記係合部に向けて付勢されたとき、前記第一係止片の先端と前記第二係止片の先端との距離が、前記係合部の上下方向の長さより短くなるよう構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の柱吊治具。
【請求項5】
柱の側面に取り付けられ上下の端部に開口部を有する係合部に、着脱可能に固定されるワイヤ固定具であって、
ワイヤと連結する基部と、
前記係合部の下側端部の開口部に挿入される第一係止片が形成された第一係止部と、
前記係合部の上側端部の開口部に挿入される第二係止片が形成され、上下方向に移動可能に設けられる第二係止部と、
前記第二係止部を前記基部から前記係合部に向けて付勢する付勢部と、を有することを特徴とするワイヤ固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱を立設させるための柱吊治具、及び、ワイヤを柱に固定するためのワイヤ固定具に関し、特に柱への取り付けが容易で且つ柱を確実に保持することが可能な柱吊治具及びワイヤ固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱の立設には、クレーン等の吊り上げ装置により柱の頂部を吊り下げる方法が一般に用いられてきた。この方法では、柱をアンカーボルトで固定した後、柱の頂部に取り付けられたワイヤを外す作業が必要であるが、その作業は高所でのものとなるため、柱の揺れと相まって危険性が高い作業であった。
【0003】
そのため、高所での作業を不要にすると共に安全性を向上させることを目的とした柱の吊り装置が提案されている。例えば、特許文献1には、クレーンにより吊られるフック掛けが備えられた上端金具と、上端金具の下方にワイヤを介して接続された枠状のヘッドと、ヘッドの下方にターンバックルにより長さが調整可能であるワイヤを介して接続された下端金具と、下端金具が着脱され柱の下部側面に固定された係止金具とからなる柱の吊り装置が提案されている。この柱の吊り装置によれば、柱との着脱は柱の下部側面で行われるため高所作業が伴わず安全性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の柱の吊り装置では、ワイヤと連結した下端金具を係止金具に取り付ける際、下端金具の下方からボルトを挿入して係止金具を締め付けている。そのため、取り付けるための工具が必要であり、下端金具の着脱に時間と手間がかかるものとなっていた。
【0006】
本発明は前記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、柱への取り付けが容易であり、且つ柱を確実に保持して建て起こすことが可能な柱吊治具を提供することにある。
また、別の目的としては、柱への取り付けが容易なワイヤ固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、本発明の柱吊治具によれば、吊り上げ装置に連結されて、上下の端部に開口部を有する係合部が側面に取り付けられた柱を建て起こす柱吊治具であって、前記吊り上げ装置から延びるワイヤと連結する枠状のヘッド部材と、前記ヘッド部材より下方に配置され、前記ヘッド部材から延びるワイヤと連結し、前記柱の前記係合部に着脱可能に固定されるワイヤ固定具と、を備え、前記ワイヤ固定具は、前記ヘッド部材から延びるワイヤと連結する基部と、前記係合部の下側端部の開口部に挿入される第一係止片が形成された第一係止部と、前記係合部の上側端部の開口部に挿入される第二係止片が形成され、上下方向に移動可能に設けられる第二係止部と、前記第二係止部を前記基部から前記係合部に向けて付勢する付勢部と、を有することにより解決される。
【0008】
ワイヤ固定具が柱の係合部に取り付けられると、ワイヤ固定具の第二係止部が係合部に向けて付勢されるため、ワイヤ固定具は係合部から外れることなく確実に取り付けられるようになる。また、作業者は第二係止部にかかる付勢を解除することにより、工具を用いることなくワイヤ固定具の着脱が可能であるため、柱吊治具の取り付けを容易に行うことができる。
【0009】
また、上記の柱吊治具に関して好適な構成を述べると、前記ワイヤ固定具の前記基部は、前記ヘッド部材から延びるワイヤと連結し上下方向を中心軸として回転可能な環状部を有することが望ましい。
ワイヤと連結する環状部が回転可能であることで、ワイヤがねじれた状態でワイヤ固定具の環状部に取り付けられた場合でも環状部を回転させることで容易にそのねじれを解消させることができる。
【0010】
また、上記の柱吊治具に関して好適な構成を述べると、前記ワイヤ固定具は、作業員が前記第二係止部を把持できるよう、前記第二係止部に背面側から正面側に向かって突出するよう設けられた把持部を有することが望ましい。
把持部を備えることで、例えば作業者は把持部を持ちながら第二係止部の付勢を容易に解除させることができる。
【0011】
また、上記の柱吊治具に関して好適な構成を述べると、前記係合部は、板状部材を折り曲げることにより上下の端部に複数の開口部が形成されるよう前記柱の側面に取り付けられており、前記第一係止片は、前記係合部の下側端部の前記複数の開口部に対応して複数、前記第一係止部に形成され、前記第二係止片は、前記係合部の上側端部の前記複数の開口部に対応して複数、前記第二係止部に形成され、前記第一係止部と前記第二係止部は、前記第二係止部が前記付勢部により前記基部から前記係合部に向けて付勢されたとき、前記第一係止片の先端と前記第二係止片の先端との距離が、前記係合部の上下方向の長さより短くなるよう構成されることが望ましい。
第一係止片及び第二係止片が複数形成されることにより、より安定してワイヤ固定具を柱に取り付けることができる。
また、第二係止部が付勢されたとき、第一係止片の先端と第二係止片の先端との距離が、係合部の上下方向の長さより短くなることで、第一係止片及び第二係止片が係合部の上下の開口部から外れ難くなる。
【0012】
また、上記課題は、本発明のワイヤ固定具によれば、柱の側面に取り付けられ上下の端部に開口部を有する係合部に、着脱可能に固定されるワイヤ固定具であって、ワイヤと連結する基部と、前記係合部の下側端部の開口部に挿入される第一係止片が形成された第一係止部と、前記係合部の上側端部の開口部に挿入される第二係止片が形成され、上下方向に移動可能に設けられた第二係止部と、前記第二係止部を前記基部から前記係合部に向けて付勢する付勢部と、を有することにより解決される。
【0013】
ワイヤ固定具が柱の係合部に取り付けられると、ワイヤ固定具の第二係止部が係合部に向けて付勢されるため、ワイヤ固定具を柱の係合部から外れることなく確実に取り付けるようになる。また、作業者は第二係止部にかかる付勢を解除することにより、工具を用いることなくワイヤ固定具の着脱が可能であるため、容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る柱吊治具によれば、柱への取り付けが容易であり、且つ柱を確実に保持して立設させることが可能な柱吊治具を提供することができる。
また、本発明に係るワイヤ固定具によれば、柱へ容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る柱吊治具を示す斜視図である。
【
図2】柱吊治具のワイヤ固定具を示す斜視図である。
【
図3】柱吊治具のワイヤ固定具を示す正面図であり、ワイヤ固定具を柱に固定する前の状態を示す図である。
【
図4】柱吊治具のワイヤ固定具を示す正面図であり、ワイヤ固定具を柱に固定した状態を示す図である。
【
図5】柱に固定した状態のワイヤ固定具を示す側面図である。
【
図6】柱に固定した状態のワイヤ固定具を示す平面図である。
【
図7B】柱を建て起こす途中の状態を示す図である。
【
図7C】柱を吊り上げ装置により吊り上げた状態を示す図である。
【
図7D】柱を立設させ基礎に固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る柱吊治具10について
図1~
図7Dを用いて説明する。以下の実施形態において同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付して示し、理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
【0017】
また、以下の説明中、
図1に記載の矢印で示すように、上下方向とは、立設した柱である鉄骨柱1に柱吊治具10が取り付けられたときの上下方向を意味する。また、ワイヤ固定具20の正面、背面とは、鉄骨柱1に固定されたときに鉄骨柱1に対峙する面を背面とし、正面は鉄骨柱1とは反対側の面であることとする。また、鉄骨柱1を基準として外側及び内側を定める。すなわち、鉄骨柱1の中心の近付く方向を内方向、遠ざかる方向を外方向とする。
【0018】
図1に、柱である鉄骨柱1と、鉄骨柱1を建て起こすために取り付けられた柱吊治具10とを示す。本発明は、建物の躯体に使用される鉄骨柱1を、横倒しに仮置きさせた状態から、吊り上げ装置により建て起こし、吊り上げて所望の場所まで移動させた後、立設させた状態で固定するために用いられる柱吊治具10に関するものである。
【0019】
柱吊治具10により建て起こす鉄骨柱1は、
図1及び
図2に示すように断面矩形の鉄骨柱であり、鉄骨柱1の側面には、足場として仮設される作業床を設置するための係合部2が取り付けられている。係合部2は、
図1及び
図2に示すように屈曲した板状部材を折り曲げることにより形成され、溶接等により、鉄骨柱1の側面に取り付けることにより構成される。
鉄骨柱1の外周面と係合部2との間には、折り曲げることにより形成された上下方向に延びる隙間が2か所形成されおり、上下の端部に開口部2a、2bがそれぞれ二つずつ形成されている。作業床(図示しない)を設置する際は、係合部2の上側の開口部2aに作業床に形成された係止爪を挿入して、作業床を固定する。
係合部2は、
図1に示すようにいくつかの高さで作業床を設置することができるよう、鉄骨柱1の各側面において上下方向に、所定の間隔をあけて設けられている。
【0020】
作業床を設置するための係合部2が溶接されていることにより、従来、鉄骨柱1の側面に作業床や梯子を取りつけるために形成された孔を設ける必要がなくなる。また、鉄骨柱1に孔を形成する作業には手間がかかることから、鉄骨柱1を吊り上げて移動するために、予め設けられた鉄骨柱1の係合部2を用いることが望ましい。また、鉄骨柱1に孔が形成されないため、孔を形成した場合と比較してより高い強度を得ることができ好適である。
鉄骨柱1の下端には、基礎に固定するための柱プレート30が設けられている。柱プレート30の四隅には、鉄骨柱1を基礎32に固定するアンカーボルト33(
図7D参照)を通す貫通孔30aが形成されている。
【0021】
柱吊治具10は、吊り上げ装置、例えばクレーン(図示しない)に連結され、柱である鉄骨柱1を建て起こすものである。柱吊治具10は、ヘッド部材12と、一対のワイヤ固定具20とを備える。ヘッド部材12は枠状の部材であり、本実施形態では
図1に示すように鉄骨柱1の上端に配置され、クレーンから延びる2本のワイヤ14,14と連結する。一対のワイヤ固定具20は、ヘッド部材12より下方に配置され、ヘッド部材12から延びる2本のワイヤ15,15のそれぞれと連結する。また、一対のワイヤ固定具20は、鉄骨柱1の側面に取り付けられ、互いに反対方向に位置する係合部2に着脱可能に固定される。なお、ヘッド部材12が取り付けられる位置は、鉄骨柱1の上端に限定されず、クレーンにより建て起こすことが可能である位置、例えば鉄骨柱1の中央付近に設置されてもよい。また、ワイヤ15の長さLは、鉄骨柱1を建て起こしたとき、ヘッド部材12が、鉄骨柱1の頂部(上端部)から外れない長さに設定されている。言い換えれば鉄骨柱1を立設させたときのワイヤ15の上端の位置は、鉄骨柱1の高さHよりも低くなるよう設定されている。
【0022】
ヘッド部材12の上方にはストッパ13を設けられている。ストッパ13は、クレーンから延びるワイヤ14が外れたとき下方にヘッド部材12が落下することを防止する。また、ヘッド部材12の側部には、ワイヤ14の端部に設けられたフック18と、ワイヤ15の端部に設けられたフック17とを掛けるためのフック掛け12aが設けられている。
【0023】
ワイヤ固定具20は、上記したように、鉄骨柱1の側部に設けられた係合部2に着脱可能に固定される治具であり、
図2~
図6に示すように、ヘッド部材12から延びるワイヤ15に連結する基部21を有する。基部21は、矩形の板状に形成された金属製の部材であり、両端部から下方に延びる支持部22,22が設けられている。
【0024】
また、ワイヤ固定具20は、支持部22,22により基部21と所定距離離れた位置に設けられた第一係止部23を有する。第一係止部23の上端には、係合部2の下側端部の開口部2b,2bに挿入される第一係止片23a,23aが形成されている。
ワイヤ固定具20は、付勢部25と、付勢部25から係合部2に向けて付勢される第二係止部24を有する。第二係止部24は上下方向に移動可能であり、付勢部25は、ワイヤ固定具20を係合部2に取り付けるときに、第二係止部24を基部21から係合部2に向けて、下方(
図4の矢印B方向)に付勢する。また、第二係止部24は、係合部2の上側端部の開口部2a,2aに挿入される第二係止片24a,24aが下端に形成されている。
【0025】
付勢部25は、
図2~
図6に示すように、基部21に対して上下方向に摺動可能に設けられた軸部材25bと、軸部材25bを内包して基部21と第二係止部24との間に配置されるバネ25aとから構成される。作業者は、ワイヤ固定具20を、鉄骨柱1に取り付ける際、
図3に示すように、ワイヤ固定具20の第二係止部24を上方(
図3の矢印A方向)に押し上げる。第二係止部24を押し上げた状態、すなわち、第二係止部24の係合部2への付勢を解除した状態では、第一係止片23aの先端と第二係止片24aの先端との距離D1が、係合部2の上下方向の長さL1より長くなる。そのため、第一係止部23と第二係止部24との間に係合部2を配置することができる。
係合部2を第一係止部23と第二係止部24との間に配置した後、作業者は、付勢部25の押し上げるのをやめ、付勢部25が第二係止部24を付勢することで、第二係止部24を下方(
図4の矢印B方向)に移動させる。第一係止部23の第一係止片23a,23aが、係合部2の下端側の開口部2b,2bのそれぞれに挿入されるとともに、第二係止部24の第二係止片24a,24aが係合部2の上端側の開口部2a,2aに挿入される。
【0026】
そして、
図4に示すように、係合部2の長さL1より、第一係止片23aの先端と第二係止片24aの先端との距離D2が短くなる。付勢部25により、第二係止部24が付勢されることから、第一係止片23a,23a及び第二係止片24a,24aが係合部2の上下の開口部2a、2bから外れ難くなり、ワイヤ固定具20を係合部2に確実に固定することができる。
【0027】
第二係止部24には、背面側から正面側に突出する把持部26が形成されている。把持部26により、ワイヤ固定具20を鉄骨柱1に取り付けたり或いは取り外したりするとき、第二係止部24を押し上げ易くなる。そのためより容易に取り付けを行うことができる。
【0028】
基部21は、ヘッド部材12から延びるワイヤ15の下端に設けられたフック16を掛ける環状部27を有する。環状部27は、基部21の上面に固定される。環状部27は、基部21に対して上下方向を中心軸として、
図6の矢印D方向に回転可能に固定されてもよい。環状部27を回転可能に取り付けることで、例えばフック16を掛けた後、ワイヤ15がねじれたとしても、環状部27を回転させることでねじれを解消することができる。
【0029】
本実施形態では、第一係止部23の第一係止片23a及び第二係止部24の第二係止片24aは、それぞれ二つ設けられているが、第一係止片23a、第二係止片24aは、係合部2の開口部2a、2bの数に合わせて、1つでも、3つ以上設けられてよい。第一係止片23a、第二係止片24aを複数設けることで、ワイヤ固定具20を傾けることなく安定して係合部2に取り付けることができる。
【0030】
図7A~
図7Dに、本実施形態の柱吊治具10の使用状態を示す。
図7Aに示すように、柱吊治具10は、横倒し状態で枕木31の上に仮置きされた鉄骨柱1に取り付けられる。まず、ヘッド部材12が、鉄骨柱1が立設されたときに上方になる端部に被さるよう装着される。
【0031】
ヘッド部材12を装着した後、ヘッド部材12とワイヤ固定具20とを、ワイヤ15により接続する。ワイヤ15の両端に、フック機構を有するフック16,17が設けられていると、容易にワイヤ15をヘッド部材12とワイヤ固定具20に取り付けることができる。そして、ワイヤ固定具20を、鉄骨柱1が立設されたときに下方に位置する係合部2に取り付ける。
【0032】
次に、ヘッド部材12を、ワイヤ14を介してクレーンに接続する。そして、クレーンを作動させヘッド部材12を吊り上げる。
図7Bに示すように、ヘッド部材12が吊り上げられると、鉄骨柱1が徐々に立ち上がる。鉄骨柱1が立設するまで、クレーンでの引き上げを行う。
【0033】
鉄骨柱1を立設させた後、
図7Cに示すように、さらにクレーンにより鉄骨柱1を吊り上げて、鉄骨柱1を設置する場所まで移動させる。鉄骨柱1を設置する基礎32まで移動させた後、
図7Dに示すように、鉄骨柱1を下して、鉄骨柱1の柱プレート30の貫通孔30aにアンカーボルト33を挿入して基礎32に固定する。ワイヤ固定具20を、鉄骨柱1の係合部2から取り外す。この際、作業者は、ワイヤ固定具20の第二係止部24を押し上げるだけで取り外すことができるため、ワイヤ固定具20を時間や手間をかけることなく容易に着脱することができる。
【0034】
ワイヤ15のフック16とワイヤ固定具20との連結を解除し、その後、クレーンによりヘッド部材12を更に吊り上げて撤去する。ヘッド部材12は鉄骨柱1の頂部に被さっているだけなのでクレーンで上方向(
図7Dの矢印D方向)に吊り上げるだけで外すことができる。作業員が、柱吊治具10を取り外す作業は、鉄骨柱1の下側で行われるため、高所作業が伴うことがなく安全である。
【0035】
上記実施形態では、主として本発明に係る柱吊治具10及びワイヤ固定具20に関して説明した。実施形態では、鉄骨柱1を対象としていたが、柱吊治具10は鉄骨柱1だけでなく、木造の柱を立設する際に用いてもよい。また、上記形態は、本発明の理解を容易に理解するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0036】
1 鉄骨柱(柱)
2 係合部
2a 開口部
2b 開口部
10 柱吊治具
12 ヘッド部材
12a フック掛け
13 ストッパ
15 ワイヤ
16、17、18 フック
20 ワイヤ固定具
21 基部
22 支持部
23 第一係止部
23a 第一係止片
24 第二係止部
24a 第二係止片
25 付勢部
25a バネ
26 把持部
27 環状部
30 柱プレート
31 枕木
32 基礎
33 アンカーボルト