(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20230324BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20230324BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J133/04
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2020020100
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2020-02-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0014542
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519204054
【氏名又は名称】イノックス・アドバンスト・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INNOX Advanced Materials Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】171,Asanvalley-ro,Dunpo-myeon,Asan-si,Chungcheongnam-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リ ジョン ゴル
(72)【発明者】
【氏名】バエク ドン キ
(72)【発明者】
【氏名】リ ソン ナム
(72)【発明者】
【氏名】カン ハンヒ
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-535245(JP,A)
【文献】特表2020-535246(JP,A)
【文献】特開2018-045213(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061533(WO,A1)
【文献】特表2018-507276(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0097850(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0097851(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0013067(KR,A)
【文献】国際公開第2018/102179(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101600771(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物を含むアクリル重合体;および架橋剤;を含み、
下記関係式1および2を満たし、酸価が8~19mgKOH/gであることを特徴とするフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物。
【化1】
前記化学式1において、R
1
は、C1~C20のアルキル基であり、R
2
は、カルボキシル基(carboxyl group)、カルボキシメチルエステル基(carboxymethyl ester group)、2-カルボキシエチルエステル基(2-carboxyethyl ester group)、3-カルボキシプロピルエステル基(3-carboxypropyl ester group)、4-カルボキシブチルエステル基(4-carboxybutyl ester group)、5-カルボキシペンチルエステル基(5-carboxypentyl ester group)または6-カルボキシヘキシルエステル基(6-carboxyhexyl ester group)であり、R
3
、R
4
、R
5
、R
6
、R
7
およびR
8
は、それぞれ独立して、-HまたはC1~C10のアルキル基であり、mは、87~95、nは、5~13を満たす有理数である。
[関係式1]
0≦X≦100
[関係式2]
Y
1=α
1×X+β
1
前記関係式1および2において、Xは、スイープ周波数(Hz)を示し、Y
1は、-20℃の温度および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Pa)を示し、α
1は、15×10
4~45×10
4であり、β
1は、40×10
4~90×10
4である。
【請求項2】
前記粘着剤組成物は、下記関係式3をさらに満たすことを特徴とする請求項1に記載のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物。
[関係式3]
Y
2=α
2×X+β
2
前記関係式3において、Xは、スイープ周波数(Hz)を示し、Y
2は、25℃の温度および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Pa)を示し、α
2は、1,600~2,400であり、β
2は、6×10
4~10×10
4である。
【請求項3】
前記粘着剤組成物は、下記関係式4をさらに満たすことを特徴とする請求項1に記載のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物。
[関係式4]
Y
3=α
3×X+β
3
前記関係式4において、Xは、スイープ周波数(Hz)を示し、Y
3は、60℃の温度および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Pa)を示し、α
3は、630~1,200であり、β
3は、3.5×10
4~7.5×10
4である。
【請求項4】
前記粘着剤組成物は、下記条件(1)~(4)をさらに満たすことを特徴とする請求項1に記載のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物。
(1)A≦100×10
4Pa
(2)B≦130×10
4Pa
(3)250×10
4Pa≦C≦450×10
4Pa
(4)2,000×10
4Pa≦D≦4,000×10
4Pa
前記条件(1)において、Aは、-20℃の温度、0.5Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(2)において、Bは、-20℃の温度、1.0Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(3)において、Cは、-20℃の温度、10Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(4)において、Dは、-20℃の温度、100Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【請求項5】
前記粘着剤組成物は、下記条件(5)~(8)をさらに満たすことを特徴とする請求項2に記載のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物。
(5)E≦8×10
4Pa
(6)F≦9.5×10
4Pa
(7)10×10
4Pa≦G
(8)23×10
4Pa≦H≦33×10
4Pa
前記条件(5)において、Eは、25℃の温度、0.5Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(6)において、Fは、25℃の温度、1.0Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(7)において、Gは、25℃の温度、10Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(8)において、Hは、25℃の温度、100Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【請求項6】
前記粘着剤組成物は、下記条件(9)~(12)をさらに満たすことを特徴とする請求項3に記載のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物。
(9)I≦5.5×10
4Pa
(10)J≦6.5×10
4Pa
(11)5.5×10
4Pa≦K
(12)10×10
4Pa≦L
前記条件(9)において、Iは、60℃の温度、0.5Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(10)において、Jは、60℃の温度、1.0Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(11)において、Kは、60℃の温度、10Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(12)において、Lは、60℃の温度、100Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【請求項7】
前記架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンおよびグリセリンジグリシジルエーテルの中から選ばれた1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物。
【請求項8】
前記アクリル重合体100重量部に対して架橋剤0.1~10重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物。
【請求項9】
前記粘着剤組成物は、下記条件(13)~(15)をさらに満たすことを特徴とする請求項1に記載のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物。
(13)75%≦M
(14)85%≦N
(15)90%≦O
前記条件(13)において、Mは、硬化した粘着剤組成物を-20℃の温度で下記関係式5によって測定した変形発生600秒後の復元率であり、
前記条件(14)において、Nは、硬化した粘着剤組成物を25℃の温度で下記関係式5によって測定した変形発生600秒後の復元率であり、
前記条件(15)において、Oは、硬化した粘着剤組成物を60℃の温度で下記関係式5によって測定した変形発生600秒後の復元率である。
[関係式5]
変形発生600秒後の復元率(%)=(600秒後の変形率-600秒後の残留変形率)/600秒後の変形率*100
【請求項10】
前記粘着剤組成物のガラス転移温度Tgは、-27~-32℃であることを特徴とする請求項1に記載のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物。
【請求項11】
前記粘着剤組成物は、無アルカリガラス板(Non Alkali Glass)に付着後、分当たり300mmの速度で180°で剥離させるとき、測定した粘着力が700~1200gf/inchであることを特徴とする請求項1に記載のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物に関し、より詳細には、低温だけでなく、常温、ひいては50℃以上の温度で周波数別に特定範囲の貯蔵弾性率を満たすことによって、優れたフォールディング(folding)特性を具現すると共に、優れた粘着力、耐熱性および復元率を同時に満足できるフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着剤(pressure sensitive adhesive)とは、表面が汚染されない限り、永久にべたつく性質を維持できる物質を使用して、常温で指圧のような非常に小さい圧力により短い時間に容易に被着剤と接着させる物質である。
【0003】
このような感圧接着剤は、生活用品、自動車、航空、IT産業など非常に多様な分野において活用されており、IT産業分野には、半導体、携帯電話、ディスプレイ、精密製品などの運搬、素材の固定および保護用に使用されている。
【0004】
最近、ディスプレイ関連技術の発達に伴い、たたんだり、ロール(Roll)形状に巻いたり、ゴムひものように増やすなど、使用段階で変形可能なディスプレイ装置が研究および開発されている。これらのディスプレイは、多様な形態に変形が可能であるので、使用段階でのディスプレイの大型化の要求と携帯のためのディスプレイの小型化の要求を全部満足させることができる。変形可能なディスプレイ装置は、あらかじめ設定された形態に変形され得ると共に、ユーザの要求に応じて、または、ディスプレイ装置が使用される状況の必要に応じて多様な形態に変形され得る。したがって、ディスプレイの変形された形態を認識し、認識した形態に対応してディスプレイ装置を制御する必要がある。
【0005】
一方、変形可能なディスプレイ装置は、変形によってディスプレイ装置の各構成が損傷する問題があるので、このようなディスプレイ装置の各構成は、フォールディング(Folding)信頼性および安定性を満たさなければならない。
【0006】
したがって、変形可能なディスプレイ装置に使用される接着剤も、先立って言及したフォールディング(Folding)信頼性および安定性を満たさなければならず、現在、市販されている変形可能なディスプレイ装置に使用される接着剤は、フォールディング(folding)特性を満たすことができるが、粘着力、耐熱性および復元率などの物性を全部満たさない問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国特許公開第2015-0011230号公報(公開日:2015.01.30)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような点を勘案して案出されたものであって、低温だけでなく、常温、ひいては、50℃以上の温度で周波数別に特定範囲の貯蔵弾性率を満たすことによって、優れたフォールディング(folding)特性を具現すると共に、優れた粘着力、耐熱性および復元率を同時に満たすことができるフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するために、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、アクリル重合体および架橋剤を含むことができる。
【0010】
本発明の好ましい一実施例として、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、下記関係式1および2を満たすことができる。
【0011】
[関係式1]
0≦X≦100
【0012】
[関係式2]
Y1=α1×X+β1
【0013】
前記関係式1および2において、Xは、スイープ周波数(Hz)を示し、Y1は、-20℃の温度および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Pa)を示し、α1は、15×104~45×104であり、β1は、40×104~90×104である。
【0014】
本発明の好ましい一実施例として、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、下記関係式3をさらに満たすことができる。
【0015】
[関係式3]
Y2=α2×X+β2
【0016】
前記関係式3において、Xは、スイープ周波数(Hz)を示し、Y2は、25℃の温度および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Pa)を示し、α2は、1,600~2,400であり、β2は、6×104~10×104である。
【0017】
本発明の好ましい一実施例として、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、下記関係式4をさらに満たすことができる。
【0018】
[関係式4]
Y3=α3×X+β3
【0019】
前記関係式4において、Xは、スイープ周波数(Hz)を示し、Y3は、60℃の温度および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Pa)を示し、α3は、630~1,200であり、β3は、3.5×104~7.5×104である。
【0020】
本発明の好ましい一実施例として、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物
は、下記条件(1)~(4)をさらに満たすことができる。
【0021】
(1)A≦100×104Pa
(2)B≦130×104Pa
(3)250×104Pa≦C≦450×104Pa
(4)2,000×104Pa≦D≦4,000×104Pa
【0022】
前記条件(1)において、Aは、-20℃の温度、0.5Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(2)において、Bは、-20℃の温度、1.0Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(3)において、Cは、-20℃の温度、10Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(4)において、Dは、-20℃の温度、100Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0023】
本発明の好ましい一実施例として、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、下記条件(5)~(8)をさらに満たすことができる。
【0024】
(5)E≦8×104Pa
(6)F≦9.5×104Pa
(7)10×104Pa≦G
(8)23×104Pa≦H≦33×104Pa
【0025】
前記条件(5)において、Eは、25℃の温度、0.5Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(6)において、Fは、25℃の温度、1.0Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(7)において、Gは、25℃の温度、10Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(8)において、Hは、25℃の温度、100Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0026】
本発明の好ましい一実施例として、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、下記条件(9)~(12)をさらに満たすことができる。
(9)I≦5.5×104Pa
(10)J≦6.5×104Pa
(11)5.5×104Pa≦K
(12)10×104Pa≦L
【0027】
前記条件(9)において、Iは、60℃の温度、0.5Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulu
s)であり、
前記条件(10)において、Jは、60℃の温度、1.0Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(11)において、Kは、60℃の温度、10Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、
前記条件(12)において、Lは、60℃の温度、100Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0028】
本発明の好ましい一実施例として、アクリル重合体は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0029】
【0030】
前記化学式1において、R1は、C1~C20のアルキル基であり、R2は、カルボキシル基(carboxyl group)、カルボキシメチルエステル基(carboxymethyl ester group)、2-カルボキシエチルエステル基(2-carboxyethyl ester group)、3-カルボキシプロピルエステル基(3-carboxypropyl ester group)、4-カルボキシブチルエステル基(4-carboxybutyl ester group)、5-カルボキシペンチルエステル基(5-carboxypentyl ester group)または、6-カルボキシヘキシルエステル基(6-carboxyhexyl ester group)であり、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して-HまたはC1~C10のアルキル基であり、mは、87~95、nは、5~13を満たす有理数である。
【0031】
本発明の好ましい一実施例として、架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンおよびグリセリンジグリシジルエーテルの中から選ばれた1種以上を含むことができる。
【0032】
本発明の好ましい一実施例として、アクリル重合体100重量部に対して架橋剤0.1~10重量部を含むことができる。
【0033】
本発明の好ましい一実施例として、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、下記条件(13)~(15)をさらに満たすことができる。
【0034】
(13)75%≦M
(14)85%≦N
(15)90%≦O
【0035】
前記条件(13)において、Mは、硬化した粘着剤組成物を-20℃の温度で下記関係式5によって測定した変形発生600秒後の復元率であり、
前記条件(14)において、Nは、硬化した粘着剤組成物を25℃の温度で下記関係式5によって測定した変形発生600秒後の復元率であり、
前記条件(15)において、Oは、硬化した粘着剤組成物を60℃の温度で下記関係式5によって測定した変形発生600秒後の復元率である。
【0036】
[関係式5]
変形発生600秒後の復元率(%)=(600秒後の変形率-600秒後の残留変形率)/600秒後の変形率*100
【0037】
本発明の好ましい一実施例として、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物のガラス転移温度Tgは、-27~-32℃でありうる。
【0038】
本発明の好ましい一実施例として、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の酸価は、8~19mgKOH/gでありうる。
【0039】
本発明の好ましい一実施例として、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、無アルカリガラス板(Non Alkali Glass)に付着後、分当たり300mmの速度で180°で剥離させるとき、測定した粘着力が700~1200gf/inchでありうる。
【発明の効果】
【0040】
本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、低温だけでなく、常温、ひいては、50℃以上の温度で周波数別に特定範囲の貯蔵弾性率を満たすことによって、優れたフォールディング(folding)特性を具現すると共に、優れた粘着力、耐熱性および復元率を同時に満たす。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態に具現され得、ここで説明する実施例に限定されない。図面において、本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分は省略し、明細書全般において同一または類似の構成要素については、同じ参照符号を付す。
【0042】
本発明における低温は、-10℃以下の温度、好ましくは-10~-30℃、より好ましくは-15~-25℃でありうる。また、本発明における常温は、10~40℃の温度、好ましくは15~35℃、より好ましくは20~30℃でありうる。
【0043】
本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、一例として、硬化して粘着剤層を形成し、粘着剤層は、フォルダブル(foldable)ディスプレイに含まれて、ディスプレイパネルとカバーガラスを付着するなどの用途に利用され得る。
【0044】
また、本発明で定義する「フォルダブルディスプレイ」は、紙のように折りたたんだり拡げることを繰り返すことができるように設計されて、折りたたみ部分が曲率半径が5mm以内であるフレキシブルディスプレイを意味する。
【0045】
また、フォルダブルディスプレイに適用される本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、既存他の用途の粘着剤とは異なって、フォールディング(folding)特性を具現しなければならず、このようなフォールディング特性を良好に具現するためには、低温だけでなく、常温、ひいては、50℃以上の温度で周波数別に特定範囲の貯蔵弾性率を満たすことが好ましい。また、本発明において言うそれぞれの温度においても周波数別に特定範囲の貯蔵弾性率を満たすとき、フォールディング特性を良好に具現することができると共に、優れた粘着力、耐熱性および復元率を同時に満たす範囲である。
【0046】
また、フォルダブルディスプレイのその他具体的な構成は、例えば韓国特許公開第2015-0138450号などにより公知されており、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、このような公知のフォルダブルディスプレイの構成に制限なく含むことができる。
【0047】
本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、アクリル重合体および架橋剤を含むことができる。
【0048】
本発明のアクリル重合体は、架橋性官能基を含むことができる。
【0049】
架橋性官能基は、架橋剤と架橋反応を起こすことができるものであれば、制限なく選択され得、好ましくはヒドロキシ基、イソシアネート基、グリシジル基、エポキシ基、アミン基およびカルボキシ基の中から選ばれた1種以上を含むことができる。
【0050】
また、好ましくは、本発明のアクリル重合体は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0051】
【0052】
前記化学式1において、R1は、C1~C20のアルキル基であり、好ましくはC2~C16のアルキル基であり、より好ましくはC3~C12のアルキル基である。
【0053】
また、前記化学式1において、R2は、カルボキシル基(carboxyl group )、カルボキシメチルエステル基(carboxymethyl ester gr
oup)、2-カルボキシエチルエステル基(2-carboxyethyl ester group)、3-カルボキシプロピルエステル基(3-carboxypropyl ester group)、4-カルボキシブチルエステル基(4-carboxybutyl ester group)、5-カルボキシペンチルエステル基(5-carboxypentyl ester group)または6-カルボキシヘキシルエステル基(6-carboxyhexyl ester group)であり、好ましくはカルボキシメチルエステル基(carboxymethyl ester group)、2-カルボキシエチルエステル基(2-carboxyethyl ester group)、3-カルボキシプロピルエステル基(3-carboxypropyl ester group)、4-カルボキシブチルエステル基(4-carboxybutyl ester group)、5-カルボキシペンチルエステル基(5-carboxypentyl ester group)または6-カルボキシヘキシルエステル基(6-carboxyhexyl ester group)であり、より好ましくは2-カルボキシエチルエステル基(2-carboxyethyl ester group)、3-カルボキシプロピルエステル基(3-carboxypropyl ester group)、4-カルボキシブチルエステル基(4-carboxybutyl ester group)、5-カルボキシペンチルエステル基(5-carboxypentyl ester group)または6-カルボキシヘキシルエステル基(6-carboxyhexyl ester group)である。
【0054】
また、前記化学式1において、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して-HまたはC1~C10のアルキル基であり、好ましくはR3は、-HまたはC1~C3のアルキル基、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して、-HまたはC1~C10のアルキル基であり、より好ましくはR3は、-Hまたはメチル基、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して、-HまたはC1~C5のアルキル基である。
【0055】
また、前記化学式1において、mは、87~95、好ましくは88~94を満たす有理数である。
【0056】
また、前記化学式1において、nは、5~13、好ましくは6~12を満たす有理数である。
【0057】
一方、本発明のアクリル重合体は、多様な方式で製造され得る。一例として、本発明のアクリル重合体は、アクリル重合体を製造するのに必要な単量体を選択し、選択された単量体を目的する割合で配合した単量体の混合物を溶液重合(Solution polymerization)、塊状重合(Bulk poylmerization)、懸濁重合(suspention polymerization)または乳化重合(emulsion polymerization)方式などの方式に適用して製造することができ、好適には、溶液重合により製造され得る。溶液重合を通じて重合体を製造する方式は、特に制限されない。
【0058】
また、溶液重合方法は、本発明のアクリル重合体を製造するために選択された単量体成分を適切な重量比率で混合した状態で、ラジカル重合開始剤および溶剤を混合して30℃~140℃の重合温度で3~15時間の間行われ得る。
【0059】
本発明のアクリル重合体を製造するために利用されるラジカル重合開始剤は、公知の物質であり得、一例として、アゾビスイソブチロニトリルまたはアゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどのアゾ系重合開始剤または過酸化ベンゾイルまたは過酸化アセチルなどのような酸化物系;などのものを使用することができる。
【0060】
また、ラジカル重合開始剤は、単独または二種以上を混合して使用することができ、アクリル重合体100重量部に対して、0.01~1重量部を使用することができる。
【0061】
また、本発明のアクリル重合体を製造するために利用される溶剤は、公知の物質であり得、一例としてエチルアセテートまたはトルエンなどが使用され得るが、これに制限されるものではない。
【0062】
ひいては、本発明の架橋剤は、本発明のアクリル重合体の架橋性官能基と反応できる官能基を一分子内に2個以上含む二官能以上の多官能性化合物、具体的に、前記官能基を一分子内に2~6個含む多官能性化合物を含むことができる。この際、一分子内に含まれている2個以上の官能基は、同一または異なる種の官能基でありうる。
【0063】
具体的に、本発明の架橋剤は、アルコキシシラン基、カルボキシ基、酸無水物基、ビニルエーテル基、アミン基、カルボニル基、イソシアネート基、エポキシ基、アジリジニル基、カルボジイミド基およびオキサゾリン基よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上の官能基を含むことができ、好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンおよびグリセリンジグリシジルエーテルの中から選ばれた1種以上を含むことができ、より好ましくはN,N,N,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンを含むことができる。
【0064】
一方、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、アクリル重合体100重量部に対して架橋剤0.1~10重量部、好ましくは0.5~5重量部を含むことができ、万一、架橋剤が前記重量部の範囲を外れる場合、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、後述する貯蔵弾性率の範囲を達成できない問題があり得る。
【0065】
ひいては、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、下記関係式1および2を満たすことができる。
【0066】
[関係式1]
0≦X≦100
【0067】
前記関係式1において、Xは、スイープ周波数(sweep frequency)(Hz)を示す。
【0068】
[関係式2]
Y1=α1×X+β1
【0069】
前記関係式2において、Xは、スイープ周波数(Hz)を示し、Y1は、-20℃の温度および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Pa)を示し、α1は、15×104~45×104であり、好ましくは20×104~33×104であり、β1は、40×104~90×104、好ましくは50×104~80×104である。
【0070】
万一、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物が前記関係式1および2を満たさない場合、フォールディング(folding)特性、粘着力、耐熱性および復元率を同時に満たしにくい問題があり得る。
【0071】
また、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、下記条件(1)~(4)
をさらに満たすことができる。
【0072】
(1)A≦100×104Pa、好ましくはA≦80×104Pa
【0073】
前記条件(1)において、Aは、-20℃の温度、0.5Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0074】
万一、前記条件(1)において、Aが30×104Pa未満なら、復元率および残留変形率の問題があり得、100×104Paを超過すれば、硬化後に粘着剤組成物のクラックが発生したり、浮き上がりが発生する問題があり得る。
【0075】
(2)B≦130×104Pa、好ましくは70×104Pa≦B≦110×104Pa
【0076】
前記条件(2)において、Bは、-20℃の温度、1.0Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0077】
万一、前記条件(2)において、Bが50×104Pa未満なら、復元率および残留変形率の問題があり得、130×104Paを超過すれば、硬化後に粘着剤組成物のクラックが発生したり、浮き上がりが発生する問題があり得る。
【0078】
(3)250×104Pa≦C≦450×104Pa、好ましくは280×104Pa≦C≦410×104Pa
【0079】
前記条件(3)において、Cは、-20℃の温度、10Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0080】
万一、前記条件(3)において、Cが250×104Pa未満なら、復元率および残留変形率の問題があり得、450×104Paを超過すれば、硬化後に粘着剤組成物のクラックが発生したり、浮き上がりが発生する問題があり得る。
【0081】
(4)2,000×104Pa≦D≦4,000×104Pa、好ましくは2,100×104Pa≦D≦3,500×104Pa
【0082】
前記条件(4)において、Dは、-20℃の温度、100Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0083】
万一、前記条件(4)において、Dが2,000×104Pa未満なら、復元率および残留変形率の問題があり得、4,000×104Paを超過すれば、硬化後に粘着剤組成物のクラックが発生したり、浮き上がりが発生する問題があり得る。
【0084】
一方、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、前記関係式1および下記関係式3を満たすことができる。
【0085】
[関係式3]
Y2=α2×X+β2
【0086】
前記関係式3において、Xは、スイープ周波数(Hz)を示し、Y2は、25℃の温度および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Pa)を示し、α2は、1,600~2,400、好ましくは1,700~2,300であり、β2は、6×104~10×104、好ましくは6.5×104~9.5×104である。
【0087】
万一、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物が前記関係式1および3を満たさない場合、フォールディング(folding)特性、粘着力、耐熱性および復元率を同時に満たしにくい問題があり得る。
【0088】
また、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、下記条件(5)~(8)をさらに満たすことができる。
【0089】
(5)E≦8×104Pa、好ましくはE≦7.7×104Pa
【0090】
前記条件(5)において、Eは、25℃の温度、0.5Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0091】
万一、前記条件(5)において、Eが5×104Pa未満なら、打抜時に硬化後に粘着剤組成物が糊残りの問題があり得、8×104Paを超過すれば、硬化後に粘着剤組成物のクラックが発生したり、浮き上がりが発生する問題があり得る。
【0092】
(6)F≦9.5×104Pa、好ましくはF≦9.0×104Pa
【0093】
前記条件(6)において、Fは、25℃の温度、1.0Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0094】
万一、前記条件(6)において、Fが5.5×104Pa未満なら、打抜時に硬化後に粘着剤組成物が糊残りの問題があり得、9.5×104Paを超過すれば、硬化後に粘着剤組成物のクラックが発生したり、浮き上がりが発生する問題があり得る。
【0095】
(7)10×104Pa≦G、好ましくは10.5×104Pa≦G
【0096】
前記条件(7)において、Gは、25℃の温度、10Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0097】
万一、前記条件(7)において、Gが10×104Pa未満なら、打抜時に硬化後に粘着剤組成物が糊残りの問題があり得、16×104Paを超過すれば、硬化後に粘着剤組成物のクラックが発生したり、浮き上がりが発生する問題があり得る。
【0098】
(8)好ましくは23×104Pa≦H≦33×104Pa
【0099】
前記条件(8)において、Hは、25℃の温度、100Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0100】
万一、前記条件(8)において、Hが22×104Pa未満なら、打抜時に硬化後に粘着剤組成物が糊残りの問題があり得、35×104Paを超過すれば、硬化後に粘着剤組成物のクラックが発生したり、浮き上がりが発生する問題があり得る。
【0101】
ひいては、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、前記関係式1および下記関係式4をさらに満たすことができる。
【0102】
[関係式4]
Y3=α3×X+β3
【0103】
前記関係式4において、Xは、スイープ周波数(Hz)を示し、Y3は、60℃の温度および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Pa)を示し、α3は、630~1,200、好ましくは640~1,100であり、β3は、3.5×104~7.5×104、好ましくは3.7×104~6.5×104である。
【0104】
万一、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物が前記関係式1および4を満たさない場合、フォールディング(folding)特性、粘着力、耐熱性および復元率を同時に満たしにくい問題があり得る。
【0105】
また、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、下記条件(9)~(12)をさらに満たすことができる。
【0106】
(9)I≦5.5×104Pa、好ましくはI≦5.0×104Pa
【0107】
前記条件(9)において、Iは、60℃の温度、0.5Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0108】
万一、前記条件(9)において、Iが2.8×104Pa未満なら、耐熱性低下の問題があり得、5.5×104Paを超過すれば、物性変化の問題があり得る。
【0109】
(10)J≦6.5×104Pa、好ましくはJ≦6.0×104Pa
【0110】
前記条件(10)において、Jは、60℃の温度、1.0Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0111】
万一、前記条件(10)において、Jが3.2×104Pa未満なら、耐熱性低下の問題があり得、6.5×104Paを超過すれば、物性変化の問題があり得る。
【0112】
(11)5.5×104Pa≦K、好ましくは5.7×104Pa≦K
【0113】
前記条件(11)において、Kは、60℃の温度、10Hzの周波数および1%の変形
率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0114】
万一、前記条件(11)において、Kが5.5×104Pa未満なら、耐熱性低下の問題があり得、10.5×104Paを超過すれば、物性変化の問題があり得る。
【0115】
(12)10×104Pa≦L、好ましくは10.5×104Pa≦L≦17×104Pa
【0116】
前記条件(12)において、Lは、60℃の温度、100Hzの周波数および1%の変形率の条件で測定した粘着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率(Storage Modulus)である。
【0117】
万一、前記条件(12)において、Lが10×104Pa未満なら、耐熱性低下の問題があり得、20×104Paを超過すれば、物性変化の問題があり得る。
【0118】
一方、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、ガラス転移温度Tgが-27~-32℃、好ましくは-27.5~-31.5℃であり得、万一、ガラス転移温度が-32℃未満なら、粘着力および耐熱性が低下する問題があり得、-27℃を超過すれば、粘着力が低下すると共に、硬化後に粘着剤組成物のクラックが発生したり、浮き上がりが発生し、フォールディング特性が低下する問題があり得る。
【0119】
また、本発明のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、酸価(acid value)が8~19mgKOH/g、好ましくは9~18mgKOH/gであり得、万一、酸価が8mgKOH/g未満なら、耐熱性の問題があり得、19mgKOH/gを超過すれば、硬化後に粘着剤組成物のクラックが発生したり、浮き上がりが発生し、フォールディング特性が低下する問題があると共に、高温で変形率が増加する問題があり得る。
【0120】
ひいては、本発明の粘着剤組成物は、無アルカリガラス板(Non Alkali Glass)に付着後、分当たり300mmの速度で180°で剥離させるとき、測定した粘着力が700~1200gf/inch、好ましくは750~1100gf/inchでありうる。
【0121】
一方、本発明の粘着剤組成物は、下記条件(13)~(15)をさらに満たすことができる。
【0122】
(13)75%≦M、好ましくは76%≦M≦85%
【0123】
前記条件(13)において、Mは、硬化した接着剤組成物を-20℃の温度で下記関係式5によって測定した変形発生600秒後の復元率である。
【0124】
(14)85%≦N、好ましくは87%≦N≦95%
【0125】
前記条件(14)において、Nは、硬化した粘着剤組成物を25℃の温度で下記関係式1によって測定した変形発生600秒後の復元率である。
【0126】
(15)90%≦O、好ましくは91%≦O≦99.9%
【0127】
前記条件(15)において、Oは、硬化した粘着剤組成物を60℃の温度で下記関係式5によって測定した変形発生600秒後の復元率である。
【0128】
[関係式5]
変形発生600秒後の復元率(%)=(600秒後の変形率-600秒後の残留変形率)/600秒後の変形率*100
【0129】
本発明の粘着剤組成物が前記条件(13)~(15)を全部満たすことによって、温度変化による復元率に優れ、長期間の使用においても復元率に優れているので、夏だけでなく、冬にも、また、長時間の間にも、本発明の粘着剤組成物は、復元率に優れている。
【0130】
以上、本発明について具現例を中心に説明したが、これは、ただ例示に過ぎず、本発明の具現例を限定するものではなく、本発明の実施例が属する分野における通常の知識を有する者なら本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲で以上で例示されていない様々な変形と応用が可能であることが分かる。例えば、本発明の具現例に具体的に示された各構成要素は、変形して実施することができるものである。そして、このような変形と応用に関連した差異点は、添付の請求範囲で規定する本発明の範囲に含まれるものと解すべきである。
【0131】
実施例1:フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の製造
(1)アクリル重合体として酸価12mgKOH/g、水酸基が0mgKOH/gである下記化学式1-1で表される化合物を準備した。
【0132】
【0133】
前記化学式1-1において、R1は、オクチル(octyl)基であり、R2は、2-カルボキシルエチルエステル(2-carboxylethyl ester)基であり、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、-Hであり、mは、92であり、nは、8である。
【0134】
(2)前記用意したアクリル重合体100重量部に対して、架橋剤として、メチルエチルケトン(MEK)に6重量%で希釈されたN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン1重量部を混合して、粘着剤組成物を製造した。
【0135】
実施例2:フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の製造
実施例1と同じ方法で粘着剤組成物を製造した。ただし、アクリル重合体として、前記化学式1-1で表される化合物でなく、酸価9mgKOH/g、水酸基が0mgKOH/gである下記化学式1-2で表される化合物を使用した。
【0136】
【0137】
前記化学式1-2において、R1は、オクチル(octyl)基であり、R2は、2-カルボキシルエチルエステル(2-carboxylethyl ester)基であり、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、-Hであり、mは、94であり、nは、6である。
【0138】
実施例3:フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の製造
実施例1と同じ方法で粘着剤組成物を製造した。ただし、アクリル重合体として、前記化学式1-1で表される化合物でなく、酸価15mgKOH/g、水酸基が0mgKOH/gである下記化学式1-3で表される化合物を使用した。
【0139】
【0140】
前記化学式1-3において、R1は、オクチル(octyl)基であり、R2は、2-カルボキシルエチルエステル(2-carboxylethyl ester)基であり、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、-Hであり、mは、90であり、nは、10である。
【0141】
実施例4:フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の製造
実施例1と同じ方法で粘着剤組成物を製造した。ただし、アクリル重合体として、前記
化学式1-1で表される化合物でなく、酸価18mgKOH/g、水酸基が0mgKOH/gである下記化学式1-4で表される化合物を使用した。
【0142】
【0143】
前記化学式1-4において、R1は、オクチル(octyl)基であり、R2は、2-カルボキシルエチルエステル(2-carboxylethyl ester)基であり、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、-Hであり、mは、88であり、nは、12である。
【0144】
実施例5:フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の製造
実施例1と同じ方法で粘着剤組成物を製造した。ただし、アクリル重合体として、前記化学式1-1で表される化合物でなく、酸価12mgKOH/g、水酸基が0mgKOH/gである下記化学式1-5で表される化合物を使用した。
【0145】
【0146】
前記化学式1-5において、R1は、オクチル(octyl)基であり、R2は、2-カルボキシルエチルエステル(2-carboxylethyl ester)基であり、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、-Hであり、mは、92であり、nは、8である。
【0147】
実施例6:フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の製造
実施例1と同じ方法で粘着剤組成物を製造した。ただし、アクリル重合体として、前記化学式1-1で表される化合物でなく、酸価15mgKOH/g、水酸基が0mgKOH/gである下記化学式1-6で表される化合物を使用した。
【0148】
【0149】
前記化学式1-6において、R1は、ブチル(butyl)基であり、R2は、2-カルボキシルエチルエステル(2-carboxylethyl ester)基であり、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、-Hであり、mは、90であり、nは、10である。
【0150】
比較例1:フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の製造
実施例1と同じ方法で粘着剤組成物を製造した。ただし、アクリル重合体として、前記化学式1-1で表される化合物でなく、酸価0mgKOH/g、水酸基が17mgKOH/gである下記化学式1-7で表される化合物を使用した。
【0151】
【0152】
前記化学式1-7において、R1は、オクチル(octyl)基であり、R2は、ヒドロキシエチルエステル(hydroxyethyl ester)基であり、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、-Hであり、mは、90であり、nは、10である。
【0153】
比較例2:フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の製造
実施例1と同じ方法で粘着剤組成物を製造した。ただし、アクリル重合体として、前記化学式1-1で表される化合物でなく、酸価6mgKOH/g、水酸基が0mgKOH/gである下記化学式1-8で表される化合物を使用した。
【0154】
【0155】
前記化学式1-8において、R1は、オクチル(octyl)基であり、R2は、2-カルボキシルエチルエステル(2-carboxylethyl ester)基であり、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、-Hであり、mは、96であり、nは、4である。
【0156】
比較例3:フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の製造
実施例1と同じ方法で粘着剤組成物を製造した。ただし、アクリル重合体として、前記化学式1-1で表される化合物でなく、酸価21mgKOH/g、水酸基が0mgKOH/gである下記化学式1-9で表される化合物を使用した。
【0157】
【0158】
前記化学式1-9において、R1は、オクチル(octyl)基であり、R2は、2-カルボキシルエチルエステル(2-carboxylethyl ester)基であり
、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、-Hであり、mは、86であり、nは、14である。
【0159】
実験例1
実施例1~6、比較例1~3で製造された粘着剤組成物をそれぞれ下記のような物性評価法を基準として評価を実施し、その結果を表1~表4に示した。
【0160】
(1)貯蔵弾性率の測定
離型フィルムの間に気泡が発生しないように、実施例1~6、比較例1~3で製造された粘着剤組成物を厚さ0.8mmでラミし、硬化して試料を製造した。製造した試料をパラレルプレート(parallel plate)の一面に載置し、ギャップ(gap)を調整した後、トルク(Torque)の零点を合わせ、フォース(force)の安定化を確認後、周波数および温度別に貯蔵弾性率を測定した。
【0161】
*測定機器および測定条件
(i)測定機器:ARES-G2,TA Instruments Inc.
(ii)変形(strain):1%
(iii)測定温度区間:-20℃、25℃、60℃
(iv)測定周波数区間:0.01Hz~100Hz
【0162】
(2)ガラス転移温度Tgの測定
実施例1~6、比較例1~3で製造された粘着剤組成物に対する貯蔵弾性率の測定時にタンデルタ(Tan Delta)が最も高い領域の温度を確認して、これをガラス転移温度に測定した。
【0163】
(3)耐熱性の測定
実施例1~6、比較例1~3で製造された粘着剤組成物に対する貯蔵弾性率の測定時に外観および物性変化がない場合、OKと評価し、浮き上がり、気泡発生、分解、溶融、クラックなど外観および物性変化がある場合には、NGと評価して、耐熱性を測定した。
【0164】
(4)Folding Test
50μmの厚さを有するポリイミドフィルム(SKC Kolon PI社、GF200)の間に実施例1~6、比較例1~3で製造された粘着剤組成物をそれぞれ厚さ25μmでラミし、硬化して、試料を製造した。製造した試料をベンディング評価装備を利用して曲率半径2mmで1日86,400回繰り返して総200,000回まで評価を進めた。
【0165】
評価の進行後、破壊および非破壊検査を行い、実施例1~6、比較例1~3で製造された粘着剤組成物に変化がない場合、OKと評価し、剥離、クラック、厚さ変化など実施例1~6、比較例1~3で製造された粘着剤組成物に変形が発生した場合には、NGと評価した。
【0166】
(5)粘着力の測定
50μmの厚さを有するポリイミドフィルム( SKC Kolon PI社、GF200)の間に実施例1~6、比較例1~3で製造された粘着剤組成物をそれぞれ厚さ25μmでラミし、硬化して、サンプルを製造した。製造したサンプルを幅25mm×長さ150mmの大きさに裁断し、Non Alkali Glassに2kgハンドローラーを利用して付着した。
【0167】
付着後、24時間の間常温放置後、分当たり300mmの速度で180°で剥離させて
、粘着力を測定した。
【0168】
【0169】
【0170】
(6)信頼性の測定
50μmの厚さを有するポリイミドフィルム( SKC Kolon PI社、GF200)の間に実施例1~6、比較例1~3で製造された粘着剤組成物をそれぞれ厚さ25μmでラミし、硬化して、試料を製造した。その後、硬化した実施例1~6、比較例1~3で製造された粘着剤組成物に表2に記載されたそれぞれの温度および湿度で浮き上がりがなく、粘着力の低下がなく、物性変化がない場合、OKと評価し、浮き上がりが発生し、粘着力の低下があり、物性変化がある場合には、NGと評価した。
【0171】
【0172】
(7)変形率(strain)、残留変形率および復元率の測定
50μmの厚さを有するポリイミドフィルム( SKC Kolon PI社、GF200)の間に実施例1~6、比較例1~3で製造された粘着剤組成物をそれぞれ厚さ25μmでラミし、硬化して試料を製造した。製造された試料それぞれに一定の力で強制的な変形を発生させた。変形発生600秒後、外力を除去し、時間および温度による試料の変形率、残留変形率および復元率を評価した。
【0173】
*測定機器および測定条件
(i)測定機器:ARES-G2,TA Instruments Inc.
(ii)圧力:10,000Pa
(iii)変形時間:600秒
(iv)復元時間:600秒
(v)変形発生10秒後の復元率(%)=(600秒後の変形率-10秒後の残留変形率)/600秒後の変形率*100
(vi)変形発生600秒後の復元率(%)=(600秒後の変形率-600秒後の残留変形率)/600秒後の変形率*100
【0174】
【0175】
表1~表4から確認できるように、実施例1~6で製造された粘着剤組成物は、優れたフォールディング(folding)特性を具現すると共に、優れた粘着力、耐熱性および復元率を同時に満たすことができる。
【0176】
本発明の単純な変形や変更は、この分野における通常の知識を有する者により容易に実施され得、このような変形や変更は、すべて本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。