IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アールエックスサイト インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】複合光調節型眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20230324BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20230324BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20230324BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
A61F2/16
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/40
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019566350
(86)(22)【出願日】2018-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 US2018034786
(87)【国際公開番号】W WO2018222558
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】15/607,681
(32)【優先日】2017-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519254875
【氏名又は名称】アールエックスサイト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドシュレガー イリア
(72)【発明者】
【氏名】コンディス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クルツ ロナルド エム
(72)【発明者】
【氏名】シュレスタ リトゥ
(72)【発明者】
【氏名】ジマニィ ゲルゲリー ティー
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0282441(US,A1)
【文献】特表2004-500585(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0339657(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0297017(US,A1)
【文献】米国特許第05288293(US,A)
【文献】特開2004-187891(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0358226(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0167735(US,A1)
【文献】特表2006-511245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
A61L 27/16
A61L 27/18
A61L 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合光調節型眼内レンズであって、
眼内レンズ(IOL)と、
光調節型レンズと、
ハプティックと、を備え、
前記光調節型レンズの遠位面は、前記IOLの近位面に取り付けられ、または前記光調節型レンズの近位面は、前記IOLの遠位面に取り付けられ、
前記光調節型レンズは、
第1のポリママトリクスと、
前記第1のポリママトリクス内に分散した屈折変調組成物と、
を含み、前記屈折変調組成物は、前記光調節型レンズの屈折を変調する刺激誘起重合が可能である、
ことを特徴とする複合光調節型眼内レンズ。
【請求項2】
前記ハプティックが前記IOLに取り付けられ、
前記ハプティックが前記IOLと共に成形され、
前記ハプティックが前記光調節型レンズに取り付けられ、
前記ハプティックが前記IOLと前記光調節型レンズの両方に取り付けられる、
ことのうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項1に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項3】
前記IOLは、アクリレート、アルキルアクリレート、アリールアクリレート、置換アリールアクリレート、置換アルキルアクリレート、ビニル、及びアルキルアクリレートとアリールアクリレートを結合させるコポリマ、のうちの少なくとも1つを含むモノマ、マクロマ及びポリマのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項4】
前記アルキルアクリレートは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、フェニルアクリレート、並びにこれらのポリマ及びコポリマを含む、
請求項3に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項5】
前記IOLは、アクリレート、アルキルアクリレート、アリールアクリレート、置換アリールアクリレート、置換アルキルアクリレート、ビニル、及びアルキルアクリレートとアリールアクリレートとを結合させるコポリマ、のうちの少なくとも1つと共にポリマ及びコポリマの1つを形成するシリコーン系モノマ及びマクロマの少なくとも1つをさらに含む、
請求項3に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項6】
前記IOLのモノマ、マクロマ及びポリマのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの官能基を有し、該官能基は、ヒドロキシ、アミノ、ビニル、メルカプト、イソシアネート、ニトリル、カルボキシル、ハイドライドのうちの少なくとも1つを含み、カチオン性、アニオン性及び中性のうちの1つである、
請求項3に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項7】
前記第1のポリママトリクスは、マクロマと、アルキル基及びアリール基の少なくとも1つを含むモノマビルディングブロックとから形成されるシロキサン系ポリマを含む、
請求項1に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項8】
前記第1のポリママトリクスは、前記第1のポリママトリクスの化合物と共にポリマ及びコポリマの少なくとも1つを形成するアクリレート、アルキルアクリレート、アリールアクリレート、置換アリールアクリレート、置換アルキルアクリレート、ビニル、及びアルキルアクリレートとアリールアクリレートを結合させるコポリマのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項9】
前記光調節型レンズは、
屈折変調照明を吸収し、
前記照明の前記吸収時に活性化され、
前記屈折変調化合物の前記重合を開始する、
光開始剤を含む、請求項1に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項10】
前記光開始剤は、紫外線吸収剤を含む、
請求項9に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項11】
前記屈折変調成分は、前記IOLに溶解しない、
請求項1に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項12】
前記IOLの弾性定数は、前記光調節型レンズの対応する弾性定数よりも柔軟である、
請求項1に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項13】
前記光調節型レンズは、
前記光調節型レンズの遠位面における紫外線吸収層と、
前記光調節型レンズ全体に分散した紫外線吸収材料と、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項14】
前記光調節型レンズは、前記IOLの近位面に取り付けられ、
前記IOLは、
前記IOL全体に分散した紫外線吸収材料と、
紫外線吸収層と、
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項15】
前記光調節型レンズは、化学反応、熱処理、照明処理、重合プロセス、成形ステップ、硬化ステップ、旋盤加工ステップ、低温旋盤加工ステップ、機械的プロセス、接着剤の塗布、のうちの少なくとも1つ、及びこれらの組み合わせによって前記IOLに取り付けられる、
請求項1に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項16】
前記光調節型レンズを前記IOLに取り付けるための取り付け構造を含む、
請求項1に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項17】
前記取り付け構造は、円筒、リング、開放タブ及び留め金のうちの少なくとも1つを含む、
請求項16に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項18】
前記IOLは、多焦点IOL、非球面IOL及び回折型IOLのうちの1つである、
請求項1に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項19】
前記IOLは、トーリックIOLである、
請求項1に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項20】
前記IOLは、2Dよりも大きな円柱度数を補正するためのトーリックIOLであり、
前記光調節型レンズは、最大2Dの円柱度数を補正できるように適合される、
請求項19に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項21】
前記IOLは、IOLの色シフト変動を有し、
前記光調節型レンズは、光調節型レンズの色シフト変動を有し
水晶体が除去されて、前記複合光調節型眼内レンズが埋め込まれた前記眼の色シフト変動は、前記水晶体が適所にある前記眼の色シフト変動よりも小さく、
前記色シフト変動は、450nm及び650nmにおける色シフトの差分から定義される、
請求項1に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【請求項22】
前記IOLの屈折力は負であり、
前記光調節型レンズの屈折力は正であり、
前記複合光調節型眼内レンズが埋め込まれた前記眼の前記色シフト変動は0.5D未満である、
請求項21に記載の複合光調節型眼内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光調節型眼内レンズに関し、具体的には、照明によって調節できる複合眼内レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、白内障手術の技術が継続的な目覚ましい進歩を遂げている。次世代の水晶体超音波乳化吸引術プラットフォーム及び新たに発明された手術用レーザは、眼内レンズ(IOL)の配置精度を高め続け、望ましくない医療転帰を減少させ続けている。また、ソフトアクリレート材料に基づく現世代のIOLも、非常に良好な視覚転帰、並びに埋め込みプロセスの容易さ及び制御と有利なハプティック設計とを含む数多くのさらなる医学的利点をもたらしている。
【0003】
それにもかかわらず、たとえ最新世代のデバイス及びIOLであっても引き続きいくつかのタイプの課題がある。これらの課題の1つは、外科医が細心の注意を払って術前診断を行って最適なIOLの埋め込みを決定しているにもかかわらず、かなりの事例において術後の医療転帰が最善ではない点である。この理由としては、とりわけ埋め込まれたIOLを傾ける又は動かす切開創の治癒過程に差があること、或いは眼のモデル化が不完全であることを含む様々な要因が考えられる。
【0004】
最近では、白内障手術後に非侵襲的に調節できるレンズの開発によって特筆すべき成果が挙げられた。これらのレンズは、照射による活性化時に光重合する感光性材料を含む。慎重に設計された半径方向プロファイルでの照射によって、対応する半径方向プロファイルでの光重合が開始され、これによってIOLの物理的形状、従ってその屈折力がさらに変化する。これらの光調節型レンズは、術後に残った位置不良の調整及び排除を行い、IOLの「最終的ジオプタ」を術後に非侵襲的に微調整するために非常に有望である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6450642号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】E.J.Fernandez及びP.Artal著、「完全な収差補正のための色収差補正ダブレット眼内レンズ(Achromatic doublet intraocular lens for full aberration correction)」、Biomedical Optics Express、第8巻(2017年)、2396頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、現世代のこれらの光調節型レンズは、依然としてさらに改善することができる。改善が見込める分野としては、埋め込みの問題を軽減できる最適な材料特性、及び良好なハプティック設計が挙げられる。
【0008】
従って、今日の標準的アクリレートIOLと光調節型IOLの望ましくない性能面を最小限に抑えながらこれらの両方の利点をもたらす眼内レンズに対する満たされていない医療ニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この特許文書では、眼内レンズ(IOL)と、眼内レンズに取り付けられた光調節型レンズと、ハプティックとを含むことができる複合光調節型眼内レンズの実施形態によって上述のニーズに対処する。いくつかの例では、複合光調節型眼内レンズが、眼内レンズと、光調節ヒンジによってIOLに取り付けられたハプティックとを含むことができる。埋め込まれた複合光調節型眼内レンズの調節方法は、複合光調節型眼内レンズを眼に埋め込む目標視覚転帰を計画するステップと、複合光調節型眼内レンズを眼に埋め込むステップと、診断測定を実行して埋め込みの埋め込み視覚転帰を評価するステップと、計画した視覚転帰と埋め込み視覚転帰との比較に基づいて補正を決定するステップと、複合光調節型眼内レンズの光学特性を調整する刺激を与えて決定された補正を引き起こすステップと、を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】複合光調節型IOLの上面図である。
図2A】複合光調節型IOL、すなわちCLA IOLの実施形態の側面図である。
図2B】複合光調節型IOL、すなわちCLA IOLの実施形態の側面図である。
図2C】複合光調節型IOL、すなわちCLA IOLの実施形態の側面図である。
図3】複合光調節型IOLの別の実施形態の側面図である。
図4】光調節手順のステップを示す図である。
図5】UV吸収層を含む複合光調節型IOLの実施形態を示す図である。
図6】取り付け構造を含むCLA IOLを示す図である。
図7A】埋め込まれて回転したトーリックCLA IOLにおける逆回転トーリックパターンの形成を示す図である。
図7B】埋め込まれて回転したトーリックCLA IOLにおける逆回転トーリックパターンの形成を示す図である。
図7C】埋め込まれて回転したトーリックCLA IOLにおける逆回転トーリックパターンの形成を示す図である。
図8A】ベクトル定式化を使用した類似する逆回転円柱の形成を示す図である。
図8B】ベクトル定式化を使用した類似する逆回転円柱の形成を示す図である。
図8C】ベクトル定式化を使用した類似する逆回転円柱の形成を示す図である。
図9】複合光調節型IOLの調節方法を示す図である。
図10A】色収差低減用CLA IOLを示す図である。
図10B】色収差低減用CLA IOLを示す図である。
図11】標準的IOLと比較したCLA IOLの色シフトを示す図である。
図12A】複合光調節型IOLの色収差補正の実施形態のPCO抑制の側面を示す図である。
図12B】複合光調節型IOLの色収差補正の実施形態のPCO抑制の側面を示す図である。
図13】光調節ヒンジを含む複合光調節型IOLの実施形態を示す図である。
図14A】回転型及び傾斜型光調節ヒンジを含む複合光調節型IOLの実施形態を示す図である。
図14B】回転型及び傾斜型光調節ヒンジを含む複合光調節型IOLの実施形態を示す図である。
図14C】回転型及び傾斜型光調節ヒンジを含む複合光調節型IOLの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
既存の光調節型眼内レンズは、多くの場合、ポリシロキサン及び対応するコポリマなどのシリコーン系ポリマで形成される。既存の非光調節型眼内レンズは、多くの場合、様々なアクリレートで形成される。これら2つのクラスのIOLの欠点(L)及び利点(B)としては以下が挙げられる。
【0012】
(L1)多くの場合、シリコーン系IOLの弾性定数は他のいくつかのIOLの弾性定数よりも強力又は強固であり、従ってこれらのシリコーン系IOLは、比較すると「弾力的」であることが多い。この弾力性の結果、折り畳まれたシリコーン系IOLをIOL埋め込みプロセス中に外科用挿入器ハンドピースから眼内に押し出すと非常に素早く展開する。このシリコ-ン系IOLの素早い展開により、手術中の外科医にとってシリコーン系IOLの挿入の制御及び正しい位置合わせは幾分困難になり得る。
【0013】
(B1)対照的に、アクリレート系IOLはさらに柔軟な弾性定数を有し、従って挿入中の展開がゆっくりである。この特徴により、外科医はアクリレートIOLの挿入をより高度に制御することができる。
【0014】
(L2)多くの場合、シリコーン系IOLの設計は3ピースであり、多くの場合2つのハプティックが別個に加工され、その後に中心のレンズ本体に挿入される。この設計特徴によって製造コストが増加し、加工中のハプティックの位置ずれの割合が高くなり、挿入中にIOLレンズ本体からハプティックが分離してしまうことがある。
【0015】
(B2)対照的に、いくつかのアクリレート系IOLは、IOLの中心レンズ本体と同じレンズ材料から同じ成形ステップで一体型ハプティックを形成する一体型設計を有することによってこれらの問題に対処する。このような一体型設計は製造コストが低く、ハプティックとレンズ本体との位置合わせが良好であり、挿入中にレンズ本体からハプティックが分離するリスクが低い。
【0016】
ただし、現在知られているアクリレート系IOLは光調節型ではない。これらの非光調節型の、多くの場合にアクリレート系であるIOL自体にも欠点がある。これらの欠点としては以下が挙げられる。
【0017】
(L3)外科医らは、白内障手術を計画する際に、最初に白内障の眼を慎重に広範囲にわたって診断する。外科医らは、この診断に基づいて、IOLの最適な配置、位置合わせ及び屈折力を決定する。しかしながら、上述したように、しばしばIOLは、結局は計画された最適な配置から離れ、場合によっては計画に対して傾き又は位置がずれてしまう。この理由としては、手術後の眼組織の発達のばらつきなどの様々な原因を挙げることができる。
【0018】
(B3)光調節型IOLは、この誤配置及び位置ずれの問題に対する高度な解決策を提供する。IOLが埋め込まれて手術後に眼の水晶体嚢に定着したら術後診断を行って、埋め込まれたIOLの意図しない整列及び配置のずれを特定することができる。この術後診断の結果を使用して、IOLをどのように補正すれば埋め込まれたIOLの誤配置及び位置ずれを補償できるかを決定することができる。この術後決定を使用して、埋め込まれた光調節型IOLの決定されたIOL補正を行う光調節手順を実行することができる。
【0019】
(L4)上記の位置ずれの問題は、埋め込みの目的が眼の円柱の排除であるトーリックIOLにとっては特に深刻である。トーリックIOLでは、埋め込み後にトーリックIOLの軸が意図せず10度回転しただけで約30%の効率損失が生じる恐れがある。例えば、埋め込み中又は埋め込み後に最終的に円柱軸が10度しか回転しなかった場合でも、トーリックIOLの名目3Dの円柱度数が実効2Dの円柱度数に低下する恐れがある。
【0020】
(B4)光調節型IOLは、予め形成されたトーリック円柱を伴わずに埋め込むことができる。埋め込み後にIOLが定着してその意図しない回転が止まると、外科医が照明を当てて定着したIOL内に円柱を形成し、その軸を正確に計画方向又は目標方向に向けることができる。従って、光調節型IOLは、トーリックIOLの円柱軸の意図しない位置ずれによって誘発される効率損失の可能性を避けることができる。
【0021】
この文書では、上記の2つのクラスのIOLの利点(B1)~(B4)を組み合わせ、従って各クラスのIOL自体が有する欠点(L1)~(L4)を克服して回避する可能性を有する眼内レンズについて説明する。以下では、様々な実施形態のさらなる利点も明確になるであろう。
【0022】
図1は、眼内レンズ(IOL)110と、眼内レンズ110に取り付けられた光調節型レンズ(LAL)120と、まとめてハプティック114とも呼ばれるハプティック114-1及び114-2とを含む複合光調節型眼内レンズ100の上面図である。ハプティック114は、様々な数のハプティックアームを含むことができる。1つ、2つ、3つ又は4つ以上のハプティックアームを含む実施形態には全て利点がある。簡潔性及び特異性のために、残りの説明は2つのハプティックアーム114-1及び114-2を含む複合光調節型眼内レンズ100に関して行うが、他の数のハプティックアームを含む実施形態も全体的説明の範囲に含まれると理解される。
【0023】
図2A図2C及び図3は、複合光調節型眼内レンズ100、すなわちCLA IOL100の実施形態の側面図である。図2A図2Cには、光調節型レンズ120をIOL110の近位面に取り付けることができるCLA IOL100を示す。この文書では、「近位」及び「遠位」という用語を、眼の瞳孔から入射する光に関連して使用する。近位は、瞳孔に近い方の位置を示す。図示の実施形態は、ハプティック114-1及び114-2(ここでもまとめてハプティック114)をCLA IOL100の構成要素に取り付ける方法が異なる。
【0024】
図2Aには、ハプティック114がIOL110に取り付けられたCLA IOL100を示す。例えば、ハプティック114は、上述した多くのアクリルIOL又はアクリレートIOLの場合と同様にIOL110と共に成形することができる。これらのハプティック114は、IOL110自体と同じアクリル材料で形成することができ、IOL110自体と同じ単一ステップで成形することができる。上述したように、このような一体型ハプティック114は製造が容易であり、IOL110と確実に位置合わせされ、挿入中にIOL110から分離しにくい。
【0025】
図2Bには、ハプティック110が光調節型レンズ120に取り付けられたCLA IOL100を示す。最後に、図2Cには、ハプティック114がIOL110と光調節型レンズ120の両方に共通して取り付けられたCLA IOL100を示す。
【0026】
図3には、光調節型レンズ120をIOL110の遠位面に取り付けることができるCLA IOL100を示す。図2A図2Cの光調節型レンズ120とIOL110の順序、及び図3のIOL110と光調節型レンズ120の順序にはいずれも独自の利点がある。
【0027】
いくつかの実施形態では、IOL110を、CLA IOL100の所期の屈折力の大部分又は全体を提供するように設計又は選択することができる。このような実施形態では、光調節型レンズ120を、CLA IOL100が何らかの意図しない位置ずれを伴って眼内に定着した後に必要になる可能性があると外科医が予測する補正及び調整のみを可能にするように設計することができる。このような実施形態における光調節型レンズ120の役割は、1D~2Dの屈折力又は円柱度数の補正を可能にすることのみであるため、全ての屈折力が光調節可能材料によって生成される非複合光調節型IOLよりもはるかに薄いレンズとすることができる。従って、補正用光調節型レンズ120のみを含むCLA IOLの実施形態は、はるかに薄い光調節型レンズ120を含むことができる。従って、図4に関連して説明するこのようなCLA IOL100における光調節型レンズ120の調整及びロックイン(lock-in)にはわずかな照射パワーしか必要とせず、これによって全体的な光調節手順の安全性を高めることができる。
【0028】
光調節型レンズ120は、他の実施形態では最大1Dにすぎない視力矯正を、最大2Dまで行うように設計することができる。いくつかの実施形態では、IOL110又は光調節型レンズ120のいずれかをメニスカスレンズとすることができる。
【0029】
化学組成に関して言えば、アクリレートの実施形態では、IOL110が、モノマ、マクロマ又はポリマを含むことができ、これらはいずれも、アクリレート、アルキルアクリレート、アリールアクリレート、置換アリールアクリレート、置換アルキルアクリレート、ビニル、又はアルキルアクリレートとアリールアクリレートとを結合させるコポリマを含むことができる。いくつかのIOL110では、アルキルアクリレートが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、フェニルアクリレート、又はこれらのポリマ及びコポリマを含むことができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、IOL110の化学組成が、光調節型レンズ120の化学組成の部分的混合を含むことができる。このようなIOL110は、アクリレート、アルキルアクリレート、アリールアクリレート、置換アリールアクリレート、置換アルキルアクリレート、ビニル、又はアルキルアクリレートとアリールアクリレートとを結合させるコポリマと共にポリマ又はコポリマを形成するシリコーン系モノマ又はマクロマを含むことができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、IOL110のモノマ、マクロマ又はポリマが、ヒドロキシ、アミノ、ビニル、メルカプト、イソシアネート、ニトリル、カルボキシル、又はハイドライドを含むことができる官能基を有することができる。官能基は、カチオン性、アニオン性又は中性とすることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、光調節型レンズ120が、第1のポリママトリクスと、第1のポリママトリクス内に分散した屈折変調組成物とを含むことができ、この屈折変調組成物は、光調節型レンズ120の屈折を変調する刺激誘起重合が可能である。第1のポリママトリクスは、マクロマと、アルキル基又はアリール基を含むモノマビルディングブロックとから形成されたシロキサン系ポリマを含むことができる。
【0033】
複合光調節型眼内レンズ100のいくつかの実施形態では、第1のポリママトリクスが、アクリレート、アルキルアクリレート、アリールアクリレート、置換アリールアクリレート、置換アルキルアクリレート、ビニル、及びアルキルアクリレートとアリールアクリレートを結合させるコポリマのうちの少なくとも1つの部分的混合を含むことができる。これらは、第1のポリママトリクスの化合物と共にポリマ及びコポリマの少なくとも1つを形成することができる。
【0034】
IOL110が光調節型レンズ120の材料の部分的混合を含む上記の実施形態、及び光調節型レンズ120がIOL110の材料の部分的混合を含む上記の実施形態は、レンズ110及び120の材料の適合性を高めることによって、CLA IOL100の機械的、物理的及び化学的ロバスト性を高めるように形成することができる。
【0035】
光調節型レンズ120の実施形態は、屈折変調照明を吸収し、照明の吸収時に活性化し、屈折変調化合物の重合を開始するように、光開始剤を含むこともできる。いくつかの実施形態では、光調節型眼内レンズ120の光開始剤が紫外線吸収剤を含むこともできる。
【0036】
光調節型レンズ120の実施形態は、J.M.Jethmalaniらに付与された「製造後の屈折力調節が可能なレンズ(Lenses capable of post-fabrication power modification)」という名称の同一出願人による米国特許第6450642号にかなり詳細に記載されており、この文献はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0037】
図4に、光調節型レンズ120の屈折特性を照明によって修正するプロセスの4つのステップ101a~101dを示す。非常に手短に言えば、ステップ101aにおいて、母材(マトリクス、matrix)と、その内部にシリコーンなどの好適な材料から形成された感光性マクロマとを含む光調節型レンズ120を、半径方向プロファイルを有するレンズ調節光によって照明する。
【0038】
ステップ101bにおいて、調節光への曝露によって感光性マクロマが重合し、その半径方向プロファイルが調節光の半径方向プロファイルによって決定される。
【0039】
ステップ101cにおいて、既に感光性マクロマが光重合した中心領域に未重合のマクロマが拡散する。これにより、この光調節型レンズ120の中心領域が膨張するようになる。(照明光の半径方向プロファイルが光調節型レンズ120の周辺環帯に向かって強くなる相補的プロセスでは、未重合のマクロマが周辺環帯に向かって外向きに拡散してこの周辺環帯を膨張させる。)
【0040】
さらにステップ101cでは、この膨張後に、基本的に一様な半径方向プロファイルとさらに高い強度とを有するロックイン光を付与して全ての残りのマクロマを重合させることができる。ステップ101dにおいて、このロックインにより、光調節型レンズ120が、その中心が膨張することによって光調節された屈折力を有する形状に達し、この形状を安定させる。上記は、光調節型レンズ及びその光調節手順の極めて簡単な要約にすぎない。さらに詳細な説明は、J.M.Jethmalaniらに付与された、本明細書に組み入れられる米国特許第6450642号に記載されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、IOL110及び光調節型レンズ120が、取り付け後にも化学的分離を保持するように適合される。この化学的分離は、例えばIOL110の材料に溶解しない屈折変調組成物を光調節型レンズ120に採用することによって達成することができ、従ってこの組成物は、光調節型レンズ120自体の第1のポリママトリクス内でその成分であるマクロマが移動するにもかかわらず光調節型レンズ120からIOL110内に拡散しない。
【0042】
上述したように、アクリル系とすることができるIOL110をシリコーン系とすることができる光調節型レンズ120と組み合わせる利点の1つは、アクリルIOL110の弾性定数をシリコーン光調節型レンズ120の対応する弾性定数よりも柔軟にできる点である。IOL110が光調節型レンズ120よりも大幅に柔軟なCLA IOL100では、CLA IOL100全体の「弾力性」を光調節型レンズ120単独での弾力性に比べて大幅に弱めることができる。このようなCLA IOL100を挿入すると、白内障手術中の制御及び予測可能性が実質的に改善され、従って手術転帰を改善することができる。
【0043】
図4に関して説明したように、いくつかの実施形態では、光調節型レンズ120の屈折特性が、紫外線(UV)照明を適用することによって修正される。安全上を考慮して言えば、適用されたUV照明が眼の網膜に到達するのを防ぎ、或いは少なくともその透過成分の強度を大幅に減衰させるべきである。この目的のために、CLA IOL100のいくつかの実施形態は、UV吸収剤を含むことができる。UV吸収剤を含めるための設計は、複数の異なるものが存在する。
【0044】
いくつかの実施形態では、UV吸収剤を光調節型レンズ120に関連付けることができる。図5に、いくつかの設計において光調節型レンズ120の遠位面に紫外線吸収層130を形成できることを示す。別の実施形態では、光調節型レンズ120全体に紫外線吸収材料を分散させることができる。
【0045】
別の設計では、UV吸収剤をIOL110に関連付けることができる。UV光は、調節手順のために光調節型レンズ120に到達する必要があるので、このような実施形態では、UV照明が光調節型レンズ120に到達するのをIOL110内のUV吸収剤が妨げないように、光調節型レンズ120をIOL110の近位面に取り付けることができる。このような配置の場合、いくつかの実施形態では、IOL110全体に紫外線吸収材料を分散させることができ、他の実施形態では、CLA IOL100が紫外線吸収層130を含むことができる。この紫外線吸収層130は、IOL110の近位面又は遠位面のどちらに存在しても光調節型レンズ120に対して遠位に配置されるので、このいずれの設計も可能である。
【0046】
複合光調節型眼内レンズ100の実施形態では、様々な設計によって光調節型レンズ120をIOL110に取り付けることができる。いくつかの例では、光調節型レンズ120を、化学反応、熱処理、照明処理、重合プロセス、成形ステップ、硬化ステップ、旋盤加工ステップ、低温旋盤加工ステップ、機械的プロセス、接着剤の塗布、又はこれらの方法のいずれかの組み合わせによってIOL110に取り付けることができる。
【0047】
図6に、CLA IOL100のいくつかの実施形態が、光調節型レンズ120をIOL110に取り付けるための取り付け構造135を含むことができることを示す。この取り付け構造135は、とりわけ光学素子を挿入できる円筒、リング、開放タブ、或いは留め金を含むことができる。このような構造は、複数の利点を有することができる。
【0048】
(a)例えば、取り付け構造135を含むCLA IOL100をモジュール式とすることができる。これにより、外科医が保持する在庫がはるかに少なくて済むので、術前目的にとって有利となり得る。外科医は、術前診断によってどのIOL110をどの光調節型レンズ120とペアリングする必要があるかが決まると、別個に保管されたIOL110と別個に保管された光調節型レンズ120とを選択し、選択された2つのレンズを取り付け構造135に挿入することによってCLA IOL100を組み立てることができる。
【0049】
(b)このモジュール性は、術後にも有利となり得る。理由は何であれ、白内障手術の終了時にIOL110の選択が最適でないと判断された場合、仮に非モジュール式CLA IOL100を使用していれば、外科医は再び眼を開き、広がったハプティック114を含む埋め込まれたCLA IOL100全体を取り外す必要がある。このようなIOL全体の取り外しは相当な難題であり、ハプティック部品の破損などの望ましくない医療転帰につながる恐れがある。
【0050】
対照的に、モジュール式CLA IOL100が埋め込まれていた場合、外科医は、再び眼を開いた時にCLA IOL100全体を取り外す必要がなく、非最適なIOL110のみを取り外して良好に選択されたIOL110と交換すればよい。この手順によってCLA IOL100全体を取り外す必要性が回避され、従って望ましくない医療転帰のリスクが低下する。また、別の医学的利点として、交換されるのはIOLの一部のみであるため、一般にこのような交換手順に必要な切開部が短くて済む可能性がある。
【0051】
(c)最後に、丈の長い構造を含むIOLは、後嚢混濁、すなわちPCOの低減との関連で利点がある。この点については、以下で図12A図12Bに関連してさらに詳細に説明する。取り付け構造135を含むCLA IOL100の丈の長さは、外科医が望むだけのものにすることができる。
【0052】
CLA IOL100の実施形態では、IOL110を、多焦点IOL、非球面IOL、トーリックIOL又は回折型IOLなどの高度で複雑なIOLとすることができる。このような高度なIOLは、屈折力の補正のみならず視力矯正ももたらす。これらのIOLは、老眼、乱視、円柱度数又はその他タイプの異常の軽減に役立つ。しかしながら、これらの高度なIOLが性能を発揮するには、通常よりも高い精度でIOLを配置する必要がある。白内障手術の終了時又はその後に、埋め込まれたIOLの最終的な誤配置又は位置ずれが発覚した場合、視力の改善及び恩恵は、患者に対して期待される転帰に比べて相当に劣ったものになってしまう恐れがある。かなりの割合の白内障手術でこのような意図していない位置ずれ及び回転が発生するという事実は、このような高度なIOLが広く市場に受け入れられることが制限されている主な原因である。
【0053】
対照的に、CLA IOL100の光調節型レンズ120は、CLA IOL100が予定の眼内位置、角度又は方向に対して誤配置、位置ずれ又は回転を生じた場合に、この位置ずれ又は回転を補償するように調整することができる。従って、CLA IOL100は、期待される視力改善を患者に対して確実にもたらす可能性がある。このCLA IOL100の利点は、高度なIOLの市場受け入れ及び市場占有率の急速な拡大を引き起こす可能性がある。
【0054】
他のいくつかの実施形態では、取り付け構造135を硬質構造ではなく流体充填構造にすることによって図6の実施形態の挿入を容易にすることができる。このような流体充填型取り付け構造135は、未充填の形で眼に挿入し、挿入後にのみ液体を充填することができる。いくつかの実施形態では、光調節型レンズ120の遠位面にUV吸収層130を設けることもできる。
【0055】
図7A図7C図8A図8C及び図9には、眼の円柱度数の矯正を目的とした、トーリックIOL110を含むCLA IOL100に関する上記の一般的検討事項を示す。
【0056】
図7Aには、外科医が眼の円柱度数を補償するためにトーリックIOL110を含むCLA IOL100を埋め込むと決定し、その目標トーリック軸202が、単純かつ明確にするために図7Aの平面内で垂直になるように選択された指示方向を向くように計画された外科的状況を示す。多くの場合、トーリックIOLは、外科医にトーリック軸の方向を示すための軸マーカ203を含む。
【0057】
図7Bには、白内障手術が終了して切開部を閉じた後に、埋め込まれたCLA IOL100が様々な理由で回転することにより、埋め込まれたCLA IOL100の埋め込まれて回転したトーリック軸204が目標トーリック軸202との間に意図していない回転角αを形成した状態を示す。
【0058】
図7Cには、外科医がCLA IOL100の光調節型レンズ120上で照明手順を考案・実行して逆回転トーリックパターン206を形成することによってトーリック軸全体の逆回転を引き起こし、この結果、光調節手順後の補正されたトーリック軸208が当初計画されていた目標トーリック軸202と同じ方向を示すようになった状態を示す。
【0059】
図8Aには、円柱パターン212~218のレベルに対する同じ手順を示す。白内障手術の術前計画段階にある外科医は、図示のように配向された目標円柱パターン212を有するトーリックIOL110を含むCLA IOL100を埋め込むことによって患者の円柱視力問題を治療すべきであると決定することができる。しかしながら、埋め込み後には、CLA IOL100が、埋め込まれて回転した円柱214に意図せず回転してしまっている。このような位置ずれして回転した円柱214は、上述したように視力改善を大幅に低下させる。埋め込まれて回転した円柱214は、回転角が大きくなるにつれて正味の悪影響に変化し、患者にとっては利点よりも不快及び失見当の方が大きくなる場合もある。
【0060】
この望ましくない医療転帰を補償するために、外科医は、術後診断手順を実行して矯正用逆回転円柱216を決定し、これを実装することによってCLA IOL100の意図していない望ましくない回転を補正することができる。図示のように、外科医は、光調節型レンズ120内に逆回転円柱216を形成するために、CLA IOL100の光調節型レンズ120の光調節手順を実行することができる。埋め込まれて回転した円柱214と逆回転円柱216とが重なり合うと、当初計画されていた目標円柱212の方向と一致する方向を有する補正された円柱218を有する光調節型レンズの形状にまとまることができる。これらのステップは、上述した図7A図7Cのステップに類似する。
【0061】
図8Bには、同じ手順を幾何学的用語で示しており、対応するベクトルによって円柱パターンを表している。ベクトルの方向は、表される円柱の方向を示し、ベクトルの大きさは、円柱の強度、曲率又はジオプタを表すことができる。目標トーリックベクトル222は目標円柱212を表し、埋め込まれて回転したトーリックベクトル224は、埋め込み後のCLA IOL100の埋め込まれて回転した円柱214を表す。上述したように、外科医は、術後に、トーリックIOL110の意図していない術後回転を補正するのに必要な逆回転円柱216を表す逆回転トーリックベクトル226を決定することができる。外科医が、逆回転トーリックベクトル226を使用して光調節型レンズを調節する光調節手順を実行すると、埋め込まれて回転したトーリックベクトル224と逆回転トーリックベクトル226との重なり合いによって、目標トーリックベクトル222と同じ方向及び大きさを有するように補正されたトーリックベクトル228が復元される。
【0062】
図8Cには、必要な補正をもたらための異なる方法が存在することをベクトル表現の用語で示す。例えば、この補正パターンは、埋め込まれて回転したトーリックベクトル224を縮小又は排除する縮小トーリックベクトル227を含むことができる。その後、逆回転トーリックベクトル226を選択して(ベクトル224と227の和に等しい)ベクトル224の残り部分を回転させ、補正されたトーリックベクトル228にすることができる。
【0063】
実証例として、2Dよりも高い円柱度数を補正するためのトーリックIOL110を含むCLA IOL100の実施形態では、光調節型レンズ120を、円柱度数を最大2Dに補正できるように適合させることができる。例えば、トーリックIOL110が6Dの円柱度数を補正するように意図されていたにもかかわらずトーリック軸が10度だけ回転した場合、これは上述したように30%の効率低下につながり、患者にとっては正味4Dの円柱度数改善しかもたらされない。しかしながら、外科医は、光調節型レンズ120に対して光調節手順を実行して意図いない回転となって失われた2Dの円柱度数を補正することにより、患者に対して期待される完全な6Dの円柱度数を復元することもできる。
【0064】
図9に、埋め込まれた複合光調節型眼内レンズ100を調整する対応法230のステップをさらに一般的な用語で示す。方法230は、以下のステップを含むことができる。
231:複合光調節型眼内レンズを眼に埋め込む目標視覚転帰を計画するステップ。
232:複合光調節型眼内レンズを眼に埋め込むステップ。
233:診断測定を実行して埋め込みの埋め込み視覚転帰を評価するステップ。
234:計画した視覚転帰と埋め込み視覚転帰との比較に基づいて補正を決定するステップ。
235:複合光調節型眼内レンズの光学特性を調整する刺激を与えて決定された補正を引き起こすステップ。
【0065】
図7A図7C及び図8A図8Cに関連して説明した手順では、目標視覚転帰が目標円柱202/212/222であり、埋め込み視覚転帰が埋め込まれて回転した円柱204/214/224であり、決定される補正が逆回転円柱206/216/226である事例に方法230を適合させることができる。これらのステップは、埋め込まれて回転した円柱204/214/224を、目標円柱度数202/212/222に密接に関連する補正された円柱208/218/228に調整することができる。
【0066】
次に、図10図11に、色収差の低減というさらなる医学的利点をもたらすCLA IOL100の実施形態を示す。この実施形態は、主な構成要素が角膜及びレンズである眼の光学系が、関与する眼組織の有効屈折率neが光の波長に依存し、すなわちne=ne(λ)であることによって色分散を示すという観察から開始して展開される。ne(λ)の導関数は、典型的には負であり、すなわち∂ne/∂λ<0であることが分かっている。従って、(ne-1)に比例する眼の屈折力Peも波長に関して負の導関数を有し、すなわち∂Pe/∂λ<0である。視力が20/20である健康な人物でも、この眼組織の色分散によって像の短波長(「青色」)成分が網膜の近位に合焦して結像する一方で、長波長(「赤色」)成分が網膜の遠位に合焦し、これによって一定程度のぼやけ及び像質の低下が生じる。この像の色成分のぼやけは、しばしば色収差と呼ばれる。
【0067】
我々の脳は、この色収差をある程度受け入れることを学習した。それにもかかわらず、白内障手術は、眼の独自の色収差を補償して全波長成分を網膜に結像させることによって色収差を低減して視覚を鮮明にする色収差補正用IOLを埋め込むことによって、さらなる医学的利点をもたらす可能性がある。
【0068】
多くの場合、屈折率の波長依存性は、V=(nD-1)/(nF-nC)として定義されるアッベ数によって特徴付けられ、ここでのnD、nF及びnCは、それぞれ589、486及び656nmのフラウンホーファD、F及びCスペクトル線における屈折率である。ほとんどのアッベ数は、20~90の範囲内である。角膜及び水晶体組織では、アッベ数が50~60の範囲内である。眼内レンズの屈折力Plは、レンズメーカーの方程式Pl=(nl-1)(1/R1-1/R2)を通じて屈折率nl(λ)に依存し、ここでのR1及びR2は、眼内レンズの2つの表面の曲率半径である。従って、nlのλ依存性は、眼内レンズの屈折力Plも波長λに依存させ、すなわちPl=Pl(λ)となる。なお、この依存性は、レンズの屈折力の符号にも関与する。正の屈折力レンズでは、通常は負の∂nl/∂λ<0が負の∂Pl/∂λ<0をもたらすのに対し、負の屈折力では、負の∂nl/∂λ<0が正の∂Pl/∂λ<0をもたらす。
【0069】
これらを前置きとして、眼内レンズは、その屈折力の波長微分が眼の屈折力の負の波長微分を補償することによって∂Pl/∂λ+∂Pe/∂λ≒0となる場合に色収差を補償することができる。換言すれば、∂Pl/∂λ≒-∂Pe/∂λ>0である。
【0070】
ところで、通常の(非回折)眼内レンズは、約20Dの正の屈折力Plをもたらすので、導入部に照らせばこれらの∂Pl/∂λは負であり、また∂Pe/∂λも負であるため、眼自体の色収差を補償することはできない。
【0071】
しかしながら、CLA IOL100の実施形態は、IOL110及び光調節型レンズ120という2つの異なるレンズで形成される。このような2レンズ設計は、純粋に新たな可能性をもたらす。CLA IOL100のレンズの一方は負の屈折力、従って強度に正の∂P/∂λ>0を有することができ、このため組み合わさった2レンズCLA IOL100は眼の光学系の色収差を補償できる一方で、2つのレンズの組み合わさった屈折力は、依然として眼内レンズの主要機能を実行して約20Dをもたらすことができる。式では、2レンズCLA IOL100の第1レンズの屈折力Pl,1と第2レンズの屈折力Pl,2とが、以下の2つの関係を同時に満たすことができる。
l,1+Pl,2=20D (1)
∂Pl,1/∂λ+∂Pl,2/∂λ≒-∂Pe/∂λ>0 (2)
【0072】
やや詳細に説明すると、図10A図10Bに、このような低減された色収差をもたらすCLA IOL100の実施形態を示す。従来、このような複合レンズでは、しばしば負の屈折力レンズが「フリント」("flint")と呼ばれ、正の屈折力レンズが「クラウン」("crown")と呼ばれる。複合レンズ自体がゼロに近い色収差を示す場合には、CLA IOL100を「アクロマート」("achromat")と呼ぶことができる。複合レンズが、CLA IOL100に眼を加えたものなどのさらに大きな集合体を形成してゼロに近い色収差を示す場合には、CLA IOL100を「アクロマータ」("achromator")と呼ぶことができる。
【0073】
図10Aには、負の屈折力PIOL<0を有するIOL110がフリントであり、正の屈折力PLAL>0を有する光調節型レンズ(LAL)120がクラウンである実施形態を示す。図10Bには、IOL110が正の屈折力PIOL>0を有し、光調節型レンズ120が負の屈折力PLAL<0を有する逆の実施形態を示す。
【0074】
∂n/∂λの大きさである|∂n/∂λ|は、PMMAでは比較的高く、一般にシリコーンでは低い。従って、負の屈折力IOL110がPMMA又はその他のアクリレート又は類似のもので形成され、正の屈折力の光調節型レンズ120がシリコーンで形成された、図10Aの設計を含むCLA IOL100の実施形態は、色収差を効率的に低減することができる。この実施形態では、高い|∂n/∂λ|のPMMA IOL110には、PIOL≒-10Dなどの低い負の屈折力を与えることができ、低い|∂n/∂λ|のシリコーンLAL120には、PLAL≒+30Dの高い屈折力を与えることができ、従ってCLA IOL100全体の組み合わさった屈折力は以下のようになる。
IOL+PLAL≒+20D (3)
【0075】
同時に、CLA IOL100は、眼の色収差を補償することもできる。
∂PIOL/∂λ+∂PLAL/∂λ≒-∂Pe/∂λ (4)
【0076】
このようなCLA IOL100は、約20Dの全体的屈折力をもたらす一方で、IOL110及びLAL120の屈折力の組み合わさった波長導関数が眼の光学系の色収差を大幅に補償し、これによってCLA IOL100埋め込み後の眼の全体的色収差を実質的に低減することができる。(ここでは、白内障手術によって水晶体が除去されているので、「眼の光学系」は主に角膜を意味する。)
【0077】
図11では、上記の概念を色シフトの用語で説明する。色シフトは、目標/結像面からの(眼の場合は網膜からの)像の距離を特徴付け、ジオプタで表される。負の色シフトは、像が網膜前方の近位で形成されたことを表すのに対し、正の色シフトは、像が網膜後方の遠位で形成されたことを表す。従って、波長と共に増加する色シフトは、波長と共に屈折力が減少すること、すなわち∂P/∂λ<0を表す。
【0078】
図11には、自然な眼の光学系単独では∂Pe/∂λ<0と一致して色シフトが増加することを示す。通常は、1つの構成要素であるIOL110単独でも∂PIOL/∂λ<0と一致して色シフトが増加する。破線で示す「複合光調節型IOL」の線は、CLA IOL100の色収差補償の実施形態を眼に埋め込んだ場合に、CLA IOL100と眼とを組み合わせたシステムが最低限の色シフト及び色収差を発揮できることを示す。
【0079】
従って、CLA IOL100の実施形態では、IOL110がIOLの色シフト変動を有し、光調節型レンズ120が光調節型レンズの色シフト変動を有し、水晶体を除去した眼が眼の色シフト変動を有し、複合光調節型眼内レンズ100が埋め込まれた眼の色シフト変動を水晶体が適所にある眼の色シフト変動よりも小さくすることができ、ここでの色シフト変動は、450nm及び650nmにおける色シフトの差分から定義される。
【0080】
CLA IOL100の実施形態では、IOL110の屈折力を負とすることができ、光調節型レンズ120の屈折力を正とすることができ、複合光調節型眼内レンズが埋め込まれ眼の色シフト変動を0.5D未満とすることができる。他の実施形態では、この色シフト変動を0.2D未満とすることができる。このようなアクロマータCLA IOL100が埋め込まれた眼では、明らかなさらなる医学的利点として、色分散に起因する像のぼやけが自然な眼のぼやけよりも実質的に小さくなることによって、さらなる側面において視覚が鮮明になることができる。
【0081】
関連する側面を含むアクロマータIOLに関する着想が、E.J.Fernandez及びP.Artalよって、「完全な収差補正のための色収差補正ダブレット眼内レンズ(Achromatic doublet intraocular lens for full aberration correction)」という名称の論文、Biomedical Optics Express、第8巻(2017年)、2396頁に提案されており、この論文はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。この論文は、いくつかの面では教訓的であるが、とりわけ関連するIOLの光調節機能の側面が考察されていない。この論文の技術を光調節型レンズに適合させるには、さらに高度な概念が必要になる。
【0082】
図12A図12Bに、特にIOL110又は光調節型レンズ120が負の屈折力を有し、従って非常に丈の長い側面142と鋭利なIOLエッジ144とを有するCLA IOL100のさらなる医学的利点を示す。このような実施形態では、鋭利なIOLエッジ144を、1つの構成要素である眼内レンズを押す力よりも大きな力によって挿入先の眼の水晶体嚢15に押し付けることができる。
【0083】
この大きな力は、以下の特筆すべき医学的利点を有することができる。後嚢混濁であるPCOは、白内障手術の有名な負の転帰又は合併症の1つである。PCOは、後嚢の水晶体上皮細胞(LEC)の成長及び異常増殖を原因とする。ほとんどのPCOは、繊維状又は真珠様、或いはこれらの組み合わせである。PCOは、臨床的には、例えば後嚢の皺として検出することができる。PCOの発症は、多くの場合、残留LECの増殖、移動及び分化という3つの基本的現象を伴う。
【0084】
PCOを軽減するために様々な薬液が開発されているが、水晶体嚢15に接触する鋭利な機械的障壁の形成によってもPCOが軽減されることが示された。このような障壁は、繊維の成長を抑制してLECの動きを低減することによってPCOを軽減する。
【0085】
CLA IOL100の実施形態では、アクロマートのフリントレンズが負の屈折力を有するため非常に丈の長い側面142を有し、従ってその側面の丈が中心よりも長いので、鋭利なIOLエッジ144が非常に大きな力で水晶体嚢15に押し付けられる。このため、CLA IOL100のアクロマートの実施形態は、PCOの軽減というさらなる医学的利点を示す。
【0086】
図12A及び図12Bには、水晶体嚢15を通常よりも大きな力で押圧するCLA IOL100の組み合わせ及び設計が複数存在し得ることを示す。例えば、IOL110と光調節型レンズ120の順序を逆にすることができる。他の実施形態では、フリントの材料とクラウンの材料を交換することができる。遠位クラウンレンズ、すなわち網膜に近いクラウンレンズを有するCLA IOL100は、その最遠位面の形状が網膜の形状に最も近いため、有利に低い収差を示すことができる。対照的に、フリントの方が網膜に近い場合、最遠位面は実質的に網膜の表面とは異なり、従って高い収差を生じる。
【0087】
丈の長い側面を含むこれらのCLA IOL100のさらに別の医学的利点は、高い押圧力が高い水晶体嚢張力を引き起こす点である。この高い被膜張力は、平坦な標準的IOLによって引き起こされる低い被膜張力よりもCLA IOL100の位置及び軸を安定させることにより、CLA IOL100が傾き又は別様に位置ずれするのを防ぐ傾向にある。
【0088】
丈の長いIOL側面142は、大きな又は長い外科的切開部の形成を必要とし得る。さらに、これによって白内障手術後に意図しない乱視が誘発される恐れもある。しかしながら、CLA IOL100の実施形態では、手術後に光調節型レンズ120を調節できるので、光調節型レンズ120に乱視補償用光調節手順を適用することによって、この乱視を効率的に補償して排除することができる。
【0089】
図13図14に、IOL110を含む複合光調節型IOL100、及び光調節ヒンジ140によってIOL110に取り付けられたハプティック114の実施形態を示す。これらの実施形態では、主に光調節型レンズ120の光学特性を調整することによってではなく、光調節ヒンジ140の形状を変化させてIOL110とそのハプティック114との間の機械的関係を調整することによって、CLA IOL100の光調節性が提供される。例えば、IOL110に対してハプティック114の相対角度を修正すると、これによってIOL110が眼の被嚢内でシフト又は回転し、これによってCLA IOL100全体の光学的性能又は屈折力が調整される。簡潔かつ明確にするために、以下ではハプティック114-1及び114-2を略式でハプティック114と呼び、対応する光調節ヒンジ140-1及び140-2を光調節ヒンジ140と呼ぶこともある。以下では2ハプティック2ヒンジの実施形態を明示的に説明するが、1つ、2つ、3つ又は4つ以上のハプティック114と、1つ、2つ、3つ又は4つ以上の光調節ヒンジ140とを含むCLA IOL100も類似の機能を果たすことができる。
【0090】
図14Aには、光調節ヒンジ140-1及び140-2が、CLA IOL100を回転させるように適合され、従って回転型光調節ヒンジ140r-1及び140r-2と呼ばれる実施形態を示す。これらの回転型光調節ヒンジ、まとめて140rは、照明時にその形状を変化させ、これによってハプティック114とIOL110との間の角度を調整し、ハプティックの回転を引き起こし、これによってIOL110の回転を引き起こすように構成される。
【0091】
これらのステップを詳述すると、照明を当てることによって光誘起によるヒンジ膨張301aを引き起こすことができる。この膨張301aによって水晶体嚢15に対するハプティックの回転301bが引き起こされ、これによって膨張誘起されたIOL回転301cを引き起こすことができる。このような実施形態は、図7A図7C図8A図8C及び図9で説明したステップ及び実施形態と同様に、埋め込み後にトーリック軸が意図せず回転したトーリックCLA IOL100を逆回転させることができる。
【0092】
図14Bには、光調節ヒンジ140が(以下でさらに詳述する)傾斜型光調節ヒンジ140t-1及び140t-2であるCLA IOL100の関連する実施形態を示す。これらの傾斜型光調節ヒンジ140tは、照明時に形状を変化させ、これによってハプティック114をIOL110に対して傾斜させ、これによってCLA IOL100自体の傾斜を引き起こすように構成される。
【0093】
このステップを詳述すると、照明を当てることによって光誘起によるヒンジ膨張302aを引き起こすことができる。この膨張302aによって膨張誘起によるハプティック傾斜302bが引き起こされ、これによって膨張誘起によるIOL傾斜302cを引き起こすことができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、各ハプティック114に前方傾斜用光調節ヒンジ140t-2f及び後方傾斜用光調節ヒンジ140t-2bという2つの傾斜ヒンジ140を設置することによって、前方及び後方への傾斜調節性を達成することができる。図示のように、前方傾斜用ヒンジ140t-2fの膨張302aはIOL110を前方に傾斜させ、後方傾斜用ヒンジ140t-2bの膨張302aはIOL110を後方に傾斜させることができる。
【0095】
なお、上記の実施形態では、光調節ヒンジ140r又は140tの光誘起膨張301a又は302aが、これらが接触するIOL110に対するハプティック114の角度を修正する。従って、ハプティック114の長いアームは、光調節ヒンジ140r又は140tの膨張をレバーアームの形で大きく増幅させる。従って、光調節ヒンジ140の比較的小さな膨張は、増幅された、従って医学的に有益なIOL110の回転及び傾斜をもたらすことができる。
【0096】
図14Cには、光調節ヒンジの他の多くの設計によって関連する機能を提供できることを示す。これらの設計は、回転ヒンジ140rと傾斜ヒンジ140tとの組み合わせ、並びに光調節型リング、レバー及びアクチュエータを含む。これらの中でも、注目すべきは円筒状の光調節ヒンジスリーブ140sである。これらの円筒状の光調節ヒンジスリーブ140s-1及び140s-2は、ハプティック114上に簡単に滑り込ませ、IOL110との接合点に押し付けて取り付けることができる。円筒状スリーブ140sのいずれかの部分に照明を当てると、IOL110が逆方向に押され又は回転するようになる。140r、140t及び140sを含む説明した光調節ヒンジ140は、いずれも白内障手術後に眼内でIOL110を非侵襲的に動かし、従ってその光学的性能及び医学的利点の調整及び改善を行うことができる。
【0097】
本文書は多くの仕様、詳細及び数値範囲を含んでいるが、これらの仕様、詳細及び数値範囲は、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではなく、むしろ本発明の特定の実施形態に固有の特徴を説明するものとして解釈すべきである。本文書において個別の実施形態の文脈で説明したいくつかの特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実装することもできる。これとは逆に、単一の実施形態の文脈で説明した様々な特徴は、複数の実施形態において個別に、又はいずれかの好適な部分的組み合わせの形で実装することもできる。さらに、上記ではいくつかの組み合わせで機能するように特徴を説明し、最初はこのように特許請求していることもあるが、場合によっては、特許請求する組み合わせから生じる1又は2以上の特徴をこれらの組み合わせから削除することもでき、特許請求する組み合わせを別の部分的組み合わせ又は部分的組み合わせの変形例に向けることもできる。
【符号の説明】
【0098】
100:複合光調節型IOL
110:IOL
114-1、114-2:ハプティック
120:光調節型レンズ
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図14C