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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20230324BHJP
   A01B 63/102 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
A01B69/00 302
A01B63/102
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019147363
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021027807
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康仁
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-219707(JP,A)
【文献】特開2008-278840(JP,A)
【文献】特開平10-309104(JP,A)
【文献】実開昭60-051916(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0081555(US,A1)
【文献】特開2019-041608(JP,A)
【文献】特開平08-154419(JP,A)
【文献】特開2012-076525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
A01B 63/102
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、
前記走行機体の後部に昇降可能に連結される作業機と、
前記作業機を昇降制御する制御部と、を備える作業車両であって、
前記制御部は、代掻き作業時に実行する代掻きモードを有し、
前記代掻きモードにおける前記制御部は、
前記走行機体が旋回中であるか否かを判断する旋回判断手段と、
前記走行機体が旋回中のとき、代掻き作業を継続可能な高さ範囲内で前記作業機を所定量上昇させる旋回時微小上昇制御手段と、を備えることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記所定量は、代掻き作業中に調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記代掻きモードにおける前記制御部は、前記走行機体が旋回中のとき、前記作業機が代掻き作業を継続可能な高さにあることを報知する旋回中作業継続報知手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代掻き作業を行う作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
枕地旋回時に作業機を非作業高さまで自動的に上昇させる作業車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような作業車両では、枕地旋回時の作業機上昇操作が不要になるので、作業者の操作負担を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-163129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の作業車両では、代掻き作業を行う場合、作業効率の観点から作業機を下降させたまま枕地旋回を行うことがある。しかしながら、作業機を下降させたまま枕地旋回すると、作業機が旋回外側に土を寄せてしまい、作業精度を低下させる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、走行機体と、前記走行機体の後部に昇降可能に連結される作業機と、前記作業機を昇降制御する制御部と、を備える作業車両であって、前記制御部は、代掻き作業時に実行する代掻きモードを有し、前記代掻きモードにおける前記制御部は、前記走行機体が旋回中であるか否かを判断する旋回判断手段と、前記走行機体が旋回中のとき、代掻き作業を継続可能な高さ範囲内で前記作業機を所定量上昇させる旋回時微小上昇制御手段と、を備えることを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の作業車両であって、前記所定量は、代掻き作業中に調整可能であることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の作業車両であって、前記代掻きモードにおける前記制御部は、前記走行機体が旋回中のとき、前記作業機が代掻き作業を継続可能な高さにあることを報知する旋回中作業継続報知手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、代掻きモード時の制御部は、走行機体が旋回中のとき、代掻き作業を継続可能な高さ範囲内で作業機を所定量上昇させるので、代掻き作業を継続しつつ土寄せを減らして作業精度の低下を抑制できる。また、作業者が微小上昇操作を行う場合に比べ、作業者の操作負担を軽減できる。
また、請求項2の発明によれば、所定量は、代掻き作業中に調整可能なので、圃場条件などに応じて適切な所定量に調整することで、作業精度を向上できる。
また、請求項3の発明によれば、代掻きモード時の制御部は、走行機体が旋回中のとき、作業機が代掻き作業を継続可能な高さにあることを報知するので、作業機高さの誤認によって作業機を畦などに接触させることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの側面図である。
図2】トラクタの平面図である。
図3】操縦部の内部を運転席側から見た斜視図である。
図4】制御構成を示すブロック図である。
図5】耕深自動制御、旋回アップ制御及び旋回時微小上昇制御の設定及び動作を示す説明図である。
図6】制御部の処理手順を示すフローチャートである。
図7】作業モード確認の処理手順を示すフローチャートである。
図8】旋回時微小上昇制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はトラクタT(作業車両の一例)の走行機体であって、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介してロータリなどの作業機3が連結されている。昇降リンク機構2は、機体後部に設けられるリフトアーム(図示せず)で吊持されており、リフトシリンダ(図示せず)の油圧伸縮作動に応じたリフトアームの上下回動に連動し、作業機3を昇降させる。
【0009】
作業機3は、耕耘作業や代掻き作業が可能な耕耘作業機であり、走行機体1から伝動される動力で回転し、圃場を耕耘する耕耘爪5と、耕耘爪5の上方を覆うメインカバー6と、作業機3の耕深に応じて上下回動するようにメインカバー6の後端部に連結されるリヤカバー7と、リヤカバー7の回動角検出にもとづいて作業機3の耕深を検出する耕深センサ8(図4参照)とを備える。
【0010】
走行機体1は、エンジン(図示せず)が搭載されるエンジン搭載部9と、エンジン動力を変速するトランスミッションケース10と、トランスミッションケース10から伝動される動力で回転駆動され、かつステアリングハンドル11(図3参照)の操作に応じて操舵される前輪12と、トランスミッションケース10から伝動される動力で回転駆動される後輪13と、作業者が乗車する操縦部14とを備える。
【0011】
図3に示すように、操縦部14には、作業者が座る運転席15の他、前述したステアリングハンドル11、走行動力及び作業動力を変速する主変速レバー16及び副変速レバー17、前後進を切り換える前後進切換レバー18、エンジン回転数を設定するエンジンコントロールレバー19、作業機3の昇降位置を設定するポジションレバー20などの操作具が配置されている。
【0012】
図4に示すように、走行機体1には、後述する耕深自動制御などの自動制御を実現する制御部21が設けられている。制御部21の入力側には、前述した耕深センサ8の他に、リフトアームの上下回動角を検出するリフトアーム角センサ22と、前輪12の切れ角を検出する前輪切れ角センサ23と、ポジションレバー20の操作位置を検出するポジションセンサ24と、作業機3が代掻き作業状態であるか否かを検出又は設定する代掻きスイッチ25と、後述する耕深自動制御をON/OFFする耕深自動スイッチ26と、後述する旋回アップ制御をON/OFFする旋回アップスイッチ27と、耕深自動制御の目標耕深を設定する深さ調整ダイヤル28と、後述する微小上昇動作の上昇量を設定する微小上昇調整ダイヤル29とが接続される一方、制御部21の出力側には、リフトシリンダを上昇動作させる上昇用電磁バルブ30と、リフトシリンダを下降動作させる下降用電磁バルブ31と、旋回アップ状態を報知する旋回アップランプ32とが接続されている。
【0013】
制御部21は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される自動制御機能として、耕深自動制御、旋回アップ制御及び旋回時微小上昇制御を備える。
【0014】
図5に示すように、耕深自動制御は、耕深自動スイッチ26がONで、ポジションレバー20が最下げのときに実行される自動制御機能であり、深さ調整ダイヤル28で設定された耕深を維持するように、耕深センサ8の検出値に応じて作業機3を自動的に昇降させる。なお、耕深自動制御は、代掻きスイッチ25がOFFとなる耕耘モード、代掻きスイッチ25がONとなる代掻きモードのいずれにおいても実行される。
【0015】
旋回アップ制御は、旋回アップスイッチ27がONで、ポジションレバー20が最下げのときに実行される自動制御機能であり、前輪切れ角センサ23の検出角度が直進位置から旋回位置に変化すると、作業機3を自動的に最上昇位置まで上昇させるとともに、旋回アップランプ32を点滅させる。また、旋回アップ制御は、前輪切れ角センサ23の検出角度が旋回位置から直進位置に変化すると、作業機3を設定高さ(ポジションレーバー20の設定高さ、又は深さ調整ダイヤル28の設定深さ)まで自動的に下降させるとともに、旋回アップランプ32を消灯させる。
【0016】
旋回時微小上昇制御は、耕深自動スイッチ26及び代掻きスイッチ25がONで、ポジションレバー20が最下げのときに実行される自動制御機能であり、前輪切れ角センサ23の検出角度が直進位置から旋回位置に変化すると、代掻き作業を継続可能な高さ範囲内で作業機3を所定量上昇させるとともに、旋回アップランプ32を点滅させる。また、旋回時微小上昇制御は、前輪切れ角センサ23の検出角度が旋回位置から直進位置に変化すると、作業機3を設定高さ(深さ調整ダイヤル28の設定深さ)まで自動的に下降させるとともに、旋回アップランプ32を消灯させる。このような旋回時微小上昇制御によれば、走行機体1が旋回中のとき、代掻き作業を継続可能な高さ範囲内で作業機3を所定量上昇させるので、代掻き作業を継続しつつ土寄せを減らして作業精度の低下を抑制できる。また、作業者が微小上昇操作を行う場合に比べ、作業者の操作負担を軽減できる。
【0017】
また、旋回時微小上昇制御による微小上昇量は、代掻き作業中であっても微小上昇調整ダイヤル29の操作で調整することができる。このような旋回時微小上昇制御によれば、微小上昇量が代掻き作業中に調整可能なので、圃場条件などに応じて適切な微小上昇量に調整することで、作業精度を向上できる。
【0018】
また、旋回時微小上昇制御によれば、走行機体1が旋回中のとき、作業機3が代掻き作業を継続可能な高さにあることを旋回アップランプ32の点滅で報知するので、作業機高さの誤認によって作業機3を畦などに接触させることを防止できる。
【0019】
つぎに、上記のような自動制御機能を実現する制御部21の処理手順について、図6図8を参照して説明する。
【0020】
図6に示すように、制御部21は、初期値設定を行った後(S1)、サブルーチンである作業モード確認(S2)、旋回アップ制御(S3)、耕深自動制御(S4)、及び旋回時微小上昇制御(S5)を繰り返し実行する。なお、旋回アップ制御及び耕深自動制御は、本発明との関連性が低いため、フローチャートの図示及び説明を省略する。
【0021】
図7に示すように、制御部21は、作業モード確認において、代掻きモードであるか否かを判断し(S21)、この判断結果がYESの場合は、旋回アップ制御の実行を規制する(S22)。このような作業モード確認によれば、仮に代掻き作業時に誤って旋回アップスイッチ27がON操作されていたとしても、旋回アップ制御によって旋回時に作業機3が最上げ位置まで上昇してしまうことを防止できる。
【0022】
図8に示すように、制御部21は、旋回時微小上昇制御において、まず、旋回中であるか否かを判断し(S51:旋回判断手段の一例)、この判断結果がYESの場合は(旋回判定)、旋回アップランプ32を点滅させて微小上昇動作を報知した後(S52:旋回中作業継続報知手段の一例)、微小上昇調整ダイヤル29が操作されたか否かを判断する(S53)。制御部21は、ステップS53の判断結果がNOの場合、初期の微小上昇量、又は前回調整された微小上昇量だけ作業機3を上昇させる(S54:旋回時微小上昇制御手段の一例)。また、制御部21は、ステップS53の判断結果がYESの場合、微小上昇調整ダイヤル29の設定値を取得した後(S55)、該設定値を微小上昇量として作業機3を上昇させる(S54)。また、制御部21は、ステップS51の判断結果がNOの場合(直進判定)、旋回アップランプ32による報知をキャンセル(消灯)するとともに(S56)、微小上昇を解除して作業機3を設定深さまで下降させる(S57)。
【0023】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、走行機体1と、走行機体1の後部に昇降可能に連結される作業機3と、作業機3を昇降制御する制御部21とを備えるトラクタTであって、制御部21は、代掻き作業時に実行する代掻きモードを有し、代掻きモードにおける制御部21は、走行機体1が旋回中のとき、代掻き作業を継続可能な高さ範囲内で作業機3を所定量上昇(微小上昇動作)させるので、代掻き作業を継続しつつ土寄せを減らして作業精度の低下を抑制できる。また、作業者が微小上昇操作を行う場合に比べ、作業者の操作負担を軽減できる。
【0024】
また、微小上昇動作量は、代掻き作業中に調整可能なので、圃場条件などに応じて適切な所定量に調整することで、作業精度を向上できる。
【0025】
また、代掻きモードにおける制御部21は、走行機体1が旋回中のとき、作業機3が代掻き作業を継続可能な高さにあることを報知するので、作業機高さの誤認によって作業機3を畦などに接触させることを防止できる。
【符号の説明】
【0026】
T トラクタ
1 走行機体
3 作業機
21 制御部
23 前輪切れ角センサ
25 代掻きスイッチ
29 微小上昇調整ダイヤル
30 上昇用電磁バルブ
31 下降用電磁バルブ
32 旋回アップランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8